(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179674
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】通信システム、通信方法、通信装置
(51)【国際特許分類】
H04B 3/54 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
H04B3/54
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023176469
(22)【出願日】2023-10-12
(62)【分割の表示】P 2022004299の分割
【原出願日】2022-01-14
(31)【優先権主張番号】P 2021005088
(32)【優先日】2021-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000100942
【氏名又は名称】アイレック技建株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592128191
【氏名又は名称】株式会社川口電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】阿部 智徳
(72)【発明者】
【氏名】荻原 和枝
(72)【発明者】
【氏名】松本 圭二
(72)【発明者】
【氏名】三浦 智
(72)【発明者】
【氏名】平田 稔夫
(57)【要約】 (修正有)
【課題】通信網を拡張する。
【解決手段】通信システム100において、親機200と子機300とそれぞれは、充放電可能なモバイルバッテリを有する可搬型の通信装置であり、子機は、親機と電力線搬送通信を行う第一の通信制御部と、子機を含む構内通信網に属する外部装置との通信を行う第二の通信制御部と、筐体に設けられた電源スイッチと、子機の電力源が、モバイルバッテリであるか又は電力線搬送通信に用いられる電力線により供給される電力であるかを示す情報を表示させる表示部、電力線搬送通信が可能であるか否かを示す情報が表示される表示部、子機の筐体の前面における、電力源がモバイルバッテリであるか又は電力線搬送通信に用いられる電力線により供給される電力であるかを示す情報を表示させる表示部及び電力線搬送通信が可能であるか否かを示す情報を表示させる表示部が外部から視認できる位置に形成された透明部材と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親機と、前記親機と電力線搬送通信を行う子機とを含む通信システムであって、
前記親機と前記子機とは、それぞれが、充放電可能なモバイルバッテリを有する可搬型の通信装置であって、
前記子機は、
前記親機と前記電力線搬送通信を行う第一の通信制御部と、
前記子機を含む構内通信網に属する外部装置との通信を行う第二の通信制御部と、
前記子機の筐体に設けられた電源スイッチと、
前記子機の電力源が、前記モバイルバッテリであるか、又は、前記電力線搬送通信に用いられる電力線により供給される電力であるか、を示す情報を表示させる表示部と、
前記電力線搬送通信が可能であるか否かを示す情報が表示される表示部と、
前記子機の前記筐体の前面における、前記電力源が、前記モバイルバッテリであるか、又は、前記電力線搬送通信に用いられる電力線により供給される電力であるか、を示す情報を表示させる表示部と、前記電力線搬送通信が可能であるか否かを示す情報が表示される表示部と、が外部から視認できる位置に形成された透明部材と、を有する、通信システム。
【請求項2】
前記親機は、
前記親機の電力源が、前記モバイルバッテリであるか、又は、前記電力線搬送通信に用いられる電力線により供給される電力であるか、を示す情報を表示させる表示部と、
前記電力線搬送通信が可能であるか否かを示す情報が表示される表示部と、
前記親機の筐体の前面における、前記電力源が、前記モバイルバッテリであるか、又は、前記電力線搬送通信に用いられる電力線により供給される電力であるか、を示す情報を表示させる表示部と、前記電力線搬送通信が可能であるか否かを示す情報が表示される表示部と、が外部から視認できる位置に形成された透明部材と、を有する、請求項1記載の通信システム。
【請求項3】
前記子機の筐体及び前記親機の筐体には、取っ手が取り付けられており、
前記取っ手における持ち手部は、前記筐体と対向する面が略平面である、請求項1又は2記載の通信システム。
【請求項4】
前記子機の筐体及び前記親機の筐体の背面に、前記通信装置を設置場所に固定するための固定部材が設けられている、請求項1乃至3の何れか一項に記載の通信システム。
【請求項5】
他の通信装置と電力線搬送通信を行う可搬型の通信装置であって、
前記他の通信装置と前記電力線搬送通信を行う第一の通信制御部と、
当該通信装置を含む構内通信網に属する外部装置との通信を行う第二の通信制御部と、
充放電可能なモバイルバッテリと、
筐体に設けられた電源スイッチと、
電力源が、前記モバイルバッテリであるか、又は、前記電力線搬送通信に用いられる電力線により供給される電力であるか、を示す情報を表示させる表示部と、
前記電力線搬送通信が可能であるか否かを示す情報が表示される表示部と、
前記筐体の前面における、前記電力源が、前記モバイルバッテリであるか、又は、前記電力線搬送通信に用いられる電力線により供給される電力であるか、を示す情報を表示させる表示部と、前記電力線搬送通信が可能であるか否かを示す情報が表示される表示部と、が外部から視認できる位置に形成された透明部材と、を有する、通信装置。
【請求項6】
前記他の通信装置は、前記通信装置の親機である、請求項5記載の通信装置。
【請求項7】
前記他の通信装置は、前記通信装置の子機である、請求項5記載の通信装置。
【請求項8】
親機と、前記親機と電力線搬送通信を行う子機とを含む通信システムによる通信方法であって、
前記親機と前記子機とは、それぞれが、充放電可能なモバイルバッテリを有する可搬型の通信装置であって、
筐体に設けられた電源スイッチと、0092
電力源が、前記モバイルバッテリであるか、又は、前記電力線搬送通信に用いられる電力線により供給される電力であるか、を示す情報を表示させる表示部と、前記電力線搬送通信が可能であるか否かを示す情報が表示される表示部と、前記子機の前記筐体の前面における、前記電力源が、前記モバイルバッテリであるか、又は、前記電力線搬送通信に用いられる電力線により供給される電力であるか、を示す情報を表示させる表示部と、前記電力線搬送通信が可能であるか否かを示す情報が表示される表示部と、が外部から視認できる位置に形成された透明部材と、を有する前記子機が、
前記親機と前記電力線搬送通信を行い、
