(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179549
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】腫瘍抗原をコードする麻疹ウイルス
(51)【国際特許分類】
C12N 15/86 20060101AFI20231212BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20231212BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20231212BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231212BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20231212BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20231212BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20231212BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20231212BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20231212BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20231212BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20231212BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20231212BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231212BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20231212BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231212BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C12N15/86 Z ZNA
C12N7/01
C12N15/12
C12N5/10
C12N1/21
C12N1/19
C12N1/15
A61K35/12
A61K35/76
A61K39/00 H
A61K39/12
A61K48/00
A61P35/00
A61P37/04
A61P43/00 105
A61K31/7088
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023159200
(22)【出願日】2023-09-22
(62)【分割の表示】P 2021154467の分割
【原出願日】2016-10-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り Abstracts of Annual Meeting of The American Society of Gene & Cell Therapy(平成28年4月18日)において発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 平成28年5月4日ワシントンDCにおいて開催された米国遺伝子及び細胞療法学会年次総会で発表
(71)【出願人】
【識別番号】512127143
【氏名又は名称】ルプレヒト-カールス-ウニベルジテート ハイデルベルク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エレナ クツィンク
(72)【発明者】
【氏名】クリスティン エンゲランド
(72)【発明者】
【氏名】グイ アンゲレヒツ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】がん治療を向上させる、特に腫瘍溶解性ウイルスを改善した、がん細胞を含むサンプルにおいて抗腫瘍活性を有する免疫細胞を活性化するための方法、並びに前記方法に関わるその他の手段、方法、及び使用法の提供。
【解決手段】腫瘍抗原、腫瘍抗原の断片、及び前記腫瘍抗原、又は前記腫瘍抗原の断片のバリアント、のうち少なくとも1つをコードする、発現可能なポリヌクレオチドを含有する、パラミクソウイルス科の組換えウイルス。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)腫瘍抗原、(ii)腫瘍抗原の断片、および(iii) (i)または(ii)のバリアント、のうち少なくとも1つをコードする、発現可能なポリヌクレオチドを含有する、パラミクソウイルス科の組換えウイルス。
【請求項2】
前記腫瘍抗原が、L-ドパクロムトートメラーゼ(TRP2)、メラニン細胞タンパク質PMEL(gp100)、HPV E6/7、MAGE 1、MAGE 3、NY-ESO、アンドロゲン受容体(AR)、BCL-1、カルプロテクチン、がん胎児性抗原(CEA)、EGFR、上皮細胞接着分子(Ep-CAM)、上皮性シアロムチン、膜エストロゲン受容体(mER)、FAP HER2/neu、ヒト高分子量メラノーマ関連抗原(HMW-MAA)、IL-6、MOC-1、MOC-21、MOC-52、melan-A/MART-1、メラノーマ関連抗原、ムチン、OKT9、プロゲステロン受容体(PGR)、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、シナプトフィジン、VEGFR、CD19、CD20、CD22、CD30、およびCD33からなる一群から選択される、請求項1に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス。より好ましくは、腫瘍抗原が、HPV E6/7、MAGE 1、MAGE 3、NY-ESO、TRP2もしくはgp100であり、さらに好ましくはTRP2である。
【請求項3】
前記断片が前記腫瘍抗原の少なくとも1つの抗原性エピトープを含有する、請求項1または2に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス。
【請求項4】
前記腫瘍抗原、その断片もしくはそのバリアントが、(i) ヒトパピローマウイルス(HPV)E6ポリペプチド、好ましくはハイリスクHPVのE6ポリペプチド、たとえばHPV16 E6、またはその断片および/またはそのバリアント;(ii) HPV E7ポリペプチド、好ましくはハイリスクHPVのE7ポリペプチド、たとえばHPV16 E7、またはその断片および/またはそのバリアント;(iii) TRP2、好ましくはヒトTRP2、またはその断片および/またはそのバリアント;(iv) がん/精巣抗原1B(CTAG1B)、好ましくはヒトCTAG1B、またはその断片および/またはそのバリアント;ならびに(v) (i)~(iv)のいずれかの任意の組み合わせ、のうち少なくとも1つを含み、好ましくはそれらからなる、請求項1~3のいずれか1つに記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス。
【請求項5】
前記組換えウイルスが、組換えモルビリウイルス属、好ましくは組換え麻疹ウイルス(MV)である、請求項1~4のいずれか1つに記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス。
【請求項6】
さらなる免疫応答アクチベーターをコードする少なくとも1つの発現可能なポリヌクレオチドをさらに含有する、請求項1~5のいずれか1つに記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス。
【請求項7】
前記の少なくとも1つの発現可能なポリヌクレオチドが、パラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチドに含まれるものである、請求項1~6のいずれか1つに記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス。
【請求項8】
前記のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチドが、配列番号3~5のいずれか1つの核酸配列を含み、好ましくはその核酸配列からなる、請求項1~7のいずれか1つに記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1つに記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチド。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1つに記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス、および/または請求項9に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチドを含有する宿主細胞。
【請求項11】
がん細胞および免疫細胞を含むサンプルにおいて、抗腫瘍活性を有する免疫細胞を活性化するための方法であって、
a) (i) 請求項1~8のいずれか1つに記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス;
(ii) (i)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチド、好ましくは、請求項9に記載のポリヌクレオチド;
(iii) (i)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス、および/または(ii)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチドを含有する宿主細胞;好ましくは請求項10に記載の宿主細胞;または
(iv) (i)~(iii)の任意の組み合わせ
と、がん細胞および免疫細胞を含む前記サンプルとを接触させること;ならびに、それによって
b) 前記サンプル中に含まれる抗腫瘍活性を有する免疫細胞を活性化すること;
を含む、前記方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法によって得られた、または得ることができる、抗腫瘍活性を有する活性化された免疫細胞の標品。
【請求項13】
薬剤を製造するための、好ましくは、不適切な細胞増殖を治療するための薬剤を製造するための、
(i) 請求項1~8のいずれか1つに記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス;
(ii) (i)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチド、好ましくは、請求項9に記載のポリヌクレオチド;
(iii) (i)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス、および/または(ii)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチドを含有する宿主細胞;好ましくは請求項10に記載の宿主細胞;または
(iv) (i)~(iii)の任意の組み合わせ
の使用。
【請求項14】
前記の不適切な細胞増殖ががんである、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
(i) 請求項1~8のいずれか1つに記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス;
(ii) (i)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチド、好ましくは、請求項9に記載のポリヌクレオチド;
(iii) (i)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス、および/または(ii)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチドを含有する宿主細胞;好ましくは請求項10に記載の宿主細胞;または
(iv) (i)~(iii)の任意の組み合わせ
を容器内に収納して含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(i)腫瘍抗原、(ii)腫瘍抗原の断片、および(iii)(i)もしくは(ii)のバリアント、のうち少なくとも1つをコードする発現可能なポリヌクレオチドを含有する、パラミクソウイルス科の組換えウイルスに関する。本発明はさらに、前記のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチド、ならびに前記のパラミクソウイルス科の組換えウイルスおよび/または前記のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードする前記ポリヌクレオチドを含有する、宿主細胞に関する。さらに、本発明は、がん細胞を含むサンプルにおいて抗腫瘍活性を有する免疫細胞を活性化するための方法、ならびに本発明に関わるその他の手段、方法、および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍細胞内で選択的に複製する腫瘍溶解性ウイルス(OV)は、新たに出現したがん治療法である。直接的な細胞変性効果および腫瘍の溶解のほかに、免疫系とOVの相互作用が全身性抗腫瘍免疫を引き起こす可能性がある。OVは、こうした効果をさらに高めるために、免疫調節導入遺伝子を発現するように改変されている(Melcher et al., Mol Ther. 2011, 19: 1008-1016)。ワクシニアウイルスJX-594およびヘルペスウイルス(talimogene laherpavec (TVEC))はいずれもGM-CSFを保有しており、臨床試験第II相および第III相において有望な結果を示した(Heo et al., Nat Med. 2013,19: 329-336 および Andtbacka et al. J Clin Oncol. 2013, 31, suppl; abstr LBA9008)。
