(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179544
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】高強度および高成形性を備えた陽極酸化品質5XXXアルミニウム合金およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 21/06 20060101AFI20231212BHJP
C22C 21/00 20060101ALI20231212BHJP
C22F 1/047 20060101ALN20231212BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20231212BHJP
【FI】
C22C21/06
C22C21/00 C
C22F1/047
C22F1/00 613
C22F1/00 623
C22F1/00 622
C22F1/00 630A
C22F1/00 630K
C22F1/00 671
C22F1/00 673
C22F1/00 631Z
C22F1/00 681
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 684B
C22F1/00 685Z
C22F1/00 685A
C22F1/00 691A
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 694A
C22F1/00 686A
C22F1/00 694B
C22F1/00 694Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023158465
(22)【出願日】2023-09-22
(62)【分割の表示】P 2021196927の分割
【原出願日】2018-04-04
(31)【優先権主張番号】62/481,796
(32)【優先日】2017-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506110243
【氏名又は名称】ノベリス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NOVELIS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】カン・デフン
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ヨング
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高強度および高成形性を有する陽極酸化品質のアルミニウム合金、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本明細書では、陽極酸化された品質のAA5xxxシリーズアルミニウム合金、およびアルミニウム合金の製造方法が提供される。また、本明細書には、陽極酸化された品質のAA5xxxシリーズアルミニウム合金シートから作製された製品も記載されている。そのような製品には、家庭用電子部品、家庭用電化製品部品、建築用シート製品、建築用シート製品部品、自動車車体部品が含まれる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0~0.1重量%のSi、0~0.2重量%のFe、0~0.3重量%のCu、0~0.5重量%のMn、2.0~5.0重量%のMg、0~0.2重量%のCr、0~0.2重量%のZn、0~0.1重量%のTi、および0.15重量%までの不純物を含み、残りがAlである、アルミニウム合金。
【請求項2】
0~0.05重量%のSi、0~0.1重量%のFe、0~0.1重量%のCu、0.2~0.5重量%のMn、2.0~4.5重量%のMg、0~0.1重量%のCr、0~0.1重量%のZn、0~0.05重量%のTi、および0.15重量%までの不純物を含み、残りがAlである、請求項1に記載のアルミニウム合金。
【請求項3】
0.01~0.05重量%のSi、0.01~0.08重量%のFe、0.01~0.05重量%のCu、0.4~0.5重量%のMn、3.0~4.0重量%のMg、0.001~0.05重量%のCr、0.001~0.05重量%のZn、0.001~0.03重量%のTi、および0.15重量%までの不純物を含み、残りがAlである、請求項2に記載のアルミニウム合金。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のアルミニウム合金を含む製品。
【請求項5】
前記製品がシートである、請求項4に記載の製品。
【請求項6】
前記シートが、陽極酸化シートである、請求項5に記載の製品。
【請求項7】
前記陽極酸化シートの1つ以上の表面が、60~100の60°光沢値を有する、請求項6に記載の製品。
【請求項8】
前記陽極酸化シートの1つ以上の表面が、ハンターL、a、bカラースケールによって測定された、60~90のL値、-2~2のa値、および/または-2~2のb値を有する、請求項6または7に記載の製品。
【請求項9】
前記シートの1つ以上の表面が、0.1μm~0.35μmの表面粗度値を有する、請求項5に記載の製品。
【請求項10】
前記陽極酸化シートの1つ以上の表面が、0.2μm~0.8μmの表面粗度値を有する、請求項6~8のいずれか一項に記載の製品。
【請求項11】
前記シートが、少なくとも200Mpaの降伏強度を有する、請求項5~10のいずれか一項に記載の製品。
【請求項12】
前記シートが、200MPa~350Mpaの降伏強度を有する、請求項11に記載の製品。
【請求項13】
前記シートが、7%以上の引張伸びを有する、請求項5~12のいずれか一項に記載の製品。
【請求項14】
前記製品が、家庭用電子部品または家庭用電化製品部品を含む、請求項4~13のいずれか一項に記載の製品。
【請求項15】
前記製品が、建築用シート製品または建築用シート製品部品を含む、請求項4~13のいずれか一項に記載の製品。
【請求項16】
前記製品が、自動車の車体部品を含む、請求項4~13のいずれか一項に記載の製品。
【請求項17】
アルミニウム製品の製造方法であって、
鋳造アルミニウム合金を形成するためにアルミニウム合金を鋳造することであって、前記アルミニウム合金が、0~0.1重量%のSi、0~0.2重量%のFe、0~0.3重量%のCu、0~0.5重量%のMn、2.0~5.0重量%のMg、0~0.2重量%のCr、0~0.2重量%のZn、0~0.1重量%のTi、および0.15重量%までの不純物を含み、残りがAlである、鋳造することと、
前記鋳造アルミニウム合金をスキャルピングすることと、
前記鋳造アルミニウム合金を均質化することと、
圧延製品を製造するために前記鋳造アルミニウム合金を熱間圧延することと、
前記圧延製品を冷間圧延することと、を含む、方法。
【請求項18】
前記冷間圧延ステップ後に前記圧延製品を焼鈍することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記冷間圧延ステップが、2段階冷間圧延ステップであり、前記2段階冷間圧延ステップが、第1の冷間圧延ステップ、中間焼鈍ステップ、および第2の冷間圧延ステップを含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
請求項17~19のいずれか一項に記載の方法によって作製される、アルミニウム合金製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年4月5日に出願された米国仮出願第62/481,796号の利益を主張し、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、アルミニウム合金製品に関し、より具体的には、高い強度および成形性を示すアルミニウム合金シートに関する。
【背景技術】
【0003】
現在使用されている陽極酸化品質5xxxシリーズアルミニウム合金は、典型的には170MPa~190MPaの範囲の降伏強度を有する。これらの合金から作製された製品は、機械的損傷を受けやすい。例えば、これらの合金で作製された携帯電話は、外力が加えられた場合(床への衝撃等)に簡単に傷が付く、へこむ、または曲がる。強度を上げようとすると、一般に陽極酸化品質が劣化する。
【発明の概要】
【0004】