前記子機を含む構内通信網に属する外部装置との通信を行う、通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム、通信方法、通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、親機と複数台の子機との間で、配電線を伝送媒体に用いた電力線搬送通信を行う通信システムが知られている。この通信システムでは、例えば、親機が、インターネット等の公衆網を介して上位装置と通信を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の通信システムでは、子機は、親機のみと通信するものであり、子機が親機以外の外部装置と通信を行うことは考えられていない。このため、従来の通信システムでは、通信網を拡張することはできない。
【0005】
そこで、本発明に係る一実施形態は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、通信網を拡張することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、親機と、前記親機と電力線搬送通信を行う子機とを含む通信システムであって、前記親機と前記子機とは、それぞれが、充放電可能なモバイルバッテリを有する可搬型の通信装置であって、前記子機は、前記親機と前記電力線搬送通信を行う第一の通信制御部と、前記子機を含む構内通信網に属する外部装置との通信を行う第二の通信制御部と、前記子機の筐体に設けられた電源スイッチと、前記子機の電力源が、前記モバイルバッテリであるか、又は、前記電力線搬送通信に用いられる電力線により供給される電力であるか、を示す情報を表示させる表示部と、前記電力線搬送通信が可能であるか否かを示す情報が表示される表示部と、前記子機の前記筐体の前面における、前記電力源が、前記モバイルバッテリであるか、又は、前記電力線搬送通信に用いられる電力線により供給される電力であるか、を示す情報を表示させる表示部と、前記電力線搬送通信が可能であるか否かを示す情報が表示される表示部と、が外部から視認できる位置に形成された透明部材と、を有する、通信システムである。
【発明の効果】
【0007】
通信網を拡張できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】通信システムのシステム構成を説明する図である。
【
図2】通信装置(親機)の構成の一例を説明する図である。
【
図3】通信装置(子機)の構成の一例を説明する図である。
【
図4】通信システムの利用シーンを説明する第一の図である。
【
図5】第一の利用シーンにおける電力の流れと、情報の流れについて説明する図である。
【
図6】通信システムの利用シーンを説明する第二の図である。
【
図7】第二の利用シーンにおける電力の流れと、情報の流れについて説明する図である。
【
図8】通信装置(親機)の構成の他の例を説明する図である。
【
図9】通信装置(親機)の外観を説明する斜視図である。
【
図10】通信装置(親機)の正面図及び背面図である。
【
図11】通信装置(子機)の正面図及び背面図である。
【
図12】本実施形態の通信装置の設置例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照して、実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の通信システムのシステム構成を説明する図である。
【0010】
本実施形態の通信システム100は、通信装置200と、通信装置300-1、300-2、300-3、300-4を含む。尚、以下の説明では、通信装置300-1、300-2、300-3、300-4のそれぞれを区別しない場合には、通信装置300と呼ぶ。
【0011】
また、
図1に示す通信システム100では、通信装置300を4台含むものとしたが、これに限定されない。通信システム100に含まれる通信装置300は、任意の台数であってよい。
【0012】
本実施形態の通信システム100において、通信装置200は、インターネット(情報通信網)等と接続するためのルータを備え、上位装置との通信を確立させる親機である。また、本実施形態の通信装置300は、通信装置200と通信を行う子機である。言い換えれば、通信装置300は、通信装置200を介して上位装置と通信を行う。以下の説明では、通信装置200を親機200と呼び、通信装置300を子機300と呼ぶ。
【0013】
本実施形態の通信システム100において、親機200と子機300とは、電力線Lによって接続されており、電力線Lを伝送媒体に用いて通信信号を伝送する電力線搬送通信を行う。以下の説明では、電力線搬送通信を、PLC(Power Line Communication)と表現する場合がある。
【0014】
また、本実施形態の通信システム100では、子機300に、子機300を含む構内通信網を構築する機能を設ける。そして、本実施形態では、親機200を広域通信の電波が届く箇所に配置し、子機300を広域通信の電波が届かない箇所に配置する。
【0015】
本実施形態では、このように、親機200と子機300とを配置することで、広域通信の電波が届かない箇所に構内通信網を構築することができ、広域通信の電波が届かない範囲まで、通信網を拡張することができる。以下の説明では、構内通信網をLAN(Local Area Network)と表現する場合がある。
【0016】
図1の例では、立坑10と立坑10の出入口11とをつなぐ通路12上に、親機200が配置され、立坑10及び坑道13の内部に子機300-1~子機300-4が配置されている。通路12上は、広域通信の電波が届く箇所であり、立坑10及び坑道13の内部は、広域通信の電波が届かない箇所である。
【0017】
尚、立坑10は、地下の坑道(横坑)13と地上とを連絡するためのものであり、ほぼ垂直方向に掘られている。また、立坑10内及び坑道13内には、商用電源等の電力源から電力が供給される電力線Lが敷設されており、親機200と子機300-1~子機300-4とは、電力線Lと接続されている。
【0018】
図1の例では、子機300-1が立坑10に配置され、子機300-2、子機300-3、子機300-4が、坑道13内に一定間隔で配置されている。
【0019】
このため、
図1の例では、立坑10内の子機300-1が配置された箇所の周辺と、坑道13内の子機300-2、子機300-3、子機300-4のそれぞれが配置された箇所の周辺とに、各子機300を含む構内通信網が構築される。
【0020】
したがって、
図1では、例えば、子機300-3の近傍において、端末装置1と子機300-3との無線LAN通信が可能となり、端末装置1を、子機300-3及び親機200を介して、インターネット等の情報通信網に接続させることができる。
【0021】
また、
