(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179836
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】水素水生成器
(51)【国際特許分類】
C02F 1/461 20230101AFI20231213BHJP
C02F 1/34 20230101ALN20231213BHJP
【FI】
C02F1/461 A
C02F1/34
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092678
(22)【出願日】2022-06-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】593011450
【氏名又は名称】株式会社コスモスエンタープライズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深沢 三夫
【テーマコード(参考)】
4D037
4D061
【Fターム(参考)】
4D037AA01
4D037BA26
4D037CA04
4D037CA13
4D061DA02
4D061DB08
4D061EA01
4D061EB09
4D061EB14
4D061EB16
4D061EB20
4D061EB28
4D061EB30
4D061EB33
4D061EB35
4D061EB40
4D061ED20
4D061FA12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電極部材を水槽、タンク等の水中に投入して一部を浮かせて使用し、電気分解により水素水を生成する水素水生成器に関し、機器の維持、管理が容易であり併せて電極のメンテナンスが容易に行なえ、またナノバブル水素水の生成にも寄与する水素水生成器を提供することを目的とする。
【解決手段】水中に投入される電極部材2と、空中に配置されリード線5により電極部材2に電力を供給する電源部材と、を有し、電極部材2は、水の電気分解を行う電極部8と、この電極部8の上部を保持する電極保持部材9と、電極部8を水中に保持するとともに、電極保持部材9を水面の上部に浮かせる浮き具10と、を具備し、水中に投入した電極部材2の一部を、浮き具10の浮力によって水面上に浮かせ、この状態で電源部材から水中に没入する電極部8に給電し、電解処理により水中に水素水を生成する構成である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に投入される電極部材と、空中に配置されリード線により前記電極部材に電力を供給する電源部材と、を有し、
前記電極部材は、水の電気分解を行う電極部と、この電極部の上部を保持する電極保持部材と、前記電極部を水中に保持するとともに、前記電極保持部材を水面の上部に浮かせる浮き具と、を具備し、
前記水中に投入した前記電極部材の一部を、前記浮き具の浮力によって水面上に浮かせ、この状態で前記電源部材から水中に没入する前記電極部に給電し、電解処理により前記水中に水素水を生成することを特徴とする水素水生成器。
【請求項2】
前記電極部として、断面L字状の4枚の電極板からなる第一の電極、及び棒状の第二の電極を設け、前記電極部の中央部位の周囲に前記電極板をそれぞれ配置し、これら電極板の角部が向き合う前記中央部位に前記第二の電極を配置したことを特徴とする請求項1に記載の水素水生成器。
【請求項3】
前記第二の電極として、中心電極材とこれを被うパイプ電極材とから構成し、当該パイプ電極材を前記中心電極材に対して着脱自在に形成したことを特徴とする請求項2に記載の水素水生成器。
【請求項4】
前記電極部材の浮き具として、二又は三以上の複数部分からなる浮き具片を設け、これら浮き具片を前記電極保持部材の周囲に配置したことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の水素水生成器。
【請求項5】
前記浮き具の浮き具片は、それぞれ浮き材を浮きケースに収納した形状であり、これら浮き具片を前記電極保持部材の周囲に配置したことを特徴とする請求項4に記載の水素水生成器。
【請求項6】
前記電極保持部材は、前記電極部の上部を保持する保持本体部、及び当該保持本体部の上部を閉塞する保持カバー部を有することを特徴とする請求項4に記載の水素水生成器。
【請求項7】
前記第一の電極の4枚の電極板をそれぞれ網体で形成し、この第一の電極の周囲に網体からなる筒状の第三の電極を配置し、
前記第一の電極の4枚の電極板を、それぞれ一対の交流電極と2つの接地電極として構成し、かつ前記第二の電極及び前記第三の電極をそれぞれ接地電極としたことを特徴とする請求項2に記載の水素水生成器。
【請求項8】
