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特開2023-17964タンジェンシャルフローフィルトレーションのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017964
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】タンジェンシャルフローフィルトレーションのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/14 20060101AFI20230131BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20230131BHJP
   B01D 69/02 20060101ALI20230131BHJP
   B01D 71/06 20060101ALI20230131BHJP
   B01D 29/11 20060101ALI20230131BHJP
   C12M 1/12 20060101ALI20230131BHJP
   C12Q 1/24 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
B01D61/14 510
B01D61/14 500
B01D69/00
B01D69/02
B01D71/06
B01D29/10 510C
B01D29/10 530A
C12M1/12
C12Q1/24
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181037
(22)【出願日】2022-11-11
(62)【分割の表示】P 2020565858の分割
【原出願日】2019-05-28
(31)【優先権主張番号】62/676,411
(32)【優先日】2018-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/US2019/021414
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504232044
【氏名又は名称】レプリゲン・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】REPLIGEN CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100071010
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 行造
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】ブランズビー、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】キャロル、デレク
(72)【発明者】
【氏名】ユエン、フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】クリエル、ラルフ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】タンジェンシャルフローデプスフィルトレーション(tangential flow depth filtration;TFDF)システムを提供する。
【解決手段】このシステムは、フィルターフラックスおよび処理能力の改善と、ファウリング特性の減少とを示す。本開示のTFDFシステムは、任意選択的にチューブ状デプスフィルター(TDF)110を利用する。TFDFシステム中のTDF全長の少なくとも一部分を流れる非層流の通過を含む方法が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端および第2端を有するフィルターであって、前記フィルターの第1端と第2端との間に伸び、前記フィルターの第1端および第2端の各々に対して開いた少なくとも1つのチューブ状デプスフィルターユニット(TDF)を備え、各TDFは、少なくとも1mmの内径を有し、少なくとも100μmの厚さを有する多孔質壁を備える、フィルターと;
前記フィルターの第1端および前記少なくとも1つのTDFと流体連絡する第1容器と;
前記第1容器および前記フィルターを通る流体フローを推進するように構成され、その結果前記フィルターの第1端でのレイノルズ数(Re)が2000、2300、2500、3000、3500、または4000より大きいポンプと;
を備えるタンジェンシャルフローフィルトレーションデプスフィルトレーション(tangential flow filtration depth filtration;TFDF)システム。
【請求項2】
各TDFは、2~5mmの内径を有する、請求項1に記載のTFDFシステム。
【請求項3】
前記ポンプは、2m/sより大きい供給速度を提供するように構成された、請求項1または2に記載のTFDFシステム。
【請求項4】
前記フィルターの第1端および第2端から流体的に分離され、前記少なくとも1つのTDFの少なくとも1つの外側表面と流体連絡する第2容器と;
前記フィルターの第2端および前記少なくとも1つのTDFに流体的に接続され、任意選択的に前記第1容器に流体的に接続された第3容器と;
をさらに備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のTFDFシステム。
【請求項5】
前記ポンプの運転は、前記第1容器から前記少なくとも1つのTDFを通って、前記第2容器および第3容器の中に流体フローを推進する、請求項4に記載のTFDFシステム。
【請求項6】
前記第1容器と第3容器との間の、前記少なくとも1つのTDFを通る流体フローは、非層流である、請求項5に記載のTFDFシステム。
【請求項7】
フィルターの少なくとも一部分を通って、非層流を推進するように構成されたTFDFシステムであって、前記フィルターは、少なくとも1つのTDFを備える、TFDFシステム。
【請求項8】
16,000s-1を下回る剪断速度で運転するように構成された、請求項7に記載のTFDFシステム。
【請求項9】
前記TDFは、焼結ポリマーまたはメルトブローンポリマーを備える、請求項1~8のいずれか一項に記載のTFDFシステム。
【請求項10】
前記TDFの密度は、前記ポリマーの等価固体容積の密度の50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%または60%である、請求項9に記載のTFDFシステム。
【請求項11】
前記TDFは、バブルポイント試験で測定された場合に0.2~5ミクロンの平均細孔径またはファーストバブルポイントサイズを有する、請求項9または10に記載のTFDFシステム。
【請求項12】
前記TDFは、0.75~13mmの内径、および200~2000mmの長さを有する、請求項9~11のいずれか一項に記載のTFDFシステム。
【請求項13】
流体を濾過する方法であって、
請求項1~8のいずれか一項に記載のTFDFシステムに前記流体を通過させ、その結果前記流体が、非層的な方式で前記少なくとも1つのTDFを通って流れるステップ
を備える方法。
【請求項14】