【0003】
RNAウイルス、特にパラミクソウイルス科を構成する、たとえば麻疹ウイルスなども、腫瘍崩壊に使用できる可能性を示した。パラミクソウイルス科のウイルスはマイナス一本鎖RNAウイルスであり、たとえばヒトパラインフルエンザウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、ヒトRSウイルス、および麻疹ウイルスなどのヒト病原体が含まれる。野生型麻疹ウイルスから、いくつかの病原性のない株が、ワクチン株を含めて誘導されており、これらは依然として腫瘍溶解性であることが示された。麻疹ウイルスワクチン株は、複数の腫瘍本体を標的とするベクタープラットフォームとして開発され、いくつかの臨床試験が進行中である(Russell et al., Nat Biotechnol. 2012, 30: 658-670)。最近、GM-CSFをコードする腫瘍溶解性MVが腫瘍ワクチン効果の観点から、特異的抗腫瘍免疫応答の誘導をサポートする能力を有することが実証された(Grossardt et al. Hum Gene Ther. 2013, 24: 644-654)。
【0004】
腫瘍抗原、すなわちがん細胞に関連する抗原性化合物は、腫瘍研究の早期に確認された。当初、「腫瘍抗原」という用語は、腫瘍細胞によって比較的特異的に発現される抗原に関して使用されたのに対して、「腫瘍特異抗原」という用語は、もっぱら腫瘍上に見いだされる構造に関連して使用された。しかしながら、この区別は後に、腫瘍における発現プロファイルの膨大な多様性に鑑みて放棄された。腫瘍抗原は腫瘍マーカーとして知られているが、高い特異性をもってがん細胞を標的とするために有用な標的としても知られている。MV腫瘍溶解性の特異性は、その天然受容体であるCD46およびSLAMに対して認識を失わせられたウイルス付着タンパク質H上に提示される、一本鎖抗体に基づいた侵入ターゲティングによって達成することができる(Vongpunsawad et al. (2004), J Virol 78: 302; Nakamura et al. (2004), Nat Biotechnol 22: 331)。これまでに、CD20、CD38、CEA、PSCA、PSMA、EGFR、EGFRvIII、Her2neu、HMWAAに対して特異性を有するベクターを含む、さまざまな腫瘍抗原特異的MVが作製されている(Hammond et al. (2001), J Virol 75(5):2087.(PMID:11160713); Peng et al.(2003), Blood 101(7):2557 (PMID: 12433686); Allen et al. (2006), Cancer Res 66(24):11840 (PMID: 17178881); Hasegawaet al. (2007),J Virol. 81(23):13149 (PMID: 17804513); Ungerechts (2007), Cancer Res. 67(22):10939 (PMID: 18006839); Liu et al. (2009), Prostate 69(10):1128 (PMID: 19367568); Bossow et al. (2011), Cancer Gene Ther. 18(8):598 (PMID: 21701532); Zaoui et al. (2012), Cancer Gene Ther. 19(3):181-91 (PMID: 22076043); Kaufmann et al. (2013), J Invest Dermatol. 133(4):1034 (PMID: 23223133)を参照のこと)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Melcher et al., Mol Ther. 2011, 19: 1008-1016
【非特許文献2】Heo et al., Nat Med. 2013,19: 329-336
【非特許文献3】Andtbacka et al. J Clin Oncol. 2013, 31, suppl; abstr LBA9008
【非特許文献4】Russell et al., Nat Biotechnol. 2012, 30: 658-670
【非特許文献5】Grossardt et al. Hum Gene Ther. 2013, 24: 644-654
【非特許文献6】Vongpunsawad et al. (2004), J Virol 78: 302;
【非特許文献7】Nakamura et al. (2004), Nat Biotechnol 22: 331
【非特許文献8】Hammond et al. (2001), J Virol 75(5):2087.(PMID:11160713)
【非特許文献9】Peng et al.(2003), Blood 101(7):2557 (PMID: 12433686)
【非特許文献10】Allen et al. (2006), Cancer Res 66(24):11840 (PMID: 17178881)
【非特許文献11】Hasegawaet al. (2007),J Virol. 81(23):13149 (PMID: 17804513)
【非特許文献12】Ungerechts (2007), Cancer Res. 67(22):10939 (PMID: 18006839)
【非特許文献13】Liu et al. (2009), Prostate 69(10):1128 (PMID: 19367568)
【非特許文献14】Bossow et al. (2011), Cancer Gene Ther. 18(8):598 (PMID: 21701532)
【非特許文献15】Zaoui et al. (2012), Cancer Gene Ther. 19(3):181-91 (PMID: 22076043)
【非特許文献16】Kaufmann et al. (2013), J Invest Dermatol. 133(4):1034 (PMID: 23223133)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、当技術分野において、依然としてがん治療を向上させる必要があり、特に腫瘍溶解性ウイルスを改善する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、(i)腫瘍抗原、(ii)腫瘍抗原の断片、および(iii)(i)もしくは(ii)のバリアント、のうち少なくとも1つをコードする発現可能なポリヌクレオチドを含有する、パラミクソウイルス科の組換えウイルスに関する。
【0008】
以下で使用される「有する」、「含有する」もしくは「含む」、またはそれらの任意の文法的変化形は、排他的でないように使用される。したがって、これらの用語は、その文脈で記載される実体の中に、これらの用語によって提示される対象物のほかに、それ以外の対象物が存在しないという状況、ならびに1つもしくは複数の対象物がさらに存在する状況の両方を意味すると考えられる。一例として、「AはBを有する」、「AはBを含有する」および「AはBを含む」という表現は、Aの中にBのほかに他の要素は何も存在しないという状況(すなわちAはもっぱらBだけからなるという状況)、ならびにAという実体の中に、Bのほかに1つもしくは複数のさらに他の要素、たとえば要素C、要素CおよびD、またはさらにそれ以上の要素が存在する状況、の両者を表す可能性がある。
【0009】
さらに、以下で使用される「好ましくは」、「より好ましくは」、「もっとも好ましくは」、「詳細には」、「より詳細には」、「具体的には」、「より具体的には」という用語、または類似の用語は、さらにほかの可能性を制限することなく、選択可能な対象物とともに使用される。したがって、これらの用語によって提示された対象物は選択可能な対象物であって、けっして請求の範囲を制限するものではない。本発明は、当業者には明らかなように、代わりとなる対象物を用いて実施することができる。同様に、「本発明の実施形態において」もしくは同様の表現によって提示される対象物は、本発明の他の実施形態について制限を受けることなく、本発明の範囲について制限を受けることなく、そしてこのように提示された対象物と、本発明の他の選択可能な、もしくは選択可能でない対象物とを組み合わせる可能性について制限を受けることなしに、自由に選択できる対象物であると意図される。さらに、特に別段の指示のない限り、「約」という用語は、関係領域において一般に認められている技術的な正確さを有する表示値に関するものであって、好ましくは表示値±20%、より好ましくは±10%、もっとも好ましくは±5%に関する。
【0010】
本明細書で使用される「組換えウイルス」という用語は、バイオテクノロジーの手法によって、既知の天然に存在するウイルスゲノムと比べて改変されたゲノムを含有するウイルスに関する。好ましくは、組換えウイルスは、天然に存在するウイルスベノムと比べて改変されたゲノムを含有するウイルスである。ウイルスゲノムを改変するための好ましいバイオテクノロジー手法は当業者に知られており、具体的には組換えDNA技法などの分子クローニングの任意の方法であって、これには、限定はしないが、制限酵素によるDNAの切断、DNAのライゲーション、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ウイルスゲノムのクローニング、などが含まれる。当業者には当然のことながら、パラミクソウイルス科のウイルスは一本鎖(-)-RNAをゲノムとして有する。したがって、本発明の組換えウイルスのゲノムは、好ましくは、前記組換えウイルスゲノムをコードする発現可能なヌクレオチド配列を含有する以下に記載の発現ベクターをクローニングし、次にこの組換えウイルスをコードする発現可能な前記ヌクレオチド配列を許容宿主細胞において発現させることによって得られる。あるいはまた、組換えウイルスゲノムは、非許容宿主細胞で発現させることも可能であり、たとえば齧歯類またはその他の高等真核生物由来の細胞が好ましい。本発明の組換えウイルスはパラミクソウイルス科の組換えウイルスであることが好ましいが、より好ましくは組換えモルビリウイルス、もっとも好ましくは組換え麻疹ウイルス(MV)である。当業者には当然のことであるが、本発明の組換えウイルスは、天然に存在するウイルスと比べてさらに他の改変を有することがある。好ましくは、組換えウイルスは、親和性の改変をもたらすポリペプチドおよび/またはそれをコードするポリヌクレオチドを含有する。さらに好ましくは、改変された親和性をもたらす前記ポリペプチドは、ウイルス膜内在性ポリペプチドもしくはウイルス膜結合性ポリペプチドと、標的との結合に関与するポリペプチドとの融合ポリペプチドであって、この標的はたとえば、特定の種類の細胞であることが好ましく、がん細胞がさらに好ましい。前記融合ポリペプチドは、ウイルスヘマグルチニンもしくはその断片、好ましくはその膜内在性断片を含有することが好ましい。好ましくは、前記融合ポリペプチドは、標的分子、たとえばがん胎児性抗原(CEA)もしくはCD20、と特異的に結合する一本鎖抗体を含有する。もっとも好ましくは、前記融合ポリペプチドは、トランケート型ウイルスヘマグルチニンと、抗CD20一本鎖抗体もしくは抗CEA一本鎖抗体との融合ポリペプチドである。好ましくは、組換えウイルスは、配列番号3~5のいずれか1つの核酸配列を含むポリヌクレオチドを含有する。
【0011】
本明細書で使用される「免疫応答のアクチベーター」という用語は、免疫細胞および免疫応答誘導細胞、たとえばがん細胞、の混合物と接触させたときに、少なくとも1つのタイプの免疫細胞を、同じ混合物であるが当該化合物を欠く混合物に含まれる同タイプの免疫細胞より活性のある状態にさせる化合物に関する。好ましくは、活性化される免疫細胞は、抗原に対する被験体の抵抗性を高める反応をもたらす細胞であり、すなわち、好ましくは、前記の免疫細胞は、寛容をもたらす免疫細胞ではない。好ましくは、免疫応答のアクチベーターにより活性化される免疫細胞はT細胞であり、より好ましくはヘルパーT細胞もしくは細胞傷害性T細胞である。もっとも好ましくは。免疫応答のアクチベーターにより活性化される免疫細胞は、PD-1を発現する細胞傷害性T細胞である。免疫細胞活性の指標は当業者に知られており、好ましくは、活性化マーカーの発現、抗体の産生、サイトカインの排出、および細胞毒の放出などがあるが、細胞毒はたとえばパーフォリン、グランザイム、および/またはグラニュライシンである。本明細書で使用される腫瘍抗原は、免疫応答のアクチベーターとなる活性を有していない;したがって、腫瘍抗原は免疫応答のアクチベーターでなはない。
【0012】
好ましくは、免疫応答のアクチベーターは活性化ケモカインであるが、好ましくは活性化インターロイキンであり、より好ましくはIL-12である。免疫応答のアクチベーターは、少なくとも1つのタイプの免疫細胞が阻害されるようにする、シグナル伝達経路のアンタゴニストであることも好ましい。したがって、好ましくは、免疫応答のアクチベーターは、免疫チェックポイント阻害タンパク質のリガンドである。より好ましくは、免疫応答のアクチベーターは、免疫チェックポイント阻害タンパク質のリガンドである。さらにより好ましくは、免疫応答のアクチベーターは、PD-1受容体シグナル伝達の阻害剤である。当業者には当然のことであるが、受容体シグナル伝達経路を介したシグナル伝達は、受容体が活性化されないようにするか、または活性化された受容体によって生じたシグナルがそれ以上伝達されないようにすることによって、阻害することができる。したがって、好ましくは、免疫応答のアクチベーターはPD-L1アンタゴニストであるが、「アンタゴニスト」という用語は、拮抗する作用を有する分子と結合する化合物に関するものであり、その結合によって前記分子が、生産的な意味で、すなわちシグナル伝達を誘導する形で、その天然の結合パートナーと相互作用しないようにするものである。前記活性のための好ましいアッセイはWO 2015/128313 A1に記載される。
