(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179653
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】高温用途のためのバリスタ
(51)【国際特許分類】
H01C 7/112 20060101AFI20231212BHJP
H01C 7/02 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H01C7/112
H01C7/02
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023175712
(22)【出願日】2023-10-11
(62)【分割の表示】P 2020556954の分割
【原出願日】2019-04-17
(31)【優先権主張番号】62/658,685
(32)【優先日】2018-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ブルートゥース
(71)【出願人】
【識別番号】500047848
【氏名又は名称】キョーセラ・エイブイエックス・コンポーネンツ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】ラビンドラナータン,パラニアッパン
(72)【発明者】
【氏名】ベロリーニ,マリアンヌ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】バリスタの従来最高使用温度約125℃を、より高い最高使用温度に改良する方法を提供する。
【解決手段】酸化亜鉛結晶粒及び酸化亜鉛結晶粒の間の粒界層から構成される焼結セラミックを含む誘電材料を含むバリスタであって、粒界層を基準として10モル%未満の正温度係数サーミスタ材料を含む。通常、粒界層は、負温度係数サーミスタ材料で形成され、高温ではそれによってブレークダウン電圧又は抵抗の低下、漏れ電流の増加などの問題がもたらされるが、正温度係数サーミスタ材料がその問題を補償する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化亜鉛結晶粒、及び前記酸化亜鉛結晶粒の間の粒界層から構成される焼結セラミックを含む誘電材料を含むバリスタであって、前記粒界層は、前記粒界層を基準として10モル%未満の量の正温度係数サーミスタ材料を含む、バリスタ。
【請求項2】
前記粒界層が、前記粒界層を基準として5モル%以下の量の正温度係数サーミスタ材料を含む、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項3】
前記粒界層が、前記粒界層を基準として0.1モル%~8モル%の量の正温度係数サーミスタ材料を含む、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項4】
前記粒界層が、前記粒界層を基準として4モル%~6モル%の量の正温度係数サーミスタ材料を含む、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項5】
前記正温度係数サーミスタ材料がチタン酸塩を含む、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項6】
前記チタン酸塩がチタン酸バリウムを含む、請求項5に記載のバリスタ。
【請求項7】
前記正温度係数サーミスタ材料がアルカリ土類金属炭酸塩を含む、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項8】
前記アルカリ土類金属炭酸塩が炭酸カルシウムを含む、請求項7に記載のバリスタ。
【請求項9】
前記正温度係数サーミスタ材料が希土類金属酸化物を含む、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項10】
前記希土類金属酸化物が酸化ランタンを含む、請求項9に記載のバリスタ。
【請求項11】
前記誘電材料がホウ素含有化合物を含む、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項12】
前記ホウ素含有化合物がホウ素含有酸を含む、請求項11に記載のバリスタ。
【請求項13】
前記ホウ素含有酸がホウ酸を含む、請求項12に記載のバリスタ。
【請求項14】
前記バリスタが125℃より高く300℃までの最高使用温度を有する、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項15】
前記バリスタが150℃~250℃の最高使用温度を有する、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項16】
前記バリスタが160℃~200℃の最高使用温度を有する、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項17】
前記バリスタが約10ボルト~約200ボルトのクランプ電圧を有する、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項18】
前記バリスタが約10ボルト~約150ボルトのブレークダウン電圧を有する、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項19】
前記バリスタが、18ボルトの動作電圧において約1μA以下の漏れ電流を有する、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項20】
前記バリスタが、18ボルトの動作電圧において約0.1μA~約0.6μAの漏れ電流を有する、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項21】
前記バリスタが約0.1pF~約50,000pFのキャパシタンスを有する、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項22】
前記バリスタが約250pF~約750pFのキャパシタンスを有する、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項23】
酸化亜鉛を焼成することによって誘電材料を形成すること;及び
次に焼成した酸化亜鉛を正温度係数サーミスタ材料と混合すること;
を含む、請求項1に記載のバリスタを形成する方法。
【請求項24】