本発明の網羅された実施形態は、この発明の概要ではなく、特許請求の範囲によって定義される。この概要は、本発明の様々な態様の高レベルの概説であり、以下の詳細な説明の項でさらに説明される概念のいくつかを紹介している。この概要は、特許請求された主題の重要なまたは本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求される主題の範囲を決定するために単独で使用されることも意図していない。主題は、明細書全体、任意のまたは全ての図面、および各請求項の適切な部分を参照することによって理解されるべきである。
【0005】
本明細書には、高強度および高成形性を有する陽極酸化品質のアルミニウム合金、およびその製造方法が記載される。本明細書に記載のアルミニウム合金は、0~約0.1重量%のSi、0~約0.2重量%のFe、0~約0.3重量%のCu、0~約0.5重量%のMn、約2.0~約5.0重量%のMg、0~約0.2重量%のCr、0~約0.2重量%のZn、0~約0.1重量%のTi、および0.15重量%までの不純物を含み、残りはAlである。いくつかの場合において、アルミニウム合金は、0~約0.05重量%のSi、0~約0.1重量%のFe、0~約0.1重量%のCu、約0.2~約0.5重量%のMn、約2.0~約4.5重量%のMg、0~約0.1重量%のCr、0~約0.1重量%のZn、0~約0.05重量%のTi、および0.15重量%までの不純物を含み、残りはAlである。いくつかの場合において、アルミニウム合金は約0.01~約0.05重量%のSi、約0.01~約0.08重量%のFe、約0.01~約0.05重量%のCu、約0.4~約0.5重量%のMn、約3.0~約4.0重量%のMg、約0.001~約0.05重量%のCr、約0.001~約0.05重量%のZn、約0.001~約0.03重量%のTi、および0.15重量%までの不純物を含み、残りはAlである。任意選択で、アルミニウム合金は、直接チル鋳造または連続鋳造により製造される。アルミニウム合金は、均質化、熱間圧延、冷間圧延、および/または焼鈍によって処理され得る。
【0006】
本明細書には、上述のアルミニウム合金を含む製品もまた記載される。製品は、例えばシートであってもよい。いくつかの例では、シートは陽極酸化シートを含む。いくつかの場合において、陽極酸化シートの1つ以上の表面は、60~100の60°光沢値を有する。いくつかの場合において、陽極酸化シートの1つ以上の表面は、それぞれハンターL、a、bカラースケールによって測定された、60~90のL値、-2~2のa値、および/または-2~2のab値を有する任意選択で、シートの1つ以上の表面は、0.1μm~0.35μmの表面粗度値を有する。任意選択で、陽極酸化シートの1つ以上の表面は、0.2μm~0.8μmの表面粗度値を有する。いくつかの場合において、陽極酸化シートの1つの以上の表面は、製品表面の平方メートル(m2)あたり1以下の欠陥を含み、欠陥は、カミソリストリーク欠陥またはピックアップ点欠陥を含む。
【0007】
シートは、少なくとも約200MPa(例えば、約200MPa~約350MPa)の降伏強度を有し得る。シートはまた、約7%以上の引張伸びを有し得る。任意選択で、製品は、とりわけ、家庭用電子部品、家庭用電化製品部品、建築用シート製品、建築シート製品部品、または自動車の車体部品を含む。
【0008】
さらに、本明細書には、アルミニウム製品の製造方法が記載される。アルミニウム製品を製造する方法は、本明細書に記載のアルミニウム合金を鋳造して鋳造アルミニウム合金を形成することと、鋳造アルミニウム合金をスキャルピングすることと、鋳造アルミニウム合金を均質化することと、鋳造アルミニウム合金を熱間圧延して圧延製品を製造することと、圧延製品を冷間圧延することとを含む。任意選択で、冷間圧延ステップは、2段階冷間圧延ステップである。2段階冷間圧延ステップは、第1の冷間圧延ステップ、中間焼鈍ステップ、および第2の冷間圧延ステップを含み得る。任意選択で、方法は、冷間圧延ステップの後に圧延製品を焼鈍することをさらに含み得る。本明細書に記載の方法により作製されたアルミニウム合金製品もまた記載される。
【0009】
さらなる態様、目的、および利点は、以下の非限定的な例の詳細な説明を考慮することで明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本明細書に記載のアルミニウム合金から作製されたシートの加工条件の概略図である。
【
図2A】本明細書に記載の比較合金Aの表面の写真である。
【
図2B】本明細書に記載の例示的な合金1の表面の写真である。
【
図3】比較合金Aおよび合金1の上面および底面の60°での光沢単位を示すグラフである。
【
図4A】本明細書に記載の例示的な合金1の表面の写真である。
【
図4B】本明細書に記載の比較合金Bの表面の写真である。
【
図5】本明細書に記載の比較合金Bおよび例示的な合金1の表面の60°での光沢単位を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書には、高強度および高成形性を有する陽極酸化品質のアルミニウム合金および合金製品、ならびにそれらの製造方法が記載される。本明細書に記載の合金製品は、同等レベルの陽極酸化品質および成形性を有するアルミニウム合金から作製された製品よりも約20%~30%高い降伏強度を示す。強度は、陽極酸化品質および成形性を維持しながら強度を向上させる強化元素を追加することによって増加する。特に、強化元素によって陽極酸化品質が著しく低下したために強度を高めるという従来の取組みが失敗したことから、高強度、高成形性、優れた陽極酸化品質特性を達成することは予想外である。本明細書に記載のように、高強度、優れた陽極酸化品質、および高成形性が同時に得られるように。特定の元素の量は慎重にバランスが取れている。本明細書に記載の合金は、電子機器、輸送、建築、工業、自動車、およびその他の用途に使用され得る。
【0012】
定義および説明:
本明細書で使用される「発明(invention)」、「その発明(the invention)」、「この発明(this invention)」、および「本発明(the present invention)」という用語は、この特許出願の主題および以下の特許請求の範囲の全てを広く指すように意図されている。これらの用語を含有する記述は、本明細書に記載の主題を限定するものではなく、または以下の特許請求の範囲の意味もしくは範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。
【0013】
この説明では、「シリーズ」または「5xxx」等のアルミニウム工業呼称によって特定された合金への言及がなされる。アルミニウムおよびその合金の命名および特定に最も一般的に使用される番号指定システムの理解のために、ともにThe Aluminum Associationによって刊行された「International Alloy Designations and Chemical Composition Limits for Wrought Aluminum and Wrought Aluminum Alloys」または「Registration Record of Aluminum Association Alloy Designations and Chemical Compositions Limits for Aluminum Alloys in the Form of Castings and Ingot」を参照されたい。
【0014】
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」または「その(the)」の意味は、文脈上他に明確に指示されない限り、単数および複数の言及を含む。
【0015】
本明細書で使用される場合、プレートは、一般に、約15mmを超える厚さを有する。例えば、プレートは、約15mmを超える、約20mmを超える、約25mmを超える、約30mmを超える、約35mmを超える、約40mmを超える、約45mmを超える、約50mmを超える、または約100mmを超える厚さを有するアルミニウム製品を指してもよい。
【0016】
本明細書で使用される場合、シェート(シートプレートとも称される)は、一般に、約4mm~約15mmの厚さを有する。例えば、シェートは、約4mm、約5mm、約6mm、約7mm、約8mm、約9mm、約10mm、約11mm、約12mm、約13mm、約14mm、または約15mmの厚さを有してもよい。