【0013】
本明細書で使用される「免疫応答」という用語は、抗原に対する被験体の身体の何らかの防御反応に関するものであって、少なくとも1つのタイプの白血球、好ましくはリンパ球、および/または少なくとも1つの抗原認識高分子の活性が関与する。好ましくは、免疫応答は、抗原特異的抗体の産生による前記抗原の不活化(液性免疫応答)を含む。より好ましくは、免疫応答は、異物細胞、または前記抗原を提示する体細胞、好ましくはがん細胞の溶解(細胞性免疫応答)を含む。
【0014】
本明細書で使用される「免疫応答を調節する」という用語は、被験体の適応免疫系の応答において、変化、好ましくは活性化を、引き起こすことに関する。したがって、「免疫応答を調節する」という用語は、好ましくは、(i)抗原に対する被験体の免疫応答を新たに誘導すること、(ii)抗原に対する被験体の免疫応答の質もしくは強さの向上を誘導すること、ならびに/または(iii) 現存する免疫応答の向かう方向を、関心のある標的細胞、好ましくはがん細胞、より好ましくは腫瘍抗原を含有するがん細胞の方向に向けることに関する。好ましくは、免疫応答を調節することは、少なくとも1つの主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスI(MHC-I)およびMHCクラスII(MHC-II)分子との関連において、細胞上に抗原もしくはエピトープを提示することであり、またはそのことを含む。好ましくは、調節は活性化であり、すなわち抗原に対する反応の増加をもたらす。また好ましくは、免疫応答を調節することは、被験体の血中の抗原特異的T細胞の出現頻度を高めることであり、またはそのことを含む。さらに好ましくは、免疫応答を調節することは、前記被験体の血中の抗原特異的CD4+および/またはCD8+ T細胞の出現頻度を高めることである。もっとも好ましくは、免疫応答を調節することは、前記被験体の血中の、活性化された抗原特異的CD4+および/またはCD8+ T細胞の出現頻度を高めることである。好ましくは、前記の、抗原に対する免疫応答の調節は、被験体の免疫系による、前記抗原発現細胞の死滅を引き起こす。当然のことながら、免疫応答の誘導は、すべての被験体に有効であるとは限らない;たとえば、抗原としてポリペプチドの1つの特異的エピトープが使用される場合、被験体は、前記エピトープを効果的に提示するのに適したMHC分子に欠ける可能性がある。こうした場合に、たとえばパラミクソウイルス科の組換えウイルスに追加的なエピトープを導入することによって、免疫反応を改善する方法が当業者に知られている。
【0015】
「抗原」という用語は当業者に知られており、宿主生物において免疫応答を調節する化合物に関するが、この宿主生物は好ましくは、脊椎動物であり、好ましくは哺乳動物であり、より好ましくはヒトもしくは実験動物、具体的にはラット、マウス、ウサギ、モルモット、ハムスター、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウシ、ロバであるが、もっとも好ましくはヒトである。
【0016】
好ましくは、抗原は抗原性ポリペプチドである。本明細書で使用される「抗原性ポリペプチド」という用語は、少なくとも1つの抗原エピトープを含有するポリペプチドに関する。好ましくは、前記抗原エピトープは、ポリペプチドのグリカン部分である。より好ましくは、前記抗原エピトープはペプチドであって、一連の少なくとも4個の、好ましくは少なくとも5個の、より好ましくは少なくとも6個の、もっとも好ましくは少なくとも7個のアミノ酸を含む。また好ましくは、前記抗原エピトープはペプチドであって、一連の、4から15個の、好ましくは5~12個の、より好ましくは6~10個の、もっとも好ましくは7~9個のアミノ酸を含む。好ましくは、抗原エピトープはT細胞エピトープである。T細胞エピトープは、当業者に知られるように、ペプチドに含まれるアミノ酸の連続配列であって、MHCクラスIまたはクラスII分子に結合して、細胞表面上に提示され(MHC-I)、またはプロフェッショナル抗原提示細胞の表面上に提示される(MHC-II)。MHC-IもしくはMHC-II上に提示された免疫原性ペプチドを予想する方法(Nielsen et al., (2004), Bioinformatics, 20 (9), 1388-1397), Bordner (2010), PLoS ONE 5(12): e14383)ならびに特異的ペプチドの結合を評価する方法(たとえばBernardeau et al., (2011), J Immunol Methods, 371(1-2):97-105)は当業者に知られている。好ましくは、抗原エピトープはMHC-IIエピトープである。
【0017】
本明細書で使用される「がん」という用語は、ヒトを含めた動物の疾患に関するが、一群の体細胞による無秩序な増殖を特徴とする(「がん細胞」)。この制御されない増殖は、周囲の組織への侵入およびその組織の破壊、ならびに場合によっては体内の他の部位へのがん細胞の転移を伴うことがある。好ましくは、がんという用語には再発も含まれる。したがって、好ましくは、がんは、固形がん、その転移()、またはその再発である。
【0018】
好ましくは、がんは、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質がん、エイズ関連リンパ腫、肛門がん、虫垂がん、星状細胞腫、非定型奇形腫様、基底細胞がん、胆管がん、膀胱がん、脳幹グリオーマ、乳がん、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、小脳星細胞腫、子宮頸がん、脊索腫、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸がん、大腸がん、頭蓋咽頭腫、子宮内膜がん、上衣芽細胞腫、上衣腫、食道がん、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管がん、線維肉腫、胆嚢がん、胃がん、消化管間質腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、有毛細胞白血病、頭頚部がん、肝細胞がん、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、視床下部および視経路グリオーマ、眼内黒色腫、カポジ肉腫、喉頭がん、髄芽腫、髄様上皮腫、黒色腫、メルケル細胞がん、中皮腫、口腔がん、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫、菌状息肉腫、鼻腔および副鼻腔がん、上咽頭がん、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、口腔がん、中咽頭がん、骨肉腫、卵巣がん、上皮性卵巣がん、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵がん、乳頭腫症、副鼻腔および鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、胸膜肺芽腫、中枢神経系原発リンパ腫、前立腺がん、直腸がん、腎細胞がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、セザリー症候群、小細胞肺がん、小腸がん、軟部組織肉腫、扁平上皮がん、扁平上皮頸部がん、精巣がん、咽喉がん、胸腺がん、胸腺腫、甲状腺がん、尿道がん, 子宮肉腫、膣がん、外陰がん、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、およびウィルムス腫瘍からなるリストから選択される。より好ましくは、がんは、固形がん、その転移、またはその再発である。もっとも好ましくは、がんは、悪性黒色腫、頭頚部がん、肝細胞がん、膵がん、前立腺がん、腎細胞がん、胃がん、大腸がん、リンパ腫、または白血病である。
【0019】
本明細書で使用される「腫瘍抗原」という用語は、がん細胞に含まれる任意の抗原に関する。したがって、腫瘍抗原という用語には、がん細胞、および1つもしくは複数の非がん細胞型に含まれる、たとえばCD19、CD20、CD22、CD30、およびCD33などの抗原が含まれる。好ましくは、腫瘍抗原は腫瘍関連抗原であり、それはすなわち、当該被験体において、がん細胞では発現されるが、がん細胞と同タイプの正常細胞では発現されない抗原である。また好ましくは、腫瘍抗原は、腫瘍特異的抗原、すなわち一定の発生段階において当該被験体のがん細胞によって発現されるが、正常細胞、すなわち非がん細胞によって発現されない抗原である。また好ましくは、腫瘍抗原はネオアンチゲン、すなわち当該被験体の生殖系列にコードされない抗原である;好ましくは、前記ネオアンチゲンは、腫瘍ゲノム、または感染病原体、とくにウイルス、好ましくは腫瘍形成ウイルス、より好ましくはパピローマウイルス、エプスタインバーウイルス、B型肝炎ウイルス、もしくはC型肝炎ウイルスによってコードされる抗原である;換言すれば、前記ネオアンチゲンは、がん細胞に含まれる変異タンパク質、すなわち前記被験体のゲノムにおいてコード化遺伝子の変異が生じた後に産生されたポリペプチドバリアントである。上記のように、抗原は、そして腫瘍抗原も、宿主生物において免疫応答を調節する生物活性を有する。好ましくは、腫瘍抗原は、ヒトにおいて免疫応答を調節する生物活性を有する。また好ましくは、腫瘍抗原は、その腫瘍抗原を含有する細胞の由来する被験体において、免疫応答を調節する生物活性を有する。好ましくは、腫瘍抗原は生体高分子であり、より好ましくはポリペプチドである。好ましくは、腫瘍抗原はヒト腫瘍抗原である。
【0020】
好ましくは、腫瘍抗原は、L-ドパクロムトートメラーゼ(TRP2)、メラニン細胞タンパク質PMEL(gp100)、HPV E6/7、MAGE 1、MAGE 3、NY-ESO、アンドロゲン受容体(AR)、BCL-1、カルプロテクチン、がん胎児性抗原(CEA)、EGFR、上皮細胞接着分子(Ep-CAM)、上皮性シアロムチン、膜エストロゲン受容体(mER)、FAP HER2/neu、ヒト高分子量メラノーマ関連抗原(HMW-MAA)、IL-6、MOC-1、MOC-21、MOC-52、melan-A/MART-1、メラノーマ関連抗原、ムチン、OKT9、プロゲステロン受容体(PGR)、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、シナプトフィジン、VEGFR、CD19、CD20、CD22、CD30、およびCD33からなる一群から選択される。より好ましくは、腫瘍抗原は、HPV E6/7、MAGE 1、MAGE 3、NY-ESO、TRP2、またはgp100であり、さらに好ましくはTRP2である。ヒトTRP2をコードするオープンリーディングフレームは、本明細書において配列番号1として記載され、ヒトTRP2のアミノ酸配列は配列番号2として記載される。
【0021】
好ましくは、パラミクソウイルス科の組換えウイルスは、腫瘍抗原の断片をコードする発現可能なポリヌクレオチドを含有する。本明細書で使用される「腫瘍抗原の断片」という用語は、上記の免疫応答を調節する生物活性を有する腫瘍抗原の部分構造に関する。したがって、腫瘍抗原の断片は、好ましくは、前記腫瘍抗原ポリペプチドの少なくとも部分配列を含有する、本明細書に記載の抗原性ポリペプチドである;好ましくは、腫瘍抗原の断片は、この場合少なくとも1つの抗原エピトープを含有するが、より好ましくは、その腫瘍抗原を含有する細胞の由来する被験体において抗原性である、少なくとも1つのエピトープを含有する。好ましくは、腫瘍抗原の断片は、たとえば腫瘍抗原の分解産物またはスプライスバリアントであるか、またはそれらに由来する。好ましくは、腫瘍抗原の断片は、(i)ヒトパピローマウイルス(HPV)E6ポリペプチドの断片、好ましくはハイリスク型HPVのE6ポリペプチドの断片、たとえばHPV16 E6(Genbank Acc No: NP_041325.1 GI:9627104)の断片;(ii)HPV E7ポリペプチドの断片、好ましくはハイリスク型HPVのE7ポリペプチドの断片、たとえばHPV16 E7(Genbank Acc No: NP_041326.1 GI:9627105)の断片;(iii)TRP2、好ましくはヒトTRP2(好ましくは、Genbank Acc No: NM_001922.4 GI:1015809739によりコードされる);(iv)がん/精巣抗原1B(CTAG1B、NY-ESOとも称される、好ましくはGenbank Acc No: NM_001327.2 GI:215272337によりコードされる);または(v)(i)~(iv)のいずれかの任意の組み合わせを含み、それらからなることが好ましい。
【0022】