図1では、例えば、子機300-4とノート型コンピュータ2との有線LAN通信が可能となり、ノート型コンピュータ2を、子機300-4及び親機200を介して、インターネット等の情報通信網に接続させることができる。
【0022】
本実施形態では、このように、子機300によって、広域通信の電波が届かない箇所に構内通信網が構築されるため、立坑10内や坑道13内に存在する外部装置を、子機300と親機200を介してインターネット等の情報通信網に接続させることができる。言い換えれば、本実施形態の通信システム100は、広域通信の電波が届かない施設等であっても、外部装置をインターネットに接続させることができ、簡易な構成で通信環境を整備することができる。
【0023】
尚、子機300が配置される場所は、
図1の例に限定されない。子機300は、例えば、とう道等に配置されてもよい。とう道は、通信ケーブル・ガス管・送電線等のライフラインが敷かれる管路トンネルのうち、特に敷設、撤去又は保守作業用に人が立ち入れる地下道路である。また、子機300は、洞道、共同溝又はトンネル等の他に、下水道、鍾乳洞、採掘後の観光地、鉱山、トンネル工事現場に配置されてもよい。
【0024】
また、本実施形態の親機200と子機300とは、可搬型であり、防水及び防塵の仕様としてもよい。例えば、親機200と子機300とは、電気機械器具の外郭による保護等級(JIS 0920、IEC 60529)(Degrees of protection provided by enclosures)(IPコード)における「外来固形物に対する保護等級」及び「水の浸入に対する保護等級」が、「IP67」程度の防水及び防塵の性能を有してもよい。
【0025】
また、本実施形態の親機200と子機300とは、筐体の背面にマグネットが設けられており、金属製の壁面等に固定できてもよい。さらに、親機200と子機300と、筐体に、フック等が設けられており、梯子、ステップ等に吊り下げることで可能であってもよい。
【0026】
また、本実施形態の外部装置とは、LAN通信が可能な装置であれば、どのような装置であってもよい。具体的には、スマートフォン、デジタルカメラ、プロジェクタ、ノート型コンピュータ、タブレット型端末、IP電話等を含む。
また、
図1の例では、親機200が、インターネット(情報通信網)等と接続するためのルータを備えるものとしたが、これに限定されない。本実施形態の通信システム100において、親機200は、ルータを備えていなくてもよい。その場合には、広域通信の電波が届く箇所にルータを配置し、ルータを介して親機200と情報通信網とを接続させてもよい。
このようにすれば、例えば、電源線Lが複数系統存在し、各系統に対応した複数の通信システム100を構築する場合に、ルータを複数の通信システム100で共有することができる。また、それぞれの通信システム100における親機200を広域通信の電波が届く箇所に配置する必要がなくなり、簡素な構成とすることができる。
【0027】
以下に、
図2及び
図3を参照して、本実施形態の親機200と子機300の構成について説明する。
【0028】
図2は、通信装置(親機)の構成の一例を説明する図である。本実施形態の親機200は、メイン基板210、モバイルバッテリ220、無線LANアクセスポイント230、無線ルータ240、外付けLANコネクタ250を有する。
【0029】
メイン基板210は、親機200の各種の動作を制御する。メイン基板210の詳細は後述する。
【0030】
モバイルバッテリ220は、充放電可能なバッテリである。無線LANアクセスポイント230は、無線LANの接続を中継する中継機器である。言い換えれば、無線LANアクセスポイント230は、外部装置との無線LAN通信により、通信システム100と接続させるための中継部(第二の中継部)の一例である。
【0031】
無線ルータ240は、複数の異なるネットワーク間でデータのやりとりを中継する中継機器である。つまり、本実施形態の無線ルータ240は、インターネット等の情報通信網を介した無線通信を確立させる中継部(第一の中継部)である。
【0032】
尚、本実施形態では、無線ルータ240としたが、ルータが確立させる通信は、必ずしも無線でなくてもよく、有線による通信であってもよい。
【0033】
外付けLANコネクタ250は、外部装置との有線LAN通信を行うためのインターフェイスである。本実施形態では、外付けLANコネクタ250は、電気機械器具の外郭による保護等級(JIS 0920、IEC 60529)(Degrees of protection provided by enclosures)(IPコード)における「外来固形物に対する保護等級」及び「水の浸入に対する保護等級」が、「IP67」程度の防水及び防塵の性能を有するキャップ等が設けられていてよい。
このような仕様のキャップを外付けLANコネクタ250に設けることで、例えば、外付けLANコネクタ250にLANケーブル等が接続されていない場合であっても、LANケーブルの差し込み口からの水分や粉塵の侵入を防止できる。
【0034】
次に、メイン基板210について説明する。本実施形態のメイン基板210は、サージアブソーバ211、ノイズフィルタ212、AC-DCコンバータ213、充放電制御回路214、カップリングトランス215、PLC(Power Line Communication)通信制御回路216、LAN通信制御回路217、直流電力コネクタ261、充電用コネクタ262、AP用電源コネクタ263、ルータ用電源コネクタ264、LANコネクタ265、266、267を有する。
【0035】
サージアブソーバ211は、異常な高電圧等から保護を図る保護部品である。ノイズフィルタ212は、主に、メイン基板210が通信に使用する周波数帯域、すなわち、2乃至28MHzの周波数帯域に含まれるノイズを減衰させる機能と、インピーダンスを高くする機能とを有するのがより望ましい。
【0036】
AC-DCコンバータ213は、外部の電力源から供給される電力、すなわち、交流電力(商用電源)を直流電力に変換する装置である。
【0037】
充放電制御回路214は、AC-DCコンバータ213により生成された直流電力に用いたモバイルバッテリ220の充電を制御する。また、充放電制御回路214は、モバイルバッテリ220からの放電を制御する。
【0038】
具体的には、充放電制御回路214は、AC-DCコンバータ213から直流電力が供給されている場合には、この直流電力によってモバイルバッテリ220を充電する。また、充放電制御回路214は、AC-DCコンバータ213から直流電力が供給されていない場合には、モバイルバッテリ220から直流電力を放電いる。AC-DCコンバータ213から直流電力が供給されない場合とは、商用電源等からの電力の供給が途絶えている場合であり、停電が発生している状態等である。
【0039】
カップリングトランス215は、一次側と二次側とを絶縁し、異常な電流が入り込むのを防ぎ通信信号を受け渡す保護部品である。
