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特開2023-179625デュアル周波数超音波トランスデューサ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179625
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】デュアル周波数超音波トランスデューサ
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/26 20060101AFI20231212BHJP
   A61B 8/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H04R1/26 330
A61B8/00
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023173264
(22)【出願日】2023-10-04
(62)【分割の表示】P 2020561888の分割
【原出願日】2019-04-24
(31)【優先権主張番号】62/666,519
(32)【優先日】2018-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/051,060
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】399043060
【氏名又は名称】フジフィルム ソノサイト インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】パン、クオフェン
(72)【発明者】
【氏名】イバニツキー、オレク
(72)【発明者】
【氏名】アミニ、ホセイン
(72)【発明者】
【氏名】コラヤ、ロベルト
(57)【要約】      (修正有)
【課題】製造がより容易及び/又はより低コストなデュアル周波数超音波トランスデューサの製造方法を提供する。
【解決手段】デュアル周波数超音波トランスデューサは、圧電層50を有する高周波数(HF)トランスデューサと、HFトランスデューサの背後に配置され、圧電層70を有する低周波数(LF)トランスデューサと、を含む。中間層150がLFトランスデューサとHFトランスデューサとの間に配置され、HF超音波信号を吸収する。LFトランスデューサ上の位置合わせ機能が、HFトランスデューサのHFトランスデューサ素子に対して既知の位置にマークされた基準点に対して位置づけられており、LFトランスデューサのLFトランスデューサ素子がHFトランスデューサ素子と位置合わせされる。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デュアル周波数トランスデューサの製造方法であって、
高周波(HF)トランスデューサ素子、1つ又は複数の整合層、及び高周波フレームを含む圧電材料の第1のシートを有するHFトランスデューサを提供することと、
前記圧電材料の第1のシートの表面を、エポキシ材料を含む支持フレームに固定することと、
前記エポキシ材料に少なくとも1つの位置合わせポストを形成することと、
前記少なくとも1つの位置合わせポストに1つ又は複数の基準点をマークすることと、
前記HFトランスデューサ素子の第1の側に、HF超音波信号を吸収するように構成された中間層を配置することであって、前記中間層は前記少なくとも1つの位置合わせポストと係合するように構成された少なくとも1つのスロットを含む、中間層を配置することと、
前記1つ又は複数の基準点と、低周波(LF)トランスデューサとを位置合わせすることであって、前記LFトランスデューサは、前記LFトランスデューサを前記1つ又は複数の基準点と位置合わせする位置合わせ機能を有する1つ又は複数のタブ、LFトランスデューサ素子を含む圧電材料の第2のシート、及び1つ又は複数の整合層を含み、前記1つ又は複数の整合層を前記中間層に固定する、位置合わせすることと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記位置合わせ機能が、前記LFトランスデューサの前記LFトランスデューサ素子に対して既知の位置にある位置合わせタブ上の穴を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記中間層は、シリコーン粉末をドープしたエポキシで構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記支持フレームの表面が、前記中間層の一部が嵌め込まれる凹部を有するエポキシで充填されている、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記中間層は、前記凹部が形成されているのと同じエポキシで前記凹部に接着されている、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記中間層は、前記HFトランスデューサの圧電材料内の前記HFトランスデューサ素子の領域よりも大きい、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