好ましくは、パラミクソウイルス科の組換えウイルスは、腫瘍抗原のバリアントおよび/または腫瘍抗原の断片のバリアントをコードする、発現可能なポリヌクレオチドを含有する。本明細書で使用される腫瘍抗原の「バリアント」という用語は、免疫応答を調節する活性を有する前記腫瘍抗原とは同一ではない抗原に関する。したがって、本明細書で使用されるポリペプチド「バリアント」という用語は、本明細書に記載の少なくとも1つのポリペプチドまたは融合ポリペプチドを含む、任意の化学分子に関するものであって、指示された活性を有するが、一次構造は前記ポリペプチドまたは融合ポリペプチドとは異なる。したがって、ポリペプチドバリアントは好ましくは、指示された活性を有する変異タンパク質である。好ましくは、ポリペプチドバリアントは、上記ポリペプチドに含まれる5~200個の連続したアミノ酸、より好ましくは6~100個、さらにより好ましくは7~50個、またはもっとも好ましくは8~30個の連続したアミノ酸からなるアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有する、ペプチドを含む。さらに、上記ポリペプチドのその他のポリペプチドバリアントも含まれる。このようなポリペプチドバリアントは、少なくとも基本的には、特定のポリペプチドと同一の生物活性を有する。その上、当然のことながら、本明細書に記載のポリペプチドバリアントは、少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失および/または付加に起因する、異なるアミノ酸配列を有するはずであるが、バリアントのアミノ酸配列は依然として、好ましくは、特定のポリペプチドのアミノ酸配列と、少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、または99%同一である。2つのアミノ酸配列間の同一性の程度は、当技術分野で周知のアルゴリズムによって判定することができる。好ましくは、同一性の程度は、2つの最適にアラインされた配列を比較ウィンドウの全域にわたって比較することによって判定されるべきであるが、この比較ウィンドウ内のアミノ酸配列の断片は、最適アラインメントのために比較される配列と比べて、付加または欠失(たとえばギャップまたはオーバーハング)を含んでいる可能性がある。パーセンテージは、好ましくはポリペプチドの全長にわたって、マッチする位置の数を得るために同一のアミノ酸残基が2つの配列にともに出現する位置の数を求め、そのマッチする位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数で割り、結果の数値に100を掛けて、配列同一性のパーセンテージを得ることによって計算される。比較のための最適な配列アラインメントは、SmithおよびWatermanのローカルホモロジーアルゴリズム(1981)によって、NeedlemanおよびWunschのホモロジーアラインメントアルゴリズム(1970)によって、PearsonおよびLipmanの類似性検索法(1988)によって、これらのアルゴリズムのコンピューターによる実行(Wisconsin Genetics Software Packageより、GAP、BESTFIT、BLAST、PASTA、およびTFASTA、Genetics Computer Group (GCG), 575 Science Dr., Madison, WI)によって、または見比べて点検することによって、実行することができる。比較する2つの配列を特定したら、GAPおよびBESTFITを使用して最適なアラインメントを決定し、それから同一性の程度を決定することが好ましい。ギャップウェイト(gap weight)に5.00、およびギャップウェイトレングス(gap weight length)に0.30のデフォルト値を用いることが好ましい。本明細書に記載のポリペプチドバリアントは、アレルバリアント、またはその他の種特異的ホモログ、パラログ、またはオルソログとすることができる;その上、本明細書に記載のポリペプチドバリアントには、特定のポリペプチドもしくは前記のタイプのポリペプチドバリアントの断片を、これらの断片および/またはバリアントが上記の生物活性を有する限り含める。リン酸化、グリコシル化、ユビキチン化、SUMO化、もしくはミリスチル化などの翻訳後修飾により異なるバリアント、非天然アミノ酸を含むことで異なるバリアント、および/またはペプチドミメティックであることにより異なるバリアントがさらに含まれる。好ましくは、腫瘍抗原のバリアントもしくは腫瘍抗原の断片は、下記のうち少なくとも1つのバリアントを含み、好ましくはそのバリアントからなる;(i) HPV E6ポリペプチドの断片、好ましくはハイリスク型HPVのE6ポリペプチドの断片、たとえばHPV16 E6(Genbank
Acc No: NP_041325.1 GI:9627104)の断片;(ii)HPV E7ポリペプチドの断片、好ましくはハイリスク型HPVのE7ポリペプチドの断片、たとえばHPV16 E7(Genbank Acc No: NP_041326.1 GI:9627105)の断片;(iii)TRP2、好ましくはヒトTRP2(好ましくは、Genbank Acc No: NM_001922.4 GI:1015809739によりコードされる);(iv)がん/精巣抗原1B(CTAG1B、NY-ESOとも称される、好ましくはGenbank Acc No: NM_001327.2 GI:215272337によりコードされる);または(v)(i)~(iv)のいずれかの任意の組み合わせ。
【0023】
好ましくは、腫瘍抗原、腫瘍抗原の断片、または腫瘍抗原のバリアントは、さらに他のアミノ酸もしくはポリペプチドを含有する融合ポリペプチドである。より好ましくは、融合ポリペプチドはさらに、検出可能なタグを含有する。「検出可能なタグ」という用語は、融合タンパク質に付加または導入された一続きのアミノ酸を指す。好ましくは、タグは融合ポリペプチドに、CもしくはN末端で付加される。前記の一続きのアミノ酸は、タグを特異的に認識する抗体による融合ポリペプチドの検出を可能にするか、またはキレート剤のように機能的立体構造の形成を可能にするか、または蛍光タグによる可視化を可能にするものである。好ましいタグは、Mycタグ、FLAGタグ、6-Hisタグ、HAタグ、GSTタグ、もしくはGFPタグである。これらのタグはいずれも当技術分野でよく知られている。さらに好ましい実施形態において、前記融合タンパク質は、追加の腫瘍抗原もしくは免疫応答アクチベーターのアミノ酸配列を含むペプチドもしくはポリペプチドを含有する。
【0024】
本明細書で使用される「発現可能なポリヌクレオチド」という用語は、少なくとも1つの発現制御配列に機能しうるように連結されたポリヌクレオチドに関するものであって、この発現制御配列は前記ポリヌクレオチドに含まれる核酸配列から、翻訳可能なmRNAへの転写、またはウイルスゲノムへの転写を、好ましくは真核細胞、またはその単離された画分において生じさせるものである。真核細胞、好ましくは哺乳動物細胞において、発現を確実にもたらす調節エレメントは当技術分野でよく知られている。それらのエレメントは、確実に転写の開始をもたらす制御配列、ならびに必要に応じて、確実に転写の終結および転写産物の安定化をもたらすポリAシグナルを含んでいることが好ましい。追加の調節エレメントには転写ならびに翻訳エンハンサーを含めることができる。好ましくは、前記の少なくとも1つの発現制御配列はマイナス鎖RNAウイルスの発現制御配列であり、より好ましくは上記のパラミクソウイルスの、もっとも好ましくはMVの発現制御配列である。したがって、好ましくは少なくとも1つの発現制御配列は、確実に転写の開始をもたらすマイナス鎖RNAウイルスの制御配列(コンセンサス「遺伝子開始シグナル」、好ましくはコンセンサスMV「遺伝子開始シグナル」)、ならびに確実に転写の終結および転写産物の安定化をもたらす終結シグナル(コンセンサス「遺伝子終止シグナル」、好ましくはコンセンサスMV「遺伝子終止シグナル」)を含む。(i)組換えウイルスアンチゲノム、(ii)ウイルスL遺伝子、(iii)ウイルスP遺伝子、および(iv)ウイルスN遺伝子をコードする、1つもしくは複数の発現可能なDNA構築物を許容宿主細胞内にトランスフェクトすることによって、前記許容宿主細胞においてウイルス粒子の産生を開始させられることが当技術分野で知られている。やはり当業者には当然のことながら、ウイルスゲノムおよび前記ウイルス遺伝子が前記宿主細胞で発現されれば、宿主細胞の細胞質においてウイルス粒子の複製および構築が生じるので、したがってウイルス制御シグナルにのみ依存する。好ましくは、許容宿主細胞におけるウイルス粒子の産生は、前記許容宿主細胞に(i)組換えウイルスアンチゲノムをコードする1つもしくは複数の発現可能なDNA構築物をトランスフェクトすること、ならびに前記許容宿主細胞に(ii)ウイルスL遺伝子、(iii)ウイルスP遺伝子、および(iv)ウイルスN遺伝子のポリペプチド産物を導入することによっても開始することができる。本明細書で使用されるポリヌクレオチドという用語は、好ましくは、本明細書の他所で規定されたポリヌクレオチドバリアントを包含する。本発明のポリヌクレオチド、好ましくは(i)腫瘍抗原、(ii)腫瘍抗原の断片、または(iii)(i)もしくは(ii)のバリアント、をコードする発現可能なポリヌクレオチドは、パラミクソウイルス科の組換えウイルスのゲノム内で、麻疹ウイルスのHおよびL遺伝子の間に存在する領域に相当する領域内に含まれることが好ましい。好ましくは、発現可能なポリヌクレオチドは、さらにコード配列を含有する。より好ましくは、発現可能なポリヌクレオチドは免疫応答のアクチベーターをコードする。ある実施形態において、発現可能なポリヌクレオチドは、 (i)腫瘍抗原、(ii)腫瘍抗原の断片、および(iii)(i)もしくは(ii)のバリアントのうち少なくとももう1つを追加してコードする。当然のことながら、コードされる追加のポリペプチドは、別のポリペプチドとしてコードされていても、融合ポリペプチドとしてコードされていてもよく、この融合ポリペプチドは、(i)腫瘍抗原、(ii)腫瘍抗原の断片、および(iii)(i)もしくは(ii)のバリアントのうち少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つを含有する。したがって、好ましくは、発現可能なポリヌクレオチドは、腫瘍抗原の多数の抗原エピトープを1つもしくは複数の融合ポリペプチドとしてコードすることができる。他の実施形態において、前記の免疫応答のアクチベーターは、免疫応答の分泌型可溶性アクチベーター、好ましくは免疫グロブリンもしくはそのフラグメント、より好ましくは分泌型免疫グロブリンもしくはそのフラグメントを含むが、それらであることが好ましい。
【0025】
本明細書で使用される「免疫グロブリン」という用語は、可溶性免疫グロブリン、好ましくはクラスIgA、IgD、IgE、IgG、もしくはIgMのいずれかの抗体であるポリペプチドに関するが、これらは好ましくは目的の分子と結合する活性を有し、より好ましくは特異的に結合する活性を有する。目的の抗原に対する免疫グロブリンは、たとえば、目的の精製分子、またはそこから誘導された適当な断片を抗原として使用して、周知の方法によって調製することができる。抗原として適当な断片は、当技術分野で周知の抗原性決定アルゴリズムによって確認することができる。このような断片は、タンパク質消化により当該分子の1つから得られるか、合成ペプチドとするか、または組換え発現によって得ることができる。好ましくは、抗原として使用される当該分子のペプチドは、当該分子を発現する細胞の外部にある;すなわち、好ましくは、結合ドメインであるエピトープは、細胞外ドメインと相互作用し、好ましくは細胞外ドメインである。好ましくは、本発明の免疫グロブリンは、本明細書の他所で規定された望ましい結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ヒトもしくはヒト化抗体または霊長類化キメラ化抗体またはそのフラグメントである。また本発明の抗体として、二重特異性抗体、合成抗体、またはこれらのいずれかの化学修飾誘導体も含まれる。好ましくは、本発明の抗体は、上記の当該分子と特異的に結合するべきである(すなわち、ほかのポリペプチドもしくはペプチドと無視できる程度にしか結合しないか、または好ましくは交差反応しない)。特異的結合は、さまざまな周知の方法によって調べることができる。抗体もしくはそのフラグメントは、たとえば、Harlow and Lane "Antibodies, A Laboratory Manual", CSH Press, Cold Spring Harbor, 1988. Monoclonal antibodies can be prepared by the techniques originally described in Kohler and Milstein, Nature. 1975. 256: 495; and Galfre, Meth. Enzymol. 1981, 73: 3に記載の方法を用いて得ることができるが、それは、マウスメラノーマ細胞と免疫化哺乳動物由来の脾細胞との融合を含む。当業者には当然のことであるが、本発明の免疫グロブリンが結合する当該分子は、Fc受容体もしくは抗体のFc部分と結合する補体タンパク質であってもよい;したがって、免疫グロブリンは好ましくは抗体のFcドメインであり、より好ましくは可溶性の抗体Fcドメインであり、もっとも好ましくは分泌型可溶性の抗体Fcドメインである。好ましくは、前記抗体FcドメインはIgGに由来し、より好ましくはIgG1、もっとも好ましくはヒトIgG1に由来する。
【0026】
「免疫グロブリンフラグメント」は、インタクトな免疫グロブリンの一部、好ましくは抗体の一部を含み、ある実施形態において、その抗原結合領域を含む。抗体フラグメントおよび可変領域の融合タンパク質の例としては、Fab、Fab'、F(ab')2、およびFvフラグメント;ダイアボディ;直鎖抗体;一本鎖抗体分子;単一ドメイン抗体(VHH)、ナノボディとしても知られる、ならびに抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体がある。抗体のパパイン消化は、「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメント、および残りの「Fc」フラグメントをもたらすが、Fabはそれぞれ1つの抗原結合部位を有し、Fcの名前はそれが容易に結晶化可能であることを反映する。ペプシン処理はF(ab’)2フラグメントを生じるが、これは2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋する能力を有する。「Fv」は、完全な抗原結合部位を含有する、最小の抗体フラグメントである。好ましくは、二本鎖Fvタイプは、緊密に非共有結合で会合した1本の重鎖および1本の軽鎖可変ドメインの二量体からなる。一本鎖Fv(scFv)タイプでは、軽鎖および重鎖が二本鎖Fvタイプと類似した「二量体」構造の形で会合できるように、可動性ペプチドリンカーによって1本の重鎖および1本の軽鎖可変ドメインが共有結合で連結されることになる。それぞれの可変ドメインの3つの超可変領域(HVR、相補性決定領域(CDR)とも称される)が相互作用して、抗原結合部位を特徴づけるのはまさにこの配置による。このように、1つのscFvの6つのHVRが抗体に抗原結合特異性を与える。しかしながら、1つの可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのHVRだけを含む、Fvの半分)であっても、完全な結合部位より低い親和性ではあるが、抗原を認識して結合する能力を有する。「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する抗体フラグメントを表すが、このフラグメントは、軽鎖可変ドメイン(VL)と結合された重鎖可変ドメイン(VH)を同一のポリペプチド鎖の中に含有する(VH-VL)。同一鎖の2つのドメイン間でペア形成を可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、ドメインは別の鎖の相補的ドメインとペアを形成せざるをえず、余儀なく2つの抗原結合部位が作り出される。ダイアボディは二価または二重特異性となりうる。ダイアボディは、たとえば、EP 0 404 097; WO 1993/01161; Hudson et al., Nat. Med. 9 (2003) 129-134; and Hollinger et al., PNAS USA 90 (1993) 6444-6448においてさらに十分に説明されている。Hudson et al., Nat. Med. 9 (2003) 129-134にはトリアボディおよびテトラボディも記載されている。
