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特開2023-179803ブロックチェーンにより実現されるシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179803
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】ブロックチェーンにより実現されるシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 9/32 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
H04L9/32 200Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023184336
(22)【出願日】2023-10-27
(62)【分割の表示】P 2022079138の分割
【原出願日】2017-07-21
(31)【優先権主張番号】1613174.0
(32)【優先日】2016-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】318001991
【氏名又は名称】エヌチェーン ライセンシング アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ライト,クレイグ スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】サヴァナ,ステファヌ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ブロックチェーンを介しチケットなどのデジタルアセットなどのアセットの交換又は転送に適している方法及び対応するシステムを提供する。
【解決手段】ブロックチェーンを介し第1のユーザと第2のユーザとの間でアセットを転送する方法であって、アンロックデータ又は第1のユーザの暗号化シグネチャ及び第2のユーザの暗号化シグネチャの何れかを提供することによって償還可能な、少なくとも1つの第1のアセットを表す少なくとも1つの第1の出力を含む第1のブロックチェーントランザクションを生成するステップを含む。少なくとも1つの第1のアセットは、第2のブロックチェーントランザクションの少なくとも1つの第2の出力によって表される少なくとも1つの第2のアセットに対して交換される。アンロックデータは、第1のユーザによって選択され、第2のユーザに初期的には秘密又は未知に保持される公開可能データを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックチェーンを介して第1のユーザと第2のユーザとの間でアセットを転送するためのコンピュータにより実現される方法であって、
少なくとも1つの支払いを表す、少なくとも1つの第1の出力を含む第1の支払いトランザクションを生成するステップであり、前記第1の支払いトランザクションは、
(i)アンロックデータ、または、
(ii)第1のユーザの暗号化シグネチャ及び第2のユーザの暗号化シグネチャ、
のいずれかを提供することによって償還可能である、
ステップ、を含み、
前記少なくとも1つ支払いは、チケットトランザクションの少なくとも1つの第2の出力によって表されるイベントのための少なくとも1つのチケットに対して交換され、前記少なくとも1つの第2の出力は、
(i)前記アンロックデータ、または、
(ii)前記第1のユーザの暗号化シグネチャ及び前記第2のユーザの暗号化シグネチャ、
のいずれかを提供することによって償還可能であり、
第1のアンロックデータを提供することによる少なくとも1つの第2の出力の償還は、前記第1のアンロックデータを、少なくとも1つの第1の出力を償還するために利用可能にする、
方法。
【請求項2】
前記第1のユーザの暗号化シグネチャ及び前記第2のユーザの暗号化シグネチャを提供することによる前記第1の支払いトランザクションの償還は、少なくとも1つの第1の出力を前記第1のユーザに返す、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、さらに、
第1のロック時間の経過に応答して、前記第1のユーザの暗号化シグネチャ及び前記第2のユーザの暗号化シグネチャを提供することによる少なくとも1つの第1の出力の償還を可能にするよう構成される第3のブロックチェーントランザクションを生成するステップ、を含む、
