(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179834
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
G11C 11/16 20060101AFI20231213BHJP
G11C 13/00 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
G11C11/16 230
G11C13/00 400E
G11C13/00 400G
G11C13/00 270J
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092674
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 晃一
(57)【要約】
【課題】抵抗変化型の不揮発性メモリにおける読み出しマージンを拡大することが可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】クランプ回路46は、記憶素子Rcelおよび参照抵抗素子Rrefにそれぞれ固定電位を印加する。プリチャージ回路45は、ノードNq,Nqbを電源電位Vddにプリチャージする。センスアンプSAは、プリチャージ回路45によるプリチャージの後、セル電流Icelおよび参照電流Irefによる放電期間の後に生じた、ノードNqの電位VqとノードNqbの電位Vqbとの電位差を増幅する。ノードNsは、ノードNq,Nqbに容量Csaを介して結合される。電荷供給回路40は、ノードNsに接続され、放電期間でノードNsに電荷を供給する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗変化型の記憶素子を含むメモリセルと、
参照抵抗素子と、
前記記憶素子および前記参照抵抗素子にそれぞれ固定電位を印加するクランプ回路と、
前記記憶素子に前記固定電位を印加することで生じるセル電流が流れる第1の配線と、
前記参照抵抗素子に前記固定電位を印加することで生じる参照電流が流れる第2の配線と、
前記第1の配線および前記第2の配線を電源電位にプリチャージするプリチャージ回路と、
前記プリチャージ回路によるプリチャージの後、前記セル電流および前記参照電流による放電期間の後に生じた、前記第1の配線の電位と前記第2の配線の電位との電位差を増幅するセンスアンプと、
前記第1の配線および前記第2の配線に容量を介して結合される第3の配線と、
前記第3の配線に接続され、前記放電期間で前記第3の配線に電荷を供給する電荷供給回路と、
を備える、
半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置において、
前記電荷供給回路は、前記放電期間をかけて、前記第3の配線を、低電位側の電源電位から高電位側の電源電位に充電する、
半導体装置。
【請求項3】
請求項2記載の半導体装置において、
前記電荷供給回路は、
オンに制御された際に、前記第3の配線を充電するスイッチ素子と、
前記第3の配線を充電する際の充電速度を定める電流源と、
を備える、
半導体装置。
【請求項4】
請求項2記載の半導体装置において、
前記センスアンプは、
クロスカップル接続によって差動増幅を行う第1導電型のトランジスタ対と、
クロスカップル接続によって差動増幅を行う第2導電型のトランジスタ対と、
を備える、
半導体装置。
【請求項5】
請求項1記載の半導体装置において、
前記第3の配線は、前記第1の配線および前記第2の配線のそれぞれに隣接して配置され、前記第1の配線と並行して延伸する区間および前記第2の配線と並行して延伸する区間を含むシールド線である、
半導体装置。
【請求項6】
請求項1記載の半導体装置において、
前記電荷供給回路は、さらに、前記第1の配線および前記第2の配線に接続され、前記第1の配線の電位または前記第2の配線の電位が目標電位に到達した際に、前記第3の配線への電荷の供給動作を開始する、
半導体装置。
【請求項7】
請求項6記載の半導体装置において、
前記電荷供給回路は、前記第1の配線の電位または前記第2の配線の電位の低下を抑制するように前記第3の配線への電荷の供給量を増加させる負帰還回路を備える、
半導体装置。
【請求項8】
請求項7記載の半導体装置において、
前記電荷供給回路は、
前記第1の配線に接続され、前記第1の配線の電位の低下量に応じて増加する電流を流す第1のトランジスタと、
前記第2の配線に接続され、前記第2の配線の電位の低下量に応じて増加する電流を流す第2のトランジスタと、
オンに制御された際に、前記第1のトランジスタに流れる電流と前記第2のトランジスタに流れる電流とを加算した電流で、前記第3の配線を充電するスイッチ素子と、
を備える、
半導体装置。
【請求項9】
請求項7記載の半導体装置において、
前記センスアンプは、クロスカップル接続によって差動増幅を行う第1導電型のトランジスタ対で構成される、
半導体装置。
【請求項10】
一つの半導体チップで構成される半導体装置であって、
プロセッサと、
不揮発性メモリと、
前記プロセッサと前記不揮発性メモリとを互いに接続するバスと、
を有し、
前記不揮発性メモリは、
抵抗変化型の記憶素子を含むメモリセルと、
参照抵抗素子と、
前記記憶素子および前記参照抵抗素子にそれぞれ固定電位を印加するクランプ回路と、
前記記憶素子に前記固定電位を印加することで生じるセル電流が流れる第1の配線と、
前記参照抵抗素子に前記固定電位を印加することで生じる参照電流が流れる第2の配線と、
前記第1の配線および前記第2の配線を電源電位にプリチャージするプリチャージ回路と、
前記プリチャージ回路によるプリチャージの後、前記セル電流および前記参照電流による放電期間の後に生じた、前記第1の配線と前記第2の配線との間の電位差を増幅するセンスアンプと、
前記第1の配線および前記第2の配線に容量を介して結合される第3の配線と、
前記第3の配線に接続され、前記放電期間で前記第3の配線に電荷を供給する電荷供給回路と、
を備える、
半導体装置。
【請求項11】
請求項10記載の半導体装置において、
前記電荷供給回路は、前記放電期間をかけて、前記第3の配線を、低電位側の電源電位から高電位側の電源電位に充電する、
半導体装置。
【請求項12】
請求項11記載の半導体装置において、
前記電荷供給回路は、
オンに制御された際に、前記第3の配線を充電するスイッチ素子と、
前記第3の配線を充電する際の充電速度を定める電流源と、
を備える、
半導体装置。
【請求項13】
請求項10記載の半導体装置において、
前記第3の配線は、前記第1の配線および前記第2の配線のそれぞれに隣接して配置され、前記第1の配線と並行して延伸する区間および前記第2の配線と並行して延伸する区間を含むシールド線である、
半導体装置。
【請求項14】
請求項10記載の半導体装置において、
前記電荷供給回路は、さらに、前記第1の配線および前記第2の配線に接続され、前記第1の配線の電位または前記第2の配線の電位が目標電位に到達した際に、前記第3の配線への電荷の供給動作を開始する、
半導体装置。
【請求項15】
請求項14記載の半導体装置において、
前記電荷供給回路は、前記第1の配線の電位または前記第2の配線の電位の低下を抑制するように前記第3の配線への電荷の供給量を増加させる負帰還回路を備える、