【0027】
本明細書で使用される「分泌される」という用語は、宿主細胞の内側から前記宿主細胞の外側へ、前記宿主細胞に本来備わっているメカニズムによって運ばれる化合物に関する。好ましくはポリペプチドもしくは融合ポリペプチドの分泌は、好ましくは、前記ペプチドもしくはポリペプチドの小胞体内腔への移行をもたらす真核生物のシグナルペプチドによってもたらされるが、より好ましくは保留シグナルがないことによってもたらされる。ペプチドもしくはポリペプチドの分泌を引き起こすシグナルペプチドは当技術分野で知られている。好ましくは、シグナルペプチドはIL-12シグナルペプチドである。シグナルペプチドがIgリーダー配列であるか、またはそれを含むことも好ましい。より好ましくは、シグナルペプチドは、ヒトIgリーダー配列であるか、またはそれを含む。さらにより好ましくは、シグナルペプチドは、マッチングリーダー配列であるか、またはそれを含むが、これはすなわち、抗体、好ましくは一本鎖抗体の、可変軽鎖と同じIg κサブグループから選択されるリーダー配列である。
【0028】
好都合なことに、本発明の基礎となる研究において、免疫系によって認識されない腫瘍抗原の認識が、ウイルス感染という状況下で前記腫瘍抗原を提示することによって誘導される可能性があることが明らかになった。理論に縛られるつもりはないが、麻疹ウイルス感染という状況下での腫瘍抗原の発現は、腫瘍によって誘導される寛容を破り、腫瘍に対する免疫応答を可能にすることが推定される。その上、麻疹ウイルス感染によって引き起こされる、腫瘍細胞上での腫瘍抗原の発現が、腫瘍におけるT細胞の浸潤および持続を高めることが判明した。
【0029】
上記でなされた定義は変更すべきは変更して以下に準用する。さらに以下でなされる追加の定義および説明も、変更すべきは変更して本明細書に記載のすべての実施形態に準用される。
【0030】
本発明はさらに、本発明のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチドに関する。
【0031】
「ポリヌクレオチド」という用語は、当業者には当然のことであるが、一連の隣接するヌクレオチドから構成されるポリマーに関する;この用語は一本鎖ならびに二本鎖ポリヌクレオチドを含む。好ましくは化学修飾ポリヌクレオチドも含まれるが、これには、天然に存在する修飾ポリヌクレオチド、たとえばグリコシル化もしくはメチル化ポリヌクレオチド、または人工的に修飾されたポリヌクレオチド、たとえばビオチン化ポリヌクレオチド、および修飾ヌクレオチドを含むポリヌクレオチドなどがある。好ましくは、ポリヌクレオチドに含まれるヌクレオチドは、天然に存在するヌクレオチドである。好ましくは、ポリヌクレオチドはmRNAを含めたRNAであり、またはcDNAを含めたDNAである。より好ましくは、ポリヌクレオチドはDNAである。好ましくは、ポリヌクレオチドに含まれるヌクレオチドは、ポリヌクレオチドがDNAである場合、塩基のアデニン、グアニン、シトシン、およびチミンを含むが、好ましくはそれだけで構成される;同様に好ましくは、ポリヌクレオチドに含まれるヌクレオチドは、ポリヌクレオチドがRNAである場合、塩基のアデニン、グアニン、シトシン、およびウラシルを含むが、好ましくはそれだけで構成される。本発明のポリヌクレオチドは、指示された核酸配列からなる、または基本的にその配列からなる、またはその配列を含んでなる。したがって、本発明のポリヌクレオチドはその他の核酸配列も含有することができる。本発明のポリヌクレオチドは、好ましくは、単離された(すなわち天然の状態から単離された)ポリヌクレオチドとして、または遺伝子改変された形で、与えられるべきである。
【0032】
本明細書で使用される「組換えウイルスをコードするポリヌクレオチド」という用語は、宿主細胞においてウイルス粒子もしくはウイルス様粒子を作製するに足りる、1つもしくは複数の核酸配列を含むポリヌクレオチドに関する。当業者には当然のことであるが、ウイルスはポリヌクレオチドゲノムおよび少なくとも1つのカプシドポリペプチドで構成される。したがって、本発明の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチドは、好ましくは組換えウイルスゲノムを含む。当業者には当然のことながら、組換えウイルスをコードするポリヌクレオチドが本発明のウイルス、すなわちパラミクソウイルス科のウイルスに含まれる場合、ポリヌクレオチドはマイナス鎖RNAである。同様に当然のことながら、ポリヌクレオチドが宿主細胞に含まれるDNAである場合、前記DNAポリヌクレオチドからウイルス粒子を作製するためには、少なくともRNA依存性RNAポリメラーゼ活性が追加して必要となる。好ましくは、組換えウイルスをコードするポリヌクレオチドは、本明細書の他所に記載の核酸配列を含んでなるか、またはその核酸配列からなる。本明細書に注記されるように、マイナス鎖(-)RNAウイルスのDNAコピーの配列は、通常の5’→3’方向で記載される;これは、マイナス鎖(-)RNAウイルスの本来の3’→5’方向に関してアンチゲノムの(+)RNAの方向でのウイルスの配列に対応する。好ましくは、組換えウイルスをコードするポリヌクレオチドは、麻疹ウイルスEdmonston株(Moratenワクチン)、Genbank Acc No: AF266287.1 GI:9181873を基にする。より好ましくは、組換えウイルスをコードするポリヌクレオチドは、配列番号3~5のいずれか1つの核酸配列を含んでなり、好ましくはその核酸配列からなる。
【0033】
ポリヌクレオチドという用語は、好ましくは、ポリヌクレオチドバリアントを含む。本明細書で使用される「ポリヌクレオチドバリアント」という用語は、その配列が前記の特定の核酸配列から、少なくとも1つのヌクレオチド置換、付加および/または欠失によって導き出されることを特徴とする核酸配列を含有することに関わる、ポリヌクレオチドのバリアントに関するが、このポリヌクレオチドバリアントはその特定のポリヌクレオチドについて記載された活性を有するべきである。好ましくは、前記ポリヌクレオチドバリアントは、特定のポリヌクレオチドのオルソログ、パラログ、または別のホモログである。同様に好ましくは、前記ポリヌクレオチドバリアントは、特定のポリヌクレオチドの天然に存在するアレルである。ポリヌクレオチドバリアントはまた、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で前記の特定のポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができる核酸配列を含有する、ポリヌクレオチドを包含する。上記のストリンジェントな条件は当業者に知られており、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N. Y. (1989), 6.3.1-6.3.6 に見出すことができる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の好ましい例は、約45℃にて6x塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(=SSC)のハイブリダイゼーション条件であり、その後50~65℃にて0.2x SSC、0.1% SDSでの1回または複数回の洗浄ステップが続く。当業者は承知しているように、これらのハイブリダイゼーション条件は、核酸のタイプに応じて異なり、たとえば有機溶媒が存在する場合、バッファーの温度および濃度について異なる。たとえば、「標準的なハイブリダイゼーション条件」下で、温度は、0.1xから5x SSCまでの濃度の水性バッファー(pH 7.2)中、42℃から58℃の間で核酸のタイプに応じて異なる。有機溶媒が上記バッファー中に存在する、たとえば50%ホルムアミドの場合、標準条件下の温度は、約42℃である。DNA:DNAハイブリッド用のハイブリダイゼーション条件は、好ましくは、たとえば0.1x SSCで20℃~45℃であり、好ましくは30℃~45℃の間である。DNA:RNAハイブリッド用のハイブリダイゼーション条件は、好ましくは、たとえば0.1x SSCで30℃~55℃であり、好ましくは45℃~55℃の間である。前記のハイブリダイゼーション温度は、たとえば、長さが約100 bp(=塩基対)でG + C含量が50%の核酸についてホルムアミド非存在下で決定される。上記のテキスト、または以下のテキストなどの、テキストを参照することによって、必要なハイブリダイゼーション条件を決定する方法が当業者に知られている:Sambrook et al., "Molecular Cloning”, Cold Spring Harbor Laboratory, 1989; Hames and Higgins (Ed.) 1985, ”Nucleic Acids Hybridization: A Practical Approach”, IRL Press at Oxford University Press, Oxford; Brown (Ed.) 1991, "Essential Molecular Biology: A Practical Approach”, IRL Press at Oxford University Press, Oxford。あるいはまた、ポリヌクレオチドバリアントは、混合オリゴヌクレオチドプライマーに基づくDNA増幅などの、PCR技術によって、すなわち本発明のポリペプチドの保存ドメインに対する変性プライマーを用いて、得られる。ポリペプチドの保存ドメインは、本発明のポリヌクレオチドの核酸配列もしくはポリペプチドのアミノ酸配列と、他の生物の配列との配列比較によって、特定することができる。鋳型として、細菌、真菌、または植物由来、好ましくは動物由来のDNAまたはcDNAを使用することができる。さらに、バリアントは、具体的に指示される核酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である核酸配列を含有するポリヌクレオチドを含む。その上、具体的に指示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を、コードする核酸配列を含有するポリヌクレオチドもまた含まれる。パーセント同一性の値は、アミノ酸もしくは核酸配列の全領域にわたって計算されることが好ましい。異なる配列を比較するために、さまざまなアルゴリズムに基づく一連のプログラムが当業者に利用可能である。これに関連して、NeedlemanおよびWunschのアルゴリズム、またはSmithおよびWatermanのアルゴリズムは、とくに信頼できる結果を与える。配列アラインメントを実行するために、PileUpプログラム(J. Mol. Evolution., 25, 351-360, 1987, Higgins et al., CABIOS, 5 1989: 151-153)、またはGapプログラムおよびBestFitプログラム(Needleman and Wunsch (J. Mol. Biol. 48; 443-453 (1970)) およびSmith and Waterman (Adv. Appl. Math. 2; 482-489 (1981)))を使用すべきであるが、これらはGCG ソフトウェアパケット(Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, Wisconsin, USA 53711 (1991))の一部である。パーセント(%)単位で上記に挙げられた配列同一性の値は、好ましくは、以下の設定を用いて、配列領域全体にわたってGAPプログラムを使用して決定されるべきであるが、この設定は、とくに指示のない限り、配列アラインメントの標準設定として常に使用されるものとする;Gap Weight: 50、Length Weight: 3、Average Match: 10.000、およびAverage Mismatch: 0.000。
【0034】
具体的に指示される核酸配列のいずれかの断片を含むポリヌクレオチドもまた、本発明のバリアントポリヌクレオチドとして含まれる。断片は、明記された活性をなお有しているポリペプチドもしくは融合ポリペプチドを、依然としてコードするものとする。したがって、コードされるポリペプチドは、前記生物活性をもたらす本発明のポリペプチドのドメインを含んでなるか、またはそのドメインからなる可能性がある。本明細書で意味するところの断片は、好ましくは、特定の核酸配列のいずれか1つの少なくとも50、少なくとも100、少なくとも250、または少なくとも500個の連続したヌクレオチドを含んでなるか、または、特定のアミノ酸配列のいずれか1つの少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50、少なくとも80、少なくとも100、または少なくとも150個の連続したアミノ酸を含んでなるアミノ酸配列をコードする。
【0035】
本発明はさらに、本発明のパラミクソウイルス科の組換えウイルスおよび/または本発明のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチドを含有する、宿主細胞に関する。
