(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179527
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】視機能を強化するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/17 20060101AFI20231212BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20231212BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20231212BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231212BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20231212BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20231212BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20231212BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20231212BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20231212BHJP
【FI】
A61K38/17 ZNA
A61K48/00
A61P27/02
A61P43/00 105
C12N15/12
C12N15/86 Z
C12N15/11 Z
C12N15/864 100Z
C12N5/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023156032
(22)【出願日】2023-09-21
(62)【分割の表示】P 2020523314の分割
【原出願日】2018-11-13
(31)【優先権主張番号】62/585,237
(32)【優先日】2017-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/589,476
(32)【優先日】2017-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/641,783
(32)【優先日】2018-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.iPad
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】イサコフ エフド ワイ.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】眼疾患治療のための改良された光遺伝学的アプローチを提供する。
【解決手段】本開示は、中波長錐体オプシン(MW-オプシン)、長波長錐体オプシン(LW-オプシン)及び短波長錐体オプシン(SW-オプシン)のうちの1つまたは複数をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を個体に投与する工程を含む、個体における視機能を回復または強化する方法を提供する。MW-オプシン、LW-オプシン及びSW-オプシンのうちの1つまたは複数を個体の網膜細胞に発現させ、それによって視機能を回復または強化する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体における視機能を回復または強化する方法であって、
中波長オプシン(MW-オプシン)及び/または長波長オプシン(LW-オプシン)及び/または短波長オプシン(SW-オプシン)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を前記個体へ投与する工程を含み、
前記投与工程が、前記個体の網膜細胞における前記MW-オプシン及び/または前記LW-オプシン及び/または前記SW-オプシンの発現ならびに視機能の回復または強化を提供する、
前記方法。
【請求項2】
前記MW-オプシンが、配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
前記LW-オプシンが、配列番号4に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び
前記SW-オプシンが、配列番号5に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記SW-オプシンが、配列番号5に記載のヒトSW-オプシンのアミノ酸配列に対して少なくとも87%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号6に記載のマウスSW-オプシンのアミノ酸配列に対して少なくとも87%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(i)配列番号5に記載のヒトSW-オプシンのアミノ酸配列に対して少なくとも87%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むSW-オプシンをコードするヌクレオチド配列を含む、第1の核酸と、
(ii)配列番号6に記載のマウスSW-オプシンのアミノ酸配列に対して少なくとも87%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むSW-オプシンをコードするヌクレオチド配列を含む、第2の核酸とを、
前記個体へ投与する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記SW-オプシンが、マウスSW-オプシンの細胞内ドメイン及びヒトSW-オプシンの膜貫通ドメインを含むキメラSW-オプシンである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記キメラSW-オプシンが、配列番号7に記載のキメラSW-オプシンのアミノ酸配列に対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記網膜細胞における前記MW-オプシン及び/または前記LW-オプシン及び/または前記SW-オプシンの発現が、前記個体によるパターン化された視覚及び像認識を提供する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記像認識が静止像またはパターンの像認識である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記像認識が移動像またはパターンの像認識である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記網膜細胞における前記MW-オプシン及び/または前記LW-オプシン及び/または前記SW-オプシンの発現が、約10-4W/cm2~約1W/cm2の光強度における像認識を提供する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記網膜細胞における前記MW-オプシン及び/または前記LW-オプシン及び/または前記SW-オプシンの発現が、網膜細胞にチャネルロドプシンポリペプチドを発現している個体による像認識の提供に必要な光強度の少なくとも10倍低い光強度における像認識を提供する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記網膜細胞における前記MW-オプシン及び/または前記LW-オプシン及び/または前記SW-オプシンの発現が、ロドプシンポリペプチドによって網膜細胞に与えられた反応速度の少なくとも2倍速い反応速度を提供する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記核酸が組換え発現ベクターである、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記組換え発現ベクターが組換えウイルスベクターである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記組換えウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、またはレトロウイルスベクターである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ヌクレオチド配列が、網膜細胞において機能する転写調節因子に作動可能に連結されている、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記転写調節因子が網膜細胞特異的プロモーターである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記プロモーターが、シナプシンプロモーター、CAGプロモーター、CMVプロモーター、grm6プロモーター、Pleiadesプロモーター、ChATプロモーター、V-glutプロモーター、GADプロモーター、PVプロモーター、ソマトスタチン(SST)プロモーター、神経ペプチドY(NPY)プロモーター、VIPプロモーター、赤錐体オプシンプロモーター、ロドプシンプロモーター、ロドプシンキナーゼプロモーター、卵黄状黄斑ジストロフィー2(VMD2)遺伝子プロモーター、または光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)遺伝子プロモーターである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記投与工程が眼球内注射を介する、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記投与工程が硝子体内注射を介する、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記投与工程が網膜下注射を介する、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記個体が、網膜色素変性症、黄斑変性、網膜分離症及びレーバー先天性黒内障ならびに糖尿病網膜症から選択される眼疾患を有する、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記個体が、外傷または頭部損傷による網膜剥離または光受容体の喪失を経験している、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記核酸がナノ粒子と複合体を形成する、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
中波長オプシン(MW-オプシン)及び/または長波長オプシン(LW-オプシン)及び/または短波長オプシン(SW-オプシン)をコードするヌクレオチド配列を含む、組換えウイルスベクター。
【請求項26】
アデノ随伴ウイルスベクターである、請求項25に記載の組換えウイルスベクター。
【請求項27】
前記MW-オプシンが、配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
前記LW-オプシンが、配列番号4に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び
前記SW-オプシンが、配列番号5~7のうちの1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも87%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、
請求項25または26に記載の組換えウイルスベクター。
【請求項28】
前記ヌクレオチド配列がプロモーターに作動可能に連結されている、請求項25~27のいずれか1項に記載の組換えウイルスベクター。
【請求項29】
前記プロモーターが、シナプシンプロモーター、CAGプロモーター、CMVプロモーター、grm6プロモーター、Pleiadesプロモーター、ChATプロモーター、V-glutプロモーター、GADプロモーター、PVプロモーター、ソマトスタチン(SST)プロモーター、神経ペプチドY(NPY)プロモーター、VIPプロモーター、赤錐体オプシンプロモーター、ロドプシンプロモーター、ロドプシンキナーゼプロモーター、卵黄状黄斑ジストロフィー2(VMD2)遺伝子プロモーター、または光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)遺伝子プロモーターである、請求項28に記載の組換えウイルスベクター。
【請求項30】
野生型AAVカプシドと比較して向上した網膜細胞の感染性を付与しかつ/または向上した内境界膜を通過する能力を付与する変異体カプシドポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組換えAAVベクターである、請求項25~29のいずれか1項に記載の組換えウイルスベクター。
【請求項31】
(a)請求項25~30のいずれか1項に記載の組換えウイルスベクターと、
(b)薬学的に許容可能な賦形剤と
を含む、医薬組成物。
【請求項32】
個体における視機能を回復または強化する方法であって、
請求項25~30のいずれか1項に記載の組換えウイルスベクターまたは請求項31に記載の医薬組成物を前記個体に投与する工程を含み、
前記投与工程が、前記個体の網膜細胞における前記MW-オプシン及び/または前記LW-オプシン及び/または前記SW-オプシンの発現ならびに視機能の回復または強化を提供する、
前記方法。
【請求項33】
配列番号6に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも87%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むマウスSW-オプシンの細胞内部分と、
配列番号5に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも87%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むヒトSW-オプシンの膜貫通部分と
を含む、キメラSW-オプシン。
【請求項34】
配列番号7に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項33に記載のキメラSW-オプシン。
【請求項35】
請求項33または請求項34に記載のキメラSW-オプシンをコードするヌクレオチド配列を含む、組換え発現ベクター。
【請求項36】
(a)請求項35に記載の組換え発現ベクターと、
(b)薬学的に許容可能な賦形剤と
を含む、組成物。
【請求項37】
1つまたは複数の錐体オプシンをコードする1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む1つまたは複数の組換え核酸ベクターを含む組成物であって、
前記1つまたは複数のヌクレオチド配列が、それを必要とする対象の眼内で発現されると、前記対象が、空間的パターン弁別試験において垂直線を含む像と水平線を含む像とを区別できる、
前記組成物。
【請求項38】
1つまたは複数の錐体オプシンをコードする1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む1つまたは複数の組換え核酸ベクターを含む組成物であって、
前記1つまたは複数のヌクレオチド配列が、それを必要とする対象の眼内で発現されると、前記対象が、空間的パターン弁別試験において静止線を含む像と移動線を含む像とを区別できる、
前記組成物。
【請求項39】
1つまたは複数の錐体オプシンをコードする1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む1つまたは複数の組換え核酸ベクターを含む組成物であって、
前記1つまたは複数のヌクレオチド配列が、それを必要とする対象の眼内で発現されると、前記対象が、時間的光パターン試験においてフラッシュ光と定常光とを区別できる、
前記組成物。
【請求項40】
1つまたは複数の錐体オプシンをコードする1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む1つまたは複数の組換え核酸ベクターを含む組成物であって、
前記1つまたは複数のヌクレオチド配列が、それを必要とする対象の眼内で発現されると、前記対象が、像認識試験において約10-4W/cm2~約10W/cm2の光強度における像を認識できる、
前記組成物。
【請求項41】
1つまたは複数の錐体オプシンをコードする1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む1つまたは複数の組換え核酸ベクターを含む組成物であって、
前記1つまたは複数のヌクレオチド配列が、それを必要とする対象の眼内で発現されると、前記対象が、光回避試験において白色光を有する区域と白色光のない区域とを区別できる、
前記組成物。
【請求項42】
前記1つまたは複数の錐体オプシンが、
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むMW-オプシン、
(b)配列番号4に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むLW-オプシン、
(c)配列番号5に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むSW-オプシン、ならびに
(d)(i)配列番号6に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも87%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むマウスSW-オプシンの細胞内部分、及び
(ii)配列番号5に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも87%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むヒトSW-オプシンの膜貫通部分
を含むキメラSW-オプシン
からなる群から選択される、請求項37~41のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項43】
前記1つまたは複数の組換え核酸ベクターが、2つの異なる錐体オプシンをコードする1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む、請求項37~41のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項44】
前記1つまたは複数の組換え核酸ベクターが、3つの異なる錐体オプシンをコードする1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む、請求項37~41のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項45】
前記1つまたは複数の組換え核酸ベクターが、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、またはレトロウイルスベクターである、請求項37~44のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項46】
前記1つまたは複数の組換え核酸ベクターが組換えアデノ随伴ウイルスベクターである、請求項37~44のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項47】
前記組換えAAVベクターが、野生型AAVカプシドと比較して向上した網膜細胞の感染性を付与しかつ/または向上した内境界膜を通過する能力を付与する変異体カプシドポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
前記1つまたは複数のヌクレオチド配列がプロモーターに作動可能に連結されている、請求項37~47のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項49】
前記プロモーターが、シナプシンプロモーター、CAGプロモーター、CMVプロモーター、grm6プロモーター、Pleiadesプロモーター、ChATプロモーター、V-glutプロモーター、GADプロモーター、PVプロモーター、ソマトスタチン(SST)プロモーター、神経ペプチドY(NPY)プロモーター、VIPプロモーター、赤錐体オプシンプロモーター、ロドプシンプロモーター、ロドプシンキナーゼプロモーター、卵黄状黄斑ジストロフィー2(VMD2)遺伝子プロモーター、または光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)遺伝子プロモーターである、請求項48に記載の組成物。
【請求項50】
前記対象が、網膜色素変性症、黄斑変性、網膜分離症及びレーバー先天性黒内障ならびに糖尿病網膜症から選択される眼疾患を有する、請求項37~49のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項51】
前記対象が、外傷または頭部損傷による網膜剥離または光受容体の喪失を経験している、請求項37~49のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項52】
薬学的に許容可能な賦形剤を含む、請求項37~51のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項53】
前記薬学的に許容可能な賦形剤が生理食塩水を含む、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
無菌である、請求項37~53のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2017年11月13日出願の米国仮特許出願第62/585,237号、2017年11月21日出願の米国仮特許出願第62/589,476号及び2018年3月12日出願の米国仮特許出願第62/641,783号の利益を主張し、各出願は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究の記載
本発明は、国立衛生研究所により付与されたEY018241の下、政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
序論
遺伝性及び加齢性の網膜変性疾患は、桿体光受容体及び錐体光受容体の進行性の喪失を引き起こし、完全な失明をもたらす。視覚に必要な光感知細胞の喪失にもかかわらず、網膜内の下流の神経細胞は機能状態で生存しており、光遺伝学的治療の標的を提供している。これまで、光遺伝学的アプローチは、a)微生物オプシン及び化学修飾した哺乳類受容体における非常に低い光感受性、b)網膜オプシンにおける非常に遅い反応速度、ならびにc)非常に幅広い範囲の周囲光レベルにわたり高感度である生来の視覚を提供する適応機構の欠如を含む、ある種の制限に直面してきた。
【0004】
当該技術分野において、眼疾患治療のための改良された光遺伝学的アプローチが必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
概要
本開示は、個体における視機能を回復または強化する方法を提供し、方法は、中波長錐体オプシン(MW-オプシン)、長波長錐体オプシン(LW-オプシン)及び短波長錐体オプシン(SW-オプシン)のうちの1つまたは複数をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を個体に投与する工程を含む。MW-オプシン、LW-オプシン及びSW-オプシンのうちの1つまたは複数を個体の網膜細胞に発現させ、それによって視機能を回復または強化する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】MW-オプシンまたはロドプシンの光による活性化がGIRKチャネルを作動させ、外部高カリウムにおいて負の保持電位で、内向き光電流を生成することを示す。
【
図2】桿体及び錐体が変性したrd1マウスから単離した網膜におけるタンパク質発現及び光応答を示す。
図2a~
図2dは網膜細胞におけるMW-オプシン発現を示し、
図2e~
図2gはMW-オプシンによって媒介される光誘発応答を示す。
【
図3】盲目のrd1マウスから単離した網膜細胞内のMW-オプシンまたはロドプシンの光応答のタイミング、大きさ及び高感度を示す。
【
図4】
図4a~4cは、rd1マウスの網膜細胞内のMW-オプシン及びロドプシンによって媒介される明暗を区別する同等の能力を立証する行動試験を示し、
図4d~4eは、しかしながら、動物におけるフラッシュと定常光の区別はMW-オプシンのみによって可能となることを示し、
図4f~4gは、動物における様々な空間的光パターン間の区別はMW-オプシンのみによって可能となることを示す。
