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特開2023-179488組換えコラーゲンの水酸化を調節する酵母株及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179488
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】組換えコラーゲンの水酸化を調節する酵母株及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/81 20060101AFI20231212BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231212BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20231212BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20231212BHJP
【FI】
C12N15/81 Z
C12N1/19 ZNA
C12P21/02 C
C12N15/12
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023150398
(22)【出願日】2023-09-15
(62)【分割の表示】P 2018141979の分割
【原出願日】2018-07-30
(31)【優先権主張番号】62/539,213
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】517239441
【氏名又は名称】モダン メドウ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【弁理士】
【氏名又は名称】星川 亮
(72)【発明者】
【氏名】ダイ,リシン
(72)【発明者】
【氏名】ボーデン,ジュリア
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン,ジェフェリー
(72)【発明者】
【氏名】ルーブリング-ジャス,クリスティン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】遺伝子組換え酵母株、及び組換えまたは人工コラーゲンを含有するバイオファブリケートレザーまたは皮革様特性を有する物質を製造するために用いる組換えコラーゲンの製造方法を提供する。
【解決手段】非水酸化コラーゲンまたは水酸化コラーゲンをより多量に産生するように遺伝子改変した酵母株を提供する。他の実施形態は、コラーゲンまたはヒドロキシラーゼをコードするコドン改変核酸配列、コラーゲン及びヒドロキシラーゼ(複数可)をコードする「オールインワンベクター」などのベクター、及び組換えコラーゲンの産生方法及び使用方法を含む。別の実施形態では、本発明は、水酸化及び非水酸化コラーゲンの製造に有用な酵母宿主内のキメラDNA配列を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水酸化コラーゲンを産生する遺伝子改変酵母株であって:
(i)酵母株;ならびに
(ii)コラーゲンのDNA配列;コラーゲンプロモーターのDNA配列;コラーゲン
ターミネーターのDNA配列;選択マーカーのDNA配列、前記選択マーカー用のプロモ
ーターのDNA配列;前記選択マーカー用のターミネーターのDNA配列;細菌用のもの
及び酵母用のものから選択される複製起点のDNA配列;及び前記酵母のゲノムと相同性
を有するDNA配列を含むベクター
を含み、前記ベクターが前記酵母株に挿入されている、前記遺伝子改変酵母株。
【請求項2】
前記酵母株が、Candida、Komatagaella、Hansenula、S
accharomyces、Cryptococcus属及びそれらの組み合わせ由来の
ものからなる群から選択される、請求項1に記載の酵母株。
【請求項3】
前記コラーゲンのDNA配列が、ウシ、ブタ、カンガルー、ワニ、クロコダイル、ゾウ
、キリン、シマウマ、ラマ、アルパカ、子ヒツジ、恐竜コラーゲン、及びそれらの組み合
わせからなる群から選択される、請求項1に記載の酵母株。
【請求項4】
前記コラーゲンのDNA配列が、天然コラーゲンDNA、改変(engineered
)コラーゲンDNA及びコドン改変コラーゲンDNAから選択される、請求項3に記載の
酵母株。
【請求項5】
前記プロモーターのDNA配列が、AOX1メタノール誘導性プロモーターのDNA、
pDF抑制解除プロモーターのDNA、pCAT抑制解除プロモーターのDNA、Das
1-Das2メタノール誘導性二方向性プロモーターのDNA、pHTX1構成的二方向
性プロモーターのDNA、pGCW14-pGAP1構成的二方向性プロモーターのDN
A及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の酵母株。
【請求項6】
前記選択マーカーのDNA配列が、抗生物質耐性のDNA及び栄養要求性マーカーのD
NAからなる群から選択される、請求項1に記載の酵母株。
【請求項7】
前記抗生物質耐性マーカーが、ハイグロマイシン耐性、ゼオシン耐性、ジェネテシン耐
性及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項6に記載の酵母株。
【請求項8】
前記ベクターを、電気穿孔法、化学的形質転換、及び接合からなる群から選択される方
法によって前記酵母に挿入する、請求項1に記載の酵母株。
【請求項9】
非水酸化コラーゲンの製造方法であって:
(i)請求項1の酵母株を提供し;及び
(ii)コラーゲンを産生するのに十分な期間、培地中で前記株を増殖させることを含
む、前記製造方法。
【請求項10】
前記酵母株が、Candida、Komatagaella、Hansenula、S
accharomyces、Cryptococcus属及びそれらの組み合わせ由来の
ものからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記培地が、緩衝グリセロール複合培地(BMGY)、緩衝メタノール複合培地(BM
MY)、及び酵母抽出ペプトンデキストロース(YPD)からなる群から選択される、請
求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記期間が、24時間~72時間である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記酵母が、Candida、Komatagaella、Hansenula、Sa
ccharomyces、Cryptococcus属及びそれらの組み合わせ由来のも
のからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記コラーゲンのDNA配列が、ウシ、ブタ、カンガルー、ワニ、クロコダイル、ゾウ
、キリン、シマウマ、ラマ、アルパカ、子ヒツジ、恐竜コラーゲン及びそれらの組み合わ
せからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記プロモーターのDNA配列が、前記pHTX1構成的二方向性プロモーターのDN
A及び前記pGCW14-pGAP1構成的二方向性プロモーターのDNAからなる群か
ら選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記選択マーカーのDNA配列が、前記抗生物質耐性DNAのDNA及び前記栄養要求
性マーカーのDNAからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
水酸化コラーゲンを産生する遺伝子改変酵母株であって:
(i)酵母株;
(ii)コラーゲンのDNA配列;コラーゲンプロモーターのDNA配列;ターミネー
ターのDNA配列;選択マーカーのDNA配列;前記選択マーカー用のプロモーターのD
NA配列;前記選択マーカー用のターミネーターのDNA配列;細菌及び/または酵母の
複製起点のDNA配列;前記酵母のゲノムと相同性を有するDNA配列を含むベクターで
あって;前記ベクターが前記酵母株に挿入されている、前記ベクター;ならびに
(iii)P4HA1のDNA配列;P4HBのDNA配列;及びプロモーター用の少
なくとも1つのDNA配列を含む第二のベクターであって;前記ベクターが前記酵母株に
挿入されている、前記第二のベクター
を含む、前記遺伝子改変酵母株。
【請求項18】
前記酵母株が、Candida、Komatagaella、Hansenula、S
accharomyces、Cryptococcus属及びそれらの組み合わせ由来の
ものからなる群から選択される、請求項17に記載の酵母株。
【請求項19】
前記コラーゲンのDNA配列が、ウシ、ブタ、カンガルー、ワニ、クロコダイル、ゾウ
、キリン、シマウマ、ラマ、アルパカ、子ヒツジ、恐竜コラーゲン及びそれらの組み合わ
せからなる群から選択される、請求項17に記載の酵母株。
【請求項20】
前記コラーゲンのDNA配列が、天然コラーゲンDNA、改変(engineered
)コラーゲンDNA及び改変(modified)コラーゲンDNAから選択される、請
求項17に記載の酵母株。
【請求項21】
前記プロモーターのDNA配列が、前記AOX1メタノール誘導性プロモーターのDN
A、前記pDF抑制解除プロモーターのDNA、前記pCAT抑制解除プロモーターのD
NA、前記Das1-Das2メタノール誘導性二方向性プロモーターのDNA、前記p
HTX1構成的二方向性プロモーターのDNA、前記pGCW14-pGAP1構成的二
方向性プロモーターのDNA、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求
項17に記載の酵母株。
【請求項22】
前記プロモーターのDNA配列が、前記pHTX1構成的二方向性プロモーターのDN
A及び前記pGCW14-pGAP1構成的二方向性プロモーターのDNAからなる群か
ら選択される、請求項17に記載の酵母株。
【請求項23】
前記選択マーカーの前記DNA配列が、前記抗生物質耐性DNAのDNA及び前記栄養
要求性マーカーのDNAからなる群から選択される、請求項17に記載の酵母株。
【請求項24】
前記選択マーカーが、ハイグロマイシン耐性、ゼオシン耐性、ジェネテシン耐性及びそ
れらの組み合わせからなる群から選択される抗生物質耐性の選択マーカーである、請求項
23に記載の酵母株。
【請求項25】
前記ベクターを、電気穿孔法、化学的形質転換、及び接合からなる群から選択される方
法によって前記酵母に挿入する、請求項17に記載の酵母株。
【請求項26】
水酸化コラーゲンの製造方法であって:
(i)請求項17の酵母株を提供し;及び
(ii)コラーゲンを産生するのに十分な期間、培地中で前記株を増殖させることを含
む、前記製造方法。
【請求項27】
前記酵母株が、Candida、Komatagaella、Pichia、Hans
enula、Saccharomyces、Cryptococcus属及びそれらの組
み合わせ由来のものからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記培地が、BMGY、BMMY、及びYPDからなる群から選択される、請求項26
に記載の方法。
【請求項29】
前記期間が、24時間~72時間である、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記酵母が、Candida、Komatagaella、Pichia、Hanse
nula、Saccharomyces、Cryptococcus属及びそれらの組み
合わせ由来のものからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記コラーゲンのDNAが、ウシ、ブタ、カンガルー、ワニ、クロコダイル、ゾウ、キ
リン、シマウマ、ラマ、アルパカ、子ヒツジ、恐竜コラーゲン及びそれらの組み合わせか
らなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記プロモーターのDNAが、前記pTHX1構成的二方向性プロモーターのDNA及
び前記pGCW14-pGAP1構成的二方向性プロモーターのDNAからなる群から選
択される、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記選択マーカーのDNAが、前記抗生物質耐性DNAのDNA及び前記栄養要求性マ
ーカーのDNAからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
(i)プロモーター及びターミネーターを含む、コラーゲン産生に必要なDNA;
(ii)プロモーター及びターミネーターを含む、P4HA1及びP4HBからなる群
から選択される水酸化酵素のDNA;
(iii)プロモーター及びターミネーターを含む、選択マーカーのDNA;
(iv)酵母及び細菌の複製起点のDNA;
(v)ゲノムに組み込むために前記酵母のゲノムに対して相同性を有するDNA;なら
びに
(vi)モジュラー式クローニングを可能にする、上記のDNA内の5’、3’、及び
それらの組み合わせからなる群から選択される位置の制限酵素部位
を有する、オールインワンベクター。
【請求項35】
コラーゲン産生に必要な前記DNA配列が、ウシ、ブタ、カンガルー、ワニ、クロコダ
イル、ゾウ、キリン、シマウマ、ラマ、アルパカ、子ヒツジ、恐竜コラーゲン、及びそれ
らの組み合わせからなる群から選択される、請求項34に記載のオールインワンベクター
【請求項36】
前記プロモーターのDNA配列が、前記pTHX1構成的二方向性プロモーターのDN
A及び前記pGCW14-pGAP1構成的二方向性プロモーターのDNAからなる群か
ら選択される、請求項34に記載のオールインワンベクター。
【請求項37】
前記選択マーカーのDNA配列が、前記抗生物質耐性のDNA及び前記栄養要求性マー
カーのDNAである、請求項34に記載のオールインワンベクター。
【請求項38】
前記選択マーカーが、ハイグロマイシン、ゼオシン、ジェネテシン及びそれらの組み合
わせからなる群から選択される抗生物質に対する抗生物質耐性の選択マーカーである、請
求項37に記載のオールインワンベクター。
【請求項39】
最適化したDNAを、キメラコラーゲンDNAの全長に基づいて10~40%または6
0~90%含む、キメラコラーゲンDNA配列。
【請求項40】
前記最適化したDNAが、C末端から始まる、請求項39に記載のキメラコラーゲンD
NA配列。
【請求項41】
前記最適化したDNAが、N末端から始まる、請求項39に記載のキメラコラーゲンD
NA配列。
【請求項42】
請求項39に記載のキメラコラーゲンのDNA配列;
コラーゲンプロモーターのDNA配列;
ターミネーターのDNA配列;選択マーカーのDNA配列;
前記選択マーカー用のプロモーターのDNA配列;
前記選択マーカー用のターミネーターのDNA配列;
細菌及び/または酵母の複製起点のDNA配列;及び
前記酵母のゲノムと相同性を有するDNA配列
を含むベクターを保有する、コラーゲン産生酵母株。
【請求項43】
前記プロモーターのDNAが、前記pTHX1構成的二方向性プロモーターのDNA及
び前記pGCW14-pGAP1構成的二方向性プロモーターのDNAからなる群から選
択される、請求項42に記載の酵母株。
【請求項44】
前記選択マーカーのDNAが、前記少なくとも1つの抗生物質耐性をコードするDNA
及び少なくとも1つの栄養要求性マーカーをコードするDNAからなる群から選択される
、請求項42に記載の酵母株。
【請求項45】
水酸化コラーゲンの製造方法であって:
(i)請求項42のコラーゲン産生酵母株を提供し;及び
(ii)コラーゲンを産生するのに十分な期間、培地中で前記株を増殖させることを含
む、前記製造方法。
【請求項46】
前記酵母株が、Candida、Komatagaella、Hansenula、S
accharomyces、Cryptococcus属及びそれらの組み合わせ由来の
ものからなる群から選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記培地が、緩衝グリセロール複合培地、緩衝メタノール複合培地、及び酵母抽出ペプ
トンデキストロースからなる群から選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記期間が、24時間~72時間の範囲である、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記酵母株が、前記pTHX1構成的二方向性プロモーターのDNA及び前記pGCW
14-pGAP1構成的二方向性プロモーターのDNAからなる群から選択されるプロモ
ーターを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
前記酵母株が、抗生物質耐性をコードするDNA及び栄養要求性マーカーをコードする
DNAからなる群から選択される少なくとも1つの選択マーカーを含む、請求項45に記
載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2017年7月31日に出願された米国仮出願第62/539,213号の
優先権を主張し、前記文献はその全体を参照として本明細書に援用される。
【0002】
本出願は、タイトル名Biofabricated Material Contai
ning Collagen Fibrilsの米国特許出願第15/433,566号
及びタイトル名Method for Making a Biofabricated
Material Containing Collagen Fibrilsの第1
5/433,650号に関連し、これらの文献は参照として本明細書に援用される。
【0003】
発明の分野
本発明は、遺伝子組換え酵母株、及び組換えまたは人工コラーゲンを含有するバイオフ
ァブリケートレザーまたは皮革様特性を有する物質を製造するために用いる組換えコラー
ゲンの製造方法に関する。酵母株を改変し、酵母株が、特定の組換えコラーゲン水酸化度
を選択することによって組換えコラーゲンの構造的及び質感上の特性を調節できるように
する。これにより、例えば様々な異なる動物試験を行っていない及び環境保護的なバイオ
ファブリケートレザー及び同様の素材に組み込むために、特定の最終用途に組換えコラー
ゲンの特性を適合させることが可能になる。
【0004】
関連技術の説明
皮革は、家具の室内装飾品、衣類、靴、荷物、ハンドバッグ及びアクセサリー、ならび
に自動車用途など、広範囲の用途に使用されている。皮革の世界貿易推定額は、年間およ
そ1000億ドルであり(Future Trends in the World L
eather Products Industry and Trade, Unit
ed Nations Industrial Development Organi
zation、ウィーン、2010)、皮革製品の需要は継続してますます高まっている
。皮革を製造する経済的、環境的、社会的コストの観点から、この需要を満たす新規方法