半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、例えば、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)等の抵抗変化型の記憶素子を含む半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、非特許文献1には、STT(Spin Transfer Torque)-MRAMにおける、読み出し回路の構成例が示される。当該読み出し回路は、セル抵抗および参照抵抗に読み出し電位を印加するクランプ素子と、pMOSクロスカップル型のセンスアンプと、センスアンプの差動対ノードをプリチャージするプリチャージ素子とを備える。センスアンプは、プリチャージ後に、セル抵抗および参照抵抗を介して放電された差動対ノードの電位差を増幅する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Yu-Der Chih et al., “13.3 A 22nm 32Mb Embedded STT-MRAM with 10ns Read Speed, 1M Cycle Write Endurance, 10 Years Retention at 150°C and High Immunity to Magnetic Field Interference”, 2020 ISSCC , pp.222-224
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、MCU(Micro Controller Unit)やSoC(System on a Chip)等の半導体装置における内蔵メモリとして、MRAM、詳細にはSTT-MRAMが注目されている。STT-MRAMは、例えば、従来型のMRAMやフラッシュメモリと比較して、微細化、言い換えればスケーリング等の観点でメリットが得られる。一方、微細化が進むと、通常、トランジスタの耐圧が低下するため、低い電源電位が用いられる。しかしながら、低い電源電位を用いると、読み出しマージンを十分に確保できないおそれがあった。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態の半導体装置は、抵抗変化型の記憶素子を含むメモリセルと、参照抵抗素子と、クランプ回路と、第1、第2および第3の配線と、プリチャージ回路と、センスアンプと、電荷供給回路と、を備える。クランプ回路は、記憶素子および参照抵抗素子にそれぞれ固定電位を印加する。第1の配線は、記憶素子に固定電位を印加することで生じるセル電流が流れる。第2の配線は、参照抵抗素子に固定電位を印加することで生じる参照電流が流れる。プリチャージ回路は、第1の配線および第2の配線を電源電位にプリチャージする。センスアンプは、プリチャージ回路によるプリチャージの後、セル電流および参照電流による放電期間の後に生じた、第1の配線の電位と第2の配線の電位との電位差を増幅する。第3の配線は、第1の配線および第2の配線に容量を介して結合される。電荷供給回路は、第3の配線に接続され、放電期間で第3の配線に電荷を供給する。
【発明の効果】
【0007】
一実施の形態の半導体装置を用いることで、抵抗変化型の不揮発性メモリにおける読み出しマージンを拡大することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態1による半導体装置において、主要部の構成例を示すブロック図である。
【
図2A】
図2Aは、
図1における不揮発性メモリの主要部の構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、
図2Aに示される不揮発性メモリにおいて、読み出し動作時の状態を簡略化して表す等価回路図である。
【
図5】
図5は、
図2Aに示される不揮発性メモリにおいて、読み出し回路の主要部の構成例を示すブロック図である。
【
図6A】
図6Aは、
図5に示される読み出し回路において、P状態の記憶素子を読み出す際の動作例を示す波形図である。
【
図6B】
図6Bは、
図5に示される読み出し回路において、AP状態の記憶素子を読み出す際の動作例を示す波形図である。
【
図7】
図7は、
図5に示される読み出し回路の詳細な構成例を示す回路図である。
【
図8】
図8は、
図2Aおよび
図7において、読み出しサイクルの動作例を示すタイミングチャートである。
【
図9A】
図9Aは、
図5において、電荷供給回路の接続先となるシールド線の詳細な構成例を示す模式図である。
【
図10】実施の形態2による半導体装置において、
図2Aに示される不揮発性メモリにおける読み出し回路の主要部の構成例を示すブロック図である。
【
図11A】
図11Aは、
図10に示される読み出し回路において、P状態の記憶素子を読み出す際の動作例を示す波形図である。
【
図11B】
図11Bは、
図10に示される読み出し回路において、AP状態の記憶素子を読み出す際の動作例を示す波形図である。
【
図14】
図14は、比較例となる半導体装置において、読み出し回路の主要部の詳細な構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0010】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0011】
また、実施の形態の各機能ブロックを構成する回路素子は、特に制限されないが、公知のCMOS(相補型MOSトランジスタ)等の集積回路技術によって、単結晶シリコンのような半導体基板上に形成される。実施の形態では、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)の一例としてMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、略してMOSトランジスタを用いるが、ゲート絶縁膜として非酸化膜を除外するものではない。実施の形態では、pチャネル型のMOSFETをpMOSトランジスタMPと呼び、nチャネル型のMOSFETをnMOSトランジスタMNと呼ぶ。図面にはMOSトランジスタの基板電位の接続は特に明記していないが、MOSトランジスタが正常動作可能な範囲であれば、その接続方法は特に限定しない。
【0012】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0013】
(実施の形態1)
<半導体装置および不揮発性メモリの概略>
図1は、実施の形態1による半導体装置において、主要部の構成例を示すブロック図である。
図1に示される半導体装置10は、一つの半導体チップで構成され、例えば、MCUや、SoC等である。当該半導体装置10は、例えば、車両のECU(Electronic Control Unit)等に搭載され得る。
【0014】
図1に示される半導体装置10は、プロセッサ15、RAM16、不揮発性メモリ17、タイマ18、アナログディジタル変換器(ADC)19、ディジタルアナログ変換器(DAC)20、通信インタフェース21および各種周辺回路22と、これらを互いに接続するバス23とを備える。プロセッサ15は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等である。RAMは、DRAMやSRAM等の揮発性メモリである。
【0015】