図4h~4iは、MW-オプシンはまた、静止像としてまたは動いている状態で呈示される、間隔の異なる平行線間における野生型レベルの線の区別も補助することを示す。
【
図5】rd1マウスにおけるMW-オプシンにより媒介される明順応を示す。
図5a~5cは、単離した網膜のMEA記録における明順応を示し、
図5d~5fは、視覚誘導行動における明順応を示す。
【
図6】MW-オプシン、LW-オプシン及びSW-オプシンによる、1cmの間隔の平行線対6cmの間隔の平行線を区別する能力の回復を立証する行動試験を示す。
【
図7】正常視覚と比較した、盲目網膜における光遺伝学系の閾値応答を示す。
【
図8】MW-オプシンによって媒介される強度依存的反応速度の応答を示す。
【
図9】光回避及び学習したパターンの弁別行動を示す。
【
図10】切除した網膜及び行動マウスにおける明順応を示す。
【
図11】光回避及び学習した視覚誘導行動の統計学的有意性を示す表1を提供する。
【
図12A】ヒトSW-オプシンのアミノ酸配列のアライメント(配列番号5)及びマウスSW-オプシンのアライメント(配列番号6)ならびにまたヒト/マウスキメラSW-オプシンのアミノ酸配列の一例(配列番号7)を提供する。ヒトSW-オプシン及びヒト/マウスキメラSW-オプシンの膜貫通(TM)ドメインを下線で示し、マウスSW-オプシン及びヒト/マウスキメラSW-オプシンの細胞内ドメインを二重下線で示す。
【
図12B】ヒトSW-オプシンのアミノ酸配列のアライメント(配列番号5)及びマウスSW-オプシンのアライメント(配列番号6)ならびにまたヒト/マウスキメラSW-オプシンのアミノ酸配列の一例(配列番号7)を提供する。ヒトSW-オプシン及びヒト/マウスキメラSW-オプシンの膜貫通(TM)ドメインを下線で示し、マウスSW-オプシン及びヒト/マウスキメラSW-オプシンの細胞内ドメインを二重下線で示す。
【
図13】MW-オプシンによる視覚誘導探索行動の回復を示す。
【
図14】rd1マウスの網膜におけるMW-オプシンの発現を示す。
【
図15】rd1マウスの網膜におけるロドプシンの発現を示す。
【
図16】rd1網膜におけるMW-オプシンの形質導入効率を示す。
【
図17】MW-オプシン発現rd1網膜における光応答の遅い成分の特性評価を示す。
【
図18】MW-オプシン発現rd1マウスの単離した網膜におけるコントラスト検出を示す。
【
図19】MW-オプシン発現rd1マウスのV1におけるin vivo光応答を示す。
【
図20】MW-オプシン発現rd1マウスのin vivoコントラスト検出を示す。
【
図21】MW-オプシン発現rd1マウスのin vivoにおけるV1応答の時間的特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
定義
本明細書において、「網膜細胞」という用語は、網膜を構成する任意の細胞型、例えば、網膜神経節細胞、アマクリン細胞、水平細胞、双極細胞ならびに桿体及び錐体を含む光受容体細胞などを指し得る。
【0008】
「作動的に連結された(operatively linked)」または「作動可能に連結された(operably linked)」は、遺伝要素の並置を指し、これらの要素は、予測される様式でそれらが機能することが可能となる関係にある。例えば、プロモーターは、そのプロモーターがコード配列の転写開始を助ける場合、そのコード領域に作動的に連結されている。この機能的関係が維持される限り、プロモーターとコード領域との間に介在残基が存在してもよい。
【0009】
「発現ベクター」は、目的ポリペプチドをコードする領域を含むベクターであり、対象とする標的細胞におけるタンパク質の発現を生じさせるために使用される。発現ベクターは、標的におけるタンパク質の発現を促進するためにコード領域に作動的に連結された制御因子も含む。制御因子と、発現のために制御因子が作動可能に連結される1つまたは複数の遺伝子との組み合わせは、「発現カセット」と称されることもあり、その多くは当該技術分野で既知であり、かつ入手可能であるか、または当該技術分野で入手可能な構成要素から容易に構築され得る。
【0010】
本明細書で使用する場合、「治療(treatment)」、「治療(treating)」などの用語は、所望の薬理学的作用及び/または生理学的作用を得ることを指す。こうした作用は、その疾患もしくは症状を完全にもしくは部分的に予防するという観点から予防的であり得、及び/または疾患及び/またはその疾患に起因する有害な影響を部分的にもしくは完全に治癒させるという観点から治療的であり得る。本明細書で使用する場合、「治療」は、哺乳類、具体的にはヒトにおける疾患の任意の治療を包含し、(a)疾患にかかりやすいか、またはその疾患にかかる危険性を有し得るが、まだその疾患を有すると診断されていない対象における疾患の発症を予防すること、(b)疾患を阻害すること、すなわち、その発現を阻止すること、(c)疾患を軽減すること、すなわち疾患の退行をもたらすこと、及び(d)疾患に起因して喪失した機能を置換することを含む。
【0011】
「個体」、「宿主」、「対象」、及び「患者」という用語は、本明細書で互換的に使用され、ヒト及び非ヒト霊長類(サル及びヒトを含む)、哺乳類の競技用動物(例えば、ウマ、ラクダなど)、哺乳類の家畜(例えば、ヒツジ、ヤギ、雌ウシなど)、哺乳類のペット(イヌ、ネコなど)、ならびにげっ歯類(例えば、マウス、ラットなど)を含むがこれらに限定されない哺乳類を指す。場合によっては、個体はヒトである。
【0012】
本発明をさらに説明する前に、本発明は記載される特定の実施形態に限定されず、したがって、言うまでもなく変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、限定するものとしては意図されないことも理解されたい。
【0013】
値の範囲が与えられる場合、文脈上別途明確に示されない限り、その範囲の上限値と下限値との間に存在する、下限値の10分の1の単位までの各介在値と、その記載範囲の任意の他の記載値または介在値とが本発明に包含されると理解される。これらのより小さい範囲の上限値及び下限値は、そのより小さい範囲内に独立して含まれてもよく、また、記載範囲における任意の具体的な除外限度に従って、これらのより小さい範囲の上限値及び下限値も本発明に包含される。記載範囲が1つまたは両方の限界値を含む場合、それらの含まれる限界値の片方または両方を除外する範囲もまた、本発明に含まれる。
【0014】
他に特段の定めのない限り、本明細書中で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載の方法及び材料と同様もしくは同等の任意の方法及び材料を、本発明の実施または試験において使用することもできるが、好ましい方法及び材料をこれより説明する。本明細書で言及するすべての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれ、それらの刊行物の引用に関連した方法及び/または材料を開示し説明する。
【0015】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、文脈上別途明確に示されない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。したがって、例えば、「MW-オプシンポリペプチド(an MW-opsin polypeptide)」への言及は、複数のそのようなポリペプチドを含み、「網膜の(the retinal)」への言及は、1つまたは複数の網膜細胞及び当業者に既知のそれらの等価物などへの言及を含む。特許請求の範囲は、任意のあらゆる要素を除外するように作成されてもよいことにさらに留意されたい。したがって、この記述は、特許請求の範囲の要素の記載に関連する「単に」、「のみ」などの排他的用語の使用、または「否定的な」制限の使用のための先行する基準として機能することが意図される。
【0016】
明確にするために別個の実施形態の文脈において説明される本発明のある特徴を、単一の実施形態における組み合わせで提供してもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈において説明される本発明の様々な特徴を、別々に、または任意の好適な副組み合わせで提供してもよい。本発明に関連する実施形態のすべての組み合わせは、本発明によって明確に包含され、ありとあらゆる組み合わせが個別にかつ明示的に開示されたかのように、本明細書に開示される。さらに、様々な実施形態及びそれらの要素のすべての副組み合わせも本発明によって明確に包含され、ありとあらゆるそのような副組み合わせが個別にかつ明示的に本明細書に開示されたかのように、本明細書に開示される。
【0017】
本明細書で論じられる刊行物は、単に、本出願の出願日より前にそれらの開示が提供されているにすぎない。本明細書におけるいかなる内容も、本発明が先行発明により、そのような刊行物に先行する権利を有さないことを認めるものと解釈されるべきではない。さらに、提供される刊行物の日付は、実際の刊行日とは異なる場合があり、個別に確認する必要があり得る。
【0018】
詳細な説明
本開示は、個体における視機能を回復または強化する方法を提供し、方法は、中波長錐体オプシン(MW-オプシン)、長波長錐体オプシン(LW-オプシン)及び短波長錐体オプシン(SW-オプシン)のうちの1つまたは複数をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を個体に投与する工程を含む。MW-オプシン、LW-オプシン及びSW-オプシンのうちの1つまたは複数を個体の網膜細胞に発現させ、それによって視機能を回復または強化する。
【0019】
MW-オプシンポリペプチドは、下記のヒトMW-オプシンのアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0020】
MW-オプシンポリペプチドは、下記のマウスMW-オプシンのアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0021】
ロドプシンポリペプチドは、下記のロドプシンのアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0022】
チャネルロドプシンポリペプチドは、下記のチャネルロドプシンのアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0023】
LW-オプシンは、下記のヒトLW-オプシンのアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0024】
LW-オプシンは、下記のマウスLW-オプシンのアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0025】
SW-オプシンポリペプチドは、下記のヒトSW-オプシンのアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0026】
場合によっては、ヒトSW-オプシン(配列番号5)に対して少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むSW-オプシンは、可視領域の光に応答し、興奮性活動を示す。
【0027】
SW-オプシンポリペプチドは、下記のマウスSW-オプシンのアミノ酸配列に対して少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
場合によっては、マウスSW-オプシン(配列番号6)に対して少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むSW-オプシンは、紫外領域の光に応答し、抑制性活動を示す。
【0028】
場合によっては、ヒトSW-オプシン及びマウスSW-オプシンの双方が個体の網膜細胞内で生成される。場合によっては、ヒトSW-オプシン及びマウスSW-オプシン(ただしLW-オプシンまたはMW-オプシンではない)の双方が個体の網膜細胞内で生成される。場合によっては、ヒトSW-オプシン及びマウスSW-オプシンの双方、ならびにLW-オプシン(ただしMW-オプシンではない)が個体の網膜細胞内で生成される。場合によっては、ヒトSW-オプシン及びマウスSW-オプシンの双方、ならびにMW-オプシン(ただしLW-オプシンではない)が個体の網膜細胞内で生成される。場合によっては、ヒトSW-オプシン及びマウスSW-オプシンの双方、ならびにLW-オプシン及びMW-オプシンが個体の網膜細胞内で生成される。例えば、場合によっては、ヒトSW-オプシン(配列番号5)に対して少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むSW-オプシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む第1の組換え発現ベクターと、マウスSW-オプシン(配列番号6)に対して少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むSW-オプシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む別の第1の組換え発現ベクターとを、網膜細胞へと導入する。
【0029】
場合によっては、MW-オプシン及びLW-オプシン(ただしSW-オプシンではない)の双方が個体の網膜細胞内で生成される。場合によっては、MW-オプシン及びSW-オプシン(ただしLW-オプシンではない)の双方が個体の網膜細胞内で生成される。場合によっては、MW-オプシン、LW-オプシン及びSW-オプシンが個体の網膜細胞内で発現される。
【0030】
場合によっては、好適なオプシンはキメラオプシンであり、例えば、第1の種に由来するアミノ酸配列(複数可)及び第2の種に由来するアミノ酸配列(複数可)を含むオプシンである。例えば、場合によっては、キメラオプシンはマウスSW-オプシンの細胞内部分及びヒトSW-オプシンの膜貫通部分を含む。好適なキメラSW-オプシンの例を
図12A~12Bに示す。
【0031】
場合によっては、好適なキメラSW-オプシンは、下記のアミノ酸配列を有する
図12A~12Bに示すキメラSW-オプシンのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0032】
MW-オプシン及び/またはLW-オプシン及び/またはSW-オプシンは、異種オプシン、例えば、藻類オプシン、古細菌オプシンまたはそれらの変異体などの非哺乳類オプシンと組み合わせて使用することができる。好適な異種オプシンとしては、Chlamydomonas reinhardtii由来のチャネルロドプシン ChR2(Zhang et al.(2007)Nature 446:633;GenBank ABO64386.1)、ステップ関数型オプシン(SFO)タンパク質(Berndt et al.(2009)Nat.Neurosci.12:229)または安定化ステップ関数型オプシン(SSFO)タンパク質(WO2010/056970;Yizhar et al.(2011)Nature 477:171)、Volvox carteri由来の陽イオンチャネル(VChR1-NCBI遺伝子ID:9619570;米国特許第9,249,200号)、Volvox carteriのVChR1タンパク質とChlamydomonas reinhardtii由来のChR1タンパク質とに由来するC1V1キメラタンパク質(米国特許第9,175,095号)、Chlamydomonas reinhardtii由来のChR1タンパク質とChR2タンパク質とに由来するC1C2キメラタンパク質(Lin et al.(2009)Biophys.J.96:1803)、Chlamydomonas reinhardtii由来の脱分極性光応答性ポリペプチドの赤色シフトした変異体(そのような光応答性ポリペプチドは「ReaChR」と称される)(Lin et al.(2013)Nat.Neurosci.16:1499)、Chlamydomonas noctigama由来のCnChR2(GenBank受入番号:AHH02139)、Chloromonas subdivisaのCsChR(GenBank受入番号:AHH02144;Klapoetke et al.(2014)Nature Methods 11:338)タンパク質に由来するCsChrimsonキメラタンパク質、Stigeoclonium helveticumに由来するShChR1(GenBank受入番号:AHH02106)、「ChETA」オプシン(Gunaydin et al.(2010)Nat.Neurosci.13:387)、「SwiChR」タンパク質(WO2015/148974)、「bReaChes」タンパク質(WO/2017/048808)及びこれらに類するものなどの脱分極性オプシンが挙げられる。他の好適な脱分極性オプシンは当該技術分野において既知である。例えば、Zhang et al.(2011)Cell 147:1446、Deisseroth(2015)Nature Neurosci.18:1213、Berndt and Deisseroth(2015)Science 349:590などを参照のこと。
【0033】
個体の網膜細胞におけるMW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドの発現は、個体によるパターン化された視覚及び像認識を提供する。像認識は静止像及び/または移動像の像認識であり得る。
【0034】
個体の網膜細胞におけるMW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドの発現は、約10-4W/cm2~約10W/cm2の光強度における像認識を提供する。例えば、場合によっては、個体の網膜細胞におけるMW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドの発現は、約10-2W/cm2~約10-4W/cm2、約10-4W/cm2~約1W/cm2、約10-4W/cm2~約10-1W/cm2または約10-4W/cm2~約5×10-1W/cm2の光強度における像認識を提供する。場合によっては、個体の網膜細胞におけるMW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドの発現は、約10-4W/cm2~約10-3W/cm2、約10-3W/cm2~約10-2W/cm2、約10-2W/cm2~約10-1W/cm2または約10-1W/cm2~約1W/cm2の光強度における像認識を提供する。場合によっては、個体の網膜細胞におけるMW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドの発現は、2W/cm2まで、3W/cm2まで、4W/cm2まで、5W/cm2まで、または10W/cm2までの光強度における像認識を提供する。個体の網膜細胞におけるMW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドの発現は、5W/cm2未満、4W/cm2未満、3W/cm2未満または2W/cm2未満の光強度における像認識を提供する。
【0035】
個体の網膜細胞におけるMW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドの発現は、網膜細胞にチャネルロドプシンポリペプチド(例えば、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド)を発現している個体による像認識の提供に必要な光強度の少なくとも10倍低い光強度における個体による像認識を提供する。例えば、個体の網膜細胞におけるMW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドの発現は、網膜細胞にチャネルロドプシンポリペプチドを発現している個体による像認識の提供に必要な光強度の少なくとも10倍低い、少なくとも25倍低い、少なくとも50倍低い、少なくとも100倍低い、少なくとも150倍低い、少なくとも200倍低い、少なくとも300倍低い、少なくとも400倍低いまたは少なくとも500倍低い光強度における個体による像認識を提供する。
【0036】
網膜細胞におけるMW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドの発現は、ロドプシンポリペプチド(例えば、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド)によって網膜細胞に与えられた反応速度の少なくとも2倍速い反応速度を提供する。例えば、網膜細胞におけるMW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドの発現は、ロドプシンポリペプチドによって網膜細胞に与えられた反応速度の少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも30倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍または100倍超速い反応速度を提供する。
【0037】
本開示の方法は、MW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を個体の眼に送達する工程を含む。場合によっては、ヌクレオチド配列は哺乳類細胞で機能する転写調節因子に作動可能に連結されている。場合によっては、ヌクレオチド配列は網膜細胞における発現をもたらす転写調節因子、例えば、網膜細胞において選択的な発現をもたらす転写調節因子に作動可能に連結されている。場合によっては、ヌクレオチド配列は網膜細胞における発現をもたらすプロモーター、例えば、網膜細胞において選択的な発現をもたらすプロモーターに作動可能に連結されている。場合によっては、ヌクレオチド配列は、一般的に真核細胞または哺乳類細胞における発現をもたらすプロモーターに作動可能に連結されている。
【0038】
好適なプロモーターとしては、CAGプロモーター(Miyazaki et al.(1989)Gene 79:269)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、代謝型グルタミン酸受容体6(grm6)プロモーター(Cronin et al.(2014)EMBO Mol.Med.6:1175)、Pleiadesプロモーター(Portales-Casamar et al.(2010)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 107:16589)、コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)プロモーター(Misawa et al.(1992)J.Biol.Chem.267:20392)、小胞グルタミン酸輸送体(V-glut)プロモーター(Zhang et al.(2011)Brain Res.1377:1)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)プロモーター(Rasmussen et al.(2007)Brain Res.1144:19;Ritter et al.(2016)J.Gene Med.18:27)、コレシストキニン(CCK)プロモーター(Ritter et al.(2016)J.Gene Med.18:27)、パルブアルブミン(PV)プロモーター、ソマトスタチン(SST)プロモーター、神経ペプチドY(NPY)プロモーター、及び血管作動性腸管ペプチド(VIP)プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。好適なプロモーターとしては、赤錐体オプシンプロモーター、ロドプシンプロモーター、ロドプシンキナーゼプロモーター、及びGluRプロモーター(例えば、grm6とも称されるGluR6プロモーター)が挙げられるが、これらに限定されない。好適なプロモーターとしては、卵黄状黄斑ジストロフィー2(VMD2)遺伝子プロモーター、及び光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)遺伝子プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。使用に好適なものにはまた、L7プロモーター(Oberdick et al.(1990)Science 248:223)、thy-1プロモーター、リカバリンプロモーター(Wiechmann and Howard(2003)Curr.Eye Res.26:25);カルビンディンプロモーター;及びベータアクチンプロモーターがある。好適なプロモーターには、合成の(非天然由来の)プロモーター/エンハンサーの組み合わせを含む。
【0039】