【0017】
本明細書で使用される場合、「シート」は、一般に、約4mm未満の厚さを有するアルミニウム製品を指す。例えば、シートは、約4mm未満、約3mm未満、約2mm未満、約1mm未満、約0.5mm未満、約0.3mm未満、または約0.1mm未満の厚さを有してもよい。
【0018】
本明細書で使用される場合、ホイルという用語は、最大約0.2mm(すなわち、200ミクロン(μm))の範囲の合金厚を示す。例えば、ホイルは、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、110μm、120μm、130μm、140μm、150μm、160μm、170μm、180μm、190μm、または200μmまでの厚さを有してもよい。
【0019】
本出願では、合金の調質または状態について言及する。最も一般的に使用される合金調質度の説明の理解に関しては、「American National Standards(ANSI)H35 on Alloy and Temper Designation Systems」を参照されたい。本明細書においてH調質度とも呼ばれるHxx条件または調質度は、熱処理(例えば焼鈍)あり、またはなしでの冷間圧延後のアルミニウム合金を指す。好適なH調質度としては、HX1、HX2、HX3、HX4、HX5、HX6、HX7、HX8、またはHX9調質度が挙げられる。例えば、アルミニウム合金を冷間圧延しただけで、可能なH19調質度をもたらすことができる。さらなる例において、アルミニウム合金を冷間圧延し、焼鈍して、可能なH23調質度をもたらすことができる。
【0020】
本明細書で使用される場合、「室温」の意味には、約15℃~約30℃、例えば約15℃、約16℃、約17℃、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、または約30℃の温度が含まれ得る。
【0021】
本明細書で使用される場合、「鋳造金属製品」、「鋳造製品」、「鋳造アルミニウム合金」、「鋳造アルミニウム合金製品」等の用語は、交換可能であり、直接チル鋳造(直接チル共鋳造を含む)または半連続鋳造、連続鋳造(例えば、ツインベルト鋳造機、ツインロール鋳造機、ブロック鋳造機、もしくは任意の他の連続鋳造機を使用することによるものを含む)、電磁鋳造、ホットトップ鋳造、または任意の他の鋳造方法によって製造された製品を指す。
【0022】
本明細書で開示される全ての範囲は、その中に包括される任意および全ての部分範囲を包含すると理解される。例えば、「1~10」と記載された範囲は、最小値1と最大値10との間の(およびそれらを含む)任意および全ての部分範囲、すなわち、1の最小値またはそれ以上、例えば、1~6.1で始まり、10の最大値またはそれ以下、例えば、5.5~10で終わる全ての部分範囲を含むと考慮されるべきである。
【0023】
以下のアルミニウム合金は、それらの元素組成に関して、合金の総重量に基づく重量百分率(重量%)で記載されている。各合金の特定の例では、残りはアルミニウムであり、不純物の合計について0.15%の最大重量%である。
【0024】
合金の組成
以下で、新規アルミニウム含有5xxxシリーズ合金について説明する。合金から作製された合金製品は、高強度、優れた陽極酸化品質、および高成形性を示す。本明細書に記載の合金から作製された合金製品の特性は、以下にさらに説明するように、合金の元素組成および合金の加工方法により達成される。特に、優れた陽極酸化品質を維持する高強度合金を達成するために、Si、Cu、およびFeは、Mg、Mn、および/または以下でさらに説明する他の元素と組み合わせて慎重に制御および包含または除外される。優れた陽極酸化品質の合金には強度に限界があるということが業界における理解であったため、そのような設計は驚くべきことである。
【0025】
いくつかの例では、合金は、表1に提供されるような以下の元素組成を有し得る。
【表1】
【0026】
いくつかの例では、合金は、表2に提供されるような以下の元素組成を有し得る。
【表2】
【0027】
いくつかの例では、合金は、表3に提供されるような以下の元素組成を有し得る。
【表3】
【0028】
いくつかの例では、本明細書に記載の合金は、合金の総重量に基づいて、0%~約0.1%(例えば、約0.001%~約0.10%、0%~約0.05%、約0.005%~約0.05%、約0.01%~約0.05%、または約0.01%~約0.03%)の量のケイ素(Si)を含む。例えば、合金は、約0.001%、約0.002%、約0.003%、約0.004%、約0.005%、約0.006%、約0.007%、約0.008%、約0.009%、約0.01%、約0.02%、約0.03%、約0.04%、約0.05%、約0.06%、約0.07%、約0.08%、約0.09%、または約0.10%のSiを含み得る。いくつかの場合において、Siは合金中に存在しない(すなわち、0%)。全て重量%で表した。
【0029】
いくつかの例において、本明細書に記載の合金は、合金の総重量に基づいて、0%~約0.2%(例えば、約0.001%~約0.2%、0~約0.1%、約0.005%~約0.1%、0.01%~約0.08%、または約0.01%~約0.05%)の量の鉄(Fe)を含む。例えば、合金は、約0.001%、約0.002%、約0.003%、約0.004%、約0.005%、約0.006%、約0.007%、約0.008%、約0.009%、約0.01%、約0.02%、約0.03%、約0.04%、約0.05%、約0.06%、約0.07%、約0.08%、約0.09%、約0.10%、約0.11%、約0.12%、約0.13%、約0.14%、約0.15%、約0.16%、約0.17%、約0.18%、約0.19%、または約0.20%のFeを含み得る。いくつかの場合において、Feは合金中に存在しない(すなわち、0%)。全て重量%で表した。
【0030】
いくつかの例において、本明細書に記載の合金は、合金の総重量に基づいて、0%~約0.3%(例えば、約0.001%~約0.30%、約0.005%~約0.2%、0%~約0.1%、約0.01%~約0.1%、または約0.01%~約0.05%)の量の銅(Cu)を含む。例えば、合金は、約0.001%、約0.002%、約0.003%、約0.004%、約0.005%、約0.006%、約0.007%、約0.008%、約0.009%、約0.01%、約0.02%、約0.03%、約0.04%、約0.05%、約0.06%、約0.07%、約0.08%、約0.09%、約0.10%、約0.11%、約0.12%、約0.13%、約0.14%、約0.15%、約0.16%、約0.17%、約0.18%、約0.19%、約0.20%、約0.21%、約0.22%、約0.23%、約0.24%、約0.25%、約0.26%、約0.27%、約0.28%、約0.29%、または約0.30%のCuを含み得る。いくつかの場合において、Cuは合金中に存在しない(すなわち、0%)。全て重量%で表した。
【0031】
いくつかの例において、本明細書に記載の合金は、合金の総重量に基づいて、0%~約0.5%(例えば、約0.001%~約0.5%、約0.01%~約0.3%、約0.1%~約0.2%、約0.2%~約0.5%、約0.25%~約0.5%、約0.3%~約0.5%、または約0.4%~約0.5%)の量で、マンガン(Mn)を含む。例えば、合金は、約0.001%、約0.002%、約0.003%、約0.004%、約0.005%、約0.006%、約0.007%、約0.008%、約0.009%、約0.01%、約0.02%、約0.03%、約0.04%、約0.05%、約0.06%、約0.07%、約0.08%、約0.09%、約0.10%、約0.11%、約0.12%、約0.13%、約0.14%、約0.15%、約0.16%、約0.17%、約0.18%、約0.19%、約0.20%、約0.21%、約0.22%、約0.23%、約0.24%、約0.25%、約0.26%、約0.27%、約0.28%、約0.29%、約0.30%、約0.31%、約0.32%、約0.33%、約0.34%、約0.35%、約0.36%、約0.37%、約0.38%、約0.39%、約0.40%、約0.41%、約0.42%、約0.43%、約0.44%、約0.45%、約0.46%、約0.47%、約0.48%、約0.49%、または約0.50%のMnを含み得る。いくつかの場合において、Mnは合金中に存在しない(すなわち、0%)。全て重量%で表した。