が必要とされている。皮革製品の生産者及びユーザーは、技術的及び審美的トレンドに追
いつくために、優れた強度、均一性、加工性及び天然成分を組み込んだファッショナブル
かつ魅力的な審美的特性を示す新規素材を探求している。
【0005】
人口増加と地球環境を考慮すると、皮革様の審美性を備え、機能性が向上した代替素材
が必要となるだろう。皮革は、動物の皮であり、ほぼすべてがコラーゲンからなる。バイ
オファブリケートレザー素材に組込み可能な新規コラーゲン供給源が必要である。
【0006】
組換え発現コラーゲンを用いたバイオファブリケートレザーの製造は、多様な商業的用
途に必要とされる形態及び量のコラーゲンを効率的に製造する方法が必要であることをは
じめとして、多くの課題に直面している。いくつかの用途では、より柔らかくより浸透性
の高いコラーゲン成分が望ましく;他の用途では、より硬く、より耐久性が高く丈夫なコ
ラーゲン成分が必要である。
【0007】
いくつかのコラーゲン及びコラーゲン様タンパク質の組換え発現が公知であり;Bel
l,EP1232182B1,Bovine collagen and method
for producing recombinant gelatin;Olsen
,et al.,米国特許第6,428,978号,Methods for the
production of gelatin and full-length tr
iple helical collagen in recombinant cel
ls;VanHeerde,et al.,米国特許第8,188,230号,Meth
od for recombinant microorganism express
ion and isolation of collagen-like polyp
eptidesを参照されたく、これらの開示は参照として本明細書に援用される。こう
した組換えコラーゲンは、皮革製品またはバイオファブリケートレザー製品を製造するた
めには使用されてこなかった。
【0008】
酵母でのタンパク質発現に有用なベクターは公知であり;Ausubel et al
.,In:Current Protocols in Molecular Biol
ogy,Vol.2,Chapter 13 Greene Publish.Asso
c. & Wiley Interscience,1988;Grant et al
.(1987),Expression and Secretion Vectors
for Yeast,in Methods in Enzymology,Ed.W
u & Grossman,Acad.Press,N.Y.153:516-544;
Glover(1986)DNA Cloning,Vol.II,IRL Press
,Wash.,D.C.,Ch.3;Bitter(1987),Heterologo
us Gene Expression in Yeast,in Methods i
n Enzymology,Eds.Berger & Kimmel,Acad.Pr
ess,N.Y.152:673-684;及びThe Molecular Biol
ogy of the Yeast Saccharomyces,Eds.Strat
hern et al.,Cold Spring Harbor Press,Vol
s.I and II(1982)を参照されたく、これらの開示は参照として本明細書
に援用される。酵母発現ベクターは、例えば、ThermoFisher Scient
ific(www._thermofisher.com);ATUM(https:/
/www._atum.bio/products/expression-vecto
rs/yeast);またはIBA(https://www._iba-lifesc
iences.com/cloning-yeast-vectors.html)のカ
タログに記載されているように、市販されている(それぞれ、最終アクセス日は2018
年7月16日であり、これらを参照として援用する)。
【0009】
Pichia pastorisは、ヒトインターフェロンγなどの生体治療用タンパ
ク質を組換え発現するために使用されている酵母種である(Razaghi,et al
.,Biologicals 45:52-60(2017)参照)。この酵母種は、I
II型コラーゲン及びプロリル-4-ヒドロキシラーゼを発現するために使用されている
(Vuorela, et al.,EMBO J.16:6702-6712(199
7)参照)。コラーゲン及びプロリル-4-ヒドロキシラーゼもまた、コラーゲン性物質
を産生するためにEscherichia coli内で発現されている(Pinkas
,et al.,ACS Chem.Biol.6(4):320-324(2011)
参照)。
【0010】
コドン改変を用いて、選択した水酸化度を有するトロポコラーゲンを提供し、したがっ
て、生物工学による皮革の製造に使用するための、ある範囲の異なるコラーゲン素材を提
供することは、従前には検討されてこなかった。
【0011】
本発明者らは、選択した水酸化度を特徴とする様々な形態のコラーゲンを豊富に発現可
能な組換え酵母を設計することにより、これらの課題に取り組むことを試みた。
【0012】
発明の概要
本発明の一態様は、コラーゲンを効率的に発現させ、発現するコラーゲン中のリジン残
基及びプロリン残基の水酸化度を調節するように改変した組換え酵母株に関する。本発明
のこの態様は、コラーゲン中のリジン、プロリン、またはリジンとプロリン残基の数に基
づいて、選択した水酸化度のリジン、プロリン、またはリジンとプロリン残基を有する組
換えコラーゲンを発現することができる組換え酵母を提供する。コラーゲンの水酸化度は
、コラーゲン三重らせんまたはトロポコラーゲンの弛緩度または緊密度、ならびに組換え
コラーゲンで作製したバイオファブリケートレザーなどの製品の機能的及び審美的特性と
相関する。
【0013】
本発明の他の実施形態は、コラーゲンまたはヒドロキシラーゼをコードするコドン改変
核酸配列、コラーゲン及びヒドロキシラーゼ(複数可)をコードする「オールインワンベ
クター」などのベクター、及び組換えコラーゲンの産生方法及び使用方法を含む。別の実
施形態では、本発明は、水酸化及び非水酸化コラーゲンの製造に有用な酵母宿主内のキメ
ラDNA配列を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】非水酸化コラーゲンを産生するように設計したMMV-63ベクターの図を示す。
図2】非水酸化コラーゲンを産生するように設計したMMV-77ベクターの図を示す。
図3】非水酸化コラーゲンを産生するように設計されたMMV-129ベクターの図を示す。
図4】非水酸化コラーゲンを産生するように設計されたMMV-130ベクターの図を示す。
図5】水酸化コラーゲンを産生するように設計されたMMV-78ベクターの図を示す。
図6】水酸化コラーゲンを産生するように設計されたMMV-94ベクターの図を示す。
図7】水酸化コラーゲンを産生するように設計されたMMV-156ベクターの図を示す。
図8】水酸化コラーゲンを産生するように設計されたMMV-191ベクターの図を示す。
図9】非水酸化または水酸化コラーゲンを産生するように設計されたオールインワンベクターMMV-208を示す。
図10】MMV-84ベクターの図を示す。
図11】MMV-150ベクターの図を示す。
図12】MMV-140ベクターの図を示す。
図13】MMV-132ベクターの図を示す。
図14】MMV-193ベクターの図を示す。
図15】MMV-194ベクターの図を示す。
図16】MMV-195ベクターの図を示す。
図17】MMV-197ベクターの図を示す。
図18】MMV-198ベクターの図を示す。
図19】MMV-199ベクターの図を示す。
図20】MMV-200ベクターの図を示す。
図21】MMV-128ベクターの図を示す。
図22】Col3A1キメラ分子を記載する。
【0015】
発明の詳細な説明
本明細書に例示するように、Pichia pastorisを用いて、異なる水酸化
度を有する組換えIII型ウシコラーゲンを発現させた。組換えコラーゲンの水酸化は、
ウシプロリル-4-ヒドロキシラーゼの、それぞれα及びβサブユニットをコードするウ
シP4HA及びウシP4HBの同時発現によって達成される。しかしながら、本発明は、
III型コラーゲンの産物及び発現に限定されず、他の種類のコラーゲンのサブユニット
をコードするポリヌクレオチドならびにプロリン残基、リジン残基、またはプロリン残基
とリジン残基の両方を水酸化する酵素で実施することができる。III型トロポコラーゲ
ンはホモ三量体である。しかしながら、いくつかの実施形態では、コラーゲンは、最初に
2つのプロα1(I)鎖及び1つのプロα2(I)鎖から構成されるI型コラーゲンなど
の異なるポリペプチド鎖から構成されるヘテロ三量体を形成する。
【0016】
コラーゲン。コラーゲンは皮革の主成分である。皮膚、または動物の皮は、繊維状タン
パク質であるコラーゲンを相当量含有する。コラーゲンは、少なくとも28の異なるコラ
ーゲン型のファミリーの総称であり;動物の皮膚は一般的にはI型コラーゲンであるが、
III型コラーゲンを含有する皮革の形成に他の型のコラーゲンを使用することができる
。用語「コラーゲン」は、未処理(例えば、プロコラーゲン)ならびに三重らせん構造を
有する翻訳後修飾及びタンパク質分解を受けたコラーゲンを包含する。
【0017】
コラーゲンは、アミノ酸トリプレットの反復である-(Gly-X-Y)n-を特徴と
し、コラーゲン中のアミノ酸残基のおよそ3分の1はグリシンである。Xは多くの場合プ
ロリンであり、Yは多くの場合ヒドロキシプロリンであるが、最大400の可能なGly
-X-Yトリプレットが存在し得る。異なる動物が異なるアミノ酸組成を有するコラーゲ
ンを産生し、コラーゲン上に異なる特性を付与し、異なる特性または外観を有するレザー
を産生することができる。
【0018】
コラーゲンの構造は、長さの異なる3つの絡み合ったペプチド鎖からなり得る。コラー
ゲン三重らせん(または単量体)は、約1,050アミノ酸長のα鎖から生成される場合
があり、その結果、三重らせんはおよそ300nmの長さの棒状の形態をとっており、直
径はおよそ1.5nmである。
【0019】
コラーゲン繊維は、動物の皮の種類に応じて、ある範囲の直径を有し得る。I型コラー
ゲンに加えて、皮膚(皮)には、III型コラーゲン(レティキュリン)、IV型コラー
ゲン、及びVII型コラーゲンを含む他の型のコラーゲンも含まれ得る。
【0020】
哺乳類の体には様々な型のコラーゲンが存在する。例えば、I型コラーゲンは、皮膚及
び動物の皮の主成分であるだけでなく、軟骨、腱、血管結紮部、器官、筋肉、及び骨の有
機部分にも存在する。動物の皮膚または皮に加えて、哺乳類の体の様々な領域からコラー
ゲンを単離する試みが成果を収めている。数十年前、研究者らは、中性pHでは、酸可溶
化コラーゲンが、天然組織において観察されるものと同じ横縞模様から構成されるフィブ
リルに自己集合したことを見出した;Schmitt F.O.J.Cell.Comp
Physiol.1942;20:11。これにより、組織工学及び様々な生物医学的
用途においてコラーゲンが使用されるようになった。より近年においては、組換え技術を
用いて細菌及び酵母からコラーゲンが回収されるようになった。
【0021】
水素結合、ファンデルワールス相互作用、双極子間力、分極力、疎水性相互作用、及び
多くの場合に酵素反応によって触媒される共有結合などの静電相互作用を含む物理的及び
化学的相互作用の組合せによって、コラーゲンが形成及び安定化される。ウシ、ヒツジ、
ブタ、ニワトリ、及びヒトを含む脊椎動物のコラーゲンにおいて、様々な異なるコラーゲ
ン型が同定されている。
【0022】
本発明は、1つ以上の型のコラーゲンをコードするポリヌクレオチドで実施してもよい
。通常、コラーゲン型はローマ数字で番号付けし、各コラーゲン型で見出される鎖はアラ
ビア数字で識別される。天然に存在するコラーゲンの様々な異なる型の構造及び生物学的
機能の詳細な説明は、当該技術分野で利用可能であり;例えば、Ayad et al.
(1998)The Extracellular Matrix Facts Boo
k,Academic Press,San Diego,CA;Burgeson,R
E.,and Nimmi(1992)“Collagen types:Molec
ular Structure and Tissue Distribution”i
n Clin.Orthop.282:250-272;Kielty,C.M.et
al.(1993)“The Collagen Family:Structure,
Assembly And Organization In The Extrace
llular Matrix,”Connective Tissue And Its
Heritable Disorders,Molecular Genetics,
And Medical Aspects,Royce,P.M. and B.Ste
inmann eds.,Wiley-Liss,NY,pp.103-147;及びP
rockop,D.J- and K.I.Kivirikko(1995)“Coll
agens:Molecular Biology,Diseases,and Pot
entials for Therapy,”Annu.Rev.Biochem.,6
4:403-434.)参照。
【0023】
I型コラーゲンは、生物の総コラーゲンのおよそ80~90%を含有する骨及び皮膚の
主要な線維性コラーゲンである。I型コラーゲンは、多細胞生物の細胞外マトリックスに
存在する主要な構造高分子であり、全タンパク質の質量のおよそ20%を含有する。I型
コラーゲンは、COL1A1及びCOL1A2遺伝子によってそれぞれコードされる2つ
のα1(I)鎖及び1つのα2(I)鎖を有するヘテロ三量体分子である。in viv
oにおいては、I型コラーゲンのフィブリル、繊維、及び繊維束の組み立てが発生中に起
こり、組織に機械的支持を提供する一方で、細胞運動性及び栄養素輸送を可能にする。他
のコラーゲン型は、I型コラーゲンほど豊富ではなく、異なる分布パターンを示す。例え
ば、II型コラーゲンは、軟骨及び硝子体液中で優勢なコラーゲンであり、一方、III
型コラーゲンは、血管内においては高レベルに、皮膚においては低レベルに見出される。
【0024】
II型コラーゲンは、COL2A1遺伝子によってコードされる3つの同一のal(I
I)鎖を有するホモ三量体コラーゲンである。精製II型コラーゲンは、例えば、Mil
ler and Rhodes(1982)Methods In Enzymolog
y 82:33-64に記載されている手順により、当該分野で公知の方法により、組織
から調製してもよい。
【0025】
III型コラーゲンは、皮膚及び血管組織に認められる主要な線維性コラーゲンである
。III型コラーゲンは、COL3A1遺伝子によってコードされる3つの同一のα1(
III)鎖を含むホモ三量体コラーゲンである。III型コラーゲンを組織から精製する
方法は、例えば、Byers et al.(1974)Biochemistry 1
3:5243-5248;及び上記のMiller and Rhodesに見出すこと
ができ、本発明の方法によって発現させるコラーゲンと併用してもよい。
【0026】
IV型コラーゲンは、基底膜においてフィブリルよりもむしろシートの形態で見出され
る。最も一般的には、IV型コラーゲンは2つのα1(IV)鎖及び1つのα2(IV)
鎖を有する。特定の鎖を有するIV型コラーゲンは組織特異的である。IV型コラーゲン
は、例えば、Furuto and Miller(1987)Methods in
Enzymology,144:41-61,Academic Pressに記載の手
順を用いて精製してもよい。
【0027】
V型コラーゲンは、主として、骨、腱、角膜、皮膚、及び血管に見出される線維状コラ
ーゲンである。V型コラーゲンは、ホモ三量体及びヘテロ三量体の両方の形態で存在する
。V型コラーゲンの一形態は、2つのα1(V)鎖及び1つのα2(V)鎖のヘテロ三量
体である。V型コラーゲンの別の形態は、α1(V)、α2(V)及びα3(V)鎖のヘ
テロ三量体である。V型コラーゲンのさらなる形態は、α1(V)のホモ三量体である。
天然源からV型コラーゲンを単離する方法は、例えば、Elstow and Weis
s(1983)Collagen Rel.Res.3:181-193,及びAbed
in et al.(1982)Biosci.Rep.2:493-502に見出すこ
とができる。
【0028】
VI型コラーゲンは、小さな三重らせん領域及び2つの大きな非コラーゲン性残余部分
を有する。VI型コラーゲンは、α1(VI)、α2(VI)、及びα3(VI)鎖を有
するヘテロ三量体である。VI型コラーゲンは、多くの結合組織に認められる。天然源か
らのVI型コラーゲンの精製方法の説明は、例えば、Wu et al.(1987)B
iochem.J.248:373-381,及びKielty et al.(199
1)J.Cell Sci.99:797-807に見出すことができる。
【0029】
VII型コラーゲンは、特定の上皮組織に見出される原線維性コラーゲンである。VI
I型コラーゲンは、3つのα1(VII)鎖のホモ三量体分子である。組織からVII型
コラーゲンを精製する方法の説明は、例えば、Lunstrum et al.(198
6)J.Biol.Chem.261:9042-9048,及びBentz et a
l.(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:3168-3
172に見出すことができる。VIII型コラーゲンは、角膜のデスメ膜に見出すことが
できる。VIII型コラーゲンは、2つのα1(VIII)鎖及び1つのα2(VIII
)鎖を有するヘテロ三量体であるが、他の鎖組成も報告されている。天然由来のVIII
型コラーゲンの精製方法は、例えば、Benya and Padilla(1986)
J.Biol.Chem.261:4160-4169,及びKapoor et al
.(1986)Biochemistry 25:3930-3937に見出すことがで
きる。
【0030】
IX型コラーゲンは、軟骨及び硝子体液中に見出される繊維付随性コラーゲンである。
IX型コラーゲンは、α1(IX)、α2(IX)、及びα3(IX)鎖を有するヘテロ
三量体分子である。IX型コラーゲンは、非三重らせんドメインによって分離されたいく
つかの三重らせんドメインを有する、FACIT(断続性三重らせんを有する線維付随性
コラーゲン)コラーゲンとして分類されている。IX型コラーゲンを精製するための手順
は、例えば、Duance,et al.(1984)Biochem.J.221:8
85-889;Ayad et al.(1989)Biochem.J.262:75
3-761;及びGrant et al.(1988)The Control of
Tissue Damage,Glauert,A.M.,ed.,Elsevier
Science Publishers,Amsterdam,pp.3-28に見出
すことができる。
【0031】