場合によっては、MW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸は、組換え発現ベクター中に存在する。好適な発現ベクターとしては、レンチウイルスベクター、単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターなどが挙げられるが、これらに限定されない。したがって、場合によっては、MW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸は、組換えレンチウイルスベクター、組換えHSVベクター、組換えアデノウイルスベクター、組換えレトロウイルスベクターまたは組換えAAVベクターである。
【0040】
場合によっては、MW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸(例えば、組換え発現ベクター)は、ナノ粒子と複合体を形成する。
【0041】
場合によっては、MW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸は組換えAAV(rAAV)ベクターである。場合によっては、rAAVベクターは変異体AAVカプシドタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、この変異体AAVカプシドタンパク質は、網膜細胞の感染性及び/または眼の内境界膜(ILM)を通過する能力を付与する。例えば、Day et al.(2014)Adv.Exp.Med.Biol.801:687、Boye et al.(2016)J.Virol.90:4215、Vandenberghe and Auricchio(2012)Gene Therapy 19:162、Klimczak et al.(2009)PLoS One 4:e7467、米国特許公開第2012/0164106号及び米国特許公開第2016/0017295号を参照のこと。
【0042】
網膜細胞には、網膜神経節細胞、アマクリン細胞、水平細胞、双極細胞ならびに桿体及び錐体を含む光受容体細胞が含まれる。
【0043】
場合によっては、本開示の方法は、a)MW-オプシン及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸(例えば、組換え発現ベクター)とb)薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物を、それを必要とする個体に投与する工程を含む。
【0044】
MW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸(例えば、組換え発現ベクター)を含む医薬組成物は、単独でまたは他の補助的な活性剤と組み合わせて患者に投与され得る。医薬組成物は、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、研和、乳化、カプセル化、封入、及び凍結乾燥を含むがこれらに限定されない、あらゆる種々のプロセスを使用して製造され得る。医薬組成物は、滅菌溶液、懸濁液、乳濁液、凍結乾燥物、錠剤、丸剤、小丸薬、カプセル、散剤、シロップ、エリキシル剤または投与に適した任意の他の剤形を含むがこれらに限定されない、あらゆる種々の形態をとることができる。
【0045】
MW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸(例えば、組換え発現ベクター)を含む医薬組成物は、活性成分の薬学的に許容可能な組成物への加工を容易にする薬学的に許容可能な担体(複数可)を任意に含むことができる。本明細書で使用する場合、「薬理学的に許容可能な担体」という用語は、投与した際に実質的に長期にわたる悪影響または永続的な悪影響のない任意の担体を指し、「薬理学的に許容可能な溶媒、安定剤、希釈剤、助剤または賦形剤」などの用語を包含する。通常、そのような担体は活性化合物(例えば、本開示の核酸)と混合するか、または活性化合物を希釈もしくは封入することができ、担体は、固体、半固体または液体の作用物質であってよい。活性成分は可溶性であってよく、または所望の担体もしくは希釈剤中の懸濁液として送達され得ることが理解される。任意の種々の薬学的に許容可能な担体を使用することができ、担体には、例えば、蒸留水、脱イオン水、生理食塩水などの水性媒体;溶媒;分散媒;コーティング剤;抗菌剤及び抗真菌剤;等張剤及び吸収遅延剤;または任意の他の不活性成分が含まれるが、これらに限定されない。薬理学的に許容可能な担体の選択は、投与方法に依存し得る。あらゆる薬理学的に許容可能な担体は、活性成分と不適合である場合を除いて、薬理学的に許容可能な組成物におけるその使用が企図される。そのような薬学的担体の特定用途の非限定的な例は、“Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems”(Howard C. Ansel et al.,eds.,Lippincott Williams & Wilkins Publishers,7th ed.1999)、“Remington: The Science and Practice of Pharmacy”(Alfonso R.Gennaro ed., Lippincott, Williams & Wilkins,20th 2000)、“Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics”Joel G.Hardman et al.,eds.,McGraw-Hill Professional,10.sup.th ed.2001)、及び“Handbook of Pharmaceutical Excipients”(Raymond C.Rowe et al.,APhA Publications,4th edition 2003)に見ることができる。
【0046】
医薬組成物には、緩衝剤、防腐剤、等張化剤、塩、抗酸化剤、生理的物質、薬理学的物質、充填剤、乳化剤、湿潤剤、甘味剤または矯味剤などを含むがこれらに限定されない他の薬学的に許容可能な成分を、非限定的に任意に含むことができる。pHを調整するための種々の緩衝剤及び方法を、得られる調製物が薬学的に許容可能であることを条件として、医薬組成物の調製に使用することができる。そのような緩衝剤には、酢酸塩緩衝液、クエン酸塩緩衝液、リン酸塩緩衝液、中性緩衝食塩水、リン酸塩緩衝食塩水及びホウ酸塩緩衝液が含まれるがこれらに限定されない。必要に応じて、酸または塩基を組成物のpH調整に使用できることが理解される。薬学的に許容可能な抗酸化剤には、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、ブチル化ヒドロキシアニソール、及びブチル化ヒドロキシトルエンが含まれるが、これらに限定されない。有用な防腐剤には、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀及び安定化オキシクロロ組成物、例えばPURITE(商標)が含まれるが、これらに限定されない。医薬組成物への含有に適した等張化剤には、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどの塩、マンニトールまたはグリセリン及び他の薬学的に許容可能な等張化剤が含まれるが、これらに限定されない。これら及び薬理学の分野において既知の他の物質が、医薬組成物に含まれ得ることが理解される。
【0047】
薬学的に許容可能な担体として機能し得る物質のいくつかの例としては、(1)ラクトース、グルコース、及びスクロースなどの糖類、(2)トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなどのデンプン、(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロースなどのセルロースならびにその誘導体、(4)粉末トラガカント、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)タルク、(8)カカオバター及び坐剤用ワックスなどの賦形剤、(9)ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及び大豆油などの油、(10)プロピレングリコールなどのグリコール、(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコールなどのポリオール、(12)オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル、(13)寒天、(14)水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、(15)アルギン酸、(16)パイロジェンフリー水、(17)等張食塩水、(18)リンガー液、(19)エチルアルコール、(20)pH緩衝液、(21)ポリエステル、ポリカーボネート及び/またはポリ無水物、ならびに(22)医薬製剤に用いられる他の非毒性適合性物質が挙げられる。
【0048】
場合によっては、MW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸(例えば、組換え発現ベクター)は、1つまたは複数の生体適合性ポリマーとともに配合される。好適な生体適合性ポリマーとしては、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ハロゲン化ポリビニル、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタン及びそれらのコポリマー、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、アクリル酸及びメタクリル酸エステルのポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、カルボキシメチルセルロース、セルローストリアセテート、セルロース硫酸ナトリウム塩、ポリメチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)\ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリビニルアセテート、ポリ塩化ビニル ポリスチレン、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギン酸塩、キトサン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)ならびに前述の任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
場合によっては、MW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸(例えば、組換え発現ベクター)は、リポソーム中に配合される。例えば、米国特許公開第2017/0119666号を参照のこと。場合によっては、MW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸(例えば、組換え発現ベクター)は、ナノ粒子中に配合される。ナノ粒子としては、例えばポリアルキルシアノアクリレートナノ粒子、ポリ(乳酸)を含むナノ粒子、ポリ(乳酸-グリコール酸)共重合体(PLGA)ナノ粒子を含むナノ粒子などが挙げられる。場合によっては、MW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸(例えば、組換え発現ベクター)は、ハイドロゲル中に配合される。好適なハイドロゲルの成分としては、シルク(例えば、米国特許公開第2017/0173161号を参照のこと)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(ラクチド-コーグリコシド)(PLGA)、ポリエステル、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ホスファジン)、ポリ(リン酸エステル)、ポリカプロラクトン、ゼラチン、コラーゲン、セルロース、ヒアルロナン、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、トリブロックコポリマー、ポリリジン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルピロリドン)、ヒアルロン酸、アクリレート化ヒアルロン酸、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
場合によっては、MW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸(例えば、組換え発現ベクター)を含む組成物は、緩衝生理食塩水中に存在する。場合によっては、MW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組換えウイルス発現ベクターを含む組成物は、緩衝生理食塩水中に約50μL~約1000μLの容量で約108~約1015ウイルスゲノム(vg)の量で存在する。例えば、場合によっては、MW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組換えウイルス発現ベクターを含む組成物は、緩衝生理食塩水中に、約50μL~約75μL、約75μL~約100μL、約100μL~約150μL、約150μL~約200μL、約200μL~約300μL、約300μL~約400μL、約400μL~約500μL、約500μL~約600μL、約600μL~約700μL、約800μL~900μLまたは約900μL~約1000μLの容量で、約108vg~約109vg、約109vg~約1010vg、約1010vg~約1011vg、約1011vg~約1012vg、約1012vg~約1013vg、約1013vg~約1014vg、または約1014vg~約1015vgの量で存在する。場合によっては、MW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸(例えば、組換え発現ベクター)を含む組成物は、非イオン性界面活性剤を約0.001%の濃度で含む緩衝生理食塩水中に存在する。好適な非イオン性界面活性剤としては、例えば、Pluronic F68(登録商標)が挙げられる。場合によっては、MW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組換えウイルス発現ベクターを含む組成物は、緩衝生理食塩水中に、約50μL~約75μL、約75μL~約100μL、約100μL~約150μL、約150μL~約200μL、約200μL~約300μL、約300μL~約400μL、約400μL~約500μL、約500μL~約600μL、約600μL~約700μL、約800μL~900μLまたは約900μL~約1000μLの容量で、約108vg~約109vg、約109vg~約1010vg、約1010vg~約1011vg、約1011vg~約1012vg、約1012vg~約1013vg、約1013vg~約1014vg、または約1014vg~約1015vgの量で存在し、緩衝生理食塩水には、非イオン性界面活性剤が約0.001%の濃度で含まれる。生理食塩水は、0.9%のNaClを含み得る。
【0051】
MW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸(例えば、組換えウイルスベクターなどの組換え発現ベクター)は、任意の種々の投与経路によって、それを必要とする個体に投与することができる。好適な投与経路としては、例えば、眼周囲、眼球内、硝子体内、結膜下、眼球後、強膜内、及び眼房内が挙げられる。場合によっては、MW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸(例えば、組換え発現ベクター)は、硝子体内注射によって送達される。場合によっては、MW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸(例えば、組換え発現ベクター)は、眼球内に送達される。場合によっては、MW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸(例えば、組換え発現ベクター)は、網膜下注射を介して送達される。
【0052】
場合によっては、本開示の方法は、MW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸(例えば、組換えウイルスベクターなどの組換え発現ベクター)を含む組成物の単回投与(1眼につき)を、それを必要とする個体に投与する工程を含む。
【0053】
場合によっては、MW-オプシン及び/またはLW-オプシンをコードするヌクレオチド配列を含む核酸(例えば、組換え発現ベクター)の複数用量を個体に投与する。投与頻度は、あらゆる種々の要因、例えば症状の重症度などに応じて変更することができる。例えば、場合によっては、MW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸(例えば、組換え発現ベクター)を、月1回、月2回、月3回、隔週(qow)、週1回(qw)、週2回(biw)、週3回(tiw)、週4回、週5回、週6回、隔日(qod)、毎日(qd)、1日2回(qid)または1日3回(tid)投与する。
【0054】
MW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸(例えば、組換え発現ベクター)は、約1日~約1年または1年を超える期間にわたり、個体に投与することができる。例えば、MW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸(例えば、組換え発現ベクター)は、1週間~2週間、2週間~1ヶ月、1ヶ月~4ヶ月、4ヶ月~6ヶ月、6ヶ月~1年、または1年を超える期間、個体に投与することができる。
【0055】
ヌクレオチド配列を含む核酸が、MW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組換えウイルス発現ベクターである場合、この組換えウイルス発現ベクターを、1用量あたり約108vg~約109vg、約109vg~約1010vg、約1010vg~約1011vg、約1011vg~約1012vg、約1012vg~約1013vg、約1013vg~約1014vg、または約1014vg~約1015vgの量で投与することができる。
【0056】
MW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸(例えば、組換え発現ベクター)を、核酸を投与する前の視機能と比較して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍または10倍超、個体における視機能を向上させるのに有効な量で投与する。視機能のための試験は当該技術分野において既知であり、任意の既知の試験を視機能の評価に適用することができる。
【0057】
本開示の方法による治療に適切な個体には、桿体光受容体及び錐体光受容体の喪失により視機能が低下した個体が含まれる。場合によっては、個体は、網膜色素変性症、網膜分離症またはレーバー先天性黒内障などの遺伝性の網膜変性疾患を有する。場合によっては、個体は網膜色素変性症、黄斑変性、加齢黄斑変性、網膜分離症及びレーバー先天性黒内障ならびに糖尿病網膜症から選択される眼疾患(例えば、遺伝性眼疾患)を有する。本開示の方法による治療に適切な個体には、生来の光感受性を喪失しそれにより視覚を損傷しているものの、網膜回路の後方の神経細胞(例えば、脳へ出力する双極細胞またはアマクリン介在ニューロンまたは神経節細胞)が温存されており、かつ錐体オプシン(複数可)の導入により光に対し直接的に感受性となり得る、網膜変性状態を有する個体を含む。
【0058】
本開示の方法による治療に適切な個体には、遺伝学的な(genetic)または遺伝性の(inherited)基礎のない、外傷性または急性の網膜損傷を有する個体を含む。例えば、場合によっては、個体は爆創(例えば、軍事戦において)などの鈍的外傷の結果として生じる網膜剥離、または頭部への衝撃(例えば、頭部に衝撃を与える自動車事故もしくは他の事故の過程において)の結果として生じる網膜剥離を経験している。いくつかの例では、光受容体は下層のRPEからの外傷性網膜剥離によって失われているが、内側の網膜神経細胞はインタクトである。本開示の方法による治療に適切な個体には、急性光障害、レーザー曝露または化学毒性によって光受容体を喪失している個体を含む。
【0059】
組成物
本開示は、1つまたは複数の錐体オプシンをコードする1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む1つまたは複数の組換え核酸ベクターを含む組成物を提供する。組成物がそれを必要とする個体に投与されるとき、1つまたは複数の錐体オプシンをコードする1つまたは複数のヌクレオチド配列が、1つまたは複数の錐体オプシンが対象の眼内で生成されるようにそれを必要とする対象の眼内で発現し、1つまたは複数の有益な臨床結果がもたらされる。例えば、組成物がそれを必要とする個体の眼に投与されるとき、1つまたは複数の錐体オプシンをコードする1つまたは複数のヌクレオチド配列が、1つまたは複数の錐体オプシンが対象の眼内で生成されるようにそれを必要とする対象の眼内で発現し、1つまたは複数の有益な臨床結果がもたらされる。1つまたは複数の錐体オプシンをコードする1つまたは複数のヌクレオチド配列が、1つまたは複数の錐体オプシンが対象の眼内で生成されるようにそれを必要とする対象の眼内で発現するとき、1つまたは複数の有益な臨床結果がもたらされる。有益な臨床結果には以下が含まれる。1)対象は、空間的パターン弁別試験において垂直線を含む像と水平線を含む像とを区別できる、2)対象は、空間的パターン弁別試験において静止線を含む像と移動線を含む像とを区別できる、3)対象は、時間的光パターン試験においてフラッシュ光と定常光とを区別できる、4)対象は、像認識試験において約10-4W/cm2~約10W/cm2の光強度における像を認識できる、及び5)対象は、光回避試験において白色光を有する区域と白色光のない区域とを区別できる。
【0060】
組成物が1つまたは複数の上記の有益な臨床結果をもたらすか否かは、当該技術分野において既知の試験によって決定できる。例えば、Leinonen and Tanila(2017) Behavioural Brain Research pii: S0166-4328(17)30870-7、Caporale et al.(2011).Molecular Therapy 19,1212-9、Gaub et al.(2014) Proc.Natl. Acad.Sci.USA 111, E5574-83、Gaub et al.(2015)Molecular Therapy 23:1562、及び Berry et al.(2017)Nat.Commun.8:1862を参照のこと。
【0061】
1つもしくは複数の錐体オプシンをコードする1つもしくは複数のヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数の組換え核酸ベクターを含む本開示の組成物であって、i)組成物がそれを必要とする個体に投与されるとき、またはii)1つもしくは複数のヌクレオチド配列がそれを必要とする対象の眼内で発現するように(1つもしくは複数のオプシンが対象の眼内で生成されるように)、組成物がそれを必要とする個体の眼に投与されるとき、対象は、空間的パターン弁別試験において垂直線を含む像と水平線を含む像とを区別できる、組成物。1つまたは複数の錐体オプシンをコードする1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む1つまたは複数の組換え核酸ベクターを含む本開示の組成物であって、1つまたは複数のヌクレオチド配列が、(1つまたは複数のオプシンが対象の眼内で生成されるように)それを必要とする対象の眼内で発現されると、対象は、空間的パターン弁別試験において垂直線を含む像と水平線を含む像とを区別できる、組成物。
【0062】
1つもしくは複数の錐体オプシンをコードする1つもしくは複数のヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数の組換え核酸ベクターを含む本開示の組成物であって、i)組成物がそれを必要とする個体に投与されるとき、またはii)1つもしくは複数のヌクレオチド配列がそれを必要とする対象の眼内で発現するように(1つもしくは複数のオプシンが対象の眼内で生成されるように)、組成物がそれを必要とする個体の眼に投与されるとき、対象は、空間的パターン弁別試験において静止線を含む像と移動線を含む像とを区別できる、組成物。本開示は、1つまたは複数の錐体オプシンをコードする1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む1つまたは複数の組換え核酸ベクターを含む組成物を提供し、該1つまたは複数のヌクレオチド配列が、(1つまたは複数のオプシンが対象の眼内で生成されるように)それを必要とする対象の眼内で発現されると、対象は、空間的パターン弁別試験において静止線を含む像と移動線を含む像とを区別できる。
【0063】