【0040】
PLC通信制御回路216は、AC-DCコンバータ213が生成する直流電力(以下「第1直流電力」という場合がある。)又はモバイルバッテリ220が放電する直流電力(以下「第2直流電力」という場合がある。)を電源として、電力線通信等を行う。つまり、PLC通信制御回路216は、子機300と電力線搬送通信を行う第一の通信制御部の一例である。
【0041】
具体的には、PLC通信制御回路216は、HD‐PLC(登録商標)(高速電力線通信、High Definition Power Line Communication)を行ってもよい。また、PLC通信制御回路216は、HD‐PLC方式以外の電力線通信方式で通信を行ってもよい。例えば、親機200は、エコーネット(登録商標)等の方式で通信を行う装置を有してもよい。
【0042】
本実施形態では、PLC通信制御回路216において、第1直流電力を用いるか、又は、第2直流電力を用いるかは、商用電源から交流電力が供給されているか否かによって決まる。具体的には、停電等によって交流電力の供給が遮断された場合には、PLC通信制御回路216は、第2直流電力で電力線通信等を行う。一方で、停電等でない状態、すなわち、交流電力が供給されている通常の状態では、PLC通信制御回路216は、第1直流電力で電力線通信等を行う。このように、PLC通信制御回路216は、いずれの場合であっても、交流電力でなく、直流電力によって動作する。
【0043】
LAN通信制御回路217は、無線LAN又は有線LAN等により、LAN通信を行う。つまり、親機200は、無線、有線又は両方によって、LAN通信を行ってもよい。
【0044】
直流電力コネクタ261は、モバイルバッテリ220から供給される直流電力を取り込む。供給された直流電力は、充放電制御回路214を介して、PLC通信制御回路216及びLAN通信制御回路217等といった親機200が有するハードウェアに供給される。
【0045】
充電用コネクタ262は、AC-DCコンバータ213から供給される直流電力をモバイルバッテリ220に取り込ませる。言い換えれば、直流電力コネクタ261は、AC-DCコンバータ213から供給される直流電力により、モバイルバッテリ220を充電させる。
【0046】
AP用電源コネクタ263は、無線LANアクセスポイント230とPLC通信制御回路216とを接続するためのインターフェイスである。ルータ用電源コネクタ264は、無線ルータ240をPLC通信制御回路216と接続するためのインターフェイスである。
【0047】
LANコネクタ265は、無線LANアクセスポイント230をLAN通信制御回路217へ接続させる。LANコネクタ266は、無線ルータ240とLAN通信制御回路217を接続させる。LANコネクタ267は、外付けLANコネクタ250とLAN通信制御回路217とを接続させる。
【0048】
ここで、無線LANアクセスポイント230と外付けLANコネクタ250とは、親機200により構築されたLANと外部装置とを接続させるものである。つまり、LAN通信制御回路217、無線LANアクセスポイント230、外付けLANコネクタ250、LANコネクタ265、267は、親機200を含む構内通信網に属する外部装置との通信を行う第二の通信制御部の一例である。
【0049】
また、無線LANアクセスポイント230は、構内通信網に属する外部装置と親機200とを無線LAN通信により接続する第二の中継部である。また、外付けLANコネクタ250は、構内通信網に属する外部装置と親機200とを有線LAN通信により接続するインターフェイス部である。
【0050】
このように、本実施形態の親機200は、インターネット等の情報通信網を介した無線通信を確立させる無線ルータ240(第一の中継部)と、親機200を含む構内通信網内に存在する外部装置とのLAN通信を実現させる無線LANアクセスポイント230(第二の中継部)とを含む。このため、本実施形態の親機200は、無線LANアクセスポイント230を介して親機200と接続された外部装置を、無線ルータ240を介してインターネット等に接続させる。なお、親機200が無線ルータ240(第一の中継部)を有していない場合は、親機200は、後述する子機300と同様の構成となる。
【0051】
次に、
図3を参照して、本実施形態の子機300について説明する。
図3は、通信装置(子機)の構成の一例を説明する図である。本実施形態の子機300は、メイン基板310、モバイルバッテリ320、無線LANアクセスポイント330、外付けLANコネクタ350を有する。
【0052】
メイン基板310は、サージアブソーバ311、ノイズフィルタ312、AC-DCコンバータ313、充放電制御回路314、カップリングトランス315、PLC(通信制御回路316、LAN通信制御回路317、直流電力コネクタ361、充電用コネクタ362、AP用電源コネクタ363、ルータ用電源コネクタ364、LANコネクタ365、366、367を有する。
【0053】
本実施形態のモバイルバッテリ320、無線LANアクセスポイント330、外付けLANコネクタ350のそれぞれは、親機200の有するモバイルバッテリ220、無線LANアクセスポイント230、外付けLANコネクタ250と同様である。なお、子機300は、外付けLANコネクタ350を有していなくてもよい。
【0054】
また、メイン基板310の有するサージアブソーバ311、ノイズフィルタ312、AC-DCコンバータ313、充放電制御回路314、カップリングトランス315、PLC(通信制御回路316、LAN通信制御回路317、直流電力コネクタ361、充電用コネクタ362、AP用電源コネクタ363、ルータ用電源コネクタ364、LANコネクタ365、366、367のそれぞれは、親機200のメイン基板210が有するそれぞれと同様である。
【0055】
つまり、本実施形態の子機300は、無線ルータ240を有していない点以外は、親機200と同様の構成である。言い換えれば、子機300を含む構内通信網に属する外部装置との通信を行う第二の通信制御部を有する。また。子機300は、構内通信網に属する外部装置を無線LAN通信により接続する第二の中継部と、構内通信網に属する外部装置と親機200とを有線LAN通信により接続するインターフェイス部とを有する。
【0056】
したがって、子機300は、端末装置1や撮像装置3と無線LAN通信を行うことができる。また、子機300は、ノート型コンピュータ2と有線LAN通信を行うことができる。
【0057】
尚、本実施形態では、子機300は、無線ルータ240を有していないものとしたが、これに限定されない。子機300は、無線ルータ240を有していてもよく、親機200と同様の構成であってよい。
【0058】
次に、本実施形態の通信システム100の利用シーンについて説明する。
図4は、通信システムの利用シーンを説明する第一の図である。以下の説明では、