前記焼成工程の後に酸化ビスマスを混合することを更に含む、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2018年4月17日の出願日を有する米国仮特許出願第62/658,685号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の出願の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
[0002]多層セラミックキャパシタ又はバリスタのような多層セラミックデバイスは、通常は複数の積層された誘電体-電極層によって構成される。製造中においては、しばしばこれらの層をプレスして、垂直に積層された構造体に成形することができる。一般に、バリスタは電圧依存性の非線形抵抗であり、サージ吸収素子、避雷器、及び電圧安定器として使用されている。バリスタは、例えば、敏感な電気コンポーネントと並列に接続することができる。バリスタの非線形抵抗応答は、しばしばクランプ電圧として知られるパラメーターによって特徴付けられる。バリスタのクランプ電圧未満の印加電圧に関しては、バリスタは一般に非常に高い抵抗を有し、而して開回路に類似して動作する。しかしながら、バリスタがバリスタのクランプ電圧よりも高い電圧に曝露されると、バリスタの抵抗は低下して、バリスタは短絡回路により類似して動作し、より大きな電流がバリスタを通って流れる。この非線形応答を用いて電流サージを敏感な電子コンポーネントから迂回させて、かかるコンポーネントを保護することができる。
【0003】
[0003]一般に、バリスタは約125℃以下の最高使用温度(operating temperature)を
有する。しかしながら、新しい電子機器及び通信製品の急速な発展に伴い、バリスタは更により高い最高使用温度を有することが望まれている。
【発明の概要】
【0004】
[0004]本発明の一実施形態によれば、バリスタが開示される。本バリスタは、酸化亜鉛結晶粒(zinc oxide grains)、及び酸化亜鉛結晶粒の間の粒界層(grain boundary layer)
から構成される焼結セラミックを含む誘電材料を含む。粒界層は、粒界層を基準として10モル%未満の量の正温度係数サーミスタ材料を含む。
【0005】
[0005]本発明の別の実施形態によれば、バリスタを形成する方法が開示される。バリスタは、酸化亜鉛結晶粒、及び酸化亜鉛結晶粒の間の粒界層から構成される焼結セラミックを含む誘電材料を含む。粒界層は、粒界層を基準として10モル%未満の量の正温度係数サーミスタ材料を含む。この方法は、酸化亜鉛を焼成して誘電材料を形成すること、次に焼成した酸化亜鉛を正温度係数サーミスタ材料と混合すること、を含む。
【0006】
[0006]当業者に対するそのベストモードを含む本発明の完全かつ実施可能な開示を、添付の図面の参照を含む本明細書の残りの部分においてより詳細に示す。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】[0007]
図1は、本発明の幾つかの態様によるバリスタの種々の特性を試験するために使用される代表的な電流パルスを示す。
【
図2】[0008]
図2は、本発明の幾つかの態様によるバリスタの代表的な試験中の電流及び電圧を示す。
【
図3】[0009]
図3A及び
図3Bは、本発明の幾つかの態様による誘電材料の断面の走査電子顕微鏡写真である。
【
図4】[0010]
図4は、実施例の試料No.1によるバリスタの、温度の関数としてのブレークダウン電圧を示す。
【
図5】[0011]
図5は、実施例の試料No.1によるバリスタの、温度の関数としてのクランプ電圧を示す。
【
図6】[0012]
図6は、実施例の試料No.1によるバリスタの、温度の関数としてのキャパシタンスを示す。
【
図7】[0013]
図7は、実施例の試料No.1によるバリスタの、温度の関数としての漏れ電流を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[0014]本明細書及び添付の図面全体にわたる参照符号の繰り返しの使用は、それらの同じか又は類似の特徴、構成要素、又は工程を表すことを意図している。
[0015]当業者であれば、本議論は代表的な実施形態の説明にすぎず、本発明のより広い態様を限定することは意図しないことを理解する。
【0009】
[0016]一般的に言えば、本発明はバリスタに関する。特に、本発明は、他の従来のバリスタよりも高い温度で動作させることができるバリスタに関する。例えば、本発明者らは、125℃より高い温度で動作させることができない多くのバリスタとは異なり、本明細書に開示されるバリスタは、125℃より高く、例えば150℃以上、例えば160℃以上の温度で動作させることができることを見出した。本バリスタは、300℃以下、例えば250℃以下、例えば200℃以下、例えば190℃以下、例えば180℃以下の最高使用温度を有し得る。
【0010】
[0017]更に、本バリスタは、低減したか、又はより厳格(tighter)なクランプ電圧を有
し得る。一般に、バリスタの有効抵抗(active resistance)を減少させることにより、低
減したクランプ電圧を与えることができる。例えばバリスタを形成するために使用される材料の特性、並びにバリスタ及びバリスタの電極の寸法などの多くのファクターが、バリスタの有効抵抗に寄与し得る。しかしながら、本バリスタは、上記に加えて、低いキャパシタンス(バリスタをキャパシタンス感受性回路に特に適するものにする)、及びバリスタの動作電圧における低い漏れ電流などの他の望ましい特性も示し得る。
【0011】
[0018]クランプ電圧に関しては、本バリスタは、約200ボルト以下、例えば約150ボルト以下、例えば約100ボルト以下、例えば約75ボルト以下、例えば約50ボルト以下、例えば約45ボルト以下、例えば約40ボルト以下、例ば約39ボルト以下のクランプ電圧を有し得る。本バリスタは、約1ボルト以上、例えば約5ボルト以上、例えば約10ボルト以上、例えば約20ボルト以上、例えば約30ボルト以上、例えば約35ボルト以上、例えば約50ボルト以上、例えば約100ボルト以上のクランプ電圧を有し得る。かかるクランプ電圧は、-55℃、例えば-25℃、例えば0℃、例えば25℃、例えば50℃、例えば75℃、例えば100℃、例えば125℃、例えば150℃、例えば175℃、例えば200℃において達成し得る。例えば、かかるクランプ電圧は、50℃~200℃、例えば150℃~200℃、例えば175℃~200℃の温度において達成し得る。