前記第一の電極の電極板に係る交流電極に高周波交流を通電させるに際し、前記高周波交流として周波数5~100kHzを中心に変動幅±3~5kHzのFM変調を加えたことを特徴とする請求項7に記載の水素水生成器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極部材を水槽、タンク等の水中に投入して一部を浮かせて使用し、電気分解により水素水を生成し、これを農業用等に用いる水素水生成器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水素の農業への利用法として、水素水の活用が大学、試験農家等で試験、研究されている。例えば、水素水の散布等、水素を活用したブランド農産物の育成を行い、収穫量が5~15%増加するなど、水素を活用した農業が展開されている。また、水素ガスを利用した生産者の意見として、植物の根の張りが良く根腐れしにくい、害虫による被害が減少、堆肥つくりのときの匂いが少ない、或いは病気に強い作物となるなど、さまざまな効果があげられている。
【0003】
一方、現在水素水は飲料用等では市販されているが、まだ高価であるため農業用等に用いるのは経済的にも問題がある。このため、農業用等として、比較的手軽に水素水を生成でき、また、併せて電極の状態が良好に維持できるよう、その保守(メンテナンス)の容易な水素水生成器の開発が農業等に貢献できるものと期待されている。
【0004】
本件発明と同様に、浴槽、水槽等の水中に入れて使用する水素水発生装置は、例えば特許文献1等に開示されている。これは、
図11に示すように、基部111から胴部112を立設し、胴部112の上端開口部に連通して略球状の頭部113を設け、内部を左右に二分して、左室115に通水開口部117を形成し、右室116を密閉して装置本体110を形成するもので、左室115に収納された電極コア122と、右室116に収納されたバッテリー123と、右室116に収納された制御盤124等を有し、水中において、頭部113の上部が水面から露出する浮力を与えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3143019号公報
【特許文献2】特開2013-46936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、特許文献1の水素水発生装置は、水中に入れて使用する際、制御盤及びバッテリー等も電極と共に水中に投入する形態である。このため、防水等の問題もあり、またバッテリーを使用していることから長時間の使用には不向きである。また、水素水発生装置を水中に投入して使用する場合、装置の全ての要素を一体化した形態であるため、装置全体の形状、重量等も増大し、取り扱いも容易ではないという問題がある。
また、農業用等には比較的大量の水素水を使用するため、これに対応可能な装置が求められている。
なお、本件発明に係る水素水生成器は、微小(ナノ)バブルの水素水を得る目的から、電気分解用の電源回路は特許文献2の回路をベースにしている。
【0007】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、器機の維持、管理が容易であり併せて電極のメンテナンスが容易に行なえ、またナノバブル水素水の生成にも寄与する水素水生成器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の技術的課題を解決するため、本発明に係る水素水生成器は
図1等に示すように、水中に投入される電極部材2と、空中に配置されリード線5により前記電極部材2に電力を供給する電源部材4と、を有し、前記電極部材2は、水の電気分解を行う電極部8と、この電極部8の上部を保持する電極保持部材9と、前記電極部8を水中に保持するとともに、前記電極保持部材9を水面の上部に浮かせる浮き具10と、を具備し、前記水中に投入した前記電極部材2の一部を、前記浮き具10の浮力によって水面上に浮かせ、この状態で前記電源部材4から水中に没入する前記電極部8に給電し、電解処理により前記水中に水素水を生成する構成である。
【0009】
本発明に係る水素水生成器は、前記電極部8として、断面L字状の4枚の電極板6からなる第一の電極14、及び棒状の第二の電極16を設け、前記電極部8の中央部位の周囲に前記電極板6をそれぞれ配置し、これら電極板6の角部が向き合う前記中央部位に前記第二の電極16を配置した構成である。
【0010】
本発明に係る水素水生成器は、前記第二の電極16として、中心電極材30とこれを被うパイプ電極材32とから構成し、当該パイプ電極材32を前記中心電極材30に対して着脱自在に形成した構成である。
【0011】
本発明に係る水素水生成器として、前記電極部材2の浮き具10として、二又は三以上の複数部分からなる浮き具片10a,10bを設け、これら浮き具片10a,10bを前記電極保持部材9の周囲に配置した構成である。
【0012】
本発明に係る水素水生成器として、前記電極部材2の浮き具片10a,10bは、それぞれ浮き材66を浮きケース68に収納した形状であり、これら浮き具片10a,10bを前記電極保持部材9の周囲に配置した構成である。
【0013】
本発明に係る水素水生成器として、前記電極保持部材9は、前記電極部8の上部を保持する保持本体部50、及び当該保持本体部50の上部を閉塞する保持カバー部52を有する構成である。
【0014】
本発明に係る水素水生成器は、前記第一の電極14の4枚の電極板6をそれぞれ網体で形成し、この第一の電極14の周囲に網体からなる筒状の第三の電極18を配置し、前記第一の電極14の4枚の電極板6を、それぞれ一対の交流電極と2つの接地電極として構成し、かつ前記第二の電極16及び前記第三の電極18をそれぞれ接地電極とした構成である。