記中間層は、前記HFトランスデューサ素子に対して既知の位置でマークされた少なくとも1つの基準点を含み、前記LFトランスデューサ上の前記位置合わせ機能は、前記中間層上の前記少なくとも1つの基準点と位置合わせされる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記タブの少なくとも1つは、前記HFトランスデューサ上の前記1つ又は複数の基準点の上に配置するための穴を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記LFトランスデューサの前記1つ又は複数のタブは、前記LFトランスデューサの前記1つ又は複数の整合層に組み込まれている、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記圧電材料の第1のシートが、縁部を有する外周をさらに備え、
前記支持フレームが、前記圧電材料の第1のシートの前記外周を取り囲み、前記圧電材料の第1のシートの個々のトランスデューサ素子を画定するカーフ切断部が前記圧電材料の第1のシートの全幅にわたって延在するように、前記外周の前記縁部から間隔を置いて配置されている、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
デュアル周波数トランスデューサの製造方法であって、
複数の高周波(HF)トランスデューサ素子を含む圧電材料のシートを含むHFトランスデューサを提供することと、
HF超音波信号を吸収し、低周波(LF)超音波信号を通過させるように構成されたバッキング材料を提供することと、
前記HFトランスデューサ素子に対して既知の位置で、前記HFトランスデューサ素子の第1の側にマークされた1つ又は複数の基準点を提供することと、
前記LFトランスデューサ素子を前記HFトランスデューサ素子と位置合わせするために、前記1つ又は複数の基準点を用いて位置合わせされる1つ又は複数の位置合わせタブを含む複数のLFトランスデューサ素子を含むLFトランスデューサを提供することと、
を含む、方法。
【請求項12】
前記LFトランスデューサの前記1つ又は複数の位置合わせタブを、前記LFトランスデューサの整合層に組み込むことをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ又は複数の位置合わせタブを、前記整合層を形成するエポキシ層内に固定することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ又は複数の位置合わせタブの穴を、前記1つ又は複数の基準点の上に配置することにより、前記LFトランスデューサ素子を前記HFトランスデューサ素子に対して位置合わせすることをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2018年5月3日に出願された米国仮特許出願第62/666,519号及び2018年7月31日に出願された米国特許出願第16/051,060号に関連し、それらの利益を主張し、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦支援の研究に関する声明
本願の主題は、米国国立衛生研究所(NIH)によって与えられた認可番号5100220-連邦報告及び認可番号RO1CA189479の下で政府支援によってなされた。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
開示される技術は超音波トランスデューサに関し、特に、デュアル周波数超音波トランスデューサに関する。
【背景技術】
【0004】
従来の超音波イメージングでは、超音波音響信号が関心領域に向けられ、対応する反射エコー信号が検出される。エコー信号の振幅、位相シフト、ドップラーシフト、パワー等のようなエコー信号の特性は、分析され、フローの画像又はフローの表現を生成するために使用されるピクセルデータに定量化される。従来の単一トランスデューサ超音波イメージングでは、受信された超音波エコー信号が送信された超音波信号と同じ周波数範囲にある。
【0005】
超音波イメージングを実行するための別のアプローチは、超音波音響信号を関心領域に1つの周波数で印加し、送信された超音波信号の1つ又は複数の高調波などの別の周波数で受信されたエコー信号を捕捉し、分析することである。一般的に、高調波は、送信された信号の3~5倍の周波数を有する。高調波イメージングの1つの特定の用途は、造影剤を用いた組織のイメージングである。造影剤は一般に、特定の送信された超音波周波数で共振するような大きさにされた流体又は脂質のカプセル化されたマイクロバブルである。マイクロバブルの共振周波数で体内で超音波に暴露すると、気泡が破裂し、印加された超音波よりもはるかに高い周波数を有する非線形超音波エコーが生成される。例えば、非線形マイクロバブルは1~6MHzで共振するが、10~30MHzの範囲のエコー信号を生成するように設計することができる。高周波エコー信号は、臨床的又は前臨床的設定において腫瘍を取り囲む微小血管系のような組織構造の詳細な画像が生成され、観察されることを可能にする。
【0006】
