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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179547
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】多価ネコワクチン
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/295 20060101AFI20231212BHJP
   A61K 39/125 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 39/21 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 39/265 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 39/23 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 39/118 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 39/205 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20231212BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20231212BHJP
   C12N 7/00 20060101ALI20231212BHJP
   C12N 15/41 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
A61K39/295 ZNA
A61K39/125
A61K39/21
A61K39/265
A61K39/23
A61K39/118
A61K39/205
A61P31/12
A61P31/04
A61P37/04
C12N15/86 Z
C12N7/00
C12N15/41
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023158724
(22)【出願日】2023-09-22
(62)【分割の表示】P 2020524411の分割
【原出願日】2018-11-05
(31)【優先権主張番号】62/599,401
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510000976
【氏名又は名称】インターベット インターナショナル ベー. フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】シュ,ジーチャン
(72)【発明者】
【氏名】ラフルール,ロンダ
(72)【発明者】
【氏名】ターピー,イアン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、新規なネコ用多価ワクチンを提供する。本発明はまた、多価ワクチンを単独でまたは他の防御剤と組み合わせて作製および使用する方法も提供する。
【解決手段】ネコ病原体からの1つまたは複数の抗原をコードするベネズエラウマ脳炎(VEE)アルファウイルスRNAレプリコン粒子と、改変された生ネコ病原体と、を含む、免疫原性組成物、該免疫原性組成物と、薬学的に許容される担体とを含む、ネコカリシウイルス(FCV)および/またはネコ白血病ウイルス(FeLV)による疾患の予防を助けるためのワクチンとする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネコカリシウイルス(FCV)抗原をコードするアルファウイルスRNAレプリコン粒
子と、改変された生ネコウイルス性鼻気管炎ウイルス(FVR)、改変された生ネコ汎白
血球減少症ウイルス(FPLV)、改変された生クラミドフィラ・フェリス(Chlam
ydophila felis)およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択さ
れる改変された生ネコ病原体とを含む免疫原性組成物。
【請求項2】
前記FCV抗原がカプシドタンパク質またはその抗原性断片である、請求項1に記載の
免疫原性組成物。
【請求項3】
前記カプシドタンパク質が、FCV F9様カプシドタンパク質、FCV F9様カプ
シドタンパク質の抗原性断片、強毒全身性FCV(VS―FCV)カプシドタンパク質お
よびVS-FCVカプシドタンパク質の抗原性断片からなる群から選択される、請求項2
に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
前記カプシドタンパク質が、VS-FCVカプシドタンパク質またはその抗原性断片で
ある、請求項3に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
前記アルファウイルスRNAレプリコン粒子が、FCV F9様カプシドタンパク質、
FCV F9様カプシドタンパク質の抗原性断片、ネコ白血病ウイルス(FeLV)糖タ
ンパク質(gp85)、gp85の抗原性断片、狂犬病ウイルスGタンパク質、狂犬病ウ
イルスGタンパク質の抗原性断片、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択
される抗原もコードする、請求項4に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
前記カプシドタンパク質が、FCV F9様カプシドタンパク質またはその抗原性断片
である、請求項3に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
FeLV糖タンパク質(gp85)、gp85の抗原性断片、狂犬病ウイルスGタンパ
ク質、狂犬病ウイルスGタンパク質の抗原性断片、およびこれらの任意の組み合わせから
なる群から選択される抗原をコードする1つまたは複数の追加のアルファウイルスRNA
レプリコン粒子を含む、請求項1、2、3、4、5または6に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
FCV F9様カプシドタンパク質またはその抗原性断片をコードする追加のアルファ
ウイルスRNAレプリコン粒子をさらに含む、請求項4に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
前記VS―FCVカプシドタンパク質が、配列番号2のアミノ酸配列との少なくとも9
5%の同一性を含むアミノ酸配列を含む、請求項3、4、5、7または8に記載の免疫原
性組成物。
【請求項10】
前記FCV F9様カプシドタンパク質が、配列番号4のアミノ酸配列との少なくとも
95%の同一性を含むアミノ酸配列を含む、請求項3、5、6、7、8または9に記載の
免疫原性組成物。
【請求項11】
前記FeLV糖タンパク質(gp85)が、配列番号6のアミノ酸配列との少なくとも
95%の同一性を含むアミノ酸配列を含む、請求項5、7、9または10に記載の免疫原
性組成物。
【請求項12】
前記狂犬病ウイルスGタンパク質が、配列番号10のアミノ酸配列との少なくとも95
%の同一性を含むアミノ酸配列を含む、請求項5、7、9、10または11に記載の免疫
原性組成物。
【請求項13】
前記アルファウイルスRNAレプリコン粒子が、ベネズエラウマ脳炎(VEE)アルフ
ァウイルスRNAレプリコン粒子である、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、
10、11または12に記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
前記追加のアルファウイルスRNAレプリコン粒子が、ベネズエラウマ脳炎(VEE)
アルファウイルスRNAレプリコン粒子である、請求項7、8、9、10、11、12ま
たは13に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14に記
載の免疫原性組成物と、薬学的に許容される担体とを含む、FCVによる疾患の予防を助
けるためのワクチン。
【請求項16】
強毒全身性ネコカリシウイルス(VS-FCV)カプシドタンパク質またはその抗原性
断片をコードするアルファウイルスRNAレプリコン粒子と、改変された生ネコウイルス
性鼻気管炎ウイルス(FVR)と、改変された生ネコ汎白血球減少症ウイルス(FPLV
)と、改変された生クラミドフィラ・フェリス(Chlamydophila feli
s)とを含む、FCVによる疾患の予防を助けるためのワクチンであって、前記アルファ
ウイルスRNAレプリコン粒子がベネズエラウマ脳炎(VEE)アルファウイルスRNA
レプリコン粒子であるワクチン。
【請求項17】
ネコカリシウイルスF9様カプシドタンパク質またはその抗原性断片をコードするアル
ファウイルスRNAレプリコン粒子をさらに含む、請求項16に記載のワクチン。
【請求項18】
前記アルファウイルスRNAレプリコン粒子が、ネコカリシウイルスF9様カプシドタ
ンパク質またはその抗原性断片をさらにコードする、請求項16に記載のワクチン。
【請求項19】
死滅または改変された生F9様ネコカリシウイルスをさらに含む、請求項16に記載の
ワクチン。
【請求項20】
ネコ白血病ウイルス(FeLV)糖タンパク質(gp85)またはその抗原性断片をコ
ードするアルファウイルスRNAレプリコン粒子をさらに含む、請求項16、17、18
または19に記載のワクチン。
【請求項21】
前記アルファウイルスRNAレプリコン粒子が、ネコ白血病ウイルス(FeLV)糖タ
ンパク質(gp85)またはその抗原性断片をさらにコードする、請求項16、17、1
8または19に記載のワクチン。
【請求項22】
非アジュバントワクチンである、請求項15、16、17、18、19、20または2
1に記載のワクチン組成物。
【請求項23】
病原性FCVに対してネコを免疫する方法であって、免疫学的有効量の請求項15、1
6、17、18、19、20、21または22に記載のワクチンを前記ネコに投与するス
テップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、2017年12月15
日に出願された米国仮特許出願第62/599401号、2017年12月8日に出願さ
れた米国仮特許出願第62/596508号、2017年11月6日に出願された米国仮
特許出願第62/582050号および2017年11月6日に出願された米国仮特許出
願第62/581955号の米国特許法第119条(e)の下での優先権を主張する。
【0002】
本発明は、新規なネコ用多価ワクチンに関する。多価ワクチンを単独でまたは他の防御
剤と組み合わせて作製および使用する方法も提供される。
【背景技術】
【0003】
ネコ呼吸器疾患には、副鼻腔炎、結膜炎、流涙、唾液分泌および口腔潰瘍に代表される
病気が含まれる。ネコの上気道疾患に関連する2つの最も一般的な病原体は、ネコカリシ
