(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179633
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】外用製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/506 20060101AFI20231212BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20231212BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20231212BHJP
A61K 31/16 20060101ALI20231212BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20231212BHJP
A61K 8/42 20060101ALI20231212BHJP
A61K 8/67 20060101ALI20231212BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20231212BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20231212BHJP
A61Q 7/00 20060101ALI20231212BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20231212BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231212BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20231212BHJP
A61J 1/10 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
A61K31/506
A61K9/08
A61K47/10
A61K31/16
A61K8/49
A61K8/42
A61K8/67
A61K8/34
A61K8/44
A61Q7/00
A61P17/14
A61P43/00 121
A61K47/22
A61J1/10 331Z
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023174390
(22)【出願日】2023-10-06
(62)【分割の表示】P 2019128459の分割
【原出願日】2019-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】山口 智史
(57)【要約】
【課題】3~10w/v%のミノキシジル、パントテン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩、および、アルコールを含有する外用製剤において、析出が抑制された外用製剤を提供すること。
【解決手段】容器と、該容器に収容された外用組成物とを備える、外用製剤であって、前記外用組成物は、3~10w/v%のミノキシジル、パントテン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩、および、アルコールを含有し、前記容器のうち前記外用組成物と接触する部分の少なくとも一部がポリエステルから構成される、外用製剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、該容器に収容された外用組成物とを備える、外用製剤であって、
前記外用組成物は、3~10w/v%のミノキシジル、パントテン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩、ピリドキシン塩酸塩、トコフェロール酢酸エステル、メントール、および、アルコールを含有し、
パントテン酸の誘導体が、パンテノール、又はパントテニールエチルエーテルであり、
容器がマルチドーズ型の容器であり、
前記容器のうち前記外用組成物と接触する部分の少なくとも一部がポリエステルから構成される、外用製剤(ただし、外用組成物が、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、パルミチン酸イソプロピル、オレイルアルコール、又はセタノールを含有する場合を除く)。
【請求項2】
容器と、該容器に収容された外用組成物とを備える、外用製剤であって、
前記外用組成物は、3~10w/v%のミノキシジル、パントテン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩、酸またはその塩、および、アルコールを含有し、
パントテン酸の誘導体が、パンテノール、又はパントテニールエチルエーテルであり、
外用組成物のpHが5.0以上7.0以下であり、
容器がマルチドーズ型の容器であり、
前記容器のうち前記外用組成物と接触する部分の少なくとも一部がポリエステルから構成される、外用製剤(ただし、外用組成物が、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、パルミチン酸イソプロピル、オレイルアルコール、又はセタノールを含有する場合を除く)。
【請求項3】
容器と、該容器に収容された外用組成物とを備える、外用製剤であって、
前記外用組成物は、3~10w/v%のミノキシジル、パントテン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩、ピリドキシン塩酸塩、トコフェロール酢酸エステル、メントール、酸またはその塩、および、アルコールを含有し、