通信インタフェース21は、例えば、CAN(Controller Area Network)インタフェース等であってよい。不揮発性メモリ17は、例えば、STT-MRAM等である。不揮発性メモリ17は、プロセッサ15で実行されるプログラムの保存用として用いられる場合や、プロセッサ15のワーク用メモリとして用いられる場合がある。なお、不揮発性メモリ17は、MRAMに限らず、抵抗変化型の記憶素子を備えるものであればよい。
【0016】
ここで、不揮発性メモリ17として、例えば、STT-MRAM等を用いることで、半導体装置10の微細化に対応し易くなる。一方、微細化が進むと、低い電源電位が用いられるため、読み出しマージンの低下、詳細には、記憶素子から得られる信号量の減少等が生じ得る。また、特に、車両向けの半導体装置10等では、高温環境下で、記憶素子における抵抗値の変化量が小さくなる場合がある。これによっても、読み出しマージンの低下が生じ得る。このため、読み出しマージンを向上させる技術が求められる。
【0017】
図2Aは、
図1における不揮発性メモリの主要部の構成例を示すブロック図である。
図2Bは、
図2Aにおけるメモリセルの構成例を示す回路図である。
図2Aに示す不揮発性メモリ17は、メモリアレイ30と、ワード線ドライバ32と、複数、ここではk個の読み書き回路33[1]~33[k]と、アドレスデコーダ31と、タイミング制御回路34とを備える。
【0018】
メモリアレイ30は、複数、ここではn本のワード線WL1~WLnを備える。また、メモリアレイ30は、1個の読み書き回路、例えば33[1]に対応して、複数、ここではm本のビット線BL1~BLmと、m本のソース線SL1~SLmと、複数、ここではn×m個のメモリセルMC11~MCnmとを備える。明細書では、複数のワード線WL1~WLnを総称してワード線WLと呼ぶ。複数のビット線BL1~BLmを総称して、ビット線BLと呼ぶ。複数のソース線SL1~SLmを総称して、ソース線SLと呼ぶ。複数のメモリセルMC11~MCnmを総称してメモリセルMCと呼ぶ。
【0019】
なお、ここでは、m本のビット線BL1~BLmに対応して、m本の書き込み用のソース線SL1~SLmが設けられた。ただし、高密度化のために、2個のメモリセルMCで1本のソース線を共有する場合もあり、この場合に設けられるソース線の本数は、m/2本となる。また、図示は省略されるが、詳細には、k個の読み書き回路33[1]~33[k]に対応して、ビット線BLは、m×k本設けられ、メモリセルMCは、n×m×k個設けられる。
【0020】
複数のワード線WL1~WLnは、ロウ方向に並んで配置され、ロウ方向と交差する、例えば直交するカラム方向に向けて延伸する。一方、複数のビット線BL1~BLmは、カラム方向に並んで配置され、ロウ方向に向けて延伸する。複数のメモリセルMCは、複数のワード線WLと、複数のビット線BLとの交点にそれぞれ配置される。例えば、メモリセルMCnmは、ワード線WLnと、ビット線BLmとの交点に配置される。
【0021】
メモリセルMCは、
図2Bに示されるように、ビット線BLとソース線SLとの間に直列に接続される、抵抗変化型の記憶素子Rcelおよび選択トランジスタSTを備える。記憶素子Rcelは、ビット線BLに接続され、例えば、MTJ(Magnetic Tunnel Junction)を構成要素として低抵抗状態か高抵抗状態かによって異なるデータを記憶する。具体的には、MTJでは、トンネルバリア膜を挟んで固定層とフリー層とが設けられる。フリー層の磁化の向きは、書き込み動作時に流す電流の方向に応じて変化する。固定層とフリー層とで磁化の向きが同じ状態は、P状態と呼ばれ、磁化の向きが反対の状態は、AP状態と呼ばれる。P状態は低抵抗状態であり、AP状態は高抵抗状態である。
【0022】
選択トランジスタSTは、例えば、nMOSトランジスタであり、ソース線SLと、記憶素子Rcelとの間に接続される。また、選択トランジスタSTは、例えばゲートである制御ノードがワード線WLに接続され、ワード線WLによってオン・オフが制御される。
【0023】
記憶素子Rcelを高抵抗状態であるAP状態から、低抵抗状態であるP状態に変化させる場合、選択トランジスタSTがオンの状態で、ソース線SLを基準に正極の電位をビット線BLに印加し、ビット線BLから接地電位Vssに記憶素子Rcelを介して書き込み電流を流す。一方、記憶素子RcelをP状態からAP状態に変化させる場合、選択トランジスタSTがオンの状態で、ソース線SLを基準に負極の電位をビット線BLに印加し、ソース線SLからビット線BLに記憶素子Rcelを介して書き込み電流を流す。
【0024】
また、読み出し動作時には、詳細は後述するが、ソース線SLに接地電位Vssを印加し、記憶素子Rcelに書き込み動作時よりも低い電位を印加した状態で、記憶素子Rcelに流れるセル電流の大きさが判別される。この際には、例えば、AP状態の抵抗値とP状態の抵抗値との中間の抵抗値を有する参照抵抗素子が予め設けられ、当該参照抵抗素子に流れる参照電流と、記憶素子Rcelに流れるセル電流とが比較される。
【0025】
図2Aに戻り、ワード線ドライバ32は、アドレスデコーダ31からの選択信号Swlに基づいて、複数のワード線WL1~WLnの中のいずれか1本を選択し、選択されたワード線WLに、選択トランジスタSTをオンに制御するための電位を印加する。複数の読み書き回路33[1]~33[k]のそれぞれ、代表として33[1]は、カラムセレクタCSELと、読み出し回路および書き込み回路を備える。読み出し回路は、センスアンプSAおよび出力バッファOBFを含む。書き込み回路は、入力バッファIBFおよび書き込みドライバWTDを含む。
【0026】
読み出し動作時において、カラムセレクタCSELは、アドレスデコーダ31からの選択信号Sblに基づいて、m本のビット線BLの中のいずれか1本を選択する。カラムセレクタCSELは、選択された1本のビット線BLを、グローバルビット線GBLに接続する。センスアンプSAは、グローバルビット線GBLに流れる電流、ひいては、選択されたメモリセルMCに流れるセル電流と、前述した参照抵抗素子に流れる参照電流との差分を増幅する。出力バッファOBFは、当該センスアンプSAの出力信号をラッチすることで、ラッチ結果を読み出しデータDO1として外部へ出力する。
【0027】
一方、書き込み動作時において、カラムセレクタCSELは、アドレスデコーダ31からの選択信号Sbl,Sslに基づいて、m本のビット線BLとm本のソース線SLの中から、それぞれ、1本ずつを選択する。カラムセレクタCSELは、選択された1本のビット線BLとソース線SLを、それぞれ、グローバルビット線GBLとグローバルソース線GSLに接続する。
【0028】
入力バッファIBFは、外部からの書き込みデータDI1をラッチする。書き込みドライバWTDは、入力バッファIBFにラッチされたデータの論理レベルに基づいて、選択されたメモリセルMCに、グローバルビット線GBLとグローバルソース線GSLとを介してP状態またはAP状態を書き込む。すなわち、書き込みドライバWTDは、P状態またはAP状態に応じた書き込み電流または書き込み電位を生成し、グローバルビット線GBLとグローバルソース線GSLに印加する。
【0029】
読み書き回路33[2]~33[k]も、読み書き回路33[1]と同様の構成を備え、同様の動作を行う。その結果、読み書き回路33[2]~33[k]は、それぞれ、同一のワード線WL上の選択されたメモリセルMCに保存されるデータを、読み出しデータDO2~DOkとして外部へ出力する。また、読み書き回路33[2]~33[k]は、外部からの書き込みデータDI2~DIkを、選択されたメモリセルMCに書き込む。