ウイルス(FCV)とネコヘルペスウイルス1型ウイルス(FHV-1)としても知られ
ているネコウイルス性鼻気管炎ウイルス(FVR)である。これら2つのネコウイルスは
、世界中の全てのネコ呼吸器疾患のおよそ80%の原因であると考えられている。細菌で
あるクラミドフィラ・フェリス(Chlamydophila felis)は、ネコ呼
吸器疾患でも役割を果たし得る第3の病原体である。したがって、これらの3つの病原体
に対するワクチンが現在市販されている。
【0004】
FVRは、イヌヘルペスウイルス1に関連するアルファヘルペスウイルスであり、おそ
らくネコ呼吸器病原体の中で最も重要である。FVRは、極めて伝染性で、子ネコならび
にネコで重篤な疾患を引き起こし得る大きなエンベロープDNAウイルスである。したが
って、ほとんどのネコは生涯を通じてFVRに曝露される。市販のNobivac(登録
商標)Feline-1ワクチンは、改変された生ネコウイルス性鼻気管炎ウイルスを含
有している。
【0005】
FCV感染の最も一般的な特徴および臨床徴候は、舌および口腔粘膜上の小胞(潰瘍)
の発生であり、これは小さな個別の潰瘍として始まるが、舌の大部分に広がり、影響を及
ぼし得る。感染したネコでは発熱もしばしば見られる。FCVの一定の株は、リンピング
症候群(limping syndrome)として知られているネコの疾患も引き起こ
し、これは発熱、関節と筋肉の痛み(リンピング)、および時折の舌/口腔潰瘍を特徴と
する。さらに、FCVのいくつかの株は、感染したネコの慢性口内炎と関連付けられてい
る。FCVに感染したネコは持続感染する可能性があり、長期間にわたって感染性ウイル
スを排出し得る。
【0006】
FCV分離株は抗原的に極めて可変性で、FCV F9などのFCVの古いワクチン株
でワクチン接種されたネコの抗体は、現在の野外分離株全てを有効に中和するわけではな
い。さらに、全身性疾患および高い死亡率に関連する新たなFCV株が同定されている[
米国特許第7449323号明細書参照]。これらの「強毒全身性(virulent
systemic)」(VS-FCV)分離株は、局所的発生の原因であり、現在のワク
チンも、これらの株によって引き起こされる疾患からネコを防御するようには思われない
【0007】
FCVは、3つのオープンリーディングフレーム(ORF)からなる一本鎖のプラス鎖
RNAゲノムを含む。ゲノムは3’末端がポリアデニル化され、5’末端がウイルスコー
ドタンパク質によって結合されている。第1のオープンリーディングフレームは、単一ポ
リペプチドで発現されるウイルスプロテアーゼおよびRNA依存性RNAポリメラーゼを
コードする。次いで、このポリペプチドはウイルスプロテアーゼによって翻訳後に切断さ
れる。第2のオープンリーディングフレームは、主カプシドタンパク質(すなわち、FC
Vカプシドタンパク質)をコードし、これはA-Fとして示される6つの領域を有する[
Scott et al.,60 Am.J.Vet.Res.:652-658(19
99)]。領域Aが切断されて、成熟カプシドタンパク質が産生される。ORF2の領域
B、DおよびFはFCV分離株間で比較的保存されているが、領域CおよびEは可変性で
あり、ORF2の領域Eは主要なB細胞エピトープを含んでいる[Radford et
al.,38(2)Vet Res.:319-335(2007)参照]。ORF3
は、マイナーな構造タンパク質をコードする[Sosnovtsev and Gree
n,277 Virology:193-203(2000)]。
【0008】
クラミドフィラ・フェリス(Chlamydophila felis)は、世界中の
イエネコに特有の細菌である。クラミドフィラ・フェリス(C.felis)は、感染し
たネコの結膜炎症、鼻炎および呼吸器系の問題を引き起こし得る。クラミドフィラ・フェ
リス(C.felis)は、わずか約1000個のタンパク質をコードする比較的小さな
ゲノムを有する。この細菌は、75000塩基対を含むプラスミドも含む。市販のNob
ivac(登録商標)Feline-1ワクチンは、改変された生クラミドフィラ・フェ
リス(Chlamydophila felis)を含有している。
【0009】
上記のネコ呼吸器疾患に関連する3つの病原体に加えて、ネコは通常、他の3つのウイ
ルス:ネコ白血病ウイルス(FeLV)、ネコ汎白血球減少症(FPVまたはFPLV)
、および狂犬病ウイルスに対してもワクチン接種される。ネコ白血病ウイルスは、イエネ
コに感染するレトロウイルスであり、世界中で重大な罹患率および死亡率をもたらしてい
る。FeLVは主に唾液を介して伝染するが、体液との接触を通して広がることも報告さ
れている[Pacitti et al.,Vet Rec 118:381-384(
1986)doi:10.1136/vr.118.14.381;Levy et a
l.,J Feline Med Surg 10:300-316(2008)doi
:10.1016/j.jfms.2008.03.002]。FeLV感染中に観察さ
れるネコの臨床徴候には、細胞増殖性障害(リンパ系または骨髄性腫瘍)、細胞抑制性障
害(免疫抑制、貧血、骨髄抑制に関連する感染性疾患)、炎症性障害、神経障害、流産、
および腸炎が含まれる[Hoover et al.,J Am Vet Med As
soc 199:1287-1297(1991);Levy and Crawfor
d,Textbook of Veterinary Internal Medici
ne,6th ed (Ettinger SJ, Feldman EC., eds
.)WB Saunders, Philadelphia, PA.(2005)]。
抗原血症の有病率は、健康なネコの1~5%から罹患したネコの15~30%までさまざ
まである[Hosie et al.Veterinary Records,128:
293-297(1989);Braley, Feline Practice 22
:25-29 (1994);Malik et al.,Australian Ve
terinary Journal 75:323-327(1997);Arjona
et al.,Journal of Clinical Microbiology
38:3448-3449(2000)]。FeLVはしばしば、付随する持続性ウイ
ルス血症を伴う持続的な感染を確立し、しばしば宿主ネコの死につながる。
【0010】
FeLVの一本鎖RNAゲノムは、3つの遺伝子のみ:(i)エンベロープ糖タンパク
質をコードするENV遺伝子、(ii)ウイルスの主要な構造要素をコードするGAG遺
伝子、および(iii)RNAポリメラーゼをコードするPOL遺伝子をコードする[T
homsen et al.,Journal of General Virolog
y 73:1819-1824(1992)]。FeLVエンベロープ(ENV)遺伝子
は、1つまたは複数の細胞酵素によってタンパク質分解処理されて主要なエンベロープ糖
タンパク質gp70および関連する膜貫通タンパク質p15Eを産生するgp85前駆体
タンパク質をコードする[DeNoronha, et al.,Virology 8
5:617-621(1978);Nunberg et al.,PNAS 81:3
675-3679 (1983)]。膜貫通タンパク質p15Eは、免疫抑制特性を有す
るガンマレトロウイルス間で保存されている配列を含む[Mathes et al.,
Nature 274:687-689(1978)]。近年、欧州医薬品庁の動物用医
薬品委員会(CVMP)は、活性物質として大腸菌(Escherichia coli
)で発現されるFeLVサブグループAのgp70表面糖タンパク質に由来する組換えp
45 FeLVエンベロープ抗原を含むワクチンについて肯定的な意見を採用した。Fe
LVエンベロープ糖タンパク質はFeLV特異的細胞傷害性T細胞応答の標的であると同
時に、中和抗体であり、したがってFeLVの主要な免疫原の1つである[Flynn
et al.,J.Virol.76(5):2306-2315(2002)]。
【0011】
ネコ汎白血球減少症(FPVまたはFPLV)は、しばしば致命的なネコの極めて伝染
性のウイルス疾患である。汎白血球減少症という名称は、罹患した動物が示す白血球数(
白血球)が少ないことに由来している。FPLVは、リンパ組織、骨髄、腸上皮、および
非常に幼い子ネコでは、網膜および小脳の活発に分裂している細胞に感染し、これらを破
壊する。ウイルスは妊娠中のネコでも経胎盤的に広がり、胚吸収、胎子ミイラ化、死産ま
たは流産を引き起こし得る。感染したネコは、尿、便および鼻分泌物にウイルスを排出し
、感受性ネコがこれらの分泌物または感染したネコのノミと接触すると、感受性ネコが感
染する。FPLV感染による臨床徴候はまた、ネコジステンパーまたはネコパルボとして
分類されている。
【0012】
ネコ汎白血球減少症ウイルスは、パルボウイルス科(Parvoviridae)のパ
ルボウイルス属(Parvovirus)のメンバーである。したがって、FPLVはミ
ンク腸炎ウイルスおよびイヌ2型パルボウイルス(CPV-2)と密接に関連している。
FPLVは、配列決定された一本鎖DNAゲノムを有する[Liu et al.,Ge
nome Announc.Mar-Apr;3(2)(2015):e01556-1
4参照]。市販のNobivac(登録商標)Feline-1ワクチンは、改変された
生ネコ汎白血球減少症ウイルスを含有している。
【0013】
狂犬病は、ヒトおよび他の哺乳動物の脳の炎症をもたらす予防可能な人畜共通感染症で
ある。臨床狂犬病は、典型的には狂暴性狂犬病または麻痺性狂犬病に分類される急性進行
性脳炎である。狂暴性狂犬病は、不穏状態、被刺激性および攻撃性を特徴とする。麻痺性
狂犬病は、過度の唾液分泌、深い努力性呼吸、麻痺、および最終的には昏睡を特徴とする
。狂犬病の原因因子は狂犬病ウイルスであり、これはネコを含むほとんどの哺乳動物に感
染することができ、野生動物および感受性飼育動物の貯蔵所を維持している。
【0014】
狂犬病ウイルスは、5つの構造タンパク質:核タンパク質(N)、リンタンパク質(P
)、マトリックスタンパク質(M)、糖タンパク質(G)およびRNA依存性RNAポリ
メラーゼをコードするエンベロープRNAウイルスである[Dietzschold e
t al.,Crit Rev Immunol 10:427-439(1991)]
。糖タンパク質(G)は、ウイルス中和抗体を誘導する防御抗原と考えられている[Co
x et al.,Infect Immun 16:754-759 (1977)]
。この疾患に対抗するために、数種類の狂犬病ワクチンが製造されている。不活化細胞培
養物由来全ウイルス死滅狂犬病ウイルスワクチンが、米国で最も一般的に使用されている
ワクチンである。これらの全ウイルス死滅狂犬病ウイルスワクチンは高レベルの抗原を必
要とするため、アジュバントが必要である。残念ながら、このアジュバントの使用は、注
射部位の反応性、過敏症、さらにはネコの注射部位肉腫の知覚されたリスクと関連してい
る。近年、改変された生ワクチンが、野生動物の免疫化のための経口ワクチンベイトでう