X型コラーゲンは、α1(X)鎖のホモ三量体化合物である。X型コラーゲンは、例え
ば、成長板中に見出される肥大軟骨から単離されている;例えば、Apte et al
.(1992)Eur J Biochem 206(1):217-24参照。
【0032】
XI型コラーゲンは、II型及びIX型コラーゲンに関連する軟骨組織、及び体内の他
の場所に見出すことができる。XI型コラーゲンは、α1(XI)、α2(XI)、及び
α3(XI)鎖を有するヘテロ三量体分子である。XI型コラーゲンを精製する方法は、
例えば、上記のGrant et al.において見出すことができる。
【0033】
XII型コラーゲンは、主にI型コラーゲンと関連して見出されるFACITコラーゲ
ンである。XII型コラーゲンは、3つのα1(XII)鎖を有するホモ三量体分子であ
る。XII型コラーゲン及びその変異体の精製方法は、例えば、Dublet et a
l.(1989)J.Biol.Chem.264:13150-13156;Luns
trum et al.(1992)J.Biol.Chem.267:20087-2
0092;及びWatt et al.(1992)J.Biol.Chem.267:
20093-20099に見出すことができる。
【0034】
XIII型は、例えば、皮膚、腸、骨、軟骨、及び横紋筋に見出される非原線維性コラ
ーゲンである。XIII型コラーゲンの詳細な説明は、例えば、Juvonen et
al.(1992)J.Biol.Chem.267:24700-24707に見出し
得る。
【0035】
XIV型は、α1(XIV)鎖を有するホモ三量体分子として特徴付けられるFACI
Tコラーゲンである。XIV型コラーゲンの単離方法は、例えば、Aubert-Fou
cher et al.(1992)J.Biol.Chem.267:15759-1
5764、及び上記のWatt et al.に見出すことができる。
【0036】
XV型コラーゲンは、構造上、XVIII型コラーゲンに相同である。天然型XVコラ
ーゲンの構造及び単離に関する情報は、例えば、Myers et al.(1992)
Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10144-10148;Hu
ebner et al.(1992)Genomics 14:220-224;Ki
virikko et al.(1994)J.Biol.Chem.269:4773
-4779;及びMuragaki,J.(1994)Biol.Chem.264:4
042-4046に見出すことができる。
【0037】
XVI型コラーゲンは、例えば、皮膚、肺線維芽細胞、及びケラチノサイトにおいて見
出される繊維付随性コラーゲンである。XVI型コラーゲンの構造及びXVI型コラーゲ
ンをコードする遺伝子に関する情報は、例えば、Pan et al.(1992)Pr
oc.Natl.Acad.Sci.USA 89:6565-6569;及びYama
guchi et al.(1992)J.Biochem.112:856-863に
見出すことができる。
【0038】
XVII型コラーゲンは、水疱性類天疱瘡抗原でも知られている、半接着斑膜貫通型コ
ラーゲンである。XVII型コラーゲンの構造及びXVII型コラーゲンをコードする遺
伝子に関する情報は、例えば、Li et al.(1993)J.Biol.Chem
.268(12):8825-8834;及びMcGrath et al.(1995
)Nat.Genet.11(1):83-86に見出すことができる。
【0039】
XVIII型コラーゲンは、XV型コラーゲンと構造が類似しており、肝臓から単離す
ることができる。天然源由来のXVIII型コラーゲンの構造及び単離の説明は、例えば
、Rehn and Pihlajaniemi(1994)Proc.Natl.Ac
ad.Sci USA 91:4234-4238;Oh et al.(1994)P
roc.Natl.Acad.Sci USA 91:4229-4233;Rehn
et al.(1994)J.Biol.Chem.269:13924-13935;
及びOh et al.(1994)Genomics 19:494-499に見出す
ことができる。
【0040】
XIX型コラーゲンは、FACITコラーゲンファミリーの別のメンバーであると考え
られており、横紋筋肉腫細胞から単離されたmRNAにおいて見出されている。XIX型
コラーゲンの構造及び単離の説明は、例えば、Inoguchi et al.(199
5)J.Biochem.117:137-146;Yoshioka et al.(
1992)Genomics 13:884-886;及びMyers et al.,
J.Biol.Chem.289:18549-18557(1994)に見出すことが
できる。
【0041】
XX型コラーゲンは、FACITコラーゲンファミリーの新規に見出されたメンバーで
あり、ニワトリ角膜において同定されている;例えば、Gordon et al.(1
999)FASEB Journal 13:A1119;及びGordon et a
l.(1998),IOVS 39:S1128参照。
【0042】
本発明の方法を用いて1種類以上のコラーゲンを発現させ、発現したコラーゲンを、あ
るゆる目的のために参照として援用する上記引用文献に記載されているように、さらに処
理または精製してもよい。
【0043】
用語「コラーゲン」とは、上記のコラーゲン型I~XXを含む公知のコラーゲン型のい
ずれか1つ、ならびに天然、合成、半合成、または組換え型の任意の他のコラーゲンを指
す。これには、本明細書に記載されるすべてのコラーゲン、修飾コラーゲン及びコラーゲ
ン様タンパク質が含まれる。本用語はまた、モチーフ(Gly-X-Y)n(nは整数)
を有するプロコラーゲン及びコラーゲン様タンパク質またはコラーゲン性タンパク質を包
含する。本用語は、コラーゲン及びコラーゲン様タンパク質の分子、コラーゲン分子の三
量体、コラーゲンのフィブリル、ならびにコラーゲンフィブリルの繊維を包含する。本用
語はまた、フィブリル化することができる、化学的、酵素的、または組換え改変した(m
odified)コラーゲンまたはコラーゲン様分子、ならびにコラーゲンの断片、コラ
ーゲン様分子及びナノファイバーに集合可能なコラーゲン分子を指す。天然または改変し
た(engineered)組換えコラーゲン分子は、一般的に、本明細書に記載される
反復-(Gly-X-Y)n-配列を有する。
【0044】
コラーゲン中のプロリン及びリジン残基の水酸化。コラーゲンのポリペプチドの主な翻
訳後修飾は、4-ヒドロキシプロリン、3-ヒドロキシプロリン(Hyp)及び/または
ヒドロキシリジン(Hyl)を生成するためのプロリン及び/またはリジン残基の水酸化
、及びヒドロキシリジル残基のグリコシル化である。これらの修飾は、3つのヒドロキシ
ラーゼ、すなわちプロリル4-ヒドロキシラーゼ、プロリル3-ヒドロキシラーゼ、及び
リシルヒドロキシラーゼ、ならびに2つのグリコシルトランスフェラーゼによって触媒さ
れる。in vivoでは、これらの反応は、ポリペプチドが三重らせんコラーゲン構造
を形成するまで起こり、この構造は、さらなる修飾を阻害する。
【0045】
プロリル-4-ヒドロキシラーゼ。本酵素は、プロリン残基から(2S,4R)-4-
ヒドロキシプロリン(Hyp)への水酸化を触媒する。Gorres,et al.,C
ritical Reviews in Biochemistry and Mole
cular Biology 45(2):(2010)(参照として援用する)。以下
の実施例は、P4HA(配列番号54)及びP4HB(配列番号52)によってコードさ
れる四量体ウシプロリル-4-ヒドロキシラーゼ(2α及び2β鎖)を使用するが、アイ
ソフォーム、オーソログ、変異体、断片及び非ウシ起源由来プロリル-4-ヒドロキシラ
ーゼもまた、それらが酵母宿主細胞中でヒドロキシラーゼ活性を保持する限り、使用して
もよい。P4HA1は、http://_www.omim.org/entry/176710に、P4HB1及びP4H
B1は、http://www.omim.org/entry/176790にさらに記載されており、いずれも参照とし
て援用する。
【0046】
プロリル3-ヒドロキシラーゼ。本酵素は、プロリン残基の水酸化を触媒する。プロリ
ル3-ヒドロキシラーゼ1前駆体[Bos taurus]は、NCBI参照配列:NP
_001096761.1またはNM_001103291.1(配列番号48)に記載
されている。さらなる説明については、Vranka,et al.,J.Biol.C
hem.279:23615-23621(2004)またはhhttp://_www.omim.org/en
try/610339(最終アクセス日2017年7月14日)に記載されており、これらを参照に
より援用する。本酵素は、その天然形態で使用してもよい。しかしながら、アイソフォー
ム、オーソログ、変異体、断片及び非ウシ起源由来プロリル-3-ヒドロキシラーゼもま
た、酵母宿主細胞内でヒドロキシラーゼ活性を保持する限り、使用してもよい。
【0047】
リジルヒドロキシラーゼ。リジルヒドロキシラーゼ(EC1.14.11.4)は、X
-lys-gly配列中のリジン残基の水酸化によって、コラーゲン及びコラーゲン様ア
ミノ酸配列を有する他のタンパク質中のヒドロキシリジンの形成を触媒する。この酵素は
、約85kDの分子量を有するサブユニットからなるホモ二量体である。リジルヒドロキ
シラーゼの一次構造とプロリル-4-ヒドロキシラーゼの2つのタイプのサブユニット(
176710,176790)との間には、これらの2つのコラーゲンヒドロキシラーゼ
間の動力学的特性に著しい類似性があるにもかかわらず、有意な相同性は見出されなかっ
た。リジルヒドロキシラーゼ反応において形成されるヒドロキシリジン残基は、2つの重
要な機能を有する:第一に、それらのヒドロキシ基は、単糖類ガラクトースまたは二糖類
グルコシルガラクトースのいずれかの炭水化物ユニットの結合部位として機能し;第二に
、それらは分子間コラーゲン架橋を安定化させる。
【0048】
PLOD1プロコラーゲン-リジン,2-オキソグルタル酸5-ジオキシゲナーゼ1[
Bos taurus(ウシ)]は、遺伝子ID:281409(2017年5月25日
更新)に記載されており、https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/281409(最後アクセス日
2017年7月14日)を参照として援用する。別の例は、配列番号50に記載されてお
り、これはBos taurusリジルオキシダーゼ(LOX)を記載したものである。
この酵素は、その天然形態で使用してもよい。しかしながら、アイソフォーム、オーソロ
グ、変異体、断片及び非ウシ起源由来リジルヒドロキシラーゼもまた、それらが酵母宿主
細胞中でヒドロキシラーゼ活性を保持する限り、使用してもよい。
【0049】
組換えコラーゲン中のプロリン残基の水酸化度のアッセイ。組換えコラーゲン中のプロ
リン残基の水酸化度は、Chan,et al.,BMC Biotechnology
12:51 (2012)(参照として援用する)に記載される液体クロマトグラフィ
ー質量分析法を含む公知の方法によってアッセイしてもよい。
【0050】
組換えコラーゲン中のリジン残基の水酸化度のアッセイ。リジン水酸化及びコラーゲン
の架橋は、Yamauchi,et al.,Methods in Molecula
r Biology,vol.446,pages 95-108.;Humana P
ress(2008)(参照として援用する)に記載されている。組換えコラーゲン中の
リジン残基の水酸化度は、Hausmann,Biochimica et Bioph
ysica Acta(BBA)-Protein Structure 133(3)
:591-593(1967)(参照として援用する)に記載される方法を含む公知の方
法によってアッセイしてもよい。
【0051】
コラーゲンの融点。コラーゲン中のプロリン、リジン、またはプロリン及びリジン残基
の水酸化度は、水酸化アミノ酸残基を既知の含有量で含む対照コラーゲンと比較したヒド
ロゲルなどの水和コラーゲンの融解温度によって評価してもよい。コラーゲンの融解温度
は、25~40℃の範囲であり、通常、より高度に水酸化したコラーゲンはより高い融解
温度を有する。この範囲は、25、26、28、29、30、31、32、33、34、
35、36、37、38、39及び40を含むすべての中間的な部分範囲及び値を含む。
【0052】
コドン改変。このプロセスは、コラーゲンをコードするポリヌクレオチド配列、例えば
、天然に見出されるコラーゲンDNA配列などを改変して、Pichia pastor
isなどの酵母で発現する組換えコラーゲンの量を改変するか、組換え酵母が分泌する組
換えコラーゲンの量を改変するか、組換え酵母中の組換えコラーゲンの発現速度を改変す
るか、または組換えコラーゲン中のリジンまたはプロリン残基の水酸化度を改変すること
を含む。コドン改変はまた、同様の目的のためのヒドロキシラーゼなどの他のタンパク質
に適用するか、または特定の細胞内もしくは細胞外区画にヒドロキシラーゼを標的化、例
えば、組換えコラーゲン分子としてプロリンヒドロキシラーゼを同じ区画、例えば小胞体
に標的化してもよい。
【0053】
コドン選択は、RNA二次構造への影響、転写及び遺伝子発現への影響、翻訳伸長速度
への影響、及び/またはタンパク質フォールディングへの影響に基づいて行ってもよい。
【0054】
コラーゲンまたはヒドロキシラーゼをコードするコドンは、組換えコラーゲンもしくは
ヒドロキシラーゼをコードするmRNAの二次構造を減少もしくは増加させるように改変
してもよく、または冗長コドンを、酵母中のすべてのタンパク質コード配列に基づいて(
例えば、コドンサンプリング)酵母宿主細胞が平均的に最も頻繁に使用するか、酵母中の
すべてのタンパク質コード配列に基づいて(例えば、コドンサンプリング)、酵母宿主細
胞が平均的に最も頻繁に使用しないコドンに、または酵母宿主細胞が豊富に発現するタン
パク質に現れるか、もしくは酵母宿主細胞が分泌するタンパク質に現れる冗長コドンに置
換する(例えば、その遺伝子を、高度に発現する遺伝子または発現宿主からの分泌性タン
パク質をコードする遺伝子「のよう」にさせる高いコドン適合指数に基づくコドン選択)
ように改変してもよい。
【0055】
コドン改変は、タンパク質をコードする配列の全部または一部、例えば、コード配列の
10%の部分の、第一、第二、第三、第四、第五、第六、第七、第八、第九または第十の
部分、またはそれらの組み合わせの少なくとも1つに適用してもよい。これはまた、特定
のアミノ酸をコードするコドン、または冗長コドンによってコードされるアミノ酸のすべ
てではないが一部をコードするコドンに選択的に適用してもよい。例えば、ロイシン及び
フェニルアラニンのコドンのみを上記のようにコドン改変してもよい。2つ以上のコドン
によってコードされるアミノ酸は、コドン表に記載されており、これは当該技術分野で周
知であり、https://en.wikipedia.org/wiki/DNA_codon_table(最終アクセス日2017
年7月13日)を参照として援用する。
【0056】
コドン改変には、https://www.atum.bio/services/genegps(最終アクセス日2017
年7月13日)、https://www.idtdna.com/CodonOpt;https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pm
c/articles/PMC1523223/、またはhttps://en.wikipedia.org/wiki/DNA2.0Algorithm(そ
れぞれを参照として援用する)に記載される、いわゆるコドン最適化法が含まれる。
【0057】
コドン改変はまた、mRNA二次構造の形成を可能にするか、または二次構造を最小化
または排除するようにコドンを選択することを含む。この一例は、リボソーム結合部位も
しくは開始コドンにおける、またはその周辺における強い二次構造に、二次構造を排除、
減少または弱めるようにコドン選択を行うことである。
【0058】
コラーゲン断片。組換えコラーゲン分子には、トロポコラーゲン(三量体コラーゲン)
を形成することができる天然コラーゲン分子のアミノ酸配列の断片、または天然のコラー
ゲンアミノ酸配列(もしくはそのフィブリル形成領域もしくは実質的に[Gly-X-Y
]nを含むセグメント)と少なくとも70、80、90、95、96、97、98、もし
くは99%同一もしくは類似のアミノ酸配列、例えば、登録番号NP_00102921
1.1(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/77404252、最終アクセス日2017年
2月9日)、NP_776945.1(https://_www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/278062
57、最終アクセス日2017年2月9日)及びNP_001070299.1 (https:
//_www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/116003881、最終アクセス日2017年2月9日)(
参照として援用する)に記載されるCol1A1、Col1A2、及びCol3A1のア
ミノ酸配列を有する改変コラーゲン分子もしくはトランケート型コラーゲン分子が含まれ
得る。
【0059】
コラーゲンまたはヒドロキシラーゼをコードする遺伝子を短縮または改変して、配列を
付加または除去してもよい。そのような改変を施して、ポリヌクレオチドまたはベクター
のサイズをカスタマイズするか、発現させたタンパク質を小胞体または他の細胞内もしく
は細胞外区画に標的化するか、またはコードするタンパク質の長さを調節してもよい。例
えば、本発明者らは、プレ配列のみを含む構築物は、多くの場合、プレプロ配列全体を含
む構築物よりも良好に機能することを見出した。同様に、プレ配列をP4HBに融合させ
て、コラーゲンが局在化するERにP4HBを局在化させた。
【0060】
コラーゲン及びヒドロキシラーゼのコード配列の改変。コラーゲンもしくはヒドロキシ
ラーゼ、または他のタンパク質のポリヌクレオチドコード配列を、公知のアミノ酸配列に
少なくとも70、80、90、95、96、97、98、または100%同一または類似
し、未改変分子の本質的な特性、例えば、トロポコラーゲンを形成する能力、またはコラ
ーゲン中のプロリンもしくはリジン残基を水酸化する能力を保持するタンパク質をコード
するように改変してもよい。コラーゲン分子中のグリコシル化部位を、除去または付加し
てもよい。改変を施して、コラーゲン収量または酵母宿主細胞によるその分泌を促進する
か、またはその構造的、機能的もしくは審美的特性を変化させてもよい。改変したコラー
ゲンまたはヒドロキシラーゼコード配列もまた、本明細書に記載のようにコドン改変して
もよい。
【0061】
用語「天然コラーゲン」、「天然ポリペプチド」または「天然ポリヌクレオチド」とは
、例えば、アミノ酸残基の欠失、付加もしくは置換を伴わないか、またはポリヌクレオチ