1つもしくは複数の錐体オプシンをコードする1つもしくは複数のヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数の組換え核酸ベクターを含む本開示の組成物であって、i)組成物がそれを必要とする個体に投与されるとき、またはii)1つもしくは複数のヌクレオチド配列がそれを必要とする対象の眼内で発現するように(1つもしくは複数のオプシンが対象の眼内で生成されるように)、組成物がそれを必要とする個体の眼に投与されるとき、対象は、時間的光パターン試験においてフラッシュ光と定常光とを区別できる、組成物。本開示は、1つまたは複数の錐体オプシンをコードする1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む1つまたは複数の組換え核酸ベクターを含む組成物を提供し、該1つまたは複数のヌクレオチド配列が、(1つまたは複数のオプシンが対象の眼内で生成されるように)それを必要とする対象の眼内で発現されると、対象は、時間的光パターン試験においてフラッシュ光と定常光とを区別できる。
【0064】
1つもしくは複数の錐体オプシンをコードする1つもしくは複数のヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数の組換え核酸ベクターを含む本開示の組成物であって、i)組成物がそれを必要とする個体に投与されるとき、またはii)1つもしくは複数のヌクレオチド配列がそれを必要とする対象の眼内で発現するように(1つもしくは複数のオプシンが対象の眼内で生成されるように)、組成物がそれを必要とする個体の眼に投与されるとき、対象は、像認識試験において約10-4W/cm2~約10W/cm2の光強度における像を認識できる、組成物。本開示は、1つまたは複数の錐体オプシンをコードする1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む1つまたは複数の組換え核酸ベクターを含む組成物を提供し、該1つまたは複数のヌクレオチド配列が、(1つまたは複数のオプシンが対象の眼内で生成されるように)それを必要とする対象の眼内で発現されると、対象は、約10-4W/cm2~約10W/cm2の光強度(例えば、約10-4W/cm2~約10-3W/cm2、約10-3W/cm2~約10-2W/cm2、約10-2W/cm2~約10-1W/cm2、または約10-1W/cm2~約1W/cm2の光強度)における像を認識できる。場合によっては、個体の網膜細胞におけるMW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドの発現は、像認識試験において、2W/cm2まで、3W/cm2まで、4W/cm2まで、5W/cm2まで、または10W/cm2までの光強度における像認識を提供する。
【0065】
1つもしくは複数の錐体オプシンをコードする1つもしくは複数のヌクレオチド配列を含む1つもしくは複数の組換え核酸ベクターを含む本開示の組成物であって、i)組成物がそれを必要とする個体に投与されるとき、またはii)1つもしくは複数のヌクレオチド配列がそれを必要とする対象の眼内で発現するように(1つもしくは複数のオプシンが対象の眼内で生成されるように)、組成物がそれを必要とする個体の眼に投与されるとき、対象は、光回避試験において白色光を有する区域と白色光のない区域とを区別できる、組成物。本開示は、1つまたは複数の錐体オプシンをコードする1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む1つまたは複数の組換え核酸ベクターを含む組成物を提供し、該1つまたは複数のヌクレオチド配列が、(1つまたは複数のオプシンが対象の眼内で生成されるように)それを必要とする対象の眼内で発現されると、対象は、光回避試験において白色光を有する区域と白色光のない区域とを区別できる。
【0066】
本開示の組成物中に存在する1つまたは複数の組換え核酸によってコードされ得る錐体オプシンは上述されており、例えば、MW-オプシン、LW-オプシン、SW-オプシン、キメラオプシンなどが挙げられる。
【0067】
場合によっては、本開示の組成物中に存在する1つまたは複数の組換え核酸によってコードされる1つまたは複数の錐体オプシンは、以下からなる群:a)配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むMW-オプシン、b)配列番号4に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むLW-オプシン、c)配列番号5に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むSW-オプシン、ならびにd)i)配列番号6に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むマウスSW-オプシンの細胞内部分、及びii)配列番号5に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むヒトSW-オプシンの膜貫通部分を含むキメラSW-オプシンから選択される。
【0068】
場合によっては、本開示の組成物は、単一の錐体オプシンをコードするヌクレオチド配列を含む組換え核酸を含む。場合によっては、本開示の組成物中に存在する1つまたは複数の組換え核酸ベクターは、異なる2つの錐体オプシンをコードする1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む。例えば、場合によっては、本開示の組成物中に存在する1つまたは複数の組換え核酸ベクターは、MW-オプシン及びLW-オプシンをコードする1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む。別の例として、場合によっては、本開示の組成物中に存在する1つまたは複数の組換え核酸ベクターは、MW-オプシン及びSW-オプシンをコードする1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む。別の例として、場合によっては、本開示の組成物中に存在する1つまたは複数の組換え核酸ベクターは、LW-オプシン及びSW-オプシンをコードする1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む。2つの異なる錐体オプシンは、単一の組換え核酸上にコードされ得る。2つの異なる錐体オプシンは、2つの別個の組換え核酸上にコードされ得る。
【0069】
場合によっては、本開示の組成物中に存在する1つまたは複数の組換え核酸ベクターは、異なる3つの錐体オプシンをコードする1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む。例えば、場合によっては、本開示の組成物中に存在する1つまたは複数の組換え核酸ベクターは、MW-オプシン、SW-オプシン及びLW-オプシンをコードする1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む。3つの異なる錐体オプシンは、単一の組換え核酸上にコードされ得る。3つの異なる錐体オプシンは、3つの別個の組換え核酸上にコードされ得る。
【0070】
好適な組換え核酸ベクターとしては、組換えアデノ随伴ウイルスベクター、組換えレンチウイルスベクター、組換え単純ヘルペスウイルスベクター及び組換えレトロウイルスベクターが挙げられる。場合によっては、1つまたは複数の組換え核酸ベクターは、組換えアデノ随伴ウイルスベクターである。いくつかの例では、組換えAAVベクターは、野生型AAVカプシドと比較して向上した網膜細胞の感染性を付与しかつ/または向上した内境界膜を通過する能力を付与する変異体カプシドポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0071】
錐体オプシンをコードするヌクレオチド配列は、1つまたは複数の転写調節因子に作動可能に連結され得る。例えば、錐体オプシンをコードするヌクレオチド配列は、プロモーターに作動可能に連結され得る。好適なプロモーターの例としては、シナプシンプロモーター、CAGプロモーター、CMVプロモーター、grm6プロモーター、Pleiadesプロモーター、ChATプロモーター、V-glutプロモーター、GADプロモーター、PVプロモーター、ソマトスタチン(SST)プロモーター、神経ペプチドY(NPY)プロモーター、VIPプロモーター、赤錐体オプシンプロモーター、ロドプシンプロモーター、ロドプシンキナーゼプロモーター、卵黄状黄斑ジストロフィー2(VMD2)遺伝子プロモーター、及び光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)遺伝子プロモーターが挙げられるがこれらに限定されない。
【0072】
本開示の組成物は、組成物を必要とする個体に投与される。いくつかの例では、組成物は直接個体の眼にまたは眼内に、例えば、視覚障害により影響を受けている眼に投与される。場合によっては、対象は網膜色素変性症、黄斑変性、網膜分離症及びレーバー先天性黒内障ならびに糖尿病網膜症から選択される眼疾患を有する。場合によっては、対象は外傷または頭部損傷による網膜剥離または光受容体の喪失を経験している。場合によっては、対象は、生来の光感受性を喪失しそれにより視覚を損傷しているものの、網膜回路の後方の神経細胞(例えば、脳へ出力する双極細胞またはアマクリン介在ニューロンまたは神経節細胞)が温存されており、かつ錐体オプシン(複数可)の導入により光に対し直接的に感受性となり得る、網膜変性状態を有する。
【0073】
本開示の組成物には、1つまたは複数の組換え核酸に加えて、薬学的に許容可能な賦形剤を含むことができる。好適な薬学的に許容可能な賦形剤は当該技術分野において既知であり、本開示の他の部分に記載されている。場合によっては、本開示の組成物はヒト対象への投与に適しており、例えば、場合によっては組成物は無菌であり、発熱物質、汚染物質及びこれらに類するものは含まれていない。
【0074】
組換えウイルスベクター
本開示は、MW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組換えウイルスベクターを提供する。好適なウイルス発現ベクターとしては、レンチウイルスベクター、単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターなどが挙げられるが、これらに限定されない。したがって、場合によっては、MW-オプシンポリペプチド及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組換えウイルスベクターは、組換えレンチウイルスベクター、組換えHSVベクター、組換えアデノウイルスベクター、組換えレトロウイルスベクターまたは組換えAAVベクターである。
【0075】
場合によっては、MW-オプシン及び/またはLW-オプシン及び/またはSW-オプシンをコードするヌクレオチド配列は、網膜細胞における発現をもたらすプロモーターに作動可能に連結されている。場合によっては、ヌクレオチド配列は、一般的に真核細胞または哺乳類細胞における発現をもたらすプロモーターに作動可能に連結されている。
【0076】
好適なプロモーターとしては、CAGプロモーター(Miyazaki et al.(1989)Gene 79:269)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、代謝型グルタミン酸受容体6(grm6)プロモーター(Cronin et al.(2014)EMBO Mol.Med.6:1175)、Pleiadesプロモーター(Portales-Casamar et al.(2010)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 107:16589)、コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)プロモーター(Misawa et al.(1992)J.Biol.Chem.267:20392)、小胞グルタミン酸輸送体(V-glut)プロモーター(Zhang et al.(2011) Brain Res.1377:1)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)プロモーター(Rasmussen et al.(2007)Brain Res.1144:19;Ritter et al.(2016)J.Gene Med.18:27)、コレシストキニン(CCK)プロモーター(Ritter et al.(2016)J.Gene Med.18:27)、パルブアルブミン(PV)プロモーター、ソマトスタチン(SST)プロモーター、神経ペプチドY(NPY)プロモーター、及び血管作動性腸管ペプチド(VIP)プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。好適なプロモーターとしては、赤錐体オプシンプロモーター、ロドプシンプロモーター、ロドプシンキナーゼプロモーター、及びGluRプロモーター(例えば、GluR6プロモーター)が挙げられるが、これらに限定されない。好適なプロモーターとしては、卵黄状黄斑ジストロフィー2(VMD2)遺伝子プロモーター、及び光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)遺伝子プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。使用に好適なものにはまた、L7プロモーター(Oberdick et al.(1990)Science 248:223)、thy-1プロモーター、リカバリンプロモーター(Wiechmann and Howard(2003)Curr.Eye Res.26:25);カルビンディンプロモーター;及びベータアクチンプロモーターがある。
【0077】
場合によっては、本開示の組換えウイルスベクターは、MW-オプシン、LW-オプシン及びSW-オプシンをコードするヌクレオチド配列を含む。場合によっては、MW-オプシン、LW-オプシン及びSW-オプシンをコードするヌクレオチド配列は、単一のプロモーターに作動可能に連結されている。場合によっては、組換えウイルスベクターは、MW-オプシンをコードするヌクレオチド配列とLW-オプシンをコードするヌクレオチド配列との間、及びLW-オプシンをコードするヌクレオチド配列とSW-オプシンをコードするヌクレオチド配列との間に、内部リボソーム侵入部位(IRES)を含む。
【0078】
場合によっては、MW-オプシン及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組換えウイルスベクターは、組換えAAV(rAAV)ベクターである。場合によっては、rAAVベクターは、i)MW-オプシン及び/またはLW-オプシンポリペプチド及び/またはSW-オプシンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、ならびにii)変異体AAVカプシドタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、この変異体AAVカプシドタンパク質は、親野生型AAVと比較して網膜細胞の感染性及び/または向上した眼の内境界膜(ILM)を通過する能力を付与する。例えば、Day et al.(2014)Adv.Exp.Med.Biol.801:687、Boye et al.(2016)J.Virol.90:4215、Vandenberghe and Auricchio(2012)Gene Therapy 19:162、Klimczak et al.(2009)PLoS One 4:e7467、米国特許公開第2012/0164106号及び米国特許公開第2016/0017295号を参照のこと。
【0079】
例えば、変異体AAVカプシドタンパク質は、AAV6カプシドのアミノ酸451または他のAAV血清型の対応する位置にアミノ酸置換を含み得る。場合によっては、AAV6カプシドのアミノ酸451または他のAAV血清型の対応する位置のアミノ酸置換は、アスパラギンからアスパラギン酸への置換である。別の例として、変異体AAVカプシドタンパク質は、AAV6カプシドのアミノ酸532または他のAAV血清型の対応する位置にアミノ酸置換を含み得る。場合によっては、AAV6カプシドのアミノ酸532または他のAAV血清型の対応する位置のアミノ酸置換は、アスパラギン酸からアスパラギンへの置換である。
【0080】
AAV6カプシドは下記のアミノ酸配列を有し得る。
Asn-451及びAsp-532を下線付きの太字で示す。
【0081】
場合によっては、AAVカプシドタンパク質は下記のアミノ酸配列を含む。
【0082】
本開示は、MW-オプシン及び/またはLW-オプシン及び/またはSW-オプシンを網膜細胞に送達する方法を提供し、方法は、本開示の組換えウイルスベクター(または組換えウイルスベクターを含むウイルス粒子)を個体の眼に投与する工程を含む。組換えウイルスベクター(または組換えウイルスベクターを含むウイルス粒子)の投与後、MW-オプシンが網膜細胞内で生成される。
【0083】
本開示は、個体における視機能を強化または回復する方法を提供し、方法は、本開示の組換えウイルスベクター(または組換えウイルスベクターを含むウイルス粒子)を個体の眼に投与する工程を含む。組換えウイルスベクター(または組換えウイルスベクターを含むウイルス粒子)の投与後、MW-オプシン及び/またはLW-オプシン及び/またはSW-オプシンが網膜細胞内で生成される。網膜細胞におけるMW-オプシン及び/またはLW-オプシン及び/またはSW-オプシンの生成は、個体の視機能の強化または回復をもたらす。
【0084】
本開示は、a)本開示の組換えウイルスベクターまたは組換えウイルスベクターを含むウイルス粒子とb)薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。好適な薬学的に許容可能な賦形剤は上述されている。
【0085】
本開示は、MW-オプシン及び/またはLW-オプシン及び/またはSW-オプシンを網膜細胞に送達する方法を提供し、方法は、組換えウイルスベクター(または組換えウイルスベクターを含むウイルス粒子)を含む医薬組成物を個体の眼に投与する工程を含む。組換えウイルスベクター(または組換えウイルスベクターを含むウイルス粒子)の投与後、MW-オプシン及び/またはLW-オプシン及び/またはSW-オプシンが網膜細胞内で生成される。
【0086】
本開示は、個体における視機能を強化または回復する方法を提供し、方法は、本開示の組換えウイルスベクター(または組換えウイルスベクターを含むウイルス粒子)を含む医薬組成物を個体の眼に投与する工程を含む。組換えウイルスベクター(または組換えウイルスベクターを含むウイルス粒子)の投与後、MW-オプシン及び/またはLW-オプシン及び/またはSW-オプシンが網膜細胞内で生成される。網膜細胞におけるMW-オプシン及び/またはLW-オプシン及び/またはSW-オプシンの生成は、個体の視機能の強化または回復をもたらす。
【0087】
本開示の組換え発現ベクター(または組換えウイルスベクターを含むウイルス粒子)は、任意の種々の投与経路によって、それを必要とする個体に投与することができる。好適な投与経路としては、例えば、眼周囲、眼球内、硝子体内、結膜下、眼球後、強膜内、及び眼房内が挙げられる。場合によっては、本開示の組換え発現ベクター(または組換えウイルスベクターを含むウイルス粒子)は、硝子体内注射によって送達される。場合によっては、本開示の組換え発現ベクター(または組換えウイルスベクターを含むウイルス粒子)は、眼球内に送達される。場合によっては、本開示の組換え発現ベクター(または組換えウイルスベクターを含むウイルス粒子)は、網膜下注射を介して送達される。
【0088】
本開示の方法による治療に適切な個体には、桿体光受容体及び錐体光受容体の喪失により視機能が低下した個体が含まれる。場合によっては、個体は遺伝性の網膜変性疾患を有する。場合によっては、個体は網膜色素変性症、黄斑変性、網膜分離症及びレーバー先天性黒内障ならびに糖尿病網膜症から選択される眼疾患を有する。場合によっては、個体は加齢性の網膜変性疾患を有する。場合によっては、個体は加齢黄斑変性を有する。
【0089】
本開示の非限定的な態様の例
上述した本発明の対象の態様は、実施形態を含めて、単独で、または1つもしくは複数の他の態様もしくは実施形態と組み合わせて有益であり得る。上述した説明を限定するものではないが、本開示のある特定の非限定的な態様を1~54の番号を付して以下に提供する。本開示を読めば当業者には明らかであるように、個別に番号を付した態様はそれぞれ、先行または後続の個別に番号を付した態様のいずれかとともに使用しても、組み合わせてもよい。これは、態様のすべてのそのような組み合わせに対する支持を提供することを意図するものであり、以下に明示的に提供される態様の組み合わせに限定するものではない。
【0090】
態様1.個体における視機能を回復または強化する方法であって、中波長オプシン(MW-オプシン)及び/または長波長オプシン(LW-オプシン)及び/または短波長オプシン(SW-オプシン)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を前記個体へ投与する工程を含み、前記投与工程が、前記個体の網膜細胞における前記MW-オプシン及び/または前記LW-オプシン及び/または前記SW-オプシンの発現ならびに視機能の回復または強化を提供する、前記方法。
【0091】
態様2.前記MW-オプシンが、配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記LW-オプシンが、配列番号4に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び前記SW-オプシンが、配列番号5に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、態様1に記載の方法。
【0092】
態様3.前記SW-オプシンが、配列番号5に記載のヒトSW-オプシンのアミノ酸配列に対して少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列番号6に記載のマウスSW-オプシンのアミノ酸配列に対して少なくとも87%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、態様1に記載の方法。
【0093】
態様4.i)配列番号5に記載のヒトSW-オプシンのアミノ酸配列に対して少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むSW-オプシンをコードするヌクレオチド配列を含む第1の核酸と、ii)配列番号6に記載のマウスSW-オプシンのアミノ酸配列に対して少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むSW-オプシンをコードするヌクレオチド配列を含む第2の核酸とを、前記個体へ投与する工程を含む、態様1に記載の方法。
【0094】
態様5.前記SW-オプシンが、マウスSW-オプシンの細胞内ドメイン及びヒトSW-オプシンの膜貫通ドメインを含むキメラSW-オプシンである、態様1に記載の方法。
【0095】
態様6.前記キメラSW-オプシンが、配列番号7に記載のキメラSW-オプシンのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、態様5に記載の方法。
【0096】
態様7.前記網膜細胞における前記MW-オプシン及び/または前記LW-オプシン及び/または前記SW-オプシンの発現が、前記個体によるパターン化された視覚及び像認識を提供する、態様1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0097】
態様8.前記像認識が静止像またはパターンの像認識である、態様7に記載の方法。
【0098】
態様9.前記像認識が移動像またはパターンの像認識である、態様7に記載の方法。
【0099】
態様10.前記網膜細胞における前記MW-オプシン及び/または前記LW-オプシン及び/または前記SW-オプシンの発現が、約10-4W/cm2~約1W/cm2の光強度における像認識を提供する、態様1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0100】
態様11.前記網膜細胞における前記MW-オプシン及び/または前記LW-オプシン及び/または前記SW-オプシンの発現が、網膜細胞にチャネルロドプシンポリペプチドを発現している個体による像認識の提供に必要な光強度の少なくとも10倍低い光強度における像認識を提供する、態様1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0101】
態様12.前記網膜細胞における前記MW-オプシン及び/または前記LW-オプシン及び/または前記SW-オプシンの発現が、ロドプシンポリペプチドによって網膜細胞に与えられた反応速度の少なくとも2倍速い反応速度を提供する、態様1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0102】