デュアル周波数イメージングを実行する最もありふれた方法は、共焦点の低周波トランスデューサ素子及び高周波トランスデューサ素子を有し、機械的に走査される単一素子トランスデューサによるものである。このようなトランスデューサは良好に動作するが、電子的に操縦することができるトランスデューサアレイにより、より高速な走査を実行することができる。このようなトランスデューサは一般に、互いに位置合わせされた低周波トランスデューサアレイ及び高周波トランスデューサアレイを有する。デュアル周波数トランスデューサの1つの問題は、低周波及び高周波アレイの位置合わせである。30MHzの高周波位相配列では、素子サイズ(例えば、1/2A以下)は約25ミクロンである。50MHzでは、素子サイズは約15ミクロンである。比較のために、典型的なヒトの毛髪は、直径が約80ミクロンである。アレイを位置合わせするために必要な手順はしばしば、湿ったベンチ上で高周波トランスデューサ及び低周波トランスデューサの位置に対して微調整を行い、次いで、最良の整合が見いだされたときにそれらを一緒に接着することを必要とする。これは、時間と費用の両方がかかる。本明細書で説明される技術は、製造がより容易及び/又はより低コストである、改良されたデュアル周波数トランスデューサに関する。
【発明の概要】
【0007】
デュアル周波数超音波トランスデューサは、高周波数トランスデューサと、高周波数トランスデューサの後方に配置される低周波数トランスデューサとを含む。低周波トランスデューサ上の位置合わせ機能は、高周波トランスデューサに対して位置づけられた既知の位置にマークされた基準点に対して位置づけられる。一実施形態では、1つ又は複数の基準点が、高周波トランスデューサと低周波トランスデューサとの間に位置づけられた中間層上にマークされる。中間層はより低い周波数の超音波信号を通過させながら、高周波数の超音波信号を吸収するように構成される。
【0008】
一実施形態では、高周波トランスデューサは、中間層上の協調スロット又はキー溝に適合する位置合わせポストを含む支持フレームを含み、中間層を支持フレーム及び高周波トランスデューサ素子と位置合わせする。中間層上の1つ又は複数の基準点は、高周波トランスデューサ素子を基準とする位置に配置され、低周波トランスデューサを高周波トランスデューサ素子に位置合わせする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】開示された技術の一部の実施形態による高周波(HF)トランスデューサの圧電層の上面図である。
図1B】開示された技術の一部の実施形態による低周波(LF)トランスデューサの圧電層の上面図である。
図2】開示された技術の一部の実施形態による高周波トランスデューサアレイの導電性フレーム及び圧電層の部分等角図である。
図3】開示された技術の一部の実施形態によるフレームの背面に形成された位置合わせ機能を有する圧電層、フレックス回路、及び導電性フレームの等角図である。
図4】開示された技術の一部の実施形態による低周波トランスデューサと高周波トランスデューサとの間に配置され得る中間層の等角図である。
図5】中間層が高周波トランスデューサ上の所定の位置にあるデュアル周波数トランスデューサの断面図である。
図6図6A図6Dは、開示された技術の実施形態による高周波トランスデューサと位置合わせされた中間層の上面図、側面図、及び端面図である。
図7A】開示された技術の一部の実施形態による低周波トランスデューサの圧電層の等角図である。
図7B】開示された技術の実施形態による低周波トランスデューサ素子ダイシングパターンの一実施形態を示す図である。
図8】開示された技術の一部の実施形態による低周波トランスデューサの等角図である。
図9図9A図9Cは、開示された技術の一部の実施形態による低周波トランスデューサの端面図、上面図、及び側面図である。
図10A】及び
図10B】開示された技術の一実施形態による、低周波トランスデューサ素子及び共通トランスデューサ接地電極のための電極へのフレックス回路内の接地トレースと信号トレースとの間の接続がどのように行われるかを示す図である。
図11】開示された技術の一部の実施形態による高周波トランスデューサ素子及び低周波トランスデューサ素子の位置合わせを示すデュアル周波数トランスデューサの断面図である。
図12】開示された技術の実施形態によるデュアル周波数トランスデューサのためのハウジングを示す図である。
図13図13A図13Hは、開示された技術の実施形態による低周波数トランスデューサからの多数のビームプロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図に示され、以下に説明される技術は、デュアル周波数超音波トランスデューサに関する。開示された技術の作り方及び使用方法を説明する目的で、デュアル周波数トランスデューサの構成要素が示されている。図は必ずしも一定の縮尺で描かれていないことが理解されるであろう。
【0011】