ドに関しては、例えば、コドン改変による変更のような、ヌクレオチドの欠失、挿入また
は置換による天然配列の改変を伴わない、自然界に見出されるポリペプチドまたはポリヌ
クレオチド配列を指す。本明細書中に記載されるコラーゲン及び酵素のタイプには、それ
らの天然の形態ならびに天然コラーゲンまたは酵素の生物学的活性を保持する改変形態が
含まれる。改変形態のポリヌクレオチド及びポリペプチドは、対応する天然配列に対して
、特定の程度の配列同一性または類似性を有することに基づいて同定してもよい。改変ポ
リヌクレオチド配列はまた、例えば、図1~20に図示するように、本明細書に記載する
ベクターのいずれか、またはこれらのベクターを構成するポリヌクレオチドエレメントの
いずれかと70、80、90、95、96、97、98、99または100%の配列同一
性または類似性を有する配列を有する。
【0062】
BLASTNを使用して、参照ポリヌクレオチド、例えば、コラーゲンをコードするポ
リヌクレオチド、本明細書に記載する1つ以上のヒドロキシラーゼ、またはシグナル、リ
ーダーもしくは分泌ペプチドまたは本明細書に開示する任意の他のタンパク質に対し、少
なくとも70%、75%、80%、85%、87.5%、90%、92.5%、95%、
97.5%、98%、99%または<100%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配
列を同定してもよい。類似性が非常に高い配列を見出すために改変した代表的なBLAS
TN設定は、期待閾値10及びワードサイズ28、クエリー範囲での最大マッチ0、マッ
チ/ミスマッチスコア1/-2、ならびに線形のギャップコストを使用する。低複雑度領
域は、フィルタリングまたはマスクしてもよい。標準ヌクレオチドBLASTのデフォル
ト設定は、https://_blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi?PROGRAM=blastn&PAGE_TYPE=Bla
stSearch&LINK_LOC=blasthome(最終アクセス日2017年7月13日)に記載されると
ともに、これを参照として援用する。
【0063】
BLASTPを用いて、参照アミノ酸配列、例えばコラーゲンのアミノ酸配列に対し、
少なくとも70%、75%、80%、85%、87.5%、90%、92.5%、95%
、97.5%、98%、99%または<100%の配列同一性、または類似性を有するア
ミノ酸配列を、BLOSUM45、BLOSUM62またはBLOSUM80などの類似
性マトリックスを用いて同定することができ、その場合、BLOSUM45は密接に関連
する配列に、BLOSUM62は中範囲の配列に、及びBLOSUM80はより関連性の
低い配列に対して使用することができる。別段の指示がない限り、類似性スコアはBLO
SUM62の使用に基づくものとする。BLASTPを使用する場合、類似性の割合はB
LASTP陽性スコアに基づき、配列同一性の割合はBLASTP同一性スコアに基づく
。BLASTP「同一性」は、同一の高スコア配列ペアにおける全残基の数及び割合を示
し;BLASTP「陽性」は、アラインメントスコアが正の値を有し、互いに類似してい
る残基の数及び割合を示す。本明細書中に開示するアミノ酸配列との、これらの同一性も
しくは類似性の程度、または同一性もしくは類似性の任意の中間の程度を有するアミノ酸
配列は、本開示によって意図され、包含される。代表的なBLASTP設定は、期待閾値
10、ワードサイズ3、マトリックスとしてBLOSUM62、及びギャップペナルティ
11(存在)及び1(エクステンション)ならびに条件付き組成スコアマトリックス補正
を使用する。BLASTPのその他のデフォルト設定については、https://blast.ncbi.n
lm.nih.gov/Blast.cgi?PROGRAM=blastp&PAGE_TYPE=BlastSearch&LINK_LOC=blasthome(最
終アクセス日2017年7月13日)に記載されるとともに、これを利用可能な開示に参
照として援用する。
【0064】
本明細書に開示するポリペプチドに対して用いる用語「その誘導体」、「改変した配列
」または「類似体」とは、生物学的に活性な分子のアミノ酸配列に対し、少なくとも70
、80、90、95、または99%同一であるか類似であるアミノ酸配列を有するポリペ
プチドを指す。いくつかの実施形態では、誘導体は、天然の配列または以前に改変した配
列のアミノ酸配列に対し、少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%
、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%
、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。誘導体は、天然の分子または以前に改変
した分子のアミノ酸配列に対する付加、欠失、置換、またはそれらの組み合わせを含み得
る。例えば、天然のコラーゲン配列に比べて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、1
0またはそれ以上のプロリンまたはリジン残基を、誘導体に組み込むか、または欠失させ
てもよい。そのような選択を行って、組換えトロポコラーゲンまたはフィブリル化コラー
ゲンの弛緩度または緊密度を改変してもよい。
【0065】
誘導体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11~15、16~20、2
1~25、または26~30個のアミノ酸残基の付加、置換、または欠失を有する変異ポ
リペプチドを含み得る。付加または置換には、非天然アミノ酸または修飾アミノ酸の使用
も含まれる。誘導体には、ポリペプチドに対する化学修飾、例えば、システイン残基間の
架橋または水酸化もしくはグリコシル化残基も含まれ得る。誘導体には、本明細書に開示
するコラーゲン及び酵素を含むすべてのポリペプチドの誘導体が含まれる。一般的に、誘
導体は、未修飾の親分子の少なくとも1つの生物学的活性を有し、したがって、酵素誘導
体は、通常、親酵素の酵素活性を有し、コラーゲン誘導体は、親コラーゲンの少なくとも
1つの構造的、化学的または生物学的特性を有するであろう。
【0066】
バイオファブリケートレザー。本明細書に記載する方法によってフィブリル化及び架橋
することができる任意の型のコラーゲン、トランケート型コラーゲン、未修飾または翻訳
後修飾、またはアミノ酸配列改変コラーゲンを用いて、バイオファブリケート素材または
バイオファブリケートレザーを製造することができる。バイオファブリケートレザーは、
実質的に均質なコラーゲン、例えばI型またはIII型コラーゲンのみを含有してもよく
、または2、3、4またはそれ以上の異なる種類のコラーゲンの混合物を含有してもよい
。いくつかの実施形態では、組換えコラーゲン、例えばバイオファブリケートレザーの成
分は、そのリジン、プロリン、またはリジン及びプロリン残基が水酸化されていない。他
の実施形態では、組換えコラーゲン中のリジン、プロリン、またはリジン及びプロリン残
基の少なくとも1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70
、80、90、95%または100%(または部分範囲の任意の中間値)が水酸化される
【0067】
酵母株。本発明は、コラーゲンを産生するために酵母を利用する。好適な酵母としては
、Pichia、Candida、Komatagaella、Hansenula、S
accharomyces、Cryptococcus属及びそれらの組み合わせの酵母
が挙げられるが、これらに限定されない。酵母は、改変または交雑してもよい。交雑酵母
は、同じ種の異なる株、同じ属の異なる種、または異なる属の株の混合育種によって産生
される。本発明に従って使用し得るいくつかの酵母株として、Pichia pasto
ris、Pichia membranifaciens、Pichia desert
icola、Pichia cephalocereana、Pichia eremo
phila、Pichia myanmarensis、Pichia anomala
、Pichia nakasei、Pichia siamensis、Pichia
heedii、Pichia barkeri、Pichia norvegensis
、Pichia thermomethanolica、Pichia stipite
s、Pichia subpelliculosa、Pichia exigua、Pi
chia occidentalis、及びPichia cactophilaが挙げ
られる。
【0068】
一実施形態では、本発明は、コラーゲン及び/またはヒドロキシラーゼ(複数可)をコ
ードするコドン改変ポリヌクレオチドを発現するように改変した(engineered
)Pichia pastoris株を対象とする。有用なPichia pastor
is宿主株として、BG10(野生型)(PPS-9010株);PPS-9010のメ
タノール資化遅延型誘導体であるBG11,aox1Δ(MutS)(PPS-9011
株)、及びプロテアーゼ欠損株であるBG16,pep4Δ,prb4Δ(PPS-90
16株)が挙げられる。これらの株は公的に入手可能であり、https://www._atum.bio/pr
oducts/cell-strainsのATUMから入手してもよい。
【0069】
酵母のポリペプチド分泌配列。いくつかの実施形態では、酵母宿主細胞によってコード
されるポリペプチドを、酵母からのその分泌を促進するポリペプチド配列に融合する。例
えば、ベクターは、分泌ペプチドをコードする配列に融合したコラーゲンのコード配列を
含むキメラ遺伝子をコードし得る。この目的のために使用し得る分泌配列として、Sac
charomyces α接合因子プレプロ配列、Saccharomyces α接合
因子プレ配列、PHO1分泌シグナル、Aspergillus niger由来α-ア
ミラーゼシグナル配列、Aspergillus awamori由来グルコアミラーゼ
シグナル配列、Homo sapiens由来血清アルブミンシグナル配列、Kluyv
eromcyes maxianus由来イヌリナーゼシグナル配列、Saccharo
myces cerevisiae由来インベルターゼシグナル配列、Saccharo
myces cerevisiae由来キラータンパク質シグナル配列及びGallus
gallus由来リゾチームシグナル配列が挙げられる。当該分野で公知の他の分泌配
列もまた、使用してもよい。
【0070】
酵母プロモーター及びターミネーター。いくつかの実施形態では、コラーゲンまたはヒ
ドロキシラーゼをコードするmRNAのプロモーター転写用のベクターに、以下の1つ以
上の酵母プロモーターを組み込んでもよい。プロモーターは、当該技術分野で公知であり
、pAOX1、pDas1、pDas2、pPMP20、pCAT、pDF、pGAP、
pFDH1、pFLD1、pTAL1、pFBA2、pAOX2、pRKI1、pRPE
2、pPEX5、pDAK1、pFGH1、pADH2、pTPI1、pFBP1、pT
AL1、pPFK1、pGPM1、及びpGCW14が挙げられる。
【0071】
いくつかの実施形態では、コラーゲンまたはヒドロキシラーゼをコードするmRNAの
転写を終結させるために、酵母ターミネーター配列をベクターに組み込む。ターミネータ
ーとして、AOX1 TT、Das1 TT、Das2 TT、AOD TT、PMP
TT、Cat1 TT、TPI TT、FDH1 TT、TEF1 TT、FLD1 T
T、GCW14 TT、FBA2 TT、ADH2 TT、FBP1 TT、及びGAP
TTが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
ペプシン以外のペプチダーゼ。ペプシンを使用して、N末端及びC末端配列を除去する
ことによって、コラーゲンからトロポコラーゲンへプロセシングしてもよい。コラゲナー
ゼ、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、フィカイン、及びブロメラインを含むがこ
れらに限定されない他のプロテアーゼも、この目的のために使用してもよい。本明細書中
で使用する場合、「安定なコラーゲン」とは、特定の濃度のペプシンまたは他のプロテア
ーゼへの曝露後に、コラーゲンの初期濃度の少なくとも20、30、40、50、60、
75、80、85、90、95または100%(または任意の中間値もしくは部分範囲)
が依然として存在することを意味する。好ましくは、安定なコラーゲンの少なくとも75
%が、同じ条件下で同じ時間、処理した不安定なコラーゲンに比べて、ペプシンまたは別
のプロテアーゼによる処理後に残存する。翻訳後修飾の前に、コラーゲンは水酸化されて
おらず、高濃度ペプシン(例えば、ペプシン:タンパク質比が1:200以上)の存在下
で分解する。
【0073】
翻訳後修飾した後、コラーゲンをペプシンまたは別のプロテアーゼと接触させて、コラ
ーゲンのN末端及びC末端プロペプチドを切断し、コラーゲンをフィブリル化することが
できる。水酸化コラーゲンは、非水酸化コラーゲンに比べてより良好な熱安定性を有し、
高濃度ペプシン、例えばペプシン:総タンパク質比1:25、1:20、1:15、1:
10、1:5~1:1(または任意の中間値)のペプシンによる消化に耐性である。した
がって、組換えコラーゲンの早発性のタンパク質分解を避けるために、水酸化コラーゲン
を提供することが有用である。
【0074】
別の発現系。コラーゲンはPichia pastoris以外の他の種類の酵母細胞
内で発現させることができ、例えば、別の酵母、メチロトローフ酵母または他の生物内で
発現させてもよい。Saccharomyces cerevisiaeは、多数の発現
ベクターのいずれかとともに使用することができる。一般的に使用される発現ベクターは
、外来遺伝子を効率的に転写するために、酵母内での増殖のための2P複製起点及びE.
coliのCol E1起点を有するシャトルベクターである。そのような2Pプラスミ
ドに基づくベクターの一般的な例はpWYG4であり、このベクターは、2P ORI-
STBエレメント、GAL1-10プロモーター、及び2P D遺伝子ターミネーターを
有する。このベクターでは、発現させるポリペプチドの遺伝子を挿入するとともにATG
開始コドンを提供するためにNcolクローニング部位を用いる。
【0075】
別の発現ベクターはpWYG7Lであり、このベクターは、インタクトな2αORI、
STB、REP1及びREP2、ならびにGAL1-10プロモーターを有し、FLPタ
ーミネーターを使用する。このベクターでは、コードされるポリヌクレオチドを、その5
’末端をBamHIまたはNcol部位に合わせてポリリンカーに挿入する。細胞壁を除
去してカルシウム及びポリエチレングリコールによる処理の際にDNAを取り込むスフェ
ロプラストを生成するか、またはインタクトな細胞をリチウムイオンで処理することによ
り、挿入されたポリヌクレオチドを含むベクターをS.cerevisiaeに形質転換
する。
【0076】
あるいは、電気穿孔法によってDNAを導入することができる。例えば、LEU2、T
RP1、URA3、HIS3、またはLEU2-Dなどの選択マーカー遺伝子とともに、
ロイシン、トリプトファン、ウラシル、またはヒスチジンに対して栄養要求性である宿主
酵母細胞を用いて、形質転換体を選択することができる。
【0077】
Pichia pastorisなどのメチロトローフ酵母には多数のメタノール応答
性遺伝子が存在し、それぞれの発現は、プロモーターとも呼ばれるメタノール応答調節領
域によって調節される。そのようなメタノール応答性プロモーターのいずれも、本発明の
実施に使用するのに適している。特定の調節領域の例として、AOX1プロモーター、A
OX2プロモーター、ジヒドロキシアセトンシンターゼ(DAS)、P40プロモーター
、及びP.pastoris由来のカタラーゼ遺伝子のプロモーターなどが挙げられる。
【0078】
メチロトローフ酵母Hansenula polymorphaもまた、使用してもよ
い。メタノールでの増殖は、メタノール代謝の重要な酵素、例えばMOX(メタノールオ
キシダーゼ)、DAS(ジヒドロキシアセトンシンターゼ)、及びFMHD(ギ酸脱水素
酵素)の誘発をもたらす。これらの酵素は、全細胞タンパク質の最大30~40%を構成
し得る。MOX、DAS及びFMDH産生をコードする遺伝子は、メタノール上での増殖
によって誘導され、グルコース上での増殖によって抑制される強力なプロモーターによっ
て調節される。これらのプロモーターのいずれかまたは3つすべてを用いて、H.pol
ymorphaにおいて異種遺伝子を高レベルに発現させてもよい。したがって、一態様
では、動物コラーゲンまたはその断片もしくは変異体をコードするポリヌクレオチドを、
誘導性H.polymorphaプロモーターの調節下で発現ベクターにクローニングす
る。産物の分泌を所望する場合、そのポリヌクレオチドに、酵母内での分泌用シグナル配
列をコードするポリヌクレオチドをインフレームで融合する。さらなる実施形態では、発
現ベクターに、好ましくは、栄養要求性マーカー遺伝子、例えばURA3またはLEU2
を含ませ、これを用いて栄養要求性宿主の欠損を補完してもよい。
【0079】
次いで、発現ベクターを使用して、当業者に公知の技術を用いてH.polymorp
ha宿主細胞を形質転換する。H.polymorpha形質転換の有用な特徴は、最大
100コピーの発現ベクターがゲノムへ自発的に組み込まれることである。ほとんどの場
合、組み込まれたポリヌクレオチドは、ヘッドトゥーテール配置を示す多量体を形成する
。組み込まれた外来ポリヌクレオチドは、非選択的条件下でさえ、いくつかの組換え株に
おいて有糸分裂的に安定であることが示されている。この高コピー数での組み込み現象は
、このシステムの高い生産能力にさらに寄与するものである。
【0080】
外来DNAを酵母ゲノムに挿入するか、またはエピソームを維持してコラーゲンを産生
する。コラーゲンのDNA配列を、ベクターを介して酵母に導入する。外来DNAは、任
意の非酵母宿主DNAであり、例えば、哺乳類、Caenorhabditis ele
gans及び細菌由来のものが挙げられるが、これらに限定されない。酵母内でのコラー
ゲン産生に適切な哺乳類DNAとして、ウシ、ウマ、ブタ、カンガルー、ゾウ、サイ、カ
バ、クジラ、イルカ、キリン、シマウマ、ラマ、アルパカ、ヤギ、及びヒツジ(子ヒツジ
)が挙げられるが、これらに限定されない。コラーゲン産生のための他のDNAとして、
爬虫類(例えば、ワニ、クロコダイル、カメ、イグアナ、トカゲ、ヘビ)、鳥類(例えば
、ダチョウ、エミュー、モア)、恐竜、両生類、及び魚類(例えば、ティラピア、バス、
サケ、マス、サメ、ウナギコラーゲン)及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0081】
DNAをベクター上に挿入するが、適切なベクターとして、pHTX1-BiDi-P
4HA-Pre-P4HB hygro、pHTX1-BiDi-P4HA-PHO1-