請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記第3のブロックチェーントランザクションは、前記第1のユーザの暗号化シグネチャ及び前記第2のユーザの暗号化シグネチャを含むアンロックスクリプトを含む、
請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記第3のブロックチェーントランザクションを生成するステップは、前記第3のブロックチェーントランザクションを不完全な状態で前記第2のユーザに送信するステップを含み、前記不完全な第3のブロックチェーントランザクションは、完全な状態で前記第1のユーザに返す前に、前記第2のユーザの暗号化シグネチャを受信するように構成される、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記第1のロック時間は、第4のブロックチェーントランザクションに関連する第2のロック時間より大きく、前記第4のブロックチェーントランザクションは、前記第2のロック時間の経過に応答して、前記第1のユーザの暗号化シグネチャ及び前記第2のユーザの暗号化シグネチャを提供することによる少なくとも1つの第2の出力の償還を可能にするように構成される、
請求項3乃至5何れか一項記載の方法。
【請求項7】
前記アンロックデータは、前記第1のユーザによって選択された公開可能データを含み、前記公開可能データは、第3のブロックチェーントランザクションの償還まで前記第2のユーザに未知である、
請求項1乃至6何れか一項記載の方法。
【請求項8】
前記アンロックデータは、更に、前記第2のユーザの暗号化シグネチャを含む、
請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、さらに、
前記第1のユーザの暗号化シグネチャを提供することによって償還可能であり、これによって前記第1のユーザに少なくとも1つの第1の出力を返す、少なくとも1つの第3の出力を含む、リファンドブロックチェーントランザクションを生成するステップ、
を含む、請求項1乃至8何れか一項記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、さらに、
前記ブロックチェーンに前記リファンドブロックチェーントランザクションをブロードキャストするステップであり、
前記リファンドブロックチェーントランザクションは、第三者に送信され、かつ、
前記ブロードキャストは、前記第三者によって実行される、
請求項9記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に分散型台帳技術(ブロックチェーン関連技術など)に関し、特に
主体間のアセットのセキュアな転送(及び/又は交換)のための解決策に関する。それは、ブロックチェーンプラットフォーム又はプロトコルを介し実施されるセキュアなピア・ツー・ピア交換方法及び/又はシステムを提供しうる。本発明は特に、事前の関係又は信頼が存在しない主体間のデジタル又は電子アセットなどのアセットをセキュアに送信するのに適している。
【背景技術】
【0002】
本文書では、このコンテクストにおいて現在最も広く知られている用語であるため、参照の便宜及び容易のため、“ブロックチェーン”という用語を利用する。当該用語は、コンセンサスベースブロックチェーン、オルトチェーン、サイドチェーン及びトランザクションチェーン技術、パーミッション型及び非パーミッション型台帳、プライベート若しくはパブリック台帳、共有台帳及びこれらの変形を含む全ての形態の電子的コンピュータベース分散型台帳を含むようここでは利用される。
【0003】
ブロックチェーンは、トランザクションから構成されるブロックから構成されるコンピュータベースの非中央化された分散システムとして実現される電子台帳である。各トランザクション(Tx)は、少なくとも1つの入力と少なくとも1つの出力とを含む。各ブロックは、それの開始以来ブロックチェーンに書き込まれてきた全てのトランザクションの永続的で修正不可なレコードを作成するために一緒にチェーン化されたブロックの前のブロックのハッシュを含む。トランザクションは、トランザクションの出力がどのようにして誰によってアクセス可能であるかを特定する入力及び出力に埋め込まれたスクリプトとして知られる小さなプログラムを含む。ビットコインプラットフォーム上では、これらのスクリプトはスタックベーススクリプト言語を用いて記述される。
【0004】