まく使用されている[Mahl et al.,Vet Res 45(1):77(2
014)]。さらに、糖タンパク質(G)を発現する組換えワクチンが、現在、ネコで使
用するために米国で販売されている。核酸ワクチンも実験室研究で使用されているが、現
在米国では認可されているものはない。
【0015】
いくつかのベクター戦略は、一定の病原体から防御する努力においてワクチンで長年に
わたって使用されてきた。このようなベクター戦略の1つには、アルファウイルス由来の
レプリコンRNA粒子(RP)の使用が含まれ[Vander Veen,et al.
Anim Health Res Rev.13(1):1-9.(2012)doi:
10.1017/S1466252312000011;Kamrud et al.,
J Gen Virol.91(Pt 7):1723-1727(2010)]、これ
らはベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)[Pushko et al.,Virol
ogy 239:389-401(1997)]、シンドビス(SIN)[Breden
beek et al.,Journal of Virology 67:6439-
6446(1993)]およびセムリキ森林ウイルス(SFV)[Liljestrom
and Garoff,Biotechnology(NY)9:1356-1361
(1991)]を含むいくつかの異なるアルファウイルスから開発された。RPワクチン
は、増殖不全アルファウイルスRNAレプリコンを宿主細胞に送達し、インビボで(1ま
たは複数の)所望の抗原性導入遺伝子の発現をもたらす[Pushko et al.,
Virology 239(2):389-401(1997)]。RPは、いくつかの
従来のワクチン製剤と比較した場合、魅力的な安全性および有効性プロファイルを有する
[Vander Veen,et al.Anim Health Res Rev.1
3(1):1-9.(2012)]。RPプラットフォームは、病原性抗原をコードする
ために使用されており、ブタおよび家禽用のいくつかのUSDA認可ワクチンの基礎とな
っている。
【0016】
特に、アルファウイルスRNAレプリコン粒子、特にベネズエラウマ脳炎(VEE)ア
ルファウイルスRNAレプリコン粒子は、全身の抗ウイルス状態を触媒し、致命的なウイ
ルス攻撃から防御する[Konopka et al.,J.Virol.,83 (2
9):12432-12442(2009)]、特に口蹄疫ウイルスに対する迅速な防御
を誘導する[Segundo et al.,J.Virol.,87(10):544
7-5460(2013)]ことが報告されている。したがって、アルファウイルスRN
Aレプリコン粒子は生ウイルスに対する自然免疫応答を増強するため、免疫応答に有害で
あると予想されるため、アルファウイルスRNAレプリコン粒子をワクチン中で改変生ウ
イルスと組み合わせるべきではないように思われる。
【0017】
本明細書中の任意の参考文献の引用は、このような参考文献が本出願に対する「先行技
術」として利用可能であることの承認として解釈されるべきではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第7449323号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Scott et al.,60 Am.J.Vet.Res.:652-658(1999)
【非特許文献2】Radford et al.,38(2)Vet Res.:319-335(2007)
【非特許文献3】Sosnovtsev and Green,277 Virology:193-203(2000)
【非特許文献4】Pacitti et al.,Vet Rec 118:381-384(1986)doi:10.1136/vr.118.14.381
【非特許文献5】Levy et al.,J Feline Med Surg 10:300-316(2008)doi:10.1016/j.jfms.2008.03.002
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【非特許文献27】Vander Veen,et al.Anim Health Res Rev.13(1):1-9.(2012)
【非特許文献28】Konopka et al.,J.Virol.,83 (29):12432-12442(2009)
【非特許文献29】Segundo et al.,J.Virol.,87(10):5447-5460(2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって、本発明は、1つまたは複数のネコ病原体からの1つまたは複数の抗原をコ
ードするアルファウイルスRNAレプリコン粒子を、1つまたは複数の改変された生ネコ
病原体と共に含む免疫原性組成物を含む。本発明の免疫原性組成物の全てが、多価ワクチ
ンにも使用され得る。このタイプの特定の実施形態では、ワクチン接種される対象がネコ
である。さらに特定の実施形態では、ワクチン接種される対象がイエネコである。本発明
の免疫原性組成物およびワクチンを作製および使用する方法も提供される。
【0021】
特定の実施形態では、免疫原性組成物が、1つまたは複数のネコカリシウイルス(FC
V)抗原をコードするアルファウイルスRNAレプリコン粒子と、改変された生ネコ病原
体とを含む。他の実施形態では、免疫原性組成物が、1つまたは複数のネコ白血病ウイル
ス(FeLV)抗原をコードするアルファウイルスRNAレプリコン粒子と、改変された
生ネコ病原体とを含む。さらに他の実施形態では、免疫原性組成物が、1つまたは複数の
狂犬病ウイルス抗原をコードするアルファウイルスRNAレプリコン粒子と、改変された
生ネコ病原体とを含む。一定の実施形態では、改変された生ネコ病原体が、ネコウイルス
性鼻気管炎ウイルス(FVR)である。他の実施形態では、改変された生ネコ病原体が、
ネコ汎白血球減少症ウイルス(FPLV)である。さらに他の実施形態では、改変された
生ネコ病原体が、改変された生クラミドフィラ・フェリス(Chlamydophila
felis)である。さらに他の実施形態では、改変された生ネコ病原体が、改変され
た生F9様ネコカリシウイルス(FCV F9様)である。さらに他の実施形態では、改
変された生ネコ病原体が、改変された生ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordete
lla bronchiseptica)である。本発明はさらに、これらのアルファウ
イルスRNAレプリコン粒子と改変された生ネコ病原体の任意の組み合わせを含む免疫原
性組成物を提供する。このタイプの具体的な実施形態では、免疫原性組成物が、FCV抗
原をコードするアルファウイルスRNAレプリコン粒子、FeLV抗原をコードするアル
ファウイルスRNAレプリコン粒子、改変された生FVR、改変された生FPLV、およ
び改変された生クラミドフィラ・フェリス(Chlamydophila felis)
を含む。
【0022】
このタイプの一定の実施形態では、免疫原性組成物が、FCVカプシドタンパク質をコ
ードするアルファウイルスRNAレプリコン粒子を含む。さらに特定の実施形態では、F
CVカプシドタンパク質がFCV F9様カプシドタンパク質である。他の実施形態では
、アルファウイルスRNAレプリコン粒子が、FCV F9様カプシドタンパク質の抗原
性断片をコードする。さらに他の実施形態では、FCVカプシドタンパク質が、強毒全身
性FCV(VS-FCV)カプシドタンパク質である。さらに他の実施形態では、アルフ
ァウイルスRNAレプリコン粒子が、VS-FCVカプシドタンパク質の抗原性断片をコ
ードする。さらに他の実施形態では、アルファウイルスRNAレプリコン粒子が、FCV
F9様カプシドタンパク質またはその抗原性断片とVS-FCVカプシドタンパク質ま
たはその抗原性断片の両方をコードする。
【0023】
他の実施形態では、免疫原性組成物が、VS-FCVカプシドタンパク質またはその抗
原性断片をコードするアルファウイルスRNAレプリコン粒子を含み、VS-FCVカプ
シドタンパク質が、配列番号2のアミノ酸配列との95%以上の同一性を含むアミノ酸配
列を含む。より具体的な実施形態では、VS-FCVカプシドタンパク質が、配列番号2
のアミノ酸配列を含む。さらにより具体的な実施形態では、VS-FCVカプシドタンパ
ク質が、配列番号1または配列番号12のヌクレオチド配列によってコードされる。関連
する実施形態では、本発明のアルファウイルスRNAレプリコン粒子が、FCV F9様
カプシドタンパク質またはその抗原性断片をコードする。このタイプの具体的な実施形態
では、FCV F9様カプシドタンパク質が、配列番号4のアミノ酸配列との95%以上
の同一性を含むアミノ酸配列を含む。より具体的な実施形態では、FCV F9様カプシ
ドタンパク質が、配列番号4のアミノ酸配列を含む。このタイプのさらにより具体的な実
施形態では、FCV F9様カプシドタンパク質が、配列番号3または配列番号13のヌ
クレオチド配列によってコードされる。
【0024】
関連する実施形態では、免疫原性組成物が、1つまたは複数のネコ白血病ウイルス(F
eLV)抗原をコードするアルファウイルスRNAレプリコン粒子を含む。一定の実施形
態では、FeLV抗原がFeLV糖タンパク質(例えば、gp85)である。他の実施形
態では、アルファウイルスRNAレプリコン粒子が、FeLV gp85の抗原性断片を
コードする。このタイプのさらにより具体的な実施形態では、FeLV糖タンパク質の抗
原性断片がFeLV gp70である。関連する実施形態では、FeLV糖タンパク質の
抗原性断片がFeLV gp45である。このタイプのより具体的な実施形態では、Fe
LV gp85が、配列番号6のアミノ酸配列との95%以上の同一性を含むアミノ酸配
列を含む。このタイプのより具体的な実施形態では、FeLV gp85が、配列番号6
のアミノ酸配列を含む。このタイプのさらにより具体的な実施形態では、FeLV gp
85が、配列番号5または配列番号14のヌクレオチド配列によってコードされる。関連
する実施形態では、FeLV gp70が、配列番号8のアミノ酸配列との95%以上の
同一性を含むアミノ酸配列を含む。このタイプのより具体的な実施形態では、FeLV
gp70が、配列番号8のアミノ酸配列を含む。このタイプのさらにより具体的な実施形
態では、FeLV gp70が、配列番号7または配列番号15のヌクレオチド配列によ
ってコードされる。
【0025】
さらに他の実施形態では、免疫原性組成物が、狂犬病ウイルス糖タンパク質(G)をコ
ードするアルファウイルスRNAレプリコン粒子を含む。さらに他の実施形態では、アル
ファウイルスRNAレプリコン粒子が、狂犬病ウイルスGの抗原性断片をコードする。こ
のタイプのより具体的な実施形態では、狂犬病ウイルスGが、配列番号10のアミノ酸配
列との95%以上の同一性を含むアミノ酸配列を含む。このタイプのなおさらに具体的な