P4HB hygro、pGCW14-pGAP1-BiDi-P4HA-Prepro
-P4HB G418、pGCW14-pGAP1-BiDi-P4HA-PHO1-P
4HB Hygro、pDF-Col3A1 改変ゼオシン、pCAT-Col3A1
改変ゼオシン、pDF-Col3A1 改変ゼオシン及びAOX1ランディングパッド、
pHTX1-BiDi-P4HA-Pre-Pro-P4HB hygroが挙げられる
が、これらに限定されない。ベクターは、通常、DNAを直鎖状化するための少なくとも
1つの制限酵素部位を含んでいた。
【0082】
選択プロモーターは、組換えタンパク質の産生を向上させる場合があり、これをコラー
ゲンまたはヒドロキシレートをコードする配列を有するベクターに含めてもよい。本発明
での使用に適したプロモーターとして、AOX1メタノール誘導プロモーター、pDF抑
制解除プロモーター、pCAT抑制解除プロモーター、Das1-Das2メタノール誘
導性二方向性プロモーター、pHTX1構成的二方向性プロモーター、pGCW14-p
GAP1構成的二方向性プロモーター及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに
限定されない。適切なメタノール誘導性プロモーターとして、AOX2、Das1、Da
s2、pDF、pCAT、pPMP20、pFDH1、pFLD1、pTAL2、pFB
A2、pPEX5、pDAK1、pFGH1、pRKI1、pREP2及びそれらの組み
合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
オールインワンベクターを含む本発明によるベクターでは、酵母に組み込んだベクター
中で利用する各オープンリーディングフレームの末端にターミネーターを配置してもよい
。ターミネーターのDNA配列をベクターに挿入する。ベクターを複製するためには、複
製を開始するための複製起点が必要である。複製起点のDNA配列をベクターに挿入する
。酵母ゲノムとの相同性を有する1つ以上のDNA配列をベクターに組み込んで、酵母ゲ
ノムへの組換え及び組み込みを促進するか、または酵母細胞に形質転換したベクターを安
定化することができる。
【0084】
本発明によるベクターはまた、通常、形質転換に成功した酵母細胞を選択するために使
用する少なくとも1つの選択マーカーを含む。マーカーは、抗生物質耐性に関連している
場合があり、マーカーはまた、特定のアミノ酸(栄養要求性マーカー)の存在下または非
存在下での増殖能力に関連している場合がある。適切な栄養要求性マーカーには、ADE
、HIS、URA、LEU、LYS、TRP及びそれらの組み合わせが含まれていたが、
これらに限定されない。組換えベクターを含む酵母細胞の選択を提供するために、選択マ
ーカー用の少なくとも1つのDNA配列をベクターに組み込む。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態では、組換え酵母で発現するコラーゲンもしくはコラーゲ
ン様タンパク質中のリジン及びプロリンなどのアミノ酸残基は、水酸化されていない場合
があるか、または対応する天然もしくは未修飾コラーゲンもしくはコラーゲン様タンパク
質に比べて水酸化度が低いか、もしくは高い場合がある。他の実施形態では、コラーゲン
またはコラーゲン様タンパク質のアミノ酸残基は、グリコシル化されていない場合がある
か、または対応する天然もしくは未修飾コラーゲンもしくはコラーゲン様タンパク質に比
べてグリコシル化度が低いか、もしくは高い場合がある。
【0086】
水酸化コラーゲンは、非水酸化または過少水酸化コラーゲン(<32℃)よりも高い融
解温度(>37℃)を有し、また、非水酸化または過少水酸化コラーゲンに比べて良好に
フィブリル化し、素材としての使用に関してより強力でより耐久性の高い構造を形成する
。コラーゲン調製物の融解温度を利用してその水酸化度を評価してもよく、融解温度は、
例えば、30~40℃の範囲、ならびにすべての中間値、例えば、30、31、32、3
3、34、35、36、37、38、39、及び40℃であり得る。過少水酸化コラーゲ
ンは、靴やバッグなどの高耐久性の物品には適さないゼリーまたはゼラチン様素材のみを
形成し得るが、より軟質性の、またはより吸収性の製品に配合することができる。
【0087】
コラーゲン組成物中のコラーゲンは均質であってもよく、100%ウシI型コラーゲン
または100%III型ウシコラーゲンなどの単一タイプのコラーゲン分子を含有しても
よく、または異なる種類のコラーゲン分子もしくはコラーゲン様分子、例えば、ウシI型
及びIII型分子の混合物を含有してもよい。そのような混合物は、個々のコラーゲンま
たはコラーゲン様タンパク質の成分の>0%、10、20、30、40、50、60、7
0、80、90、95、99または<100%(または任意の中間値もしくは部分範囲)
を含み得る。この範囲にはすべての中間値が含まれる。例えば、コラーゲン組成物は、3
0%のI型コラーゲンと70%のIII型コラーゲンを含有してもよく、または33.3
%のI型コラーゲン、33.3%のII型コラーゲン、及び33.3%のIII型コラー
ゲンを含有してもよく、その場合、コラーゲンの割合は、組成物中のコラーゲンの全質量
またはコラーゲン分子の分子の割合に基づく。
【0088】
上記の改変した(engineered)酵母細胞を利用して、コラーゲンを産生する
ことができる。そのために、細胞を発酵室内の培地に入れ、12時間~1週間の範囲の期
間、調節されたpH条件下で溶存酸素及び炭素源を供給する。適切な培地として、限定す
るものではないが、緩衝グリセロール複合培地(BMGY)、緩衝メタノール複合培地(
BMMY)、及び酵母抽出ペプトンデキストロース(YPD)が挙げられる。酵母細胞内
でコラーゲンを産生することから、コラーゲンを単離するために、分泌性酵母株を使用す
るか、酵母細胞を溶解してコラーゲンを遊離させる必要がある。その後、遠心分離、沈殿
、濾過、クロマトグラフィーなどの従来技術によってコラーゲンを精製してもよい。
【0089】
別の実施形態では、本発明は、水酸化及び非水酸化コラーゲンの製造に有用な酵母宿主
中のキメラDNA配列を提供する。キメラDNA配列は、未改変DNA配列と改変DNA
配列を組み合わせることによって生成する。様々な塩基対の位置で未改変DNA配列を切
断してもよい。改変DNA配列もまた、対応する塩基対の位置で切断してもよい。未改変
の切断と修飾の切断を、前方から後方へ、及び後方から前方へ組み合わせてもよい。キメ
ラDNA配列を、プロモーター、ベクター、ターミネーター及び上記の選択マーカーと組
み合わせて宿主に挿入し、水酸化及び非水酸化コラーゲンを産生することができる酵母を
生成してもよい。
【0090】
最適化及び非最適化DNAの割合を、配列の全長に基づいて計算してもよい。キメラ株
は、N末端での最適化DNAとC末端での非最適化DNAとの組み合わせであってもよい
。最適化DNAの割合は、1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、
90~99%の範囲(または任意の中間値もしくは部分範囲)であってもよく、例えば、
10~40%及び60~90%の範囲であってもよい。あるいは、キメラ株は、N末端の
非最適化DNAとC末端の最適化DNAとの組み合わせであってもよい。非最適化DNA
の割合は、1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90~99%の
範囲(または任意の中間値もしくは部分範囲)であってもよく、例えば、10~40%及
び60~90%の範囲であってもよい。例えば、1331位で切断した1486塩基対を
有するDNA配列は、0~1331の最適化DNA及び1332~1486の非最適化D
NAを提供し、そのキメラは90%が最適化されている。最適化されたポリヌクレオチド
配列は、コラーゲン分子内のC末端、N末端、または他の場所でコラーゲンのセグメント
をコードしてもよく、例えば、コラーゲン分子の最初の10、20、30、40、50、
60、70、80、もしくは90%を、またはコラーゲン分子の最後の10、20、30
、40、50、60、70、80、もしくは90%をコードしてもよい。
【0091】
あるいは、キメラ株は、ともに融合した最適化及び非最適化DNAの2つ、3つまたは
4つ以上のセクションから構成されてもよい。例えば、1,500塩基対を有するDNA
配列は、0~500までの最適化DNAセクション、501~1,000までの非最適化
DNAセクション、及び1001~1500までの最適化DNAセクションを有していて
もよい。
【0092】
本明細書に開示するコラーゲンにより、バイオファブリケートレザーを製造することが
できる。コラーゲンをバイオファブリケートレザーに変換する方法は、同時係属中の特許
出願である米国特許出願第15/433566号、第15/433650号、第15/4
33632号、第15/433693号、第15/433777号、第15/43367
5号、第15/433676号及び第15/433877号に記載されており、それらの
開示内容は参照として本明細書に援用される。
【0093】
発明の実施形態
本発明の非限定的な実施形態として、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
ウシコラーゲン、例えばI型もしくはIII型コラーゲン、またはコラーゲン変異体も
しくは誘導体をコードするポリヌクレオチド、ならびにコードされたコラーゲン中のプロ
リン、リジン、またはリジン及びプロリン残基を水酸化する少なくとも1つの酵素をコー
ドするポリヌクレオチド。いくつかの実施形態では、天然コラーゲンもしくはヒドロキシ
ラーゼポリヌクレオチド配列の全部もしくは一部について、ポリヌクレオチドをコドン改
変するか、または酵母プロモーター配列などの発現調節エレメントを組み込んで宿主酵母
細胞内でのコラーゲンまたはヒドロキシラーゼの発現を促進する。酵母内で発現する場合
、改変したポリヌクレオチドは、同一の条件下で発現させた同じコラーゲン配列をコード
する未改変ポリペプチドに比べて、コラーゲンの発現を10、20、25、30、35、
40、45、50、60、70、80、90、100または>100重量%高め得る。
【0094】
いくつかの実施形態では、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13
、14、15倍またはそれ以上のコラーゲンまたはヒドロキシラーゼタンパク質の発現を
達成し得る。いくつかの実施形態では、III型コラーゲンまたはコラーゲン変異体を発
現させ、その場合、変異体は、配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも70、75、80
、85、90、95、96、97、98、99または100%同一のアミノ酸配列を有す
る。他の実施形態では、ウシコラーゲンは、I型ウシコラーゲン、またはα1(I)鎖及
びα2(I)鎖の両方をコードするか、または天然のI型コラーゲン鎖と少なくとも70
、75、80、85、90、95、96、97、98、99または100%同一である1
つ以上のコラーゲン鎖をコードするコラーゲン変異体である。
【0095】
上記のウシコラーゲンをコードするポリヌクレオチドは、プロリル4-ヒドロキシラー
ゼのP4HA及びP4HBサブユニットをコードするポリヌクレオチド配列もしくはセグ
メント、またはそれらと少なくとも70、75、80、85、90、95、96、97、
98、99または100%同一である酵素をコードするポリヌクレオチド配列を含み得る
。他の実施形態では、ポリヌクレオチドは、プロリル-3-ヒドロキシラーゼ、リジルヒ
ドロキシラーゼ、及び/またはリジルオキシダーゼをコードするポリヌクレオチド配列も
しくはセグメント、またはそれらと少なくとも70、75、80、85、90、95、9
6、97、98、99または100%同一である酵素をコードするポリヌクレオチド配列
を含み得る。例えば、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号2のIII型ウシコラーゲ
ンアミノ酸配列と少なくとも75~99%同一であるポリペプチド、及びそれぞれ配列番
号54及び52と少なくとも75~99%同一であるP4HA及びP4HBサブユニット
を有するヒドロキシラーゼをコードするセグメントをコードし得る。
【0096】
本発明のポリヌクレオチド配列は、酵母で機能するポリペプチド分泌配列をさらにコー
ドしてもよく、それは、I型コラーゲン、III型コラーゲンまたは本明細書に記載の他
のいくつかのコラーゲンであってもよいコラーゲンをコードするポリヌクレオチド配列に
、通常、隣接して配置される。
【0097】
本発明のポリヌクレオチド配列に、さらに、コラーゲン、またはヒドロキシラーゼなど
の酵素の発現を促進または調節するプロモーターまたは他の配列を含めてもよく、例えば
、AOX1メタノール誘導性プロモーター、DN pDF抑制解除プロモーター、pCA
T抑制解除プロモーター、Das1-Das2メタノール誘導性二方向性プロモーター、
pHTX1構成的二方向性プロモーター、pGCW14-pGAP1構成的二方向性プロ
モーター、またはそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含めてもよい。
【0098】
本発明のポリヌクレオチドにはまた、配列番号23及び24によってそれぞれコードさ
れるようなαファクタープレ配列またはαファクタープレプロ配列などの他の要素を含め
てもよい。いくつかの実施形態では、そのような配列を、酵素、例えば、P4HA(配列
番号54)もしくはP4HB(配列番号52)などの本明細書に記載するヒドロキシラー
ゼまたは他の酵素を発現するポリヌクレオチド配列か、またはそれらと少なくとも75、
80、90、もしくは95~100%同一である変異型酵素に作動可能に連結してもよい
【0099】
上記に開示したポリヌクレオチド配列を有するベクターは、本発明のさらなる実施形態
を表す。これらには、本明細書に開示する任意のポリヌクレオチド配列、例えば、コラー
ゲン、トランケート型コラーゲン、コラーゲン変異体、及び酵素、例えば、本明細書に記
載するヒドロキシラーゼまたは他の酵素をコードするキメラポリヌクレオチド配列を有す
るベクターが含まれる。いくつかの実施形態では、コラーゲンをコードする配列及びヒド
ロキシラーゼまたは他の酵素をコードする配列は、同じベクター上に存在し;他の実施形
態では異なるベクター上に存在し得る。
【0100】
本発明はまた、本明細書に記載するベクターを保有する宿主細胞、例えば酵母宿主細胞
を企図する。いくつかの実施形態では、これらのベクターを、非酵母細胞、例えば細菌宿
主細胞などで産生し、その後に、コラーゲンまたは水酸化コラーゲンを発現させる酵母宿
主細胞、例えばPichia pastorus宿主細胞に形質転換してもよい。
【0101】
本発明の別の態様は、プロリン残基の1、2、3、4、5、6、7、8、9、または1
0%未満が水酸化された組換えコラーゲンの製造方法に関する。本方法は、コラーゲンを
産生するのに適した時間及び条件下で、Pichia pastorusまたは他の適切
な酵母宿主細胞(または真核生物宿主細胞)を培養し、コラーゲンを回収することを含み
;前記ベクターは、プロリン残基の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10%以下を
水酸化する量もしくは形態のプロリル-4-ヒドロキシラーゼを発現するように構成され
ている。本発明の別の実施形態は、プロリン残基の1、2、3、4、5、6、7、8、9
、10%未満が水酸化された組換えIII型コラーゲンの製造方法であって、III型コ
ラーゲンを産生するのに適した時間及び条件下で、Pichia pastorusまた
は他の適切な酵母宿主細胞を培養し、コラーゲンを回収することを含み;前記ベクターは
、プロリン残基の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10%以下を水酸化する量のプ
ロリル-4-ヒドロキシラーゼを発現するように構成される。コラーゲン及びヒドロキシ
ラーゼの両方をコードするオールインワンベクターは、例えば、ヒドロキシラーゼに誘導
性または温度感受性プロモーターを用いることによって機能性ヒドロキシラーゼがほとん
どまたはまったく発現しないように構成してもよい。
【0102】
本発明のさらなる実施形態は、本明細書に記載するベクターを保有するPichia
pastorusまたは他の適切な酵母宿主細胞を、コラーゲンを産生するのに適した時
間及び条件下で培養し、コラーゲンを回収することによって、プロリン残基の>10、1
5、20、25、30、40、50、60、70、80、90、95または>95%を水
酸化した組換えコラーゲンを製造する方法であり;前記ベクターは、コラーゲン中のプロ
リン残基の>10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90もし
くは>90%またはそれ以上を水酸化する量または形態のプロリル-4-ヒドロキシラー
ゼを発現するように構成される。培養時間及び条件ならびにヒドロキシラーゼの量または
活性を用いて、水酸化の量を調節してもよい。本発明の別の実施形態は、プロリン残基の
50、60、70、80、90、95、または>95%を水酸化した組換えIII型コラ
ーゲンの製造方法であって、本発明によるベクターを保有するPichia pasto
rus宿主細胞を、III型コラーゲンを産生するのに適した時間及び条件下で培養し、
III型コラーゲンを回収することを含み;前記ベクターは、プロリン残基の50、60
、70、80、90もしくは>90%またはそれ以上を水酸化する量または形態のプロリ
ル-4-ヒドロキシラーゼを発現するように構成される。培養時間及び条件ならびにヒド
ロキシラーゼの量または活性を用いて、水酸化の量を調節してもよい。
【0103】
本発明の別の実施形態は、プロリン残基の50、60、70、80、90、95もしく
は>95%またはそれ以上を水酸化した組換えコラーゲンの製造方法に関し、本方法は、
本発明のベクターを保有するPichia pastorusまたは他の適切な酵母宿主
細胞を、コラーゲンを産生するのに適した時間及び条件下で培養し、コラーゲンを回収す
ることを含み;前記ベクターは、プロリン残基の50、60、70、80、90、95、
もしくは>95%またはそれ以上を水酸化する量のプロリル-4-ヒドロキシラーゼを発
現するように構成される。培養時間及び条件ならびにヒドロキシラーゼの量または活性を
用いて、水酸化の量を調節してもよい。
【0104】
本発明の別の実施形態は、プロリン残基の50、60、70、80、90、95、また
は>95%を水酸化した組換え型III型コラーゲンの製造方法に関し、本方法は、本発
明のベクターを保有するPichia pastorusまたは他の酵母宿主細胞を、コ
ラーゲンを産生するのに適した時間及び条件下で培養し、コラーゲンを回収することを含
み;前記ベクターは、プロリン残基の50、60、70、80、90、95、または>9
5%を水酸化する量のプロリル-4-ヒドロキシラーゼを発現するように構成される。培