パントテン酸の誘導体が、パンテノール、又はパントテニールエチルエーテルであり、
外用組成物のpHが5.0以上7.0以下であり、
容器がマルチドーズ型の容器であり、
前記容器のうち前記外用組成物と接触する部分の少なくとも一部がポリエステルから構成される、外用製剤(ただし、外用組成物が、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、パルミチン酸イソプロピル、オレイルアルコール、又はセタノールを含有する場合を除く)。
【請求項4】
前記外用組成物中のパントテン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩の含有率は0.1~2w/v%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の外用製剤。
【請求項5】
外用組成物が、パンテノール、又はパントテニールエチルエーテルを含有する、請求項1~4のいずれかに記載の外用製剤。
【請求項6】
外用組成物が、0.01~0.1w/v%のピリドキシン塩酸塩、0.01~0.1w/v%のトコフェロール酢酸エステル、0.1~0.5w/v%のメントールを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の外用製剤。
【請求項7】
外用組成物が、酸またはその塩を含み、酸が、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、グルコン酸、リン酸、塩酸、または硫酸である、請求項1~6のいずれか1項に記載の外用製剤。
【請求項8】
外用組成物が、酒石酸またはリン酸を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の外用製剤。
【請求項9】
アルコールが、低級アルコール及び多価アルコールを含み、
低級アルコールが、エタノールであり、
多価アルコールが、1,3-ブチレングリコールを含み、
外用組成物中の低級アルコールの含有率が25~75w/v%であり、
外用組成物中の多価アルコールの含有率が5~25w/v%である、請求項1~8のいずれか1項に記載の外用製剤。
【請求項10】
外用組成物のpHが5.0以上6.5以下である、請求項1~9のいずれか1項に記載の外用製剤。
【請求項11】
容器と、該容器に収容された外用組成物とを備える、外用製剤であって、
前記外用組成物は、4~9w/v%のミノキシジル、パントテン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩、ピリドキシン塩酸塩、トコフェロール酢酸エステル、メントール、酸またはその塩、および、アルコールを含有し、
パントテン酸の誘導体が、パンテノール、又はパントテニールエチルエーテルであり、
酸が、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、グルコン酸、リン酸、塩酸、または硫酸であり、
アルコールが、低級アルコール及び多価アルコールを含み、
低級アルコールが、エタノールであり、
多価アルコールが、1,3-ブチレングリコールを含み、
外用組成物中において、パントテン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩の割合が0.3~1.5w/v%、ピリドキシン塩酸塩の割合が0.01~0.1w/v%、トコフェロール酢酸エステルの割合が0.01~0.1w/v%、メントールの割合が0.1~0.5w/v%、低級アルコールの割合が25~75w/v%、多価アルコールの割合が5~25w/v%であり、
外用組成物のpHが5.0以上7.0以下であり、
容器がマルチドーズ型の容器であり、
前記容器のうち前記外用組成物と接触する部分の少なくとも一部がポリエステルから構成される、外用製剤(ただし、外用組成物が、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、パルミチン酸イソプロピル、オレイルアルコール、又はセタノールを含有する場合を除く)。
【請求項12】
容器と、該容器に収容された外用組成物とを備える、外用製剤であって、
前記外用組成物は、5w/v%のミノキシジル、パンテノール又はパントテニールエチルエーテル、ピリドキシン塩酸塩、トコフェロール酢酸エステル、メントール、酸またはその塩、および、アルコールを含有し、
酸が、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、グルコン酸、リン酸、塩酸、または硫酸であり、
アルコールが、低級アルコール及び多価アルコールを含み、
低級アルコールが、エタノールであり、
多価アルコールが、1,3-ブチレングリコールを含み、
外用組成物中において、パンテノール又はパントテニールエチルエーテルの割合が1w/v%、ピリドキシン塩酸塩の割合が0.05w/v%、トコフェロール酢酸エステルの割合が0.08w/v%、メントールの割合が0.3w/v%、低級アルコールの割合が25~75w/v%、多価アルコールの割合が5~25w/v%であり、
外用組成物のpHが5.5以上6.5以下であり、
容器がマルチドーズ型の容器であり、
前記容器のうち前記外用組成物と接触する部分の少なくとも一部がポリエステルから構成される、外用製剤(ただし、外用組成物が、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、パルミチン酸イソプロピル、オレイルアルコール、又はセタノールを含有する場合を除く)。
【請求項13】
前記外用組成物は、さらに脂溶性抗酸化剤を含有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の外用製剤。