【0012】
[0019]クランプ電圧は、当該技術において一般に使用される方法を使用して求めることができることを理解すべきである。例えば、クランプ電圧は、Frothingham Electronic Corporation FEC CV400ユニットを使用して測定することができる。バリスタは、例えばANSI標準規格C62.1にしたがって8/20μsの電流波にかけることができる。電流波は、約10A以下、例えば約5A以下、例えば約2.5A以下、例えば約1A以下、例えば約500mA以下、例えば約100mA以下、例えば約50mA以下、例えば約10mA以下、例えば約1mA以下のピーク電流値を有していてよい。下記においてより詳細に説明するように、ピーク電流値は、バリスタに電圧を「クランプ」させるように選択することができる。代表的な電流波を
図1に示す。電流(縦軸202)が時間(横軸20
4)に対してプロットされている。電流をピーク電流値206まで増加させ、次に減衰させることができる。「立ち上がり」時間(縦点線206によって示される)は、電流パルスの開始(t=0)から、電流がピーク電流値206の90%(横点線208によって示される)に達するまでであり得る。「立ち上がり」時間は8μsであってよい。「減衰時間」(縦点線210によって示される)は、電流パルスの開始(t=0)からピーク電流値206の50%(横点線212によって示される)までであり得る。「減衰時間」は20μsであってよい。クランプ電圧は、電流波中のバリスタの両端の最大電圧として測定される。
図2を参照すると、バリスタの両端の電圧(横軸302)が、バリスタを通る電流(縦軸304)に対してプロットされている。
図2に示されるように、電圧がブレークダウン電圧306を超えると、バリスタを通る更なる電流によってバリスタの両端の電圧は大きくは増加しない。言い換えれば、バリスタはほぼクランプ電圧308において電圧を「クランプ」する。而して、クランプ電圧308は、電流波中にバリスタの両端間で測定される最大電圧として正確に測定することができる。これは、ピーク電流値310がバリスタを損傷するほど大きくない限り、依然として正しい。
【0013】
[0020]低減したか又はより厳格なクランプ電圧に加えて、本バリスタは低いブレークダウン電圧を有し得る。ブレークダウン電圧は、約150ボルト以下、例えば約100ボルト以下、例えば約75ボルト以下、例えば約50ボルト以下、例えば約40ボルト以下、例えば約35ボルト以下、例えば約30ボルト以下、例えば約27ボルト以下であり得る。本バリスタは、約1ボルト以上、例えば約5ボルト以上、例えば約10ボルト以上、例えば約15ボルト以上、例えば約20ボルト以上、例えば約25ボルト以上、例えば約50ボルト以上、例えば約75ボルト以上、例えば約100ボルト以上のブレークダウン電圧を有し得る。かかるブレークダウン電圧は、-55℃、例えば-25℃、例えば0℃、例えば25℃、例えば50℃、例えば75℃、例えば100℃、例えば125℃、例えば150℃、例えば175℃、例えば200℃において達成し得る。例えば、かかるブレークダウン電圧は、50℃~200℃、例えば150℃~200℃、例えば175℃~200℃の温度において達成し得る。
【0014】
[0021]一般に、本バリスタはまた、低いキャパシタンスも示し得る。例えば、本バリスタは、約0.1pF以上、例えば約1pF以上、例えば約5pF以上、例えば約10pF以上、例えば約25pF以上、例えば約50pF以上、例えば約100pF以上、例えば約200pF以上、例えば約250pF以上、例えば約300pF以上、例えば約400pF以上、例えば約450pF以上、例えば約500pF以上、例えば約1,000pF以上、例えば約5,000pF以上、例えば約10,000pF以上、例えば約25,000pF以上のキャパシタンスを有し得る。本バリスタは、約50,000pF以下、例えば約40,000pF以下、例えば約30,000pF以下、例えば約20,000pF以下、例えば約10,000pF以下、例えば約5,000pF以下、例えば約2,500pF以下、例えば約1,000pF以下、例えば約900pF以下、例えば約800pF以下、例えば約750pF以下、例えば約700pF以下、例えば約600pF以下、例えば約550pF以下、例えば約500pF以下のキャパシタンスを有し得る。かかるキャパシタンスは、-55℃、例えば-25℃、例えば0℃、例えば25℃、例えば50℃、例えば75℃、例えば100℃、例えば125℃、例えば150℃、例えば175℃、例えば200℃において達成し得る。例えば、かかるキャパシタンスは、50℃~200℃、例えば150℃~200℃、例えば175℃~200℃の温度において達成し得るる。
【0015】
[0022]また、本バリスタは低い漏れ電流を示し得る。例えば、18ボルトの動作電圧における漏れ電流は、約1000μA以下、例えば約500μA以下、例えば約100μA以下、例えば約50μA以下、例えば約40μA以下、例えば約30μA以下、例えば約25μA以下、例えば約20μA以下、例えば約15μA以下、例えば約10μA以下、
例えば約5μA以下、例えば約4μA以下、例えば約3μA以下、例えば約2μA以下、例えば約1μA以下、例えば約0.8μA以下、例えば約0.6μA以下、例えば約0.5μA以下、例えば約0.4μA以下、例えば約0.3μA以下、例えば約0.25μA以下、例えば約0.2μA以下、例えば約0.15μA以下であり得る。18ボルトの動作電圧における漏れ電流は、0μAより高く、例えば約0.001μA以上、例えば約0.01μA以上、例えば約0.05μA以上、例えば約0.08μA以上、例えば約0.1μA以上、例えば約0.12μA以上、例えば約0.15μA以上、例えば約0.2μA以上、例えば約0.25μA以上、例えば約0.3μA以上であり得る。かかる漏れ電流は、-55℃、例えば-25℃、例えば0℃、例えば25℃、例えば50℃、例えば75℃、例えば100℃、例えば125℃、例えば150℃、例えば175℃、例えば200℃において達成し得る。例えば、かかる漏れ電流は、50℃~200℃、例えば150℃から200℃、例えば175℃~200℃の温度において達成し得る。
【0016】