トランザクションがブロックチェーンに書き込まれるために、それは、i)トランザクションを受信した最初のノードによって検証され、トランザクションが検証された場合、ノードはそれをネットワークにおける他のノードに中継し、ii)マイナーによって構築された新たなブロックに追加され、iii)マイニング、すなわち、過去のトランザクションの公開台帳に追加される必要がある。
【0005】
ブロックチェーン技術の最も広く知られているアプリケーションは、他のブロックチェーン実現形態が提案及び開発されてきたが、ビットコイン台帳である。ビットコインは便宜及び説明の目的のためにここでは参照されうるが、本発明はビットコインブロックチェーンによる利用に限定されず、他のブロックチェーン実現形態が本発明の範囲内に属することが留意されるべきである。
【0006】
ブロックチェーン技術は、仮想通貨の実現形態の利用について最も広く知られている。しかしながら、より最近では、デジタル起業家は、ビットコインが基づいている暗号化セキュリティシステムの利用と、ブロックチェーンに格納可能なデータの利用との双方を用いて新たなシステムを実現することを始めている。
【0007】
現在の興味及び研究の1つのエリアは、“スマートコントラクト”の実現のためのブロックチェーンの利用である。これらは、契約又は合意の条項の実行を自動化するよう設計されたコンピュータプログラムである。自然言語で記述される従来の契約と異なって、スマートコントラクトは、結果を生じさせるために入力を処理可能なルールを含み、これらの結果に応じてアクションを実行させることが可能なマシーン実行可能なプログラムである。
【0008】
ブロックチェーン関連の興味の他のエリアは、ブロックチェーンを介し実世界のエンティティを表現及び転送するための“トークン”(又は“カラードトークン”)の利用である。潜在的に機密又は秘密のアイテムは、区別可能な意味又は値を有さないトークンによって表現できる。従って、トークンは、実世界アイテムが参照されることを可能にする識別子として機能する。
【0009】
本発明は、添付した請求項に規定される。
【0010】
本発明は、コンピュータにより実現される方法及び対応するシステムを提供しうる。それは、ブロックチェーンを介し処理を実現又は実行するための方法として説明されうる。それは、ブロックチェーンを介しアセットの交換又は転送を実行するための方法として説明されうる。アセットの一方又は双方は仮想通貨の一部であってもよい。さらに又はあるいは、アセットの一方又は双方は非仮想通貨であってもよいが、例えば、物理、電子又はデジタルアセットなどの他の何れかの種類のアセットであってもよい。それは、トークン化されたアセットであってもよい。
【0011】
当該方法は、ブロックチェーンを介し第1のユーザと第2のユーザとの間で少なくとも1つのアセットの転送及び/又は交換を制御するコンピュータにより実現される方法を提供しうる。当該方法は、アセットがどのように及びいつ転送されるかを制御しうる。当該方法は、
(i)アンロックデータ、又は(ii)第1のユーザの暗号化シグネチャ及び第2のユーザの暗号化シグネチャの何れかを提供することによって償還可能である、少なくとも1つの第1のアセットを表す少なくとも1つの第1の出力を含む第1のブロックチェーントランザクションを生成するステップを含んでもよく、少なくとも1つの第1のアセットは、第2のブロックチェーントランザクションの少なくとも1つの第2の出力によって表される少なくとも1つの第2のアセットに対して交換され、少なくとも1つの第2の出力は、(i)アンロックデータ、又は(ii)第1のユーザの暗号化シグネチャ及び第2のユーザの暗号化シグネチャの何れかを提供することによって償還可能である。
【0012】
第1のアンロックデータを提供することによる少なくとも1つの第2の出力の償還は、第1のアンロックデータを少なくとも1つの第1の出力を償還するのに利用可能にしうる。
【0013】
“償還”という用語は、ブロックチェーントランザクション内に含まれる出力を使う(すなわち、償還又は引き換える)ことを意味しうる。
【0014】
ブロックチェーンを介したアセットの相互保証された転送は、上記の方法によって可能であり、これにより、これらのアセットのセキュアな転送及び当該転送の変更不可な記録が作成及び維持されることを可能にする効果を提供する。
【0015】