養時間及び条件ならびにヒドロキシラーゼの量または活性を用いて、水酸化の量を調節し
てもよい。
【0105】
本発明の別の実施形態は、プロリン残基の75、80、90、95、または>95%を
水酸化した組換えコラーゲンの製造方法に関し、本発明のベクターを保有するPichi
a pastorusまたは他の酵母宿主細胞を、コラーゲンを産生するのに適した時間
及び条件下で培養し、コラーゲンを回収することを含み;前記ベクターは、プロリン残基
の75、80、90、95、または>95%を水酸化する量のプロリル-4-ヒドロキシ
ラーゼを発現するように構成される。
【0106】
本発明のさらなる実施形態は、プロリン残基の75、80、90、95、または>95
%を水酸化した組換えIII型コラーゲンの製造方法であって、本方法は、本発明のベク
ターを保有するPichia pastorusまたは他の酵母宿主細胞を、コラーゲン
を産生するのに適した時間及び条件下で培養し、コラーゲンを回収することを含み;前記
ベクターは、プロリン残基の75、80、90、95、もしくは>95%またはそれ以上
を水酸化する量のプロリル-4-ヒドロキシラーゼを発現するように構成される。
【0107】
本発明の別の実施形態は、本明細書に記載の方法のいずれか1つによって作製した組換
えコラーゲンである。そのような組換えコラーゲンは、プロリンまたはリジン残基のいず
れも水酸化されていなくてもよく、またはプロリン残基、リジン残基、もしくはプロリン
及びリジン残基の>0、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95
、もしくは100%が水酸化されていてもよい。
【0108】
本発明のさらなる実施形態は、本明細書に記載する組換えコラーゲンを含むか、または
本明細書に記載する方法によって作製する、バイオファブリケートレザーまたは他の素材
である。
【0109】
別の実施形態では、本発明は、水酸化及び非水酸化コラーゲンの製造に有用な酵母宿主
細胞中のキメラDNA配列を提供する。キメラDNA配列は、未改変DNA配列と改変D
NA配列を組み合わせることによって生成する。様々な塩基対の位置で未改変DNA配列
を切断してもよい。改変DNA配列もまた、対応する塩基対の位置で切断してもよい。未
改変の切断と修飾の切断を、前方から後方へ、及び後方から前方へ組み合わせてもよい。
キメラDNA配列を、プロモーター、ベクター、ターミネーター及び上記の選択マーカー
と組み合わせて宿主に挿入し、水酸化及び非水酸化コラーゲンを産生することができる酵
母を生成してもよい。
【0110】
本発明の他の実施形態には、以下が含まれるが、これらに限定されない:
非水酸化コラーゲンを産生するための遺伝子改変酵母株であって、(i)酵母株;及び
(ii)コラーゲンのDNA配列;コラーゲンプロモーターのDNA配列;コラーゲンタ
ーミネーターのDNA配列;選択マーカーのDNA配列、選択マーカー用のプロモーター
のDNA配列;選択マーカー用のターミネーターのDNA配列;細菌用のもの、及び酵母
用のものから選択される複製起点のDNA配列;及び酵母ゲノムに対して相同性を有する
DNA配列を有するベクターを含み、ベクターは酵母株に挿入されている、前記遺伝子改
変酵母株。本実施形態では、酵母株は、Candida、Komatagaella、H
ansenula、Saccharomyces、Cryptococcus属及びそれ
らの組み合わせ由来のものからなる群から選択してもよい。上記の実施形態では、ベクタ
ーは、ウシ、ブタ、カンガルー、ワニ、クロコダイル、ゾウ、キリン、シマウマ、ラマ、
アルパカ、子ヒツジ、恐竜コラーゲン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され
るコラーゲンのDNA配列を有し得る。本実施形態では、コラーゲンのDNA配列は、天
然コラーゲンDNA、改変(engineered)コラーゲンDNA、及びコドン改変
コラーゲンDNAから選択してもよい。
【0111】
本実施形態では、プロモーターのDNA配列は、AOX1メタノール誘導性プロモータ
ーのDNA、pDF抑制解除プロモーターのDNA、pCAT抑制解除プロモーターのD
NA、Das1-Das2メタノール誘導性二方向性プロモーターのDNA、pHTX1
構成的二方向性プロモーターのDNA、pGCW14-pGAP1構成的二方向性プロモ
ーターのDNA及びそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。本実施形
態における選択マーカーは、抗生物質耐性用のDNA及び栄養要求性マーカー用のDNA
からなる群から選択してもよく、例えば、抗生物質耐性は、ハイグロマイシン、ゼオシン
、ジェネテシン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される抗生物質に対しての耐
性である。
【0112】
上記の実施形態に記載する酵母株に、電気穿孔法、化学的形質転換、及び接合からなる
群から選択される方法によって酵母に挿入したベクターを保有させてもよい。
【0113】
本発明の別の実施形態は、非水酸化コラーゲンの製造方法に関し、本方法は、(i)上
記の実施形態に記載する酵母株を提供し;(ii)その株を、コラーゲンを産生するのに
十分な時間、培地中で増殖させることを含む。本方法では、酵母を、Candida、K
omatagaella、Hansenula、Saccharomyces、Cryp
tococcus属及びそれらの組み合わせ由来のものからなる群から選択してもよく、
及び/または培地を、緩衝グリセロール複合培地(BMGY)、緩衝メタノール複合培地
(BMMY)、及び酵母抽出ペプトンデキストロース(YPD)からなる群から選択して
もよい。酵母株を、24、48、もしくは72の範囲または任意の中間時間の期間、培養
または育成してもよい。本方法では、酵母株は、ウシ、ブタ、カンガルー、ワニ、クロコ
ダイル、ゾウ、キリン、シマウマ、ラマ、アルパカ、子ヒツジ、恐竜コラーゲン及びそれ
らの組み合わせからなる群から選択されるコラーゲンのDNA配列を発現し得る。本方法
では、酵母株におけるプロモーターのDNA配列は、pHTX1構成的二方向性プロモー
ターのDNA及びpGCW14-pGAP1構成的二方向性プロモーターのDNAからな
る群から選択してもよく;及び/または選択マーカーは、抗生物質耐性DNA用のDNA
及び栄養要求性マーカー用のDNAからなる群から選択してもよい。
【0114】
本発明の別の実施形態は、水酸化コラーゲンを産生する遺伝子改変酵母株であって、(
i)酵母株及び(ii)コラーゲンのDNA配列;コラーゲンプロモーターのDNA配列
;ターミネーターのDNA配列;選択マーカーのDNA配列、選択マーカーのプロモータ
ーのDNA配列;選択マーカーのターミネーターのDNA配列;細菌及び/または酵母の
複製起点のDNA配列;酵母ゲノムと相同性を有するDNA配列を有するベクターであっ
て;ベクターは酵母株に挿入されている、前記ベクター;ならびに(iii)P4HA1
のDNA配列;P4HBのDNA配列;及びプロモーターの少なくとも1つのDNA配列
を有する第二のベクターを有し、ベクターは酵母株に挿入されている、前記第二のベクタ
ーを含む、前記遺伝子改変酵母株である。本実施形態では、酵母株を、Candida、
Komatagaella、Hansenula、Saccharomyces、Cry
ptococcus属及びそれらの組み合わせ由来のものからなる群から選択してもよく
;及び/または酵母株は、ウシ、ブタ、カンガルー、ワニ、クロコダイル、ゾウ、キリン
、シマウマ、ラマ、アルパカ、子ヒツジ、恐竜コラーゲン及びそれらの組み合わせからな
る群から選択されるコラーゲンのDNA配列を発現し得る。本方法のいくつかの実施形態
では、コラーゲンのDNA配列は、天然のコラーゲンDNA、改変(engineere
d)コラーゲンDNA及び改変(modified)コラーゲンDNAから選択され;及
び/またはプロモーターのDNA配列は、AOX1メタノール誘導性プロモーターのDN
A、pDF抑制解除プロモーターのDNA、pCAT抑制解除プロモーターのDNA、D
as1-Das2メタノール誘導性二方向性プロモーターのDNA、pHTX1構成的二
方向性プロモーターのDNA、pGCW14-pGAP1構成的二方向性プロモーターの
DNA、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。酵母株において、プロモー
ターのDNA配列は、pHTX1構成的二方向性プロモーターのDNA及びpGCW14
-pGAP1構成的二方向性プロモーターのDNAからなる群から選択することができ;
及び/または選択マーカーのDNA配列は、抗生物質耐性DNA用のDNA及び栄養要求
性マーカー用のDNAからなる群から選択することができる。抗生物質耐性遺伝子または
DNAのいくつかの例として、ハイグロマイシン、ゼオシン、ジェネテシン及びそれらの
組み合わせからなる群から選択される抗生物質に対する耐性が挙げられるが、他の公知の
抗生物質耐性遺伝子もまた使用してよい。ベクターを、電気穿孔法、化学的形質転換、及
び接合からなる群から選択される方法によって酵母株に挿入してもよい。
【0115】
本発明の別の実施形態は、(i)本明細書に記載する酵母株を提供し、(ii)その株
を、コラーゲンを産生するのに十分な期間、培地中で増殖させることを含む、水酸化コラ
ーゲンの製造方法である。酵母株は、Candida、Komatagaella、Pi
chia、Hansenula、Saccharomyces、Cryptococcu
s属及びそれらの組み合わせ由来のものからなる群から選択することができ;酵母株で発
現するコラーゲンDNAは、ウシ、ブタ、カンガルー、ワニ、クロコダイル、ゾウ、キリ
ン、シマウマ、ラマ、アルパカ、子ヒツジ、恐竜コラーゲンまたはそれらの組み合わせを
コードするDNAからなる群から選択してもよく;及び/または培地は、BMGY、BM
MY、及びYPDからなる群から選択される。酵母株は、約24、48または72時間の
範囲の期間、培養または育成してもよい。いくつかの実施形態では、プロモーターのDN
Aは、pTHX1構成的二方向性プロモーターのDNA及びpGCW14-pGAP1構
成的二方向性プロモーターのDNAからなる群から選択され;及び/または選択マーカー
用のDNAは、抗生物質耐性DNA用のDNA及び栄養要求性マーカー用のDNAからな
る群から選択される。
【0116】
本発明の別の実施形態は、(i)発現した場合にコラーゲンを産生するDNA、プロモ
ーター、及びターミネーター;(ii)プロモーター及びターミネーターを含む、P4H
A1及びP4HBからなる群から選択される1つ以上の水酸化酵素の少なくとも1つのD
NA;(iii)プロモーター及びターミネーターを含む、選択マーカー用の少なくとも
1つのDNA;(iv)酵母及び細菌用の複製起点の少なくとも1つのDNA;(v)ゲ
ノムへの組込みのために酵母ゲノムと相同性を有する1つ以上のDNA;ならびに(iv
)上記のDNA内の5’、3’、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される位置
にモジュラー式のクローニングを可能にする1つ以上の制限酵素部位を含む、オールイン
ワンベクターに関する。いくつかの実施形態では、オールインワンベクターは、発現した
場合に、ウシ、ブタ、カンガルー、ワニ、クロコダイル、ゾウ、キリン、シマウマ、ラマ
、アルパカ、子ヒツジ、恐竜コラーゲン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択さ
れるコラーゲンを産生する1つ以上のDNA配列を有する。
【0117】
オールインワンベクターは、pTHX1構成的二方向性プロモーターのDNA及びpG
CW14-pGAP1構成的二方向性プロモーターのDNAからなる群から選択されるプ
ロモーターを有してもよく;抗生物質耐性及び/または栄養要求性マーカーなどの選択マ
ーカーの1つ以上のDNA配列を含み得る。抗生物質耐性マーカーとして、ハイグロマイ
シン、ゼオシン、ジェネテシン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される抗生物
質に対する耐性が挙げられる。
【0118】
本発明の別の実施形態は、キメラコラーゲンDNAの全長に基づいて10、20、30
~40%または60、70、80~90%の最適化されたDNAを含むキメラコラーゲン
DNA配列に関する。本キメラコラーゲンDNA配列では、最適化されたDNAをC末端
から始めることができ、または最適化されたDNAをN末端から始めることができる。
【0119】
本発明の別の実施形態は、本明細書に記載するキメラコラーゲンのDNA配列;コラー
ゲンプロモーターのDNA配列;ターミネーターのDNA配列;選択マーカーのDNA配
列;選択マーカーのプロモーターのDNA配列;選択マーカーのターミネーターのDNA
配列;細菌及び/または酵母用の複製起点のDNA配列;及び酵母ゲノムとの相同性を有
するDNA配列を有するベクターを保有するコラーゲン産生酵母株に関する。本実施形態
において、酵母株は、pTHX1構成的二方向性プロモーターのDNA及びpGCW14
-pGAP1構成的二方向性プロモーターのDNAからなる群から選択されるプロモータ
ーのDNAを含み得る。酵母株は、少なくとも1つの抗生物質耐性をコードするDNA及
び少なくとも1つの栄養要求性マーカーをコードするDNAからなる群から選択される選
択マーカーを含み得る。
【0120】
本発明の別の実施形態は、(i)本明細書に記載する酵母株を提供し;(ii)その株
を、コラーゲンを産生するのに十分な時間、培地中で増殖させることを含む、水酸化コラ
ーゲンの製造方法に関する。本実施形態では、酵母株を、Candida、Komata
gaella、Hansenula、Saccharomyces、Cryptococ
cus属及びそれらの組み合わせ由来のものからなる群から選択することができ;培地は
、緩衝グリセロール複合培地、緩衝メタノール複合培地、及び酵母抽出ペプトンデキスト
ロースからなる群から選択してもよく;培養または育成時間は、24、48または72時
間の範囲であり得る。本方法のいくつかの実施形態では、酵母株は、pTHX1構成的二
方向性プロモーターのDNA及びpGCW14-pGAP1構成的二方向性プロモーター
のDNAからなる群から選択されるプロモーターを含む。本方法の他の実施形態では、酵
母株は、抗生物質耐性をコードするDNA及び栄養要求性マーカーをコードするDNAか
らなる群から選択される少なくとも1つの選択マーカーを含む。
【実施例0121】
以下の非限定的な実施例は、本発明の例示である。本発明の範囲は、これらの実施例に
記載する詳細に限定されない。
【0122】
実施例1
Pichia pastoris株BG10(野生型)はATUM(以前のDNA2.
0)から入手した。コラーゲン配列を含むMMV63(配列番号11)(「配列番号9」
)DNA配列及びベクターを野生型Pichia pastorisに挿入し、PP28
株を生成した。MMV63をPmeIで消化し、PP1(野生型Pichia past
oris株)に形質転換してPP28を生成した。ベクターMMV63を図1に示す。
【0123】
天然型IIIウシコラーゲンをコードするDNAを配列決定し(配列番号1)、配列を
、ポリメラーゼ連鎖反応「PCR」プロトコールにより増幅して直鎖状DNA配列を作製
した。
【0124】
Pichia電気穿孔法プロトコール(Bio-Rad Gene Pulser X
cell(商標)Total System#1652660)を用いてDNA2.0由
来の野生型Pichia酵母細胞(PP1)にDNAを形質転換した。酵母細胞をP4H
A/B同時発現プラスミドで形質転換し、形質転換体(例えば、クローン#4)をHyg
roプレート(200ug/ml)上で選択した。
【0125】
クローン#4の単一コロニーを100mlのYPD培地に播種し、215rpmで振盪
しながら30℃で一晩増殖させた。翌日、培養物のOD600が約3.5(約3~5×1
細胞/OD600)に達した時点で、新鮮なYPDでOD600が約1.7になるよ
うに希釈し、215rpmで振盪しながら30℃でさらに1時間増殖させた。
【0126】
次いで、細胞を3,500gで5分間遠心分離し;水で1回洗浄し、10mlの、10
mM Tris-HCl(pH7.5)、100mM LiAc、10mM DTT(新
鮮なものを添加)、及び0.6Mソルビトール中に再懸濁した。
【0127】
各形質転換について、8×10個の細胞のアリコートを、8mlの10mM Tri
s-HCl(pH7.5)、100mM LiAc、10mM DTT、0.6Mソルビ
トールに入れ、室温で30分間インキュベートした。
【0128】
細胞を5000gで5分間スピンダウンし、1.5mlの氷冷した1Mソルビトールで
3回洗浄し、80ulの氷冷した1Mソルビトール中に再懸濁した。
【0129】
様々な量(約5ug)の直鎖状化DNAを細胞に添加し、ピペッティングにより混合し
た。
【0130】
細胞及びDNA混合物(80~100ul)を0.2cmキュベットに加え、Pich
iaのプロトコールに従って1500v、25uF、及び200Ωでパルスした。
【0131】
次いで、それらを直ちにYPD及び1Mソルビトール(1:1)の1ml混合物に移し
、30℃で>2時間インキュベートした。
【0132】
細胞を異なる密度でプレーティングした。
【0133】
単一のコロニーを24ディープウェルプレート中の2mLのBMGY培地に播種し、9
00rpmで振盪しながら30℃で少なくとも48時間増殖させた。得られた細胞を、以
下の手順に従って、細胞溶解、SDS-page及びペプシンアッセイを用いてコラーゲ
ンについて試験した。
【0134】
酵母細胞を、Qiagen TissueLyserを用いて30Hzの速度で連続的
に1分間、1×溶解緩衝液中で溶解した。溶解緩衝液は、2.5mlの1M HEPES
(終濃度50mM);438.3mgのNaCl;終濃度150mM;5mlのグリセロ
ール;終濃度10%;0.5mlのTriton X-100;終濃度1%;及び42m
lのMillipure水から作製した。
【0135】
溶解した細胞を、卓上遠心分離機で、2,500rpm、15分間、遠心分離した。上
清を残し、ペレットを捨てた。
【0136】
SDS-PAGE。上清、分子量マーカー、陰性対照及び陽性対照に対し、2-メルカ
プトエタノール存在下でSDS-PAGEを実施した。電気泳動後、ゲルを除去し、クー
マシーブルーで染色し、次いで水中で脱染した。
【0137】
ペプシンアッセイ。ペプシンアッセイを以下の手順で実施した:
ペプシン処理の前に、Thermo Scientificのプロトコールに従って各
試料の全タンパク質を得るためのBCAアッセイを実施した。すべての試料について、全
タンパク質量を、0.5mg/mlまたはそれを上回る最低濃度に正規化した。
100uLの試料の溶解物をマイクロ遠心チューブに入れた。以下を含有するマスター
ミックスを作製した:37%HC1(100μL当たり0.6μLの酸)、及び
脱イオン水中の1mg/mLのペプシンストック。添加したペプシンの量は、ペプシン
:全タンパク質の比で1:25(重量:重量)であった。