[0023]かかる漏れ電流は、150℃及び18ボルト(又は20ボルト)において行う寿命試験によって求めて、一定時間の後においても比較的低く維持し得る。例えば、漏れ電流は、約250時間後においても、約1000μA以下、例えば約500μA以下、例えば約100μA以下、例えば約50μA以下、例えば約40μA以下、例えば約30μA以下、例えば約25μA以下、例えば約20μA以下、例えば約15μA以下、例えば約10μA以下、例えば約5μA以下、例えば約4μA以下、例えば約3μA以下、例えば約2μA以下、例えば約1μA以下、例えば約0.8μA以下、例えば約0.6μA以下、例えば約0.5μA以下、例えば約0.4μA以下、例えば約0.3μA以下、例えば約0.25μA以下、例えば約0.2μA以下、例えば0.15μA以下であり得る。漏れ電流は、250時間後においても、0μAより高く、例えば約0.001μA以上、例えば約0.01μA以上、例えば約0.05μA以上、例えば約0.08μA以上、例えば約0.1μA以上、例えば約0.12μA以上、例えば約0.15μA以上、例えば約0.2μA以上、例えば約0.25μA以上、例えば約0.3μA以上であり得る。一実施形態においては、本バリスタは、500時間後においても、漏れ電流に関してかかる上述の値を示し得る。別の実施形態においては、本バリスタは、少なくとも1000時間、例えば少なくとも1500時間後においても、漏れ電流に関してかかる上述の値を示し得る。更なる実施形態においては、本バリスタは、2000時間後においても、漏れ電流に関してかかる上述の値を示し得る。かかる漏れ電流は、-55℃、例えば-25℃、例えば0℃、例えば25℃、例えば50℃、例えば75℃、例えば100℃、例えば125℃、例えば150℃、例えば175℃、例えば200℃において達成し得る。例えば、かかる漏れ電流は、50℃~200℃、例えば150℃~200℃、例えば175℃~200℃の温度において達成し得る。
【0017】
[0024]更に、漏れ電流は、一定時間後には、初期漏れ電流と比べて実際にはより低くなり得る。例えば、2時間後、例えば4時間後、例えば6時間後、例えば8時間後、例えば10時間後、例えば12時間後の漏れ電流は、150℃及び18ボルトにおいて測定して、初期漏れ電流よりも低くなり得る。例えば、かかる漏れ電流は、初期漏れ電流よりも少なくとも5%、例えば少なくとも10%、例えば少なくとも20%、例えば少なくとも30%、例えば少なくとも40%、例えば少なくとも50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも70%低くなり得る。
【0018】
[0025]また、上述のようなより高い温度においては、漏れ電流は、本発明の正温度係数サーミスタ材料及び/又はホウ素含有化合物を含まない誘電材料を含むバリスタの漏れ電流よりも少なくとも30%、例えば少なくとも40%、例えば少なくとも50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも70%低くなり得る。例えば、一例として、対照のバリスタは150℃において約4.6μAの漏れ電流を示し得、一方で本明細書で開示されるバリスタは150℃において約1.6μAの漏れ電流を示し得、而して約65%の低
減を示し得る。
【0019】
[0026]一般に、本バリスタは、長手方向にオフセットした第1及び第2の対向する端面を画定する長方形の構造を含み得る。本バリスタは、第1の対向する端面に隣接する第1の端子、及び第2の対向する端面に隣接する第2の端子を含み得る。本バリスタはまた、第1の端子と電気的に接続された第1の電極、及び第2の端子と電気的に接続された第2の電極を含む活性電極層を含み得る。第1の電極は、長手方向に第2の電極から離間させて、活性電極のエンドギャップを形成することができる。本バリスタには、浮遊電極を含む浮遊電極層を含ませることができる。浮遊電極層は、高さ方向に活性電極層から離間させて浮遊電極ギャップを形成することができる。
【0020】
[0027]本バリスタには、複数の交互配列の誘電体層を含ませることができ、それぞれの層に電極を含ませることができる。誘電体層は、一緒にプレス及び焼結して一体構造を形成することができる。誘電体層には、例えば、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、又は任意の他の好適な誘電材料のような任意の好適な誘電材料を含ませることができる。
【0021】
[0028]1つの特定の実施形態においては、誘電材料は酸化亜鉛から形成することができる。この点に関して、酸化亜鉛は、誘電材料の大部分を構成することができる。例えば、酸化亜鉛は、誘電材料の重量を基準として50重量%より多く、例えば約60重量%以上、例えば約70重量%以上、例えば約80重量%以上、例えば約85重量%以上の量で存在させることができる。酸化亜鉛は、誘電材料の重量を基準として、100重量%未満、例えば約95重量%以下、例えば約90重量%以下、例えば約87重量%以下の量で存在させることができる。同様に、酸化亜鉛は、誘電材料の50モル%より多く、例えば約60モル%以上、例えば約70モル%以上、例えば約80モル%以上、例えば約90モル%以上、例えば約93モル%以上、例えば約95モル%以上の量で存在させることができる。酸化亜鉛は、誘電材料の100モル%未満、例えば約99モル%以下、例えば約98モル%以下、例えば約97モル%以下、例えば約96モル%以下の量で存在させることができる。
【0022】
[0029]例えば、誘電材料の電圧依存性抵抗を生成又は増大させる種々の添加剤を誘電材料中に含ませることができる。例えば、幾つかの実施形態においては、添加剤としては、金属酸化物、酸の金属塩、又はそれらの組み合わせを挙げることができる。一実施形態においては、添加剤としては、コバルト、アンチモン、ビスマス、マンガン、ニッケル、ガリウム、アルミニウム、クロム、チタン、鉛、バリウム、バナジウム、スズ、又はそれらの組合せの酸化物のような金属酸化物を挙げることができる。一実施形態においては、添加剤としては、アンチモン、コバルト、ニッケル、クロム、ビスマス、又はそれらの任意の組合せの酸化物を挙げることができる。添加剤としてはまた、金属炭酸塩、金属硝酸塩などのような酸の金属塩、又はそれらの組み合わせを挙げることもできる。かかる金属としては、コバルト、アンチモン、ビスマス、マンガン、ニッケル、ガリウム、アルミニウム、クロム、チタン、鉛、バリウム、バナジウム、スズ、又はそれらの組み合わせを挙げることができる。この点に関して、一実施形態においては、添加剤としては、炭酸マンガン、硝酸アルミニウム、又はそれらの組合せを挙げることができる。1つの特定の実施形態においては、添加剤として上述の金属酸化物及び酸の金属塩を挙げることができる。
【0023】