図4に示す利用シーンを第一の利用シーンと表現する場合がある。
【0059】
図4の例では、親機200と子機300とに、コンセントを介して商用電源が供給される場合を示している。コンセントとは、電力の供給を受けるための受け口である。
【0060】
具体的には、例えば、親機200は立坑21に配置され、坑道22に子機300-1、300-2、子機300-3が配置されている。
図4の例では、立坑21の開口部に、蓋23が配置されている。蓋23は、例えば、マンホールの蓋等であってもよい。立坑21と坑道22の内部には、電力線L1が敷かれ、コンセント41~46が設けられている。
【0061】
親機200は、立坑21内において、蓋23の裏側近傍に配置され、コンセント41から交流電力の供給を受ける。また、子機300-1はコンセント42から、子機300-2はコンセント44から、子機300-3はコンセント46から、それぞれ交流電力の供給を受ける。
【0062】
さらに、親機200は、無線ルータ240によってインターネット等と接続し、電力線L1により、各子機300と通信を行う。
【0063】
子機300-1、300-2、300-3のそれぞれは、無線LANアクセスポイント330により、自機を含む構内通信網(LAN)を構築し、構内通信網による外部装置との通信を実現する。
【0064】
図4の例では、例えば、子機300-1は、無線LAN通信により、端末装置1や、撮像装置3等と通信を行い、かつ、PLC等によって子機300-1とインターネットと接続を確立させる。したがって、端末装置1や撮像装置3を含む外部装置は、広域通信の電波が届かない場所であっても、子機300-1と親機200とを介してインターネットに接続することができる。
【0065】
以下に、
図5を参照して、
図4に示す第一の利用シーンにおける電力の流れと、通信において送受信される情報の流れについて説明する。
図5は、第一の利用シーンにおける電力の流れと、情報の流れについて説明する図である。
【0066】
はじめに、第一の利用シーンにおける電力の流れについて説明する。
図5では、親機200における電力の流れを矢印Eで示している。電力の流れは、子機300も親機200と同様である。
【0067】
コンセント41から供給される交流電力は、サージアブソーバ211、ノイズフィルタ212を介してAC-DCコンバータ213へ供給されて、直流電力(第1直流電力)へ変換される。AC-DCコンバータ213により生成された直流電力は、充放電制御回路214と、PLC通信制御回路216と、LAN通信制御回路217と、AP用電源コネクタ263と、ルータ用電源コネクタ264と、に供給される。
【0068】
充放電制御回路214は、充電用コネクタ262を介してモバイルバッテリ220へ直流電力を供給し、モバイルバッテリ220を充電する。PLC通信制御回路216、LAN通信制御回路217のそれぞれは、AC-DCコンバータ213から供給される直流電力で駆動する。
【0069】
AP用電源コネクタ263は、AC-DCコンバータ213から供給される直流電力を無線LANアクセスポイント230に供給し、無線LANアクセスポイント230を駆動させる。ルータ用電源コネクタ264は、AC-DCコンバータ213から供給される直流電力を無線ルータ240へ供給し、無線ルータ240を駆動させる。
【0070】
次に、通信の流れについて説明する。
図5では、親機200と子機300との間で送受信される情報の流れを矢印Cで示している。
【0071】
親機200は、例えば、無線ルータ240を介した情報の送受信の場合、LANコネクタ266、LAN通信制御回路217、PLC通信制御回路216、カップリングトランス215、サージアブソーバ211、及び電力線L1を介して、各子機300と情報を送受信する。
【0072】
また、例えば、親機200は、無線LANアクセスポイント230を介した外部装置との情報の送受信の場合、LANコネクタ、LAN通信制御回路217、PLC通信制御回路216、カップリングトランス215、サージアブソーバ211、及び電力線L1を介して、各子機300と情報を送受信する。
【0073】
また、例えば、子機300が無線LANアクセスポイント230を介して外部装置と情報の送受信を行った場合、子機300は、LANコネクタ365、LAN通信制御回路317を介して外部装置と通信を行う。また、子機300は、PLC通信制御回路316、カップリングトランス315、サージアブソーバ311、及び電力線L1を介して、外部装置と親機200との情報の送受信を行わせればよい。
【0074】
次に、
図6を参照して、通信システム100の他の利用シーンを説明する。
図6は、通信システムの利用シーンを説明する第二の図である。以下の説明では、
図6に示す利用シーンを第二の利用シーンと表現する場合がある。
【0075】
図6の例では、立坑21と坑道22との内部に電力線が敷かれておらず、商用電源が存在しない場合を示している。
【0076】
この場合、親機200と子機300-1、子機300-2、子機300-3を電力線で接続するために、電工ドラムを用いる。
図6の例では、電工ドラム400-1、400-2、400-3を用いて、親機200と子機300-1、子機300-1と子機300-2、子機300-2と子機300-3とを接続する。
【0077】
より具体的には、親機200は、電工ドラム400-1の有するコンセント群410の何れかと接続され、電工ドラム400-1から引き出した電力線Laが電工ドラム400-2のコンセント群410に含まれる何れかのコンセントに接続される。さらに、電工ドラム400-2のコンセント群410の他の何れかのコンセントに、子機300-1が接続される。これにより、親機200と子機300-1とが、電力線で接続されて、電力線通信が可能になる。
【0078】
電工ドラム400-2から引き出された電力線Lbは、電工ドラム400-3のコンセント群410に含まれる何れかのコンセントに接続される。また、電工ドラム400-3のコンセント群410に含まれる他のコンセントに、子機300-2が接続される。これにより、子機300-1と、子機300-2との間の電力線通信と、親機200と子機300-2との電力線通信とが可能になる。
【0079】
本実施形態では、このように、商用電源等から電力が供給される電力線が敷設されていない坑道であっても、電工ドラム400を用いることで、親機200と子機300との間の電力線通信を簡単に実現することができる。
【0080】
また、本実施形態では、商用電源が親機200と子機300とに供給されない場合には、それぞれの有するモバイルバッテリ220とモバイルバッテリ320とを電力源として駆動する。したがって、本実施形態では、電力線が敷設されておらず、かつ、広域通信の電波が届かない場所であっても、容易に通信環境を整えることができる。
【0081】
以下に、
図7を参照して、