【0030】
タイミング制御回路34は、不揮発性メモリ17全体の各種タイミングを制御する。その一部として、タイミング制御回路34は、センスアンプSA、書き込みドライバWTDにおける活性化タイミングや、出力バッファOBF、入力バッファIBFにおけるラッチタイミング等と制御する。なお、明細書では、読み書き回路33[1]~33[k]を総称して、読み書き回路33と呼ぶ。読み出しデータDO1~DOkを総称して、読み出しデータDOと呼ぶ。書き込みデータDI1~DIkを総称して、書き込みデータDIと呼ぶ。
【0031】
<読み出し回路の基本方式>
[比較例の方式およびその問題点]
図14は、比較例となる半導体装置において、読み出し回路の主要部の詳細な構成例を示す回路図である。
図14には、
図2Aにおけるメモリアレイ30の一部と、読み書き回路33の一部とが示される。図示は省略されるが、メモリアレイ30の一部と読み書き回路33の一部との間には、カラムセレクタCSELが接続される。また、メモリセルMCの読み出し動作時において、ソース線SLには、接地電位Vssが印加される。
【0032】
図14において、メモリアレイ30は、正規のメモリセルMCに加えて、参照メモリセルMCrを備える。
図2Aでは、参照メモリセルMCrの図示は省略されている。正規のメモリセルMCは、
図2Bに示したように、抵抗変化型の記憶素子Rcelと、ワード線WLによって制御される選択トランジスタSTとを備える。
【0033】
一方、参照メモリセルMCrは、参照抵抗素子Rrefと、参照用の選択トランジスタSTrとを備える。参照抵抗素子Rrefは、P状態の抵抗値とAP状態の抵抗値との中間の抵抗値を有する。参照用の選択トランジスタSTrは、参照ワード線WLrによって制御される。読み出し動作時には、ワード線WLに加えて、参照ワード線WLrも活性化される。その結果、ビット線BLには、記憶素子Rcelの抵抗値に応じたセル電流が流れ、参照ビット線BLrには、参照抵抗素子Rrefの抵抗値に応じた参照電流が流れる。なお、
図14では、参照メモリセルMCrがメモリアレイ30内に配置される場合の例を図示するが、メモリ構成によっては、読み書き回路33内に配置される場合もあり得る。
【0034】
読み書き回路33cは、センスアンプSApと、プリチャージ回路45と、クランプ回路46と、出力バッファOBFと、を備える。クランプ回路46は、ソースフォロワのクランプ素子として機能する2個のnMOSトランジスタMNc1,MNc2を備える。クランプ回路46は、読み出し動作時に、記憶素子Rcelおよび参照抵抗素子Rrefに、ビット線BLおよび参照ビット線BLrを介してそれぞれ固定電位を印加する。この際の固定電位は、nMOSトランジスタMNc1,MNc2のゲートに印加されるクランプ電位Vclpによって定められる。
【0035】
nMOSトランジスタMNc1のドレインは、ノード(第1の配線)Nqに接続され、nMOSトランジスタMNc2のドレインは、ノード(第2の配線)Nqbに接続される。ノードNqには、記憶素子Rcelにクランプ回路46による固定電位を印加することで生じるセル電流が流れる。ノードNqbには、参照抵抗素子Rrefにクランプ回路46による固定電位を印加することで生じる参照電流が流れる。
【0036】
プリチャージ回路45は、ソースに電源電位Vddが印加される2個のpMOSトランジスタMPp1,MPp2を備える。プリチャージ回路45は、ノードNq,Nqbを電源電位Vddにプリチャージする。具体的には、pMOSトランジスタMPp1,MPp2は、プリチャージ信号PCのロウレベル期間でオンとなり、ドレインに接続されたノードNqb,Nqをそれぞれプリチャージする。
【0037】
センスアンプSApは、2個のpMOSトランジスタMPa1,MPa2からなるpチャネル型のトランジスタ対と、pMOSトランジスタMPa3とを備える。センスアンプSApは、プリチャージ回路45によるプリチャージの後、セル電流および参照電流による放電期間の後に生じた、ノードNqの電位VqとノードNqbの電位Vqbとの電位差を増幅する。
【0038】
詳細には、pMOSトランジスタMPa1,MPa2のゲートは、それぞれ、ノードNqb,Nqに接続される。pMOSトランジスタMPa1,MPa2は、一方のゲートが他方のドレインに接続されるクロスカップル接続によって差動増幅を行う。すなわち、pMOSトランジスタMPa1,MPa2は、pMOSクロスカップル型のセンスアンプである。pMOSトランジスタMPa3は、センスアンプイネーブル信号SAEのハイレベル期間で、電源電位Vddを、pMOSトランジスタMPa1,MPa2のソースに印加する。これによって、pMOSトランジスタMPa3は、センスアンプSApを活性化する。
【0039】
出力バッファOBFは、センスアンプSApによって増幅された、電位Vqと電位Vqbとの電位差をさらに増幅すると共に、ラッチする。そして、出力バッファOBFは、ラッチしたデータを読み出しデータDOとして出力する。なお、プリチャージ信号PCおよびセンスアンプイネーブル信号SAEは、
図2Aに示したタイミング制御回路34によって生成される。
【0040】
図15Aは、
図14に示される回路の読み出し動作時の状態を簡略化して表す等価回路図である。
図15Bは、
図14および
図15Aに示される回路の動作例を示す波形図である。
図15Aには、ビット線BLを介して記憶素子Rcelと選択トランジスタSTとの合成抵抗Rcel’に読み出し電位Vrdを印加することで、ビット線BLおよびノードNqにセル電流Icelが流れる様子が示される。読み出し電位Vrdは、クランプ電位Vclpに基づく固定電位である。同様に、参照ビット線BLrを介して参照抵抗素子Rrefと選択トランジスタSTrとの合成抵抗Rref’に読み出し電位Vrdを印加することで、参照ビット線BLrおよびノードNqbに参照電流Irefが流れる様子が示される。
【0041】
ここで、より詳細には、ノードNq,Nqbのそれぞれは、接地電位Vssが印加されるノードNsに、容量Csaを介して結合される。容量Csaは、ノード(第1の配線)Nqと接地電位Vss用の配線との間、およびノード(第2の配線)Nqbと接地電位Vss用の配線との間にそれぞれ存在する寄生容量である。同様に、ビット線BLおよび参照ビット線BLrのそれぞれも、寄生容量である容量Cblを介して接地電位Vssに結合される。
【0042】
読み出し動作時には、
図15Bに示されるように、時点t1から時点t2までのプリチャージ期間Tpcにおいて、プリチャージ回路45は、ノードNq,Nqbの電位Vq,Vqbを電源電位Vddにプリチャージする。電源電位Vddは、例えば、1.0V以下の0.7V等である。また、メモリセルMC内の記憶素子Rcelは、選択された状態となり、クランプ回路46(MNc1)を介してノードNqに接続される。これに伴い、プリチャージ回路45から記憶素子Rcelまでに電流パスが形成されて、ビット線BLの電位Vblは読み出し電位Vrdにクランプされる。また、読み出し電位Vrdと記憶素子Rcelの抵抗値、詳細には合成抵抗Rcel’とに応じたセル電流Icelが流れる。
【0043】