従って、本発明は、2つの主体が、それらの間に信頼が確立されていなくても、ブロックチェーンを介したアセットのセキュアな交換を実行可能な機構を提供しうる。本発明は、トランザクションのマイニングが実行可能な時点を制御する時間ロック機構に加えて、これを実施するための“公開可能”データのコンセプトに加えて暗号化技術を利用する。アセットの転送の制御がブロックチェーンプロトコルの発明の適用によって実施されることを意味するトランザクションの間の相互依存が生成される。従って、本発明は、信頼のない主体の間の効果的な利用のためのよりセキュアなアセットの交換手段を提供する。
【0016】
第1のユーザの暗号化シグネチャ及び第2のユーザの暗号化シグネチャを提供することによる第1のブロックチェーントランザクションの償還は、少なくとも1つの第1の出力を第1のユーザに返してもよい。
【0017】
これは、第1及び第2のユーザの双方のシグネチャを提供すると、第1のアセットが第1のユーザに返されることを可能にし、これにより、第1のユーザに対する損失を防ぐ効果を提供する。
【0018】
当該方法は、第1のロック時間の経過に応答して、第1のユーザの暗号化シグネチャ及び第2のユーザの暗号化シグネチャを提供することによる少なくとも1つの第1の出力の償還を可能にするよう構成される第3のブロックチェーントランザクションを生成するステップを更に含んでもよい。
【0019】
これは、第1のユーザが第1の出力を償還することを妨げる期間を提供し、これにより、当該期間内に第2の出力に加えて第1の出力を第1のユーザが請求することを防ぐ効果を提供する。
【0020】
第3のブロックチェーントランザクションは、第1のユーザの暗号化シグネチャ及び第2のユーザの暗号化シグネチャを含むアンロックスクリプトを含んでもよい。
【0021】
これは、第三者が第1の出力を請求することを防ぎ、これにより、当該方法のセキュリティを増大させる効果を提供する。
【0022】
第3のブロックチェーントランザクションを生成するステップは、第3のブロックチェーントランザクションを不完全な状態で第2のユーザに送信するステップを含んでもよく、不完全な第3のブロックチェーントランザクションは、完全な状態で第1のユーザに返す前に、第2のユーザの暗号化シグネチャを受信するよう構成される。
【0023】
これは、暗号化シグネチャを収集するためのシンプルでセキュアな機構を提供する効果を提供する。
【0024】
第1のロック時間は、第4のブロックチェーントランザクションに関連する第2のロック時間より大きくてもよく、第4のブロックチェーントランザクションは、第2のロック時間の経過に応答して、第1のユーザの暗号化シグネチャ及び第2のユーザの暗号化シグネチャを提供することによる少なくとも1つの第2の出力の償還を可能にするよう構成される。
【0025】
これは、第1のロック時間と第2のロック時間との間の差分に等しいバッファリング期間を提供し、当該期間内で第2のユーザは第1の出力を償還してもよいが、第1のユーザは第1の出力を償還するためのブロックチェーンに第3のブロックチェーントランザクションを送信せず、これにより、第1の出力と第2の出力との双方を第1のユーザが償還することを不可にする。
【0026】
アンロックデータは、第1のユーザによって選択された公開可能データを含んでもよく、公開可能データは、第3のブロックチェーントランザクションの償還まで第2のユーザに未知である。公開可能データは、第3のブロックチェーントランザクションが使われるまで、好ましくは第1のユーザのみに知られる(初期的に)秘密であるデータであってもよい。公開可能データは、アンロックスクリプトでそれを提供することによって、それをブロックチェーン上で利用可能にすることによって、パブリック又は“公開”されてもよい。これは、第3のトランザクションのロックスクリプトをアンロックするためであってもよい。その後、第2のユーザは、公開可能データを確認及び利用し、それを他のロックスクリプトに提供可能であってもよい。
【0027】
これは、相互信頼が第1のユーザと第2のユーザとの間で生成されることを可能にする効果を提供し、公開可能データの公開は、第1及び第2のユーザがそれぞれの第1及び第2のトランザクションによって表現されるそれぞれのアセットを公開可能データの非開示が再取得することを可能にするという更なる効果を提供しながら、第1のユーザが第2の出力を償還し、第2のユーザが第1の出力を償還することを可能にする。
【0028】
アンロックデータは更に、第2のユーザの暗号化シグネチャを含んでもよい。
【0029】
これは、第1の出力の償還が第2のユーザの暗号化シグネチャを必要とすることを保証し、これにより、当該方法のセキュリティを増大させる効果を提供する。