図6に示す第二の利用シーンにおける電力の流れと、通信において送受信される情報の流れについて説明する。
図7は、第二の利用シーンにおける電力の流れと、情報の流れについて説明する図である。
【0082】
図7において、矢印Cで示される情報の流れは、
図5の例と同様であるから、説明を省略する。
【0083】
図7の例では、商用電源からの交流電力は供給されていない。したがって、本実施形態では、充放電制御回路214により、モバイルバッテリ220に蓄電された電力が放電される。
【0084】
モバイルバッテリ220から放電された直流電力は、直流電力コネクタ261、充放電制御回路214を介してPLC通信制御回路216、LAN通信制御回路217へ供給される。また、モバイルバッテリ220から放電された電力は、AP用電源コネクタ263、ルータ用電源コネクタ264を介して、それぞれ無線LANアクセスポイント230、無線ルータ240へ供給される。
【0085】
このように、本実施形態では、商用電源等の電力源からの電力の供給が遮断された場合でも、モバイルバッテリ220を電力源として駆動できる。
【0086】
尚、本実施形態では、充放電制御回路214において、商用電源等からの電力の供給が遮断されると、モバイルバッテリ220からの放電が開始されてもよい。また、充放電制御回路214は、商用電源等からの電力の供給が開始されると、モバイルバッテリ220からの放電を停止させ、充電に切り替えてもよい。
【0087】
また、本実施形態の親機200は、例えば、親機200の電力源がモバイルバッテリ220であるか、商用電源等の外部の電力源であるか否かを、表示させてもよい。以下に、
図8を参照して、親機200の他の例について説明する。
【0088】
図8は、通信装置(親機)の構成の他の例を説明する図である。
図8に示す親機200Aは、メイン基板210A、モバイルバッテリ220、無線LANアクセスポイント230、無線ルータ240、外付けLANコネクタ250、表示部280、281を有する。尚、メイン基板210A、表示部280、281は、子機300にも設けられる。
【0089】
表示部280は、充放電制御回路214と接続されており、モバイルバッテリ220の残量や、親機200Aの電力源がモバイルバッテリ220であるか否かを示す情報等を表示させる。
【0090】
本実施形態の表示部280は、例えば、液晶ディスプレイ等であってもよいし、複数の光源(ランプ)等であってもよい。本実施形態の表示部280が、複数の光源である場合は、それぞれの光源が異なる色の光を出射するものであってもよい。その場合、モバイルバッテリ220が電力源とされている場合と、商用電源から電力が供給されている場合とで、出射させる光の色を異ならせてもよい。
【0091】
表示部281は、PLC通信が可能であるか否かを示す情報が表示される。具体的には、表示部281は、例えば、LED(Light Emitting Diode)等であり、PLC通信制御回路216により点灯と消灯が制御される。
【0092】
PLC通信制御回路216は、子機300とのPLC通信が可能である場合は、表示部281を点灯させ、子機300とのPLC通信が不可能となった場合に、表示部281を消灯させる。
【0093】
本実施形態では、このように、親機200にPLC通信の状態を表示させることで、例えば、親機200の周辺で作業を行う作業者等に、通信が途絶えたことを通知することができる。
【0094】
また、本実施形態では、子機300のPLC通信制御回路316も同様に、親機200とのPLC通信が可能である場合には、子機300の有する表示部281を点灯させ、親機200とのPLC通信が不可能となった場合には、子機300の有する表示部281を消灯させる。
【0095】
本実施形態では、子機300にPLC通信の状態を表示させることで、例えば、子機300と通信を行う端末装置1のユーザを含む坑道13内の作業者等に、親機200との通信が途絶えたことを通知することができる。
【0096】
また、本実施形態のメイン基板210Aは、
図2に示すメイン基板210が有する各コネクタに加え、非常照明用電源コネクタ268を有する。
【0097】
本実施形態の非常照明用電源コネクタ268は、照明器具を接続するためのインターフェイスである。本実施形態では、非常照明用電源コネクタ268に照明器具が接続されると、照明器具に電力が供給される。つまり、非常照明用電源コネクタ268は、照明器具に電力を供給するためのインターフェイスである。
【0098】
図8の例では、メイン基板210Aに商用電源等から交流電力が供給されている場合には、AC-DCコンバータ213で生成された直流電力が、非常照明用電源コネクタ268を介して照明器具に供給される。また、
図8の例では、メイン基板210Aにモバイルバッテリ220から直流電力が供給されている場合には、この直流電力が照明器具に供給される。
【0099】
したがって、
図8の例では、親機200Aの外部から電力が供給されていない場合であっても、モバイルバッテリ220から、非常照明用電源コネクタ268に接続された照明器具に電力を供給し、照明器具を点灯させることができる。したがって、本実施形態の親機200Aと照明器具とは、非常灯装置として機能する。
【0100】
上述した表示部280と非常照明用電源コネクタ268とは、子機300にも同様に設けられていてもよい。
【0101】
また、本実施形態の親機200と子機300とは、モバイルバッテリ220から、各種の外部装置に対して電力を供給することができる。具体的には、例えば、モバイルバッテリ220と、外部装置の1つである端末装置1とを接続することで、モバイルバッテリ220から端末装置1に電力を供給し、端末装置1を充電することができる。
【0102】
このように、本実施形態の親機200、子機300含む通信システム100によれば、電力線が敷設されておらず、広域電波が届かない場所であっても、簡単に通信環境を構築できる。また、本実施形態の親機200と子機300とは、可搬型であるため、例えば、坑道等のような、比較的狭い空間にも容易に持ち込むことができる。
【0103】
さらに、本実施形態の親機200と子機300とは、防水仕様であり、筐体の背面等に、マグネット等の固定部材が設けられていてもよい。本実施形態では、このような固定部材を設けることで、金属板等に容易に固定することができる。また、この固定部材は、筐体を吊り下げるためのフック等であってもよい。このような固定部材であれば、ステップ、梯子等に親機200又は子機300を容易に固定することができる。また、この固定部材は、例えば、土壁(地盤)や木材等に差し込むようにして、親機200や子機300を固定する杭等であってもよい。
【0104】
さらに、本実施形態の親機200と子機300とは、それぞれが設置される場所に応じて、筐体に取り付けられる固定部材の種類を変更できてもよい。具体的には、親機200と子機300とは、筐体の背面等に、固定部材を取り付けるための取り付け部が設けられており、この取り付け部に、親機200又は子機300の設置場所に応じた固定部材が取り付けられればよい。