態様13.前記核酸が組換え発現ベクターである、態様1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0103】
態様14.前記組換え発現ベクターが組換えウイルスベクターである、態様13に記載の方法。
【0104】
態様15.前記組換えウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、またはレトロウイルスベクターである、態様14に記載の方法。
【0105】
態様16.前記ヌクレオチド配列が、網膜細胞において機能する転写調節因子に作動可能に連結されている、態様1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0106】
態様17.前記転写調節因子が網膜細胞特異的プロモーターである、態様16に記載の方法。
【0107】
態様18.前記プロモーターが、シナプシンプロモーター、CAGプロモーター、CMVプロモーター、grm6プロモーター、Pleiadesプロモーター、ChATプロモーター、V-glutプロモーター、GADプロモーター、PVプロモーター、ソマトスタチン(SST)プロモーター、神経ペプチドY(NPY)プロモーター、VIPプロモーター、赤錐体オプシンプロモーター、ロドプシンプロモーター、ロドプシンキナーゼプロモーター、卵黄状黄斑ジストロフィー2(VMD2)遺伝子プロモーター、または光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)遺伝子プロモーターである、態様17に記載の方法。
【0108】
態様19.前記投与工程が眼球内注射を介する、態様1~18のいずれか1つに記載の方法。
【0109】
態様20.前記投与工程が硝子体内注射を介する、態様1~18のいずれか1つに記載の方法。
【0110】
態様21.前記投与工程が網膜下注射を介する、態様1~18のいずれか1つに記載の方法。
【0111】
態様22.前記個体が、網膜色素変性症、黄斑変性、網膜分離症及びレーバー先天性黒内障ならびに糖尿病網膜症から選択される眼疾患を有する、態様1~21のいずれか1つに記載の方法。
【0112】
態様23.前記個体が、外傷または頭部損傷による網膜剥離または光受容体の喪失を経験している、態様1~21のいずれか1つに記載の方法。
【0113】
態様24.前記核酸がナノ粒子と複合体を形成する、態様1~23のいずれか1つに記載の方法。
【0114】
態様25.中波長オプシン(MW-オプシン)及び/または長波長オプシン(LW-オプシン)及び/または短波長オプシン(SW-オプシン)をコードするヌクレオチド配列を含む、組換えウイルスベクター。
【0115】
態様26.アデノ随伴ウイルスベクターである、態様25に記載の組換えウイルスベクター。
【0116】
態様27.前記MW-オプシンが、配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記LW-オプシンが、配列番号4に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び前記SW-オプシンが、配列番号5~7のうちの1つに記載のアミノ酸配列に対して少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、態様25または26に記載の組換えウイルスベクター。
【0117】
態様28.前記ヌクレオチド配列がプロモーターに作動可能に連結されている、態様25~27のいずれか1つに記載の組換えウイルスベクター。
【0118】
態様29.前記プロモーターが、シナプシンプロモーター、CAGプロモーター、CMVプロモーター、grm6プロモーター、Pleiadesプロモーター、ChATプロモーター、V-glutプロモーター、GADプロモーター、PVプロモーター、ソマトスタチン(SST)プロモーター、神経ペプチドY(NPY)プロモーター、VIPプロモーター、赤錐体オプシンプロモーター、ロドプシンプロモーター、ロドプシンキナーゼプロモーター、卵黄状黄斑ジストロフィー2(VMD2)遺伝子プロモーター、または光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)遺伝子プロモーターである、態様28に記載の組換えウイルスベクター。
【0119】
態様30.野生型AAVカプシドと比較して向上した網膜細胞の感染性を付与しかつ/または向上した内境界膜を通過する能力を付与する変異体カプシドポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組換えAAVベクターである、態様25~29のいずれか1つに記載の組換えウイルスベクター。
【0120】
態様31.a)態様25~30のいずれか1つに記載の組換えウイルスベクターと、b)薬学的に許容可能な賦形剤とを含む、医薬組成物。
【0121】
態様32.個体における視機能を回復または強化する方法であって、態様25~30のいずれか1つに記載の組換えウイルスベクターまたは態様31に記載の医薬組成物を前記個体に投与する工程を含み、前記投与工程が、前記個体の網膜細胞における前記MW-オプシン及び/または前記LW-オプシン及び/または前記SW-オプシンの発現ならびに視機能の回復または強化を提供する、前記方法。
【0122】
態様33.配列番号6に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むマウスSW-オプシンの細胞内部分と、配列番号5に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むヒトSW-オプシンの膜貫通部分とを含む、キメラSW-オプシン。
【0123】
態様34.配列番号7に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、態様33に記載のキメラSW-オプシン。
【0124】
態様35.態様33または態様34に記載のキメラSW-オプシンをコードするヌクレオチド配列を含む、組換え発現ベクター。
【0125】
態様36.a)態様35に記載の組換え発現ベクターと、b)薬学的に許容可能な賦形剤とを含む、組成物。
【0126】
態様37.1つまたは複数の錐体オプシンをコードする1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む1つまたは複数の組換え核酸ベクターを含む組成物であって、前記1つまたは複数のヌクレオチド配列が、それを必要とする対象の眼内で発現されると、前記対象が、空間的パターン弁別試験において垂直線を含む像と水平線を含む像とを区別できる、前記組成物。
【0127】
態様38.1つまたは複数の錐体オプシンをコードする1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む1つまたは複数の組換え核酸ベクターを含む組成物であって、前記1つまたは複数のヌクレオチド配列が、それを必要とする対象の眼内で発現されると、前記対象が、空間的パターン弁別試験において静止線を含む像と移動線を含む像とを区別できる、前記組成物。
【0128】
態様39.1つまたは複数の錐体オプシンをコードする1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む1つまたは複数の組換え核酸ベクターを含む組成物であって、前記1つまたは複数のヌクレオチド配列が、それを必要とする対象の眼内で発現されると、前記対象が、時間的光パターン試験においてフラッシュ光と定常光とを区別できる、前記組成物。
【0129】
態様40.1つまたは複数の錐体オプシンをコードする1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む1つまたは複数の組換え核酸ベクターを含む組成物であって、前記1つまたは複数のヌクレオチド配列が、それを必要とする対象の眼内で発現されると、前記対象が、像認識試験において約10-4W/cm2~約10W/cm2の光強度における像を認識できる、前記組成物。
【0130】
態様41.1つまたは複数の錐体オプシンをコードする1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む1つまたは複数の組換え核酸ベクターを含む組成物であって、前記1つまたは複数のヌクレオチド配列が、それを必要とする対象の眼内で発現されると、前記対象が、光回避試験において白色光を有する区域と白色光のない区域とを区別できる、前記組成物。
【0131】
態様42.前記1つまたは複数の錐体オプシンが、a)配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むMW-オプシン、b)配列番号4に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むLW-オプシン、c)配列番号5に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むSW-オプシン、ならびにd)i)配列番号6に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも87%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むマウスSW-オプシンの細胞内部分、及びii)配列番号5に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも87%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むヒトSW-オプシンの膜貫通部分を含むキメラSW-オプシンからなる群から選択される、態様37~41のいずれか1つに記載の組成物。
【0132】
態様43.前記1つまたは複数の組換え核酸ベクターが、2つの異なる錐体オプシンをコードする1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む、態様37~41のいずれか1つに記載の組成物。
【0133】
態様44.前記1つまたは複数の組換え核酸ベクターが、3つの異なる錐体オプシンをコードする1つまたは複数のヌクレオチド配列を含む、態様37~41のいずれか1つに記載の組成物。
【0134】
態様45.前記1つまたは複数の組換え核酸ベクターが、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、またはレトロウイルスベクターである、態様37~44のいずれか1つに記載の組成物。
【0135】
態様46.前記1つまたは複数の組換え核酸ベクターが組換えアデノ随伴ウイルスベクターである、態様37~44のいずれか1つに記載の組成物。
【0136】
態様47.前記組換えAAVベクターが、野生型AAVカプシドと比較して向上した網膜細胞の感染性を付与しかつ/または向上した内境界膜を通過する能力を付与する変異体カプシドポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、態様46に記載の組成物。
【0137】
態様48.前記1つまたは複数のヌクレオチド配列がプロモーターに作動可能に連結されている、態様37~47のいずれか1つに記載の組成物。
【0138】
態様49.前記プロモーターが、シナプシンプロモーター、CAGプロモーター、CMVプロモーター、grm6プロモーター、Pleiadesプロモーター、ChATプロモーター、V-glutプロモーター、GADプロモーター、PVプロモーター、ソマトスタチン(SST)プロモーター、神経ペプチドY(NPY)プロモーター、VIPプロモーター、赤錐体オプシンプロモーター、ロドプシンプロモーター、ロドプシンキナーゼプロモーター、卵黄状黄斑ジストロフィー2(VMD2)遺伝子プロモーター、または光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)遺伝子プロモーターである、態様48に記載の組成物。
【0139】
態様50.前記対象が、網膜色素変性症、黄斑変性、網膜分離症及びレーバー先天性黒内障ならびに糖尿病網膜症から選択される眼疾患を有する、態様37~49のいずれか1つに記載の組成物。
【0140】
態様51.前記対象が、外傷または頭部損傷による網膜剥離または光受容体の喪失を経験している、態様37~49のいずれか1つに記載の組成物。
【0141】
態様52.薬学的に許容可能な賦形剤を含む、態様37~51のいずれか1つに記載の組成物。
【0142】
態様53.前記薬学的に許容可能な賦形剤が生理食塩水を含む、態様52に記載の組成物。
【0143】
態様54.無菌である、態様37~53のいずれか1つに記載の組成物。
【実施例0144】
以下の実施例は、当業者に本発明の製造方法及び使用方法の完全な開示及び説明を提供するために提示するものであり、本発明者らが考える発明の範囲を限定することを意図するものではなく、また、以下の実験が実施したすべてまたは唯一の実験であることを表すことを意図するものでもない。使用する数字(例えば、量、温度など)に対して、正確さを確保するための努力がなされているが、いくらかの実験誤差及び偏差は考慮されるべきである。別段の記載がない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏度であり、圧力は大気圧または大気圧付近である。標準的な略語、例えば、bp、塩基対(複数可);kb、キロベース(複数可);pl、ピコリットル(複数可);sまたはsec、秒(複数可);min、分(複数可);hまたはhr、時間(複数可);aa、アミノ酸(複数可);kb、キロベース(複数可);bp、塩基対(複数可);nt、ヌクレオチド(複数可);i.m.、筋肉内の(筋肉内に);i.p.、腹腔内の(腹腔内に);s.c.、皮下の(皮下に)などを使用する場合がある。
【0145】
実施例1:in vitro及びin vivoでの網膜細胞におけるMW-オプシン発現の効果
遺伝性及び加齢性の網膜変性疾患は、桿体光受容体及び錐体光受容体の進行性の喪失を引き起こし、完全な失明をもたらす。視覚に必要な光感知細胞の喪失にもかかわらず、網膜内の下流の神経細胞は機能状態で生存しており、光遺伝学的治療の標的を提供している。これまで、光遺伝学的アプローチは、微生物オプシンにおける非常に低い光感受性及び網膜オプシンにおける非常に遅い反応速度という2つの主要な制限に直面してきた。以下に提示するデータは、脊椎動物の中波長錐体オプシン(MW-オプシン)が、これらの制限を克服し、低光量下におけるパターン化された視覚を補助することを示す。盲目のrd1マウスの網膜神経節細胞(RGC)におけるMW-オプシンの発現は、反応速度が速く光に対する感受性が極めて高い一過性のON型光応答を導く。MW-オプシンは、野生型動物で見られるものと同様の光感受性、微生物オプシンで必要とされるレベルよりも3桁小さいレベル及びロドプシンと同等のレベルを有する光回避を回復させる。MW-オプシンによって、rd1動物は、空間的パターンが動いている場合であっても、異なる時間的光パターン間の区別と異なる空間的光パターン間の区別の双方が可能となる。対照的に、RGCにロドプシンを有するrd1動物は、時間的弁別と空間的弁別の双方が不可能である。顕著なことに、MW-オプシンの光応答は約1000倍の範囲にわたる周囲光に適応する。このように、MW-オプシンは速度、感度及び適応性を兼ね備えており、現実的な光強度の下で、調節可能なパターン化された視覚を回復させる。LW-オプシン及びSW-オプシンもまた、静的な視覚パターンの間の視覚弁別を補助することから、錐体オプシンは個別に生来の単色の視覚を回復させることができ、組み合わせると色覚を回復させ得ることが示唆される。
【0146】
材料及び方法
動物及びAAV
カリフォルニア大学の動物管理使用委員会(Animal Care and Use Committee)による明示の承認の下で、マウス実験を実施した。野生型マウス(C57BL/6J)及びrd1マウス(C3H)をJackson Laboratoryより購入し、食餌及び水は自由摂取として12時間の明/暗サイクルで収容した。脊椎動物の中波長錐体オプシンまたはロドプシンをコードするcDNAを、C末端に黄色蛍光タンパク質(YFP)遺伝子を結合させて、ヒトシナプシンプロモーター(hsyn-1)の制御下の構築したウイルスカセットへと挿入した。遺伝子及びプロモーターを逆位末端反復領域に隣接させ、ウッドチャック肝炎ウイルスの転写後調節エレメント(WPRE)を伴うポリアデニル化シグナル配列(polyA)によって安定化させて、AAV 2/2-4YFカプシドにパッケージングした。AAVの力価を、逆位反復ドメインの標準に対するqPCRによって測定し、1010~1012のウイルスゲノムの含有が報告された。AAVを既に記載されている通りに作製した15。鋭利な30ゲージの針を使用して網膜鋸状縁後部に設けられた切開部を介した、非鋭利な32ゲージのハミルトンシリンジを使用したマイクロインジェクションによって、ベクターをrd1マウスの眼の硝子体へ2μlの量で送達した。rAAVの注入を出生後30日目~60日目に実施し、in vivo及びin vitroの実験を出生後90日目~160日目に実施した。マウスをケタミン(72mg/kg)及びキシラジン(64mg/kg)の腹腔内投与により麻酔した。眼をプロパラカイン(0.5%)で麻酔し、瞳孔をフェニレフリン(2.5%)及びトロピカミド(1%)で散大させた。
【0147】
電気生理及び光刺激
HEK細胞の記録を既に記載されている通りに実施した15,51,52。簡単に述べると、外部高カリウム溶液(50mM)中で細胞をホールセルモードでクランプし、VH=-80mVで保持して、カリウムに内向きの駆動力を提供した。5~10秒の光パルスを低強度(1mW cm-2)で、535nm(MW-オプシンに対して)または500nmで(ロドプシンに対して)与えた。
【0148】
MEA記録を、野生型(C57BL/6J)マウスならびに未処置及び処置したrd1マウスにおいて、出生後90日超で実施した。AAV注入の6~10週間後、薄暗い赤色光の下で実験用の網膜を眼から切除し、4μmの細胞膜上にマウントし、インキュベーター(35℃)に30分間載置して、外因性発色団の9-cisレチナールで灌流した。60チャネルのMEAシステムの記録チャンバー(pMEA 100/30iR-Tpr、Multi Channel Systems)内に、Ames記録培地(32℃)の常時灌流下で、神経節細胞側を下にして網膜組織を載置した53。Multi Channel Systemsのハープウエイト((harp weight)、Scientific Instrumentsのスライスグリッド(Slice grids))を網膜の上に載置して移動を防ぎ、ポンプ(CVPを備えた穿孔MEA1060システム、Multi Channel Systems)を用いて網膜に減圧を適用することで、電極と組織との接触が改善され、網膜全体にわたり変動のない信号対雑音比がもたらされた。さらに、外因性発色団9-cis-レチナールの乾燥結晶を、暗条件下で100%エタノールにμlで溶解させた。次に、溶解したレチナールを氷上で100μlのマトリゲルに添加し、発色団の連続的な補給を提供するため、網膜のすぐ上のハープ(harp)の最上部に添加した。さらに、9-cis-レチナールを記録溶液に溶解させ、記録チャンバー内に常時灌流させた。MEA法に関するさらなる詳細は、既にGaub.et al.(2015)15に詳述されている。in vitroにおける照射は、MW-オプシンに対する535/50nmバンドパスフィルタまたはロドプシンに対する510/89nmバンドパスフィルタを用いた300Wの水銀アークランプ(DG-4、Sutter Instruments)によるものであった。光強度を、光源のデューティ比を変更することによって、または中性濃度フィルタを用いることによって調整し、光強度は0.038μW cm-2~38.2mW/cm2の範囲であった。パワーメーター(Thorlabs)による直接光測定を用いて、種々の環境における自然光強度との相対比較を得た。白色光のスペクトル成分を、Fourier Transform Optical Spectrum Analyzerソフトウェアを備えたCCD Spectrometer(Thorlabs)を用いて測定した。
【0149】
MEAデータの取得及び分析
MEA上の網膜の活動を、MC_rackソフトウェア(Multi Channel Systems)を用いて25kHzでサンプリングし、100~2,000Hzの間でフィルタリングして記録した。電圧トレースをオフラインのスパイクトレインに変換し、各電極で記録されたスパイクをOffline Sorter(Plexon、64ビット)を用いた主成分分析を介して「細胞」と定義される単一ユニットにソーティングし、各電極は一般に1~3個の細胞を識別している状態であった。単一ユニットのスパイククラスターをMATLAB(MathWorks)へエクスポートし、カスタムソフトウェアを用いて分析しグラフ化した。すべての発火頻度を、別段の定めがない限り、3~10回の光応答サイクルを平均したトレースより抽出し、それらの詳細を図面の説明に示す。細胞全体及び網膜全体にわたる応答を、Tochitsky,I.,et al.(2014)37及びGaub et al.(2014)47にて採用された光応答指数(Light Response Index、LRI)を用いて正規化した(LRI=(明所におけるピーク発火頻度-暗所における平均発火頻度)/明所におけるピーク発火頻度+暗所における平均発火頻度)。網膜内の条件(光感受性、明順応及び暗順応の感度ならびにフラッシュ持続時間に対する応答依存性)が変化した実験下では、それらの応答をベースラインから最大応答のピークへと正規化し、チャネルをすべての記録パラメータにわたりトラッキングした。すべてのカーブフィッティング及び動態分析は、Clampfit 10.6(Molecular Devices)で実施した。LRIがLRI>0.1またはLRI<-0.1の条件を満たす場合、細胞を「レスポンダー」と定義した。FWHMを決定する前に、個々の細胞のトレースを内挿し平滑化を適用するカスタムMATLAB(MathWorks)分析ソフトウェアを用いて、ベースラインからピーク半値における応答幅を確定した。強度-応答関係は単一のボルツマンに適合しており、適合度を0と1の間に正規化した。
【0150】
光遺伝学的プローブの光感受性の比較
生来のヒトの視覚感度は、暗所視下(薄暗い、10
4~10
11光子cm
-2s
-1)から明所視下(明るい、10
10~10
17光子cm
-2s
-1)までの幅広い範囲に及び、これにより、動的な照明条件下において知覚することができる。MW-オプシンの感度を、他の光遺伝学系における感度及び正常視覚における感度に関連付けるため実験を実施した。実験では、ポータブルパワーメーター(Thorlabs)を用いて屋外及び屋内の種々の条件下で測定した自然光強度を、実験パラダイムと、AAV遺伝子導入を介して光遺伝学的プローブを送達したrd1マウスから単離した網膜外植片における、機能的最大値のピークまたはピーク近傍の単色光波長を用いた文献中に報告されている光感受性の閾値(測定可能な最小光応答)と比較した(
図7)。
【0151】
In vivo脳記録のための電気生理及び光刺激
In vivo記録を、Veit et.al.(2017)58によって既に記載されている通りに実施した。マウスをイソフルラン(蒸気濃度2.5%)で麻酔した。頭皮を除去し、筋膜を後退させ、頭蓋骨を27ゲージの針を用いて軽くエッチングした。Vetbondを頭蓋骨表面に塗布後、特注のステンレス鋼ヘッドプレートを歯科用セメント(Metabond)を用いて頭蓋骨に固定した。少なくとも2日間、マウスを手術から回復させた。次いで、マウスを2~5日間、自由回転式の回転トレッドミル上で頭部固定に馴化させた。記録当日に、イソフルラン(2%)でマウスに短時間の麻酔を行い、V1上の頭蓋骨を薄くし、微細針を用いて一次視覚野の上を小さく(<250μm)開頭した。25ミクロン間隔の16チャネル直線型電極アレイ(NeuroNexus、A1x16-5mm-25-177-A16)を、マイクロマニピュレータ(Sensapex)及び実体顕微鏡(Leica)を用いて脳へと導入した。電気的活動を増幅して30kHzでデジタル化し(Spike Gadgets)、コンピュータのハードドライブに保存した。各電気接点の皮質深さを、脳表面に対する底面の接点をゼロにすることにより決定した。電極を脳表面に対してほぼ垂直に挿入した。
【0152】
視覚刺激をApple Mac Mini上で動作するPsychophysics Toolbox59を用いて生成し、ガンマ補正した23インチのEizo FORIS FS2333 LCDディスプレイ上にリフレッシュレート60-Hzで表示させた。モニタの中心をマウスの右目から15cmに置き、およそ108度×61度の視角をカバーした。すべての記録ブロックの前に、マウスを7~10分間暗順応させた。2つの異なる刺激パラダイムを使用した。1)コントラスト:4つの異なる輝度レベル(最大輝度の15%、25%、50%及び100%)の0.5Hzで500msのフルスクリーンフラッシュをマウスに呈示し、それを異なるランダムな順序で10回繰り返した。2)フリッカー:0.0167Hz(1分に1回)で20回の500msのフルスクリーンフラッシュ(最大輝度116μWcm-2)または0.5Hz、1Hz、2Hz及び4Hzで100回のフラッシュを、異なるブロックでマウスに呈示した。