図1は、開示された技術の一実施形態による高周波超音波トランスデューサのための圧電層50の上面図である。一実施形態では、層50は、PZT、単結晶圧電材料又は他の公知の圧電材料のシート54を囲む外側フレーム52を有する。一実施形態では、フレーム52は、圧電材料のシート54の外形寸法よりもわずかに大きい中心切欠き領域を有する、予め機械加工された非導電性アルミナセラミックである。他の実施形態では、フレーム52は、モリブデン又はグラファイトなどの導電性材料で作ることができる。フレーム52は、製造、取扱い又は使用中に圧電材料が割れないように、圧電材料と同様の熱膨張係数を有することが好ましい。EPO-TEK 301エポキシのような接着剤56でフレームと圧電材料との間の隙間が埋められる。圧電材料54は多数(例えば、128個、256個、又はそれ以下、又はそれ以上)の圧電素子(別個には図示せず)を生成するために、パターニングレーザ又はダイシングソーでダイシングされる。圧電材料のシート54をフレーム52で囲むことによって、個々のトランスデューサ素子を画定するカーフ切断部は、圧電材料のシートの全幅にわたって延在することができる。
【0012】
フレーム52が非導電性材料で作られる場合、フレームの片側又は両側の切欠き領域又はノッチ60は導電性エポキシで充填されるか、又はフレームの前面からフレームの後面への電気経路を提供するために、多数の導電性ビアを含むことができる。周囲フレームを有する超音波トランスデューサの構造に関するさらなる詳細は、本出願人が所有する、2018年5月30日に出願された米国特許出願第151993,156号、及び2017年12月29日に出願された米国仮出願第62/612,169号に見出すことができ、これらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0013】
図1Bは、一実施形態では図1Aに示される高周波トランスデューサの圧電層と同様に構成される、低周波超音波トランスデューサの圧電層70を示す。アルミナフレーム72が、圧電材料のシート74を取り囲んでいる。フレーム72は、開口部の縁部と圧電シート74の縁部との間に隙間を形成するような大きさの中央開口部を有する。隙間は、非導電性エポキシ76で充填される。低周波アレイは、高周波トランスデューサよりも少ないトランスデューサ素子を有する。一実施形態では、低周波トランスデューサは32個の個別にアドレス可能なトランスデューサ素子を有するが、より少ない又はより多くの素子を有することができる。フレーム72の両側の一対の切欠き領域又はノッチ80は導電性エポキシで充填することができ、又はフレームを通り抜ける導電性のビアを含み、低周波アレイの前面からフレームの後面への電気経路を提供することができる。
【0014】
図2は、高周波トランスデューサの圧電層50の後面に固定される得る導電性支持フレーム100の等角図である。フレーム100は、各高周波トランスデューサ素子上の対応する電極に電気的に接続される信号トレースを有する1つ又は複数のフレックス回路(図示せず)を支持する。さらに、支持フレーム100は、トランスデューサ素子の後面のための電磁シールドを提供する。圧電層50の前面上の共通接地電極は、導電性支持フレーム100を含む導電経路を介して、フレックス回路内の接地面に接続される。一実施形態では、支持フレーム100は、導電性エポキシで圧電層50に固定される。また、図2には、圧電層50の前(例えば、前方)に配置された1つ又は複数の整合層及びレンズが示されている。
【0015】
図3は、支持フレーム100に取り付けられた1つのフレックス回路104を示す。一部の実施形態では、高周波トランスデューサは、偶数番号のトランスデューサ素子に電気的に結合された1つのフレックス回路の信号トレースと、奇数番号のトランスデューサ素子に電気的に接続された他のフレックス回路の信号トレースとを有する2つのフレックス回路を含む。圧電層の後面上の個々のトランスデューサ素子から、フレックス回路内の金属信号トレースへの電気的接続がなされる。トランスデューサ素子とフレックス回路内の金属信号トレースとの間の接続は、米国特許公開第2017/0144192号又は米国特許第8,316,518号に記載されている技術を使用して行うことができ、これらは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。接続が行われた後、支持フレームの開放された背面側に、EPO-TEK 301のようなエポキシ材料110が充填される。一実施形態では、フレーム内のエポキシ110の高さは支持フレーム100の縁よりも上方に延在する。図3に示すように、エポキシ110は、一対の位置合わせポスト112a、112bと、高周波トランスデューサ素子の背後にある凹部領域114とを形成するように、成形又はレーザ加工される。一実施形態では、凹部領域114の深さは約4.2mmである。位置合わせポスト112a、112bは後述するように、高周波トランスデューサ上に中間層を位置合わせするように構成される。一対の基準点120a、120bは、高周波トランスデューサ素子から既知の距離のところで、各位置合わせポスト上にレーザでマークされている。基準点120a、120bは基準としての役割を果たし、その結果、デュアル周波数トランスデューサの他の構成要素を、高周波トランスデューサ素子に対して既知の位置に配置することができる。
【0016】