前記システムの供給速度と前記少なくとも1つのTDFの内径との積は、2500mm-1より大きい、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記フィルター内への流体フローを特徴付けるレイノルズ数は、2000、2300、2500、3000、3500、または4000より大きい、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
流体を濾過する方法であって、
前記供給速度が2000、2300、2500、3000、3500、または4000倍、前記流体の動粘性率を前記TDF直径で割った商より大きい条件下で、請求項4~6のいずれか一項に記載のTFDFシステムに前記流体を通過させるステップ
を備える方法。
【請求項17】
前記TDFを通るフローの方向は交互に入れ替わる、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
フィルター透過液を収集するステップをさらに備える、請求項13~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記TDFは、所望しない種を保持する、請求項13~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記保持された所望しない種は、哺乳類細胞由来の種;微生物細胞由来の種;ウイルス由来の種;蛋白質;核酸;多糖類;または前述のもののうち任意のものの複合体からなるグループから選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
所望の種は、前記TDFを通過して透過液中に入る、請求項13~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記所望の種は、哺乳類細胞由来の種;微生物細胞由来の種;ウイルス由来の種;蛋白質;核酸;多糖類;ウイルス;マイクロキャリア;粒子;または前述のもののうち任意のものの複合体からなるグループから選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法に従って収集された透過液を備える組成物。
【請求項24】
前記組成物中の所望の種の濃度は、前記流体中の所望の種の濃度より少なくとも10倍、20倍、40倍、50倍、75倍、または100倍大きい、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
所望しない種の濃度は、前記流体中の所望しない種の濃度より少なくとも10倍、20倍、40倍、50倍、75倍、または100倍少ない、請求項23または24に記載の組成物。
【請求項26】
前記流体から透過液を除去し、それによって前記TDFによって保持された所望の種の濃度を増加させるステップをさらに備え、前記所望の種の濃度は、5倍、10倍、20倍、40倍、50倍、75倍、または100倍増加する、請求項16または17に記載の方法。
【請求項27】
前記所望の種は、哺乳類細胞由来の種;微生物細胞由来の種;ウイルス由来の種;蛋白質;核酸;多糖類;ウイルス;マイクロキャリア;粒子;または前述のもののうち任意のものの複合体からなるグループから選択される、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条の規定により2018年5月25日出願、米国特許仮出願第62/676,411号、および2019年3月8日出願、PCT出願第PCT/US2019/021414号に対する優先権の利益を主張し、あらゆる目的のため、その両出願全体を参照によってここに組み込む。
【0002】
開示の分野
本開示は、フィルトレーションのシステムおよび方法に関し、とりわけタンジェンシャルフローデプスフィルトレーション(tangential flow depth filtration;TFDF)に関する。
【背景技術】
【0003】
フィルトレーションは一般に、流体状の溶液、混合物、または懸濁液を分離、浄化、変更、および/または濃縮するために実施される。生物工学および医薬産業において、フィルトレーションは、新薬、診断薬、およびその他の生物学的生成物のの生産、処理、および試験の成功に極めて重要である。たとえば、動物または微生物の細胞培養を使用した生物製剤の製造プロセスにおいて、培養培地から特定成分を浄化、選択除去、および濃縮するために、またはさらなる処理の前に培地を変更するために、フィルトレーションが行われる。フィルトレーションはまた、灌流培養を高細胞濃度で維持することで、生産性を向上させるのにも使用され得る。
【0004】
タンジェンシャルフローフィルトレーション(クロスフローフィルトレーションまたはTFFとも呼ばれる)システムは、液相中に浮遊する微粒子の分離において広く使用され、重要なバイオプロセス適用業務を有する。単一の流体供給がフィルターを通過する全量フィルトレーションシステムと対照的に、タンジェンシャルフローシステムは、フィルター表面に亘って流れる流体供給を特徴とし、供給は、フィルターを通過する透過液成分と通過しない保持液成分との2つの成分に分離される結果となる。TFFシステムは全量システムと比較して、ファウリングを引き起こすおそれが少ない。TFFシステムのファウリングは、Repligen Corporation(Waltham、マサチューセッツ州)によって商品化されたXCell(商標)交互タンジェンシャルフロー(ATF)技術で行われているようにフィルトレーションエレメントに亘る流体供給の方向を交互に入れ替えることで、フィルターを通して透過液を逆洗することで、および/または周期的に洗浄することで、さらに減少し得る。
【0005】
最新のTFFシステムは、中空繊維またはチューブ状メンブレンなど、1つ以上のチューブ状フィルトレーションエレメントを備えるフィルターをしばしば利用する。チューブ状フィルトレーションエレメントが使用される場合、一般に該エレメントは、まとめて大きな流体容器に詰め込まれ、一端が供給物と流体連絡しかつ他端が保持液用の容器または流体経路と流体連絡するように、設置され;透過液は、繊維壁中の細孔を通って繊維間の空間内に流れ、大きな流体容器内に流れる。チューブ状フィルトレーションエレメントは、収容し得る供給容積と比較して大きくて均一の表面積を提供し、このようなエレメントを利用するTFFシステムは、開発から商業規模まで容易に拡大され得る。このような利益にもかかわらず、TFFシステムフィルターは、フィルターフラックスの限度を超える場合にファウリングを引き起こし得、TFFシステムは、有限の処理能力を有する。TFFシステムの処理能力を向上させる努力は、フィルターフラックスとファウリングとの間の関係によって複雑である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、フィルターフラックスを増加させながらファウリング特性を減少させることで処理能力が改善したTFFシステムを提供する。本開示はその様々な態様において、チューブ状デプスフィルター(TDF)を通る非層流供給フローを採用するTFFのシステムおよび方法を提供する。このようなシステムは、本明細書の全体を通して、タンジェンシャルフローデプスフィルトレーションシステムまたはTFDFシステムと呼ばれる。
【0007】