同様に、参照メモリセルMCr内の参照抵抗素子Rrefも、選択された状態となり、クランプ回路46(MNc2)を介してノードNqbに接続される。これに伴い、プリチャージ回路45から参照抵抗素子Rrefまでに電流パスが形成されて、参照ビット線BLrの電位Vblrは読み出し電位Vrdにクランプされる。また、読み出し電位Vrdと参照抵抗素子Rrefの抵抗値、詳細には合成抵抗Rref’とに応じた参照電流Irefが流れる。読み出し電位Vrdは、例えば、0.1V等である。
【0044】
その後、時点t2から時点t3までの放電期間Tdcにおいて、プリチャージ回路45は停止状態となり、ノードNq,Nqbの電位Vq,Vqbは、セル電流Icelおよび参照電流Irefによる放電によって、共に、プリチャージレベルである電源電位Vddから低下する。この際に、電位Vqの放電傾きは、セル電流Icelの大きさによって定められ、電位Vqbの放電傾きは、参照電流Irefの大きさによって定められる。また、この傾きの違いによって、電位Vqと電位Vqbとの電位差ΔVは、時間の経過に伴い拡大する。センスアンプSApは、電位差ΔVが十分に拡大した時点、例えば時点t3で活性化され、当該時点t3における電位差ΔVを増幅する。
【0045】
しかしながら、このような方式では、読み出しマージンが不足する、具体的には、センスアンプSApが活性化された時点での電位差ΔVが不十分となるおそれがあった。すなわち、例えば時点t3での電位差ΔVは、センスアンプSApのオフセット電圧よりも大きくなっている必要がある。仮に、電位差ΔVがセンスアンプSApのオフセット電圧よりも小さい場合、センスアンプSApによって逆方向への増幅が行われたり、または、センスアンプSApでの増幅量が不足し、後段の出力バッファOBFで、誤ったデータがラッチされるおそれがある。
【0046】
ここで、電位差ΔVに関して詳細に説明する。電位差ΔVは、
図15Bに示されるように、ある時点t3で最大値ΔVmxCとなり、それ以降は、減少していく。具体的に説明すると、時点t2ののち、電位Vqの放電傾きVq/tは、
図15Aに示した容量Csaの容量値を用いてIcel/Csaで与えられる。同様に、電位Vqbの放電傾きVqb/tは、Iref/Csaで与えられる。このため、電位差ΔV=Vq-Vqbは、式(1)に示されるように、時間tの経過に伴い徐々に増加する。
ΔV=(Icel-Iref)×t/Csa …(1)
【0047】
ただし、一定時間後に、例えば、ノードNqが読み出し電位Vrd近くまで放電されると、クランプ用のnMOSトランジスタMNc1の動作領域は線形領域に近づく。このため、電位Vqの放電傾きVq/tは、主に、
図15Aに示したビット線BLの容量Cblの容量値によって定められる。すなわち、この場合の電位Vqの放電傾きVq/tは、例えば、Icel/(Csa+Cbl)であり、配線長の違いによりCbl>>Csaである。このため、電位Vqの放電傾きは、大幅に低下する。
【0048】
一方、ノードNqbは、ノードNqと比べて、読み出し電位Vrd近くまで放電されておらず、電位Vqbの放電傾きは、Iref/Csaを維持する。これらの結果、電位差ΔVは、ノードNq,Nqbの一方が読み出し電位Vrd近くまで放電された時点t3で最大値ΔVmxCとなり、それ以降は、急激に減少していく。このため、電位差ΔVが最大値ΔVmxCとなる時点t3でセンスアンプSApを活性することが望ましい。
【0049】
ただし、不揮発性メモリ17では、
図2Aに示したように、k個のセンスアンプSAを同時に活性化する必要がある。この際に、AP状態かP状態かの違いや、センスアンプSA毎の特性ばらつき等を考慮すると、k個のセンスアンプSAの全てで、センスアンプSAの活性化タイミングを最大値ΔVmxCの時点t3に合わせることは容易でない。この場合、仮にいずれかのセンスアンプSAで電位差ΔVの必要条件を満たしたとしても、別のセンスアンプSAで当該必要条件を満たせないようなことが生じ得る。
【0050】
そこで、このような活性化タイミングのズレを踏まえて、読み出しマージンを拡大するためには、電位差ΔV自体をある程度大きく拡大することが望ましい。本発明者等の検討によると、電位差ΔVの最大値ΔVmxCは、例えば、式(2)の関係で与えられることが判明した。式(2)において、ΔMRratioは、記憶素子Rcelおよび参照抵抗素子Rrefの抵抗値を用いて、(Rcel-Rref)/Rrefである。Vpcは、プリチャージ回路45によるプリチャージ電位である。Vdcは、放電下限電位であり、読み出し電位Vrdにほぼ等しい値になる。
ΔVmxC=ΔMRratio×(Vpc-Vdc) …(2)
【0051】
ΔMRratioが大きい場合、セル電流Icelと参照電流Irefとの差分が増加するため、最大値ΔVmxCをより大きくできる。また、Vpc-Vdcが大きい場合、詳細には、プリチャージ電位Vpcが高い場合、主に、
図15Bにおける放電期間Tdcを長く設定できるため、その分、最大値ΔVmxCをより大きくできる。
【0052】
ここで、ΔMRratioは、主に、記憶素子Rcelの物理的な構造等によって定められる。このため、ΔMRratioを大きくすることは容易でない。寧ろ、ΔMRratioは、多様な温度環境等を考慮すると、小さくなる傾向にある。一方、プリチャージ電位Vpcは、ある程度変更可能な設計パラメータではある。ただし、プリチャージ電位Vpcを高くするためには、通常、高い耐圧を有するトランジスタを用いる必要がある。この場合、半導体装置10の微細化や低消費電力化の観点で、デメリットとなる。そこで、以下に示す実施の形態の方式を用いることが有益となる。
【0053】
[実施の形態の方式]
図3は、
図2Aに示される不揮発性メモリにおいて、読み出し動作時の状態を簡略化して表す等価回路図である。
図4Aおよび
図4Bは、
図3に示される回路の動作例を示す波形図である。
図3には、
図15Aに示した回路と同様の等価回路が示される。ただし、
図3では、
図15Aの場合と異なり、電荷供給回路40が追加されている。
【0054】
電荷供給回路40は、容量Csaの一端であるノードNsに接続され、
図15Bに示したような放電期間TdcでノードNsに電荷を供給する。言い換えれば、電荷供給回路40は、ノードNsを充電し、ノードNsの電位Vcpを高めることで、容量Csaを介して、ノードNq,Nqbの電位Vq,Vqbを昇圧する。なお、ノードNsは、詳細には、例えば、シールド線(第3の配線)SHLに該当する。
【0055】
図4Aには、
図15Bの場合と同様に、時点t1から時点t2までのプリチャージ期間Tpcでの動作波形と、時点t2から時点t3までの放電期間Tdcでの動作波形とが示される。ただし、
図4Aでは、
図15Bの場合と異なり、電荷供給回路40は、時点t2で、ノードNsの電位Vcpを接地電位Vssから電源電位Vddに高めている。これに応じて、ノードNq,Nqbの電位Vd,Vqbも、時点t2付近で、プリチャージ電位である電源電位Vddから、2×Vddの電位に昇圧される。
【0056】
その結果、
図4Aに示されるように、放電期間Tdcをある程度延ばすことができ、電位Vqと電位Vqbとの電位差ΔVの最大値ΔVmx1を、
図15Bに示した最大値ΔVmxCと比較して拡大することが可能になる。具体的には、最大値ΔVmx1を最大値ΔVmxCの2~3倍程度に拡大することができる。センスアンプSAは、理想的には、当該最大値ΔVmx1の時点t3で活性化される。ただし、実用上の活性化タイミングは、複数のセンスアンプSAの特性ばらつき等を考慮して、時点t3よりも若干早い時点であってもよい。
【0057】
しかしながら、