[0030]かかる添加剤は、個々か又は組み合わせて、誘電材料の重量を基準として、約0.001重量%以上、例えば約0.01重量%以上、例えば約0.02重量%以上、例えば約0.05重量%以上、例えば約0.1重量%以上、例えば約0.2重量%以上、例えば約0.5重量%以上、例えば約1重量%以上、例えば約2重量%以上、例えば約3重量%以上、例えば約5重量%以上の量で誘電材料中に存在させることができる。かかる添加剤は、個々か又は組み合わせて、誘電材料の重量を基準として、15重量%以下、例えば
約10重量%以下、例えば約9重量%以下、例えば約8重量%以下、例えば約5重量%以下、例えば約3重量%以下、例えば約2重量%以下、例えば約1重量%以下、例えば約0.5重量%以下の量で誘電材料中に存在させることができる。
【0024】
[0031]かかる添加剤は、個々か又は組み合わせて、誘電材料の約0.001モル%以上、例えば約0.01モル%以上、例えば約0.02モル%以上、例えば約0.05モル%以上、例えば約0.1モル%以上、例えば約0.2モル%以上、例えば約0.4モル%以上、例えば約0.5モル%以上、例えば約0.8モル%以上、例えば約1モル%以上、例えば約1.2モル%以上、例えば約1.4モル%以上、例えば約1.5モル%以上の量で誘電材料中に存在させることができる。かかる添加剤は、個々か又は組み合わせて、誘電材料の10モル%未満、例えば約8モル%以下、例えば約5モル%以下、例えば約3モル%以下、例えば約2モル%以下、例えば約1.8モル%以下、例えば約1.6モル%以下、例えば約1.3モル%以下、例えば約1モル%以下、例えば約0.8モル%以下、例えば約0.6モル%以下、例えば約0.5モル%以下、例えば約0.3モル%以下、例えば約0.2モル%以下、例えば約0.1モル%以下の量で誘電材料中に存在させることができる。
【0025】
[0032]一般に、誘電材料は、焼成することにより、粒界層によって分離された酸化亜鉛の結晶粒を含み得る。通常は、粒界層は、負温度係数サーミスタ材料(その抵抗は温度の上昇と共に減少し、温度が上昇すると粒界層の材料はより移動性になる)で形成される。これにより、ブレークダウン電圧又は抵抗の低下、又は漏れ電流の増加がもたらされる可能性がある。かかる効果を打ち消すために、誘電材料に正温度係数サーミスタ材料を含ませることができる。一般に、バリスタの使用温度が上昇した際には、正温度係数サーミスタ材料はその抵抗を急激に増加させて、特に粒界層中における、低下した温度によって取り除かれる負温度係数サーミスタ材料の減少した抵抗を少なくとも部分的に補償するようになる。かかるシフトによって、バリスタが増加した漏れ電流及び減少したブレークダウン電圧を有することが妨げられる。この点に関して、正温度係数の材料は、一般に温度の上昇に伴って抵抗の増加を示す。
【0026】
[0033]正温度係数サーミスタ材料は、当該技術において一般に知られている任意のタイプの材料であってよい。例えば、正温度係数サーミスタ材料としては、多結晶質材料、チタン酸塩、金属酸化物、又はそれらの混合物を挙げることができる。
【0027】
[0034]一実施形態においては、かかる材料は多結晶質であってよい。多結晶質材料はセラミックであってよい。多結晶質材料は、シュウ酸塩、炭酸塩、又はそれらの混合物であってよい。一実施形態においては、かかる材料は炭酸塩であってよい。炭酸塩は、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、遷移金属炭酸塩、希土類金属炭酸塩、又はそれらの混合物であってよい。例えば、アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、又はそれらの混合物であってよい。アルカリ土類金属は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、又はそれらの混合物であってよい。遷移金属は、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Al、Ri、Zr、Sn、Nb、W、又はそれらの混合物であってよい。希土類金属は、Ce、Dy、Er、Eu、Gd、Ho、La、Lu、Nd、Pr、Pm、Sm、Sc、Tb、Tm、Y、Yb、又はそれらの混合物であってよい。
【0028】
[0035]一実施形態においては、炭酸塩はアルカリ金属炭酸塩であってよい。別の実施形態においては、炭酸塩はアルカリ土類金属炭酸塩であってよい。例えば、アルカリ土類金属炭酸塩は、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、又はそれらの混合物であってよい。1つの特定の実施形態においては、かかる材料は炭酸カルシウムであってよい。更なる実施形態においては、炭酸塩は遷移金属炭酸塩であって
よい。例えば、遷移金属炭酸塩は炭酸マンガンであってよい。
【0029】
[0036]別の実施形態においては、かかる材料はチタン酸塩であってよい。例えば、チタン酸塩は、一般式:ABO3(式中、Aは金属であり、BはTiである)を有していてよい。金属は、必ずしも限定されず、当該技術において使用される任意の金属であってよい。例えば、金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、又は希土類金属であってよい。例えば、アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、又はそれらの混合物であってよい。アルカリ土類金属は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、又はそれらの混合物であってよい。遷移金属は、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Al、Ri、Zr、Sn、Nb、W、又はそれらの混合物であってよい。希土類金属は、Ce、Dy、Er、Eu、Gd、Ho、La、Lu、Nd、Pr、Pm、Sm、Sc、Tb、Tm、Y、Yb、又はそれらの混合物であってよい。
【0030】
[0037]一実施形態においては、AはBaであって、チタン酸塩はチタン酸バリウムである。別の実施形態においては、AはSrであって、チタン酸塩はチタン酸ストロンチウムである。この点に関して、チタン酸塩は、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、又はそれらの組み合わせであってよい。一実施形態においては、チタン酸塩はチタン酸バリウムであってよい。特に、チタン酸バリウムはガラス質チタン酸バリウムであってよい。別の実施形態においては、かかる材料はチタン酸バリウムをドープしたチタン酸ストロンチウムであってよい。