一態様では本開示は、タンジェンシャルフローデプスフィルトレーション(TFDF)システムに関し、このシステムには、第1端および第2端を有するフィルターであって、フィルターの第1端と第2端との間に伸び、フィルターの第1端および第2端の各々に対して開いた少なくとも1つのチューブ状デプスフィルターユニット(TDF)を備えるフィルターと;フィルターの第1端および少なくとも1つのTDFと流体連絡する第1容器と;第1容器およびフィルターを通る流体フローを推進するように構成され、その結果フィルターの第1端でのレイノルズ数(Re)が2000、2300、2500、3000、3500、または4000より大きいポンプと;が含まれる。本システムには、少なくとも1mmの内径を有し、少なくとも100μmの厚さを有する多孔質壁を備えるTDFを利用されるが、特定の実施形態では、各TDFは2mmの内径を有する。いくつかの実施形態では、ポンプは、2m/sより大きい供給速度を提供するように構成される。本システムのいくつかの実施形態は、フィルターの第1端および第2端から流体的に分離され、少なくとも1つのTDFの少なくとも1つの外側表面と流体連絡する第2容器、ならびに/または、フィルターの第2端および少なくとも1つのTDFに流体的に接続された第3容器を含む。このような実施形態では、ポンプの運転は、少なくとも1つのTDFを通って、第2容器および第3容器の中に容器を推進し得、このような実施形態のいくつかでは、第1容器と第3容器との間の、少なくとも1つのTDFを通る流体フローは非層流である。
【0008】
本開示の別の態様は、少なくとも1つのTDFの付属するフィルターを含むTFDFシステムに関し、このシステムは、フィルターの少なくとも一部分を通って、非層流を推進するように構成される。様々な実施形態では、本システムは、16,000s-1以下の剪断速度で運転するように構成される。
【0009】
本開示のこのような態様によれば様々な実施形態は、焼結ポリマーまたはメルトブローンポリマーを備えるTDFを利用し、このTDFは、任意選択的にポリマーの等価固体容積の密度の50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、または60%の密度を有する。いくつかの実施形態では、TDFは、0.2~5ミクロンの細孔径もしくはファーストバブルポイントサイズ、ならびに/または0.75~13mmの内径、および/もしくは200~2000mmの長さを有する。
【0010】
別の態様では、本開示は流体を濾過する方法に関し、この方法は、前述の態様のうち任意のものによるTFDFシステムに流体を通過させ、その結果流体が、非層的な方式で少なくとも1つのTDFを通って流れるステップを備える。本方法の様々な実施形態において、本システムの供給速度と少なくとも1つのTDFの内径との積は、2500mm-1より大きく、かつ/または流体の動粘性率をTDF直径で割った商(μ/d)より2000、2300、2500、3000、3500もしくは4000倍大きい。いくつかの場合では、フィルターを通るフローの方向は交互に入れ替わる。本方法の様々な実施形態では、フィルターは、所望しない種を保持し得、この種は、哺乳類細胞由来の種;微生物細胞由来の種;ウイルス由来の種;蛋白質;核酸;多糖類;または前述のもののうち任意のものの複合体からなるグループから選択され得る。本方法はまた、フィルター透過液の収集を含み得る。いくつかの実施形態では、フィルター透過液は、所望の種(たとえば哺乳類細胞由来の種;微生物細胞由来の種;ウイルス由来の種;蛋白質;核酸;多糖類;ウイルス;マイクロキャリア;粒子;または前述のもののうち任意のものの複合体)を備え、他方他の実施形態では、所望の種は、フィルターによって保持され、失われた容積を補充しないでろ液を除去することによって、時間の経過とともに濃縮される。
【0011】
別の態様では本開示は、本開示の前述の態様による方法によって生成されたフィルター透過液を備える組成物に関する。組成物中の所望の種の濃度は、いくつかの実施形態中の方法で濾過された流体中の所望の種の濃度より少なくとも10倍、20倍、40倍、50倍、75倍、もしくは100倍大きくあり得、かつ/または所望しない種の濃度は、流体中の所望しない種の濃度より少なくとも10倍、20倍、40倍、50倍、75倍、もしくは100倍小さくあり得る。いくつかの実施形態では、所望の種は、ポリペプチド、核酸、または多糖類を備える。
【0012】
前述のリストアップは、以下の開示を制限するためではなくまとめるためであり、上述されていない追加の態様または実施形態は当業者に認識され得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】流体供給、透過液、および保持液フローを示す、単一のチューブ状デプスフィルトレーションエレメントを備えるTFDFシステムの簡略化された(説明用)断面図である。
【0014】
図2】本開示の特定の実施形態に従ってチューブ状デプスフィルターの壁を通るフローを示す断面図である。
【0015】
図3】Beck&Collinsによる円形パイプの粗さの変化について摩擦係数[f]対レイノルズ数[R]の関係をプロットしたムーディ線図(Moody Diagram)である。
【0016】
図4】本開示の2つのTFDFシステムについて、膜間圧の変化(ΔTMP/sec-ゲル層形成またはフィルターファウリングの指標)およびフィルターフラックスを、実験に基づいて比較した図である。剪断速度(γ)は、両方の条件において8000s-1で一定に保たれる。1.5mmのフィルター直径システムにおいて、400Lm-2hr-1を上回るフラックスでファウリングが発生し、他方2.0mmシステムでは、最大2300Lm-2hr-1のフラックスはファウリングなしで許容される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
概要
本発明者は、共同所有PCT出願第PCT/US2019/021414号で開示されたように、これまでTFDFシステムで使用するためにチューブ状デプスフィルター(TDF)を設計した。この出願全体は、あらゆる目的のため、参照によってここに組み込む。具体的に、¶¶61~76のチューブ状デプスフィルトレーションエレメント、¶¶77~88のチューブ状デプスフィルトレーションエレメントを作成する方法、および¶¶89~103のチューブ状デプスフィルトレーションエレメントを利用するTFDFシステムの適用業務を論じた第PCT/US2019/021414号の一部が、参照によって組み込む。
【0018】
図1および図2は、例示的TFDFシステム100を描き、このシステムは、その壁に複数の細孔111を有する少なくとも1つのTDF110を備えるフィルターを含む。少なくとも1つのTDF110は、少なくとも部分的に透過液容器120に含まれる。運転時、供給フロー150は少なくとも1つのTDF110に進入し、TDF110の細孔111を通って複数のフロー160に分かれる。細孔フローが凝集して、透過液フロー170を形成する。残りの供給フロー150は、保持液フロー180としてTDF110の内腔を通過する。
【0019】
図2は、TFDFシステム100中で使用される単一のTDF110の壁70近くのフローを描く。図2で、壁70に沿ったフロー12は、大粒子74、小粒子72a、および中サイズ粒子72bを含む。大粒子74は、概して壁70の内面上の細孔の平均直径より大きく、他方中サイズ粒子72bおよび小粒子72aは、壁70の内面上の細孔の平均直径より小さい。フロー12は、TFDFシステム100の供給フロー150から生ずる。