【0015】
本発明に係る水素水生成器は、前記第一の電極14の電極板6に係る交流電極に高周波交流を通電させるに際し、前記高周波交流として周波数5~100kHzを中心に変動幅±3~5kHzのFM変調を加えた構成である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る水素水生成器によれば、水中に投入される電極部材と、空中に配置されリード線により電極部材に電力を供給する電源部材と、を有し、水中に投入した電極部材の一部を、浮き具の浮力によって水面上に浮かせ、この状態で電源部材から水中に没入する電極部に給電し、電解処理により水中に水素水を生成する構成を採用したから、水槽等の水中に投入して使用するため特定の容器が不用であり、また電極部材と電源部材とが分離していることから、維持、管理が容易であり、且つ水量の調整等が自在であるため拡張性にもすぐれ、併せて電極のメンテナンスも容易で利便性にも富むという効果を奏する。
【0017】
本発明に係る水素水生成器によれば、電極部として、第一の電極の電極板が周囲に4枚配置される中央部に第二の電極を配置した構成により、電極部が全体的に円筒状に形成されて電極部材がバランス良く水中に浮遊し、さらに、第一の電極の中心部に棒状の第二の電極を配置したことから、この中心部に電極部の重心が位置し、電極部材の浮遊時においては安定性が確保されるという効果がある。
【0018】
本発明に係る水素水生成器によれば、第二の電極として、パイプ電極材を中心電極材に対して着脱自在に形成したから、メンテナンスの必要なパイプ電極材等の着脱が容易であり、スケール等の不純物の汚れの除去等の掃除も簡単に行えるため、保守に優れるという効果がある。
【0019】
本発明に係る水素水生成器によれば、電極部材の浮き具として、二又は三以上の複数部分からなる浮き具片を設け、これら浮き具片を電極保持部材の周囲に配置した構成としたから、電極保持部材への浮き具の取り付けが容易に行なえ、また電極部材の浮遊時のバランスが取り易く、安定した浮遊が保てるという効果がある。
【0020】
本発明に係る水素水生成器によれば、電極部材の浮き具は、それぞれ浮き材を浮きケースに収納した構成としたから、浮き具における浮き材の交換等が容易となり、浮き具のメンテナンスが簡単であるという効果がある。
【0021】
本発明に係る水素水生成器によれば、電極保持部材は、保持本体部及び当該保持本体部の上部を閉塞する保持カバー部を有する構成としたから、保持本体部と保持カバー部との間には作業領域等が確保され、リード線と電極部との接続部位の管理、及び防水等が良好に行えるという効果がある。
【0022】
本発明に係る水素水生成器によれば、第一の電極の4枚の電極板をそれぞれ網体で形成し、この周囲に網体からなる第三の電極を配置し、第一の電極の4枚の電極板を、一対の交流電極と2つの接地電極とし、かつ第二の電極及び第三の電極をそれぞれ接地電極とした構成としたから、第一の電極、第二の電極及び第三の電極の全ての電極が効率よく機能し、このため電気分解が良好に行えて水槽等の水中における電解処理の効果が高められ、併せて、筒状の第三の電極により電極部の浮きのバランスが保てるという効果がある。
【0023】
本発明に係る水素水生成器によれば、第一の電極の電極板に係る交流電極に高周波交流を通電させるに際し、高周波交流として周波数5~100kHzを中心に変動幅±3~5kHzのFM変調を加えた構成としたから、電気分解で生成された水は還元力が強く、含まれる水素水の多くがナノバブル化された水素水として水中に長期保存されることから、実用的にも優れた水素水が、水槽等の水中に得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施の形態に係る水素水生成器の電極部材の斜視図を示す。
【
図2】実施の形態に係る水素水生成器の電源部材(制御回路等)を示す図である。
【
図3】実施の形態に係る電極部材等の断面図(
図6(a)のB-B断面)である。
【
図4】実施の形態に係る電極部(第二の電極及び第三の電極)の分解斜視図である。
【
図5】電極部材の電極保持部材に係り、(a)は保持本体部、(b)は保持カバー部を示す図である。
【
図6】電極部材に係り、(a)は(b)のA-A断面図、(b)は側面図、(c)は平面図を示す。
【
図7】電極部材に係り、(a)は浮き具の斜視図、(b)は浮き具の浮きケースの斜視図を示す。
【
図8】電源部材の給電回路部に係る電気回路を示す図である。
【
図9】電極部材の電極部における第一の電極、第二の電極、及び第三の電極の模式図であり、(a)は各電極を、(b)は第一の電極に係る交流電極と接地電極との関係、(c)は(b)の交流電極と接地電極とを反転した関係、をそれぞれ示す図である。
【
図11】従来例に係る水素水発生装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る水素水生成器の実施の形態を説明する。
図1,2、3等に示すように、この実施の形態に係る水素水生成器は、水を充填した水槽、タンク、容器等の水中に投入可能な電極部材2、及び電極部材2に電力を供給する電源部材4等を有する。