【0032】
いくつかの例において、本明細書に記載の合金は、合金の総重量に基づいて、約2.0%~約5.0%(例えば、約2.5%~約4.5%、約3.0%~約4.5%、または約3.5%~約4.0%)の量のマグネシウム(Mg)を含む。いくつかの例において、合金は、約2.0%、約2.1%、約2.2%、約2.3%、約2.4%、約2.5%、約2.6%、約2.7%、約2.8%、約2.9%、約3.0%、約3.1%、約3.2%、約3.3%、約3.4%、約3.5%、約3.6%、約3.7%、約3.8%、約3.9%、約4.0%、約4.1%、約4.2%、約4.3%、約4.4%、約4.5%、約4.6%、約4.7%、約4.8%、約4.9%、または約5.0%のMgを含み得る。全て重量%で表した。
【0033】
いくつかの例において、本明細書に記載の合金は、合金の総重量に基づいて、0%~約0.2%(例えば、約0.001%~約0.20%、0%~約0.1%、約0.005%~約0.1%、または約0.001%~約0.05%)の量のクロム(Cr)を含む。例えば、合金は、約0.001%、約0.002%、約0.003%、約0.004%、約0.005%、約0.006%、約0.007%、約0.008%、約0.009%、約0.01%、約0.02%、約0.03%、約0.04%、約0.05%、約0.06%、約0.07%、約0.08%、約0.09%、約0.10%、約0.11%、約0.12%、約0.13%、約0.14%、約0.15%、約0.16%、約0.17%、約0.18%、約0.19%、または約0.20%のCrを含み得る。いくつかの場合において、Crは合金中に存在しない(すなわち、0%)。全て重量%で表した。
【0034】
いくつかの例において、本明細書に記載の合金は、合金の総重量に基づいて、0%~約0.2%(例えば、約0.001%~約0.20%、0%~約0.1%、約0.001%~約0.05%、約0.005%~約0.1%、または約0.01%~約0.05%)の量の亜鉛(Zn)を含む。例えば、合金は、約0.001%、約0.002%、約0.003%、約0.004%、約0.005%、約0.006%、約0.007%、約0.008%、約0.009%、約0.01%、約0.02%、約0.03%、約0.04%、約0.05%、約0.06%、約0.07%、約0.08%、約0.09%、約0.10%、約0.11%、約0.12%、約0.13%、約0.14%、約0.15%、約0.16%、約0.17%、約0.18%、約0.19%、または約0.20%のZnを含み得る。いくつかの場合において、Znは合金中に存在しない(すなわち、0%)。全て重量%で表した。
【0035】
いくつかの例において、本明細書に記載の合金は、合金の総重量に基づいて、0%~約0.10%(例えば、約0.001%~約0.10%、0%~約0.05%、約0.001%~約0.03%、約0.005%~約0.05%、または約0.01%~約0.03%)の量のチタン(Ti)を含む。例えば、合金は、約0.001%、約0.002%、約0.003%、約0.004%、約0.005%、約0.006%、約0.007%、約0.008%、約0.009%、約0.01%、約0.02%、約0.03%、約0.04%、約0.05%、約0.06%、約0.07%、約0.08%、約0.09%、または約0.10%のTiを含み得る。いくつかの場合において、Tiは合金中に存在しない(すなわち、0%)。全て重量%で表した。
【0036】
任意選択で、本明細書に記載の合金組成物は、不純物と呼ばれることもある他の微量元素を、それぞれ0.05%以下、0.04%以下、0.03%以下、0.02%以下、または0.01%以下の量でさらに含み得る。これらの不純物としては、V、Zr、Ni、Sn、Ga、Ca、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。したがって、V、Zr、Ni、Sn、Ga、またはCaは、0.05%以下、0.04%以下、0.03%以下、0.02%以下、または0.01%以下の量で合金中に存在してもよい。いくつかの場合において、全ての不純物の合計は0.15%を超えない(例えば、0.10%)。全て重量%で表した。合金の残りの割合はアルミニウムである。
【0037】
いくつかの例において、本明細書に記載の合金は、Al(Fe,Mn)2Si2粒子のベータ相組成を有する。Al(Fe,Mn)2Si2粒子の平均組成は、全てAl(Fe,Mn)2Si2粒子の重量に基づいて、約0.5%~約0.8%のFe、約1.2%~約1.7%のMn、および約2.0%~約2.7%のSiであってもよく、残りはAlであってもよい。
【0038】
いくつかの場合において、Al(Fe,Mn)2Si2粒子中のFeの量は、約0.5%~約0.75%、約0.55%~約0.70%、または約0.60%~約0.70%であってもよい。例えば、Al(Fe,Mn)2Si2粒子中のFeの量は、約0.50%、0.51%、0.52%、0.53%、0.54%、0.55%、0.56%、0.57%、0.58%、0.59%、0.60%、0.61%、0.62%、0.63%、0.64%、0.65%、0.66%、0.67%、0.68%、0.69%、0.70%、0.71%、0.72%、0.73%、0.74%、0.75%、0.76%、0.77%、0.78%、0.79%、または0.80%であってもよい。
【0039】
Al(Fe,Mn)2Si2粒子中のMnの量は、約1.3%~約1.7%、約1.4%~約1.65%、または約1.5%~約1.6%であってもよい。例えば、Al(Fe,Mn)2Si2粒子中のMnの量は、約1.3%、1.31%、1.32%、1.33%、1.34%、1.35%、1.36%、1.37%、1.38%、1.39%、1.40%、1.41%、1.42%、1.43%、1.44%、1.45%、1.46%、1.47%、1.48%、1.49%、1.50%、1.51%、1.52%、1.53%、1.54%、1.55%、1.56%、1.57%、1.58%、1.59%、1.60%、1.61%、1.62%、1.63%、1.64%、1.65%、1.66%、1.67%、1.68%、1.69%、または1.70%であってもよい。
【0040】
Al(Fe,Mn)2Si2粒子中のSiの量は、約2.1%~約2.7%、約2.2%~約2.6%、または約2.4%~約2.6%であってもよい。例えば、Al(Fe,Mn)2Si2粒子中のSiの量は、約2.10%、2.11%、2.12%、2.13%、2.14%、2.15%、2.16%、2.17%、2.18%、2.19%、2.20%、2.21%、2.22%、2.23%、2.24%、2.25%、2.26%、2.27%、2.28%、2.29%、2.30%、2.31%、2.32%、2.33%、2.34%、2.35%、2.36%、2.37%、2.38%、2.39%、2.40%、2.41%、2.42%、2.43%、2.44%、2.45%、2.46%、2.47%、2.48%、2.49%、2.50%、2.51%、2.52%、2.53%、2.54%、2.55%、2.56%、2.57%、2.58%、2.59%、2.60%、2.61%、2.62%、2.63%、2.64%、2.65%、2.66%、2.67%、2.68%、2.69%、または2.70%であってもよい。
【0041】
合金中のAl(Fe,Mn)2Si2粒子の相分率は、約0.2%~約1%(例えば、約0.2%~約0.8%または約0.3%~約0.6%)の範囲であってもよい。例えば、合金中のAl(Fe,Mn)2Si2粒子の相分率は、約0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、または1.0%であってもよい。
【0042】
合金中のAl(Fe,Mn)2Si2粒子の平均粒径は、Al(Fe,Mn)2Si2粒子が、約2.0μm2~約5.0μm2(例えば、約2.5μm2~約4.5μm2または約3.0μm2~約4.0μm2)の範囲の表面積を占有するような粒径であってもよい。例えば、合金中のAl(Fe,Mn)2Si2粒子の表面積は、約2.0μm2、2.1μm2、2.2μm2、2.3μm2、2.4μm2、2.5μm2、2.6μm2、2.7μm2、2.8μm2、2.9μm2、3.0μm2、3.1μm2、3.2μm2、3.3μm2、3.4μm2、3.5μm2、3.6μm2、3.7μm2、3.8μm2、3.9μm2、4.0μm2、4.1μm2、4.2μm2、4.3μm2、4.4μm2、4.5μm2、4.6μm2、4.7μm2、4.8μm2、4.9μm2、または5.0μm2であってもよい。