大粒子74は、TDF110の壁70の内面に沿って、保持液フロー180の中に入る。
壁70は、曲がりくねったフロー経路71を含み、この経路は中サイズ粒子72bなどの特定の種を、壁70を通過する際に捕捉する。他のエレメント(たとえば、小粒子72a、および壁70に対して接線方向のフロー12の一部分)は、細孔フロー160を有するフロー経路71を通過し、本システム100を通って透過液フロー170中に入る。TDF110の壁70は、沈殿ゾーン73および狭小チャンネル75を含み、このチャンネルは、曲がりくねったフロー経路71に進入する中サイズ粒子72bをトラップし、他方小粒子72aおよび細孔フロー160が通過することを可能にし、その結果中サイズ粒子72bは、小粒子72aおよび細孔フロー160から分離される。
【0020】
TFDFシステム100中で達成されたデプスフィルトレーションプロセスは、薄壁中空繊維タンジェンシャルフローフィルトレーションメンブレン中で発生する濾過プロセスとは異なり、ここで中サイズ粒子72bは壁70の内面で堆積し得、結果としてゲル層またはフィルターケーキを形成し、フィルターのファウリングが生じる。反対にTDF110は、壁70の内側で中サイズ粒子72bをトラップし、所望の小粒子種の100%に近い通過を可能にしながら、メンブレンフィルターと比較して容積スループットの向上を可能にする。
【0021】
当業界で使用される他のフィルターと比較してTDF100の壁70の厚い多孔質構造は、高流速の使用を可能にし、ファウリングする前にTDF100が大容積の微粒子状物質を捕捉することを可能にする。すなわち当業界で使用されている他のフィルターエレメントと比較して、TDF100の「汚れ負荷容量」が高い。汚れ負荷容量は、最大許容背圧に到達する前に、フィルターによってトラップされ得る微粒子状物質の量として定義される。
【0022】
本開示の様々な実施形態においてTDF110は、任意の好適な平均細孔径(ここに参照によって組み込まれた’044出願の¶43に記載のように、たとえばバブルポイント試験によって定義される)を有し得る。たとえばTDF100は、0.1ミクロン~30ミクロンまたは0.2ミクロン~5ミクロンの範囲の平均細孔径を有し得る。同様にTDF100は、任意の好適な壁厚(たとえば、0.1mm~5mm)、任意の好適な内径(たとえば、0.75mm~7.5mm、一般に1~3mm)、および任意の好適な長さ(たとえば、20~200cm)を有し得る。
【0023】
TFDFシステムは、いくつかのフィルターパラメータおよび運転変数によって特徴付けられる。フィルターパラメータとして、TDF内径(d)、TDF長さ(l)、TDF断面積(A)、およびフィルター中のTDFユニットの数(N)が含まれる。運転変数として、供給流速(Q)、動粘性率(μ)、供給速度/TDF(V)、剪断速度(γ)、およびレイノルズ数(Re)が含まれる。表1に、フィルターパラメータと運転変数との間の関係を示す。
【表1】
【0024】
レイノルズ数は、流体フローの挙動の予測となる。チューブ状システムにおいて流体フローに適用されたとき、レイノルズ数が略2300以下の場合に層流が想定され、4000を上回るレイノルズ数で乱流が想定され、層流から乱流への遷移はこれらの値の間で発生する。TDFにおける層流および乱流の挙動は非透過性チューブ状システムのモデル化された挙動とはいくぶん異なり得ることに留意しながら、本発明者は、供給フロー150のレイノルズ数が、たとえば略2300、2500、3000、3500、4000を上回るなどの層流範囲を上回る場合に、本開示によるTFDFシステムが、ファウリングすることなく非常に高いフラックスを許容することを発見した。任意の理論に縛られないことを希望するが、乱流供給フローは、TDF110の壁からTDF100を通ってバルクフローまでの粒子輸送を向上させると思われ、これは層流と比較してファウリングを減少させ得る。したがって、本開示の様々な実施形態は、TFDFシステムを運転する方法に関し、このシステムは、たとえば2000、2300、2500、3000、3500、4000などを上回るRe値によって特徴付けられる、乱流であるかまたは層流から乱流への遷移領域中にある供給フローを利用する。Reは供給速度、剪断速度、および/またはTDF内径の増加とともに増加するため、本開示の特定の方法は、2000、2300、2500、3000、3500、4000などを上回るRe値を生むように選択された供給速度または剪断速度でTFDFシステムを運転するステップを含む。希薄水溶液は略1センチストーク(cSt)の動粘性率を備えるため、本方法の特定の実施形態には、供給速度とTDF直径との積が2000、2300、2500、3000、3500、または4000mm-1より大きい条件下でTFDFシステムを運転することが含まれる。他の実施形態では、本方法は、供給速度が2000、2300、2500、3000、3500、または4000倍、動粘性率をTDF内径で割った商(μ/d)より大きい条件下で、TFDFシステムを運転するステップを含み、この商は希薄水溶液については1/dに略等しい。
【0025】
本開示の追加の実施形態は、Re値が2000、2300、2500、3000、3500、4000などを上回る条件下で運転するように構成されたTFDFシステムに関する。特定の実施形態では、供給速度とTDF直径との積は、2000、2300、2500、3000、3500、または4000mm-1より大きい。本開示の他の実施形態は、供給速度が2000、2300、2500、3000、3500、または4000倍、動粘性率をTDF内径で割った商より大きい条件下で運転するように構成されたシステムに関する。
【0026】
本開示の特定の実施形態は、非層流を促進するように選択されたTDFジオメトリを利用する。たとえば内径の増加は、所定の剪断速度において乱流をより促進する傾向がある。本開示の実施形態で使用されるTDFは、1mmより大きい内径および/または0.1mmより大きい厚さの壁を有し、高フラックス条件下での運転に耐え得る。本開示のシステムおよび方法は、交互タンジェンシャルフロー(ATF)のセットアップにおいて、または一定タンジェンシャルフロー下で採用され得、供給フローを推進するために任意の好適なポンプ技術を採用し得る。TDF壁は一定または可変の密度を有し得、したがって該壁の長さおよび/または外周に亘って、一定または可変の細孔の平均直径および最大直径を有し得る。TDFの有孔率は、TDF壁面に単数または複数のコーティングを適用することでさらに制御され得る。当業者であれば、TDF表面の変更を追加することは、選択的に特定分子種を精製するため制限なしに親和性試薬を使用することを含めて可能であり得ることを理解しよう(たとえば、蛋白質AのコーティングはヒトIgGを落とすために使用され得る)。
【0027】