図4Aの動作例では、ノードNq,Nqbに2×Vddの電位が印加されるため、高い耐圧を有するトランジスタを用いる必要がある。そこで、
図4Bに示されるような動作例を用いることが有益となる。
図4Bでは、
図4Aの場合と異なり、電荷供給回路40は、時点t2から時点t3までの放電期間Tdcをかけて、ノードNsを、低電位側の接地電源電位Vssから高電位側の電源電位Vddに充電する。すなわち、放電期間Tdcと同じ長さの充電期間Tcpが設けられる。
【0058】
これにより、
図4Bに示されるように、時点t3での電位差ΔVとして、
図4Aの場合と同等の最大値ΔVmx1が得られる。さらに、電荷供給回路40は、充電期間Tcp、言い換えれば放電期間Tdcをかけて徐々にノードNsの充電動作、ひいては電位Vq,Vqbの昇圧動作を行う。このため、ノードNq,Nqbの電位Vq,Vqbは、例えば、電源電位Vddを超えないように制御される。その結果、低い耐圧を有するトランジスタを用いつつ、電位差ΔVを拡大、すなわち読み出しマージンを拡大することが可能になる。なお、電位Vq,Vqbの上限は、電源電位Vddに限らず、トランジスタの耐圧に応じて適宜定められればよい。
【0059】
<読み出し回路の詳細>
図5は、
図2Aに示される不揮発性メモリにおいて、読み出し回路の主要部の構成例を示すブロック図である。
図5に示される読み出し回路は、電荷供給回路40と、プリチャージ回路45と、クランプ回路46と、メモリセルMCと、参照メモリセルMCrと、センスアンプSAと、出力バッファOBFとを備える。メモリセルMCは、ワード線WLおよびビット線BLに接続され、抵抗変化型の記憶素子Rcelを含む。参照メモリセルMCrは、参照ワード線WLrおよび参照ビット線BLrに接続され、参照抵抗素子Rrefを含む。
【0060】
クランプ回路46は、ビット線BLおよび参照ビット線BLrを介して記憶素子Rcelおよび参照抵抗素子Rrefに、固定電位である読み出し電位をそれぞれ印加する。図示は省略されるが、クランプ回路46と、メモリセルMCとの間には、カラムセレクタCSELが接続される。また、参照メモリセルMCrは、メモリアレイ30内、もしくは、読み出し回路内のいずれかに配置される。ノード(第1の配線)Nqには、記憶素子Rcelに読み出し電位を印加することで生じるセル電流Icelが流れる。ノード(第2の配線)Nqbには、参照記憶素子Rrefに読み出し電位を印加することで生じる参照電流Irefが流れる。
【0061】
プリチャージ回路45は、ノードNqおよびノードNqbを電源電位Vddにプリチャージする。センスアンプSAは、プリチャージ回路45によるプリチャージの後、セル電流Icelおよび参照電流Irefによる放電期間の後に生じた、ノードNqの電位VqとノードNqbの電位Vqbとの電位差を増幅する。出力バッファOBFは、当該センスアンプSAによって増幅された電位差を、さらに、電源電位Vddまで増幅し、増幅結果をラッチすることで、読み出しデータDOを出力する。
【0062】
ノードNsは、例えば、寄生容量である容量Csaを介してノードNqおよびノードNqbにそれぞれ結合される。ノードNsは、例えば、シールド線(第3の配線)SHLである。電荷供給回路40は、ノードNsに接続され、放電期間でノードNsに電荷を供給する。言い換えれば、電荷供給回路40は、ノードNsを充電することで、ノードNqおよびノードNqbの電位Vq,Vqbを昇圧する。
【0063】
図6Aは、
図5に示される読み出し回路において、P状態の記憶素子を読み出す際の動作例を示す波形図である。
図6Bは、
図5に示される読み出し回路において、AP状態の記憶素子を読み出す際の動作例を示す波形図である。
図6Aおよび
図6Bには、
図4Bの場合と同様の動作例が示される。
【0064】
時点t1から時点t2までのプリチャージ期間Tpcにおいて、プリチャージ回路45は、ノードNq,Nqbを電源電位Vddにプリチャージする。また、メモリセルMC内の記憶素子Rcelや参照メモリセルMCr内の参照抵抗素子Rrefは選択状態となり、クランプ回路46は、ビット線BLの電位Vblおよび参照ビット線BLrの電位Vblrを共に読み出し電位Vrdにクランプする。これに伴い、ノードNqおよびノードNqbには、セル電流Icelおよび参照電流Irefがそれぞれ流れる。
【0065】
続いて、時点t2において、プリチャージ回路45は停止され、時点t2から時点t3までの放電期間Tdcにおいて、ノードNqの電位VqおよびノードNqbの電位Vqbは、それぞれ、セル電流Icelおよび参照電流Irefに伴う放電によって電源電位Vddから徐々に低下する。この際に、P状態、すなわち低抵抗状態の記憶素子Rcelを読み出す場合には、Icel>Irefとなり、AP状態、すなわち高抵抗状態の記憶素子Rcelを読み出す場合には、Icel<Irefとなる。
【0066】
その結果、P状態に対応する
図6Aの場合には、電位Vqbの放電傾きよりも電位Vq(P)の放電傾きの方が大きくなり、AP状態に対応する
図6Bの場合には、電位Vqbの放電傾きよりも電位Vq(AP)の放電傾きの方が小さくなる。そして、この放電傾きの違いに伴い、電位Vqと電位Vqbとの電位差ΔVは、時間の経過に伴い増加する。
【0067】
一方、電荷供給回路40は、当該放電期間Tdcをかけて、ノードNsの電位Vcpを接地電位Vssから電源電位Vddに推移させる。これにより、電荷供給回路40は、放電期間Tdcにおいて、電位Vqの放電傾きと電位Vqbの放電傾きとに同じ量のオフセットを加え、両方の放電傾きを同じ量だけ鈍化させる。
【0068】
その結果、電位差ΔVの上昇傾きを、
図15Bの場合と同等に保ちつつ、電位Vq,Vqbの一方が、読み出し電位Vrd近くに到達するまでの時間、すなわち放電期間Tdcを
図15Bの場合よりも延ばすことができる。これにより、
図6Aおよび
図6Bに示されるように、電位差ΔVの最大値ΔVmx1(P),ΔVmx1(AP)を高めることができる。なお、センスアンプSAは、例えば、ノードNsの電位Vcpが電源電位Vddに達した時点t3で活性化される。
【0069】
図7は、
図5に示される読み出し回路の詳細な構成例を示す回路図である。
図7では、
図14の場合と同様に、プリチャージ回路45は、2個のpMOSトランジスタMPp1,MPp2を備え、クランプ回路46は、2個のnMOSトランジスタMNc1,MNc2を備える。また、センスアンプSAcも、
図14の場合と同様に、1個のpMOSトランジスタMPa3と、2個のpMOSトランジスタMPa1,MPa2とを備える。当該2個のpMOSトランジスタMPa1,MPa2からなるpチャネル型のトランジスタ対は、クロスカップル接続によって差動増幅を行う。
【0070】
ただし、センスアンプSAcは、
図14の場合と異なり、さらに、1個のnMOSトランジスタMNa3と、2個のnMOSトランジスタMNa1,MNa2とを備える。ノードNqbは、nMOSトランジスタMNa1のゲートと、nMOSトランジスタMNa2のドレインとに接続される。ノードNqは、nMOSトランジスタMNa2のゲートと、nMOSトランジスタMNa1のドレインとに接続される。このように、当該2個のnMOSトランジスタMNa1,MNa2からなるnチャネル型のトランジスタ対も、クロスカップル接続によって差動増幅を行う。すなわち、センスアンプSAcは、CMOSクロスカップル型で構成される。
【0071】