【請求項14】
外用組成物が脂溶性抗酸化剤を含み、外用組成物中の脂溶性抗酸化剤の含有率が0.01~1.0w/v%である、請求項1~13のいずれか1項に記載の外用製剤。
【請求項15】
外用組成物が、ジブチルヒドロキシトルエンを含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の外用製剤。
【請求項16】
前記ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートである、請求項1~15のいずれか1項に記載の外用製剤。
【請求項17】
前記容器は、インジェクションブロー成形容器である、請求項1~16のいずれか1項に記載の外用製剤。
【請求項18】
1日1~5回、0.5~2mLを頭皮に適用するための、請求項1~17のいずれかに記載の外用製剤。
【請求項19】
3~10w/v%のミノキシジル、パントテン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩、ピリドキシン塩酸塩、トコフェロール酢酸エステル、メントール、酸またはその塩、および、アルコールを含有する外用組成物を容器に収容する、外用組成物における析出抑制方法であって、
パントテン酸の誘導体が、パンテノール、又はパントテニールエチルエーテルであり、
外用組成物のpHが5.0以上7.0以下であり、
容器がマルチドーズ型の容器であり、
前記容器のうち前記外用組成物と接触する部分の少なくとも一部がポリエステルから構成される、析出抑制方法(ただし、外用組成物が、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、パルミチン酸イソプロピル、オレイルアルコール、又はセタノールを含有する場合を除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は外用製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ミノキシジル(2,4-ジアミノ-6-ピペリジノピリミジン3-オキシド)は、外用により優れた育毛、養毛効果が得られるため、脱毛症の改善薬として広く使われている。ところが、ミノキシジルは、水やエタノールへの溶解性が悪く、特に、低温で保存すると結晶が析出し易いという問題がある。
【0003】
尚、特許文献1(特開2002-326913号公報)、特許文献2(国際公開第01/76540号)および特許文献3(特開2009-108038号公報)には、ミノキシジル、パントテニールエチルエーテルおよびアルコールを含有する外用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-326913号公報
【特許文献2】国際公開第01/76540号
【特許文献3】特開2009-108038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、3~10w/v%のミノキシジル、パントテン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩、および、アルコールを含有する外用組成物における析出を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、3~10w/v%のミノキシジル、パントテン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩、および、アルコールを含有する外用組成物をポリエステル製容器に収容することにより、意外にも該外用組成物における析出を抑制できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0007】
[1] 容器と、該容器に収容された外用組成物とを備える、外用製剤であって、
前記外用組成物は、3~10w/v%のミノキシジル、パントテン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩、および、アルコールを含有し、
前記容器のうち前記外用組成物と接触する部分の少なくとも一部がポリエステルから構成される、外用製剤。
【0008】
[2] 前記外用組成物中のパントテン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩の含有率は0.1~2w/v%である、[1]に記載の外用製剤。
【0009】
[3] 前記パントテン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩が、パントテニールエチルエーテルである、[1]または[2]に記載の外用製剤。
【0010】
[4] 前記アルコールが低級アルコールを含む、[1]~[3]のいずれかに記載の外用製剤。
【0011】
[5] 前記アルコールが多価アルコールを含む、[1]~[4]のいずれかに記載の外用製剤。
【0012】
[6] さらに、前記外用組成物が酸またはその塩を含有する、[1]~[5]のいずれかに記載の外用製剤。
【0013】
[7] さらに、前記外用組成物が脂溶性抗酸化剤を含有する、[1]~[6]のいずれかに記載の外用製剤。
【0014】
[8] 前記外用組成物のpHが5~8である、[1]~[7]のいずれかに記載の外
用製剤。
【0015】
[9] 前記ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートである、[1]~[8]のいずれかに記載の外用製剤。
【0016】
[10] 前記容器は、インジェクションブロー成形法で成形された容器である、[1]~[9]のいずれかに記載の外用製剤。
【0017】