【0036】
本明細書で使用される「宿主細胞」という用語は、脊椎動物細胞に関する。好ましくは、細胞は脊椎動物細胞であり、好ましくは哺乳動物細胞であり、より好ましくはヒト細胞もしくは実験動物の細胞、具体的にはラット、マウス、ウサギ、モルモット、ハムスター、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウシ、ロバの細胞であり、もっとも好ましくはヒト細胞である。好ましくは、宿主細胞はがん細胞、より好ましくは腫瘍細胞である。
【0037】
さらに本発明は薬剤に関するが、これは以下を含む:
(a) (i) 本発明のパラミクソウイルス科の組換えウイルス、
(ii) (i)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチド、好ましくは以下に明記される実施形態に記載のポリヌクレオチド;
(iii) (i)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルスおよび/または(ii)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチドを含有する、宿主細胞;好ましくは以下に明記される実施形態に記載の宿主細胞;または
(iv) (i)~(iii)の任意の組み合わせ;ならびに
(b) 少なくとも1つの薬理学上許容される添加剤。
【0038】
本明細書で使用される「薬剤(医薬)」および「医薬組成物」という用語は、本発明の化合物、ならびに、必要に応じて、1つもしくは複数の製薬上許容される基剤、すなわち添加剤、に関する。本発明の化合物は、製薬上許容される塩として製剤することができる。許容される塩は、酢酸塩、メチルエステル、HCl、硫酸塩、塩化物などを含む。医薬組成物は、好ましくは、局部、局所、または全身性に投与される。薬物投与のために通常用いられる適当な投与経路は、経口、静脈内、または非経口投与、ならびに吸入である。好ましい投与経路は、腫瘍内投与である。しかしながら、化合物の作用の性質および様式に応じて、医薬組成物は、他の経路でも投与することができる。たとえば、ポリヌクレオチド化合物は、ウイルスベクターもしくはウイルスもしくはリポソームを使用することによって遺伝子治療アプローチで投与することができる。
【0039】
さらに、化合物は、他の薬物と組み合わせて、共通の医薬組成物中で、または別々の医薬組成物として投与することができるが、前記の別々の医薬組成物は、複数の要素からなるキットの形で提供されてもよい。化合物は好ましくは、従来法に従って薬物を標準的な製薬基剤と組み合わせて調製される、通常の剤形で投与される。こうした手順は、望ましい製剤に適合するように、成分を混合、造粒、および圧縮成形し、または溶解する。当然のことながら、製薬上許容される基剤もしくは希釈剤の形態および性質は、組み合わせるべき活性成分の量、投与経路、およびその他の周知の変動要素によって決まる。
【0040】
添加剤は、製剤の他の成分と両立するという意味で、ならびにそのレシピエントに有害でないという意味で、許容可能でなければならない。使用される添加剤は、たとえば、固体、ゲル、または液体の基剤とすることができる。固体基剤の例は、乳糖、白土、ショ糖、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などである。液体基剤の例は、リン酸緩衝生理食塩水、シロップ、ピーナッツ油およびオリーブ油などの油、水、乳剤、さまざまな種類の湿潤剤、滅菌溶液などである。同様に、基剤もしくは希釈剤には、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの当業者によく知られている時間遅延材料を、単独で、またはワックスとともに含めることができる。前記の適当な基剤は、上記の基剤および当技術分野で周知の他の基剤を含むが、たとえば、Remington´s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvaniaを参照されたい。1つもしくは複数の希釈剤が、配合剤の生物活性に影響を及ぼさないように選択される。このような希釈剤の例は、蒸留水、生理食塩水、リンゲル液、ブドウ糖液、およびハンクス液である。それに加えて、医薬組成物もしくは製剤は、他の基剤、アジュバント、または無毒性、非治療的、非免疫原性安定剤なども含めることができる。
【0041】
治療上有効な用量は、本明細書で言及される疾患もしくは病態に付随する症状を予防、改善、または治療する、本発明の医薬組成物に使用される化合物の量を表す。こうした化合物の治療効果および毒性は、たとえばED50(集団の50%で治療上有効な用量)およびLD50(集団の50%に対して致死的な用量)として、細胞培養または実験動物において標準的な製薬学の方法で測定することができる。治療効果と毒性作用の用量比が治療指数であって、それは比率LD50/ED50として表すことができる。
【0042】
投与計画は、主治医および他の臨床的要因によって決定される;好ましくは上記方法のいずれか1つにしたがって決定される。医学分野でよく知られているように、一人の患者への投与量は、患者の体格、体表面積、年齢、投与される個別の化合物、性別、投与時期および投与経路、全身健康状態、および同時に投与される他の薬物などの、多くの要因によって決まる。経過は、定期的な評価によってモニターすることができる。典型的な用量は、たとえば、ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドに関して1~1000μg、またはウイルスもしくはウイルス様粒子に関して104~108ウイルス粒子の範囲とすることができる;しかしながら、とくに前記要因を考慮すれば、この例示された範囲より下または上の用量が想定される。経過は、定期的な評価によってモニターすることができる。本明細書で言及される医薬組成物および製剤は、本明細書に記載の疾患もしくは病態を治療、改善または予防するために、少なくとも1回投与される。しかしながら、前記医薬組成物は、2回以上、たとえば1日1回から4回、無制限の日数まで投与することができる。個別の医薬組成物は医薬分野でよく知られた方法で調製され、少なくとも1つの上記の活性化合物を、製薬上許容される基剤もしくは希釈剤とともに、混合物または他の形で含む。それらの個別の医薬組成物を作製するために、活性化合物は通常、基剤もしくは希釈剤と混合されるか、またはカプセル、分包、カシェ剤、薬包紙、または他の適当な容器もしくは送達媒体に封入もしくは被包される。その結果得られる製剤は、投与方法に適合しなければならず、すなわち錠剤、カプセル剤、坐剤、液剤、懸濁剤などの形をとる。推奨投与量は、検討されるレシピエントに応じた用量調節をあらかじめ考慮するために、処方説明書もしくは使用説明書において指示されるべきである。
【0043】
本発明はさらに、がん細胞および免疫細胞を含むサンプルにおいて、抗腫瘍活性を有する免疫細胞を活性化するための方法に関するが、その方法は以下を含む:
a) がん細胞および免疫細胞を含む前記サンプルを
(i) 本発明のパラミクソウイルス科の組換えウイルス、
(ii) (i)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチド、好ましくは以下に明記される実施形態に記載のポリヌクレオチド;
(iii) (i)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス、および/または(ii)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチドを含有する宿主細胞;好ましくは以下に明記される実施形態に記載の宿主細胞;または
(iv) (i)~(iii)の任意の組み合わせ
と接触させること;ならびにそれによって
b) 前記サンプルに含まれる、抗腫瘍活性を有する免疫細胞を活性化すること。
【0044】
本発明の免疫細胞を活性化するための方法は、好ましくは、上記で明確に言及されたほかに追加のステップを含んでいてもよい。たとえば、追加のステップは、たとえば、ステップa)のためのサンプルを提供すること、または追加の化合物、たとえば免疫賦活性化合物をステップb)の前、またはステップb)の間に、免疫細胞に投与することに関するものとすることができる。さらに、1つもしくは複数の前記ステップは、自動化装置によって行うことができる。本発明の免疫細胞を活性化するための方法は、好ましくはin vitro法である。
【0045】
本発明の方法に関連して使用される「接触させる」という用語は、当業者に明らかである。好ましくは、この用語は、化合物、たとえばウイルス、サンプル、もしくは本発明の被験体を、他の化合物と物理的に接触させること、そしてそれによってその化合物および他の化合物が相互作用するのを可能にすることに関する。
【0046】
本明細書で使用される「免疫細胞」という用語は、被験体において免疫応答をもたらす細胞に関する。好ましくは免疫細胞は、白血球、好ましくはリンパ球である。好ましくは免疫細胞はB細胞である;より好ましくは免疫細胞はT細胞であり、さらにより好ましくは細胞傷害性T細胞またはヘルパーT細胞である。
【0047】
本発明はさらに、がんを患う被験体においてがんを治療するための方法に関するが、その方法は以下を含む:
1. a) 前記被験体を
2. (i) 本発明のパラミクソウイルス科の組換えウイルス、
3. (ii) (i)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチド、好ましくは本明細書に明記される実施形態に記載のポリヌクレオチド;
4. (iii) (i)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス、および/または(ii)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチドを含有する宿主細胞;好ましくは本明細書に明記される実施形態に記載の宿主細胞;または
5. (iv) (i)~(iii)の任意の組み合わせ
と接触させること;ならびにそれによって
b)がんを患う被験体においてがんを治療すること。
【0048】
本発明の治療方法は好ましくは、上記で明確に言及されたほかに追加のステップを含んでいてもよい。たとえば、追加のステップは、たとえば、ステップa)のために腫瘍を限局化させること、および/またはがんを診断すること、またはステップb)のために追加の薬剤を投与することに関するものとすることができる。より好ましくは、治療方法はさらに、本明細書の他所に記載の免疫細胞を活性化するための方法のステップ、および抗腫瘍活性を有する前記の活性化された免疫細胞を前記被験体に投与する追加のステップを含む。さらに、1つもしくは複数の前記ステップは、自動化装置によって行うことができる。本発明の方法は好ましくは、in vivoの治療方法である。好ましくは、治療方法において、がんは、固形がん、その転移、またはその再発である。
【0049】
「治療する」という用語は、本明細書で言及される疾患もしくは障害、またはそれらに伴う症状を、好ましくはかなりの程度まで、改善することを意味する。本明細書で使用される前記の治療は、本明細書で言及される疾患もしくは障害について完全に健康を回復することも含む。当然のことながら、本発明にしたがって使用される治療は、治療を受ける被験体すべてに有効とはいえないかもしれない。しかしながらその用語は、好ましくは、本明細書に記載の疾患もしくは障害に罹患した被験体のうち統計上有意な一部が治療に成功することを、必要としなければならない。ある一部分が統計上有意であるかどうかは、当業者には、たとえば、信頼区間の決定、p値の決定、スチューデントt検定、マン・ホイットニー検定などの周知のさまざまな統計学的評価ツールを用いてすぐに判定できる。好ましい信頼区間は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%である。p値は好ましくは、0.1,0.05、0.01、0.005、または0.0001である。好ましくは、治療は、与えられたコホートもしくは集団の被験体のうち、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%に有効であるべきである。好ましくは、がんを治療するとは、被験体において腫瘍組織量を減らすことである。当業者には当然のことながら、たとえばがんの、治療の有効性は、たとえばがんのステージおよびがんのタイプなどの、さまざまな要因に左右される。好ましくは、がんを治療するとは、腫瘍組織量を減らすことである。
【0050】
さらに本発明は、本発明の免疫細胞を活性化するための方法によって得られた、または得ることができる、抗腫瘍活性を有する活性化された免疫細胞を調製することに関する。
【0051】
さらに、本発明は、薬剤を製造するための、好ましくは、不適切な細胞増殖を治療する薬剤を製造するための、下記の使用に関する:
1. (i) 本発明のパラミクソウイルス科の組換えウイルス、
2. (ii)(i)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチド、好ましくは下記に明記される実施形態に記載のポリヌクレオチド;
3. (iii) (i)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス、および/または(ii)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチドを含有する宿主細胞;好ましくは下記に明記される実施形態に記載の宿主細胞;または
4. (iv) (i)~(iii)の任意の組み合わせ。
【0052】
本発明はまた、治療に用いるための、本発明のパラミクソウイルス科の組換えウイルス、および/または本発明のポリヌクレオチド、および/または本発明の宿主細胞に関する。本発明はさらに、不適切な細胞増殖の治療に用いるための、本発明のパラミクソウイルス科の組換えウイルス、および/または本発明のポリヌクレオチド、および/または本発明の宿主細胞に関する。好ましくは、不適切な細胞増殖の治療はがん治療である。
【0053】
本発明はまた、容器に収納して下記を含む、キットに関する:
1. (i) 請求項1~20のいずれか1つに記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス、
2. (ii)(i)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチド、好ましくは下記に明記される実施形態に記載のポリヌクレオチド;
3. (iii) (i)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス、および/または(ii)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチドを含有する宿主細胞;好ましくは下記に明記される実施形態に記載の宿主細胞;または
4. (iv) (i)~(iii)の任意の組み合わせ。
【0054】
本明細書で使用される「キット」という用語は、前記構成要素の集合体を表す。好ましくは、前記構成要素は、好ましくは外部容器内で、追加の構成要素と組み合わせられる。外部容器は、本発明の方法を実行するための使用説明書を含むことも好ましい。キットの構成要素、ならびにそれを使用する方法の例は、本明細書で与えられた。キットは好ましくは、前記構成要素をそのまま使用できる製品中に含む。好ましくは、キットは、本発明の方法で与えられる適用に関してパラミクソウイルス科の組換えウイルスを使用するための使用説明書、たとえばユーザーマニュアルなどを追加して含んでいてもよい。詳細は本明細書の他所に記載される。それに加えて、このようなユーザーマニュアルは、キットの構成要素の正しい使用に関する指示を与えることができる。ユーザーマニュアルは、書類として、または電子書式で提供されることがあり、たとえばCDもしくはCD ROM上に記憶される。本発明はまた、本発明の方法のいずれかにおいて、前記キットを使用することに関する。
【0055】
また、本発明は、がんに罹っている被験体を治療するための、(i) 腫瘍抗原またはその断片もしくはバリアントをコードする発現可能なポリヌクレオチドを含有するパラミクソウイルス科の組換えウイルス、(ii)(i)の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチド、および/または(iii) (i)に記載の組換えウイルスおよび/または(ii)に記載のポリヌクレオチドを含有する宿主細胞、を選択するための方法に関するが、その方法は
a) 前記被験体のがんサンプルにおいて、がん細胞によって発現される少なくとも1つの腫瘍抗原を検出すること;ならびに
b) ステップa)に基づいて、腫瘍抗原またはその断片もしくはそのバリアントをコードする発現可能なポリヌクレオチドを含有する、組換えウイルス、ポリヌクレオチド、および/または宿主細胞を検出すること
を含む。
【0056】
本発明の選択のための方法は、好ましくは、上で明記されたステップに追加してステップを含んでいてもよい。たとえば、追加のステップは、たとえば、ステップa)のがんサンプルに関するか、または、ステップb)後に、腫瘍抗原またはその断片もしくはそのバリアントをコードする発現可能なポリヌクレオチドを含有する、組換えウイルス、ポリヌクレオチド、および/または宿主細胞をがんサンプルに与えることに関する可能性がある。さらに、前記ステップのうち1つもしくはいくつかは自動化装置で行うことができる。本発明の方法は好ましくはin vivo法であり、好ましくは、治療法の決定を行うのに役立つin vitro法である。
【0057】
本明細書で使用される「腫瘍抗原を検出する」という用語は、細胞内および/または細胞表面上で腫瘍抗原の存在を検出することに関するが、細胞は好ましくはがん細胞である。好ましくは、検出は定性的であり、より好ましくは半定量的であり、もっとも好ましくは定量的検出である。好ましくは、検出は免疫学的検出であり、1つの、好ましくは単離されたがんサンプルもしくはその画分を、腫瘍抗原と結合する少なくとも1つの抗体と接触させることによって免疫学的に検出することが好ましい;好ましくは、前記結合は特異的結合である。本明細書で使用される「特異的結合」という用語は、腫瘍抗原の親和性と比べて、腫瘍抗原ではない他の化合物が少なくとも100倍低い親和性で結合し、より好ましくは少なくとも1000倍、もっとも好ましくは少なくとも104倍低い親和性で結合するような結合に関する。腫瘍抗原を免疫学的に検出する好ましい方法は当技術分野で知られており、具体的には、in situ免疫染色、ELISAおよび関連法、ならびに免疫ブロットなどがある。当業者には当然のことながら、腫瘍抗原の発現は、腫瘍細胞により発現される前記腫瘍抗原をコードするRNAを検出することによって、検知することもできる。
【0058】
がんに罹った被験体を治療するための作用物の選択、すなわち腫瘍抗原またはその断片もしくはそのバリアントをコードする発現可能なポリヌクレオチドを含有する、組換えウイルス、ポリヌクレオチド、および/または宿主細胞の具体的な選択は、個別の状況に左右される。好ましくは、がんサンプル中のがん細胞が腫瘍抗原を発現することが判明しているならば、前記腫瘍抗原の発現を増加させる作用物が選ばれることになる。その一方で、がん細胞が変異型のポリペプチド(たとえばネオアンチゲン)を発現することが判明している場合には、好ましくは前記変異型の発現を引き起こす作用物が選択される。したがって、ステップb)で選択された組換えウイルス、ポリヌクレオチド、および/または宿主細胞に含まれる発現可能なポリヌクレオチドによりコードされる腫瘍抗原またはその断片もしくはバリアントは、ステップa)で検出された腫瘍抗原と、少なくとも1つのエピトープを共有することが好ましい。また、好ましくは、ステップb)で選択された組換えウイルス、ポリヌクレオチド、および/または宿主細胞に含まれる、発現可能なポリヌクレオチドによってコードされる、腫瘍抗原またはその断片もしくはそのバリアントは、ステップa)で検出された腫瘍抗原であるか、またはそれに由来する。
【0059】
以上の背景から、以下の実施形態を特に提唱する:
請求/実施形態
1. (i)~(iii) のうち少なくとも1つ、すなわち、(i)腫瘍抗原、(ii)腫瘍抗原の断片、および(iii) (i)または(ii)のバリアントのうち少なくとも1つをコードする、発現可能なポリヌクレオチドを含有する、パラミクソウイルス科の組換えウイルス。
【0060】
2. 前記腫瘍抗原が、L-ドパクロムトートメラーゼ(TRP2)、メラニン細胞タンパク質PMEL(gp100)、HPV E6/7、MAGE 1、MAGE 3、NY-ESO、アンドロゲン受容体(AR)、BCL-1、カルプロテクチン、がん胎児性抗原(CEA)、EGFR、上皮細胞接着分子(Ep-CAM)、上皮性シアロムチン、膜エストロゲン受容体(mER)、FAP HER2/neu、ヒト高分子量メラノーマ関連抗原(HMW-MAA)、IL-6、MOC-1、MOC-21、MOC-52、melan-A/MART-1、メラノーマ関連抗原、ムチン、OKT9、プロゲステロン受容体(PGR)、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、シナプトフィジン、VEGFR、CD19、CD20、CD22、CD30、およびCD33からなる一群から選択される、実施形態1に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス。より好ましくは、腫瘍抗原は、HPV E6、HPV E7、MAGE 1、MAGE 3、NY-ESO、TRP2もしくはgp100であり、もっとも好ましくはTRP2である。
【0061】
3. 前記腫瘍抗原がヒト腫瘍抗原である、実施形態1または2に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス。
【0062】
4. 前記断片が、少なくとも5個のアミノ酸、好ましくは少なくとも6個、より好ましくは少なくとも7個、さらにより好ましくは少なくとも8個、もっとも好ましくは少なくとも9個のアミノ酸を含み、前記アミノ酸が好ましくは、前記腫瘍抗原のアミノ酸配列に含まれる連続した配列に相当する、実施形態1~3のいずれか1つに記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス。
【0063】
5. 前記断片が前記腫瘍抗原の少なくとも1つの抗原性エピトープを含有する、実施形態1~4のいずれか1つに記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス。
【0064】
6. 前記エピトープがMHCクラスIエピトープおよび/またはMHCクラスIIエピトープである、実施形態5に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス。
【0065】
7. 前記断片が、(i) ヒトパピローマウイルス(HPV)E6ポリペプチドの断片、好ましくはハイリスクHPVのE6ポリペプチド、たとえばHPV16 E6(Genbank Acc No: NP_041325.1 GI:9627104)の断片;(ii) HPV E7ポリペプチドの断片、好ましくはハイリスクHPVのE7ポリペプチド、たとえばHPV16 E7(Genbank Acc No: NP_041326.1 GI:9627105)の断片;(iii) TRP2、好ましくはヒトTRP2(好ましくはGenbank Acc No: NM_001922.4 GI:1015809739によりコードされる);(iv) がん/精巣抗原1B(CTAG1B、NY-ESOとも称され、好ましくはGenbank Acc No: NM_001327.2 GI:215272337によりコードされる);ならびに(v) (i)~(iv)のいずれかの任意の組み合わせ、からなる一群から選択される、実施形態1~6のいずれか1つに記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス。
【0066】
8. 前記腫瘍抗原、断片もしくはそのバリアントが、(i) HPV E6ポリペプチド、好ましくはハイリスクHPVのE6ポリペプチド、たとえばHPV16 E6(Genbank Acc No: NP_041325.1 GI:9627104);(ii) HPV E7ポリペプチド、好ましくはハイリスクHPVのE7ポリペプチド、たとえばHPV16 E7(Genbank Acc No: NP_041326.1 GI:9627105);(iii) TRP2、好ましくはヒトTRP2(好ましくはGenbank Acc No: NM_001922.4 GI:1015809739によりコードされる);(iv) がん/精巣抗原1B(CTAG1B、NY-ESOとも称され、好ましくはGenbank Acc No: NM_001327.2 GI:215272337によりコードされる);ならびに(v) (i)~(iv)のいずれかの任意の組み合わせ、のうち少なくとも1つを含み、好ましくはそれらからなる、実施形態1~7のいずれか1つに記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス。
【0067】
9. 前記の発現可能なポリヌクレオチドが、(i)腫瘍抗原、(ii)腫瘍抗原の断片、および(iii) (i)または(ii)のバリアントのうち少なくとももう1つをコードする、発現可能なポリヌクレオチドを含有する、実施形態1~8のいずれか1つに記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス。
【0068】
10. 前記の発現可能なポリヌクレオチドが、前記組換えウイルスのゲノムに含まれており、好ましくは麻疹ウイルスのH遺伝子とL遺伝子の間に位置する領域に相当する領域内に含まれる、実施形態1~9のいずれか1つに記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス。
【0069】
11. 免疫応答のアクチベーターをさらにコードする少なくとも1つの発現可能なポリヌクレオチドを追加して含有する、実施形態1~10のいずれか1つに記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス。
【0070】
12. 前記の追加の免疫応答のアクチベーターが、免疫グロブリンまたはそのフラグメントを含み、好ましくは免疫グロブリンまたはそのフラグメントである、実施形態11に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス。
【0071】
13. 前記の追加の免疫応答のアクチベーターが、免疫応答の分泌型可溶性アクチベーター、好ましくはIL-12を含み、好ましくは、免疫応答の分泌型可溶性アクチベーター、好ましくはIL-12である、実施形態11または12に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス。
【0072】
14. 前記の追加の免疫応答のアクチベーターが、分泌型免疫グロブリンまたはそのフラグメントを含み、好ましくは分泌型免疫グロブリンまたはそのフラグメントである、実施形態11~13のいずれか1つに記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス。
【0073】
15. 前記の追加の免疫応答のアクチベーターが、一本鎖抗体もしくはナノボディを含み、好ましくは一本鎖抗体もしくはナノボディである、実施形態11~14のいずれか1つに記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス。
【0074】
16. 前記の追加の免疫応答のアクチベーターが、分泌型可溶性抗PD-1/PD-L1抗体を含み、好ましくは分泌型可溶性抗PD-1/PD-L1抗体である、実施形態11~15のいずれか1つに記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス。
【0075】
17. 前記組換えウイルスが、組換え麻疹ウイルス属であり、好ましくは組換え麻疹ウイルス(MV)である、実施形態1~16のいずれか1つに記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス。