実施形態では、狂犬病ウイルスGが、配列番号10のアミノ酸配列を含む。このタイプの
さらにより具体的な実施形態では、狂犬病ウイルスGが、配列番号9または配列番号16
のヌクレオチド配列によってコードされる。
【0026】
特定の実施形態では、アルファウイルスRNAレプリコン粒子が、ベネズエラウマ脳炎
(VEE)アルファウイルスRNAレプリコン粒子である。このタイプのより具体的な実
施形態では、VEEアルファウイルスRNAレプリコン粒子が、TC-83 VEEアル
ファウイルスRNAレプリコン粒子である。他の実施形態では、アルファウイルスRNA
レプリコン粒子が、シンドビス(SIN)アルファウイルスRNAレプリコン粒子である
。さらに他の実施形態では、アルファウイルスRNAレプリコン粒子が、セムリキ森林ウ
イルス(SFV)アルファウイルスRNAレプリコン粒子である。代替実施形態では、裸
のDNAベクターが、1つまたは複数のネコ病原体に由来する1つまたは複数の抗原をコ
ードする。このタイプの特定の実施形態では、裸のDNAベクターが、FCVカプシドタ
ンパク質またはその抗原性断片をコードする。このタイプの具体的な実施形態では、裸の
DNAベクターが、VS-FCVカプシドタンパク質またはその抗原性断片をコードする
。このタイプの他の実施形態では、裸のDNAベクターがFeLV gp85またはその
抗原性断片をコードする。
【0027】
一定の実施形態では、免疫原性組成物が、少なくとも1つの改変された生ネコ病原体と
、1つまたは複数のFCVカプシドタンパク質またはその抗原性断片、1つまたは複数の
FeLV糖タンパク質またはその抗原性断片、ならびに/あるいは1つまたは複数の狂犬
病ウイルスGタンパク質またはその抗原性断片をコードするアルファウイルスRNAレプ
リコン粒子とを含むことができる。このタイプの特定の実施形態では、アルファウイルス
RNAレプリコン粒子が、VS-FCVカプシドタンパク質またはその抗原性断片とFC
V F9様カプシドタンパク質またはその抗原性断片の両方をコードする。関連する実施
形態では、アルファウイルスRNAレプリコン粒子が、VS-FCVカプシドタンパク質
またはその抗原性断片とFeLV gp85またはその抗原性断片の両方をコードする。
他の実施形態では、アルファウイルスRNAレプリコン粒子が、FCV F9様カプシド
タンパク質またはその抗原性断片とFeLV gp85またはその抗原性断片の両方をコ
ードする。別の実施形態では、アルファウイルスRNAレプリコン粒子が、VS-FCV
カプシドタンパク質またはその抗原性断片と狂犬病ウイルスGタンパク質またはその抗原
性断片の両方をコードする。さらに他の実施形態では、アルファウイルスRNAレプリコ
ン粒子が、FCV F9様カプシドタンパク質またはその抗原性断片と狂犬病ウイルスG
タンパク質またはその抗原性断片の両方をコードする。さらに他の実施形態では、アルフ
ァウイルスRNAレプリコン粒子が、VS-FCVカプシドタンパク質またはその抗原性
断片、FeLV gp85またはその抗原性断片、および狂犬病ウイルスGタンパク質ま
たはその抗原性断片をコードする。別の実施形態では、アルファウイルスRNAレプリコ
ン粒子が、VS-FCVカプシドタンパク質またはその抗原性断片、FCV F9様カプ
シドタンパク質またはその抗原性断片、およびFeLV gp85またはその抗原性断片
をコードする。さらに他の実施形態では、アルファウイルスRNAレプリコン粒子が、V
S-FCVカプシドタンパク質またはその抗原性断片、FeLV gp85またはその抗
原性断片、狂犬病ウイルスGタンパク質またはその抗原性断片、およびFCV F9様カ
プシドタンパク質またはその抗原性断片をコードする。さらに他の実施形態では、アルフ
ァウイルスRNAレプリコン粒子が、FeLV gp85またはその抗原性断片、および
狂犬病ウイルスGタンパク質またはその抗原性断片をコードする。さらに他の実施形態で
は、アルファウイルスRNAレプリコン粒子が、FeLV gp85またはその抗原性断
片、FCV F9様カプシドタンパク質またはその抗原性断片、および狂犬病ウイルスG
タンパク質またはその抗原性断片をコードする。
【0028】
したがって、本発明は、少なくとも1つの改変された生ネコ病原体と、複数のネコ病原
体抗原をコードする本発明のいずれか1つまたは複数のアルファウイルスRNAレプリコ
ン粒子および/または単一ネコ病原体抗原をコードする本発明のいずれか1つまたは複数
のアルファウイルスRNAレプリコン粒子とを含む免疫原性組成物を提供する。特定の実
施形態では、改変された生ネコ病原体が、改変された生FVRである。他の実施形態では
、改変された生ネコ病原体が、改変された生FPLVである。さらに他の実施形態では、
改変された生ネコ病原体が、改変された生クラミドフィラ・フェリス(Chlamydo
phila felis)である。さらに他の実施形態では、改変された生ネコ病原体が
、改変された生FCV F9様である。さらに他の実施形態では、改変された生ネコ病原
体が、改変された生ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronc
hiseptica)である。特定の実施形態では、2つ以上の改変された生ネコ病原体
が免疫原性組成物に含まれる。このタイプの具体的な実施形態では、免疫原性組成物が、
改変された生FVRおよび改変された生クラミドフィラ(Chlamydophila)
を含む。他の実施形態では、3つ以上の改変された生ネコ病原体が免疫原性組成物に含ま
れる。このタイプの具体的な実施形態では、免疫原性組成物が、改変された生FVR、改
変された生クラミドフィラ(Chlamydophila)を含み、改変された生ネコ病
原体がFPLVである。さらに他の実施形態では、4つ以上の改変された生ネコ病原体が
免疫原性組成物に含まれる。このタイプの具体的な実施形態では、免疫原性組成物が、改
変された生FVR、改変された生クラミドフィラ(Chlamydophila)、改変
された生FPLV、および改変された生F9様FCVを含む。特定の実施形態では、免疫
原性組成物中のアルファウイルスRNAレプリコン粒子の全てが、ベネズエラウマ脳炎(
VEE)アルファウイルスRNAレプリコン粒子である。さらにより具体的な実施形態で
は、免疫原性組成物中のVEEアルファウイルスRNAレプリコン粒子の全てが、TC-
83 VEEアルファウイルスRNAレプリコン粒子である。
【0029】
さらなる実施形態では、アルファウイルスRNAレプリコン粒子が、他のネコ病原体に
由来するタンパク質抗原(またはその抗原性断片)をコードし得る。このタイプの特定の
実施形態では、タンパク質抗原が、ネコニューモウイルス(FPN)に由来する。さらに
他の実施形態では、タンパク質抗原が、ネコパルボウイルス(FPV)に由来する。さら
に他の実施形態では、タンパク質抗原が、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)に由来
する。さらに他の実施形態では、タンパク質抗原が、ネコ免疫不全ウイルスに由来する。
さらに他の実施形態では、タンパク質抗原が、ボルナ病ウイルス(BDV)に由来する。
さらに他の実施形態では、タンパク質抗原が、ネコインフルエンザウイルスに由来する。
さらに他の実施形態では、タンパク質抗原が、ネココロナウイルス(FCoV)に由来す
る。
【0030】
本発明はさらに、本発明のアルファウイルスRNAレプリコン粒子を、本発明の1つま
たは複数の改変された生(例えば、弱毒化)ネコ病原体と共に、死滅ネコ病原体と共に含
む免疫原性組成物および/またはワクチン(多価ワクチン)を提供する。特定の実施形態
では、免疫原性組成物が、死滅クラミドフィラ・フェリス(Chlamydophila
felis)、および/または死滅FVR、および/または死滅F9様FCV、および
/または死滅VS-FCV、および/または死滅FeLV、および/または死滅FPLV
をさらに含み得る。一定の実施形態では、ワクチンが、免疫学的有効量の1つまたは複数
のこれらの免疫原性組成物を含む。
【0031】
本発明は、本発明の免疫原性組成物を含むワクチンおよび多価ワクチンをさらに含む。
特定の実施形態では、多価ワクチンが非アジュバントワクチンである。一定の実施形態で
は、ワクチンが、FCV、および/またはFeLV、および/またはFVR、および/ま
たはFPLV、および/または狂犬病ウイルス、および/またはクラミドフィラ・フェリ
ス(Chlamydophila felis)による疾患の予防を助ける。関連する実
施形態では、ネコがワクチンで免疫されると、ネコ対象で抗体が誘導される。本発明はさ
らに、本発明のアルファウイルスRNAレプリコン粒子および裸のDNAベクターの全て
を含む。
【0032】
本発明はまた、ネコ病原体、例えばFCVに対してネコを免疫する方法であって、免疫
学的有効量の本発明のワクチンまたは多価ワクチンをネコに投与するステップを含む方法
を提供する。特定の実施形態では、ワクチンが筋肉内注射を介して投与される。代替実施
形態では、ワクチンが皮下注射を介して投与される。他の実施形態では、ワクチンが静脈
内注射を介して投与される。さらに他の実施形態では、ワクチンが皮内注射を介して投与
される。さらに他の実施形態では、ワクチンが経皮注射を介して投与される。さらに他の
実施形態では、ワクチンが経口投与を介して投与される。さらに他の実施形態では、ワク
チンが鼻腔内投与を介して投与される。具体的な実施形態では、ネコがイエネコである。
【0033】
本発明のワクチンおよび多価ワクチンは、プライマーワクチンおよび/またはブースタ
ーワクチンとして投与され得る。具体的な実施形態では、本発明のワクチンが、その後の
投与を必要とせずに、単発ワクチン(1回用量)として投与される。一定の実施形態では
、プライマーワクチンとブースターワクチンの両方の投与の場合、プライマーワクチンお
よびブースターワクチンが、同一経路によって投与され得る。このタイプの一定の実施形
態では、プライマーワクチンおよびブースターワクチンが共に皮下注射によって投与され
る。代替実施形態では、プライマーワクチンとブースターワクチンの両方の投与の場合、
プライマーワクチンの投与がある経路によって実施され、ブースターワクチンが別の経路
によって実施され得る。このタイプの一定の実施形態では、プライマーワクチンが皮下注
射によって投与され、ブースターワクチンが経口投与され得る。
【0034】
本発明はさらに、FCVに対してネコを免疫する方法であって、免疫学的有効量の上記
の本発明のワクチンをネコに注射するステップを含む方法を提供する。特定の実施形態で
は、ワクチンが、例えば、約1×10~約1×1010個のRPまたはそれ以上を含み
得る。さらに特定の実施形態では、ワクチンが、約1×10~約1×10個のRPを
含み得る。さらにより特定の実施形態では、ワクチンが、約1×10~約1×10
のRPを含み得る。特定の実施形態では、ネコがイエネコである。
【0035】
特定の実施形態では、本発明のワクチンが、0.05mL~3mL用量で投与される。
さらに特定の実施形態では、投与される用量が0.1mL~2mLである。なおさらに特