【0043】
合金中のAl(Fe,Mn)2Si2粒子は、約1.0μm~約5.0μm(例えば、約1.5μm~約4.0μmまたは約2.0μm~約3.5μm)の範囲の平均長さを有してもよい。例えば、合金中のAl(Fe,Mn)2Si2粒子の平均長さは、約1.0μm、1.1μm、1.2μm、1.3μm、1.4μm、1.5μm、1.6μm、1.7μm、1.8μm、1.9μm、2.0μm、2.1μm、2.2μm、2.3μm、2.4μm、2.5μm、2.6μm、2.7μm、2.8μm、2.9μm、3.0μm、3.1μm、3.2μm、3.3μm、3.4μm、3.5μm、3.6μm、3.7μm、3.8μm、3.9μm、4.0μm、4.1μm、4.2μm、4.3μm、4.4μm、4.5μm、4.6μm、4.7μm、4.8μm、4.9μm、または5.0μmであってもよい。
【0044】
合金中のAl(Fe,Mn)2Si2粒子は、平均して低いアスペクト比(例えば幅対高さの比)を有してもよい。いくつかの場合において、本明細書に記載の低いアスペクト比は、約3以下(例えば、約2.5以下または約2以下)の比である。例えば、平均アスペクト比は、約3.0以下、約2.9以下、約2.8以下、約2.7以下、約2.6以下、約2.5以下、約2.4以下、約2.3以下、約2.2以下、約2.1以下、約2.0以下、約1.9以下、約1.8以下、または約1.7以下であってもよい。いくつかの例において、平均アスペクト比は、約1.0~約3.0、約1.2~約2.8、または約1.5~約2.5であってもよい。
【0045】
合金の性質
本明細書に記載のアルミニウム合金から作製された製品は、高強度、高陽極酸化品質、および高成形性を含む望ましい特性の組み合わせを有する。シートは、Hxx調質条件を含む様々な調質条件下で提供され得る。これらの調質条件下で、アルミニウム合金製品は、少なくとも約200MPa(例えば、約200Mpa~約350MPa、約210Mpa~約320MPa、または約230Mpa~約280MPa)の降伏強度を示し得る。非限定的な例において、降伏強度は、少なくとも約210MPa、少なくとも約220MPa、少なくとも約230MPa、少なくとも約240MPa、少なくとも約250MPa、または少なくとも約260MPaである。例えば、本明細書に記載のアルミニウム合金製品は、約200MPa、約210MPa、約220MPa、約230MPa、約240MPa、約250MPa、約260MPa、約270MPa、約280MPa、約290MPa、約300MPa、約310MPa、約320MPa、約330MPa、約340MPa、または約350MPaの降伏強度を示し得る。
【0046】
アルミニウム合金製品はまた、約7%以上(例えば、約7.5%~約15%、約9%~約14%、または約10%~約13%)の引張伸びを示し得る。非限定的な例において、本明細書に記載のアルミニウム合金製品は、約7.5%以上、約8%以上、約8.5%以上、約9%以上、約9.5%以上、約10%以上、約10.5%以上、約11%以上、約11.5%以上、または約12%以上の引張伸びを示し得る。例えば、本明細書に記載のアルミニウム合金製品は、約7%、約7.5%、約8%、約8.5%、約9%、約9.5%、約10%、約10.5%、約11%、約11.5%、約12%、約12.5%、約13%、約13.5%、約14%、約14.5%、または約15%の引張伸びを示し得る。
【0047】
本明細書に記載のアルミニウム合金製品は、陽極酸化して陽極酸化アルミニウム合金製品を形成することができる。陽極酸化アルミニウム合金製品は、約60~約100の、圧延方向に対して60度で測定した光沢値(すなわち、60°光沢値)を示し得る。60°光沢値は、表面の輝きの度合いを示し、ASTM D523に準拠した光沢計で測定され得る。いくつかの場合において、60°光沢値は、約60以上、約65以上、約70以上、約75以上、約80以上、約85以上、約90以上、または約95以上であってもよい。例えば、60°光沢値は、約60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、もしくは99、100、またはその間の任意の値であってもよい。
【0048】
製品の1つ以上の表面の色は、「Hunter L,a,b Versus CIE 1976 L*a*b*」,Application Notes,Insight on Color Vol.13,No.2(2008)で説明されているように、「ハンターL、a、b」カラースケールを使用した比色測定によって定量化され得る。ハンターL、a、b、カラースケールは、人間の目の受容体が色を反対のペアとして、すなわち明-暗(「L値」)、赤-緑(「a値」)、および黄-青(「b値」)として知覚することを前提とした反対色理論に基づいている。
【0049】
L値は、製品表面の明るさまたは暗さを指す。100のL値は最も明るい色を示し、0のL値は最も暗い色を示す。いくつかの例において、本明細書に記載のアルミニウム合金製品は、製品を陽極酸化した後、ハンターL、a、bカラースケールで測定した場合、約60~約90のL値を有する。例えば、本明細書に記載のアルミニウム合金を含む陽極酸化製品の1つ以上の表面は、約65~約85または約70~約80のL値を有し得る。いくつかの場合において、本明細書に記載のアルミニウム合金を含む陽極酸化製品の1つ以上の表面は、約60、65、70、75、80、85、もしくは90、またはその間のいずれかのL値を有し得る。
【0050】
a値は、製品表面の赤色度または緑色度を指す。正のa値は、製品表面の赤色を指し、一方負のa値は、製品表面の緑色を指す。いくつかの例において、本明細書に記載のアルミニウム合金製品は、製品を陽極酸化した後、ハンターL、a、bカラースケールで測定した場合、約-2~約2のa値を有する1つ以上の表面を有する。例えば、本明細書に記載のアルミニウム合金を含む陽極酸化製品の1つ以上の表面は、約-2.0、-1.9、-1.8、-1.7、-1.6、-1.5、-1.4、-1.3、-1.2、-1.1、-1.0、-0.9、-0.8、-0.7、-0.6、-0.5、-0.4、-0.3、-0.2、-0.1、0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、またはその間のいずれかのa値を有し得る。
【0051】
b値は、製品表面の黄色度または青色度を指す。正のb値は製品表面の黄色を指し、負のb値は製品表面の青色を指す。いくつかの例において、本明細書に記載のアルミニウム合金製品は、製品を陽極酸化した後、ハンターL、a、bカラースケールで則栄した場合、約-2~約5(例えば、約-2~約2)のb値を有する1つ以上の表面を有する。例えば、本明細書に記載のアルミニウム合金を含む陽極酸化製品の1つ以上の表面は、約-2.0、-1.9、-1.8、-1.7、-1.6、-1.5、-1.4、-1.3、-1.2、-1.1、-1.0、-0.9、-0.8、-0.7、-0.6、-0.5、-0.4、-0.3、-0.2、-0.1、0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、または5.0のb値を有し得る。
【0052】
任意選択で、本明細書に記載の圧延されたままの製品(例えば、陽極酸化なし)は、約0.1μm~約0.35μm(例えば、0.10μm、0.15μm、0.20μm、0.25μm、0.30μm、もしくは0.35μm、またはその間のいずれかの範囲の表面粗度値(2Dおよび3D)を有することができる。いくつかの場合において、本明細書に記載の製品は、陽極酸化後、約0.2μm~約0.8μmの範囲(例えば、0.2μm、0.25μm、0.3μm、0.35μm、0.4μm、0.45μm、0.5μm、0.55μm、0.6μm、0.65μm、0.7μm、0.75μm、もしくは0.80μm、またはその間のいずれか)の表面粗度値(2Dおよび3D)を有し得る。
【0053】