【0138】
ペプシンを添加した後、試料をピペットで3回混合し、ペプシン反応を生じさせるため
に室温で1時間インキュベートした。1時間後、β-メルカプトエタノールを含有するL
DSローディングバッファーを1:1容量で各試料に添加し、70℃で7分間インキュベ
ートした。インキュベーション後、試料を14,000rpmで1分間遠心し、濁りを除
去した。
【0139】
次に、試料の上部から18uLを、TAE緩衝液を用いて3~8%TAEに添加し、1
50Vで1時間10分の間、ゲル上に流した。下記の表1はその結果を報告する。
【0140】
実施例2
以下の変更を加えたうえで、実施例1を同じ手順及びプロトコールに従って繰り返した
:Pichiaにおける発現を高めるように改変したウシコラーゲン配列(配列番号3)
(「配列2」)を含むDNA MMV77(配列番号12)(「配列10」)配列を酵母
に挿入した。pAOX1プロモーター(配列番号5)(「配列3」)を用いて、コラーゲ
ン配列を発現させた。500ug/mlのゼオシンを含有するYPDプレートを用いて、
成功した形質転換体を選択した。得られた株はPP8であった。ベクターMMV77を図
2に示す。制限酵素消化は、PmeIを用いて行った。株をBMMY培地で増殖させ、コ
ラーゲンについて試験した。結果を以下の表1に示す。
【0141】
実施例3
以下の変更を加えたうえで、実施例1を同じ手順及びプロトコールに従って繰り返した
:Pichiaでの発現を高めるように改変したウシコラーゲン配列を含むDNA MM
V-129(配列番号13)(「配列11」)配列を、酵母に挿入した。pCATプロモ
ーター(配列番号9)(「配列7」)を使用してコラーゲン配列を発現させた。500u
g/mlのゼオシンを含有するYPDプレートを用いて、成功した形質転換体を選択した
。得られた株はPP123であった。MMV129をSwaIで消化し、PP1に形質転
換してPP123を生成した。ベクターMMV129を図3に示す。株をBMGY培地で
増殖させ、コラーゲンについて試験した。結果を以下の表1に示す。
【0142】
実施例4
以下の変更を加えたうえで、実施例1を同じ手順及びプロトコールに従って繰り返した

Pichiaでの発現を高めるように改変したウシCol3A1(III型)コラーゲ
ン配列(配列番号3)(「配列2」)を含む、DNA MMV-130(配列番号14)
(「配列12」)配列を酵母に挿入した。配列番号8(「配列6」)に示すpDFプロモ
ーターを使用してコラーゲン配列を発現させた。PmeIによって切断されるAOX1ラ
ンディングパッド(配列番号10)(「配列8」)を使用してPichiaゲノムへのベ
クターの部位特異的組込みを促進した。500ug/mlのゼオシンを含有するYPDプ
レートを用いて、成功した形質転換体を選択した。得られた株をPP153と命名した。
MMV130をPmeIで消化し、PP1に形質転換してPP153を生成した。改変ウ
シcol3A1配列は、配列番号3(「配列2」)によって与えられる。
【0143】
フェノール抽出の代わりにPureLink PCR精製キットを用いて、直鎖状化し
たDNAを回収した。株をBMGY培地で増殖させ、コラーゲンについて試験した。結果
を以下の表1に示す。
【0144】
実施例5
以下の変更を加えたうえで、実施例2を同じ手順及びプロトコールに従って繰り返した
:最適化したウシP4HA(配列番号6)(「配列4」)及びウシP4HB(配列番号7
)(「配列5」)配列を有する1つのDNAベクターMMV-78(配列番号15)(「
配列13」)を酵母に挿入した。MMV78をPmeIで消化し、PP1に形質転換して
PP8を生成した。P4HA及びP4HBはいずれも、その内在性シグナルペプチドを含
み、Das1-Das2二方向性プロモーター(配列番号27)(「配列24」)によっ
て駆動される。DNAをKpnIで消化し、PP8に形質転換してPP3を生成した。ベ
クターMMV78を図5に示す。株をBMMY培地で増殖させ、コラーゲン及び水酸化に
ついて試験した。結果を以下の表1に示す。
【0145】
実施例6
以下の変更を加えたうえで、実施例2を同じ手順及びプロトコールに従って繰り返した
:ウシP4HA配列及びウシP4HB配列の両方を有する1つのDNAベクター、MMV
-78を酵母に挿入した。P4HA及びP4HBはいずれも、それらの内在性シグナルペ
プチドを含み、Das1-Das2二方向性プロモーターによって駆動した。DNAをK
pnIで消化し、PP8に形質転換してPP3を生成した。
【0146】
pAOX1プロモーターにより駆動されるP4HBを有する別のベクター、MMV-9
4(配列番号16)(「配列14」)を使用し、また、これを酵母に挿入した。P4HB
の内在性シグナルペプチドを、PHO1シグナルペプチドで置換した。得られた株はPP
38であった。MMV94をAvrIIで消化し、PP3に形質転換してPP38を生成
した。ベクターMMV94を図6に示す。株をBMMY培地で増殖させ、コラーゲン及び
水酸化について試験した。結果を以下の表1に示す。
【0147】
実施例7
以下の変更を加えたうえで、実施例4を同じ手順及びプロトコールに従って繰り返した
:ウシP4HA及びウシP4HB配列の両方を含む1つのDNAベクター、MMV-15
6(配列番号17)(「配列15」)を酵母に挿入した。P4HAは、その内在性シグナ
ルペプチドを含み、P4HBシグナル配列はαファクタープレ(配列番号23)(「配列
21」)配列で置換した。両方の遺伝子をpHTX1二方向性プロモーター(配列番号2
6)(「配列25」)によって駆動した。MMV156をBamHIで消化し、PP15
3に形質転換してPP154を生成した。ベクターMMV156を図7に示す。株をBM
GY培地で増殖させ、コラーゲン及び水酸化について試験した。結果を以下の表1に示す
【0148】
実施例8
以下の変更を加えたうえで、実施例4を同じ手順及びプロトコールに従って繰り返した
:ウシP4HA配列及びウシP4HB配列の両方を有する1つのDNAベクターMMV-
156を酵母に挿入した。P4HAはその内在性シグナルペプチドを含み、P4HBシグ
ナル配列はαファクタープレ配列で置換した。両方の遺伝子を、pHTX1二方向プロモ
ーターによって駆動した。DNAをSwaIで消化し、PP153に形質転換してPP1
54を生成した。
【0149】
P4HA及びP4HBの両方を含む別のベクター、MMV-191(配列番号18)(
「配列16」)もまた、酵母に挿入した。余剰コピーのP4HAは、その内在性シグナル
ペプチドを含み、余剰コピーのP4HBのシグナル配列は、αファクタープレプロ(配列
番号24)(「配列22」)配列で置換した。余剰コピーのP4HA及びP4HBは、p
GCW14-GAP1二方向性プロモーター(配列番号25)(「配列23」)によって
駆動した。MMV191をBamHIで消化し、PP154に形質転換してPP268を
生成した。ベクターMMV191を図8に示す。株をBMGY培地で増殖させ、コラーゲ
ン及び水酸化について試験した。結果を以下の表1に示す。
【0150】
実施例9
実施例1の方法及び手順を利用してオールインワンベクターを作製した。オールインワ
ンベクターは、コラーゲンのDNAならびに付随するプロモーター及びターミネーター、
コラーゲンを水酸化する酵素のDNAならびに付随するプロモーター及びターミネーター
、マーカー発現用のDNAならびに付随するプロモーター及びターミネーター、細菌及び
酵母の複製起点(複数可)のDNA、及び組み込むために酵母ゲノムに対して相同性を有
するDNA(複数可)を含む。オールインワンベクターは、5’、3’、または上記の構
成要素内に戦略的に配置された固有の制限酵素部位を有する。コラーゲン発現または他の
ベクター構成要素の改変を所望する場合、選択した構成要素のDNAを、制限酵素で容易
に切除し、ユーザーが選択するクローニング方法を用いて置換することができる。オール
インワンベクターの最も単純なバージョン、MMV208(配列番号19)(「配列17
」)は、ヒドロキシラーゼ酵素のプロモーター(複数可)を除いて、上記のすべての構成
要素を含む。ベクターMMV208は、以下の構成要素を用いて作製する:MMV84(
配列番号20)(「配列18」)由来のAOX相同性、MMV150(配列番号21)(
「配列19」)由来のリボソーム相同性、MMV140(配列番号22)(「配列20」
)由来の細菌及び酵母起源の複製起点、MMV140由来のゼオシンマーカー、ならびに
MMV129由来のCol3A1。Genscriptにより、以下の各制限酵素部位を
除去したP4HA及びBならびに関連するターミネーターの改変バージョンを合成した:
AvrII、NotI、PvuI、PmeI、BamHI、SacII、SwaI、Xb
aI、SpeI。ベクターをPP1株に形質転換した。
【0151】
株をBMGY培地で増殖させ、コラーゲン及び水酸化について試験した。結果を以下の
表1に示す。
【0152】
表1は、g/Lでのコラーゲン産生量及び水酸化コラーゲンの割合を記載する。コラー
ゲン発現量は、クーマシーブルー色素でゲルを染色し、その結果をコラーゲン含量につい
ての標準曲線と比較することによって定量化した。水酸化コラーゲンの量は、1:25の
ペプシン処理後の試料バンドと標準バンドとを比較することによって決定した。水酸化コ
ラーゲンは、コラーゲンポリペプチドをさらに処理するのに必要な高濃度ペプシン中で安
定であるため、Pichiaによる水酸化コラーゲンの発現には利点がある。
表1
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0153】
実施例1及び2のデータは、III型ウシコラーゲン配列のコドン改変により、Pic
hiaで発現するコラーゲンの量が2倍になったことを示す。実施例2及び3のデータの
比較は、pCATプロモーターを用いてIII型コラーゲンコード配列の転写を駆動する
ことによって、III型ウシコラーゲンの発現がさらに5倍増加することを示す。実施例
2及び4のデータの比較は、pDFプロモーターを用いてIII型コラーゲンコード配列
の転写を駆動し、AOX1ランディングパッドを提供してPichiaゲノムDNAへの
ベクターの組み込みを促進することによって、ウシIII型コラーゲンの発現が10~1
5倍増加することを示す。実施例2ならびに5及び6のデータの比較は、プロリンヒドロ
キシラーゼ(P4HA+P4HB)のコード配列をPichiaに形質転換することによ
り、水酸化コラーゲンを産生し、プロリンヒドロキシラーゼの発現をさらに調節すること
によって、水酸化コラーゲンの量を高めることができることを示す。実施例7~9は、コ
ラーゲン発現を5~15倍増強することができること、ならびに2つのベクターを導入す
ることによって、またはコラーゲン及びヒドロキシラーゼ配列の両方を同じベクターにコ
ードするオールインワンベクターアプローチによって、水酸化コラーゲンの量が増大する
ことを示す。
【0154】
実施例10
実施例1の方法及び手順を利用して、キメラCol3A1ベクターを作製した。ベクタ
ーMMV132を、キメラコラーゲンのDNAならびに付随するプロモーターPDF及び
ターミネーターAOX1TT、マーカー発現用のDNAならびに付随するプロモーター及
びターミネーター、細菌及び酵母の複製起点(複数可)のDNA、ならびに組み込むため
に酵母ゲノムに対して相同性を有するDNA(複数可)を含むように改変した。ベクター
MMV63は、未改変Col3A1ドメインの供給源のDNAであった。ベクターMMV
128(図21)は、改変Col3A1ドメインの供給源のDNAであった。Col3A
1ポリペプチドの全長は1465アミノ酸(aa)である。プラスミドは、天然ウシDN
A配列(未修飾)及びPichia Pastorisコドン改変DNA配列を組み込む
ように設計した。Col3A1の改変配列と未改変配列との間の移行がaa 710、1
,200、及び1,331位になるようにプラスミドを設計した。これらの方法を使用し
て、プラスミドMMV193、MMV194、MMV195、MMV197、MMV19
8、及びMMV199を作製した。得られたプラスミドベクターを、比較のために完全に
最適化したプラスミドMMV130及び完全に最適化していないプラスミドMMV200
図20)を用いて以下の表2に示す。
表2
【表2】
【0155】
実施例11
以下の変更を加えたうえで、実施例2を同じ手順及びプロトコールに従って繰り返した
:PP1及びPP97が得られた。PP97は、2つのプロテアーゼ遺伝子(PEP4及
びPRB1)を宿主株からノックアウトした株であった。Pichia発現用の改変及び
未改変ウシコラーゲン配列DNAの異なる組合せを含むDNA MMV194、MMV1
95、MMV130及びMMV200配列を酵母に挿入した。pDFプロモーターを用い
てコラーゲン配列を発現させた。500ug/mlのゼオシンを含有するYPDプレート
を用いて、成功した形質転換体を選択した。ベクターに対し、SwaIを用いて制限酵素
消化を行い、組み込むためにDNAを直鎖状化し、Pme1で消化して200ngのDN
Aを形質転換したMMV130を除いて、3~5ugの切断DNAを形質転換した。得ら
れた株を以下の表3に示す。
表3
【表3】
【0156】
実施例12
以下の変更を加えたうえで、実施例7を同じ手順及びプロトコールに従って繰り返した
:ウシP4HA配列及びウシP4HB配列の両方を有する1つのDNAベクター、MMV
-156を酵母に挿入した。P4HAはその内在性シグナルペプチドを含み、P4HBシ
グナル配列はαファクタープレ配列で置換した。両方の遺伝子を、pHTX1二方向性プ
ロモーターによって駆動した。DNAをBamH1で消化し、形質転換した。株及び形質
転換の情報については、表4を参照されたい。
表4
【表4】
【0157】
実施例13
以下の変更を加えたうえで、実施例8を同じ手順及びプロトコールに従って繰り返した
:溶解緩衝液を、50mM NaPO、1mM EDTA、5%グリセロールで作製
し、pHを酢酸で7.4に調整した。P4HA及びP4HBの両方を含む別のベクター、
MMV-191もまた、酵母に挿入した。余剰コピーのP4HAは、その内在性シグナル
ペプチドを含み、余剰コピーのP4HBのシグナル配列は、αファクタープレプロ配列で
置換した。余剰コピーのP4HA及びP4HBを、pGCW14-GAP1二方向性プロ
モーターによって駆動した。DNAをBamHIで消化し、形質転換した。形質転換及び
新規株の情報については、表5を参照されたい。株をBMGY培地で増殖させ、コラーゲ
ンについて試験した。
表5
【表5】
【0158】
実施例14
以下の変更を加えたうえで、実施例2を同じ手順及びプロトコールに従って繰り返した
:ウシP4HA配列及びウシP4HB配列の両方を有する1つのDNAベクター、MMV
-78を酵母に挿入した。P4HA及びP4HBを、Das1-Das2二方向性プロモ
ーターによって駆動する。DNAをKpnIで消化し、PP8に形質転換して、配列番号
3(「配列2」)のコラーゲン配列を保有するPP3を生成した。pAOX1プロモータ
ーにより駆動されるP4HBを有する別のベクター、MMV-94(配列番号16)(「
配列14」)を使用し、同様に酵母に挿入した。P4HBの内在性シグナルペプチドを、
PHO1シグナルペプチドで置換した。得られた株はPP38であった。
【0159】
24ディープウェルプレートに対し、2mlのYPDを各ウェルに充填し、PP38株
の単一コロニーを播種した。コロニーを、900rpmの振盪下で24時間、YPD中で
増殖させた。細胞を3,000rpmで5分間遠心分離し、上清を除去した。メタノール
フリーの誘導については、上清を2mLのBMGY(1%)で置換し、さらに48時間増
殖させた。メタノール誘導については、メタノールを終濃度0.5%になるように添加し
、細胞を24時間増殖させた。メタノールを再び添加し、細胞をさらに24時間増殖させ
た。誘導終了時に、1mlの試料を分析用に取り出した。
【0160】
実施例1に記載したSDS-PAGE及びクーマシー染色を用いて、試料をコラーゲン
について試験した。メタノールフリー誘導の試料のバンドは、メタノール誘導の試料のバ
ンドよりも暗く、このことは、メタノールフリー誘導の試料のほうがコラーゲンを高濃度
で発現していたことを示している。
【0161】
本明細書中で使用する用語「最適化した」または「最適化する」などは、キメラDNA
構築物または他の重要なプロセス変数の特徴を慎重に選択することによって実現される値
または特徴を含み、既知の結果有効変数の使用を意味しない。
【0162】
本明細書中で使用する用語は、単に特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、本
発明を限定することを意図するものではない。
【0163】
本明細書中で使用する見出し(「背景技術」及び「概要」など)及び小見出しは、単に
本発明内のトピックの一般的な編成を意図したものに過ぎず、本発明の開示またはそのい
ずれかの態様を制限することを意図したものではない。特に、「背景技術」に開示する主
題は、新規技術を包含する場合があり、先行技術の引用を構成しない場合がある。「概要
」に開示する主題は、技術またはそのいずれかの実施形態の全範囲の網羅的または完全な
開示ではない。本明細書のセクション内の物質を、便宜上、特定の有用性を有するものと
して分類または議論し、また、所与の組成物中でその物質を使用する場合、その物質が、
必ずまたは単独で、その物質の本明細書中での分類に従って機能する必要があるという推
論をすべきではない。
【0164】
本明細書中で使用する場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、そうでないこ
とが文脈上で明確に示されない限り、複数形も含むことが意図される。
【0165】
本明細書中で使用する場合、用語「及び/または」は、関連する列挙した項目の1つ以
上の任意の及びすべての組み合わせを含み、「/」と省略してもよい。
【0166】
「www」の前にスペースまたはアンダーラインのスペースを挿入することによってリ
ンクを使用不能にし、それは、スペースを除去することによって再活性化し得る。
【0167】
実施例で使用するものを含めて、本明細書中及び特許請求の範囲で使用する場合、特に
明記しない限り、すべての数字は、あたかも単語「実質的に」、「約」または「およそ」
が、たとえその単語が明示的に示されていなくても、それらが前置されているかのように
読み取ってよい。大きさ及び/または位置を記載する場合に、語句「約」または「およそ
」を使用して、記載する値及び/または位置が値及び/または位置の合理的な予想範囲内
にあることを示してもよい。例えば、数値は、指定する値(または値の範囲)の±0.1
%、指定する値(または値の範囲)の±1%、指定する値(または値の範囲)の±2%、
指定する値(または値の範囲)の±5%、指定する値(または値の範囲)の±10%、指
定する値(または値の範囲)の±15%、指定する値(または値の範囲)の±20%など
の値を有し得る。本明細書中に列挙する数値範囲は、その範囲内に包含されるすべての部
分範囲を含むことが意図される。
【0168】
本明細書中で使用する場合、用語「好ましい」及び「好ましくは」とは、特定の状況下