【0105】
したがって、本実施形態では、親機200に取り付けられる固定部材の種類と、子機300に取り付けられる固定部材の種類とが異なってもよい。具体的には、例えば、親機200には、取り付け部にフック型の固定部材が取り付けられ、子機300には、取り付け部に杭型の固定部材であってもよい。
【0106】
さらに、本実施形態の親機200と子機300とは、モバイルバッテリ220により、非常照明用電源コネクタ268に接続された照明器具を点灯させることができ、非常灯装置としても機能する。したがって、本実施形態の通信システム100は、坑道内などのように、照明器具等が設置されていない場所での作業の安全性や作業効率を向上させることができる。
【0107】
また、本実施形態の子機300は、例えば、坑道13内の状態を検出するための各種のセンサが設けられてもよい。坑道13内の状態を検出するための各種のセンサとは、言い換えれば、子機300が設置される場所の状態を検出するためのセンサである。
【0108】
具体的には、子機300には、例えば、坑道13内における火災の発生を検知するためのセンサ、坑道13内に存在するガス(二酸化炭素、酸素、メタンガス)の種類や濃度等を検知するためのセンサ、坑道13中の温度と湿度を検出するためのセンサ等が設けられていてもよい。
【0109】
さらに、本実施形態の子機300は、例えば、坑道13内の状態を検出するためのセンサの一例として、撮像装置や、ビーム状の電波を照射するレーダ等が搭載されてもよい。子機300は、撮像装置により撮像した坑道13内の画像データ(動画データを含む)を撮像する。また、子機300は、レーダにより、坑道13内における障害物の有無の検知や、坑道13の奥行きや幅等を測定する。
【0110】
また、子機300は、上述した各種のセンサを接続するための複数のコネクタが設けられていてもよい。コネクタは、例えば、USB(Universal Serial Bus)コネクタであってもよい。
【0111】
さらに、子機300は、各種のセンサから出力されたセンサ値を、PLC通信によって親機200に定期的に送信してもよい。各種のセンサから出力されたセンサ値とは、言い換えれば、子機300が設置された場所の状態を示す情報である。
【0112】
親機200は、子機300が設置された場所の状態を示す情報を子機300から受信すると、受信した情報を、例えば、表示部281等に表示させてもよい。この場合、表示部281は、ディスプレイであることが好ましい。また、親機200は、子機300から受信した情報を表示させるためのディスプレイが接続されていてもよい。
【0113】
また、親機200は、子機300が設置された場所の状態を示す情報が、所定の条件を満たす場合に、警報を出力する出力部を有してもよい。所定の条件とは、例えば、各種のガスの濃度が予め設定された閾値を超えた場合や、火災が検知された場合等である。
【0114】
このようにすれば、子機300が設置された場所が無人の状態であっても、坑道13内の状態を通信システム100の利用者に把握させることができる。また、地上で作業を行う作業者が、坑道13内の状態を把握できるため、坑道13内での作業の安全性を向上させることができる。
【0115】
尚、子機300が設置された場所の状態を検出するためのセンサは、上述したセンサに限定されず、現場の状況に応じて他のセンサが追加されてもよい。また、子機300の設置された場所の状態を検出するためのセンサは、上述したセンサを全て含まなくてもよい。また、これらのセンサは、親機200にも同様に設けられていてもよい。
【0116】
さらに、本実施形態の子機300は、親機200から特定の情報を受信すると、警報を出力する出力部を有してもよい。
【0117】
特定の情報とは、例えば、緊急地震速報、火災の発生を通知する情報、地上の浸水を通知する情報等である。子機300は、これらの情報を親機200から受信すると、坑道13内に、警報音を出力してもよい。
【0118】
特に、地震の場合は、地上の揺れと比較して地下の揺れが小さいため、地上で大きな揺れがあったとしても、地下の坑道13内の作業者は、揺れを感じない可能性がある。このため、本実施形態では、親機200に、地震を検知する地震計を設け、地震が検知された場合に、子機300に地震の発生を通知してもよい。この場合、例えば、震度に閾値を設け、親機200の地震計が、閾値以上の震度の地震を検知したとき、地震の発生を子機300に通知してもよい。
【0119】
本実施形態では、このように、親機200が設置された地上の状態に応じて、子機300から警報を出力することで、坑道13内で作業する作業者に、地上の状態を通知することができ、作業の安全性を向上させることができる。
【0120】
次に、
図9乃至
図11を参照して、本実施形態の親機200と子機300の外観について説明する。
図9は、通信装置(親機)の外観を説明する斜視図であり、
図10は、通信装置(親機)の正面図及び背面図であり、
図11は、通信装置(子機)の正面図及び背面図である。
【0121】
はじめに、
図9、
図10を参照して、親機200の外観について説明する。
本実施形態の親機200は、ケース201と、取っ手202とを有する。ケース201は、前面部201aと、背面部201bとが閉じられた状態で、留め具206によって固定されている。
【0122】
また、ケース201の中に、メイン基板210、モバイルバッテリ220、無線LANアクセスポイント230、無線ルータ240、外付けLANコネクタ250の一部が収納されている。本実施形態では、例えば、ケース201の内部の部品をメンテナンスする場合等に、留め具206を外してケース201を開けることができる。
【0123】
本実施形態のケース201、取っ手202、留め具206等の部材は、電気機械器具の外郭による保護等級(JIS 0920、IEC 60529)(Degrees of protection provided by enclosures)(IPコード)における「外来固形物に対する保護等級」及び「水の浸入に対する保護等級」が、「IP67」程度の防水及び防塵の性能を有する素材で形成されている。
【0124】
また、本実施形態のケース201の前面部201aには、親機200の電源スイッチ203と、窓部204とが設けられている。さらに、ケース201の背面部201bの側面には、電力線Lの引き出し口205と、キャップ250aとが取り付けられている。
【0125】
キャップ250aは、外付けLANコネクタ250に対して取り外し可能な状態で装着されている。また、キャップ250aは、外付けLANコネクタ250から取り外されたときに、ケース201から分離しないように、ケース201に一部が固定されていてもよい。このようにすることで、キャップ250aを紛失することを防止できる。