【0031】
[0038]更に、1種類より多いチタン酸塩を材料中において用いることができることを理解すべきである。特にチタン酸バリウム及びチタン酸ストロンチウムを言及しているが、他のチタン酸塩も使用できることを理解すべきである。例えば、これらとしてチタン酸鉛又はチタン酸カルシウムを挙げることができるが、これらに限定されない。この点に関して、チタン酸塩は、本明細書において言及する複数のチタン酸塩の任意の組み合わせであってよいことを理解すべきである。
【0032】
[0039]チタン酸塩が複数のチタン酸塩の組み合わせを含み、チタン酸塩の少なくとも1つがチタン酸バリウムである場合には、チタン酸バリウムは、全てのチタン酸塩の総量を基準として、少なくとも50モル%、例えば少なくとも60モル%、例えば少なくとも70モル%、例えば少なくとも80モル%、例えば少なくとも90モル%、例えば少なくとも95モル%、例えば少なくとも98モル%、例えば少なくとも99モル%、例えば少なくとも99.9モル%の量で存在させることができる。
【0033】
[0040]別の実施形態においては、かかる材料は金属酸化物であってよい。金属は、当該技術において一般に知られている任意の金属であってよい。例えば、金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、又は希土類金属であってよい。例えば、アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、又はそれらの混合物であってよい。アルカリ土類金属は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、又はそれらの混合物であってよい。遷移金属は、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Al、Ri、Zr、Sn、Nb、W、又はそれらの混合物であってよい。希土類金属は、Ce、Dy、Er、Eu、Gd、Ho、La、Lu、Nd、Pr、Pm、Sm、Sc、Tb、Tm、Y、Yb、又はそれらの混合物であってよい。
【0034】
[0041]1つの特定の実施形態においては、金属酸化物は希土類金属酸化物であってよい。例えば、希土類金属酸化物は酸化ランタンであってよい。
[0042]かかる正温度係数の材料は、上述の添加剤、例えば金属酸化物及び酸の金属塩の言及した量で誘電材料中に存在させることができる。
【0035】
[0043]正温度係数サーミスタ材料は、特定の濃度で粒界層内に存在させることができる。特に、かかる材料は、10モル%未満、例えば約8モル%以下、例えば約6モル%以下、例えば約5モル%以下、例えば約3モル%以下、例えば約2モル%以下、例えば約1モル%以下、例えば約0.8モル%以下、例えば約0.6モル%以下、例えば約0.4モル%以下、例えば約0.3モル%以下、例えば約0.2モル%以下の量で粒界層内に存在させることができる。この材料は、0モル%より多く、例えば約0.001モル%以上、例えば約0.005モル%以上、例えば約0.01モル%以上、例えば約0.02モル%以上、例えば約0.05モル%以上、例えば約0.1モル%以上、例えば約0.15モル%以上、例えば約0.2モル%以上、例えば約0.25モル%以上、例えば約0.3モル%以上、例えば約0.5モル%以上、例えば約1モル%以上、例えば約2モル%以上、例えば約3モル%以上、例えば約4モル%以上の量で粒界層内に存在させることができる。
【0036】
[0044]多結晶質材料、チタン酸塩、金属酸化物、又はそれらの混合物に加えて、この材料に半導体添加剤を更に含ませることができる。例えば、一実施形態においては、かかる添加剤によって、半導体変態及びキュリー点(又はキュリー温度)の調節を可能にすることができる。かかる添加剤は、Li、Ca、Mg、Sr、Ba、Sn、Mn、Si、Zr、Nb、Al、Nd、Sb、Sm、Bi、Ce、Pb、Si、Sc、Er、Sn、Pr、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Y、Yb、Ho、Tm、Lu、La、又はそれらの混合物を含む金属であってよい。一実施形態においては、かかる添加剤は希土類金属であってよい。例えば、かかる希土類金属は、Ce、Dy、Er、Eu、Gd、Ho、La、Lu、Nd、Pr、Pm、Sm、Sc、Tb、Tm、Y、Yb、又はそれらの混合物であってよい。一実施形態においては、かかる金属として、Sm、Pb、Nd、La、又はそれらの混合物を挙げることができる。例えば、1つの特定の実施形態においては、金属に少なくともSmを含ませることができる。別の特定の実施形態においては、金属に少なくともLaを含ませることができる。
【0037】
[0045]かかる添加剤は、正温度係数サーミスタ材料の量を基準として、0.001モル%以上、例えば0.01モル%以上、例えば0.05モル%以上、例えば0.1モル%以上、乃至2モル%以下、例えば1モル%以下、例えば0.8モル%以下、例えば0.5モル%以下の量で存在させることができる。一実施形態においては、正温度係数サーミスタ材料がチタン酸塩である場合には、上述のモル%はチタン酸塩中に存在するチタンの量を基準とするものであり得る。
【0038】
[0046]更に、誘電材料の平均粒径は、誘電材料の非線形特性に寄与し得る。幾つかの実施形態においては、平均粒径は、約1ミクロン以上、例えば約2ミクロン以上、例えば約5ミクロン以上、例えば約10ミクロン以上、例えば約20ミクロン以上であってよい。平均粒径は、約100ミクロン以下、例えば約80ミクロン以下、例えば約50ミクロン以下、例えば約40ミクロン以下、例えば約25ミクロン以下、例えば約20ミクロン以下、例えば約10ミクロン以下であってよい。
【0039】
[0047]上記に加えて、誘電材料にはまた、ホウ素含有化合物を含ませることもできる。例えば、ホウ素含有化合物としては、ホウ素含有酸を挙げることができる。一実施形態においては、かかるホウ素含有酸としては、ホウ酸、ボロン酸、又はそれらの組合せを挙げることができる。1つの特定の実施形態においては、かかるホウ素含有化合物としては、ホウ酸を挙げることができる。本発明はまた、かかる化合物の誘導体並びに種々の位置における置換基も包含する。
【0040】
[0048]本発明者らは、かかるホウ素含有化合物は誘電体内に島部を形成し得ることを見出した。例えば、島部は、連続ガラス相、例えばビスマス含有連続ガラス相を電流が通過するのを遮断することができる。かかる島部を、