で特定の利益をもたらす技術の実施形態を指す。しかしながら、同じまたは他の状況下で
、他の実施形態もまた、好ましい場合がある。さらに、1つ以上の好ましい実施形態の列
挙は、他の実施形態が有用ではないことを意図するものではなく、他の実施形態を技術の
範囲から除外することを意図するものでもない。
本明細書中で言及するように、すべての組成割合は、特に明記しない限り、全組成物に
対する重量百分率である。本明細書中で使用する場合、用語「含む(include)」
及びその変形は非限定的であることを意図しており、したがって、リスト内の項目の列挙
は、本技術の素材、組成物、装置、及び方法においても有用であり得る他の同様の項目を
除外するものではない。同様に、用語「できる(can)」及び「してもよい(may)
」ならびにその変形は非限定的であることを意図しており、したがって、一実施形態が特
定の要素または特徴を含むことができるか、またはそれらを含んでもよいことについての
列挙は、それらの要素または特徴を含まない本発明の他の実施形態を除外するものではな
い。
【0169】
用語「第一」及び「第二」は、様々な特徴/要素(工程を含む)を記述するために本明
細書中で使用され得るが、文脈上、そうではないと示されない限り、これらの特徴/要素
はこれらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、ある特徴/要素を別
の特徴/要素と区別するために使用してもよい。したがって、以降で説明する第一の特徴
/要素を第二の特徴/要素と表現することは可能であり、同様に、以降で説明する第二の
特徴/要素を、本発明の教示から逸脱することなく第一の特徴/要素と表現することも可
能である。
【0170】
空間的に相対的な用語、例えば、図面に示される、「下(under)」、「下(be
low)」、「下(lower)」、「上(over)」、「上(upper)」などは
、ある要素または特徴と他の要素(複数可)または特徴(複数可)との関係性を記載する
うえで、説明を容易にするために、本明細書中において使用してもよい。空間的に相対的
な用語は、図中に描かれている向きに加えて、使用中または動作中の装置の異なる向きを
包含することが意図されていることは理解されよう。例えば、図中の装置が反転している
場合、他の要素または特徴の「下(under)」または「下(beneath)」と記
載される要素は、他の要素または特徴の「上(over)」を向くであろう。したがって
、例示的な用語「下(under)」は、上(over)及び下(under)の向きの
両方を包含し得る。装置は、他の方向を向いていてもよく(90°または他の向きに回転
していてもよい)、本明細書中で使用する空間的に相対的な記述子は、それに応じて解釈
される。同様に、特段の断りがない限り、用語「上向きに(upwardly)」、「下
向きに(downwardly)」、「垂直」、「水平」などは、単に説明の目的でのみ
使用される。
【0171】
特徴または要素が、本明細書中で、別の特徴または要素の「上(on)」にあると言及
される場合、それは他の特徴もしくは要素の上に直接存在し得るか、または介在する特徴
及び/または要素が存在する場合もある。対照的に、ある特徴または要素が別の特徴また
は要素の「直上(directly on)」にあると言及される場合、介在する特徴ま
たは要素は存在しない。また、ある特徴または要素が他の特徴または要素に「接続」、「
付着」または「結合」していると言及される場合、それは他の特徴または要素に直接的に
接続、付着または結合可能であるか、または介在する特徴または要素が存在してもよいこ
とも理解されるであろう。対照的に、ある特徴または要素が別の特徴または要素に「直接
接続」、「直接付着」または「直接結合」していると言及される場合、介在する特徴また
は要素は存在しない。一実施形態に関して記載または図示しているが、そのように記載ま
たは図示した特徴及び要素は、他の実施形態に適用することができる。当業者であれば、
別の特徴に「隣接して」配置された構造または特徴への言及は、隣接する特徴にオーバー
ラップするかまたはその下部に存在する部分を有し得ることも理解されよう。
【0172】
本明細書中で言及するすべての刊行物及び特許出願は、あたかも個々の刊行物または特
許出願が具体的かつ個別に参照として援用されているかのように、その全体を参照として
本明細書に援用し、参照として援用することを示す本明細書の同じ文章、段落、ページま
たは節に記載する開示を特に参照する。本明細書中における参考文献の引用は、それらの
参考文献が先行技術であるか、または本明細書に開示する技術の特許性に関連するもので
あることを認めるものではない。引用する参考文献の内容の議論は、単にその参考文献の
著者の主張の一般的な概要を提供することを意図しているに過ぎず、そのような参考文献
の内容の正確性について承認するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【配列表】
2023179488000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-10-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0172
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0172】
本明細書中で言及するすべての刊行物及び特許出願は、あたかも個々の刊行物または特許出願が具体的かつ個別に参照として援用されているかのように、その全体を参照として本明細書に援用し、参照として援用することを示す本明細書の同じ文章、段落、ページまたは節に記載する開示を特に参照する。本明細書中における参考文献の引用は、それらの参考文献が先行技術であるか、または本明細書に開示する技術の特許性に関連するものであることを認めるものではない。引用する参考文献の内容の議論は、単にその参考文献の著者の主張の一般的な概要を提供することを意図しているに過ぎず、そのような参考文献の内容の正確性について承認するものではない。

以下の態様が包含され得る。
[1] 非水酸化コラーゲンを産生する遺伝子改変酵母株であって:
(i)酵母株;ならびに
(ii)コラーゲンのDNA配列;コラーゲンプロモーターのDNA配列;コラーゲンターミネーターのDNA配列;選択マーカーのDNA配列、前記選択マーカー用のプロモーターのDNA配列;前記選択マーカー用のターミネーターのDNA配列;細菌用のもの及び酵母用のものから選択される複製起点のDNA配列;及び前記酵母のゲノムと相同性を有するDNA配列を含むベクター
を含み、前記ベクターが前記酵母株に挿入されている、前記遺伝子改変酵母株。
[2] 前記酵母株が、Candida、Komatagaella、Hansenula、Saccharomyces、Cryptococcus属及びそれらの組み合わせ由来のものからなる群から選択される、上記[1]に記載の酵母株。
[3] 前記コラーゲンのDNA配列が、ウシ、ブタ、カンガルー、ワニ、クロコダイル、ゾウ、キリン、シマウマ、ラマ、アルパカ、子ヒツジ、恐竜コラーゲン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記[1]に記載の酵母株。
[4] 前記コラーゲンのDNA配列が、天然コラーゲンDNA、改変(engineered)コラーゲンDNA及びコドン改変コラーゲンDNAから選択される、上記[3]に記載の酵母株。
[5] 前記プロモーターのDNA配列が、AOX1メタノール誘導性プロモーターのDNA、pDF抑制解除プロモーターのDNA、pCAT抑制解除プロモーターのDNA、Das1-Das2メタノール誘導性二方向性プロモーターのDNA、pHTX1構成的二方向性プロモーターのDNA、pGCW14-pGAP1構成的二方向性プロモーターのDNA及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記[1]に記載の酵母株。
[6] 前記選択マーカーのDNA配列が、抗生物質耐性のDNA及び栄養要求性マーカーのDNAからなる群から選択される、上記[1]に記載の酵母株。
[7] 前記抗生物質耐性マーカーが、ハイグロマイシン耐性、ゼオシン耐性、ジェネテシン耐性及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記[6]に記載の酵母株。
[8] 前記ベクターを、電気穿孔法、化学的形質転換、及び接合からなる群から選択される方法によって前記酵母に挿入する、上記[1]に記載の酵母株。
[9] 非水酸化コラーゲンの製造方法であって:
(i)上記[1]の酵母株を提供し;及び
(ii)コラーゲンを産生するのに十分な期間、培地中で前記株を増殖させることを含む、前記製造方法。
[10] 前記酵母株が、Candida、Komatagaella、Hansenula、Saccharomyces、Cryptococcus属及びそれらの組み合わせ由来のものからなる群から選択される、上記[9]に記載の方法。
[11] 前記培地が、緩衝グリセロール複合培地(BMGY)、緩衝メタノール複合培地(BMMY)、及び酵母抽出ペプトンデキストロース(YPD)からなる群から選択される、上記[9]に記載の方法。
[12] 前記期間が、24時間~72時間である、上記[9]に記載の方法。
[13] 前記酵母が、Candida、Komatagaella、Hansenula、Saccharomyces、Cryptococcus属及びそれらの組み合わせ由来のものからなる群から選択される、上記[9]に記載の方法。
[14] 前記コラーゲンのDNA配列が、ウシ、ブタ、カンガルー、ワニ、クロコダイル、ゾウ、キリン、シマウマ、ラマ、アルパカ、子ヒツジ、恐竜コラーゲン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記[9]に記載の方法。
[15] 前記プロモーターのDNA配列が、前記pHTX1構成的二方向性プロモーターのDNA及び前記pGCW14-pGAP1構成的二方向性プロモーターのDNAからなる群から選択される、上記[9]に記載の方法。
[16] 前記選択マーカーのDNA配列が、前記抗生物質耐性DNAのDNA及び前記栄養要求性マーカーのDNAからなる群から選択される、上記[9]に記載の方法。
[17] 水酸化コラーゲンを産生する遺伝子改変酵母株であって:
(i)酵母株;
(ii)コラーゲンのDNA配列;コラーゲンプロモーターのDNA配列;ターミネーターのDNA配列;選択マーカーのDNA配列;前記選択マーカー用のプロモーターのDNA配列;前記選択マーカー用のターミネーターのDNA配列;細菌及び/または酵母の複製起点のDNA配列;前記酵母のゲノムと相同性を有するDNA配列を含むベクターであって;前記ベクターが前記酵母株に挿入されている、前記ベクター;ならびに
(iii)P4HA1のDNA配列;P4HBのDNA配列;及びプロモーター用の少なくとも1つのDNA配列を含む第二のベクターであって;前記ベクターが前記酵母株に挿入されている、前記第二のベクター
を含む、前記遺伝子改変酵母株。
[18] 前記酵母株が、Candida、Komatagaella、Hansenula、Saccharomyces、Cryptococcus属及びそれらの組み合わせ由来のものからなる群から選択される、上記[17]に記載の酵母株。
[19] 前記コラーゲンのDNA配列が、ウシ、ブタ、カンガルー、ワニ、クロコダイル、ゾウ、キリン、シマウマ、ラマ、アルパカ、子ヒツジ、恐竜コラーゲン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記[17]に記載の酵母株。
[20] 前記コラーゲンのDNA配列が、天然コラーゲンDNA、改変(engineered)コラーゲンDNA及び改変(modified)コラーゲンDNAから選択される、上記[17]に記載の酵母株。
[21] 前記プロモーターのDNA配列が、前記AOX1メタノール誘導性プロモーターのDNA、前記pDF抑制解除プロモーターのDNA、前記pCAT抑制解除プロモーターのDNA、前記Das1-Das2メタノール誘導性二方向性プロモーターのDNA、前記pHTX1構成的二方向性プロモーターのDNA、前記pGCW14-pGAP1構成的二方向性プロモーターのDNA、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記[17]に記載の酵母株。
[22] 前記プロモーターのDNA配列が、前記pHTX1構成的二方向性プロモーターのDNA及び前記pGCW14-pGAP1構成的二方向性プロモーターのDNAからなる群から選択される、上記[17]に記載の酵母株。
[23] 前記選択マーカーの前記DNA配列が、前記抗生物質耐性DNAのDNA及び前記栄養要求性マーカーのDNAからなる群から選択される、上記[17]に記載の酵母株。
[24] 前記選択マーカーが、ハイグロマイシン耐性、ゼオシン耐性、ジェネテシン耐性及びそれらの組み合わせからなる群から選択される抗生物質耐性の選択マーカーである、上記[23]に記載の酵母株。
[25] 前記ベクターを、電気穿孔法、化学的形質転換、及び接合からなる群から選択される方法によって前記酵母に挿入する、上記[17]に記載の酵母株。
[26] 水酸化コラーゲンの製造方法であって:
(i)上記[17]の酵母株を提供し;及び
(ii)コラーゲンを産生するのに十分な期間、培地中で前記株を増殖させることを含む、前記製造方法。
[27] 前記酵母株が、Candida、Komatagaella、Pichia、Hansenula、Saccharomyces、Cryptococcus属及びそれらの組み合わせ由来のものからなる群から選択される、上記[26]に記載の方法。
[28] 前記培地が、BMGY、BMMY、及びYPDからなる群から選択される、上記[26]に記載の方法。
[29] 前記期間が、24時間~72時間である、上記[26]に記載の方法。
[30] 前記酵母が、Candida、Komatagaella、Pichia、Hansenula、Saccharomyces、Cryptococcus属及びそれらの組み合わせ由来のものからなる群から選択される、上記[26]に記載の方法。
[31] 前記コラーゲンのDNAが、ウシ、ブタ、カンガルー、ワニ、クロコダイル、ゾウ、キリン、シマウマ、ラマ、アルパカ、子ヒツジ、恐竜コラーゲン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記[26]に記載の方法。
[32] 前記プロモーターのDNAが、前記pTHX1構成的二方向性プロモーターのDNA及び前記pGCW14-pGAP1構成的二方向性プロモーターのDNAからなる群から選択される、上記[26]に記載の方法。
[33] 前記選択マーカーのDNAが、前記抗生物質耐性DNAのDNA及び前記栄養要求性マーカーのDNAからなる群から選択される、上記[26]に記載の方法。
[34] (i)プロモーター及びターミネーターを含む、コラーゲン産生に必要なDNA;
(ii)プロモーター及びターミネーターを含む、P4HA1及びP4HBからなる群から選択される水酸化酵素のDNA;
(iii)プロモーター及びターミネーターを含む、選択マーカーのDNA;
(iv)酵母及び細菌の複製起点のDNA;
(v)ゲノムに組み込むために前記酵母のゲノムに対して相同性を有するDNA;ならびに
(vi)モジュラー式クローニングを可能にする、上記のDNA内の5’、3’、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される位置の制限酵素部位
を有する、オールインワンベクター。
[35] コラーゲン産生に必要な前記DNA配列が、ウシ、ブタ、カンガルー、ワニ、クロコダイル、ゾウ、キリン、シマウマ、ラマ、アルパカ、子ヒツジ、恐竜コラーゲン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記[34]に記載のオールインワンベクター。
[36] 前記プロモーターのDNA配列が、前記pTHX1構成的二方向性プロモーターのDNA及び前記pGCW14-pGAP1構成的二方向性プロモーターのDNAからなる群から選択される、上記[34]に記載のオールインワンベクター。
[37] 前記選択マーカーのDNA配列が、前記抗生物質耐性のDNA及び前記栄養要求性マーカーのDNAである、上記[34]に記載のオールインワンベクター。
[38] 前記選択マーカーが、ハイグロマイシン、ゼオシン、ジェネテシン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される抗生物質に対する抗生物質耐性の選択マーカーである、上記[37]に記載のオールインワンベクター。
[39] 最適化したDNAを、キメラコラーゲンDNAの全長に基づいて10~40%または60~90%含む、キメラコラーゲンDNA配列。
[40] 前記最適化したDNAが、C末端から始まる、上記[39]に記載のキメラコラーゲンDNA配列。
[41] 前記最適化したDNAが、N末端から始まる、上記[39]に記載のキメラコラーゲンDNA配列。
[42] 上記[39]に記載のキメラコラーゲンのDNA配列;
コラーゲンプロモーターのDNA配列;
ターミネーターのDNA配列;選択マーカーのDNA配列;
前記選択マーカー用のプロモーターのDNA配列;
前記選択マーカー用のターミネーターのDNA配列;
細菌及び/または酵母の複製起点のDNA配列;及び
前記酵母のゲノムと相同性を有するDNA配列
を含むベクターを保有する、コラーゲン産生酵母株。
[43] 前記プロモーターのDNAが、前記pTHX1構成的二方向性プロモーターのDNA及び前記pGCW14-pGAP1構成的二方向性プロモーターのDNAからなる群から選択される、上記[42]に記載の酵母株。
[44] 前記選択マーカーのDNAが、前記少なくとも1つの抗生物質耐性をコードするDNA及び少なくとも1つの栄養要求性マーカーをコードするDNAからなる群から選択される、上記[42]に記載の酵母株。
[45] 水酸化コラーゲンの製造方法であって:
(i)上記[42]のコラーゲン産生酵母株を提供し;及び
(ii)コラーゲンを産生するのに十分な期間、培地中で前記株を増殖させることを含む、前記製造方法。
[46] 前記酵母株が、Candida、Komatagaella、Hansenula、Saccharomyces、Cryptococcus属及びそれらの組み合わせ由来のものからなる群から選択される、上記[45]に記載の方法。
[47] 前記培地が、緩衝グリセロール複合培地、緩衝メタノール複合培地、及び酵母抽出ペプトンデキストロースからなる群から選択される、上記[45]に記載の方法。
[48] 前記期間が、24時間~72時間の範囲である、上記[45]に記載の方法。
[49] 前記酵母株が、前記pTHX1構成的二方向性プロモーターのDNA及び前記pGCW14-pGAP1構成的二方向性プロモーターのDNAからなる群から選択されるプロモーターを含む、上記[45]に記載の方法。
[50] 前記酵母株が、抗生物質耐性をコードするDNA及び栄養要求性マーカーをコードするDNAからなる群から選択される少なくとも1つの選択マーカーを含む、上記[45]に記載の方法。
【外国語明細書】