【0126】
本実施形態の窓部204は、透明部材で形成されている。また、窓部204は、表示部280、281をケース201の外部から視認できる位置に形成されている。本実施形態では、このように、窓部204を形成することで、表示部280が示すモバイルバッテリ220の残量や、親機200Aの電力源がモバイルバッテリ220であるか否かを示す情報等を、親機200の利用者に、ケース201の外部から視認させることができる。また、本実施形態では、PLC通信が可能であるか否かを示す情報を、親機200の利用者に、ケース201の外部から視認させることができる。
【0127】
本実施形態の親機200の有する取っ手202において、持ち手部202aの形状は、四角柱状であり、ケース201と対向する面202bは、略平面となっている。また、本実施形態の持ち手部202aの幅Ln1は、例えば、とう道に設置されている通信ケーブル収容用金物の幅より広い。また、ケース201から持ち手部202aの面202bまでの高さH1は、通信ケーブル収容用金物の高さよりも高い。
【0128】
幅Ln1と高さH1は、好ましくは、通信ケーブル収容用金物の幅よりもわずかに広く、高さよりもわずかに高くてよい。このように取っ手202を形成することで、取っ手202を通信ケーブル収容用金物に吊したときに、取っ手202及びケース201と、通信ケーブル収容用金物との間に生じる隙間を狭くすることができる。したがって、とう道内に設置された通信ケーブル収容用金物に親機200を吊るして利用する場合等に、親機200が大きく揺れ動くことがなく、安定した状態で利用することができる。
【0129】
また、本実施形態の親機200の背面部201bには、親機200をとう道内に固定するための固定部材207が設けられている。本実施形態では、固定部材207は、4つのマグネットである。これらのマグネットは、
図10(B)に示すように、背面部201bの中央付近に配置されているが、マグネットの配置はこれに限定されない。例えば、4つのマグネットは、それぞれが背面部201bの4隅の近傍に配置されもよい。
【0130】
本実施形態では、このように、複数のマグネットを固定部材207として設けることで、親機200を十分な強度でとう道内に固定することができる。
【0131】
次に、
図11(A)、(B)を参照して、子機300の外観について説明する。本実施形態の子機300は、ケース301、取っ手302、電源スイッチ303、窓部304、電力線Lの引き出し口305、留め具306、固定部材307を有し、外付けLANコネクタ250を有していない点以外は、親機200と同様である。
【0132】
具体的には、ケース301は、前面部301a(
図11(A))、背面部301b(
図11(B))を有し、前面部201aと、背面部201bとが閉じられた状態で、留め具206によって固定されている。また、取っ手302は、四角柱状の持ち手部302aを有し、ケース301と対向する面302bは、略平面となっている。
【0133】
また、持ち手部302aの幅Ln2の値と、ケース301から持ち手部302aの面302bまでの高さH2の値とは、好ましくは、通信ケーブル収容用金物の幅と高さの値よりもわずかに大きく、取っ手302を通信ケーブル収容用金物に吊したときに、取っ手302の内側に隙間が生じない程度さであってよい。
【0134】
なお、
図11の例では、子機300は、外付けLANコネクタ350を有していないものとしたが、これに限定されない、子機300は、外付けLANコネクタ350を有していてもよい。その場合は、子機300は、キャップ250aと同様のキャップを有し、外観は、親機200と同様となる。子機300と親機200との外観が同様の場合には、親機200と子機300とを識別するために、なんらかのマーク等をケース201とケース301とに設けてもよい。
【0135】
次に、
図12を参照して、本実施形態の子機300の利用シーンについて説明する。
図12は、本実施形態の通信装置の設置例について説明する図である。
【0136】
図12では、とう道内に設けられた通信ケーブル収容用金物121に、子機300が吊り下げられた状態を示している。通信ケーブル収容用金物121には、通信ケーブル122が収容されている。
【0137】
図12の例では、取っ手302の持ち手部302aにおける面302bが、通信ケーブル収容用金物121の上面に密着した状態で吊り下げられており、取っ手302及びケース301と、通信ケーブル収容用金物121との隙間はわずかである。このため、子機300は、安定した状態で通信ケーブル収容用金物121に固定される。
【0138】
また、本実施形態では、前面部301aが正面になるように、子機300を設置することで、子機300の利用者は、子機300が通信ケーブル収容用金物121に設置されたままの状態で、子機300の各種の情報を視認することができる。
【0139】
なお、
図12の例では、子機300がとう道内に設置された状態の一例を説明したが、親機200も同様にしてとう道内に設置することができる。
【0140】
また、本実施形態の親機200、子機300は、
図12に示す方法以外の方法でとう道内に設置されてもよい。具体的には、親機200、子機300のそれぞれは、固定部材207、307によって、とう道内に設けられた金物に固定されてもよい。
【0141】
このように、本実施形態の通信装置(親機200、子機300)は、簡単にとう道内に持ち込むことができ、さらに、簡単に、且つ、安定した状態に、設置することができる。このため、本実施形態によれば、広域通信の電波が届かない箇所であっても、通信装置(親機200、子機300)を持ち込んで設置するだけで、構内通信網を構築することができ、広域通信の電波が届かない範囲まで、簡単に通信網を拡張することができる。
【0142】
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されない。すなわち、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形、改良又は変更が可能である。
【符号の説明】
【0143】
100 通信システム、
200、200A 親機(通信装置)
210、210A メイン基板
211 サージアブソーバ
212 ノイズフィルタ
213 AC-DCコンバータ
214 充放電制御回路
215 カップリングトランス
216 PLC通信制御回路
217 LAN通信制御回路
261 直流電力コネクタ
262 充電用コネクタ
263 AP用電源コネクタ
264 ルータ用電源コネクタ
265、266、267 LANコネクタ
268 非常照明用電源コネクタ
280 表示部
220 モバイルバッテリ
230 無線LANアクセスポイント
240 無線ルータ
250 外付けLANコネクタ
300 子機(通信装置)