当業者は、約2300の遷移値かそれを少し上回るレイノルズ数によって特徴付けられる供給フローについて、TDFの長さに亘る速度の減少は、結果としてフローがTDF内のRe遷移値2300を下回り得ることを理解しよう。本発明者は、フィルター容量およびファウリング挙動の改善が2300という低い供給のRe値で観測されたことを発見したが、これは、TDFの全長に亘って必ずしも乱流を維持する必要がないことと、TDFの長さの一部分に亘る乱流は、フィルター容量およびファウリング挙動を一定程度改善するのに十分であり得ることと、を示す。このため本開示の特定の実施形態では、TFDFシステムは、供給のVが2300~2500の間、または2300~3000の間の条件下で運転される。いくつかの実施形態では、TFDFシステムは、フィルター中のTDFユニットの長さの一部分に亘って乱流が生成されるように運転される。
【0028】
本開示によるTFDFシステムは、多様の流体を濾過し、多様の可溶性または微粒子状の種を分離するために使用され得る。これには、哺乳類細胞または他の真核細胞、大腸菌(E.coli)などの細菌細胞を含む微生物細胞、および/または薬物送達用粒子などの合成ナノ粒子、ならびにポリペプチド、ポリヌクレオチド、多糖類、およびこれらのうち1つ以上の複合体などの生体分子が制限なしで含まれる。本開示のシステムおよび方法は、前述の内容を制限することなく、免疫グロビンまたはその機能的断片などの組換え蛋白質の製造および精製において使用され得る。当業者は、動物または微生物の培養物の浄化、前述のような種の濃縮および分別(fractionation)など、中空繊維TFFシステムが現在使用されているところの任意の設定に、本開示の本システムおよび方法が適用され得ることを理解しよう。
【0029】
チューブ状デプスフィルターおよびTFDFシステム
本開示の実施形態は概してTFDFに関し、場合によると、バイオプロセスに、とりわけ灌流の培養および採取に使用されるTFDFシステムおよび方法に関する。本開示の実施形態に適合する一例示的バイオプロセス構成体は、所望の生物学的生成物を生成する細胞培養容器(たとえば、バイオリアクター)などのプロセス容器を含む。このプロセス容器は、TDFがその中に配置されるTFDFフィルターハウジングに流体的に連結され、ハウジングを少なくとも第1供給/保持チャンネルおよび第2透過またはろ液チャンネルに分割する。プロセス容器からTFDFフィルターハウジング内への流体フローは一般に、ポンプ(たとえば、マグレブ、ぜん動またはダイヤフラム/ピストンポンプ)によって推進され、このようなポンプは流体を単一方向に推進し得るか、またはフローの方向を周期的に交互に入れ替え得る。
【0030】
現在、細胞培養期間の終了時に生物学的生成物を採取するように設計されたバイオプロセスシステムは概して、所望の生物学的生成物を含有する流体(たとえば、培養培地)から培養細胞を除去するために、デプスフィルターまたは遠心分離機などの大型分離装置を利用する。このような大型装置は、凝集細胞、細胞残屑などを含む、大量の微粒子物質を捕捉するために選択される。しかし、最近は、一連のバイオプロセスにおいて1回使い切りまたは使い捨て機器を利用して、各運転の間に機器の除菌に伴う汚染または損傷の危険を減少させる傾向があり、各々の使用後、大型分離装置を交換する費用は非常に高いこともある。
【0031】
加えて産業の傾向は、バイオプロセスの運転は延長されており、連続的にさえなっていることを示している。そのような運転は数日、数週間、または数月に及び得る。フィルターなどの多くの一般的構成要素は、ファウリングすることなく、またはそうでなくてもメンテナンスもしくは交換の必要なく、そのような期間のあいだ充分機能することはできない。
【0032】
加えて、バイオプロセスにおいては、細胞密度を増加させることでプロセスの歩留まりを向上させることがしばしば望ましい。しかし、細胞密度の増加は、フィルターファウリングの増加などで複雑になり得る。
【0033】
本開示の実施形態によって、細胞密度の増加、プロセス時間の延長に強く、かつ採取での使用に好適な、経済的なフィルトレーション手段を提供することで、このような課題が解決される。本発明者は、ポリマーまたはポリマーブレンドをメルトブローすることで作られたタンジェンシャルフローデプスフィルターは、使い捨て用に適合した比較的低コストで製造され得、それでも長期間、高フラックスでおよび細胞密度を増加させて運転可能であることを発見した。
【0034】
本開示に一致するタンジェンシャルフローフィルターには、大粒子(たとえば細胞、マイクロキャリア、または他の大粒子)を除外し、中サイズの粒子(たとえば、細胞残屑、または他の中サイズ粒子)をトラップし、小粒子(たとえば、可溶性および非溶解性の細胞代謝物、および発現蛋白質、ウイルス、ウイルス様粒子(VLP)、エキソソーム、脂質、DNA、または他の小粒子を含む、細胞によって生成された他の生成物)を許容する、ために好適な細孔径およびデプスを有するタンジェンシャルフローフィルターが含まれる。本開示で使用する「マイクロキャリア」は、バイオリアクター中での付着細胞の成長を許容する微粒子担体である。
【0035】
この点では、細胞培養液のフィルトレーション(灌流での濾過など)および細胞培養液の採取を含む様々なフィルトレーションプロセスにとってもっとも問題となる領域のうち1つは、フィルターファウリングによる標的分子または粒子の物質移動の減少である。本開示は、タンジェンシャルフローフィルトレーションの利点をデプスフィルトレーションの利点と組み合わせることで、このような障害の多くを克服する。タンジェンシャルフローフィルトレーションを使用する標準の薄壁中空繊維フィルターでは、細胞は中空繊維の内腔を通って送り出され、中空繊維の内面の表面に沿って該フィルターを掃引し、さらなる生産のために該フィルターの再生利用を可能にする。しかし、中空繊維の内面でファウリングゲル層を形成する蛋白質と細胞残屑の代わりに、壁は、壁構造の内側で細胞残屑をトラップする「デプスフィルトレーション」機能としてここで呼ばれるものを追加して、本開示の様々な実施形態において一般的な標的蛋白質の100%に近い通過を維持しながら、容積スループットの向上を可能にする。そのようなフィルターは、ここではタンジェンシャルフローデプスフィルターとも呼ばれ得る。
【0036】
本開示の様々な実施形態に一致するタンジェンシャルフローデプスフィルターは、該フィルターが焼結粒子またはメルトブローンポリマー繊維の凝集体である限り、正確に定義された細孔構造を必ずしも備える必要はない。フィルターの「細孔径」より大きな粒子は、フィルター表面に停まるであろう。これに対し、有意の量の中サイズ粒子は、フィルターの壁に進入し、壁の対向面から現れる前に、壁の内部にトラップされる。より小さな粒子および可溶性物質は、透過液フロー中のフィルター材料を通過し得る。当業界の他の多くのフィルターより構造が厚くかつ有孔率が高いので、フィルターは流速の上昇を示し得、フィルトレーション業界には「汚れ負荷容量」として周知のものの向上を示し得、この汚れ負荷容量は、最大許容背圧に到達する前に、フィルターがトラップしかつ保持し得る微粒子状物質の量である。
【0037】