【0030】
本発明の第2の態様によると、第1のユーザと第2のユーザとの間でアセットを転送するコンピュータにより実現される方法であって、(i)アンロックデータ、又は(ii)第1のユーザの暗号化シグネチャ及び第2のユーザの暗号化シグネチャの何れかを提供することによって償還可能である、少なくとも1つの第2のアセットを表す少なくとも1つの第2の出力を含む第2のブロックチェーントランザクションを生成するステップを含み、少なくとも1つの第2のアセットは、第1のブロックチェーントランザクションの少なくとも1つの第1の出力によって表される少なくとも1つの第1のアセットに対して交換され、少なくとも1つの第1の出力は、(i)第1のアンロックデータ、又は(ii)第1のユーザの暗号化シグネチャ及び第2のユーザの暗号化シグネチャの何れかを提供することによって償還可能であり、第1のアンロックデータを提供することによる第2の出力の償還は、第1のアンロックデータを第1の出力を償還するのに利用可能にする方法が提供される。
【0031】
第1のユーザの暗号化シグネチャ及び第2のユーザの暗号化シグネチャを提供することによる第2のブロックチェーントランザクションの償還は、第2の出力を第2のユーザにリファンドしてもよい。
【0032】
これは、第1及び第2のユーザの双方のシグネチャを提供すると、第2のアセットが第2のユーザに返されることを可能にし、これにより、第2のユーザに対する損失を防ぐ効果を提供する。
【0033】
当該方法は更に、第2のロック時間の経過に応答して、第1のユーザの暗号化シグネチャ及び第2のユーザの暗号化シグネチャを提供することによる少なくとも1つの第2の出力の償還を可能にするよう構成される第4のブロックチェーントランザクションを生成するステップを更に含んでもよい。
【0034】
これは、第2のユーザが第2の出力を償還することを妨げられる期間を提供し、これにより、第2のユーザが当該期間内に第1の出力に加えて第2の出力を請求することを防ぐ効果を提供する。
【0035】
第4のブロックチェーントランザクションは、第1のユーザの暗号化シグネチャ及び第2のユーザの暗号化シグネチャを含むアンロックスクリプトを含んでもよい。
【0036】
第4のブロックチェーントランザクションを生成するステップは、第1のユーザに不完全な状態で第4のブロックチェーントランザクションを送信するステップを含んでもよく、不完全な第4のブロックチェーントランザクションは、完全な状態で第2のユーザに返す前に、第1のユーザの暗号化シグネチャを受信するよう構成される。
【0037】
当該方法は、ブロックチェーン上で第3のブロックチェーントランザクションをモニタするステップを更に含んでもよい。
【0038】
これは、第2のユーザがタイムリな方法で第1の出力を償還することを可能にする効果を提供する。
【0039】
当該方法は、第1のユーザの暗号化シグネチャを提供することによって償還可能であり、これによって第1のユーザに少なくとも1つの第1の出力を返す少なくとも1つの第3の出力を含む第5のブロックチェーントランザクションを生成するステップを更に含んでもよい。
【0040】
これは、リファンド機構がブロックチェーン上で実施されることを可能にし、第1のアセットが第1のユーザに返され、当該方法のユーザフレンドリさを増大させる効果を提供する。
【0041】
当該方法は、アセットが第1のユーザに提供されなかったという判定に応答して、第5のブロックチェーントランザクションをブロックチェーンにブロードキャストするステップを更に含んでもよい。
【0042】
これは、第1のユーザに対する損失の確率を更に減少させる効果を提供する。
【0043】
第5のブロックチェーントランザクションは、第三者に送信され、判定及びブロードキャストは、第三者によって実行されてもよい。
【0044】
これは、当該方法の自動化を増大させる更なる効果を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】第2のアセットの見返りの第1のユーザから第2のユーザへの第1のアセットを表すブロックチェーントランザクションを示す。
図2】第1のアセットの見返りの第2のユーザによって第1のユーザに提供される第2のアセットを表すトークン化されたブロックチェーントランザクションを示す。
図3】第1のロック時間が経過した後、図1のトランザクションの出力を第1のユーザに潜在的に返すよう構成されるブロックチェーントランザクションを示す。