[11] 3~10w/v%のミノキシジル、パントテン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩、および、アルコールを含有する外用組成物を容器に収容する、該外用組成物における析出抑制方法であって、
前記容器のうち前記外用組成物と接触する部分の少なくとも一部がポリエステルから構成される、析出抑制方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、3~10w/v%のミノキシジル、パントテン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩、および、アルコールを含有する外用組成物を、ポリエステル製の容器に収容することにより、該外用組成物における析出を顕著に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<外用製剤>
本発明の外用製剤は、容器と、該容器に収容された外用組成物とを備える。
【0020】
〔外用組成物〕
外用組成物は、3~10w/v%(質量体積パーセント)のミノキシジル(その塩を含む)、パントテン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩、および、アルコールを含有する。
【0021】
(ミノキシジル)
ミノキシジル(その塩を含む)は公知の化合物であり、その入手方法としては市販品を用いてもよく、例えば、東京化成工業社から購入できる。ミノキシジルの塩としては、塩酸塩、硫酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、乳酸塩等の有機酸塩等を挙げることができる。
【0022】
外用組成物中のミノキシジルの含有率(外用組成物の総容量に対するミノキシジルの含有質量の比率。以下同様。)は、3w/v%以上であり、好ましくは4w/v%以上であり、より好ましくは4.5w/v%以上である。ミノキシジルを含む組成物では、一般にこの範囲で析出が生じやすくなるため、この範囲において本発明の効果が有用である。また、ミノキシジルの含有率は、10w/v%以下であり、好ましくは9w/v%以下であり、より好ましくは7w/v%以下である。この範囲を超えると、析出を十分に抑制しきれなかったり、経時的な組成物の着色が生じたりする可能性があるからである。
【0023】
(パントテン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩)
本明細書において、「パントテン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩」とは、パントテン酸、パントテン酸の誘導体、パントテン酸の塩、および、パントテン酸の誘導体の塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を意味する。
【0024】
パントテン酸は、D(+)-N-(2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブチリル)-β-アラニンとも称される化合物である。パントテン酸の塩としては、パントテン酸ナトリウム、パントテン酸カルシウム等が挙げられる。
【0025】
パントテン酸の誘導体としては、パンテノール、パントテニールエチルエーテル等が挙げられる。外用組成物中のパントテン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩の含有率は、好ましくは0.1~2w/v%であり、より好ましくは0.3~1.5w/v%であり、さらに好ましくは0.5~1.0w/v%である。このような範囲のパントテン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を含有する外用組成物をポリエステル製の容器に収容することで、該外用組成物における析出を顕著に抑制することができる。
【0026】
本発明において、パントテン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩は、該外用組成物における析出(特に、低温下での析出)を抑制する効果の点で、パントテニールエチルエーテルが好ましい。なお、パントテニールエチルエーテルは、(2R)-N-(3-エトキシプロピル)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブタンアミドとも称される化合物である。
【0027】
(アルコール)
外用組成物は、少なくともアルコールを含有する。アルコールは、外用組成物において、例えば、ミノキシジル等の有効成分の溶剤として機能する。アルコールとしては、例えば、低級アルコール、多価アルコールなどが挙げられる。アルコールは低級アルコールを含むことが好ましい。また、アルコールは多価アルコールを含むことが好ましい。
【0028】
低級アルコール(例えば、炭素数5以下のアルコール)としては、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等が挙げられる。これらの中でも、特にエタノールは低級アルコールとして好適に用いることができる。
【0029】
多価アルコールとしては、例えば、グリコール類、グリセリン、ポリエチレングリコール等が挙げられる。グリコール類としては、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等が挙げられる。ポリエチレングリコールとしては、例えば、マクロゴール200、マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール600、マクロゴール1500、マクロゴール4000、マクロゴール6000、マクロゴール8000、マクロゴール10000、マクロゴール20000等が挙げられる。