定の実施形態では、投与される用量が0.2mL~1.5mLである。さらにより特定の
実施形態では、投与される用量が0.3~1.0mLである。なおさらに特定の実施形態
では、投与される用量が0.4mL~0.8mLである。
【0036】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の詳細な説明を参照することによってよりよく
理解されよう。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、安全で有効な多価ワクチンを提供する。特定の実施形態では、ワクチンが非
アジュバントである。本発明のこの態様では、ワクチンがネコ注射部位肉腫を誘発しない
が、それでもネコカリシウイルス(FCV)および/またはネコ白血病ウイルス(FeL
V)による感染、ならびにネコウイルス性鼻気管炎ウイルス(FVR)、および/または
ネコ汎白血球減少症ウイルス(FPLV)、および/または生クラミドフィラ・フェリス
(Chlamydophila felis)による感染によって引き起こされる疾患か
らのワクチン接種ネコ(vaccinates)の防御を助ける。
【0038】
アルファウイルスRNAレプリコン粒子による自然免疫系の既知の増強にもかかわらず
、アルファウイルスRNAレプリコン粒子と改変された生ウイルスの両方を含む本発明の
多価ワクチンは、アルファウイルスRNAレプリコン粒子が改変された生ウイルスの免疫
学的効果を有意に妨害することなく、予想外に安全で有効である。
【0039】
実際、アルファウイルスRNAレプリコン粒子、特にベネズエラウマ脳炎(VEE)ア
ルファウイルスRNAレプリコン粒子は、全身の抗ウイルス状態を触媒し、致命的なウイ
ルス攻撃から防御することが以前示された[Konopka et al.,J.Vir
ol.,83(29):12432-12442(2009)]。さらに、VEEアルフ
ァウイルスRNAレプリコン粒子は、口蹄疫ウイルスに対する迅速な防御を誘導すること
が報告されている[Segundo et al.,J.Virol.,87(10):
5447-5460(2013)]。したがって、アルファウイルスRNAレプリコン粒
子と改変された生ウイルスの両方を含むワクチンは、改変された生ウイルスの免疫学的効
果の実質的な阻害をもたらすと予測されただろう。しかしながら、驚くべきことに、アル
ファウイルスRNAレプリコン粒子の存在による自然免疫応答の増強は、付随する改変さ
れた生ウイルスによって誘導される免疫応答に有害ではないことが判明した。
【0040】
したがって、特定の態様では、本発明は、FCVカプシドタンパク質もしくはその抗原
性断片および/またはFeLV gp85もしくはその抗原性断片をコードするアルファ
ウイルスRNAレプリコン粒子を、改変された生ネコFVR、および/または改変された
生FPLV、および/または改変された生クラミドフィラ・フェリス(Chlamydo
phila felis)と共に含むワクチンを提供する。本発明のさらに別の態様では
、ワクチンが、FCVカプシドタンパク質もしくはその抗原性断片および/またはFeL
V gp85もしくはその抗原性断片をコードする裸のDNAベクターを、改変された生
ネコFVR、および/または改変された生ネコFPLV、および/または改変された生ク
ラミドフィラ・フェリス(Chlamydophila felis)と共に含む。
【0041】
本発明のワクチンは、アジュバントの非存在下でネコに投与することができ、依然とし
てFCVに対するワクチン接種されたネコの防御を有効に助けることができる。
【0042】
本発明をより完全に理解するために、以下の定義が提供される。
【0043】
説明における便宜上の単数の用語の使用は、決してそのように限定することを意図する
ものではない。よって、例えば、「ポリペプチド(a polypeptide)」を含
む組成物への言及は、1つまたは複数のこのようなポリペプチドへの言及を含む。さらに
、「アルファウイルスRNAレプリコン粒子」への言及は、特に指示されない限り、複数
のこのようなアルファウイルスRNAレプリコン粒子への言及を含む。
【0044】
本明細書で使用される場合、「およそ」という用語は、「約」という用語と互換的に使
用され、値が、指示される値の50パーセント以内であることを示す、すなわち、1ミリ
リットル当たり「およそ」1×10個のアルファウイルスRNAレプリコン粒子を含有
する組成物は、1ミリリットル当たり0.5×10~1.5×10個のアルファウイ
ルスRNAレプリコン粒子を含有する。
【0045】
本明細書で使用される場合、「ネコ」という用語は、ネコ科(Felidae)の任意
のメンバーを指す。イエネコ、純血種および/または雑種の伴侶ネコ、ならびに野生また
は野生化したネコが全てネコである。
【0046】
本明細書で使用される場合、「レプリコン」という用語は、存在する場合に、細胞培養
物または動物宿主で親ウイルスの増殖を成功させることができる1つまたは複数の要素(
例えば、構造タンパク質のコード配列)を欠く改変されたRNAウイルスゲノムを指す。
適切な細胞状況では、レプリコンは自身を増幅し、1つまたは複数のサブゲノムRNA種
を産生し得る。
【0047】
本明細書で使用される場合、「RP」と略される「アルファウイルスRNAレプリコン
粒子」という用語は、構造タンパク質、例えば、Pushkoら[Virology 2
39(2):389-401(1997)]によって記載されるように、同様にアルファ
ウイルスに由来するカプシドおよび糖タンパク質にパッケージングされたアルファウイル
ス由来RNAレプリコンである。レプリコンはアルファウイルスの構造成分(例えば、カ
プシドおよび糖タンパク質)をコードしないため、RPは(ヘルパープラスミドまたは類
似の成分なしで)細胞培養物または動物宿主で増殖できない。
【0048】
「FCV F9様」および「F9様FCV」という用語は、相互におよび「古典的FC
V」という用語と互換的に使用され、本明細書で使用される場合、FCV F9株が典型
的代表と考えられるFCVの古い、以前のユニバーサルワクチン株として特徴付けられ得
るFCVである。直接対照的に、強毒全身性「VS-FCV」または本明細書で互換的に
使用される「(VS)FCV」と呼ばれるFCVは、異常に毒性であり、FCV F9様
株の抗体によって中和できない新たなクラスのFCVである[米国特許第7449323
号明細書;Radford et al.,38(2)Vet res.319-335
(2007)参照]。
【0049】
「由来する(originate from)」、「由来する(originates
from)」および「由来する(originating from)」という用語は
、所与のタンパク質抗原およびそれを天然でコードする病原体またはその病原体の株に関
して互換的に使用され、本明細書で使用される場合、その所与のタンパク質抗原の非改変
および/または切断アミノ酸配列が、その病原体またはその病原体の株によってコードさ
れていることを意味する。病原体に由来するタンパク質抗原についての本発明の核酸構築
物内のコード配列は、病原体または病原体の株(自然弱毒化株を含む)におけるそのタン
パク質抗原の対応する配列に対して発現されたタンパク質抗原のアミノ酸配列の改変およ
び/または切断をもたらすように遺伝子操作されたかもしれない。
【0050】
本明細書で使用される場合、「防御する」、または「防御を提供する」、または「防御
免疫を誘発する」、「疾患の予防を助ける」、および「防御を助ける」という用語は、感
染の兆候からの完全な防御を要しない。例えば、「防御を助ける」は、防御が、攻撃後、
基礎となる感染の症状が少なくとも減少する、ならびに/あるいは根底にある細胞、生理
学的もしくは生化学的原因または症状を引き起こす機序の1つまたは複数が減少するおよ
び/または排除されるように十分であることを意味することができる。この文脈で使用さ
れる「減少する」は、感染の生理学的状態だけでなく、感染の分子状態を含む、感染の状
態に関連することを意味する。
【0051】
本明細書で使用される場合、「ワクチン」は、動物に投与すると、野生型微生物による
感染から生じる疾患からの防御を最小限助けるのに十分強力な、すなわち、疾患の予防を
助ける、および/または疾患を予防、改善もしくは治癒するのに十分強力な免疫応答を誘
導する、典型的には水を含有する液体などの薬学的に許容される担体と組み合わせた1つ
または複数の抗原を含む、動物、例えばネコ(一定の実施形態では、ヒトを含むが、他の
実施形態では、具体的にヒトではない)に施用するのに適した組成物である。
【0052】
本明細書中で使用される場合、多価ワクチンは、2つ以上の異なる抗原を含むワクチン
である。このタイプの特定の実施形態では、多価ワクチンが、2つ以上の異なる病原体に
対するレシピエントの免疫系を刺激する。
【0053】
「アジュバント」および「免疫刺激剤」という用語は、本明細書で互換的に使用され、
免疫系の刺激を引き起こす1つまたは複数の物質として定義される。これに関連して、ア
ジュバントは、1つまたは複数のワクチン抗原/分離株に対する免疫応答を増強するため
に使用される。したがって、「アジュバント」は、特定の抗原に対する免疫応答を非特異
的に増加させ、したがって、任意の所与のワクチンに必要な抗原の量、および/またはの
目的の抗原に対する十分な免疫応答を生成するために必要な注射の頻度を減少させる薬剤
である。これに関連して、アジュバントは、1つまたは複数のワクチン抗原/分離株に対
する免疫応答を増強するために使用される。例えば、アメリカ猫獣医師協会のネコワクチ
ン接種ガイドラインは、非アジュバントFeLVワクチンの使用を提案している[AAF
P Feline Advisory Panel, 15:785-808 (201
3)]。
【0054】
本明細書中で使用される場合、「非アジュバントワクチン」は、アジュバントを含有し
ないワクチンまたは多価ワクチンである。
【0055】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、修飾された名詞が
医薬品での使用に適切であることを意味するために形容詞的に使用される。これが、例え
ば、医薬品ワクチンの賦形剤を説明するために使用される場合、これは、その賦形剤が組
成物の他の成分と適合性であり、意図したレシピエント動物、例えばネコに不利に有害で
はないとして特徴付ける。
【0056】
「非経口投与」は、皮下注射、粘膜下注射、静脈内注射、筋肉内注射、皮内注射および
注入を含む。
【0057】
本明細書で使用される場合、特定のタンパク質(例えば、タンパク質抗原)に関する「
抗原性断片」という用語は、抗原性である、すなわち、免疫グロブリン(抗体)またはT
細胞抗原受容体などの免疫系の抗原認識分子と特異的に相互作用することができるそのタ
ンパク質の断片である。例えば、FCVカプシドタンパク質の抗原性断片は、抗原性であ
るカプシドタンパク質の断片である。好ましくは、本発明の抗原性断片は、抗体および/
またはT細胞受容体認識に対して免疫優性である。特定の実施形態では、所与のタンパク