【0153】
In vivo皮質記録データの取得及び分析
800~7000Hzの間の生信号をフィルタリングすることにより、スパイク活動を抽出した。UltraMega Sortパッケージ
60を使用してスパイクの検出を実施した。検出したスパイク波形を、MClustパッケージ(http://redishlab.neuroscience.umn.edu/MClust/MClust.html)を用いてソーティングした。最初に、波形をKlustaKwikを用いて自動的にクラスタリングして、次いで、後続の分析に関する基準に合致するように手動で補正した。2%を超える個々の波形が2msの不応期から逸脱しているユニットを、マルチユニットに分類した。各ユニットの深さを、ユニットの最大振幅のソーティングした波形を示す、アレイ上の電極の算出した深さに基づいて割り当てた。発火頻度を、
図20bに関しては視覚刺激の発生の250ms後に始まる2秒のウィンドウ中のスパイクをカウントすることにより算出し、
図21cに関しては刺激の発生直後に始まる5秒のウィンドウ中のスパイクをカウントすることにより算出した。刺激前後時間ヒストグラム(PSTH)のためのトレースを、スパイク応答を20ms(
図19)、50ms(
図20)または25ms(
図21)のいずれかのビンへとビニングして、得られたトレースを移動平均フィルタを用いて平滑化することによって生成した。
図21に関しては、変調振幅を、0.5Hz、1Hz、2Hz及び4Hzのフリッカーに対してそれぞれ2秒、1秒、0.5秒または0.25秒のウィンドウで25msでビニングした試験の平均スパイク応答によって算出した。対応するベースライン変調振幅を、最初の視覚刺激の発生前(暗順応期間中)からの同じ長さのウィンドウの同じ数を平均した試験により生成した。局所フィールド電位を、30kHzでサンプリングされた生信号を200Hz以下でローパスフィルタリングし、その後、1kHzまでダウンサンプリングすることにより抽出した。
【0154】
統計情報
MEA記録の統計学的有意性を評価するため、適用可能な場合に、ノンパラメトリックなマン・ホイットニーの両側U検定を適用した。学習した暗所回避行動及び学習したパターンの弁別行動に関して、2つの方法で有意性を決定した。(1)適用可能な場合、行動成績の有意性をボンフェローニ補正した独立スチューデントの両側t検定を用いて算出した。有意性を、成功した行動の割合をコンピュータ処理することによっても決定した(2)。対照群の平均値と1標準偏差との合計より大きいことを成功と定義し、失敗は、この基準に達しないあらゆる値であった。次いで、各条件に対して成功率を算出した。次に、条件間の差異における有意性を決定するためペアワイズ分割表を作図し、まず、ピアソンのカイ二乗両側検定を実施した。小標本を含む条件を補正するために、フィッシャーの直接確率片側検定も実施した。
図11(表1)。
【0155】
組織の調製及び免疫組織化学的検査
AAV2/2-hsyn-MW-coneopsin-YFPの治療後4~6週を超えたマウスを屠殺し、眼を4%パラホルムアルデヒド(Ted Pella)で30分固定した。網膜を取り去りPBSで完全に洗浄し、DAPI(細胞核染色、青色)含有のVectashield(Vector Laboratories)媒体を用いてスライド上にフラットマウントした。網膜切片用に、全組織標本をアガロース(Sigma)に包埋し、ビブラトーム(Leica Microsystems)を用いて、中速度、最大振動、厚さ180μmで横方向に切断した。網膜凍結切片または全組織標本の免疫組織化学的検査に使用した網膜組織を処理して、共焦点顕微鏡法(Leica TCS SP5;Leica Microsystems)によって検査した。
【0156】
受動的回避-オープンフィールド試験
オープンフィールド試験を既に記載されている通りに実施した16,47。簡単に述べると、2区画(明所と暗所)のシャトルボックス(Coulbourn Instruments)によって、2つの区画を連結している小開口部を介してマウスを自由に移動させることができる。明区画を区画上方のLCDパネルで照明した。白色光ならびに535nmの波長及び460nmの波長を、約100μW cm-2(白色光)ならびに0.5~25μW cm-2(青色及び緑色光)の強度で使用して、床一面に均一に分布させた。1日目-マウスを試験ボックス内へと移動させ、45分間、それらのマウスの同腹仔とともに新しい環境に馴化させた。マウスをホームケージへ戻し、次いで個々に試験を行った。2日目-マウスを明区画へ配置し、別の区画があることに気づかせるために最大で3分間与えた。マウスが暗区画へと横断したときに15分間の実験を開始し、明区画で過ごした時間を記録した。開口部を1度だけ通り、すべての時間、暗区画に留まったマウスを失格とした。順応実験のため、マウスを事前に白色光(1mW cm-2)または暗所曝露条件に1時間曝露させ、次いで、直ちにオープンフィールド試験を実施した。シャトルボックス上のIRセンサーによって動物の挙動を追跡した。両方の側で過ごした時間を、Graphic State及びGraphic State RTプログラム(Coulbourn Instruments)を用いて収集し分析した。
【0157】
視覚的合図による恐怖条件付けパラダイム
LEDスクリーンを天井に取り付けたCoulbournショックチャンバー、すなわちテストケージを備えたCoulbourn Habitestチャンバー(Coulbourn Instruments,PA)を使用して、恐怖条件付け実験を実施した。1日目に、動物を動物のホームケージ内にある試験室へ入れ、次に、個々に30分間、清潔なCoulbournショックチャンバーに順応させた。2~3日目に、動物を、チャンバー(暗所)への5分の馴化とその後の15分間にわたる0.7mAでの3回のショック試験からなる、ペアリングしたまたはペアリングしていない、光を合図とした恐怖条件付けに供した。ペアリングした試験では、LCD上の定常またはフラッシュ(2Hz)のいずれかからの移行が、ショック間の間隔(10秒間)を伴う2秒の短時間のフットショックと同時に生じた。ペアリングしていない試験では、動物は同様にショックを受けたが、刺激の移行とは無関係であった。これらの短期間の低電流ショックはごくわずかな嫌悪刺激をもたらし、パターン化した光と関連付けられた恐怖記憶を生成した。4日目に、ボックスの底部をショックグレーティングからプラスチックに交換した。マウスを5分間チャンバーに馴化させて、2日目及び3日目と同様であるがショックのない光刺激プロトコルに供した。ショックを予期したすくみ行動をCoulbournのFreezeFrameソフトウェアによって記録し、刺激前に収集された移動行動に対して正規化した。次に、恐怖応答が刺激の移行に条件付けられたものか否かを決定するために、ペアリング群と非ペアリング群との間で成績を比較した。
【0158】
能動的回避の改変プロトコル
Coulbournシャトルボックス(H10-11M-SC)、Coulbourn Habitest Isolation Cubicle(H10-24)ならびにGraphic State及びGraphic State RTソフトウェア(Coulbourn Instruments,PA)を使用して、回避プロトコルを実施した。1日目、動物を30分間、ホームケージ内の暗くした処置室に順応させ、次に、動物が恐怖を感じなくなりシャトルボックスのそれぞれの側でほぼ同じ時間を過ごす(探索行動)まで、暗くしたシャトルボックスに個々に順応させた。2~3日目に、iPadのスクリーンをシャトルケージの壁に取り付け、同一の形状、サイズ、光強度である2つの異なる画像を表示させた。各試行は、動物が配置された場所からシャトルボックスの反対側へと移動したときに開始した。各試行は15分間であった。嫌悪画像の側では、動物が「安全な」側へ戻るまで5秒間隔の0.7mAのフットショックとペアリングした。嫌悪的な側へ60秒より長く残留していた動物はすべてケージから出し、これらの試行を破棄した。4日目に、パターンではなく位置に対するバイアスを回避するため、(嫌悪的な画面が以前の「安全な」側にあるように)光のパターンを逆転させた。さらに、ケージの底部をショックグレーティングからプラスチックに交換した。これにより、訓練日に関係する唯一の関連が光刺激であることが確実になる。再度、動物を15分間試行させて、それぞれの側で過ごした時間を記録した。明順応実験に関しては、想起段階の前に1時間の明順応段階(65Wの白色電球)または暗順応段階のいずれかがある4日目を除いて、同様のプロトコルに従った。異なる光強度への順応を試験するために、iPadのスクリーンを暗くまたは明るくした。視覚を弁別する光角の算出を、行動シャトルケージ(15.24×36cm)、決定点(ディバイダー)からの距離、LCDパネル(18.85cm)の中心位置のパラメータ及び光学的(物理学的)角方程式を用いた刺激パターン(平行線間の距離が1~6cm)のパラメータを用いて実施した。視角=V=2tan-1((D/2)/(L))=18度=0.33~0.49ラジアン。視角1度あたりの周期=1/V、約0.056cpd。これは、他の研究で報告されている視覚的損傷のない野生型マウス(約0.3~0.5cpd)における成績より約9倍低い39,54,55,56。
【0159】
探索行動分析のため、2つの対象物を50cm×50cmのオープンフィールドボックスに配置した。動物を空のボックスに配置して、10分間にわたって自由に探索させた。翌日、2つの新規対象物をボックスに入れ、動物を再びボックスの壁に沿って配置し10分間にわたって自由に探索させ、その間、アリーナを連続的に撮影した。Noldus Technology Ethovision XT v13.5を使用して、各対象物に到達するまでの潜時及び対象物を探索するまでの潜時、移動速度(cm/秒)ならびに移動した距離(cm)について、映像を分析した。
【0160】
結果
HEK293細胞におけるMW-オプシンの特性評価
近年の研究により、桿体の外節に見いだされる脊椎動物ロドプシンは、培養細胞におけるGi/oシグナル伝達を制御するために低光強度の下で異所的に使用され得るが
25、繰り返される刺激により減弱しかつ不活性化が遅いことが立証されている
24,26。遅い反応速度はロドプシンが盲目網膜のON型双極細胞に発現している場合にも見られ
14,15、観察者及び周囲の対象物の動きのために、ロドプシンが自然な状況での視覚を補助できない場合があるという懸念が生じている。他の脊椎動物オプシンが、ロドプシンの高感度を有しながらも反応速度がより速いか否かが問われた。メラノプシン及び網膜外オプシンは、網膜の非光受容体細胞を含む様々な細胞型における光受容体細胞外で測定されているが、そのすべてがロドプシンと同様に遅いか、またはロドプシンよりも遅いことが判明した
14~16,27~29。哺乳類の錐体光受容体細胞由来のオプシンを選択したが、これは、これらの錐体における不活性化が、桿体におけるロドプシンの不活性化よりも迅速であることが理由である
30。錐体オプシンのうち、可視スペクトルの中央で機能するMW-オプシンを選択した。MW-オプシンまたはロドプシンのいずれかを、HEK293T細胞内で、ホモ四量体を形成するGタンパク質共役型内向き整流性カリウムチャネルの一種であり、Gαi共役型受容体の活性化に続いてGβγによって活性化されるGIRK1(F137S)とともに発現させた
31(
図1)。9-cis-レチナール(天然の発色団11-cis-レチナールの機能的に安定なアナログ)の存在下、MW-オプシン発現細胞及びロドプシン発現細胞の双方は、外部高カリウムにおいて負の保持電位で、535nm(MW-オプシンに対して)または500nm(ロドプシンに対して)で、低強度(1mW cm
-2)の光フラッシュによって誘発される大きな内向き光電流を示した(
図1a、b)。照射後、MW-オプシンによって誘発された電流は、ロドプシンによって誘発された電流の約8倍速く減衰しかつより完全に回復し、これによって、短波長錐体オプシン及び長波長錐体オプシンのための異種細胞にて既に示されているように
24、繰り返される一連の照射にわたって再生可能な応答をもたらした(
図1a、c)。このことは、迅速なスピードは錐体に特化されたものではなく、MW-オプシンのシグナル伝達に固有のものであり得ることを示唆した。次に、MW-オプシンを非光受容体網膜神経細胞中で試験した。
【0161】
図1a~1c.HEK293細胞におけるGIRKチャネルのMW-オプシン及びロドプシンの活性化。(a、b)V
H=-80mVで50mM[K
+]
extにおいてホールセルパッチ法で測定した、535nm(MW-オプシンに対して)または500nm(ロドプシンに対して)で低強度(1mW cm
-2)の光パルスに応答した(a)ロドプシンまたは(b)MW-オプシンの光刺激によるホモ四量体GIRK(F137S)チャネルの活性化の代表的なトレース。(c)ロドプシン(青色)及びMW-オプシン(緑色)の光応答の減衰(Tau OFF)。値は平均値±SEMである。n=6細胞(ロドプシン)、n=8細胞(MW-オプシン)。
【0162】
MW-オプシンは盲目網膜に速くかつ高感度な光応答を回復させる
MW-オプシンを、PDE-6-β遺伝子が変異しており桿体光受容体細胞及び錐体光受容体細胞の進行性の喪失が生じているrd1マウスの網膜において試験した。ヒトシナプシンプロモーター(hSyn-1)の制御下にあり、発現を追跡するための黄色蛍光タンパク質(YFP)C末端タグを有するMW-オプシンをAAV2/2(4YF)にパッケージングし、出生後45日目に硝子体内に注入した(
図2a、b)。4~8週間後、網膜を単離した。発現は網膜全体に認められ、遺伝子導入率は45%±19%(SD)であり、RGC層に限定され、かつON型及びOFF型RGC双方の細胞体及び樹状突起に限局していた(
図2c、d及び14)。明確な発現プロファイルが以前に示されたターゲティング
32と一致し、同一パラメータ下のロドプシンの発現と類似していた(
図15)。多電極アレイ(MEA)上に、RGC層と電極とを接触させて網膜を載置し、光誘発性活動の試験を行った。本質的に光感受性であるRGCに特有の緩慢な応答を示したわずかなRGCを例外として
57、3ヶ月齢以上の動物における完全な光受容体変性によって
33、対照のrd1同腹仔の網膜において光誘発応答は検出されなかった(
図2e)。対照的に、MW-オプシンをコードするAAVを注入した動物の網膜は、大きく速い一過性の成分と、小さく(約30%の大きさ)遅い成分からなる活動電位の発火において力強い光誘発的な増加を示した(
図2f、g、3a、16、及び17)。11-cisの供給源である網膜色素上皮の除去後、予想通り、繰り返される一連の光刺激によって光応答は減弱した。この減弱は、9-cis-レチナール(11-cis-レチナールの安定なアナログ)を記録溶液へ添加することによって軽減された(
図2g)。
【0163】
図2a~2g.rd1マウスの網膜のRGCにおけるMW-オプシンの発現及び機能。(a)ウイルスDNA発現カセット。逆位末端反復(ITR)領域に隣接し、hsyn-1プロモーターの制御下にあるYFP(緑色)を有するMW-オプシンを、ポリアデニル化シグナル配列(polyA)及びウッドチャック肝炎ウイルスの転写後調節エレメント(WPRE)によって安定化させた。(b)標的RGCをハイライト(緑色)したrd1マウスの変性網膜の模式図。ONL:外顆粒層。IPL:内網状層。光受容体変性を薄灰色で示す。(c、d)AAV2/2-hSyn-MW-opsin-YFPの硝子体内注入の4週間後のrd1マウス網膜のMW-オプシン発現における、フラットマウント(c)及び横断スライス(d)の共焦点画像の正面像。MW-オプシンのC末端に融合したYFP(緑色)の画像は、核のDAPI染色(d、青色)に関連するRGC層における網膜全体の分布(c)を示す。スケール:60μm(c)及び20μm(d)。(e、f)非注入の対照rd1マウス網膜のMEA記録(e)及びMW-オプシン発現rd1マウス網膜のMEA記録(f)。(上部)各RGCのスパイクによるラスタープロット(e:n=75細胞、f:n=84ユニット)。(下部)刺激前後時間ヒストグラム(PSTH)。光刺激プロトコル:30秒の暗間隔によって隔てられた持続時間1秒の光パルスを4回(λ=535nm、緑色バー)。(g)MW-オプシン非発現rd1網膜(灰色)及びMW-オプシン発現rd1網膜(緑色)の正規化光応答指数(LRI)(灰色:N=3網膜、n=190細胞;緑色:N=6網膜、n=273細胞)。9-cisレチナールなし(薄緑色:N=3網膜、n=106細胞)及び9-cisレチナールあり(深緑色:N=3網膜、n=167細胞)の1回目及び5回目の光フラッシュのLRI。光強度:3.38mW cm
-2。波長:λ=535nm(MW-オプシン)、値は平均値±SEMである。すべての細胞はソーティングしたユニットを指す。統計学的有意性はマン・ホイットニーのU検定(*p≦0.001)を用いて評価した。
【0164】
図14a~14b.MW-オプシンはrd1マウス網膜で発現する。AAV2/2-hSyn-MW-opsin-YFPの硝子体内注射後4~6週のrd1マウス網膜のRGCにおける、MW-オプシン-YFPのフラットマウント(a)及びスライス(b)の共焦点画像。YFP蛍光(緑色)及び核のDAPI染色(青色)。INL=内顆粒層、RGC=網膜神経節細胞層。スケール:40μm(a)及び20μm(b)。
【0165】
図15a~15b.ロドプシンはrd1マウス網膜で発現する。AAV2/2-hSyn-rhodopsin-YFPの硝子体内注射後4~6週のrd1マウス網膜のRGCにおける、ロドプシン-YFPのフラットマウント(a)及びスライス(b)の共焦点画像。YFP蛍光(緑色)及び核のDAPI染色(青色)。INL=内顆粒層、RGC=網膜神経節細胞層。スケール:40μm(a)及び20μm(b)。
【0166】
図16a~16d.rd1網膜におけるMW-オプシンの形質導入効率。(a)MEA記録において光応答性を示したMW-オプシン発現rd1マウスの網膜で確認されたチャネルの平均パーセント。光応答性は、Tochitsky et al.(2014)
37、Gaub.et al(2014)
47及びBerry et al.(2017)
62で確立されているパラメータである、光応答指数(LRI)>0.1で定義した。(LRI=(明所におけるピーク発火頻度-暗所における平均発火頻度)/明所におけるピーク発火頻度+暗所における平均発火頻度)。(b)網膜全体の応答の正規化した平均値。(a、b)N=8 rd1網膜、N=5 野生型網膜。(c)MW-オプシンrd1(n=370細胞、N=3網膜)及び野生型(n=237細胞、N=3網膜)における相互相関の平均値。光パルスの1秒前から2秒後におけるすべての光感受性ユニットの相互相関。(d)MW-オプシン(n=370細胞、N=3網膜)及び野生型網膜(n=237細胞、N=3網膜)の、同一網膜内の光感受性ユニットにおける相関値分布。
【0167】
図17a~17d.MW-オプシン発現rd1網膜における光応答の遅い成分の特性評価。(a)MW-オプシン発現rd1における平均的なRGC集団の応答の代表的なトレース(λ=510nm、パルス持続時間1秒、30秒間隔で平均5回のフラッシュ)は、光応答の速い一過性の成分及び遅い成分を示す(灰色はSEMを示す)。(b)光応答の速い一過性の成分(緑色)と遅い成分(スチールグレー)のLRI及びそれらの比率(黒色、速い/遅い)の比較(n=122チャネル、N=3網膜)。(c)遅い成分の反応速度:ピークまでの時間(T-peak)及び減衰の時定数(Tau decay)。(d)暗順応(左)及び明順応(右)条件下における、速い成分(緑色)及び遅い成分(スチールグレー)のLRI。
【0168】
網膜オプシンの潜在的な利点の1つは、それらの通常の細胞環境において光に対して高感度であることである。ON-BC及びRGC内のロドプシンならびにRGC内のメラノプシンに示されるように
14~17、ロドプシン及びメラノプシンは、網膜内を含む異所に発現させた場合、極めて高い感受性のままである
25。これと合致して、rd1マウス網膜のRGCにおけるMW-オプシンは、ロドプシンと区別がつかない程度に光に対して高感度であった(
図3b、c)。この感度はチャネルロドプシン
8,13またはハロロドプシン
11,12の感度より約1000倍高く、かつ通常の屋内光強度の範囲内である(
図7)。MW-オプシンは、感度についてはロドプシンと同様であるが、光パルスの開始時において立ち上がりが約3.5倍速くかつピークまでの時間が約4倍短く、光パルスの終了後は約7倍速く減衰し(
図3d、e)、これにより、片振幅で2.61±0.21秒持続するロドプシンのインパルス応答よりも約10倍短い、片振幅で270±21ms持続するインパルス応答をもたらす反応速度を示した。Tau ON、ピークまでの時間、Tau OFFは光強度の減少によって中程度に変化し、スピードにおいてロドプシンに対する優位性を維持した(
図8a~c)
14,15。MW-オプシン発現rd1網膜のRGCにおける応答の立ち上がり及び減衰の反応速度は、野生型網膜で見られるRGCよりも長い潜時を有することを除き、野生型網膜で見られるRGCの一過性ON応答の反応速度と類似していた(
図3e及び8d、e)。MW-オプシンの応答の反応速度の速さ及び感度は、MW-オプシンが短時間の光フラッシュに応答するであろうことを示唆した。実際、わずか25msの短い照射パルスで、依然として、野生型網膜で見られたものと同様である
34最大ピーク応答の約60%に達する応答を誘発した(
図3f、g)。
【0169】
切除した網膜及び一次視覚野におけるコントラスト感度を、フルフィールドのグレースケール段階に対する応答を測定することによって、in vivoで試験した。切除したMW-オプシン発現rd1網膜において、わずか25%の輝度の変化に応じてRGCの活動が変化し(
図18a、b)、コントラスト感度は野生型網膜のコントラスト感度に近似したが同等ではなかった(
図18c)。RGCにMW-オプシンを発現しているrd1動物における相補的なin vivo実験において、実験には、覚醒状態でフリーランしている動物の一次視覚野の層にわたる単一ユニット応答及び視覚誘発電位の計測(
図19)ならびに標準的なコンピュータモニタを用いた同様のコントラスト感度の観察が含まれた(
図20)。皮質応答は、少なくとも4Hzまでの周波数のフラッシュの後に生じた(
図21)。RGC内のMW-オプシンにより付与された光応答の感度及び反応速度によって、RGC内のMW-オプシンが視覚誘導行動を補助し得ることが示唆された。
【0170】
図3a~3g.RGCにMW-オプシンを有する単離したrd1マウス網膜の光応答。(a)(上部)rd1マウス網膜のRGCにおける、MW-オプシン発現RGC集団(緑色)またはロドプシン発現RGC集団(青色)の、1秒間の光フラッシュに対する応答の平均値。(下部)RGCに発現しているMW-オプシン(n=88細胞)に対して535nm、及びRGCに発現しているロドプシン(n=54細胞)に対して510nmの持続時間1秒の光フラッシュ5回に対する、rd1マウス網膜におけるRGCの応答の平均値のラスタープロット。(b、c)rd1マウス網膜のRGCにおける、MW-オプシン(N=2網膜、n=127細胞)及びロドプシン(N=2網膜、n=95細胞)の光感受性。最高強度における最大値に対して正規化したピーク発火頻度。(d、e)光応答の経時変化。(e)MW-オプシン(d;e、緑色、N=3網膜、n=95細胞)及びロドプシン(e、青色、N=2網膜、n=67細胞)の、照射開始から最大励起までの時間(ピークまでの時間:355±21ms)、励起段階(Tau ON:112±25ms)及び減衰(Tau OFF:260±31ms)に対する指数関数フィットならびに半値全幅(FWHM:183±85ms)を含む集団の平均トレース。(f、g)MW-オプシンの光応答のフラッシュ持続時間に対する依存性。(f)代表的な網膜の光応答(n=117細胞):集団の平均発火頻度(上部)及びユニット応答のラスタープロット(下部)。(h)異なる刺激持続時間に対する正規化したピーク応答(N=2網膜、n=183細胞)。特に明記しない限り、光強度は3.82×10
-1mW cm
-2である。波長:λ=535nm(MW-オプシン)または510nm(ロドプシン)。N=網膜の数、n=細胞/ユニットの数。すべての細胞はソーティングしたユニットを指す。値は平均±SEMである。統計学的有意性はマン・ホイットニーのU検定(*p≦0.001)を用いて評価した。
【0171】
図7.正常視覚と比較した、盲目網膜における光遺伝学系の閾値応答。生来の視覚の閾値感度(上部)と、光受容体細胞の変性後、網膜中の生存神経細胞の定義された組に導入した種々の光遺伝学系の閾値感度(下部)との比較。哺乳類のMW-オプシン(緑色)、ロドプシン(青色)及びメラノプシン(シアン)は、微生物のチャネルロドプシン2及びハロロドプシンより約1000倍感受性が高い。代替的な光遺伝学的アプローチの閾値は、Bi et al.(2006)
8、Zhang et al (2009)
12,Sengupta et al.(2016)
13、Doroudchi et al.(2011)
45、Gaub et al.(2014)
47、Cronin et al(2014)
65、Berry et al.(2017)
66、De Silva et al.(2017)