いくつかの場合において、本明細書に記載の陽極酸化アルミニウム合金製品は、陽極酸化後のカミソリストリークまたはピックアップ点欠陥等の目に見える欠陥を含まない、またはほとんど含まないことが可能である。カミソリストリークは、典型的には、暗い線または明るい線として現れる。ピックアップ点欠陥は、典型的には、暗い点または明るい点として現れる。しかしながら、本明細書に記載の陽極酸化アルミニウム合金製品は、従来の陽極酸化アルミニウム合金製品と比較して、構成要素を最小限にし、また細長粒子を最小限にした。さらに、本明細書に記載の製品は、表面酸化およびその他の汚染を最小限に抑えるように加工されているため、陽極酸化アルミニウム合金製品の滑らかな圧延表面が得られる。いくつかの例において、陽極酸化アルミニウム合金製品の1つ以上の表面は、製品表面の1平方メートル(m2)あたり1つ以下のカミソリストリーク欠陥を含む。いくつかの例において、陽極酸化アルミニウム合金製品の1つ以上の表面は、製品表面の1m2あたり1つ以下のピックアップ点欠陥を含む。
【0054】
本明細書に記載のアルミニウム合金製品は、任意の適切なゲージを有し得る。上述の合金は、様々なサイズおよび厚さ、例えばホイル(例えば約0.20mm未満)、シート(例えば約0.20mm~4.0mm)、シェート(例えば約4.0mm~15.0mm)、またはプレート(例えば約15.0mm超)に鋳造および加工され得るが、他の厚さおよび範囲も同様に使用され得る。いくつかの例において、本明細書に記載のアルミニウム合金製品は、中間的なゲージ(例えば、必要に応じて顧客またはエンドユーザーによってさらに低減されるゲージ)で顧客またはエンドユーザーに提供および供給されてもよい。いくつかの例において、本明細書に記載のアルミニウム合金製品は、最終ゲージ(例えば、顧客またはエンドユーザーによってさらに低減されないゲージ)で顧客またはエンドユーザーに提供および供給されてもよい。
【0055】
作製方法
特定の態様では、開示された合金組成物は、開示された方法の製品である。本開示を限定することを意図するものではないが、アルミニウム合金製品の特性は、合金製品の作製中の微細構造の形成によって部分的に決定される。ある特定の態様において、製品の作製方法は、得られる合金が所望の用途に適した特性を有するか否かに影響する、またはさらにはそれを決定付ける可能性がある。
【0056】
鋳造およびスキャルピング
本明細書に記載の合金は、直接チル(DC)プロセスを用いてインゴットに鋳造することができ、または、連続鋳造(CC)プロセスを用いて鋳造することができる。鋳造プロセスは、当業者に知られているようなアルミニウム産業で一般に使用されている規格に従って行われる。CCプロセスは、ツインベルト鋳造機、ツインロール鋳造機、またはブロック鋳造機の使用を含み得るが、それらに限定されない。いくつかの例において、鋳造プロセスは、CCプロセスによって行われ、スラブ、ストリップ等が形成される。いくつかの例において、鋳造プロセスは、鋳造インゴットを形成するDC鋳造プロセスである。任意選択で、鋳造プロセス中、金属の清浄度を向上させるために、溶融金属フィルタ(例えば、セラミックフォームフィルタまたは多孔性チューブフィルタ)が使用されてもよい。
【0057】
DC鋳造によって形成された場合、鋳造インゴットは、次いでスキャルピングされ得る。任意選択で、インゴットは、片面あたり20mm(例えば、片面あたり1mm、片面あたり2mm、片面あたり5mm、片面あたり10mm、片面あたり15mm、または片面あたり20mm)までスキャルピングされ得る。例えば、鋳造インゴットは、片面あたり1mm~20mm、片面あたり5mm~20mm、片面あたり10mm~20mm、または片面あたり15mm~20mmスキャルピングされ得る。
【0058】
鋳造製品(例えば、インゴット、スラブ、またはストリップ)は、さらに加工ステップに供されてもよい。任意選択で、シート、プレート、またはシュート等の製品を作製するために、さらなる加工ステップが使用されてもよい。そのような加工ステップには、均質化ステップ、熱間圧延ステップ、任意選択で中間焼鈍ステップを含んでもよい冷間圧延ステップ、および任意選択の最終焼鈍ステップが含まれるが、これらに限定されない。以下で、鋳造インゴットに関連して加工ステップを説明する。しかしながら、処理ステップは、当業者に認識されるような修正を用いて、鋳造スラブまたはストリップに使用することもできる。
【0059】
均質化
上記のように、加工ステップは均質化ステップを含む。均質化ステップでは、本明細書に記載の合金組成物から作製されたインゴットを加熱して、少なくとも約475℃(例えば、少なくとも約480℃、少なくとも約485℃、少なくとも約490℃、少なくとも約495℃、少なくとも約500℃、少なくとも約505℃、少なくとも約510℃、少なくとも約515℃、少なくとも約520℃、少なくとも約525℃、少なくとも約530℃、少なくとも約535℃、少なくとも約540℃、少なくとも約545℃、または少なくとも約550℃)のピーク金属温度を達成する。いくつかの例において、インゴットは、約480℃~約550℃(例えば、約490℃~約540℃または約500℃~約550℃)の範囲の温度に加熱される。ピーク金属温度までの加熱速度は、約10℃/分~約100℃/分であってもよい。例えば、ピーク金属温度までの加熱速度は、約10℃/分、約20℃/分、約30℃/分、約40℃/分、約50℃/分、約60℃/分、約70℃/分、約80℃/分、約90℃/分、または約100℃/分であってもよい。
【0060】
次いで、インゴットを、一定時間均熱にする(soak)(すなわち、示した温度に保持される)。いくつかの場合において、インゴットは、上述のようにピーク金属温度で少なくとも30分間均熱にされてもよい。例えば、インゴットは、少なくとも30分間、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、または少なくとも5時間均熱にされてもよい。
【0061】
熱間圧延および巻取り
均質化ステップの後、熱間圧延ステップを行うことができる。熱間圧延ステップは、熱間反転ミル操作または熱タンデムミル操作等の単一スタンドミルまたはマルチスタンドミルを使用して行うことができる。ある特定の場合において、インゴットを置き、約450℃~約550℃の範囲の入口温度で熱間圧延する。入口温度は、例えば、約450℃、約460℃、約470℃、約480℃、約490℃、約500℃、約510℃、約520℃、約530℃、約540℃、または約550℃であってもよい。ある特定の場合において、熱間圧延出口温度は、約250℃~約350℃の範囲であってもよい。出口温度は、例えば、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、または約350℃であってもよい。次いで、インゴットを厚さ12mmゲージ以下に熱間圧延することができる。例えば、インゴットは、厚さ11mmゲージ以下、厚さ10mmゲージ以下、厚さ9mmゲージ以下、厚さ8mmゲージ以下、厚さ7mmゲージ以下、厚さ6mmゲージ以下、厚さ5mmゲージ以下、厚さ4mmゲージ以下、厚さ3mmゲージ以下、厚さ2mmゲージ以下、または厚さ1mmゲージ以下に熱間圧延することができる。
【0062】
熱間圧延ステップの最後に、任意選択で単一スタンドミルまたはマルチスタンドミル内で、シートをコイルとして巻き取ることができる。巻取り温度は、約285℃~約350℃(例えば、約300℃~約350℃または約310℃~約330℃)の範囲であってもよい。
【0063】
冷間圧延および焼鈍
次いで、熱間圧延コイル、プレート、シェート、またはシートは、冷間圧延ステップを経て、冷間圧延コイル、シート、またはシェートを形成することができる。冷間圧延ステップは、シングルスタンドミルまたはマルチスタンドミルを使用して行うことができる。いくつかの場合において、冷間圧延ステップは、1段階冷間圧延プロセスである。いくつかの場合において、冷間圧延ステップは、2段階冷間圧延プロセスである。
【0064】
1段階冷間圧延プロセスでは、コイルまたはシートの温度は、約20℃~約150℃(例えば、約25℃~約140℃または約40℃~約120℃)の範囲の温度に下げることができる。いくつかの場合において、コイルまたはシートは、約20℃~約150℃(例えば、約25℃~約140℃または約40℃~約120℃)の範囲の入口温度で冷間圧延される。入口温度は、例えば、約20℃、約30℃、約40℃、約50℃、約60℃、約70℃、約80℃、約90℃、約100℃、約110℃、約120℃、約130℃、約140℃、または約150℃であってもよい。いくつかの場合において、冷間圧延出口温度は、約80℃~約200℃(例えば、約100℃~約190℃または約110℃~約180℃)の範囲であってもよい。出口温度は、例えば、約80℃、約90℃、約100℃、約110℃、約120℃、約130℃、約140℃、約150℃、約160℃、約170℃、約180℃、約190℃、または約200℃であってもよい。