質抗原に関する抗原性断片が、完全長タンパク質の抗原性の少なくとも25%を保持する
そのタンパク質の断片である。好ましい実施形態では、抗原性断片が、完全長タンパク質
の抗原性の少なくとも50%を保持する。より好ましい実施形態では、抗原性断片が、完
全長タンパク質の抗原性の少なくとも75%を保持する。抗原性断片は、20個のアミノ
酸程度の小さなものである場合もあれば、その一方で、完全長タンパク質から1個のアミ
ノ酸だけが失われている大きな断片である場合もある。特定の実施形態では、抗原性断片
が、25~150個のアミノ酸残基を含む。他の実施形態では、抗原性断片が、50~2
50個のアミノ酸残基を含む。例えば、FeLVの場合、FeLV gp45糖タンパク
質およびFeLV gp70糖タンパク質はFeLV gp85糖タンパク質の抗原性断
片であるが、FCVの場合、FCVカプシドタンパク質の1つの抗原性断片がORF2の
領域Eを含む。
【0058】
本明細書で使用する場合、両方の配列のアミノ酸残基が同一である場合、1つのアミノ
酸配列は第2のアミノ酸配列と100%「同一」であるまたは100%の「同一性」を有
する。したがって、2つのアミノ酸配列のアミノ酸残基の50%が同一である場合、ある
アミノ酸配列は第2のアミノ酸配列と50%「同一」である。配列比較は、所与のタンパ
ク質、例えば比較されるタンパク質、またはポリペプチドの一部に含まれるアミノ酸残基
の連続ブロックにわたって行われる。特定の実施形態では、2つのアミノ酸配列間の対応
を変える可能性がある選択された欠失または挿入が考慮される。
【0059】
本明細書で使用する場合、ヌクレオチドおよびアミノ酸の配列同一性%は、アラインメ
ント・デフォルト・パラメータおよび同一性についてのデフォルトパラメータと共にC,
MacVector(MacVector, Inc.Cary、NC 27519)
、Vector NTI(Informax, Inc.MD)、Oxford Mol
ecular Group PLC(1996)およびClustal Wアルゴリズム
を用いて決定することができる。これらの市販のプログラムを使用して、同一または類似
のデフォルトパラメータを用いて配列類似性を決定することもできる。あるいは、例えば
、デフォルトパラメータを使用するGCG(Genetics Computer Gr
oup、GCGパッケージ用プログラムマニュアル、バージョン7、マディソン、ウィス
コンシン州)パイルアッププログラムを使用して、デフォルトフィルター条件下でのAd
vanced Blast検索を使用することができる。
【0060】
本明細書で使用される場合、「不活性化」微生物という用語は、「死滅」微生物という
用語と互換的に使用される。本発明の目的のために、「不活性化」微生物は、動物で免疫
応答を誘発することができるが、動物に感染することができない生物である。本発明の抗
原(例えば、不活化ネコカリシウイルス)は、バイナリーエチレンイミン(binary
ethyleneimine)、ホルマリン、β-プロピオラクトン、チメロサール、
または熱からなる群から選択される因子によって不活化され得る。特定の実施形態では、
本発明のRPと組み合わされた不活性化ネコカリシウイルス分離株が、バイナリーエチレ
ンイミンによって不活性化される。
【0061】
本発明のアルファウイルスRNAレプリコン粒子は、凍結乾燥され、滅菌水希釈剤で再
水和され得る。他方、アルファウイルスRNAレプリコン粒子が個別に保存されているが
、投与前に他のワクチン成分と混合することを意図している場合、アルファウイルスRN
Aレプリコン粒子をそれらの成分の安定化溶液、例えば高スクロース溶液中に保存するこ
とができる。
【0062】
本発明のワクチンは、静脈内、筋肉内、皮下、経口、鼻腔内、皮内および/または腹腔
内ワクチン接種を含む任意の標準的な経路によって容易に投与することができる。当業者
であれば、ワクチン組成物が、好ましくは各タイプのレシピエント動物および投与経路に
対して適切に製剤化されることを理解するだろう。
【0063】
よって、本発明はまた、ネコ病原体に対してネコを免疫する方法を提供する。このよう
な方法の1つは、ネコが適切な抗病原体抗体を産生するように、免疫学的有効量の本発明
のワクチンをネコに注射するステップを含む。
【0064】
多価ワクチン
したがって、本発明は、少なくとも1つの改変された生ネコ病原体と、1つまたは複数
のアルファウイルスRNAレプリコン粒子とを含む多価ワクチンを提供する。例えば、タ
ンパク質抗原またはその抗原性断片のコード配列、またはネコワクチンで有用なタンパク
質抗原のこのようなコード配列の組み合わせを、アルファウイルスRNAレプリコン粒子
(RP)に添加する、あるいは例えば、多価ワクチン中のFCVカプシドタンパク質およ
び/またはFeLV糖タンパク質(gp85)をコードするものと同じRPに組み合わせ
ることができる。
【0065】
具体的な実施形態では、ワクチンが、少なくとも1つの改変された生ネコ病原体と、F
CV F9様カプシドタンパク質もしくはその抗原性断片、および/またはVS-FCV
カプシドタンパク質もしくはその抗原性断片をコードするアルファウイルスRNAレプリ
コン粒子とを、FeLV gp85またはその抗原性断片をコードする別のアルファウイ
ルスRNAレプリコン粒子と共に含む。他の実施形態では、ワクチンが、少なくとも1つ
の改変された生ネコ病原体と、VS-FCVカプシドタンパク質またはその抗原性断片を
コードする1つのアルファウイルスRNAレプリコン粒子と、FeLV gp85または
その抗原性断片をコードする別のアルファウイルスRNAレプリコン粒子と、さらにFC
V F9様カプシドタンパク質またはその抗原性断片をコードする第3のアルファウイル
スRNAレプリコン粒子とを含む。さらに他の実施形態では、ワクチンが、少なくとも1
つの改変された生ネコ病原体と、FCV F9様カプシドタンパク質またはその抗原性断
片、VS-FCVカプシドタンパク質またはその抗原性断片、およびFeLV gp85
またはその抗原性断片をコードするアルファウイルスRNAレプリコン粒子とを含む。
【0066】
1つまたは複数のこのようなタンパク質抗原が由来し得る病原体の例としては、ネコウ
イルス性鼻気管炎ウイルス(FVR)、ネコ白血病ウイルス(FeLV)、ネコ汎白血球
減少症ウイルス(FPL)、ネコヘルペスウイルス(FHV)、他のFCV株、ネコパル
ボウイルス(FPV)、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)、ネコ免疫不全ウイルス
、ボルナ病ウイルス(BDV)、狂犬病ウイルス、ネコインフルエンザウイルス、イヌイ
ンフルエンザウイルス、鳥インフルエンザ、イヌニューモウイルス、ネコニューモウイル
ス、クラミドフィラ・フェリス(Chlamydophila felis)(FKA
クラミドフィラ・シタッシ(Chlamydophila psittaci))、 ボ
ルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)
、およびバルトネラ属(Bartonella)種(例えば、バルトネラ・ヘンセラ(B
.henselae))が挙げられる。特定の実施形態では、これらのネコまたはイヌ病
原体の1つまたは複数からのカプシドタンパク質または類似タンパク質のコード配列を、
FCV抗原と同じRPに挿入することができる。あるいは、またはそれと組み合わせて、
これらのネコまたはイヌ病原体の1つまたは複数からのカプシドタンパク質または類似タ
ンパク質のコード配列を、1つまたは複数の他のRPに挿入することができ、これをワク
チンで、FCV F9様カプシドタンパク質もしくはその抗原性断片および/またはVS
-FCVカプシドタンパク質もしくはその抗原性断片をコードするRPと組み合わせるこ
とができる。
【0067】
したがって、本発明は、1つまたは複数の本発明のアルファウイルスRNAレプリコン
粒子(RP)[例えば、VS-FCVカプシドタンパク質またはその抗原性断片]を1つ
または複数の改変された生(弱毒化)ウイルス分離株、例えば、FCVの生弱毒化古ワク
チン株、例えば生弱毒化FCV F9、および/または生弱毒化ネコヘルペスウイルス、
および/または生弱毒化ネコパルボウイルス、および/または生弱毒化ネコ白血病ウイル
ス、および/または生弱毒化ネコ伝染性腹膜炎ウイルス、および/または生弱毒化ネコ免
疫不全ウイルス、および/または生弱毒化ボルナ病ウイルス、および/または生弱毒化狂
犬病ウイルス、および/または生弱毒化ネコインフルエンザウイルス、および/または生
弱毒化イヌインフルエンザウイルス、および/または生弱毒化鳥インフルエンザ、および
/または生弱毒化イヌニューモウイルス、および/または生弱毒化ネコニューモウイルス
と共に含むワクチンを提供する。さらに、生弱毒化クラミドフィラ・フェリス(Chla
mydophila felis)、および/または生弱毒化ボルデテラ・ブロンキセプ
チカ(Bordetella bronchiseptica)、および/または生弱毒
化バルトネラ属(Bartonella)種(例えば、バルトネラ・ヘンセラ(B.he
nselae))もこのような多価ワクチンに含めることができる。
【0068】
さらに、1つまたは複数の本発明のアルファウイルスRNAレプリコン粒子[例えば、
VS-FCVカプシドタンパク質またはその抗原性断片をコードする]を含む本発明のワ
クチンは、1つまたは複数の改変された生ウイルス分離株と共に、1つまたは複数の死滅
ウイルス分離株、例えば死滅FCV株、および/または死滅ネコヘルペスウイルス、およ
び/または死滅ネコパルボウイルス、および/または死滅ネコ白血病ウイルス、および/
または死滅ネコ伝染性腹膜炎ウイルス、および/または死滅ネコ免疫不全ウイルス、およ
び/または死滅ボルナ病ウイルス、および/または死滅狂犬病ウイルス、および/または
死滅ネコインフルエンザウイルス、および/または死滅イヌインフルエンザウイルス、お
よび/または死滅鳥インフルエンザウイルス、および/または死滅イヌニューモウイルス
、および/または死滅ネコニューモウイルスをさらに含むことができる。さらに、クラミ
ドフィラ・フェリス(Chlamydophila felis)、および/またはボル
デテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)、
および/または生弱毒化バルトネラ属(Bartonella)種(例えば、バルトネラ
・ヘンセラ(B.henselae))のバクテリンもこのような多価ワクチンに含める
ことができる。
【0069】
また、本明細書に開示される特定の構成、プロセスステップ、および材料は、いくぶん
変化し得るので、本発明はこのような構成、プロセスステップ、および材料に限定されな
いことも理解されたい。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲およびその等価物に
よってのみ限定されるので、本明細書で使用される用語は特定の実施形態を説明すること
のみを目的としており、限定を意図するものではないことも理解されたい。
【表1】
【0070】

