(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179731
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】猫用トイレ
(51)【国際特許分類】
A01K 1/01 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
A01K1/01 801Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023179266
(22)【出願日】2023-10-18
(62)【分割の表示】P 2019215964の分割
【原出願日】2019-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】597036477
【氏名又は名称】ライオンペット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松田 悟
(72)【発明者】
【氏名】尾本 典隆
(72)【発明者】
【氏名】井上 悠美
(57)【要約】
【課題】排泄後に猫が砂掻きをしたときにトイレ砂が飛び散らず、かつ猫が排泄した後に異常行動を低減することのできる猫用トイレを提供する。
【解決手段】
猫用トイレ1は、猫用のトイレ砂Sが載置される底部10と、底部の周囲を囲むように底部から立ち上がる縦壁部20と、縦壁部に設けられ、猫が出入り可能に凹状に構成された開口部40と、を有する。開口部から猫が入り込む第1方向において、互いに対向する縦壁部同士の間の第1長さL1は、37.5cm以下であって、第1方向に直交する第2方向において、互いに対向する縦壁部同士の間の第2長さL2は、45cm以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
猫用のトイレ砂が載置される底部と、
前記底部の周囲を囲むように前記底部から立ち上がる縦壁部と、
前記縦壁部に設けられ、前記猫が出入り可能に凹状に構成された開口部と、を有し、
前記開口部から前記猫が入り込む第1方向において、互いに対向する前記縦壁部同士の間の第1長さは、37.5cm以下であって、
前記第1方向に直交する第2方向において、互いに対向する前記縦壁部同士の間の第2長さは、45cm以上であって、
前記底部は前記第2方向に沿って傾斜するように構成される、猫用トイレ。
【請求項2】
前記第1長さは、32.5cm以上であって、
前記第2長さは、60cm以下である、請求項1に記載の猫用トイレ。
【請求項3】
前記底部の底面から前記開口部の下端までの長さは、10~13cmである、請求項1または2に記載の猫用トイレ。
【請求項4】
前記底部は前記第2方向に沿って傾斜するように構成されており、
前記底部のうち傾斜する下部および前記縦壁部の間にはR形状が形成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の猫用トイレ。
【請求項5】
半透明であって、シボ加工が施されてなる、請求項1~4のいずれか1項に記載の猫用トイレ。
【請求項6】
載置状態において鉛直方向の上方から視たときに、
前記縦壁部は、
前記開口部が形成される第1縦壁部と、
前記第1縦壁部に対して連続して反時計回り側に配置される第2縦壁部と、
前記第2縦壁部に対して連続して反時計回り側に配置される第3縦壁部と、
前記第3縦壁部に対して連続して反時計回り側に配置される第4縦壁部と、を有し、
前記第4縦壁部の立ち上がり角度は、前記第1縦壁部、前記第2縦壁部、および前記第3縦壁部の立ち上がり角度よりも小さい、請求項1~5のいずれか1つに記載の猫用トイレ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、猫用トイレに関する。
【背景技術】
【0002】
猫はトイレに入り、トイレ砂の上で排尿や排便をする。その後、猫は、トイレ砂を足で掻いて排泄物を隠す。飼い主等は、排泄物で汚れた部分のトイレ砂を排泄物と共にトイレ内から取り除き、取り除いた分だけ、新しいトイレ砂を補充する。
【0003】
上記のようなトイレ砂として、例えば下記の特許文献1には、モンモリロナイトを主成分とする粘土鉱物及び活性白土を含んでなる組成物の成形物からなるトイレ砂が開示されている。
【0004】
また、猫用のトイレとして、例えば下記の特許文献2には、動物が出入りするための開口と粒状物が撒設される液通特性の底面部とを備えた上部容器と、底面部の下方に位置し上部容器を支持する下部開口と、底面部を通過した液体を吸収する吸液シートを配置するための吸液シート配置容器を収容する収容部と、を備える下部容器と、を備える動物用トイレが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-65789号公報