正確に定義された細孔構造が欠落しているのにもかかわらず、所定のフィルターの細孔径は、「バブルポイン試験」として周知の広く使用されている、細孔径を検知する方法によって、客観的に決定され得る。バブルポイント試験は、絶えず濡れている所定の流体および細孔径について、気泡を細孔に通過させるのに必要な圧力は、細孔直径に反比例するという事実に基づく。実際これは、流体でフィルター材料を濡らすことによって、かつガス圧力下で濡れたフィルターのダウンストリームで連続的な気泡ストリームが最初に発見される場合の圧力を測定することによって、フィルターの最大細孔径が確定され得るということを意味する。最初の気泡ストリームがフィルター材料から現れるポイントは、フィルター材料中の最大細孔の反映であり、圧力と細孔径との間の関係は、P=K/dと簡略して表現され得るポアズイユの法則(Poiseuille’s law)に基づき、ここで、Pは気泡ストリームの出現時のガス圧力、Kはフィルター材料に依存する実験定数、およびdは細孔直径である。この点について、実験的に判定される細孔径はここでは、圧力スキャン法(圧力の増加およびその結果としてのガスフローが、試験中連続的に測定される)に基づいてPOROLUXTM1000ポロメーター(Porometer)(ポロメーターNV、ベルギー)を使用して測定され、これは、ファーストバブルポイントサイズ(FBP)、平均フロー細孔径(MFP)(ここでは「平均細孔径」とも呼ばれる)、および最小細孔径(SP)についての情報を得るために使用され得るデータを提供する。このようなパラメータは、キャピラリーフローポロメトリー(capillary flow porometry)業界では周知である。
【0038】
様々な実施形態において、本開示で使用する中空繊維は、他の可能な値の中でも、たとえば0.1ミクロン(μm)以下~30以上の範囲、一般に0.2~5ミクロンの範囲の平均細孔径を有し得る。
【0039】
様々な実施形態では、本開示で使用される中空繊維は、他の値の中でも、たとえば1mm~10mmの範囲、一般に2mm~7mmの範囲、より一般には約5.0mmの壁厚を有し得る。
【0040】
様々な実施形態において、本開示で使用される中空繊維は、他の値の中でも、たとえば0.75mm~13mmの範囲、1mm~5mmの範囲、0.75mm~5mm、4.6mmの内側直径(つまり内腔直径)を有し得る。一般に、内側直径の減少は、剪断速度の増加になるであろう。理論に縛られないことを希望して、剪断速度の増加は、中空繊維の壁から細胞および細胞残屑のフラッシング(flushing)を増進すると思われる。
【0041】
本開示で使用される中空繊維は、広範囲の長さを有し得る。いくつかの実施形態では、中空繊維は他の可能な値の中でも、たとえば200mm~2000mmの範囲の長さを有し得る。
【0042】
本開示で使用される中空繊維は、多様なプロセスを使用して多様な材料から形成され得る。たとえば中空繊維は、多数の粒子、フィラメント、または粒子とフィラメントの組み合わせを組み立てて、チューブ形状にすることで形成され得る。粒子および/またはフィラメントから形成された中空繊維の細孔径および分布は、中空繊維を形成するために組み立てられた粒子および/またはフィラメントのサイズおよび分布に依存するであろう。フィラメントから形成された中空繊維の細孔径および分布も、中空繊維を形成するために組み立てられたフィラメントの密度に依存するであろう。たとえば0.5ミクロン~50ミクロンの範囲の平均細孔径は、フィラメント密度を変化させることで作成され得る。
【0043】
本開示で使用するための好適な粒子および/またはフィラメントは、無機および有機両方の粒子、ならびに/またはフィラメントを含む。いくつかの実施形態では、粒子および/またはフィラメントは、一成分粒子および/または一成分フィラメントであり得る。いくつかの実施形態では、粒子および/またはフィラメントは、多成分(たとえば二成分、三成分など)粒子および/またはフィラメントであり得る。たとえば、第1成分で形成されたコアと、第2成分で形成されたコーティングまたはシース(sheath)と、を有する二成分粒子および/またはフィラメントが、他の多くの候補の中から採用され得る。
【0044】
様々な実施形態では、粒子および/またはフィラメントは、ポリマーから作成され得る。たとえば、粒子および/またはフィラメントは、単一ポリマーから形成されたポリマー性一成分の粒子および/またはフィラメントであり得るか、または2種、3種、またはそれ以上のポリマーから形成されたポリマー性多成分(つまり、二成分、三成分など)粒子および/またはフィラメントであり得る。一成分および多成分粒子ならびに/またはフィラメントを形成するために、とりわけ、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロン6またはナイロン66などのポリアミド、フッ化ポリビニリデン(PVDF)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフルオロポリマーを含む多様なポリマーが使用され得る。好適なポリエチレンポリマーとして、制限なしで高密度ポリエチレン(HDPE)、および高分子量ポリエチレンまたは超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)が含まれる。
【0045】
様々な実施形態において、フィルターの多孔質壁は、ポリマーの等価固体容積と比較した、フィラメントが占める容積のパーセンテージを表す密度を有し得る。たとえば密度百分率は、フィルターの多孔質壁の質量を多孔質壁が占める容積で除算し、その結果を、フィラメント材料の非多孔質壁の質量を同じ容積で除算したものと比率形式で比較することで計算され得る。比密度パーセンテージ(specific density percentage)を有するフィルターは、ファウリングなしでフィルターを運転し得る可変細胞密度(VCD)の量に直接関係する製造時に生産され得る。フィルターの多孔質壁の密度は、追加的または代替的に、容積当たりの質量(たとえば、グラム/cm)として表され得る。
【0046】
粒子は、たとえばチューブ状の金型を使用することでチューブ形状に形成され得る。チューブ形状に形成されると、粒子は任意の好適なプロセスを使用して互いに接合され得る。たとえば、粒子が部分的に溶融し、かつ様々な接点で互いに接合される時点まで粒子を加熱する(焼結として周知のプロセス)と同時に、また任意選択的に粒子を圧縮することで、粒子が互いに接合され得る。別の例として、様々な接点で粒子を互いに接合するのに好適な接着剤を使用すると同時に、また任意選択的に粒子を圧縮することで、粒子が互いに接合され得る。たとえば、図2に概略的に示された壁70に類似の壁を有する中空繊維は、多数の不規則な粒子を組み立ててチューブ形状にし、粒子を圧縮しながら粒子を加熱することで粒子を互いに接合して形成され得る。
【0047】
チューブ形状に形成するのに使用され得るフィラメントベースの加工テクニックとして、とりわけたとえば複数の押出ダイからの同時押出成形(たとえば溶融押出、溶剤型押出など)、またはロッド状基材へのエレクトロスピニングまたはエレクトロスプレイ(基材はその後取り外される)が含まれる。
【0048】
フィラメントは、任意の好適なプロセスを使用して互いに接合され得る。たとえば、フィラメントが部分的に溶融し、かつ様々な接点で互いに接合される時点までフィラメントを加熱すると同時に、また任意選択的にフィラメントを圧縮することで、フィラメントが互いに接合され得る。別の例として、様々な接点でフィラメントを互いに接合するのに好適な接着剤を使用すると同時に、また任意選択的にフィラメントを圧縮することで、フィラメントが互いに接合され得る。
【0049】
特定の実施形態では、押出成形された多数の微細フィラメントは、たとえば他の可能性の中でも、押出成形されたフィラメントからチューブ形状を形成し、フィラメントを加熱してフィラメントを互いに接合することで、様々なポイントで互いに接合されて中空繊維を形成し得る。