図3A及び
図3Bに関連して説明し、示
す。
図3Aは、誘電材料がホウ素含有化合物を含まず、島部が観察されない場合の、表面破壊の走査型電子顕微鏡写真である。一方、
図3Bは、誘電材料がホウ素含有化合物、特にホウ酸を含み、島部が観察される場合の、表面破壊の走査型電子顕微鏡写真である。ホウ酸によって、
図3Bにおいて、島部100が誘電体内に存在する。理論によって限定されることは意図しないが、かかるホウ素含有化合物は、結晶粒間の導電性の切断を可能にすることができ、また、より良好な粒界を画定すること、及び/又は粒界を安定化することを助けることができる。
【0041】
[0049]かかるホウ素含有化合物は、誘電材料の重量を基準として、約0.01重量%以上、例えば約0.1重量%以上、例えば約0.2重量%以上、例えば約0.3重量%以上、例えば約0.5重量%以上、例えば約0.6重量%以上の量で誘電材料中に存在させることができる。かかるホウ素含有化合物は、誘電材料の重量を基準として、約5重量%以下、例えば約3重量%以下、例えば約2重量%以下、例えば約1重量%以下、例えば約0.6重量%以下、例えば約0.5重量%以下の量で誘電材料中に存在させることができる。
【0042】
[0050]誘電材料は、種々の方法を使用して製造することができる。誘電材料を形成するための1つの方法には、酸化亜鉛を最初に上述の金属酸化物及び酸の金属塩のような他の添加剤と混合及び/又は(例えば1050℃において)焼成することを含ませることができる。例えば、酸化亜鉛を最初に、酸化アンチモン、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化クロム、炭酸マンガン、硝酸アルミニウム、及びシリカと混合して焼成することができる。その後、焼成した酸化亜鉛を他の成分と混合することができる。例えば、焼成した酸化亜鉛を、酸化ビスマスのような他の酸化物、正温度係数サーミスタ材料、ホウ素含有化合物、又はそれらの組み合わせと混合することができる。この点に関して、酸化ビスマスのような他の酸化物は、最初の焼成工程において導入しなくてもよいが、第2の混合工程において導入することができる。同様に、正温度係数サーミスタ材料は、最初の焼成工程において導入しなくてもよいが、第2の混合工程において導入することができる。また、ホウ素含有化合物は、最初の焼成工程において導入しなくてもよいが、第2の混合工程において導入することができる。理論によって限定されることは意図しないが、本発明者らは、かかる方法によって、酸化ビスマスを溶融させ、チタン酸バリウムのような正温度係数サーミスタ材料を焼成した酸化亜鉛と反応させることを可能にすることができ、かかるプロセスによって低い漏れ電流を可能にすることができることを見出した。
【0043】
[0051]更に、バリスタの特定の構成は本発明によって限定されないことを理解すべきである。例えば、誘電体層及び電極の構成は、本発明によって限定されず、任意の構成を使用することができる。一般に、本バリスタには交互に配される第1の層及び第2の層を含ませることができ、ここで、それぞれの第1の層には第1の端子と接続されている第1の電極を含ませることができ、それぞれの第2の層には第2の端子と接続されている第2の電極を含ませることができる。電極は、パラジウム、銀、白金、銅のような導体、又は誘電体層上に印刷することができる他の好適な導体から形成することができる。バリスタには、上部誘電体層及び底部誘電体層を含ませることができ、上部及び底部誘電体層の1以上にダミー電極を含ませることができる。
【0044】
[0052]更に、本発明は誘電体-電極層のいかなる特定の数にも限定されないことを理解されたい。例えば、幾つかの実施形態においては、バリスタに、2以上の誘電体-電極層、4以上の誘電体-電極層、8以上の誘電体-電極層、10以上の誘電体-電極層、20以上の誘電体-電極層、30以上の誘電体-電極層、又は任意の好適な数の誘電体-電極層を含ませることができる。
【0045】
[0053]上述のように、バリスタは少なくとも2つの外部端子を含み、第1の端子はバリ
スタの第1の端面上に配置され、第2の端子はバリスタの第2の端面上に配置され、第2の端面は第1の端面に対向している。端子には、白金、銅、パラジウム、銀、又は他の好適な導体材料のメタライゼーション層を含ませることができる。クロム/ニッケル層、続いてスパッタリングのような通常の加工技術によって施される銀/鉛層を、端子構造体のための外側導電層として使用することができる。
【0046】
[0054]本明細書に開示されるバリスタは、広範囲のデバイスにおいて用途を見出すことができる。例えば、本バリスタは、無線周波数アンテナ/増幅器回路において使用することができる。本バリスタはまた、レーザードライバー、センサー、レーダー、無線周波数識別チップ、近距離無線通信、データライン、ブルートゥース、光学機器、イ-サネット、及び任意の好適な回路などの種々の技術において用途を見出すこともできる。
【0047】
[0055]本明細書に開示されるバリスタはまた、自動車産業において特定の用途を見出すこともできる。例えば、本バリスタは、自動車用途において、上述の回路のいずれかにおいて使用することができる。かかる用途に関しては、厳しい耐久性及び/又は性能の要求を満足するために、受動電気コンポーネントが求められる場合がある。例えば、AEC-Q200標準規格では、幾つかの自動車用途が規制されている。本発明の幾つかの態様によるバリスタは、例えばAEC-Q200-002パルス試験などの1以上のAEC-Q200試験を満足することが可能であり得る。
【0048】
[0056]超低キャパシタンスバリスタは、データ処理及び伝送技術において特定の用途を見出すことができる。例えば、本発明の幾つかの態様は、約1pF未満のキャパシタンスを示すバリスタに関する。かかるバリスタは、例えば高周波データ伝送回路において最小の信号歪みに寄与し得る。
【実施例0049】
[0057]本発明は以下の実施例を参照することにより、より良好に理解することができる。
試験方法:
[0058]以下のセクションは、種々のバリスタ特性を求めるためにバリスタを試験する方法の例を与える。
【0050】
[0059]クランプ電圧及びブレークダウン電圧:バリスタのクランプ電圧は、Frothingham Electronic Corporation FEC CV400ユニットを使用して測定することができる。再び