配列
【0071】

【0072】

【0073】

【0074】

【0075】

【0076】

【0077】

【0078】

【0079】

【0080】

【0081】

【0082】

【0083】

【0084】

【0085】

【0086】

【0087】

以下の実施例は、本発明のさらなる理解を提供するのに役立つが、本発明の有効な範囲
を制限することを決して意味するものではない。
【0088】
[実施例]
[実施例1]
FCVカプシドタンパク質のコード配列のアルファウイルスRNAレプリコン粒子への組
み込み
導入
RNAウイルスは、遺伝子操作されたワクチン抗原をゲノムに導入するためのベクター
媒体として使用されている。しかしながら、現在までのそれらの使用は、主にウイルス抗
原をRNAウイルスに組み込み、次いで、ウイルスをレシピエント宿主に導入することに
限定されてきた。その結果、組み込まれたウイルス抗原に対する防御抗体が誘導される。
アルファウイルスRNAレプリコン粒子は、病原性抗原をコードするために使用されてい
る。このようなアルファウイルスレプリコンプラットフォームは、ベネズエラウマ脳炎ウ
イルス(VEE)[Pushko et al.,Virology 239:389-
401(1997)]、シンドビス(SIN)[その内容全体がこれにより本明細書に組
み込まれる、Bredenbeek et al.,Journal of Virol
ogy 67:6439-6446(1993)]およびセムリキ森林ウイルス(SFV
)[その内容全体がこれにより本明細書に組み込まれる、Liljestrom and
Garoff,Biotechnology (NY)9:1356-1361(19
91)]を含むいくつかの異なるアルファウイルスから開発された。さらに、アルファウ
イルスRNAレプリコン粒子は、ブタおよび家禽用のいくつかのUSDA認可ワクチンの
基礎となっている。これらには、ブタ流行性下痢ワクチン、RNA粒子(製品コード19
U5.P1)、ブタインフルエンザワクチン、RNA(製品コード19A5.D0)、鳥
インフルエンザワクチン、RNA(製品コード19O5.D0)、および処方製品、RN
A粒子(製品コード9PP0.00)が含まれる。
【0089】
アルファウイルスRNAレプリコン粒子構築
RP-FCV:
FCVカプシドタンパク質のアミノ酸配列を使用して、インシリコでコドン最適化(ネ
ココドン使用)ヌクレオチド配列を作製した。最適化配列は、商用ベンダー(ATUM、
Newark、CA)によって合成DNAとして調製された。したがって、合成遺伝子を
、それぞれVS-FCVカプシドタンパク質およびFCV F9様カプシドタンパク質の
アミノ酸配列に基づいて設計した。VS-FCVカプシドタンパク質のアミノ酸配列[配
列番号2]、またはFCV F9様カプシドタンパク質の[配列番号4]をコードする構
築物を、ネコについてコドン最適化し、隣接配列はアルファウイルスレプリコンプラスミ
ドへのクローニングに適していた。
【0090】
FCVカプシドタンパク質を発現するよう設計されたVEEレプリコンベクターは、以
下の修正をして、以前記載されたように[その内容が参照により本明細書に組み込まれる
、米国特許第9441247号明細書参照]構築した。TC-83由来レプリコンベクタ
ー「pVEK」[米国特許第9441247号明細書に開示および記載されている]を、
制限酵素AscIおよびPacIで消化した。FCVカプシド遺伝子のコドン最適化オー
プンリーディングフレームヌクレオチド配列を含み、5’隣接配列(5’-GGCGCG
CCGCACC-3’)[配列番号11]および3’隣接配列(5’-TTAATTAA
-3’)を有するDNAプラスミドを、制限酵素AscIおよびPacIで同様に消化し
た。次いで、合成遺伝子カセットを消化したpVEKベクターにライゲートした。
【0091】
TC-83 RNAレプリコン粒子(RP)の作製は、以前記載された方法[その内容
が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9441247号明細書および米国特
許第8460913号明細書]に従って行った。手短に言えば、pVHVレプリコンベク
ターDNAおよびヘルパーDNAプラスミドを、MegaScript T7 RNAポ
リメラーゼおよびキャップアナログ(Promega、マディソン、WI)を使用してイ
ンビトロ転写前に、NotI制限酵素で直線化した。重要なことに、作製で使用されるヘ
ルパーRNAは、以前記載されたように[Kamrud et al.,J Gen V
irol.91(Pt 7):1723-1727(2010)]、VEEサブゲノムプ
ロモーター配列を欠く。レプリコンおよびヘルパー成分の精製RNAを組み合わせ、Ve
ro細胞の懸濁液と混合し、4 mmキュベットで電気穿孔し、OptiPro(登録商
標)SFM細胞培養培地(Thermo Fisher、Waltham MA)に戻し
た。一晩のインキュベーション後、アルファウイルスRNAレプリコン粒子を、懸濁液を
ZetaPlus BioCapデプスフィルター(3M、Maplewood、MN)
に通過させ、5%スクロース(w/v)を含有するリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、最後
に400mM NaCl緩衝液で保持RPを溶出することによって、細胞および培地から
精製した。溶出したRPを最終的な5%スクロース(w/v)に製剤化し、0.22ミク
ロン膜フィルターに通過させ、保存用に一定分量に分注した。機能的RPの力価を、感染
したVero細胞単層の免疫蛍光アッセイによって決定した。
【0092】
RP-FeLV:
FeLV gp85のアミノ酸配列を使用して、インシリコでコドン最適化(ネココド
ン使用)ヌクレオチド配列を作製した。最適化配列は、商用ベンダー(ATUM、New
ark、CA)によって合成DNAとして調製された。したがって、gp85のアミノ酸
配列に基づいて合成遺伝子を設計した。構築物(gp85_wt)は野生型アミノ酸配列
[配列番号2]であり、ネコについてコドン最適化し、隣接配列はアルファウイルスレプ
リコンプラスミドへのクローニングに適切であった。
【0093】
FeLV gp85を発現するよう設計されたVEEレプリコンベクターは、以下の修
正をして、以前記載されたように[その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、
米国特許第9441247号明細書参照]構築した。TC-83由来レプリコンベクター
「pVEK」[米国特許第9441247号明細書に開示および記載されている]を、制
限酵素AscIおよびPacIで消化した。FeLV gp85遺伝子のコドン最適化オ
ープンリーディングフレームヌクレオチド配列を含み、5’隣接配列(5’-GGCGC
GCCGCACC-3’)[配列番号11]および3’隣接配列(5’-TTAATTA
A-3’)を有するDNAプラスミドを、制限酵素AscIおよびPacIで同様に消化
した。次いで、合成遺伝子カセットを消化したpVEKベクターにライゲートし、得られ
たクローンの名前を「pVHV-FeLV gp85」に変更した。「pVHV」ベクタ
ー命名法は、pVEKのマルチクローニングサイトのAscIおよびPacI部位を介し
てクローニングされた導入遺伝子カセットを含むpVEK由来レプリコンベクターを指す
ように選択した。
【0094】
TC-83 RNAレプリコン粒子(RP)の作製は、以前記載された方法[その内容
全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9441247号明細書および米
国特許第8460913号明細書]に従って行った。手短に言えば、pVHVレプリコン
ベクターDNAおよびヘルパーDNAプラスミドを、MegaScript T7 RN
Aポリメラーゼおよびキャップアナログ(Promega、マディソン、WI)を使用し
てインビトロ転写前に、NotI制限酵素で直線化した。重要なことに、作製で使用され
るヘルパーRNAは、以前記載されたように[Kamrud et al.,J Gen
Virol.91(Pt 7):1723-1727(2010)]、VEEサブゲノ
ムプロモーター配列を欠く。レプリコンおよびヘルパー成分の精製RNAを組み合わせ、
Vero細胞の懸濁液と混合し、4 mmキュベットで電気穿孔し、OptiPro(登
録商標)SFM細胞培養培地(Thermo Fisher、Waltham MA)に
戻した。一晩のインキュベーション後、アルファウイルスRNAレプリコン粒子を、懸濁
液をZetaPlus BioCapデプスフィルター(3M、Maplewood、M
N)に通過させ、5%スクロース(w/v)を含有するリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、
最後に400mM NaCl緩衝液で保持RPを溶出することによって、細胞および培地
から精製した。溶出したRPを最終的な5%スクロース(w/v)に製剤化し、0.22
ミクロン膜フィルターに通過させ、保存用に一定分量に分注した。機能的RPの力価を、
感染したVero細胞単層の免疫蛍光アッセイによって決定した。
【0095】
RP-RV
ベネズエラウマ脳炎ウイルスの非毒性TC-83株のカプシドタンパク質および糖タン
パク質とパッケージングされた狂犬病ウイルス(RV)からの狂犬病ウイルス糖タンパク
質(G)をコードするアルファウイルスRNAレプリコン粒子を含むワクチンを調製した
。狂犬病ウイルスGタンパク質のヌクレオチド配列を、ヒトについてコドン最適化した。
得られた配列は、100%のアミノ酸同一性を有しているにもかかわらず、生狂犬病ウイ
ルス糖タンパク質(G)配列に対してわずか約85%のヌクレオチド同一性しか有さない
。ワクチンを、哺乳動物対象に投与される単一用量として、例えば、12週以上のネコお
よびイヌに皮下的に、あるいは初回投与とそれに続く1回または複数回のブースター投与
を含む複数回用量で使用することができる。
【0096】
狂犬病糖タンパク質(G)のアミノ酸配列を使用して、インシリコでコドン最適化(ヒ
トコドン使用)ヌクレオチド配列を作製した。最適化配列は、商用ベンダー(ATUM、
Newark、CA)によって合成DNAとして調製された。したがって、狂犬病糖タン
パク質のアミノ酸配列に基づいて合成遺伝子[配列番号9]を設計した。構築物(RAB
V-G)は野生型アミノ酸配列[配列番号10]であり、ヒトについてコドン最適化し、
隣接配列はアルファウイルスレプリコンプラスミドへのクローニングに適切であった。
【0097】
狂犬病Gを発現するよう設計されたVEEレプリコンベクターは、以下の修正をして、
以前記載されたように[その内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第94
41247号明細書参照]構築した。TC-83由来レプリコンベクター「pVEK」[
米国特許第9441247号明細書に開示および記載されている]を、制限酵素AscI
およびPacIで消化した。狂犬病G遺伝子のコドン最適化オープンリーディングフレー
ムヌクレオチド配列を含み、5’隣接配列(5’-GGCGCGCCGCACC-3’)
[配列番号11]および3’隣接配列(5’-TTAATTAA-3’)を有するDNA
プラスミドを、制限酵素AscIおよびPacIで同様に消化した。次いで、合成遺伝子
カセットを消化したpVEKベクターにライゲートし、得られたクローンの名前を「pV
HV-RABV-G」に変更した。「pVHV」ベクター命名法は、pVEKのマルチク
ローニングサイトのAscIおよびPacI部位を介してクローニングされた導入遺伝子
カセットを含むpVEK由来レプリコンベクターを指すように選択した。
【0098】
TC-83 RNAレプリコン粒子(RP)の作製は、以前記載された方法[その内容
全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9441247号明細書および米
国特許第8460913号明細書]に従って行った。手短に言えば、pVHVレプリコン
ベクターDNAおよびヘルパーDNAプラスミドを、MegaScript T7 RN
Aポリメラーゼおよびキャップアナログ(Promega、マディソン、WI)を使用し
てインビトロ転写前に、NotI制限酵素で直線化した。重要なことに、作製で使用され
るヘルパーRNAは、以前記載されたように[Kamrud et al.,J Gen
Virol.91(Pt 7):1723-1727(2010)]、VEEサブゲノ
ムプロモーター配列を欠く。レプリコンおよびヘルパー成分の精製RNAを組み合わせ、
Vero細胞の懸濁液と混合し、4 mmキュベットで電気穿孔し、OptiPro(登
録商標)SFM細胞培養培地(Thermo Fisher、Waltham、MA)に
戻した。一晩のインキュベーション後、アルファウイルスRNAレプリコン粒子を、懸濁
液をZetaPlus BioCap(登録商標)デプスフィルター(3M、Maple
wood、MN)に通過させ、5%スクロース(w/v)を含有するリン酸緩衝生理食塩
水で洗浄し、最後に400mM NaCl緩衝液で保持RPを溶出することによって、細
胞および培地から精製した。溶出したRPを最終的な5%スクロース(w/v)に製剤化
し、0.22ミクロン膜フィルターに通過させ、保存用に一定分量に分注した。機能的R
Pの力価を、感染したVero細胞単層の免疫蛍光アッセイによって決定した。
【0099】
[実施例2]
ネコにおける2つのRP構築物と3つの改変された生画分とを含む混合ワクチンの安全性
の評価
凍結乾燥された五価ネコ混合ワクチンの種々の製剤および再構成方法を、ネコにおける
それらの安全性に関して評価した。五価ワクチンの望ましい提示は0.5mL用量であり
、最適な製剤および充填方法は0.5mL充填である。安定剤は、1.1%NZ-アミン
(カゼイン酵素加水分解物)、1.1%ゼラチンおよび7.5%スクロースを含有し、提
供される割合は最終濃度を表す。5つの画分を添加するための体積および最終的な効力の
制約により、0.5mLを超える体積が必要な場合は、製品を製剤化して1.0mLまで
充填し、0.5mLの希釈剤で再構成することができる。これにより、投与用量の安定剤
成分の濃度が2倍になる。これらの抗原を含むこのような濃縮用量の安定剤の安全性は、
以前はネコで試験されていなかった。
【0100】
1.0mL充填/0.5mL再水和フォーマットがネコで安全でない場合、1.0mL
の希釈剤で再水和した1.0mL充填体積の第3の選択肢も試験した。ワクチンをブレン
ドし、次いで、凍結乾燥した。ワクチンは、1.1%ゼラチン、1.1%NZアミンおよ
び7.5%スクロースを含有する安定剤中、ネコ白血病ウイルス糖タンパク質(RP-F
eLV)をコードするアルファウイルスRNAレプリコン粒子およびネコカリシウイルス
カプシドタンパク質(RP-FCV)をコードするアルファウイルスRNAレプリコン粒
子を、市販のワクチン、Nobivac(登録商標)Feline-1の成分、すなわち
、改変された生(MLV)ネコ汎白血球減少症ウイルス(FPL)、改変された生ネコウ
イルス性鼻気管炎ウイルス(FVR)および改変された生クラミドフィラ・フェリス(C
hlamydophila felis)と共に含有していた。以下の表1に記載される
ように、五価ネコ混合ワクチンの種々の製剤を調製し、再構成した。
【表2】
【0101】