【0065】
冷間圧延ステップは、上述のように冷間圧延に適した温度で、約0.2mm~約5mmのゲージをもたらす期間行うことができる。例えば、得られるゲージは、約0.5mm~約4mm、約0.8mm~約3.5mm、約1mm~約3mm、または約1.45mm~約2mmであってもよい。任意選択で、冷間圧延ステップは、最大約1時間(例えば、約10分~約30分)の期間にわたって行われてもよい。例えば、冷間圧延ステップは、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、または約1時間の期間にわたって行われてもよい。
【0066】
上述したように、冷間圧延ステップは、冷間圧延中に中間焼鈍ステップが行われる2段階冷間圧延プロセスであってもよい。2段階冷間圧延プロセスでは、コイルまたはシートの温度は、約20℃~約150℃(例えば、約25℃~約140℃または約40℃~約120℃)の範囲の温度に下げることができる。いくつかの場合において、コイルまたはシートは、約20℃~約150℃の範囲の入口温度で冷間圧延される。入口温度は、例えば、約20℃、約30℃、約40℃、約50℃、約60℃、約70℃、約80℃、約90℃、約100℃、約110℃、約120℃、約130℃、約140℃、または約150℃であってもよい。いくつかの場合において、冷間圧延出口温度は、約80℃~約200℃の範囲であってもよい。出口温度は、例えば、約80℃、約90℃、約100℃、約110℃、約120℃、約130℃、約140℃、約150℃、約160℃、約170℃、約180℃、約190℃、または約200℃であってもよい。
【0067】
冷間圧延ステップの第1段階は、上述のように冷間圧延に適した温度で、約1.2mm~約5mmのゲージをもたらす期間行うことができる。例えば、得られるゲージは、約1.25mm~約4mm、約1.3mm~約3.5mm、約1.4mm~約3mm、または約1.45mm~約2mmであってもよい。任意選択で、冷間圧延ステップは、最大約1時間(例えば、約10分~約30分)の期間にわたって行われてもよい。例えば、冷間圧延ステップは、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、または約1時間の期間にわたって行われてもよい。
【0068】
2段階冷間圧延プロセスの次のステップとして、本明細書で中間焼鈍ステップと呼ばれる焼鈍プロセスを行うことができる。中間焼鈍ステップでは、冷間圧延製品を、約4時間までの均熱化時間で、約250℃~約400℃(例えば、約275℃~約375℃または約300℃~約350℃)の範囲の温度で保持することができる。例えば、均熱化時間は、約10分~約4時間(例えば、約10分、約30分、約1時間、約2時間、約3時間、または約4時間)の範囲であってもよい。任意選択で、中間焼鈍ステップは、丸い結晶粒を有する合金製品をもたらし得る。いくつかの場合において、合金製品中に存在する結晶粒の少なくとも約50%が丸い(例えば、合金製品中の結晶粒の少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%が丸い)。
【0069】
中間焼鈍ステップに続いて、冷間圧延プロセスの第2段階を行うことができる。いくつかの場合において、冷間圧延プロセスの第2段階は、入口温度が約20℃~約150℃の範囲である単一スタンドミルまたはマルチスタンドミルを使用した冷間圧延を含む。入口温度は、例えば、約20℃、約30℃、約40℃、約50℃、約60℃、約70℃、約80℃、約90℃、約100℃、約110℃、約120℃、約130℃、約140℃、または約150℃である。いくつかの場合において、冷間圧延出口温度は、約80℃~約200℃の範囲であってもよい。出口温度は、例えば、約2mm以下(例えば、約0.2mm~約2mmまたは約0.2mm~約1.4mm)のゲージを得るために、約80℃、約90℃、約100℃、約110℃、約120℃、約130℃、約140℃、約150℃、約160℃、約170℃、約180℃、約190℃、または約200℃であってもよい。例えば、得られるゲージは、約0.2mm、約0.3mm、約0.4mm、約0.5mm、約0.6mm、約0.7mm、約0.8mm、約0.9mm、約1mm、約1.1mm、約1.2mm、約1.3mm、約1.4mm、約1.5mm、約1.6mm、約1.7mm、約1.8mm、約1.9mm、または約2mmであってもよい。
【0070】
任意選択で、圧延製品は、次いで約4時間までの均熱化時間で約100℃~約250℃(例えば、約125℃~約200℃または約135℃~約175℃)の温度で、本明細書において安定化焼鈍ステップとも呼ばれる焼鈍プロセスに供されてもよい。例えば、均熱化時間は、約10分~約4時間(例えば、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約1時間、約2時間、約3時間、または約4時間)の範囲であってもよい。
【0071】
焼鈍の後、圧延製品は、任意選択で、張力平準化および/または包装を含む1つ以上の追加のステップに供されてもよい。
【0072】
使用方法
本明細書に記載の製品および方法は、とりわけ、電子機器、輸送(自動車等)、建築、および産業用途において使用され得る。いくつかの場合において、高成形性を備えた合金を必要とする用途向けに、Hxx調質度でシートを使用することができる。いくつかの場合において、シートを使用して、家庭用電化製品または家庭用電化製品部品等の製品を作製することができる。例示的な家庭用電化製品としては、携帯電話、オーディオ装置、ビデオ装置、カメラ、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、テレビ、ディスプレイ、家電製品、ビデオ再生および記録装置等が挙げられる。例示的な家庭用電化製品部品としては、家庭用電子部品用の外側ハウジング(例えばファサード)および内側部品が挙げられる。シートは、例えば、携帯電話およびタブレットコンピュータのハウジングとして、ならびに電子内部シャーシとして使用され得る。いくつかの場合において、シートを使用して、建築用シート製品および建築用シート製品部品を作製することができる。いくつかの例において、本明細書に記載のシートおよび方法を使用して、インナーパネル等の自動車車体部品を作製することができる。いくつかの場合において、本明細書に記載のシートおよび方法を使用して、荷物(スーツケース等)を調整することができる。
【0073】
適切な製品および方法の実例
以下で使用されるように、一連の実例へのいかなる言及も、それらの実例のそれぞれへの言及として分離的に理解されるべきである(例えば、「実例1~4」は「実例1、2、3、または4」として理解される)。
【0074】
実例1は、0~約0.1重量%のSi、0~約0.2重量%のFe、0~約0.3重量%のCu、0~約0.5重量%のMn、約2.0~約5.0重量%のMg、0~約0.2重量%のCr、0~約0.2重量%のZn、0~約0.1重量%のTi、および0.15重量%までの不純物を含み、残りはAlであるアルミニウム合金である。
【0075】
実例2は、0~約0.05重量%のSi、0~約0.1重量%のFe、0~約0.1重量%のCu、約0.2~約0.5重量%のMn、約2.0~約4.5重量%のMg、0~約0.1重量%のCr、0~約0.1重量%のZn、0~約0.05重量%のTi、および0.15重量%までの不純物を含み、残りはAlである、先行または後続の実例のいずれかのアルミニウム合金である。
【0076】
実例3は、約0.01~約0.05重量%のSi、約0.01~約0.08重量%のFe、約0.01~約0.05重量%のCu、約0.4~約0.5重量%のMn、約3.0~約4.0重量%のMg、約0.001~約0.05重量%のCr、約0.001~約0.05重量%のZn、約0.001~約0.03重量%のTi、および0.15重量%までの不純物を含み、残りはAlである、先行または後続の実例のいずれかのアルミニウム合金である。
【0077】
実例4は、アルミニウム合金が直接チル鋳造によって製造される、先行または後続の実例いずれかのアルミニウム合金である。
【0078】
実例5は、アルミニウム合金が、均質化、熱間圧延、冷間圧延、および焼鈍によって処理される、先行または後続の実例のいずれかのアルミニウム合金である。
【0079】