nMOSトランジスタMNa3は、センスアンプイネーブル信号SAEのハイレベル期間で、接地電位VssをnMOSトランジスタMNa1,MNa2のソースに印加する。また、これと並行して、センスアンプイネーブル信号SAEのハイレベル期間では、pMOSトランジスタMPa3は、pMOSトランジスタMPa1,MPa2のソースに電源電位Vddを印加する。これにより、センスアンプSAcは活性化される。
【0072】
電荷供給回路40は、この例では、電源電位Vddに接続される電流源CSと、インバータ回路IVとを備える。インバータ回路IVは、プリチャージ信号PCのハイレベル期間、すなわち、プリチャージ回路45の非活性期間では、例えばpMOSトランジスタである高電位側のスイッチ素子を介して、ノードNsを電流源CSからの電流によって充電する。すなわち、電流源CSは、ノードNsを充電する際の充電速度、
図6A等における電位Vcpの上昇傾きを定める。一方、インバータ回路IVは、プリチャージ信号PCのロウレベル期間、すなわち、プリチャージ回路45の活性期間では、例えばnMOSトランジスタである低電位側のスイッチ素子を介してノードNsを接地電位Vssに放電する。
【0073】
ここで、
図6Aおよび
図6Bに示されるように、センスアンプSAが活性化される時点t3では、電位Vq(P)は電位Vqbよりも低く、電位Vq(AP)は電位Vqbよりも高くなっている。すなわち、P状態かAP状態かによって、センスアンプSAの入力レンジは異なり得る。そこで、
図7の構成例では、CMOSクロスカップル型のセンスアンプSAcが用いられる。また、電流源CSの電流値は、(Icel+Iref)×0.9程度であることが望ましい。ただし、セル電流Icelの電流値は、P状態かAP状態かによって異なる。このため、電流源CSの電流値は、P状態とAP状態に共通に対応するため、例えば、Iref×1.6程度に設定されるとよい。
【0074】
図8は、
図2Aおよび
図7において、読み出しサイクルの動作例を示すタイミングチャートである。ここでは、
図6A等との重複部分に関しては、詳細な説明を省略する。
図8において、時点t0よりも前の期間では、プリチャージ信号PCおよびセンスアンプイネーブル信号SAEは、共にロウレベルに制御される。これに伴い、プリチャージ回路45は活性状態であり、電位Vq,Vqbを電源電位Vddにプリチャージする。また、センスアンプSAcは非活性状態である。
【0075】
時点t0において、ワード線WLおよび参照ワード線WLrは、活性化される。その後、時点t2において、プリチャージ信号PCは、ロウレベルからハイレベルに制御される。これにより、プリチャージ回路45は非活性状態となる。また、時点t0と時点t2との間の時点で、ビット線BLおよび参照ビット線BLrは、カラムセレクタCSELを介してノードNqおよびノードNqbにそれぞれ接続される。これにより、電位Vq,Vqbは、プリチャージ回路45が非活性化された時点t2を起点として、電源電位Vddから徐々に低下する。
【0076】
その後、時点t3において、センスアンプイネーブル信号SAEは、ロウレベルからハイレベルに制御される。これに応じて、センスアンプSAcは、増幅動作を開始し、電位Vq,Vqbの一方を電源電位Vddに向けて増幅し、他方を接地電位Vssに向けて増幅する。その後、時点t4において、ワード線WLおよび参照ワード線WLrは、非活性化される。また、プリチャージ信号PCおよびセンスアンプイネーブル信号SAEは、ハイレベルからロウレベルに制御される。これに応じて、プリチャージ回路45は活性状態となり、センスアンプSAcは非活性状態となる。また、電荷供給回路40は、電位Vcpを電源電位Vddから接地電位Vssに推移させる。
【0077】
なお、
図8の例では、時点t3から時点t4までは、センスアンプSAcの活性期間Tsaeとなる。また、ある読み出しサイクルにおける時点t4から、次の読み出しサイクルにおける時点t2までは、プリチャージ期間Tpcとなる。
【0078】
<シールド線の詳細>
図9Aは、
図5において、電荷供給回路の接続先となるシールド線の詳細な構成例を示す模式図である。
図9Bは、
図9Aにおけるシールド線のデバイス構造の一例を示す断面図である。
図9Aに示されるように、センスアンプSAは、ノード(第1の配線)Nqの電位と、ノード(第2の配線)Nqbの電位との電位差を増幅する。この際には、センスアンプSAへの入力ノイズを低減することが求められる。
【0079】
そこで、
図9Aに示されるように、ノードNqおよびノードNqbのそれぞれに対して、ノードNsに該当するシールド線SHLが設けられる場合がある。シールド線SHLは、ノードNqおよびノードNqbのそれぞれに隣接して配置され、ノード(第1の配線)Nqと並行して延伸する区間およびノード(第2の配線)Nqbと並行して延伸する区間を含む。これにより、ノードNqとシールド線SHLとの間、および、ノードNqbとシールド線SHLとの間には、それぞれ
図5に示されるような容量Csa、詳細には寄生容量が形成される。
【0080】
ここで、シールド線SHLは、
図15Aに示したように、通常、接地電位Vssに接続される。一方、
図9Aの構成例では、このシールド線SHLの接続先は、接地電位Vssではなく、電荷供給回路40となっている。このように、一般的に設けられ得るシールド線SHLを利用することで、実施の形態の方式の実現に伴う設計の容易化や、面積オーバヘッドの低減等を図れる。また、シールド線SHLには、電位Vcpが印加されるため、センスアンプSAへの入力ノイズの低減効果も十分に得られる。
【0081】
また、
図9Bの例では、半導体基板SUB上に、絶縁層ISLを介して、第n層目のメタル配線層Mnおよび絶縁層ISLnが設けられる。メタル配線層Mnには、ノード(第1の配線)Nq、ノード(第2の配線)Nqbおよび複数本のシールド線SHLが形成される。半導体基板SUBの面方向において、シールド線SHLは、ノード(第1の配線)Nqの両側にそれぞれ配置され、また、ノード(第2の配線)Nqbの両側にそれぞれ配置される。
【0082】
<実施の形態1の主要な効果>
以上のように、実施の形態1の方式では、電荷供給回路40を設けることで、センスアンプSAに入力される電位差を拡大することができ、読み出しマージンを拡大することが可能になる。さらに、この際には、トランジスタに高い電源電位Vddを印加することなく、ひいてはトランジスタの耐圧を高めずに、読み出しマージンを拡大することができる。その結果、半導体装置10の微細化に寄与することが可能になる。
【0083】
(実施の形態2)
<読み出し回路の詳細>
図10は、実施の形態2による半導体装置において、
図2Aに示される不揮発性メモリにおける読み出し回路の主要部の構成例を示すブロック図である。
図10に示される読み出し回路は、
図5に示した構成例と比較して、電荷供給回路40aの構成が異なっている。電荷供給回路40aは、
図5の場合と異なり、ノード(第1の配線)Nqおよびノード(第2の配線)Nqbに接続される。
【0084】
概略的には、電荷供給回路40aは、ノードNqの電位VqまたはノードNqbの電位Vqbが目標電位に到達した際に、シールド線SHLであるノードNsへの電荷の供給動作を開始する。また、電荷供給回路40aは、電位Vqまたは電位Vqbの低下を抑制するようにノードNsへの電荷の供給量を増加させる負帰還回路を備える。
【0085】
図11Aは、
図10に示される読み出し回路において、P状態の記憶素子を読み出す際の動作例を示す波形図である。