【0030】
多価アルコールは、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールおよびグリセリンから選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、プロピレングリコールおよび1,3-ブチレングリコールの少なくともいずれかを含むことがより好ましく、プロピレングリコールおよび1,3-ブチレングリコールを含むことがさらに好ましい。
【0031】
外用組成物中のアルコールの含有率は特に制限されないが、ミノキシジルの溶解性が良好であり、また使用感に優れた外用組成物を得るためには、以下の範囲内であることが好ましい。すなわち、外用組成物中のアルコールの含有率は、好ましくは35~85w/v%であり、より好ましくは45~75w/v%であり、さらに好ましくは50~70w/v%である。また、外用組成物中の低級アルコールの含有率は、好ましくは25~70w/v%、より好ましくは35~60w/v%、さらに好ましくは40~55w/v%である。また、外用組成物中の多価アルコールの含有率は、好ましくは1~30w/v%、より好ましくは5~25w/v%、さらに好ましくは8~20w/v%である。
【0032】
(アルコール以外の溶剤)
外用組成物は、医薬外用剤、医薬部外品、化粧品等に用いられる薬学的または生理学的に許容されるアルコール以外の溶剤(水など)を含んでいてもよい。外用組成物は、1種の溶剤を単独で含んでもよく、2種以上の溶剤を含んでいてもよい。外用組成物中の水の含有率は特に制限されないが、ミノキシジルの溶解性が良好であり、また使用感に優れた
外用組成物を得るためには、好ましくは5~40w/v%、より好ましくは10~35w/v%、さらに好ましくは15~30w/v%である。
【0033】
(添加剤)
外用組成物は、医薬外用剤、医薬部外品、化粧品等に用いられる薬学的または生理学的に許容される添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、酸化防止剤、界面活性剤(非イオン界面活性剤など)、安定化剤(高級脂肪酸、高級アルコールなど)、増粘剤、保存剤、pH調整剤、刺激軽減剤、防腐剤、着色剤、香料、溶解補助剤等が挙げられる。尚、外用組成物は、1種または2種以上の添加剤を含み得る。
【0034】
非イオン界面活性剤としては、ポリソルベート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0035】
高級脂肪酸としては、イソステアリン酸、オレイン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などが挙げられる。
【0036】
高級アルコールとしては、ジアセトンアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、ヘキシルデカノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキルアルコール、オクチルドデカノール、ベヘニルアルコール、デシルテトラデカノールなどが挙げられる。
【0037】
増粘剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、ヒアルロン酸塩、コンドロイチン硫酸塩などが挙げられる。
【0038】
外用組成物は、本発明による効果をより顕著に奏するという観点から、さらに、酸またはその塩を含有することが好ましい。酸またはその塩としては、有機酸、無機酸等またはそれらの塩(例えば、ナトリウム塩)が挙げられる。有機酸としては、例えば、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、グルコン酸等が挙げられる。無機酸としては、例えば、リン酸、塩酸、硫酸等が挙げられる。これらの酸またはその塩は、外用組成物において、例えば、pH調整剤として機能し得る。また、トリエタノールアミン;ジイソプロパノールアミン;トリイソプロパノールアミン;アルギニン等の有機塩基、水酸化カリウム;水酸化ナトリウム等の無機塩基をpH調整剤として用いることもできる。
【0039】
(薬理活性成分・生理活性成分)
外用組成物は、ミノキシジルおよびパントテン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩以外の医薬外用剤、医薬部外品、化粧品等に用いられる薬理活性成分または生理活性成分を含んでいてもよい。
このような成分としては、血行促進成分、血管新生促進因子、保湿成分、抗炎症成分、抗菌成分、ビタミン類、ペプチドまたはその誘導体、アミノ酸またはその誘導体、細胞賦活化成分、老化防止成分、角質軟化または角質溶解成分、美白成分、収斂成分、血管拡張成分、抗ヒスタミン成分、抗酸化成分、代謝賦活剤、清涼化剤、ミノキシジル以外の育毛成分などが挙げられる。ミノキシジル以外の育毛成分としては、例えば、スピラノラクトン、センブリエキス、カプサイシノイド、角質増殖因子(KGF;FGF-7)、グリチルリチン酸塩、グリチルレチン酸、人参エキス等が挙げられる。
【0040】
外用組成物は、脂溶性抗酸化剤を含有することが好ましい。脂溶性抗酸化剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールを用いることができる。ジブチルヒドロキシトルエンは、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールとも呼ばれる芳香族化合物の一種であり、一般的には抗酸化剤として知られている。
【0041】