【0050】
いくつかの例において、押出成形されたフィラメントはメルトブローンであり得る。本開示で使用されたように、用語「メルトブローン」は、溶融状態でフィラメント押出ダイの出口でガスストリームを使用してフィラメントを細長化するか、または細くすることを指す。メルトブローンフィラメントは、たとえばBergerに与えられた米国特許第5,607,766号に記載されている。様々な実施形態において、一成分または二成分フィラメントは、フィラメントの集合を生成するために周知のメルトブローテクニックを使用して押出ダイを出る時に細長化される。次いでフィラメントの集合は、中空繊維の形状で互いに接合され得る。
【0051】
特定の有益な実施形態では、中空繊維は、第1材料のシースを有する二成分フィラメントを組み合わせることで形成され得、この第1材料は、コア材料の融点より低い温度で接合可能である。たとえば中空繊維は、二成分押出成形技術をメルトブローン細長化と組み合わせて、絡まった二成分フィラメントのウェブを生産し、その後ウェブを成形および加熱(たとえばオーブン内で、または蒸気もしくは熱風などの加熱した流体を使用)してその接点でフィラメントを接合することで形成され得る。シース-コアのメルトブローンダイの例は、米国特許第5,607,766号で概略的に例示され、そこでは溶融シース形成ポリマーおよび溶融コア形成ポリマーが、ダイに供給されてダイから押し出される。溶融二成分シース-コアフィラメントは、高速エアーストリーム中に押出され、これはフィラメントを細長化して、二成分微細フィラメント生産を可能にする。Bergerに与えられた米国特許第3,095,343号は、複数フィラメントウェブを収集および加熱処理して、ランダムに主として長さ方向に配向したフィラメントの連続的なチューブ状本体(たとえば中空繊維)を形成するための装置を示し、その装置ではフィラメントの本体は全体として、長さ方向に揃い、凝集体において並行な配向にあるが、このフィラメント体は、多少ともランダムに非並行な発散および収束の方向を向いた短い部分を有する。このようにシース-コア二成分フィラメントのウェブは、(たとえば、中央通路形成部材を有するテーパ形ノズルを使用して)狭いエリアに引き込まれ得、ここで該ウェブは集められてチューブ状ロッド形状になり、フィラメントを接合するために加熱(またはそうでなければ硬化)される。
【0052】
特定の実施形態では、このように形成された中空繊維は、好適なコーティング材料(たとえば、PVDF)で繊維の内側または外側のいずれかにさらにコーティングされ得、このコーティングプロセスはまた、所望であれば中空繊維の細孔径を減少させるように作用し得る。
【0053】
前述のものなどの中空繊維は、バイオプロセスおよび医薬用途のためにタンジェンシャルフローフィルターを作成するために使用され得る。そのようなタンジェンシャルフローフィルターが採用され得るバイオプロセス適用業務の例には、細胞培養液が処理されて蛋白質、ウイルス、ウイルス様粒子(VLP)、エキソソーム、脂質、DNA、および他の代謝物などの、より小さな粒子から細胞を分離するような例が含まれる。
【0054】
そのような適用業務には、灌流適用業務が含まれ、この適用業務においてより小さな粒子は、透過液としての細胞培養培地から連続的に除去され、他方、細胞はバイオリアクターに戻る保持液流体に保持される(そして、等価容積の媒地が概してバイオリアクターに同時に追加されてリアクター全体の容積を維持する)。そのような適用業務は、浄化または採取の適用業務をさらに含み、この適用業務においてより小さな粒子(概して、生物学的生成物)は、より迅速に透過液流体としての細胞培養培地から除去される。
【0055】
前述のものなどの中空繊維は、粒子の分別、濃縮、および洗浄のためのタンジェンシャルフローデプスフィルターを作成するために使用され得る。そのようなタンジェンシャルフローフィルターが採用され得る適用業務の例には、そのようなタンジェンシャルフローデプスフィルターを使用して大粒子から小粒子を除去することと、そのようなタンジェンシャルフローデプスフィルターを使用して微小粒子を濃縮することと、そのようなタンジェンシャルフローフィルターを使用して微小粒子を洗浄することと、が含まれる。
【0056】
実施例
本開示の特定の原理は、以下の非限定的実施例でさらに示されるであろう。
【0057】
実施例1:TDF内径が増加したTFDFシステム中のファウリングの減少およびフラックスの増加。
フィルトレーションプロセスは、TFDFのセットアップ中に非層クロスフローを生成するために設計された。これは、フィルターの入口で計算された2300より大きいレイノルズ数を生み出すためにTDFジオメトリパラメータとプロセス条件の組み合わせを選択することによって達成された。TDF直径および入口流速の操作は、所望のレイノルズ数を達成するのに十分であることが判明し、2300を上回る(たとえば、V>2m/s)Re値を生み出すように選択された流速で、1mmより大きい内径を持つTDF中で乱流効果が観察された。1mmより大きい内径を持つTDFにおいて、TFFプロセスで一般に使用されている剪断速度(<16,000s-1)が、乱流の作成に効果的であることが判明した。
【0058】
1mmより大きな内径を持つことに加えて、0.1mmを上回る壁厚は、高フラックス条件下でフィルターの構造的完全性を維持するうえで有用であり得ることが観察された。
【0059】
図4は、1.5mmまたは2.0mmのTDF内径を利用するTFDFシステムにおいて、フィルターフラックスが変化する中で観察された膜間圧(ΔTMP/sec)の変化を示す。ΔTMP/secの有意の増加は、チューブ状フィルトレーションエレメント(この場合はTDF)の内面におけるゲル層の形成と、フィルターのファウリング信号(signal fouling)とを示す。該図は、8000s-1の固定剪断速度で運転した場合に、1.5mmのTFDFセットアップが、400L・m-2・hr-1を上回るフラックスでファウリングを示した反面、2mmのTFDFセットアップが、最大2300L・m-2・hr-1のフラックスで目立ったファウリングを示さなかったことを示す。下の表2は、両方の条件についてフィルターパラメータおよび運転変数を示し;本システムは、主として供給時の各々のTDF直径およびレイノルズ数が異なっていたが、両システムにおいて同じ剪断速度を達成するために、異なる供給流速を使用した。
【表2】
【0060】
表2および図3のムーディ線図に示すように、供給フローが約8000s-1の一定剪断速度を維持するよう調整される場合、2mmシステムは4000のReに基づく供給で乱流を呈すると想定される反面、1.5mmシステムでの供給フローは略2000のReで層流であると想定される。
【0061】
結論