図4は、高周波トランスデューサの背後に配置される中間層150の一実施形態を示す。一実施形態では、中間層150はシリコーン粉末ドープEPO-TEK 301エポキシで構成される。シリコーン粉末のサイズは、高周波(HF)超音波を高度に減衰させ、低周波(LF)超音波を通過させるようなナノメートル範囲である。中間層は65dBのような特定のレベルまで高周波超音波を吸収するが、低周波トランスデューサから送信される低周波信号を通過させるか、又は低周波トランスデューサによって受信されるような大きさにされる。中間層150の頂部は、高周波トランスデューサのトランスデューサ素子に対して既知の位置に中間層150を位置合わせするために、フレーム100の裏側の位置合わせポスト112a、112bと協調する一対のスロット又はキー溝152a、152bを含む。一実施形態では、中間層150は、フレームの裏側を満たす同じエポキシを用いてフレーム100に固定され、接合ラインにおける音響的不連続を回避する。
【0017】
中間層がフレーム100に固定されると、追加の基準154a、154bは、支持フレーム上に(すなわち、支持フレームの裏側の充填エポキシ上に)マークされた基準120a、120bから測定されるように中間層上に配置することができる。
【0018】
図5は、中間層150が支持フレーム100の背面に固定された高周波トランスデューサの断面を示す。図示のように、高周波トランスデューサは、特定の深さで高周波超音波信号を集束するように設計されたレンズ130を備える。典型的なレンズ材料には、ポリメチルペンテン(商品名TPX)、架橋ポリスチレン(商品名Rexolite)又はポリベンズイミダゾン(商品名Celezole)が含まれる。しかしながら、他の非減衰プラスチック材料を使用することもできる。レンズの後ろには、圧電層50のインピーダンスをレンズ130のインピーダンスに整合させる1つ又は複数の4分の1波長整合層132がある。前記1つ又は複数の整合層は一般に、エポキシに粒子を添加してその音響インピーダンスを調整することによって形成される。金属(例えば、金又は金+クロム)共通接地電極が、圧電層50の前面に堆積され、PZT材料を取り囲むフレーム52内のスロット又はビアを介して導電性支持フレーム100に電気的に結合される。圧電層の後面又は近位面上の付与された金属被膜は、個々のトランスデューサ素子からフレックス回路内の信号トレースまでの導電経路となる。エポキシの層110はトランスデューサ素子の近位側を覆い、支持フレームの後側に満たされる。一実施形態では、高周波トランスデューサアレイの背後のエポキシ内に形成された凹部114は、中間層が高周波トランスデューサ素子の端部にわたって延在するように、中間層がトランスデューサ素子のサイズよりもトランスデューサの仰角寸法及び方位角寸法において大きいサイズにされる。
【0019】
図6A図6Dは、中間層150の上面にマークされている対基準点154a、154bを示している。基準点154a、154bは、支持フレーム内のエポキシ上にマークされた基準点112a、112bに対して測定される。基準点154a、154bは、中間層が高周波トランスデューサの後ろの支持フレームに固定されると、中間層上にマークされる。図示の実施形態では、基準点112a、112b、154a、154bはレーザで作られた十字形である。
【0020】
図7Aは、低周波トランスデューサのための圧電層70の一実施形態を示す。図示の実施形態では、圧電層70はPZT又は他の圧電材料のシートを囲むアルミナフレームも含む。一実施形態では、PZTのシートが図7Bに最もよく示されるように、1-3複合材料として、多数の列の三角柱状体にダイシングされる。図示の例では、三角形素子74の各列72a、72b、72cは、単一のトランスデューサ素子として扱われる。図7Bでは、説明のために、12列のトランスデューサ素子のみが示されている。一実施形態では、低周波トランスデューサは、32列の三角形素子を含む。しかしながら、低周波トランスデューサは、必要に応じて、より少ない数又はより多くの数の列を含むことができる。さらに、低周波トランスデューサ内の各トランスデューサ素子は、小さな正方形又は長方形形状の素子などの他の形状を有してもよい。
【0021】
図8は、開示された技術の一実施形態による低周波トランスデューサの等角図である。低周波トランスデューサは、圧電層70と、圧電層70の前(例えば、前方)に配置された1つ又は複数の整合層160と、トランスデューサ素子の後方に配置されたバッキング層170とを含む。フレックス回路180は、個々の低周波トランスデューサ素子に電気的に接続される信号トレースを含む。低周波トランスデューサはまた、一対の位置合わせタブ162a、162bを含む。一実施形態では、位置合わせタブは、低周波トランスデューサ素子の動作を妨害しないように低周波トランスデューサ素子の位置から離れた位置でエポキシ整合層に挿入されたカプトン(登録商標)シートである。位置合わせタブのための他の材料、例えばアルミナを使用することもできる。穴164a、164bは、低周波トランスデューサ素子から既知の距離で位置合わせタブに配置される。穴は高周波トランスデューサ素子に対して低周波トランスデューサ素子を正確に位置合わせするために、高周波トランスデューサ上の基準点の上に配置される。
【0022】