ワクチンを同用量の各抗原を含有するよう製剤化し(0.5mLケークワクチンは2倍
の各抗原の濃度で製剤化した)、安定剤を全ての製剤に一定の濃度で使用した(0.5m
L希釈剤で再水和される1.0mLケークワクチンは、再水和時に2倍の濃度の安定剤を
含有していた)。
【0102】
実験ネコ対象を、7~8週齢(典型的には、ネココアワクチンの最小ワクチン接種年齢
を有する)と、21日後に再度、指示された体積のそれぞれの試験ワクチンでワクチン接
種した。ネコを、啼鳴、刺痛、掻痒、噛みつき、ワクチンの注射時の突然の動き、または
異常な反応(以下の表2および表3を参照)などの疼痛または不快感を示し得る試験ワク
チンに対する反応について各ワクチン接種の直後に15分間観察した。臨床評価は、ワク
チン接種の4~6時間後、およびワクチン接種後3日間、毎日獣医師によって実施した。
【0103】
臨床評価は、注射部位の触診、触れると痛い、腫脹、発赤または膿瘍を含む任意の局所
反応についての観察を含んでいた。ネコを、抑うつ、嗜眠、跛行、嘔吐、振戦、激越およ
び下痢などの任意の全身反応についても観察した。体温も測定し、ワクチン接種の4~6
時間後、および各ワクチン接種後2日間、毎日記録した。局所反応についての注射部位の
触診をさらに各ワクチン接種の7日後~21日後に週3回実施した。
【0104】
全てのワクチン製剤および再水和プロトコルが安全であることが分かった。ネコのいず
れにも局所反応も全身反応も観察されなかった。2回目のワクチン接種の5時間後に体温
103.6℃を示した処置群3(0.5mLケーク/0.5mL希釈剤)の1匹のネコを
除いて、全てのネコの各測定期間での体温は正常であった。したがって、五価ワクチンの
3つの調製物全てが許容されることが分かった。
【表3】
【0105】

【表4】
【0106】

本発明は、本明細書に記載される具体的な実施形態によって範囲が限定されるべきでは
ない。実際、本明細書に記載されるものに加えて、本発明の種々の修正が、前記説明から
当業者には明らかになるだろう。このような修正は、添付の特許請求の範囲内にあること
を意図している。
【0107】
さらに、核酸またはポリペプチドについて与えられる全ての塩基サイズまたはアミノ酸
サイズ、および全ての分子量または分子質量値は近似値であり、説明のために提供される
ことを理解されたい。
【配列表】
2023179547000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-09-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数のネコ病原体からの1つまたは複数の抗原をコードするベネズエラウマ脳炎(VEE)アルファウイルスRNAレプリコン粒子と、改変された生ネコ病原体と、を含む、免疫原性組成物。
【請求項2】
1つまたは複数のネコカリシウイルス(FCV)抗原をコードする、および/または、1つまたは複数のネコ白血病ウイルス(FeLV)抗原をコードするベネズエラウマ脳炎(VEE)アルファウイルスRNAレプリコン粒子と、改変された生ネコ病原体と、を含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
前記FCV抗原が、FCV F9様カプシドタンパク質またはその抗原性断片およびそれらの組み合わせ、および/または、強毒全身性FCV(VS―FCV)カプシドタンパク質またはその抗原性断片およびそれらの組み合わせからなる群より選択され、および/または
前記FeLV抗原が、FeLV糖タンパク質(gp85)、gp85の抗原性断片およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項2に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
前記改変された生ネコ病原体が、改変された生ネコウイルス性鼻気管炎ウイルス(FVR)、改変された生ネコ汎白血球減少症ウイルス(FPLV)、改変された生クラミドフィラ・フェリス(Chlamydophila felis)およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
FCV F9様カプシドタンパク質またはその抗原性断片およびそれらの組み合わせ、および/または、強毒全身性FCV(VS―FCV)カプシドタンパク質またはその抗原性断片およびそれらの組み合わせからなる群より選択される1つまたは複数のネコ病原体からの1つまたは複数の抗原から選択される抗原をコードする、1つまたは複数の追加のベネズエラウマ脳炎(VEE)アルファウイルスRNAレプリコン粒子を含み、および/または
前記FeLV抗原が、FeLV糖タンパク質(gp85)、gp85の抗原性断片およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
前記VS―FCVカプシドタンパク質が、配列番号2のアミノ酸配列との少なくとも95%の同一性を含むアミノ酸配列を含む、請求項2~5のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
前記FCV F9様カプシドタンパク質が、配列番号4のアミノ酸配列との少なくとも95%の同一性を含むアミノ酸配列を含む、請求項2~5のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
前記FeLV糖タンパク質(gp85)が、配列番号6のアミノ酸配列との少なくとも95%の同一性を含むアミノ酸配列を含む、請求項2~5のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の免疫原性組成物と、薬学的に許容される担体とを含む、FCVおよび/またはFeLVによる疾患の予防を助けるためのワクチン。
【請求項10】
強毒全身性ネコカリシウイルスVS-FCVカプシドタンパク質および/またはFCV F9様カプシドタンパク質をコードするVEEアルファウイルスRNAレプリコン粒子と、
ネコ白血病ウイルス(FeLV)糖タンパク質(gp85)もしくは該gp85の抗原性断片をコードするVEEアルファウイルスRNAレプリコン粒子と、
改変された生ネコウイルス性鼻気管炎ウイルス(FVR)と、
改変された生ネコ汎白血球減少症ウイルス(FPLV)と、
改変された生クラミドフィラ・フェリス(Chlamydophila felis)と
を含む、FCVによる疾患の予防を助けるためのワクチン。
【請求項11】
非アジュバントワクチンである、請求項9または10に記載のワクチン。
【請求項12】
病原性FCVに対してネコを免疫する方法であって、免疫学的有効量の請求項9~11のいずれか1項に記載のワクチンを前記ネコに投与することを含む方法。
【外国語明細書】