17によるものである。(8)Bi et al.(2006) RGCにおける感度限界が2.2×10
15光子cm
-2s
-1 約1mW cm
-2である、rd1マウスにおいて460nmで刺激してAAV2-CAGプロモーターを用いて発現させたチャネルロドプシン。(12)Zhang et al(2009) RGCにおける感度限界が5.8×10
16光子cm
-2s
-1 約20mW cm
-2である、rd1マウスにおいて555~575nmのバンドパスで刺激してAAV2-CMVプロモーターを用いて発現させたハロロドプシン。(13)Sengupta et al.(2016) RGCにおける感度限界が2.5×10
15光子cm
-2s
-1 約1mW cm
-2である、rd1マウスにおいて595nmで刺激してAAV2-hSynプロモーターを用いて発現させた赤色シフトチャネルロドプシン。(45)Doroudchi et al.(2011) ON-BCにおける感度限界が4×10
16光子cm
-2s
-1 約17mW cm
-2である、rd10マウスにおいて450~490nmのバンドパスで刺激してAAV8-Y733Fプロモーター及びSV-40プロモーターを用いて発現させたチャネルロドプシン。(47)Gaub et al.(2014) RGC及びON-BCにおける感度限界が7.1×10
14光子cm
-2s
-1 約0.3mW cm
-2である、rd1マウスにおいて445/20nmで刺激してAAV2-hSynプロモーター及びAAV2-4xGrm6プロモーターを用いて発現させたLiGluR-MAG
460。(65)Cronin et al (2014) ON-BCにおける感度限界が1×10
16光子cm
-2s
-1 約5mW cm
-2である、rd1マウスを刺激してAAV2/8BP2プロモーター及び4xGRM6プロモーターを用いて発現させたチャネルロドプシン。(66)Berry et al.(2017) RGCにおける感度限界が1×10
14光子cm
-2s
-1 約0.5mW cm
-2である、rd1マウスにおいて445/50nmで刺激してAAV2-hSynプロモーターを用いて発現させたSNAG-MGluR2。(17)De Silva et al.(2017) RGCにおけるメラノプシンの感度限界が1.20×10
12光子cm
-2s
-1 約0.5μWcm
-2であり、rd1マウスにおいて、480/20nmで刺激してAAV2/8(Y733F)及びCMVエンハンサー/CBAプロモーターを用いて発現させた。
【0172】
図8a~e.MW-オプシンの光応答の強度依存的反応速度。(a~c)MW-オプシン発現rd1網膜におけるTau ON(a)、Tau OFF(b)及びピークまでの時間(T-peak)(c)の光強度の依存性(秒)。n=111細胞、N=3網膜。すべての細胞はソーティングしたユニットを指す。値は平均値であり、エラーバーはSEMである。波長:λ=535nm。(d~e)MW-オプシン発現rd1(d、λ=510nm、n=117細胞)及び野生型(e、白色光、n=50細胞)の、灰色のSEMを伴うRGC集団の応答の平均値(上部)及び持続時間1秒の5回の光フラッシュを平均化したラスタープロット(下部)。
【0173】
図18a~18c.MW-オプシン発現rd1マウスの単離した網膜におけるコントラスト検出。例示のMW-オプシン発現rd1マウスから単離した網膜の、異なる強度における暗色からフルフィールドのグレースケールまでの段階に対する応答のMEA記録(14チャネルの平均)(a)。(b、c)MW-オプシン発現rd1マウス(N=2網膜)(b)及び野生型マウス(N=2網膜)(c)に対するコントラスト変化に応じたRGCの発火頻度の正規化した変化。100%の光=25μW cm
-2。
【0174】
図19a~19e.MW-オプシン発現rd1マウスのV1におけるin vivo光応答。(a)ランニングホイール上の頭部固定マウスの模式図。片眼の視野内に位置する標準的なコンピュータモニタに刺激を呈示した。(b)500msの光パルスに対する応答。上部、V1のIV層からの代表的な視覚誘発電位(20回の応答の平均、陰影部分は平均±SEMを示す)。下部、視覚野の深部にわたる直線型電極アレイの16個すべての電極からの、各ユニットの応答のヒートマップ(20回の応答の平均)。(c)3匹のMW-オプシン発現rd1マウス中39ユニットの、光誘発性の発火頻度対ベースライン発火頻度の散布図。(d)光フラッシュに応答する代表的なユニットのPSTH(50msでビニング)。(e)3匹のマウス中の39ユニットを刺激後の神経細胞発火の変化率のプロット。
【0175】
図20a~20d.MW-オプシン発現rd1マウスのin vivoコントラスト検出。(a)覚醒状態でフリーランしているMW-オプシン発現rd1マウスにおける視覚野の記録の図。動物の視野内に置かれたコンピュータモニタ上に呈示されるランダム化されたコントラスト変化。(b)V1のIV層で記録された、フルフィールドのコントラスト段階に応じた平均発火頻度(持続時間500ms)。挿入図は20msでビニングしたPSTHを示す。100%の光=115μWcm
-2。
【0176】
図21a~21c.MW-オプシン発現rd1マウスのin vivoにおけるV1応答の時間的特性。(a~c)100サイクルにわたる1Hz、2Hz及び4Hzのフルフィールドのフリッカー刺激によって誘発された視覚野における神経細胞発火の変化。
【0177】
MW-オプシンは生来の光回避を回復させる
MW-オプシンが、単離したrd1網膜において低強度で大きな光応答を生成することが観察されたため、インタクトな動物を用いて視覚的行動を補助するMW-オプシンの能力の評価を行った。視力のあるマウスは、生得的に照明された領域を回避するが、これは捕獲を逃れることと関係した生存メカニズムである
35。この行動は、rd1マウスモデルにおいて光受容体の変性後、失われる
9,16。この行動が復活し得るか否かを確認するために、RGCにMW-オプシンを有するrd1マウスを、隣接した明区画及び暗区画からなる行動ボックス内で試験した(
図4a)。各区画で過ごした時間の割合を記録し、未処置のrd1マウス及び野生型マウス(
図4、
図9a~c、
図11)と比較し、各群の回避に成功した割合も同様に比較した(
図9a~c及び
図11(表1))。明区画を屋内のオフィスの照明(100μW cm
-2)に相当する低強度の白色灯で照明した。未処置rd1動物は視覚による区画の区別が不可能であるが、未処置rd1動物は約40~50%の時間を暗区画で過ごした。これはリリースした位置に対する馴染みのため、明区画に有利という確立されたバイアスと一致する(方法を参照のこと)(
図4b)。対照的に、ロドプシンまたはMW-オプシンのいずれかを発現しているrd1マウスは、正常な視力の野生型動物と同様の暗区画への強い嗜好性を示した(
図4b及び
図9a)。次に、同一の行動パラダイムを用いて、白色光を青色光(460±22nm)または緑色光(534±25nm)に交換し、強度をMW-オプシン及びロドプシンに対する単離した網膜の強度-応答曲線の下端まで減少させた(1μW cm
-2、
図3b)。緑色光の下では、MW-オプシン発現動物とロドプシン発現動物の双方が光回避を示したが(
図4c左及び
図9b)、しかしながら青色光の下では、ロドプシン発現動物のみが光回避を示した(
図4c右及び
図9c)。この単色の感受性の表れは、MW-オプシンの作用スペクトルと一致する
36。
【0178】
図9a~9g.光回避及び学習したパターンの弁別行動。(a~c)RGCにロドプシンを発現しているrd1(青色、n=6マウス)またはMW-オプシンを発現しているrd1(緑色、n=5)及び野生型マウス(白色、n=5マウス)に対して、(a)白色光(100μW cm
-2)、(b)25μW cm
-2 緑色光(535nm)または(c)25μW cm
-2 青色光(470nm)のいずれかを照明したときの明区画の回避に成功した割合(回避に成功した試験の割合)。適用可能な場合、統計学的有意性をピアソンのカイ二乗両側検定及びフィッシャーの直接確率片側検定によって評価した(
図11)。回避がrd1未処置対照マウスの平均値+S.D.よりも大きい場合、成功と定義した(方法を参照のこと)。(d)パターン弁別実験の模式図。1日目にマウスを馴化させ、2日目及び3日目に、いずれかのチャンバーにランダムにペアリングした特定の光パターン(刺激A/B)と関連した電気ショックに曝露させ、4日目に、位置バイアスを回避するため光パターンを逆にしてショックなしで、(各チャンバーで過ごした時間の)試験を行った。(e~g)rd1未処置対照と比較した、ショックとペアリングしたパターンの弁別に成功した割合(成功した回避試験の割合)。(e)水平平行バー対垂直平行バー。1cmの間隔対6cmの間隔の静止平行バーの弁別(f)または移動平行バーの弁別(g)。e、f及びgはそれぞれ、rd1 ロドプシン(青色;(e)n=8、(f)n=6マウス)、rd1 MW-オプシン((e)n=17、(f)n=11、(g)n=6マウス)及び野生型((e)n=5、(f)n=6、(g)n=9マウス)である(25μW cm
-2)。適用可能な場合、統計学的有意性をピアソンのカイ二乗両側検定及びフィッシャーの直接確率片側検定によって評価した(
図11)。回避がrd1未処置対照マウスの平均値+S.D.よりも大きい場合、成功と定義した。
【0179】
MW-オプシンは時間的光パターンの検出を補助する
MW-オプシンが、単離したrd1網膜においてロドプシンよりも速い光応答を誘発することが観察されたため、これが異なる時間的光パターンを区別する上位の能力に転換されるか否かが問われた。視覚的合図による恐怖条件付けパラダイムを用いて、フラッシュを定常光と区別する動物の能力を試験した。野生型マウスまたはRGCにMW-オプシンもしくはロドプシンのいずれかを発現しているrd1マウスを、低強度(100μW cm
-2)のLCDスクリーンが定常光とフラッシュ光(2Hz)を切り替える単一区画からなる行動装置へ配置した。各動物において、定常光またはフラッシュ光のいずれかを、弱いフットショックと終始ペアリングした。これを2日間、1日1試験実施し(
図4d)、3日目に、以前実施されたように
15,27,37、すくみ時間を恐怖との関連の測定に使用し、フットショックなしで呈示した光の合図を用いて動物を試験した。時間的光パターンの切り替え後、すくみ時間を10秒間にわたり測定した。視覚合図とショックとをペアリングした動物(ペアリング群)の測定値を、訓練用ショックがランダム化された(すなわち、刺激の1つと定常的にはペアリングされていない)動物群(非ペアリング群)の測定値と比較した。未処置のrd1マウスにおけるすくみ時間は、ペアリング及び非ペアリングの条件間で相違がなく、動物が視覚合図を見ることができないという予想に一致した(
図4e、灰色)。対照的に、RGCにMW-オプシンを発現しているrd1マウスは、野生型動物で観察されたように、ペアリング条件下でより多くのすくみを示した(
図4e、緑色及び白色)。顕著なことに、RGCにロドプシンを発現しているrd1マウスは、ペアリング及び非ペアリングの条件間で相違がなかった(
図4e、青色)。このことは、MW-錐体オプシンを発現している盲目マウスと異なり、ロドプシンマウスは2Hzのフラッシュ光と定常光との区別ができないことを示唆しており、これはMEAで観察された遅い光応答反応速度(
図3e)と一致する。
【0180】
MW-オプシンは空間的パターン弁別を回復させる
次に、RGC内のMW-オプシンによって、rd1マウスが光の空間的パターンを検出することが可能となるかどうかを確認した。2つの隣接した区画を有し、それぞれ壁に取り付けられた低強度のLCDタブレット(iPad)を備えた行動チャンバー(
図4f)を使用した。各タブレットに一対の平行線を表示した。ある例では、線は垂直方向を向き(||)、もう一方の線は水平方向を向いていた(=)。波長は、MW-オプシンに対しては535(520~560)nmを中心とし、ロドプシンに対しては497(480~520)nmを中心とした(
図9d)。まず、表示装置の電源を切った状態で、マウスに区画に馴化するための時間を与えた(1日目)。2日間の訓練期間中、嫌悪的なフットショックを、垂直方向の線または水平方向の線のいずれかとペアリングした。嫌悪的な合図をランダムに割り当て、その動物に対して終始維持した。4日目に、位置バイアスを回避するために刺激の位置を切り替えて、条件回避を試験した(
図9d)。RGCにMW-オプシンを有するrd1動物は、未処置のrd1対照動物で見られたものよりも有意に大きくかつ野生型マウスで見られたものと同様の嫌悪的な視覚合図の回避を示すことが判明した(
図4g及び
図9e)。対照的に、RGCにロドプシンを有するrd1動物は、未処置のrd1対照動物と相違がなく、かつ盲目動物で見られる位置バイアスの明確な例である、嫌悪的な刺激へのわずかな嗜好性を示した。これらの観察結果は、MW-オプシンは空間的光パターンを弁別する能力を回復させるが、ロドプシンはこの能力を回復させないことを示す。
【0181】
MW-オプシンが空間的パターン弁別を補助することが観察されたため、ヒト及び動物における視力検査に採用された視覚課題である、方向が同じで間隔が異なる線間の差をマウスが区別できるか否かが問われた
38,39。平行な垂直線を1cmまたは6cmのいずれかの間隔で離した。上記のように、2日目及び3日目の訓練期間中、嫌悪的なフットショックを刺激の1つとランダムにペアリングして、4日目に回避の指標として想起試験を行った。MW-オプシン発現rd1マウスは、野生型マウスで見られるものと同様の非嫌悪的刺激への嗜好性を示す動作により2つのパターンを区別でき、他方、ロドプシン発現動物は未処置のrd1マウスと同様であることが判明した(
図4h、
図9f及び
図22)。MW-オプシンは、平行線が動いている場合(1cm/秒)も線の区別を補助した(
図4i及び9g)。
【0182】
問題は、MW-オプシンの「リフレッシュ」レートが、線パターンが動いている場合にそのパターンの弁別を補助するに足る速度か否かであった。このことを試験するために、同様の近接した線の弁別課題を実施し、今回は毎秒5cm移動する平行線を使用した。MW-オプシン発現rd1マウスは、非嫌悪的刺激とペアリングした移動しているパターンへの嗜好性を示し、野生型マウスがとった行動と同様の行動をとることが判明した(
図4i及び
図9g)。これらの結果は、RGC内のMW-オプシンが、LCDスクリーンの屋内の低光強度において静止している空間的パターンと移動している空間的パターンの双方の弁別を補助することを示す。
【0183】
図4a~4i.RGCにMW-オプシンまたはロドプシンを発現しているrd1マウスにおける、光回避及び学習した視覚誘導行動。(a)光回避試験用の明/暗ボックスの模式図。(b、c)rd1対照(灰色、n=4マウス)、RGCにロドプシンを発現しているrd1(青色、n=6マウス)またはMW-オプシンを発現しているrd1(緑色、n=5)及び野生型マウス(白色、n=5マウス)に対して、(b)白色光(100μW cm
-2)、(c)25μW cm
-2 青色光(470nm)(右)または緑色光(535nm)(左)のいずれかを照明した場合の暗区画で過ごした時間の割合(回避の割合)。(d)恐怖条件付け実験のすくみ応答の模式図。(e)時間的パターン刺激の弁別に関する恐怖応答の定量化。定常から2Hzの周波数の刺激(100μW cm
-2)への照明の移行を、対照rd1、ロドプシン、MW-オプシン及び野生型マウス(n=4、6、12、10(ペアリング)、n=7,8、7、12(非ペアリング))に対する電気ショックとペアリングしたまたはペアリングしていない場合のベースラインを上回るすくみ時間を示す。(f)パターン弁別実験の模式図。1日目にマウスを馴化させ、次いでiPadに映し出した特定の光パターンと関連した電気ショックに曝露させ、いずれかのチャンバーにランダムにペアリングした(条件付け、2日目及び3日目)。4日目に、位置バイアスを回避するため光パターンを逆にしてショックなしで想起試験(各チャンバーで過ごした時間)を行った(
図8dを参照のこと)。(g~i)学習したパターンの弁別。ショックとペアリングされたパターンを回避して過ごした時間。(g)水平平行バー対垂直平行バー。(h)1cmの間隔対6cmの間隔の静止平行バー(h)または移動平行バー(i)の弁別。g、h及びiはそれぞれ、rd1対照(n=8、5、16マウス)、rd1ロドプシン(青色、n=8マウス)、rd1 MW-オプシン(n=17、11、6マウス)及び野生型(n=5、6、9マウス)である(25μW cm
-2)。(注:これらの実験の成功の割合は
図9a~cに示す)。光強度=25~100μW cm
-2;波長:λ=535nm(MW-オプシン)、510nm(ロドプシン)または白色光(MW-オプシン)。n=マウスの数。統計学的有意性を、ボンフェローニ補正したスチューデントの両側t検定によって評価した(*p<0.01)。
【0184】
図22a~22b.弁別課題における位置嗜好性。(a)スクリーン近傍で過ごした時間に対する2つのチャンバー間の中央の仕切り近傍で過ごした時間の割合を測定するために、各区画を半分に分割している仮想の仕切りを示す、弁別課題に使用するアリーナの図。(b)嫌悪的な側のスクリーン及び非嫌悪的な側のスクリーンに最も近い区域で過ごした時間に対する、中央の仕切り近傍区域で過ごした時間の比率により、中央の仕切り近傍区域に対する嗜好性が明らかとなる。値は平均値であり、エラーバーはSEMである。
【0185】
MW-オプシンは明順応を生じさせる
視覚の基本的特性は、幅広い範囲の周囲光強度にわたり対象物を区別する能力である。この順応は、光受容体細胞におけるいくつかの異なる機序によって媒介される。問題は、順応におけるある局面がMW-オプシンを有するRGCに導入されるか否かであった。RGCにMW-オプシンを発現している網膜を切除し、MEA上に載置し、9-cis-レチナールで灌流した。まず、網膜を15分間完全な暗闇の中に維持し(暗順応させ)、次に、長い間隔(60秒)で強度の範囲にわたって一連の短い(1秒)緑色光フラッシュ(535±25nm)で試験した。次に、10分間、光を中等度の屋内光レベルに適合させて(100μW cm-2の白色光で明順応させて)、一連の光パルスを繰り返した。
【0186】
光応答の反応速度を試験した。暗順応させた網膜における明るいフラッシュに対する応答が明順応条件下の同一の網膜の約12倍遅く減衰した(3.14±0.63秒、n=171、N=3)1例を除いて、上記に示されているように、明順応させた網膜と暗順応させた網膜の双方で光応答は迅速に減衰した(
図5a及び
図10a、b)。インタクトな光受容体によって駆動される光応答は同様の挙動を示し、これは後続の刺激のための脱感作の役割を果たしており
40,41、ヒトにおいては、一時的に視覚が不鮮明となる明るいフラッシュの後の「残像」の元となると考えられている
42。この独特な特性のため、この暗順応させた網膜の最も明るい光フラッシュへの応答は強度-応答分析から除外した。
【0187】
強度-応答曲線は、暗順応させた網膜は高い光感受性を有し約0.5μW cm
-2で応答するが、一方で明順応させた網膜ははるかに感受性が低く、応答までに約100μW cm
-2を必要とすることを示した(
図5b、c及び
図10c、d)。この順応により強度曲線が約3桁移動した(780±82、N=3)(
図5b、c)。この順応の顕著な特徴は、既に天然の錐体光受容体で示されているように
43,44、暗順応させた網膜と明順応させた網膜における最大光応答が同様であることであった(
図5c)。
【0188】
RGC内のMW-オプシンによって媒介される光応答が、単離した網膜における明順応を生じさせることが観察されたことから、これが行動している動物において視覚的に有用な明順応に転換されるか否かが問われた。RGC内のMW-オプシン媒介性光応答を、光回避行動との関係において試験した。試験に先だって、RGCにMW-オプシンを発現しているrd1マウスを1時間、完全な暗闇の中(暗順応)または屋内照明下(白色光、1mW cm
-2/535nmの光成分、50μW cm
-2)のいずれかに維持した(
図5d)。次に、それらのマウスを、明ボックスに1μW cm
-2(屋内光)または100μW cm
-2(屋外光)のいずれかの緑色光(535nm)の照明を備えた2チャンバー式の明/暗ボックス中で、直ちに光回避行動について試験した。明順応させたMW-オプシン発現rd1マウスは、試験光がそれらのマウスに明順応させた光レベルよりも明るい(535nm、100μW cm
-2)場合、強い光回避を示した(
図5e)。試験光がそれらのマウスに明順応させた光レベルよりも暗い(535nm、1μW cm
-2)場合、この光回避は減少した(
図5e及び
図10e)。対照的に、1μW cm
-2の暗い試験光は、暗順応させた動物において高いレベルの光回避をもたらし、行動に関連した明順応を示した。
【0189】
問題は、光回避行動に対する明順応の効果が、学習した視覚像の弁別課題におけるパターン弁別にも作用するか否かであった。上記のように(
図4)、弱いフットショックを、2つの隣接したチャンバー内のLCDスクリーン上に異なる間隔で呈示される2つの平行線の表示のうちの1つとペアリングすることにより、マウスを3日間の訓練期間にわたって条件付けした(
図4h及び9d)。4日目に、再度視覚刺激のみを用いてマウスを試験したが、今回は試験直前にマウスを1時間の暗順応(光なし)または1時間、4時間もしくは8時間の明順応(白色光)のいずれかに供した。明順応後の想起の間の線パターンの強度は、0.25μW cm
-2または10μW cm
-2のいずれかであった。RGCにMW-オプシンを発現している暗順応させたrd1マウスは、屋内の低い強度(0.25μW cm
-2)で呈示されようと屋内の中等度の強度(10μW cm
-2)で呈示されようと、線パターンを区別できかつ嫌悪的合図を回避できることが判明した(
図5f及び
図10f)。対照的に、明順応させた動物はより明るい試験線パターンにおいてのみ成功し、1時間、4時間及び8時間明順応させた群の間の成績は同一であった(
図5f及び10g)。この結果は、MW-オプシンによって媒介される空間的パターン弁別が、自然光の強度の範囲にわたり適応可能であることを示す。
【0190】
MW-オプシンは新規対象物の探索を回復させる
上記の実験は、MW-オプシンによって、照明された表示を用いて幅広い範囲の光強度にわたるパターン弁別が可能となることを示す。問題は、周囲の偶発的な光が三次元の物体を照明する自然環境においてそれがどのように機能するかであった。この問題に取り組むために、実験には、新規対象物の弁別試験及び探索行動試験に一般に使用されるオープンフィールドのアリーナを採用した
62,63。マウスは生得的に開放空間を回避し、自身の周囲の壁のすぐ近くに留まる。新規刺激によって、それらの安全な場所からの探索性の移動が誘発され得る。探索中、マウスは複数の感覚モダリティを用いるが、視覚が空間的ナビゲーションに極めて重要であることが示されている
64。アリーナは2つの別個の新規対象物を含有する立方体から構成されていた。動物が壁に沿って歩くにせよ他の目的物を探索するにせよ、偶然遭遇する確率が低くなるように、マウスを対象物から十分遠く離れたアリーナの壁を背にして配置し、対象物同士は十分間隔を空けた。rd1未処置マウス、rd1偽注射マウス、ロドプシン発現rd1マウスまたはMW-オプシン発現rd1マウス、ならびに野生型動物を撮影した。それらの動物の挙動を、動物をアリーナに配置した最初の10分間、追跡した(
図13a~d)。野生型動物は、盲目rd1動物の1.57倍遠くに移動しかつ1.55倍速い平均速度で動き、既知の探索行動の視覚的要素と一致することが判明した。顕著なことに、野生型動物と同様に、MW-オプシン発現rd1動物はそれらの未処置のrd1同腹仔よりもより遠くに(1.39倍)かつより速く(1.37倍)移動し(
図13e、f)、MW-オプシンが正常な新規対象物の探索を補助することが示唆された。このことをさらに分析するために、遠方の視覚に依存する可能性が非常に高い探索行動の局面、すなわち新規対象物を探索するまでの潜時ならびに対象物までの移動における速度及び移動距離に実験の焦点を合わせた。偽注射rd1マウス及びロドプシン発現rd1マウスは未処置rd1動物と同様に行動したが、MW-オプシンのマウスは未処置のrd1マウスと比較して、第1の対象物及び第2の対象物にそれぞれ3.88倍及び3.62倍短い時間で到達し(
図13g、h)、第1の対象物及び第2の対象物へとそれぞれ2.1倍及び1.83倍速い速度で移動し(
図13i、j)かつ第1の対象物及び第2の対象物までの距離がそれぞれ0.69倍及び0.64倍である短い経路を採用した(
図13k、l)。これらの各指標において、MW-オプシン発現rd1マウスは野生型動物の指標と同等のレベルに達した(
図13e~g)。これらの結果は、RGCのMW-オプシンが、既に盲目である動物に周囲光下の対象物の自然な視覚を提供することを示唆する。
【0191】
図5a~5f.MW-オプシンによって媒介されるRGCの活動における明順応及び視覚誘導行動。(a~c)暗順応させた網膜と明順応させた網膜との感受性の差を示す、rd1マウス網膜のRGC内のMW-オプシンによって媒介される、単離した網膜におけるRGCの光応答のMEA記録。(a)明順応条件に対する暗順応条件におけるフラッシュ強度の関数としての光応答の減衰(Tau OFF)(N=3網膜、n=171細胞)。(b)最初に暗順応させて(塗りつぶし記号)、次いで明順応させた(白抜き記号)代表的な網膜の強度-応答曲線の例(n=57細胞)。白色光への順応である。ChR2の最小値はBi et al.(2006)