一実施形態では、位置合わせタブ162a、162bの穴164a、164bは中間層上の基準点の上に配置される。位置合わせタブの長さが十分であれば、高周波トランスデューサに対して低周波トランスデューサを位置合わせするために、位置合わせタブの穴を支持フレーム上にマークされた基準点の上に配置することができる。
【0023】
図9Aは、開示された技術の一実施形態による低周波トランスデューサの断面図である。トランスデューサは、圧電層70と、圧電層の前方に配置された2つの整合層160とを含む。整合層は、低周波圧電素子のインピーダンスを、低周波トランスデューサが固定される中間層のインピーダンスに整合させる。バッキング層170は、低周波トランスデューサ素子の後ろに配置される。図9Cに示すように、位置合わせタブ162a、162bは、低周波トランスデューサ素子の前方の整合層の一部である。位置合わせタブの穴164a、164bは、図9Bに見られるように、低トランスデューサ素子から既知の距離に位置づけられる。フレックス回路180は、トランスデューサ素子への接続がなされるバッキング層の下から伸びている。
【0024】
図10A及び図10Bは、フレックス回路の信号トレース及び接地トレースを、低周波数アレイの対応する電極に接続する1つの方法を示す。図10Aに示されるように、フレックス回路180は、多数の信号トレース182及び接地トレース184を含む。接地トレース184は、導電性エポキシ186がフレーム70のノッチ80内の導電性エポキシ188又はフレーム内のビアに接合された状態で、低周波アレイの前面の接地電極に電気的に接続される。図10Bに示すように、信号トレース182の露出した端部を、導電性エポキシでトランスデューサ素子に接着固定することができる。低周波トランスデューサのトランスデューサ素子は比較的大きいので、それらはフレックス回路180内の信号トレース182と容易に位置合わせすることができる。
【0025】
図11は、開示された技術の一実施形態によるデュアル周波数トランスデューサの断面図である。低周波トランスデューサ素子71は、位置合わせタブ162a、162b上の穴を中間層上の基準点上に配置することによって、高周波トランスデューサ素子51と直接位置合わせされる。位置合わせタブの穴は低周波トランスデューサ素子に対して既知の位置に配置され、基準点は高周波トランスデューサ素子に対して既知の位置に正確に配置されている。従って、中間層上の基準点の上に穴を配置することにより、湿ったベンチ上でトランスデューサを位置合わせする必要なく、高周波トランスデューサ素子に対して低周波トランスデューサ素子を正確に位置決めする。
【0026】
図12は、デュアル周波数トランスデューサアレイを包囲するトランスデューサハウジング200の一実施形態を示す。図示の実施形態では、ハウジングは、低周波トランスデューサと高周波トランスデューサを接続する別々のケーブル202、204を含む。一実施形態では、低周波トランスデューサを単独で使用して、低周波超音波(例えば、4~10MHzの周波数範囲)で組織を撮像することができる。同様に、高周波トランスデューサは高周波超音波(例えば、20~50MHzの周波数範囲)で組織を撮像するために使用することができる。あるいは、両方のトランスデューサを使用して、関心領域が低周波数トランスデューサからの信号と非調和であり、励起周波数の高調波での超音波エコー信号が高周波数トランスデューサで検出される高調波又は造影剤撮像などの撮像を行うことができる。
【0027】
図13A~13Hは、平面波撮像モードで動作する低周波トランスデューサの一部のサンプルビームプロットである。一実施形態では、32素子の低周波トランスデューサが256素子の高周波トランスデューサの後ろに配置されている。1:3ミニ変圧器を用いた電気整合は、低周波トランスデューサ素子のインピーダンスを約500オームから約47.2 +1-2.6オームまで、マイナス60.1 +1-5.5度の位相でもたらす。レンズから1.7mmで測定した単一低周波素子ピーク-ピーク圧力は、素子を横切る約+5°./.0の変動で、6~140V範囲の整合で、整合なしの0.77kPaNから1.51kPa/Vに増加した。平面波イメージングにおいて、圧力は単一素子の場合より3倍高い。6dBビーム幅2.7mmで5.5mmの仰角面で集束が観察される(図13A、130)。焦点を過ぎると、波面が発散することにつれて圧力が低下する(図13E)。方位角方向では、ビームは比較的均一であり(アポディゼーションなし)、エッジ上の最大値に対して2dBの変動がある(図13B、13D)。ビームステアリングは、平面複合化を可能にする+1-18度の角度(図13F~13H)に対して達成される。
【0028】
上記から、本発明の特定の実施形態が例示の目的で記載されたが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更がなされてもよいことが理解されるのであろう。したがって、本発明は、添付の請求項によって限定されること以外は限定されない。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2023-11-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デュアル周波数トランスデューサの製造方法であって、