【特許文献2】特開2009-11181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような猫用トイレにおいて、排泄した後に猫がトイレ砂を掻く際に猫用トイレからトイレ砂が飛び散らないことが求められている。さらに、猫が猫用トイレで排泄を行った後に砂掻きをしないことや、猫用トイレの縁につかまることなどの異常行動を低減できる猫用トイレが求められている。
【0007】
本発明の発明者等は、上記課題の解決を図るにあたり、鋭意努力を重ねた結果、本発明の猫用トイレを案出するに至った。
【0008】
本発明は、排泄後に猫が砂掻きをしたときにトイレ砂が飛び散る量を低減するとともに、猫が排泄した後において猫の異常行動を低減することのできる猫用トイレを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明に係る猫用トイレは、猫用のトイレ砂が載置される底部と、前記底部の周囲を囲むように前記底部から立ち上がる縦壁部と、前記縦壁部に設けられ、前記猫が出入り可能に凹状に構成された開口部と、を有し、前記開口部から前記猫が入り込む第1方向において、互いに対向する前記縦壁部同士の間の第1長さは、37.5cm以下であって、前記第1方向に直交する第2方向において、互いに対向する前記縦壁部同士の間の第2長さは、45cm以上である。前記底部は前記第2方向に沿って傾斜するように構成される。
【発明の効果】
【0010】
上述の猫用トイレによれば、開口部を介して第1方向に沿って猫用トイレに入り込んだ猫は、多くが第2方向に向くように体の向きを変えることが分かった。第2方向に沿う縦壁部には開口部が設けられていないため、排泄後に猫が砂掻きをしたときにトイレ砂が飛び散る量を低減することができる。また、第2方向に沿う第2長さは、第1方向に沿う第1長さよりも長いため、猫が排泄した後において猫の異常行動を低減することが分かった。以上から、排泄後に猫が砂掻きをしたときにトイレ砂が飛び散る量を低減するとともに、猫が排泄した後において猫の異常行動を低減することのできる猫用トイレを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る猫用トイレを示す平面図である。
【
図2】本実施形態に係る猫用トイレを示す正面図である。
【
図3】本実施形態に係る猫用トイレを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態を、
図1~
図3を参照しつつ説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る猫用トイレ1を示す平面図である。
図2は、本実施形態に係る猫用トイレ1を示す正面図である。
図3は、本実施形態に係る猫用トイレ1を示す側面図である。以下の説明において、
図1の右方向をX方向(第2方向に相当)と称し、
図1の上方向をY方向(第1方向に相当)と称し、
図2の上方向をZ方向と称する。
【0014】
本実施形態に係る猫用トイレ1は、一定の肉厚を有する。猫用トイレ1は、プラスチック製から構成されている。なお、本実施形態に係る猫用トイレ1は、半透明であって、シボ加工が施されていることが好ましい。猫用トイレ1が半透明であることによって、飼い主等が猫用トイレ1内の猫の様子を確認することができるため、好ましい。また、猫用トイレ1にシボ加工が施されることによって、意匠性が向上するとともに、飼い主等の把持のしやすさが向上する。以下、猫用トイレ1の構成について詳述する。
【0015】
猫用トイレ1は、
図1~
図3に示すように、底面に設けられる底部10と、底部10から立ち上がる縦壁部20と、排泄の際に猫が滞在する空間部30と、猫が空間部30に出入り可能に凹状に構成された開口部40と、底部10の下方に設けられたリブ部50と、を有する。
【0016】
底部10には、猫用のトイレ砂Sが載置される。底部10は、
図2に示すように、X方向のマイナス側に沿ってZ方向のマイナス側となるように傾斜して構成される。猫用のトイレ砂Sは、
図2に示すように、底部10のうち傾斜する上方側の上部10Aから例えば5cmの高さまで充填される。なお、猫用のトイレ砂Sが底部10に充填される高さは、5cmに限定されない。
【0017】
底部10のうち傾斜する上方側の上部10Aおよび縦壁部20の第2縦壁部22の間の第1連続部S1は、R形状となるように構成されている。第1連続部S1は、例えばR2.5cmとなるように構成されている。
【0018】
底部10のうち傾斜する下方側の下部10Bおよび縦壁部20の第4縦壁部24の間の第2連続部S2は、R形状となるように構成されている。第2連続部S2は、例えばR5cmとなるように構成されている。