前述の開示は、本開示に従ってTFDFシステムのいくつかの例示的実施形態を示した。このような実施形態には制限する意図はなく、当業者は、本開示の趣旨および範囲を逸脱することなく前述のシステムおよび方法に対して、様々な追加または変更を行い得ることを容易に理解するであろう。加えて、前述の開示は主としてタンジェンシャルフローデプスフィルトレーションシステムおよびその適用業務に焦点を当てたが、当業者であれは、本開示の原理は従来の中空繊維TFFシステムを含む他のシステムに適用可能であることを理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-11-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端および第2端を有するフィルターであって、前記フィルターの第1端と第2端との間に伸び、前記フィルターの第1端および第2端の各々に対して開いた少なくとも1つのチューブ状デプスフィルター(TDF)を備え、各TDFは、少なくとも2mmの内径を有し、少なくとも100μmの厚さを有する多孔質壁を備え、前記TDFの壁は、小粒子が通過することを可能にするが、前記壁内の沈殿ゾーンおよび狭小チャンネルにおいて粒子を捕獲する曲がりくねったフロー経路を区画する、フィルターと;
前記フィルターの第1端および前記少なくとも1つのTDFと流体連絡するとともに生物流体を含むように構成される第1容器と;
前記第1容器および前記フィルターを通る生物流体のフローが、前記TDFの長さの少なくとも一部を通して層流範囲を上回るようにする速度で作動するポンプであって、ここで前記フィルターの第1端でのレイノルズ数(Re)が2000、2300、2500、3000、3500、または4000より大きい、ポンプと;
を備えるタンジェンシャルフローデプスフィルトレーション(tangential flow filtration depth filtration;TFDF)システム。
【請求項2】
各TDFは、2~5mmの内径を有する、請求項1に記載のTFDFシステム。
【請求項3】
前記ポンプは、2m/sより大きい供給速度を提供するように構成された、請求項1または2に記載のTFDFシステム。
【請求項4】
前記フィルターの第1端および第2端から流体的に分離され、前記少なくとも1つのTDFの少なくとも1つの外側表面と流体連絡する第2容器と;
前記フィルターの第2端および前記少なくとも1つのTDFに流体的に接続され、かつ前記第1容器に流体的に接続された第3容器と;
をさらに備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のTFDFシステム。
【請求項5】
前記ポンプの運転は、前記第1容器から前記少なくとも1つのTDFを通って、前記第2容器および第3容器の中に流体フローを推進する、請求項4に記載のTFDFシステム。
【請求項6】
前記第1容器と第3容器との間の、前記少なくとも1つのTDFを通る流体フローは、非層流である、請求項5に記載のTFDFシステム。
【請求項7】
小粒子が通過することを可能にするが、壁内の沈殿ゾーンおよび狭小チャンネルにおいて粒子を捕獲する曲がりくねったフロー経路を区画する壁を有する少なくとも1つのチューブ状デプスフィルター(TDF)の少なくとも一部分を通る生物流体のフローを非層流とするタンジェンシャルフローデプスフィルトレーション(tangential flow filtration depth filtration;TFDF)システムであって、前記少なくとも1つのTDFのそれぞれは、少なくとも2mmの内径を有する、TFDFシステム。
【請求項8】
前記TFDFシステムが、16,000s-1を下回る剪断速度で運転するように構成された、請求項7に記載のTFDFシステム。
【請求項9】
前記少なくとも1つのTDFは、焼結ポリマーまたはメルトブローンポリマーを備える、請求項1~8のいずれか一項に記載のTFDFシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1つのTDFの密度は、前記ポリマーの等価固体容積の密度の50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%または60%である、請求項9に記載のTFDFシステム。
【請求項11】
前記少なくとも1つのTDFは、バブルポイント試験で測定された場合に0.2~5ミクロンの平均細孔径またはファーストバブルポイントサイズを有する、請求項9または10に記載のTFDFシステム。
【請求項12】
前記少なくとも1つのTDFは、2~13mmの内径、および200~2000mmの長さを有する、請求項9~11のいずれか一項に記載のTFDFシステム。
【請求項13】
流体を濾過する方法であって、
請求項1~8のいずれか一項に記載のTFDFシステムに前記生物流体を通過させ、その結果前記生物流体が、非層流方式で前記少なくとも1つのTDFを通って流れるステップ
を備える方法。
【請求項14】
前記システムの供給速度と前記少なくとも1つのTDFの内径との積は、2500mm-1より大きい、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記フィルター内への流体フローを特徴付けるレイノルズ数は、2300、2500、3000、3500、または4000より大きい、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
生物流体を濾過する方法であって、
供給速度が2000、2300、2500、3000、3500、または4000倍、前記生物流体の動粘性率を前記少なくとも1つのTDFの直径で割った商より大きい条件下で、請求項4~6のいずれか一項に記載のTFDFシステムに前記生物流体を通過させるステップ
を備える方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つのTDFを通るフローの方向は交互に入れ替わる、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
フィルター透過液を収集するステップをさらに備える、請求項13~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つのTDFは、所望しない種を保持する、請求項13~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記保持された所望しない種は、哺乳類細胞由来の種;微生物細胞由来の種;ウイルス由来の種;蛋白質;核酸;多糖類;または前述のもののうち任意のものの複合体からなるグループから選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
所望の種は、前記少なくとも1つのTDFを通過して透過液中に入る、請求項13~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記所望の種は、哺乳類細胞由来の種;微生物細胞由来の種;ウイルス由来の種;蛋白質;核酸;多糖類;ウイルス;マイクロキャリア;粒子;または前述のもののうち任意のものの複合体からなるグループから選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記生物流体から透過液を除去するステップを含み、前記少なくとも1つのTDFによって保持された所望の種の濃度は、前記生物流体の濃度の5倍、10倍、20倍、40倍、50倍、75倍、または100倍増加する、請求項16または17に記載の方法。
【請求項24】
前記所望の種は、哺乳類細胞由来の種;微生物細胞由来の種;ウイルス由来の種;蛋白質;核酸;多糖類;ウイルス;マイクロキャリア;粒子;または前述のもののうち任意のものの複合体からなるグループから選択される、請求項23に記載の方法。