図11Bは、
図10に示される読み出し回路において、AP状態の記憶素子を読み出す際の動作例を示す波形図である。
図11Aおよび
図11Bには、以下の点を除いて
図6Aおよび
図6Bの場合と同様の動作例が示される。
【0086】
まず、電荷供給回路40aは、
図11Aの場合には電位Vq(P)が、
図11Bの場合には電位Vqbが目標電位VTに到達した時点tsでノードNsの充電を開始し、ノードNsの電位Vcpを接地電位Vssから上昇させている。その後、電荷供給回路40aは、前述した負帰還回路の動作によって、
図11Aの場合には電位Vq(P),Vqbの低下、
図11Bの場合には電位Vqb,Vq(AP)の低下を抑制するように、ノードNsの充電量を増加させている。
【0087】
これにより、
図11Aの場合には、電位Vq(P)がほぼ目標電位VTに維持された状態で、電位Vq(P)と電位Vqbとの電位差ΔVが時間の経過に伴い拡大している。同様に、
図11Bの場合には、電位Vqbがほぼ目標電位VTに維持された状態で、電位Vq(AP)と電位Vqbとの電位差ΔVが時間の経過に伴い拡大している。そして、時点t3の時点で、ノードNsの電位Vcpは、ほぼ電源電位Vddに到達する。センスアンプSAは、例えば、当該時点t3で活性化される。
【0088】
ここで、前述した
図6Aおよび
図6Bの場合には、P状態かAP状態かによって、センスアンプSAの入力レンジは異なっていた。このため、
図7に示したように、CMOSクロスカップル型のセンスアンプSAが必要であった。一方、
図11Aおよび
図11Bの場合には、P状態かAP状態かに関わらず、センスアンプSAの入力レンジはほぼ同一となっている。このため、センスアンプSAは、例えば、pMOSクロスカップル型の構成であってよい。その結果、回路面積を低減すること等が可能になる。
【0089】
図12は、
図10に示される読み出し回路の詳細な構成例を示す回路図である。
図12に示される構成例は、
図7に示される構成例と比較して次の2点が異なっている。1点目の相違点として、センスアンプSApは、
図7に示したCMOSクロスカップル型ではなく、pMOSクロスカップル型で構成される。2点目の相違点として、電荷供給回路40aは、
図7の場合と同様のインバータ回路IVに加えて、2個のpMOSトランジスタMPs1,MPs2と、1個のpMOSトランジスタMPs3と、1個のnMOSトランジスタMNs1と、セットリセットラッチ回路SRとを備える。
【0090】
pMOSトランジスタ(第1のトランジスタ)MPs1は、ノードNqに接続され、ノードNqの電位Vqの低下量に応じて増加する電流を流す。pMOSトランジスタ(第2のトランジスタ)MPs2は、ノードNqbに接続され、ノードNqbの電位Vqbの低下量に応じて増加する電流を流す。pMOSトランジスタMPs3は、プリチャージ信号PCのハイレベル期間でオンとなり、pMOSトランジスタMPs1,MPs2のソースに電源電位Vddを印加する。
【0091】
詳細には、pMOSトランジスタMPs1は、ゲートに電位Vqが印加され、電位Vqが、Vdd-Vthpよりも低下した場合にオンとなり、電位Vqの低下量に応じて増加する電流を流す。一方、pMOSトランジスタMPs2は、ゲートに電位Vqbが印加され、電位Vqbが、Vdd-Vthpよりも低下した場合にオンとなり、電位Vqbの低下量に応じて増加する電流を流す。Vthpは、pMOSトランジスタMPs1,MPs2の閾値電圧である。この場合、Vdd-Vthpは、
図11Aおよび
図11Bにおける目標電位VTに該当する。
【0092】
インバータ回路IVは、例えばpMOSトランジスタである高電位側のスイッチ素子を介して、pMOSトランジスタMPs1に流れる電流と、pMOSトランジスタMPs2に流れる電流とを加算した電流で、ノードNsを充電する。この際の充電電流の値は、例えば、セル電流Icelと参照電流Irefとを加算した値にほぼ等しくなる。そして、電位Vq,Vqbは、ノードNsの充電量に応じて昇圧される。その結果、当該インバータ回路IV内の高電位側のスイッチ素子と、pMOSトランジスタMPs1,MPs2とは、負帰還回路を構成する。
【0093】
セットリセットラッチ回路SRは、インバータ回路IVの入力を制御する。セットリセットラッチ回路SRは、pMOSトランジスタMPs1,MPs2のドレインであるノードNdetをセット入力として動作する。セットリセットラッチ回路SRは、ノードNdetの電位Vdetがハイレベルの場合、すなわち、pMOSトランジスタMPs1,MPs2がオンとなった場合に、インバータ回路IV内の高電位側のスイッチ素子をオンに制御する。
【0094】
また、セットリセットラッチ回路SRは、プリチャージ信号PCの反転信号をリセット入力として動作する。セットリセットラッチ回路SRは、プリチャージ信号PCがロウレベルの場合、すなわちプリチャージ回路45が活性状態の場合に、インバータ回路IV内の低電位側のスイッチ素子、例えばnMOSトランジスタをオンに制御し、ノードNsを接地電位Vssに放電する。
【0095】
nMOSトランジスタMNs1は、プリチャージ信号PCのロウレベル期間では、ノードNdetの電位Vdetをロウレベルに固定する。一方、nMOSトランジスタMNs1は、プリチャージ信号PCのハイレベル期間、すなわち、プリチャージ回路45の非活性期間、言い換えれば、ノードNq,Nqbの放電期間では、オフとなる。その結果、pMOSトランジスタMPs1,MPs2に流れる電流は、インバータ回路IVに供給される。
【0096】
図13は、
図2Aおよび
図12において、読み出しサイクルの動作例を示すタイミングチャートである。
図13には、次の点を除いて
図8の場合と同様の動作例が示される。すなわち、
図13では、放電期間Tdcにおいて、電位Vqまたは電位Vqbが目標電位VTに到達した時点tsで、ノードNdetの電位Vdetは、ロウレベルからハイレベルに推移している。これに応じて、電荷供給回路40aは、電位Vqまたは電位Vqbの低下を抑制するように、ノードNsの電位Vcpを上昇させている。その結果、電位Vqまたは電位Vqbの一方は、センスアンプイネーブル信号SAEがハイレベルとなる時点t3まで、ほぼ目標電位VTに維持される。
【0097】
<実施の形態2の主要な効果>
以上、実施の形態2の方式を用いることでも、実施の形態1で述べた各種効果と同様の効果が得られる。さらに、実施の形態2の方式では、負帰還回路を含んだ電荷供給回路40aを設けることで、センスアンプSAにnMOSクロスカップル型のトランジスタ対を設ける必要がなく、pMOSクロスカップル型のトランジスタ対で構成できる。その結果、回路面積を低減すること等が可能になる。
【0098】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0099】
10 半導体装置
15 プロセッサ
17 不揮発性メモリ
23 バス
40,40a 電荷供給回路
45 プリチャージ回路
46 クランプ回路
CS 電流源
Csa 容量
IV インバータ回路
Icel セル電流
Iref 参照電流
MC メモリセル
MN nMOSトランジスタ
MP pMOSトランジスタ
Nq,Nqb,Ns ノード
Rcel 記憶素子
Rref 参照抵抗素子
SA センスアンプ
SHL シールド線
Tdc 放電期間
Tpc プリチャージ期間
VT 目標電位
Vdd 電源電位
Vrd 読み出し電位(固定電位)
Vss 接地電位