【0019】
猫用のトイレ砂Sは、およそ1か月に1回の頻度で全量を交換する必要がある。上述のように底部10がX方向に沿って傾斜するように構成され、かつ第2連続部S2がR形状となるように構成されているため、底部10に載置される猫用のトイレ砂Sを排出する際に、第2連続部S2を起点として、
図2の反時計回りに傾斜させることによって、猫用のトイレ砂Sを好適に排出することができる。よって飼い主等に対する利便性が向上する。
【0020】
縦壁部20は、
図1~
図3に示すように、開口部40が形成される第1縦壁部21と、第1縦壁部21に対して連続して反時計回り側に配置される第2縦壁部22と、第2縦壁部22に対して連続して反時計回り側に配置される第3縦壁部23と、第3縦壁部23に対して連続して反時計回り側に配置される第4縦壁部24と、を有する。
【0021】
第1縦壁部21、第2縦壁部22、第3縦壁部23、および第4縦壁部24は、互いに一体的に構成される。第1縦壁部21、第2縦壁部22、第3縦壁部23、および第4縦壁部24は、互いに略直交するように構成されている。第1縦壁部21および第2縦壁部22、第2縦壁部22および第3縦壁部23、第3縦壁部23および第4縦壁部24、ならびに第4縦壁部24および第1縦壁部21の間は、それぞれR形状となるように構成されている。
【0022】
第1縦壁部21は、
図3に示すように、Z方向の上方に向けてY方向のマイナス側となるように傾斜して立ち上がっている。第1縦壁部21の立ち上がり角度θ1は、特に限定されないが、例えば85度である。
【0023】
第2縦壁部22は、
図2に示すように、Z方向の上方に向けてX方向のプラス側となるように傾斜して立ち上がっている。第2縦壁部22の立ち上がり角度θ2は、特に限定されないが、例えば85度である。
【0024】
第3縦壁部23は、
図3に示すように、Z方向の上方に向けてY方向のプラス側となるように傾斜して立ち上がっている。第3縦壁部23の立ち上がり角度θ3は、特に限定されないが、例えば85度である。
【0025】
第4縦壁部24は、
図2に示すように、Z方向の上方に向けてX方向のマイナス側となるように傾斜して立ち上がっている。第4縦壁部24の立ち上がり角度θ4は、特に限定されないが、例えば75度である。
【0026】
このように、縦壁部20はZ方向の上方に向けて拡張するように傾斜されている。このため、猫がY方向に沿って猫用トイレ1に入ってX方向に沿って体の向きを変えた際に、猫の目線におけるX方向の長さを長くしつつ、底部10に載置される猫用のトイレ砂Sの使用量を低減することができる。
【0027】
図1に示すように、Y方向において互いに対向する第1縦壁部21および第3縦壁部23の間の第1長さL1は、32.5cm以上であって、37.5cm以下である。ここで第1長さL1とは、
図3に示すように、底部10にトイレ砂Sを、底部10の上部10Aから所定の高さ(例えば5cm)だけ載置したときの、トイレ砂Sの表面のY方向に沿う長さである。なお、縦壁部20には、上部10Aから5cmの高さとなる箇所に、内方側に1周分だけ目印の線が形成されていることが好ましい。
【0028】
また、
図1に示すように、X方向において対向する第2縦壁部22および第4縦壁部24の間の第2長さL2は、45cm以上であって、60cm以下である。ここで、第2長さL2とは、
図2に示すように、底部10にトイレ砂Sを、底部10の上部10Aから所定の高さ(例えば5cm)だけ載置したときの、トイレ砂Sの表面のX方向に沿う長さである。
【0029】
底部10の底面からの縦壁部20の高さH1(
図2参照)は、特に限定されないが、例えば、15~25cmである。例えば、底部10の底面からの縦壁部20の高さH1が25cmより高いと、猫用トイレから外方が見えにくくなってしまう。また、底部10の底面からの縦壁部20の高さH1が15cmより低いと、砂掻きをした際に、縦壁部を超えて、トイレ砂Sが外部に漏れてしまう可能性がある。
【0030】
空間部30は、底部10および縦壁部20の間に形成される。空間部30は、排泄の際に猫が滞在するための空間である。
【0031】
開口部40は、
図2に示すように、第1縦壁部21に設けられる。開口部40は、猫が空間部30への出入りを可能にするように、凹状に構成されている。
【0032】
底部10の底面から開口部40の下端までの高さH2(
図2参照)は、例えば、10~13cmであって、12cmであることが好ましい。このように開口部40の高さが設定されることによって、子猫や老猫であっても、容易に開口部40を介して、空間部30に出入りすることができる。
【0033】