外用組成物が脂溶性抗酸化剤を含む場合、外用組成物中の脂溶性抗酸化剤の含有率は、好ましくは0.01~1.0w/v%であり、より好ましくは0.03~0.9w/v%であり、さらに好ましくは0.05~0.8w/v%である。
【0042】
ミノキシジルを3~10w/v%含有する外用組成物に、パントテン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩と、脂溶性抗酸化剤との両方を配合することにより、パントテン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を単独で配合した場合よりも、該外用組成物における析出(特に、低温下での析出)を抑制することができる。また、グリコール類を多量に含有せずに該外用組成物における析出を防止できるため、使用感が良好で、保存安定性に優れた外用組成物を得ることができる。
【0043】
また、外用組成物は、ピリドキシン塩酸塩、トコフェロール酢酸エステルおよびメントールから選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。この場合、ポリエステル製の容器は、他の樹脂製容器に比べて、上記3種の成分(ピリドキシン塩酸塩、トコフェロール酢酸エステルおよびメントール)の吸着を生じにくいため、本発明において外用組成物の組成変化を抑制することができる。
【0044】
上記3種の成分(ピリドキシン塩酸塩、トコフェロール酢酸エステルおよびメントール)の配合量は、特に制限されず、使用感やミノキシジルの安定性等を考慮しながら実験的に定めることができる。例えば、外用組成物中において、ピリドキシン塩酸塩の配合率は好ましくは0.01~0.1w/v%であり、トコフェロール酢酸エステルの配合率は好ましくは0.01~0.1w/v%であり、メントールの配合率は好ましくは0.1~0.5w/v%である。
【0045】
また、外用組成物は、例えば、パンテノール、ヒノキチオール、ジフェンヒドラミンまたはその塩、サリチル酸またはその塩、グリチルレチン酸またはその塩、グリチルリチン酸またはその塩などを含んでいてもよい。
【0046】
(剤型)
外用組成物の剤型としては、特に限定されないが、液剤、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、ゲル剤、リニメント剤、ローション剤、エアゾール剤等が挙げられる。本発明の外用組成物は、好ましくは液剤、懸濁剤、乳剤、ローション剤またはエアゾール剤であり、より好ましくは液剤、ローション剤またはエアゾール剤である。なお、外用組成物は、ミノキシジルを溶解させることができる程度の溶剤を含む軟膏であってもよい。また、外用組成物は、化粧水、乳液、フォーム剤、シャンプー、リンス、コンディショナー、ヘアトニック、ヘアクリーム、ヘアリキッド等の化粧料組成物であってもよい。
【0047】
外用組成物は、例えば、日本薬局方総則に従い、またはこれに準拠して、各成分を混合することにより製造することができる。
【0048】
(pH)
外用組成物のpHは、好ましくは5.0以上であり、より好ましくは5.5以上であり、さらに好ましくは6.0以上である。また、外用組成物のpHは、好ましくは8.0以下であり、より好ましくは7.5以下であり、さらに好ましくは7.0以下である。外用組成物のpHが5~8の範囲内であれば、ミノキシジルが外用組成物中で溶解し易く、ま
た、高pHによる頭皮への刺激を生じにくいからである。尚、外用組成物のpHは、上記のpH調整剤を用いて調整することができる。
【0049】
〔容器〕
本発明において、容器のうち外用組成物と接触する部分の少なくとも一部は、ポリエステルから構成される。
【0050】
容器のうち外用組成物と接触する部分の全てが、実質的にポリエステルから構成されていることが好ましい。なお、外用組成物が収容される容器は、本体、キャップ、吐出部材、中栓、シール部材等から構成されるが、これらの各構成部材において、少なくとも外用組成物と接触する部分は、ポリエステルから構成されていることが好ましい。具体的には、例えば、容器本体が積層構造を有している場合、最も内側の外用組成物と接触する層は、ポリエステルから構成されることが好ましい。また、容器を構成する複数の部材のうち、外用組成物と接触する全ての部材がポリエステルから構成されることがより好ましく、容器(を構成する部材)の全てがポリエステルから構成されることがさらに好ましい。
【0051】
ポリエステルは、多価カルボン酸(好ましくはジカルボン酸)とポリアルコール(好ましくはジオール)との重縮合体である。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンレテフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等が挙げられる。本発明において、ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)であることが好ましい。該容器内の外用組成物における析出(特に、低温下での析出)をより顕著に抑制することができるからである。
【0052】
本発明で用いられるポリエチレンテレフタレート(PET)は、本発明の効果を損なわない範囲で、PET以外のプラスチック樹脂(例えば、ポリブチレンレテフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)などのPET以外のポリエステル、ナイロン、アラミドなどのポリアミド、ポリアリレート、ポリカーボネートなど)を含有していてもよい。
【0053】