実例6は、先行または後続の実例のいずれかのアルミニウム合金を含む製品である。
【0080】
実例7は、シートである、先行または後続の実例のいずれかの製品である。
【0081】
実例8は、シートが陽極酸化シートである、先行または後続の実例のいずれかの製品である。
【0082】
実例9は、陽極酸化シートの1つ以上の表面が、60~100の60°光沢値を有する、先行または後続の実例のいずれかの製品である。
【0083】
実例10は、陽極酸化シートの1つ以上の表面が、ハンターL、a、bカラースケールによって測定される60~90のL値を有する、先行または後続の実例のいずれかの製品である。
【0084】
実例11は、陽極酸化シートの1つ以上の表面が、ハンターL、a、bカラースケールによって測定される-2~2のa値を有する、先行または後続の実例のいずれかの製品である。
【0085】
実例12は、陽極酸化シートの1つ以上の表面が、ハンターL、a、bカラースケールによって測定される-2~2のb値を有する、先行または後続の実例のいずれかの製品である。
【0086】
実例13は、シートの1つ以上の表面が、0.1μm~0.35μmの表面粗度値を有する、先行または後続の実例のいずれかの製品である。
【0087】
実例14は、陽極酸化シートの1つ以上の表面が、0.2μm~0.8μmの表面粗度値を有する、先行または後続の実例のいずれかの製品である。
【0088】
実例15は、陽極酸化シートの1つ以上の表面が、製品表面の平方メートル(m2)あたり1以下の欠陥を含み、欠陥は、カミソリストリーク欠陥またはピックアップ点欠陥を含む、先行または後続の実例のいずれかの製品である。
【0089】
実例16は、シートが少なくとも約200MPaの降伏強度を有する、先行または後続の実例のいずれかの製品である。
【0090】
実例17は、シートが約200MPa~約350MPaの降伏強度を有する、先行または後続の実例のいずれかの製品である。
【0091】
実例18は、シートが約7%以上の引張伸びを有する、先行または後続の実例のいずれかの製品である。
【0092】
実例19は、家庭用電子部品または家庭用電化製品部品を含む、先行または後続の実例のいずれかの製品である。
【0093】
実例20は、建築用シート製品または建築用シート製品部品を含む、先行または後続の実例のいずれかの製品である。
【0094】
実例21は、自動車の車体部品を含む、先行または後続の実例のいずれかの製品である。
【0095】
実例22は、アルミニウム製品の製造方法であり、製造方法は、アルミニウム合金を鋳造して鋳造アルミニウム合金を形成することであって、アルミニウム合金は、0~約0.1重量%のSi、0~約0.2重量%のFe、0~約0.3重量%のCu、0~約0.5重量%のMn、約2.0~約5.0重量%のMg、0~約0.2重量%のCr、0~約0.2重量%のZn、0~約0.1重量%のTi、0.15重量%までの不純物を含み、残りはAlである、形成することと;鋳造アルミニウム合金をスキャルピングすることと;鋳造アルミニウム合金を均質化することと;鋳造アルミニウム合金を熱間圧延して圧延製品を製造することと;圧延製品を冷間圧延することとを含む。
【0096】
実例23は、アルミニウム合金が、0~約0.05重量%のSi、0~約0.1重量%のFe、0~約0.1重量%のCu、約0.2~約0.5重量%のMn、約2.0~約4.5重量%のMg、0~約0.1重量%のCr、0~約0.1重量%のZn、0~約0.05重量%のTi、および0.15重量%までの不純物を含み、残りはAlである、先行または後続の実例のいずれかの方法である。
【0097】
実例24は、アルミニウム合金が約0.01~約0.05重量%のSi、約0.01~約0.08重量%のFe、約0.01~約0.05重量%のCu、約0.4~約0.5重量%のMn、約3.0~約4.0重量%のMg、約0.001~約0.05重量%のCr、約0.001~約0.05重量%のZn、約0.001~約0.03重量%のTi、および0.15重量%までの不純物を含み、残りはAlである、先行または後続の実例のいずれかの方法である。
【0098】
実例25は、冷間圧延ステップ後に圧延製品を焼鈍することをさらに含む、先行または後続の実例のいずれかの方法である。
【0099】
実例26は、冷間圧延ステップが、2段階冷間圧延ステップである、先行または後続の実例のいずれかの方法である。
【0100】
実例27は、2段階冷間圧延ステップが、第1の冷間圧延ステップ、中間焼鈍ステップ、および第2の冷間圧延ステップを含む、先行または後続の実例のいずれかの方法である。
【0101】
実例28は、先行または後続の実例のいずれかの方法によって作製される、アルミニウム合金製品である。
【0102】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するのに役立つが、それを限定するものではない。それどころか、本明細書の説明を読んだ後に、本発明の精神から逸脱することなく、それら自体を当業者に示唆することができる、様々な実施形態、修正形態および同等物に及ぼすことができることが明確に理解されるべきである。
【実施例0103】
実施例1
本明細書に記載のアルミニウム合金、および表4に示す比較合金を、本明細書に記載の方法に従って作製した。合金1は、
図1に示すステップを使用し、本明細書に記載の方法に従って形成された例示的合金である。合金Aは、AA5252であり、現在商業用途で陽極酸化品質の合金として使用されている。合金Aは合金1と同様に作製したが、最終的に冷間圧延を行い、合金Aを18%圧下させ、一方合金1を45%圧下させた。2つの合金間の冷間圧延圧下の変動は、組成間の機械的特性の違いにより、同等の試料を作製するために導入された。各合金において、残りはアルミニウムであり、全ての値は重量%で表される。
【表4】
【0104】
例示的な合金および比較合金の機械的特性を決定した。具体的には、ASTM B557に従って降伏強度および引張伸びを決定し、ASTM E643に従って限界張出し高さ(成形性を示す)を決定した。試験結果を表5にまとめる。
【表5】
【0105】
機械的特性は、例示的な合金1が、比較合金Aよりも高い降伏強度、高い引張伸び、および高い成形性を示すことを示している。
【0106】
例示的な合金および比較合金の外観も比較した。
図2Aおよび2Bに示すように、合金1(
図2B)は、比較合金A(
図2A)と同等以上の陽極酸化品質および直線性(ストリークにより測定)を示す。60°光沢値は、比較合金Aおよび例示的な合金1のシートの上面(「上面」)および底面(「底面」)について測定した。結果は、合金1が比較合金Aと同等の光沢度を示すことを示している(
図3を参照されたい)。
【0107】
実施例2
少量のSiおよびFeを含む、表4に記載の、および以下の表6に再び記載された合金1を、実施例1で上述したように作製し、より多量のSiおよびFeを有する従来の5xxxシリーズ陽極酸化品質合金である合金Bと比較した(表6)。合金Bは合金1と同様に作製したが、最終的に冷間圧延を行い、合金Bを18%圧下させ、一方合金1を45%圧下させた。2つの合金間の冷間圧延圧下の変動は、組成間の機械的特性の違いにより、同等の試料を作製するために導入された。各合金において、残りはアルミニウムであり、全ての値は重量%で表される。
【表6】
【0108】
合金1の表面の写真を
図4Aに、合金Bの表面の写真を
図4Bに示す。合金1は、優れた均一性および光沢を示した。光沢測定は、60°光沢値に定量化された。
図5を参照されたい。結果は、合金1が合金Bよりも高い光沢を示すことを示している。
【0109】
上に引用された全ての特許、刊行物、および要約は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明の様々な実施形態は、本発明の様々な目的を達成するために記載されている。これらの実施形態は、本発明の原理の単なる例示であることが認識されるべきである。多くの変更およびその適合は、以下の特許請求の範囲で定義される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者には容易に明らかであろう。
0~0.1重量%のSi、0~0.2重量%のFe、0~0.3重量%のCu、0~0.5重量%のMn、2.0~5.0重量%のMg、0~0.2重量%のCr、0~0.2重量%のZn、0~0.1重量%のTi、および0.15重量%までの不純物を含み、残りがAlである、アルミニウム合金。