また、このように子猫や老猫が出入りしやすいように、比較的低く設定されているため、例えば、第2長さL2が45cm未満であって、猫用トイレに入った猫が向きを変えることなく、尿をして、砂掻きをすると、開口部40を介して、砂が猫用トイレの外側にこぼれてしまう。これに対して、本発明に係る猫用トイレ1であれば、第2長さL2が45cmであって、空間部30に入った猫はY方向からX方向に向きを変える頻度が向上するため、開口部40の高さが比較的低く設定されていたとしても、開口部40を介してトイレ砂Sが外部に出ることを好適に抑制できる。
【0034】
開口部40は、
図2に示すように、正面視で4隅がR形状となるように構成され、4隅のうち、下側の2隅はZ方向の下に凸となるようにR形状に構成され、上側の2隅はZ方向の上に凸となるようにR形状に構成される。
【0035】
リブ部50は、
図2、
図3に示すように、底部10の下方に設けられる。リブ部50は、
図2、
図3に示すように、第2縦壁部22に連続して構成される第1リブ部51と、第1縦壁部21および第3縦壁部23に連続して構成される第2リブ部52と、を有する。
【0036】
このようにリブ部50が構成されることによって、底部10を傾斜させつつ、猫用トイレ1を床面に載置することができる。
【0037】
<実施例>
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0038】
まず実験1について説明する。猫用のトイレ砂Sとしては「ニオイをとる砂」(ライオン商事株式会社製)を使用した。
【0039】
下記に説明する3つのサイズの猫用トイレを準備した。
【0040】
実施例1として、第1長さL1が35cm、第2長さL2が50cm、高さH1が20cmの猫用トイレを準備した。
【0041】
実施例2として、第1長さL1が35cm、第2長さL2が60cm、高さH1が20cmの猫用トイレを準備した。
【0042】
比較例1として、第1長さL1が35cm、第2長さL2が40cm、高さH1が20cmの猫用トイレを準備した。
【0043】
観察用のビデオカメラを設置して、合計約80頭の猫が、猫用トイレを使用する様子を撮影した。
【0044】
評価項目としては、猫が3つの猫用トイレのうち、どの猫用トイレを選ぶかの回数、および選んだ猫用トイレで嫌悪行動をとる割合である。評価の結果を以下の表1に示す。
【0045】
【0046】
表1の結果から、猫が排泄する際に、比較例1の猫用トイレ(39回)に対して、実施例1(82回)および実施例2(83回)の猫用トイレが選ばれることが分かった。また、嫌悪行動を取る頻度は、実施例1(15/82)および実施例2(14/83)の猫用トイレに対して、比較例1(10/39)の猫用トイレが高くなることが分かった。
【0047】
以上の実験1より、第2長さL2が50cm以上である猫用トイレが、猫に好まれることが分かった。次に、実験2において、第2長さL2を40cm~60cmの間で、第1長さL1を32.5cm~40cmの間でそれぞれ変更して、Y方向に沿って猫用トイレに入った猫がX方向に向きを変える割合を測定した。測定結果を以下の表2に示す。
【0048】
【0049】
表2の結果から、第1長さL1が37.5cm以下であって、第2長さL2が45cm以上(表2のグレーの網掛け)であれば、50%を超える割合で、Y方向に沿って猫用トイレに入った猫がX方向に沿って体の向きを変えることが分かった。
【0050】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。
【0051】
例えば上述した実施形態では、第1長さL1は32.5cm以上であって、37.5cm以下であった。しかしながら、第1長さL1は、37.5cm以下であれば特に限定されない。
【0052】
また、上述した実施形態では、第2長さL2は45cm以上であって、60cm以下であった。しかしながら、第2長さL2は、45cm以上であれば特に限定されない。
【0053】
また、上述した実施形態では、底部10の底面から開口部40の下端までの長さは12cmであったが、これに限定されない。
【0054】
また、上述した実施形態では、底部10は、X方向に沿って傾斜するように構成されていたが、X方向に沿って水平に構成されていてもよい。
【0055】
また、上述した実施形態では、猫用トイレ1は半透明であって、シボ加工が施されていたが、半透明でなくでもよく、またシボ加工が施されていなくてもよい。
【0056】
また、上述した実施形態では、猫用トイレ1は平面視で略矩形状を有していたが、猫用トイレは、楕円形状であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 猫用トイレ、
10 底部、
20 縦壁部、
40 開口部、
50 リブ部、
L1 第1長さ、
L2 第2長さ、
S トイレ砂。