図2を参照すると、クランプ電圧308は、立ち上がり時間が8μsであり、減衰時間が20μsである8×20μsの電流パルス中にバリスタの両端間で測定される最大電圧として正確に測定することができる。これは、ピーク電流値310がバリスタを損傷するほど大きくない限り、依然として正しい。
【0051】
[0060]ブレークダウン電圧306は、バリスタの電流と電圧との関係における変曲点として検出することができる。
図2を参照すると、ブレークダウン電圧306よりも高い電圧に関しては、電流は、ブレークダウン電圧306よりも低い電圧と比較して、電圧の増加に伴ってより急激に増加し得る。例えば、
図2は、電圧に対する電流の対数-対数プロットを表す。ブレークダウン電圧306未満の電圧に関しては、理想的なバリスタは一般に、概して次の関係式:
V=CI
β
にしたがう電圧を示し得る。
【0052】
[0061]ここで、Vは電圧を表し;Iは電流を表し;C及びβはバリスタの特性(例えば材料特性)に依存する定数である。バリスタに関しては、定数βは概して1未満であって
、この領域においては、電圧はオームの法則にしたがう理想的な抵抗よりも急激には増加しない。
【0053】
[0062]しかしながら、ブレークダウン電圧306よりも高い電圧に関しては、電流と電圧との関係は、概してほぼオ-ムの法則にしたがうことができ、ここでは電流は電圧と線形関係:
V=IR
にある。
【0054】
[0063]ここで、Vは電圧を表し;Iは電流を表し;Rは大きな一定の抵抗値である。電流と電圧との関係は上述のように測定することができ、任意の好適なアルゴリズムを使用して、実験によって収集された電流と電圧とのデータセットにおける変曲点を求めることができる。
【0055】
[0064]キャパシタンス:スーパーキャパシタのキャパシタンスは、Keithley 3330精密
LCZメ-タを使用し、0.0ボルト、1.1ボルト、又は2.1ボルト(0.5ボルトの二乗平均平方根正弦波信号)のDCバイアスを使用して測定することができる。動作周波数は、他に示さない限りにおいて1,000Hzである。相対湿度は25%である。
【0056】
実施例1:
[0065]本明細書で規定されるバリスタを、下記及び下表に示す仕様にしたがって製造した。23℃の室温において、ブレークダウン電圧、クランプ電圧、キャパシタンス、及び漏れ電流を求めた。
【0057】
【0058】
[0066]室温に加えて、試料No.1は更なる温度において試験した。例えば、試料No.1は、-55℃、25℃、125℃、150℃、175℃、及び200℃において試験した。ブレークダウン電圧、クランプ電圧、キャパシタンス、及びリーク電流の値を、それぞれ
図4~
図7に示す。
【0059】
[0067]本発明のこれら及び他の修正及び変更は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく当業者によって実施することができる。更に、種々の実施形態の複数の態様は、全体的に又は部分的に交換することができることを理解すべきである。更に、当業者であれば、上述の説明が単に例としてであり、添付の特許請求の範囲において更に記載される発
明を限定することは意図しないことを理解する。
[0067]本発明のこれら及び他の修正及び変更は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく当業者によって実施することができる。更に、種々の実施形態の複数の態様は、全体的に又は部分的に交換することができることを理解すべきである。更に、当業者であれば、上述の説明が単に例としてであり、添付の特許請求の範囲において更に記載される発明を限定することは意図しないことを理解する。
本発明は以下の実施態様を含む。
[1]酸化亜鉛結晶粒、及び前記酸化亜鉛結晶粒の間の粒界層から構成される焼結セラミックを含む誘電材料を含むバリスタであって、前記粒界層は、前記粒界層を基準として10モル%未満の量の正温度係数サーミスタ材料を含む、バリスタ。
[2]前記粒界層が、前記粒界層を基準として5モル%以下の量の正温度係数サーミスタ材料を含む、[1]に記載のバリスタ。
[3]前記粒界層が、前記粒界層を基準として0.1モル%~8モル%の量の正温度係数サーミスタ材料を含む、[1]に記載のバリスタ。
[4]前記粒界層が、前記粒界層を基準として4モル%~6モル%の量の正温度係数サーミスタ材料を含む、[1]に記載のバリスタ。
[5]前記正温度係数サーミスタ材料がチタン酸塩を含む、[1]に記載のバリスタ。
[6]前記チタン酸塩がチタン酸バリウムを含む、[5]に記載のバリスタ。
[7]前記正温度係数サーミスタ材料がアルカリ土類金属炭酸塩を含む、[1]に記載のバリスタ。
[8]前記アルカリ土類金属炭酸塩が炭酸カルシウムを含む、[7]に記載のバリスタ。
[9]前記正温度係数サーミスタ材料が希土類金属酸化物を含む、[1]に記載のバリスタ。
[10]前記希土類金属酸化物が酸化ランタンを含む、[9]に記載のバリスタ。
[11]前記誘電材料がホウ素含有化合物を含む、[1]に記載のバリスタ。
[12]前記ホウ素含有化合物がホウ素含有酸を含む、[11]に記載のバリスタ。
[13]前記ホウ素含有酸がホウ酸を含む、[12]に記載のバリスタ。
[14]前記バリスタが125℃より高く300℃までの最高使用温度を有する、[1]に記載のバリスタ。
[15]前記バリスタが150℃~250℃の最高使用温度を有する、[1]に記載のバリスタ。
[16]前記バリスタが160℃~200℃の最高使用温度を有する、[1]に記載のバリスタ。
[17]前記バリスタが約10ボルト~約200ボルトのクランプ電圧を有する、[1]に記載のバリスタ。
[18]前記バリスタが約10ボルト~約150ボルトのブレークダウン電圧を有する、[1]に記載のバリスタ。
[19]前記バリスタが、18ボルトの動作電圧において約1μA以下の漏れ電流を有する、[1]に記載のバリスタ。
[20]前記バリスタが、18ボルトの動作電圧において約0.1μA~約0.6μAの漏れ電流を有する、[1]に記載のバリスタ。
[21]前記バリスタが約0.1pF~約50,000pFのキャパシタンスを有する、[1]に記載のバリスタ。
[22]前記バリスタが約250pF~約750pFのキャパシタンスを有する、[1]に記載のバリスタ。
[23]酸化亜鉛を焼成することによって誘電材料を形成すること;及び
次に焼成した酸化亜鉛を正温度係数サーミスタ材料と混合すること;
を含む、[1]に記載のバリスタを形成する方法。
[24]前記焼成工程の後に酸化ビスマスを混合することを更に含む、[23]に記載の方法。