【0076】
18. 前記組換えMVがMV株Edmonston AもしくはB、好ましくはBに由来し、より好ましくはMVワクチン株Schwarz/Moratenに由来する、実施形態1~17のいずれか1つに記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス。
【0077】
19. 前記の少なくとも1つの発現可能なポリヌクレオチドが、パラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチドに含まれている、実施形態1~18のいずれか1つに記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス。
【0078】
20. 前記のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチドが、配列番号3~5のいずれか1つの核酸配列を含み、好ましくはその核酸配列からなる、実施形態1~19のいずれか1つに記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス。
【0079】
21. 実施形態1~20のいずれか1つに記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチド。
【0080】
22. 前記ポリヌクレオチドが、配列番号3~5のいずれか1つのヌクレオチド配列を含み、好ましくはそのヌクレオチド配列からなる、実施形態21に記載のポリヌクレオチド。
【0081】
23. 実施形態1~20のいずれか1つに記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス、および/または実施形態21または22に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチドを含有する宿主細胞。
【0082】
24. 前記宿主細胞ががん細胞である、実施形態23に記載の宿主細胞。
【0083】
25. (a) (i) 実施形態1~20のいずれか1つに記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス;
(ii) (i)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチド、好ましくは、実施形態21または22に記載のポリヌクレオチド;
(iii) (i)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス、および/または(ii)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチドを含有する宿主細胞;好ましくは実施形態23または24に記載の宿主細胞;または
(iv) (i)~(iii)のいずれかの組み合わせ;ならびに
(b) 少なくとも1つの薬理学上許容される添加剤
を含む薬剤。
【0084】
26. がん細胞および免疫細胞を含むサンプルにおいて、抗腫瘍活性を有する免疫細胞を活性化するための方法であって、
(a) (i) 実施形態1~20のいずれか1つに記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス;(ii) (i)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチド、好ましくは、実施形態21または22に記載のポリヌクレオチド;
(iii) (i)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス、および/または(ii)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチドを含有する宿主細胞;好ましくは実施形態23または24に記載の宿主細胞;または
(iv) (i)~(iii)のいずれかの組み合わせ;
と、がん細胞および免疫細胞を含む前記サンプルを接触させること;ならびに、それによって
(b) 前記サンプル中に含まれる抗腫瘍活性を有する免疫細胞を活性化すること;
を含む、前記方法。
【0085】
27. 前記方法がin vitro法である、実施形態26に記載の方法。
【0086】
28. がんに罹っている被験体において、がんを治療するための方法であって、
(a) (i) 実施形態1~20のいずれか1つに記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス;(ii) (i)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチド、好ましくは、実施形態21または22に記載のポリヌクレオチド;
(iii) (i)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス、および/または(ii)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチドを含有する宿主細胞;好ましくは実施形態23または24に記載の宿主細胞;または
(iv) (i)~(iii)のいずれかの組み合わせ;
と、前記被験体を接触させること;ならびに、それによって
(b) がんに罹っている被験体においてがんを治療すること;
を含む、前記方法。
【0087】
29. 前記がんが、固形がん、転移がん、またはその再発である、実施形態28に記載の方法。
【0088】
30. がんの治療が、腫瘍量を減少させることである、実施形態28または29に記載の方法。
【0089】
31. 前記のがんが、悪性黒色腫、頭頚部がん、肝細胞がん、膵がん、前立腺がん、腎細胞がん、胃がん、大腸がん、リンパ腫、または白血病である、実施形態28~30のいずれか1つに記載の方法。
【0090】
32. 前記方法が、さらに、実施形態26に記載の、サンプルにおいて抗腫瘍活性を有する免疫細胞を活性化するための方法のステップ、ならびに抗腫瘍活性を有する前記の活性化された免疫細胞を前記の被験体に投与する追加のステップを含む、実施形態28~30のいずれか1つに記載の方法。
【0091】
33. 実施形態26または27に記載の方法によって得られた、または得ることができる、抗腫瘍活性を有する活性化された免疫細胞の標品。
【0092】
34. 薬剤を製造するための、好ましくは、不適切な細胞増殖を治療するための薬剤を製造するための、
(i) 実施形態1~20のいずれか1つに記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス;
(ii) (i)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチド、好ましくは、実施形態21または22に記載のポリヌクレオチド;
(iii) (i)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス、および/または(ii)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチドを含有する宿主細胞;好ましくは実施形態23または24に記載の宿主細胞;または
(iv) (i)~(iii)のいずれかの組み合わせ;
の使用。
【0093】
35. 医療で用いるための、実施形態1~20のいずれか1つに記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス、および/または実施形態21または22に記載のポリヌクレオチド、および/または実施形態23または24に記載の宿主細胞。
【0094】
36. 不適切な細胞増殖の治療に用いるための、実施形態1~20のいずれか1つに記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス、および/または実施形態21または22に記載のポリヌクレオチド、および/または実施形態23または24に記載の宿主細胞。
【0095】
37. 不適切な細胞増殖の治療ががん治療である、実施形態36の使用のためのパラミクソウイルス科の組換えウイルス。
【0096】
38. (i) 実施形態1~20のいずれか1つに記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス;(ii) (i)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチド、好ましくは、実施形態21または22に記載のポリヌクレオチド;
(iii) (i)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルス、および/または(ii)に記載のパラミクソウイルス科の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチドを含有する宿主細胞;好ましくは実施形態23または24に記載の宿主細胞;または
(iv) (i)~(iii)のいずれかの組み合わせ;
を容器内に収納して含む、キット。
【0097】
39. がんに罹っている被験体を治療するために、(i)腫瘍抗原またはその断片もしくはそのバリアントをコードする発現可能なポリヌクレオチドを含有するパラミクソウイルス科の組換えウイルス、(ii) (i)に記載の組換えウイルスをコードするポリヌクレオチド、および/または(iii) (i)に記載の組換えウイルスおよび/または(ii)に記載のポリヌクレオチドを含有する宿主細胞を選択するため方法であって、
a) 前記被験体のがんサンプルにおいて、がん細胞により発現される少なくとも1つの腫瘍抗原を検出すること;ならびに
b) ステップa)の測定に基づいて、腫瘍抗原、またはその断片もしくはそのバリアントをコードする発現可能なポリヌクレオチドを含有する、組換えウイルス、ポリヌクレオチド、および/または宿主細胞を選択すること
を含む、前記方法。
【0098】
40. 実施形態39に記載の方法であって、ステップb)で選択された組換えウイルス、ポリヌクレオチド、および/または宿主細胞に含まれる発現可能なポリヌクレオチドによってコードされる、腫瘍抗原またはその断片もしくはそのバリアントが、ステップa)で検出された腫瘍抗原と、少なくとも1つのエピトープを共有している、前記方法。
【0099】
41. 実施形態39または40に記載の方法であって、ステップb)で選択された組換えウイルス、ポリヌクレオチド、および/または宿主細胞に含まれる発現可能なポリヌクレオチドによってコードされる、腫瘍抗原またはその断片もしくはそのバリアントが、ステップa)で検出された腫瘍抗原であるか、またはそれに由来する、前記方法。
【0100】
42. 実施形態39~41のいずれか1つに記載の方法であって、
(i)の組換えウイルスが、実施形態1~20のいずれか1つに記載の組換えウイルスであり;(ii)のポリヌクレオチドが、実施形態21または22に記載のポリヌクレオチドである;および/または
(iii)の宿主細胞が、実施形態23または24に記載の宿主細胞である、
前記方法。
【0101】
本明細書に引用されたすべての参考文献は、その公開内容の全体、ならびに本明細書において特に言及された公開内容について、参考として本明細書に編入される。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【
図1】A)組換えMVゲノムの概略図。trp2(1667 bp)をコードするcDNAがMeV Schwarzゲノム内で、ヘマグルチニンオープンリーディングフレームの下流の追加の転写ユニット内に挿入された。B)上図:麻疹ウイルス構築物(MV-trp2またはMV(対照))のベロ細胞上での増殖;x軸:時間(時間)、y軸:力価(細胞感染ユニット(ciu)/ml);下図:MV-trp2およびMV(対照)の複製の経過を通じた宿主細胞の生存率を、mock感染した培養物と比較;x軸:時間(時間)、y軸:mock感染培養物に対する相対生存率。C)MV-trp2によるtrp2の発現であるが、MVによらない;上図:trp2特異的プライマーによるRT-PCR;下図:抗trp2抗体による免疫ブロット。
【
図2】実施例2に記載の共培養のIFN-γELISPOT分析;上図:ELISPOTアッセイ後の培養皿の写真;下図:上図に示す培養皿のスポット数。
【
図3】マウスにおけるMV-trp2の腫瘍内注入による抗腫瘍免疫の誘発(実施例3);上図:治療スケジュール;下の左図:MV-trp2もしくは親MVによる感染を受けたMC38-hCD46細胞と共培養した、さまざまな処理群由来のマウス脾細胞を用いたIFN-γELISPOT分析結果の数量化;下の右図:B16細胞と共培養した、さまざまな処理群由来のマウス脾細胞を用いたIFN-γELISPOT分析結果の数量化。
【0103】
以下の実施例は、本発明を単に説明するだけのものとする。それらは、何であれ、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例0104】
腫瘍関連抗原(TAA)trp2をコードする組換え麻疹ウイルスは、既知の方法にしたがって作製された(MV-trp2、
図1A)。
【0105】
ベロ細胞は、感染多重度(MOI)= 3 で、親MV、またはtrp2をコードするMVによって形質導入された。指定された時点で、細胞を採取し、子孫ウイルス粒子を段階希釈によって、タイトレーションアッセイで測定した。腫瘍関連抗原の挿入は、ウイルス複製および細胞毒性効果を損なわない(
図1B、上図)。指定された時点で、細胞の生存率をXTT比色分析によって測定した(
図1B、下図)。mock処理細胞を生存率1.0の基準として用いた。
【0106】
親MV、もしくはtrp2をコードするMVに感染したベロ細胞からRNAを抽出した。親MV、もしくはtrp2をコードするMVに感染した細胞を、タンパク質抽出用のRIPAバッファー中で溶解した。細胞溶解物のSDS-PAGE後、trp2特異的抗血清を用いてウェスタンブロット分析を行った。ローディングコントロールとしてβアクチンを検出した。ポジティブコントロールとしてメラノソーム標品を使用した。感染細胞における腫瘍抗原の発現は、mRNAレベルおよびタンパク質レベルの両者について、確認した(
図1C)。