高周波(HF)トランスデューサ素子、1つ又は複数の整合層、及び高周波フレームを含む圧電材料の第1のシートを有するHFトランスデューサを提供することと、
前記圧電材料の第1のシートの表面を、エポキシ材料を含む支持フレームに固定することと、
前記エポキシ材料に少なくとも1つの位置合わせポストを形成することと、
前記少なくとも1つの位置合わせポストに1つ又は複数の基準点をマークすることと、
前記HFトランスデューサ素子の第1の側に、HF超音波信号を吸収するように構成された中間層を配置することであって、前記中間層は前記少なくとも1つの位置合わせポストと係合するように構成された少なくとも1つのスロットを含む、中間層を配置することと、
前記1つ又は複数の基準点と、低周波(LF)トランスデューサとを位置合わせすることであって、前記LFトランスデューサは、前記LFトランスデューサを前記1つ又は複数の基準点と位置合わせする位置合わせ機能を有する1つ又は複数のタブ、LFトランスデューサ素子を含む圧電材料の第2のシート、及び1つ又は複数の整合層を含み、前記1つ又は複数の整合層を前記中間層に固定する、位置合わせすることと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記位置合わせ機能が、前記LFトランスデューサの前記LFトランスデューサ素子に対して既知の位置にある位置合わせタブ上の穴を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記中間層は、シリコーン粉末をドープしたエポキシで構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記支持フレームの表面が、前記中間層の一部が嵌め込まれる凹部を有するエポキシで充填されている、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記中間層は、前記凹部が形成されているのと同じエポキシで前記凹部に接着されている、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記中間層は、前記HFトランスデューサの圧電材料内の前記HFトランスデューサ素子の領域よりも大きい、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記中間層は、前記HFトランスデューサ素子に対して既知の位置でマークされた少なくとも1つの基準点を含み、前記LFトランスデューサ上の前記位置合わせ機能は、前記中間層上の前記少なくとも1つの基準点と位置合わせされる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記タブの少なくとも1つは、前記HFトランスデューサ上の前記1つ又は複数の基準点の上に配置するための穴を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記LFトランスデューサの前記1つ又は複数のタブは、前記LFトランスデューサの前記1つ又は複数の整合層に組み込まれている、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記圧電材料の第1のシートが、縁部を有する外周をさらに備え、
前記支持フレームが、前記圧電材料の第1のシートの前記外周を取り囲み、前記圧電材料の第1のシートの個々のトランスデューサ素子を画定するカーフ切断部が前記圧電材料の第1のシートの全幅にわたって延在するように、前記外周の前記縁部から間隔を置いて配置されている、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
デュアル周波数トランスデューサの製造方法であって、
複数の高周波(HF)トランスデューサ素子を含む圧電材料のシートを含むHFトランスデューサを提供することと、
HF超音波信号を吸収し、低周波(LF)超音波信号を通過させるように構成されたバッキング材料を提供することと、
前記HFトランスデューサ素子に対して既知の位置で、前記HFトランスデューサ素子の第1の側にマークされた1つ又は複数の基準点を提供することと、
前記LFトランスデューサ素子を前記HFトランスデューサ素子と位置合わせするために、前記1つ又は複数の基準点を用いて位置合わせされる1つ又は複数の位置合わせタブを含む複数のLFトランスデューサ素子を含むLFトランスデューサを提供することと、
を含む、方法。
【請求項12】
前記LFトランスデューサの前記1つ又は複数の位置合わせタブを、前記LFトランスデューサの整合層に組み込むことをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ又は複数の位置合わせタブを、前記整合層を形成するエポキシ層内に挿入することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ又は複数の位置合わせタブの穴を、前記1つ又は複数の基準点の上に配置することにより、前記LFトランスデューサ素子を前記HFトランスデューサ素子に対して位置合わせすることをさらに含む、請求項13に記載の方法。