8及びSengupta et al.(2016)
13によるものである。(c)最初に暗順応させて次いで明順応させた、同一の網膜における3回のフラッシュの強度の平均(エラーバーはSEMである)正規化光応答指数(LRI)(N=3網膜、n=171細胞)。(d~f)視覚誘導課題における明順応を示す行動。(d)生得的な回避行動または学習したパターンの弁別行動の試験前における暗順応または明順応の模式図。(e)1時間の暗順応(n=11マウス)または明順応(白色光;1mW cm
-2/535nmのスペクトル成分;50μW cm
-2;n=12、13マウス)後、屋外光(100μW cm
-2)または屋内光(1μW cm
-2)の下で暗区画で過ごした時間の割合(回避の割合)。(f)1時間の暗順応(n=8、8マウス)または明順応(白色光;1mW cm
-2/535nmのスペクトル成分;50μW cm
-2;n=7、7マウス)後、低い光レベル(0.25μW cm
-2)または屋内の光レベル(10μW cm
-2)で呈示された、1cmの間隔を空けた平行バー対6cmの間隔を空けた平行バーの学習したパターンの弁別。点線は未処置のrd1対照マウスにおける成績の平均を示す。光強度:3.82×10
-1mW cm
-2、波長:λ=535nm。すべての細胞はソーティングしたユニットを指す。値は平均±SEMである。統計学的有意性はマン・ホイットニーのU検定(*p≦0.01)を用いて評価した。ボンフェローニ補正したスチューデントの両側t検定:*p<0.05。
【0192】
図10a~10g.切除した網膜及びマウスの視覚的行動における明順応。(a~d)MW-オプシン発現網膜における平均的なRGC集団の応答の代表的なトレース(n=57)。暗順応(a、c)または明順応(b、d)後の、3.82x10
1mW cm
-2(a、b)または3.82x10
-3 mW cm
-2(c、d)の500msの光フラッシュに対する応答。(e)1時間の明順応(白色光;1mW cm
-2/535nmのスペクトル成分;50μW cm
-2)後、屋内光(1μW cm
-2、n=12マウス)及び屋外光(100μW cm
-2、n=13マウス)の下で回避に成功したマウスの割合と比較した、1時間の暗順応(n=11マウス)後の、屋内光(1μW cm
-2)の下での明区画の回避(成功した回避試験の割合)。(f)1時間の暗順応(0.25μW cm
-2でn=8マウス、10μW cm
-2でn=8マウス)または明順応(0.25μW cm
-2でn=7マウス、10μW cm
-2でn=7マウス)後、低い光レベル(0.25μW cm
-2)または屋内の光レベル(10μW cm
-2)で呈示された、1cmの間隔を空けた平行バー対6cmの間隔を空けた平行バーの弁別に成功した割合。(g)順応させていないrd1対照と比較した、1時間、4時間または8時間の明順応(n=7、4、4)後に、屋内(10μW cm
-2)の光レベルで呈示された、1cmの間隔を空けた平行バー対6cmの間隔を空けた平行バーの学習したパターンの弁別。
【0193】
図11(表1).光回避及び学習した視覚誘導行動の統計学的有意性。条件行動の回避能力に関して成功率を算出した(
図4、5及び
図9、10)。次に、条件間の差異における有意性を決定するためペアワイズ分割表を作図し、まず、ピアソンのカイ二乗両側検定を実施した。小標本を含む条件を補正するために、フィッシャーの直接確率片側検定も実施した。
【0194】
【0195】
本発明をその特定の実施形態を参照して説明してきたが、本発明の真の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更を実施してもよく、等価物と置き換えてもよいことを当業者は理解されたい。さらに、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、1つまたは複数のプロセス段階が本発明の目的、趣旨、及び範囲に適合するように、多くの改変を実施することができる。そのような改変はすべて、本明細書に添付される特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【0196】
配列情報
SEQUENCE LISTING
<110> The Regents of the University of California
<120> COMPOSITIONS AND METHODS FOR ENHANCING VISUAL FUNCTION
<150> US 62/585,237
<151> 2017-11-13
<150> US 62/589,476
<151> 2017-11-21
<150> US 62/641,783
<151> 2018-03-12
<160> 11
<170> PatentIn version 3.5
<210> 1
<211> 364
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 1
Met Ala Gln Gln Trp Ser Leu Gln Arg Leu Ala Gly Arg His Pro Gln
1 5 10 15
Asp Ser Tyr Glu Asp Ser Thr Gln Ser Ser Ile Phe Thr Tyr Thr Asn
20 25 30
Ser Asn Ser Thr Arg Gly Pro Phe Glu Gly Pro Asn Tyr His Ile Ala
35 40 45
Pro Arg Trp Val Tyr His Leu Thr Ser Val Trp Met Ile Phe Val Val
50 55 60
Ile Ala Ser Val Phe Thr Asn Gly Leu Val Leu Ala Ala Thr Met Lys
65 70 75 80
Phe Lys Lys Leu Arg His Pro Leu Asn Trp Ile Leu Val Asn Leu Ala
85 90 95
Val Ala Asp Leu Ala Glu Thr Val Ile Ala Ser Thr Ile Ser Val Val
100 105 110
Asn Gln Val Tyr Gly Tyr Phe Val Leu Gly His Pro Met Cys Val Leu
115 120 125
Glu Gly Tyr Thr Val Ser Leu Cys Gly Ile Thr Gly Leu Trp Ser Leu
130 135 140
Ala Ile Ile Ser Trp Glu Arg Trp Met Val Val Cys Lys Pro Phe Gly
145 150 155 160
Asn Val Arg Phe Asp Ala Lys Leu Ala Ile Val Gly Ile Ala Phe Ser
165 170 175
Trp Ile Trp Ala Ala Val Trp Thr Ala Pro Pro Ile Phe Gly Trp Ser
180 185 190
Arg Tyr Trp Pro His Gly Leu Lys Thr Ser Cys Gly Pro Asp Val Phe
195 200 205
Ser Gly Ser Ser Tyr Pro Gly Val Gln Ser Tyr Met Ile Val Leu Met
210 215 220
Val Thr Cys Cys Ile Thr Pro Leu Ser Ile Ile Val Leu Cys Tyr Leu
225 230 235 240
Gln Val Trp Leu Ala Ile Arg Ala Val Ala Lys Gln Gln Lys Glu Ser
245 250 255
Glu Ser Thr Gln Lys Ala Glu Lys Glu Val Thr Arg Met Val Val Val
260 265 270
Met Val Leu Ala Phe Cys Phe Cys Trp Gly Pro Tyr Ala Phe Phe Ala
275 280 285
Cys Phe Ala Ala Ala Asn Pro Gly Tyr Pro Phe His Pro Leu Met Ala
290 295 300
Ala Leu Pro Ala Phe Phe Ala Lys Ser Ala Thr Ile Tyr Asn Pro Val
305 310 315 320
Ile Tyr Val Phe Met Asn Arg Gln Phe Arg Asn Cys Ile Leu Gln Leu
325 330 335
Phe Gly Lys Lys Val Asp Asp Gly Ser Glu Leu Ser Ser Ala Ser Lys
340 345 350
Thr Glu Val Ser Ser Val Ser Ser Val Ser Pro Ala
355 360
<210> 2
<211> 348
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 2
Met Asn Gly Thr Glu Gly Pro Asn Phe Tyr Val Pro Phe Ser Asn Ala
1 5 10 15
Thr Gly Val Val Arg Ser Pro Phe Glu Tyr Pro Gln Tyr Tyr Leu Ala
20 25 30
Glu Pro Trp Gln Phe Ser Met Leu Ala Ala Tyr Met Phe Leu Leu Ile
35 40 45
Val Leu Gly Phe Pro Ile Asn Phe Leu Thr Leu Tyr Val Thr Val Gln
50 55 60
His Lys Lys Leu Arg Thr Pro Leu Asn Tyr Ile Leu Leu Asn Leu Ala
65 70 75 80
Val Ala Asp Leu Phe Met Val Leu Gly Gly Phe Thr Ser Thr Leu Tyr
85 90 95
Thr Ser Leu His Gly Tyr Phe Val Phe Gly Pro Thr Gly Cys Asn Leu
100 105 110
Glu Gly Phe Phe Ala Thr Leu Gly Gly Glu Ile Ala Leu Trp Ser Leu
115 120 125
Val Val Leu Ala Ile Glu Arg Tyr Val Val Val Cys Lys Pro Met Ser
130 135 140
Asn Phe Arg Phe Gly Glu Asn His Ala Ile Met Gly Val Ala Phe Thr
145 150 155 160
Trp Val Met Ala Leu Ala Cys Ala Ala Pro Pro Leu Ala Gly Trp Ser
165 170 175
Arg Tyr Ile Pro Glu Gly Leu Gln Cys Ser Cys Gly Ile Asp Tyr Tyr
180 185 190
Thr Leu Lys Pro Glu Val Asn Asn Glu Ser Phe Val Ile Tyr Met Phe
195 200 205
Val Val His Phe Thr Ile Pro Met Ile Ile Ile Phe Phe Cys Tyr Gly
210 215 220
Gln Leu Val Phe Thr Val Lys Glu Ala Ala Ala Gln Gln Gln Glu Ser
225 230 235 240
Ala Thr Thr Gln Lys Ala Glu Lys Glu Val Thr Arg Met Val Ile Ile
245 250 255
Met Val Ile Ala Phe Leu Ile Cys Trp Val Pro Tyr Ala Ser Val Ala
260 265 270
Phe Tyr Ile Phe Thr His Gln Gly Ser Asn Phe Gly Pro Ile Phe Met
275 280 285
Thr Ile Pro Ala Phe Phe Ala Lys Ser Ala Ala Ile Tyr Asn Pro Val
290 295 300
Ile Tyr Ile Met Met Asn Lys Gln Phe Arg Asn Cys Met Leu Thr Thr
305 310 315 320
Ile Cys Cys Gly Lys Asn Pro Leu Gly Asp Asp Glu Ala Ser Ala Thr
325 330 335
Val Ser Lys Thr Glu Thr Ser Gln Val Ala Pro Ala
340 345
<210> 3
<211> 310
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic sequence
<400> 3
Met Asp Tyr Gly Gly Ala Leu Ser Ala Val Gly Arg Glu Leu Leu Phe
1 5 10 15
Val Thr Asn Pro Val Val Val Asn Gly Ser Val Leu Val Pro Glu Asp
20 25 30
Gln Cys Tyr Cys Ala Gly Trp Ile Glu Ser Arg Gly Thr Asn Gly Ala
35 40 45
Gln Thr Ala Ser Asn Val Leu Gln Trp Leu Ala Ala Gly Phe Ser Ile
50 55 60
Leu Leu Leu Met Phe Tyr Ala Tyr Gln Thr Trp Lys Ser Thr Cys Gly
65 70 75 80
Trp Glu Glu Ile Tyr Val Cys Ala Ile Glu Met Val Lys Val Ile Leu
85 90 95
Glu Phe Phe Phe Glu Phe Lys Asn Pro Ser Met Leu Tyr Leu Ala Thr
100 105 110
Gly His Arg Val Gln Trp Leu Arg Tyr Ala Glu Trp Leu Leu Thr Cys
115 120 125
Pro Val Ile Leu Ile His Leu Ser Asn Leu Thr Gly Leu Ser Asn Asp
130 135 140
Tyr Ser Arg Arg Thr Met Gly Leu Leu Val Ser Asp Ile Gly Thr Ile
145 150 155 160
Val Trp Gly Ala Thr Ser Ala Met Ala Thr Gly Tyr Val Lys Val Ile
165 170 175
Phe Phe Cys Leu Gly Leu Cys Tyr Gly Ala Asn Thr Phe Phe His Ala
180 185 190
Ala Lys Ala Tyr Ile Glu Gly Tyr His Thr Val Pro Lys Gly Arg Cys
195 200 205
Arg Gln Val Val Thr Gly Met Ala Trp Leu Phe Phe Val Ser Trp Gly
210 215 220
Met Phe Pro Ile Leu Phe Ile Leu Gly Pro Glu Gly Phe Gly Val Leu
225 230 235 240
Ser Val Tyr Gly Ser Thr Val Gly His Thr Ile Ile Asp Leu Met Ser
245 250 255
Lys Asn Cys Trp Gly Leu Leu Gly His Tyr Leu Arg Val Leu Ile His
260 265 270
Glu His Ile Leu Ile His Gly Asp Ile Arg Lys Thr Thr Lys Leu Asn
275 280 285
Ile Gly Gly Thr Glu Ile Glu Val Glu Thr Leu Val Glu Asp Glu Ala
290 295 300
Glu Ala Gly Ala Val Pro
305 310
<210> 4
<211> 364
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 4
Met Ala Gln Gln Trp Ser Leu Gln Arg Leu Ala Gly Arg His Pro Gln
1 5 10 15
Asp Ser Tyr Glu Asp Ser Thr Gln Ser Ser Ile Phe Thr Tyr Thr Asn
20 25 30
Ser Asn Ser Thr Arg Gly Pro Phe Glu Gly Pro Asn Tyr His Ile Ala
35 40 45
Pro Arg Trp Val Tyr His Leu Thr Ser Val Trp Met Ile Phe Val Val
50 55 60
Thr Ala Ser Val Phe Thr Asn Gly Leu Val Leu Ala Ala Thr Met Lys
65 70 75 80
Phe Lys Lys Leu Arg His Pro Leu Asn Trp Ile Leu Val Asn Leu Ala
85 90 95
Val Ala Asp Leu Ala Glu Thr Val Ile Ala Ser Thr Ile Ser Ile Val
100 105 110
Asn Gln Val Ser Gly Tyr Phe Val Leu Gly His Pro Met Cys Val Leu
115 120 125
Glu Gly Tyr Thr Val Ser Leu Cys Gly Ile Thr Gly Leu Trp Ser Leu
130 135 140
Ala Ile Ile Ser Trp Glu Arg Trp Met Val Val Cys Lys Pro Phe Gly
145 150 155 160
Asn Val Arg Phe Asp Ala Lys Leu Ala Ile Val Gly Ile Ala Phe Ser
165 170 175
Trp Ile Trp Ala Ala Val Trp Thr Ala Pro Pro Ile Phe Gly Trp Ser
180 185 190
Arg Tyr Trp Pro His Gly Leu Lys Thr Ser Cys Gly Pro Asp Val Phe
195 200 205
Ser Gly Ser Ser Tyr Pro Gly Val Gln Ser Tyr Met Ile Val Leu Met
210 215 220
Val Thr Cys Cys Ile Ile Pro Leu Ala Ile Ile Met Leu Cys Tyr Leu
225 230 235 240
Gln Val Trp Leu Ala Ile Arg Ala Val Ala Lys Gln Gln Lys Glu Ser
245 250 255
Glu Ser Thr Gln Lys Ala Glu Lys Glu Val Thr Arg Met Val Val Val
260 265 270
Met Ile Phe Ala Tyr Cys Val Cys Trp Gly Pro Tyr Thr Phe Phe Ala
275 280 285
Cys Phe Ala Ala Ala Asn Pro Gly Tyr Ala Phe His Pro Leu Met Ala
290 295 300
Ala Leu Pro Ala Tyr Phe Ala Lys Ser Ala Thr Ile Tyr Asn Pro Val
305 310 315 320
Ile Tyr Val Phe Met Asn Arg Gln Phe Arg Asn Cys Ile Leu Gln Leu
325 330 335
Phe Gly Lys Lys Val Asp Asp Gly Ser Glu Leu Ser Ser Ala Ser Lys
340 345 350
Thr Glu Val Ser Ser Val Ser Ser Val Ser Pro Ala
355 360
<210> 5
<211> 348
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<400> 5
Met Arg Lys Met Ser Glu Glu Glu Phe Tyr Leu Phe Lys Asn Ile Ser
1 5 10 15
Ser Val Gly Pro Trp Asp Gly Pro Gln Tyr His Ile Ala Pro Val Trp
20 25 30
Ala Phe Tyr Leu Gln Ala Ala Phe Met Gly Thr Val Phe Leu Ile Gly
35 40 45
Phe Pro Leu Asn Ala Met Val Leu Val Ala Thr Leu Arg Tyr Lys Lys
50 55 60
Leu Arg Gln Pro Leu Asn Tyr Ile Leu Val Asn Val Ser Phe Gly Gly
65 70 75 80
Phe Leu Leu Cys Ile Phe Ser Val Phe Pro Val Phe Val Ala Ser Cys
85 90 95
Asn Gly Tyr Phe Val Phe Gly Arg His Val Cys Ala Leu Glu Gly Phe
100 105 110
Leu Gly Thr Val Ala Gly Leu Val Thr Gly Trp Ser Leu Ala Phe Leu
115 120 125
Ala Phe Glu Arg Tyr Ile Val Ile Cys Lys Pro Phe Gly Asn Phe Arg
130 135 140
Phe Ser Ser Lys His Ala Leu Thr Val Val Leu Ala Thr Trp Thr Ile
145 150 155 160
Gly Ile Gly Val Ser Ile Pro Pro Phe Phe Gly Trp Ser Arg Phe Ile
165 170 175
Pro Glu Gly Leu Gln Cys Ser Cys Gly Pro Asp Trp Tyr Thr Val Gly
180 185 190
Thr Lys Tyr Arg Ser Glu Ser Tyr Thr Trp Phe Leu Phe Ile Phe Cys
195 200 205
Phe Ile Val Pro Leu Ser Leu Ile Cys Phe Ser Tyr Thr Gln Leu Leu
210 215 220
Arg Ala Leu Lys Ala Val Ala Ala Gln Gln Gln Glu Ser Ala Thr Thr
225 230 235 240
Gln Lys Ala Glu Arg Glu Val Ser Arg Met Val Val Val Met Val Gly
245 250 255
Ser Phe Cys Val Cys Tyr Val Pro Tyr Ala Ala Phe Ala Met Tyr Met
260 265 270
Val Asn Asn Arg Asn His Gly Leu Asp Leu Arg Leu Val Thr Ile Pro
275 280 285
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290 295 300
Phe Met Asn Lys Gln Phe Gln Ala Cys Ile Met Lys Met Val Cys Gly
305 310 315 320
Lys Ala Met Thr Asp Glu Ser Asp Thr Cys Ser Ser Gln Lys Thr Glu
325 330 335
Val Ser Thr Val Ser Ser Thr Gln Val Gly Pro Asn
340 345
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<211> 346
<212> PRT
<213> Mus Musculus
<400> 6
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1 5 10 15
Gly Pro Trp Asp Gly Pro Gln Tyr His Leu Ala Pro Val Trp Ala Phe
20 25 30
Arg Leu Gln Ala Ala Phe Met Gly Phe Val Phe Phe Val Gly Thr Pro
35 40 45
Leu Asn Ala Ile Val Leu Val Ala Thr Leu His Tyr Lys Lys Leu Arg
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