なお、例えば、容器を構成する部材が積層構造を有し、最も内側の外用組成物と接触する層がPETから構成される場合、外用組成物と接触する層(PET層)以外の層の材質として、容器の気体(酸素)透過性、水分透過性、強度、柔軟性、耐候性等を考慮してPET以外の材料を用いてもよい。そのようなPET以外の材質としては、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、エチレン-ビニルアルコール樹脂(EVOH)、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS樹脂)、エポキシ樹脂、ポリアミドイミド樹脂(PAI樹脂)、アルミニウム、ガラス等が挙げられる。
【0054】
本発明において、容器は、インジェクションブロー成形容器(インジェクションブロー成形法で成形された容器)であることが好ましい。該容器内の外用組成物における析出(特に、低温下での析出)をより顕著に抑制することができるからである。
【0055】
本発明において、容器を構成する部材の厚み(容器壁の厚み)は、好ましくは0.1~3mmであり、より好ましくは0.3~2.5mmであり、さらに好ましくは0.5~2mmである。
【0056】
本発明で用いられるポリエステルは、ゲルマニウム系触媒、チタン系触媒およびアルミ
ニウム系触媒からなる群より選択される少なくとも1種の触媒を用いて重合されたポリエステルであることが好ましい。外用組成物の継時的な着色を抑制することができるからである。
【0057】
容器の形状は特に限定されず、当該技術分野における使用目的に応じて適宜選択した形状の容器を使用することができる。容器は、複数回(例えば、30~360回、好ましくは60~240回)にわたり使用することができるマルチドーズ型の容器であってもよく、単回で使い切るユニットドーズ型の容器であってもよい。
【0058】
(使用方法)
本発明の外用製剤の使用方法は、使用対象の毛髪の状態、頭皮の状態、年齢、性別などによって異なるが、例えば以下の方法とすればよい。すなわち、1日数回(例えば、1~5回、好ましくは1~3回)、適量(例えば、0.5~2g、または0.5~2mL)を皮膚(例えば、頭皮)に適用すればよい。また、ミノキシジルの1日使用量が、例えば1~1000mgとなるように外用組成物を皮膚(例えば、頭皮)に適用すればよい。適用方法としては、剤型に応じて、塗布、噴霧等の方法を用いることができる。適用期間は、育毛効果が十分に得られる期間であればよいが、例えば、7日間以上、4か月以上または6か月以上である。
【0059】
本発明の外用組成物は、育毛効果が期待される。育毛効果には、育毛作用、発毛作用、発毛促進作用、養毛作用、脱毛(抜け毛、薄毛)の(進行)予防作用等の少なくとも1つの作用が含まれ得る。
【0060】
<ミノキシジルを含有する外用組成物における析出抑制方法>
本発明は、3~10w/v%のミノキシジル、パントテン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩、および、アルコールを含有する外用組成物を容器に収容する、該外用組成物における析出抑制方法であって、容器のうち外用組成物と接触する部分の少なくとも一部がポリエステルから構成される、析出抑制方法にも関する。3~10w/v%のミノキシジル、パントテン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩、および、アルコールを含有する外用組成物を上記の容器に収容することにより、該外用組成物における析出を抑制することができる。
【実施例0061】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
表1および表4に示す組成を有する外用組成物(試料液1~3および対照液1~3)を常法に従って調製し、低温安定性の評価を行った。
【0063】
低温安定性の評価は、各外用組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)製の容器(インジェクションブロー成形容器)またはガラス製容器に充填し、-5℃の恒温器で14日間または-20℃の恒温器で12日間静置した後、目視で結晶析出を観察することにより行った。なお、PETは、ゲルマニウム系触媒を用いて重合されたものである。結果を表2、表3および表5の「低温安定性」の欄に示す。ここでは、析出が認められなかったものを「○」で示し、析出が認められたものを「×」で示している。
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
表2、表3および表5に示されるように、5w/v%のミノキシジル、パントテニールエチルエーテルおよびアルコール(エタノール)を含有する外用組成物(試料液1~3)をPET製の容器に収容した場合は、低温保存後に結晶析出は認められなかった。これに対して、試料液1~3をガラス製の容器に収容した場合は、低温保存後に結晶析出が認められた。また、パントテニールエチルエーテルを含有しない対照液1~3も用いた場合は、PET製の容器およびガラス製の容器のいずれに収容した場合にも、低温保存後に結晶析出が認められた。
【0070】
以上の結果から、3~10w/v%のミノキシジル、パントテニールエチルエーテルおよびアルコール含有する外用組成物をPET製の容器に収容することにより、低温保存後のミノキシジルの析出を顕著に抑制できると考えられる。
【0071】
〔製剤例〕
以下の表6~表8に示す外用組成物1~42の各々を、PET製の容器(インジェクションブロー成形容器)に充填し、外用製剤A1~A42をそれぞれ製造した。また、外用組成物1~42の各々を、ポリエチレンナフタレートを混合したPET製の容器(インジェクションブロー成形容器)に充填し、外用製剤B1~B42をそれぞれ製造した。なお、表中における各成分の単位はw/v%である。
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。