図4】第2のロック時間が経過した後、図2のトランザクションの出力を第2のユーザに潜在的に返すよう構成されるブロックチェーントランザクションを示す。
図5】第1のユーザに対する第1のアセットのリターンを表すブロックチェーントランザクションを示す。
図6】第1及び第2のユーザによってとられるステップを示すフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
ここで、説明の目的のみのため、本発明の実施例の説明を提供する。この例示的なシナリオでは、ブロックチェーンを介し支払いの形態をとる第1のアセットの見返りにイベントチケットの形態をとる第2のアセットを転送する方法が説明される。ブロックチェーンの使用は、当該技術によって提供される本来的な効果を提供する。これらの効果は、改ざん耐性なイベントのレコードを含み、通貨交換のセキュリティを増大させた。この説明はチケットに関するものであるが、他のタイプのアセットが転送されてもよく、本発明の範囲内に依然として属しうる。本発明は、対象となるアセットのタイプに関して限定されない。
【0047】
Aliceは、将来のある時点に行われるイベントのチケットを購入することを検討している。Bobは、トークン化されたブロックチェーントランザクションの形態でイベントに対する販売チケットを提供している。
【0048】
図1及び図6を参照して、Aliceは、Bobから購入したい枚数のチケットのための支払いを表す(この例示的な実施例では、支払いは図1のValueセルに示される2ビットコイン又は2BTCである)第1のブロックチェーントランザクションを生成する(S100)。ここから、当該第1のブロックチェーントランザクションは、簡単化のため支払いトランザクションとして参照されうる。
【0049】
支払いトランザクションは、以下のロックスクリプトを含む出力を有する。
【0050】
【表1】
支払いトランザクションは、以下のアンロックスクリプトの何れかの支払いトランザクションのロックスクリプトに対する提示によってアンロックされうる。
【0051】
【表2】
ここで、XはAliceによって選択され、支払いトランザクションをセキュアにするのに利用されるブロックチェーントランザクションにおいて利用可能な形態のデータを含む。Xは、指紋又は虹彩などの生体情報のデジタル化されたバージョンであってもよい。Xは、ランダム又は擬似ランダムに生成されたデータを含んでもよい。Xを含む上記のアンロックスクリプト
【0052】
【表3】
のコンテンツは、“アンロックデータ”として参照されうる。アンロックデータは、Bobのシグネチャ及びBobの公開鍵を含んでもよく、あるいは、それはデータXのみを含んでもよく、あるいは、それはこれらの何れか適切な組み合わせを含んでもよい。この例示的な実施例では、アンロックデータは、Bobのシグネチャ、Bobの公開鍵及びAliceによって選択されたパスワードであるXを含む。ここから、Xは“公開可能(revealable)データ”として参照されうる。
【0053】
2BTCは、Bobの暗号化シグネチャ、Bobの公開鍵及びX、あるいは、Aliceの暗号化シグネチャ及びBobの暗号化シグネチャの何れかを提供することによって償還されうる。(第1のデータ要素(OP_0,OP_1)は何れの段階が利用されているか選択することに留意されたい。先頭のスタック値が0でない場合、IFステートメントが実行され、先頭のスタック値は削除される。)
Aliceは、検証及びブロックチェーンへのブロードキャストのために支払いトランザクションを送信する。Bobは、支払いトランザクションについてブロックチェーンをモニタし、支払いトランザクションからXのハッシュを読み込んでもよい(S102)。Aliceは更に、電子メール又はテキストメッセージなどを介し何れか適切な手段によってBobにXのハッシュ及び/又は支払いトランザクションに関する他の情報を通信してもよい(S102)。
【0054】
図2及び図6を参照して、Bobは、支払いによってAliceに転送されるAliceが購入することを所望するチケットを表す第2のブロックチェーントランザクションを生成する(S104)。Aliceが購入することを所望するチケットの枚数及びタイプは、Bobがこれらのチケットを表す第2のブロックチェーントランザクションを生成する前に、電子メール、モバイルデバイス又はPCなどのアプリ、オンラインストア又は前のブロックチェーントランザクションに埋め込まれたトランザクションメタデータなどを介し何れか適切な手段によってBobに通信されたものであってもよい。ここから、この第2のブロックチェーントランザクションは、簡単化のため“チケットトランザクション”として参照されうる。
【0055】
チケットトランザクションは、以下のロックスクリプトを含む出力を有する。
【0056】
【表4】
上記のロックスクリプトでは、リディームスクリプト(redeem script)は、
【0057】
【表5】
である。
【0058】
チケットトランザクションは、以下のアンロックスクリプト
【0059】
【表6】
の何れかのチケットトランザクションのロックスクリプトに対する提示によってアンロックされうる。
【0060】
ここで、Xは、チケットを償還するためにAliceがチケットトランザクションのロックスクリプトに提供し、リディームスクリプトが与えられるまで、Aliceによって秘密に維持されるAliceによって選択されたパスワードである。すなわち、チケットは、Aliceの暗号化シグネチャ、リディームスクリプト(Aliceの公開鍵を含む)及びX、又はAliceの暗号化シグネチャ及びBobの暗号化シグネチャの何れかを提供することによって償還されてもよい。
【0061】
Bobは、検証及びブロックチェーンへのブロードキャストのためにチケットトランザクションを送信する。Aliceは、チケットトランザクションについてブロックチェーンをモニタしてもよい。Bobは更に、電子メール又はテキストメッセージなどを介し何れか適切な手段によってAliceとチケットトランザクションに関する情報を通信してもよい。
【0062】
図3及び図6を参照して、Aliceはまた、AliceのシグネチャとBobのシグネチャとの双方を支払いトランザクションのロックスクリプトに提供することによって、支払いトランザクションの2BTCの償還を可能にするよう構成される第3のブロックチェーントランザクション(ここから、当該トランザクションは支払いリターントランザクションとして参照されうる)を生成する(S200)。Aliceは、当該トランザクションを48時間のロック時間を有するよう構成する。これは、トランザクションがそれを受信した第1のノードによって検証可能であり、メモリプールに追加可能であることを意味する。しかしながら、ロック時間によって規定される時間(この例示的な具体例では、48時間)が経過するまで、トランザクションは、マイナーによってマイニング不可であり、従って、ブロックチェーンに追加不可である。
【0063】
支払いリターントランザクションを生成するため、Bobは、トランザクションのアンロックスクリプトを作成するため、彼のシグネチャを提供しなければならない。これを実施するため、Aliceは、Bobのシグネチャを含まない支払いリターントランザクションの不完全なバージョンを生成し、それをBobに送信してもよく、Bobはその後、彼のシグネチャを不完全なトランザクションのロックスクリプトに提供し(S204)、支払いリターントランザクションの完全なバージョンをAliceに返す。
【0064】
図4及び図6を参照して、Bobはまた、AliceのシグネチャとBobのシグネチャとの双方をチケットトランザクションのロックスクリプトに提供することによって、チケットトランザクションのトークン化された出力の償還を可能にするよう構成される第4のブロックチェーントランザクション(ここから、当該トランザクションは“チケットリターントランザクション”として参照されうる)を生成する(S202)。Bobは、24時間のロック時間を有するよう当該トランザクションを構成する。これは、トランザクションがそれを受信した第1のノードによって検証可能であり、メモリプールに追加可能であることを意味する。しかしながら、ロック時間によって規定される時間(この例示的な具体例では、24時間)が経過するまで、トランザクションは、マイナーによってマイニング不可であり、従って、ブロックチェーンに追加不可である。本願において以降に説明される理由のため支払いリターントランザクションのロック時間がチケットリターントランザクションのロック時間より長くなることが効果的であるが、上記のロック時間は48時間及び24時間となるよう選択されているが、何れか適切なロック時間が選択されてもよいことが理解されるべきである。
【0065】
支払いリターントランザクションを生成するため、Aliceは、トランザクションのアンロックスクリプトを作成するため、彼女のシグネチャを提供しなければならない。これを実施するため、Bobは、Aliceのシグネチャを含まないチケットリターントランザクションの不完全なバージョンを生成し、それをAliceに送信してもよく、Aliceはその後、不完全なトランザクションのロックスクリプトに彼女のシグネチャを提供し(S204)、支払いリターントランザクションの完全なバージョンをBobに返してもよい。
【0066】
支払いトランザクション及びチケットトランザクションがブロックチェーンに追加されると、Aliceは、チケットを償還するため、チケットトランザクションのロックスクリプトに彼女のシグネチャ、公開鍵及びXを提供する選択肢を有する。これを実行する際、Aliceは、Xを公開する必要があり、Xはチケットトランザクションをアンロックする要件としてブロックチェーン上で開示される。BobがXを知ると、Bobは、チケットの支払いを償還するため、支払いトランザクションのロックスクリプトに彼のシグネチャ、彼の公開鍵及びXを提供可能である。
【0067】
Aliceは、チケットリターントランザクションのロック時間が経過するまでXを提供する必要があり、当該時間後、Bobは、チケットリターントランザクションのロックスクリプトに彼のシグネチャを提供し、チケットリターントランザクションをブロックチェーンに追加させることが可能であり、これはAliceのシグネチャ及びBobのシグネチャをチケットトランザクションのロックスクリプトに提供させ、これにより、チケットトランザクションのトークン化された出力をBobに返す。
【0068】
その後、Aliceは、支払いリターントランザクションのロック時間が経過するまで、支払いリターントランザクションのロックスクリプトに彼女のシグネチャを提供し、支払いリターントランザクションがブロックチェーンに追加されることを待機してもよく、これは、Aliceのシグネチャ及びBobのシグネチャを支払いトランザクションのロックスクリプトに提供させ、これにより、支払いトランザクションの2BTCをAliceに返す。
【0069】
Aliceがチケットリターントランザクションのロック時間の経過前にXを提供した場合、Bobは、支払いリターントランザクションのロック時間が経過するまで、Aliceが償還したチケットに対する彼の2BTCの支払いを請求するため、支払いトランザクションのロックスクリプトにXを提供しなければならない。Bobが当該ロック時間が経過するまでに2BTCを請求しなかった場合、ロック時間が経過すると、Aliceは、支払いリターントランザクションに署名し、彼女の2BTCを取り戻すことができる。
【0070】
支払いリターントランザクションのロック時間は、Aliceがチケットを請求した時点から、Bobに彼の支払いを請求するための妥当な最小時間を付与するために、チケットリターントランザクションのロック時間より大きくなるよう選択される。この最小時間は、2つのロック時間の間の差分に等しい。この例示的な具体例では、従って、当該最小時間は24時間である。
【0071】
図5を参照して、Bobは、Aliceに対するAliceの2BTCのリファンドを表すリファンドトランザクションとして以降で参照される第5のブロックチェーントランザクションを生成する。Bobは、チケットが購入されたイベントがキャンセルされた場合、あるいは、Aliceがリファンド又は他の何れか適切な理由のためにチケットを返すことを所望することを決めた場合、これを実行する。Bobは、このタイプの仲介サービスを提供する独立したサービスプロバイダ又はブロックチェーンの第3のユーザなどの第三者にリファンドトランザクションを送信する。第三者は、交換及び/又はイベントの状況をモニタし、イベントが計画されたものとして又はそうでないものとして行われたか判断してもよく、後者の具体例はイベントのキャンセルを含み、イベントがキャンセルされたと判定されると、Aliceに2BTCを返す。
【0072】
第三者は、他の何れか適切な理由のため、(リファンドトランザクションをブロックチェーンに公開することによって)リファンドを実行するよう指示又は設定されてもよい。正当な理由、すなわち、Aliceに2BTCをリファンドするための正当な基準としてBob及び/又は第三者を充足するものが、交換の条項及び条件において規定されてもよく、それは、交換前にAlice、Bob及び第三者の間で通信されてもよく、条項及び条件はおそらくトークン化された契約の形態でブロックチェーン上に格納されるか、あるいは、インターネット接続されたリソース上に格納される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】