【0026】
電極部材2は、水の電気分解処理を行う電極板6等が取り付けられた電極部8、この電極部8の上部を保持する電極保持部材9,電極部8に浮力を与える浮き具10等を有する。電極部材2は、水槽内等(水中)で使用され、また電源部材4は地上(空中)で使用される。電源部材4は、例えばケース等に収納された状態で管理され、ここからリード線5を用いて電力を電極部材2に供給する。
電極部材2と電源部材4は、それぞれ独立した形態であるため、大きさ、重量も分割され、これらの維持管理も独立して行え、また電極部材2の電極部8等のメンテナンスも容易に行える。
【0027】
図2は、電源部材4の構成を示すもので、器機を管理する制御部11、給電回路部12、及び直流電源部13等を有する。給電回路部12は、リード線5により電極部材2の電極板6等に電解処理用の電力を供給する。直流電源部13は、給電回路部12に直流(DC)電源を供給するもので、給電回路部12に対する電極ドライブ用(24V~48V)の電源部13a、制御部11に対する制御基板用(12V)の電源部13b等を有する。
【0028】
電極部材2の電極部8は、断面L形の4枚の電極板6からなる第一の電極14、第一の電極14の中央部に配置される棒状の第二の電極16、及び第一の電極14の周囲を被う網体からなる第三の電極18を有する。第一の電極14は、断面L字状の4枚の電極板6が中央部位の周囲に配置され、各電極板6の電極面15は網体からなる。
【0029】
電極部材2は、水面に浮いた状態で使用される。このため、電極部8は全体的に円形の筒状に形成し、バランス良く水中に浮遊するようにした。そして、第一の電極14は中心部位の周囲に均等に4枚の各電極板6を配置し、さらに、第一の電極14の前記中心部位には棒状の第二の電極16を配置し、電極部8の重量をその中心部に集中させ、この中心部に電極部8の重心が位置するようにして浮遊時の安定性を向上させた。
【0030】
電極部8の各電極には導電材が用いられ、ここでは第一の電極14として、例えばチタン(Ti)にプラチナ(Pt)をメッキしたものを用いる。また、第二の電極16及び第三の電極18として、ステンレス材(SUS316)を用いている。このように、何れの電極についても、材料はステンレス、チタン等、耐久性があり錆にくい材料が用いられ、或いはこれらにプラチナ等のメッキ加工を施した金属材料が用いられる。
【0031】
浮き具10は、水面下に投入した電極部材2が水中に沈まないよう保持し、その一部を水面上に浮かせるものである。このため、浮き具10としては、電極部材2を水中に保持した状態で水面上に浮かせる浮袋的な物であればよく、適切に材料、形態等を選択する。
浮き具10は、電極保持部材9の周囲部に取り付けて使用する。
【0032】
図3は、電極部材2の断面(水平)を示したものである。第一の電極14の電極板6は、直角に配置された一対の電極面15からなり、これら電極面15は網目が形成された長方形(縦に長い)の板状である。第一の電極14は、断面L形の電極板6を4枚用いており、各電極板6の上部の中央部には、それぞれ上方に突出した端子棒13が形成されている。電極板6を網目状に形成したのは、表面積を大きくし又表裏の両側で化学反応を生じさせ、電気分解の効果を高めるためである。
【0033】
そして、中央部に棒状の第二の電極16を配置し、その周囲に一定間隔(90度間隔)で、第一の電極14に係る4枚の電極板6が配置されている。さらに、第一の電極14の周囲を囲む状態で円筒状の第三の電極18が配置されている。
【0034】
なお、必要に応じて、第一の電極14の特定の電極板6の断面L形の凹部を利用して、ミネラル材を収納したミネラルケースを配置し、また上下向に銅製の棒材を配置しても良い。ミネラル材は、例えばマグネシウムと亜鉛の合金板からなり、これにより水中にミネラル物質を含有させることができ、また銅製の棒材は殺菌のために用いる。
【0035】
第一の電極14に、断面L形の4枚の電極板6を用いたのは、上部を一部浮かせた状態で電極部8を水中に没入させた場合、全体のバランスが良く安定した状態で電極部8を水中に保持できるためであり、併せて電極を増やして水の電解処理の能力を高めるためである。また、電極板6を断面L形とすることで、各電極板6の電極面15同士の向かい合う面積を広くすることができ、効率よく電気分解が行える。
【0036】
電極板6の電極面15は、網目状に形成した平坦な矩形形状である。各電極板6は、平坦な矩形状の網材の中心部をL状に屈曲成型したものである。これにより電極板6は、平坦な電極面15が直角の形状をなす形状である。電極面15を網目状にすることで、表面積が増えて電解処理の効率が高められ、また水の流通が良くなり電解処理にも寄与する。
【0037】
第一の電極14は、断面L字状の電極板6が周囲に配置される中央部位に、各電極板6の角部をそれぞれ前記中央部位に向けて配置している。また各電極板6同士は、前記中央部位の周囲4か所に90度間隔で配置され、隣接する電極面15同士は一定の間隔を隔てて平行に向き合うように配置されている。
【0038】
このように、第一の電極14の各電極板6の配置は、中央部位に位置する第二の電極16の近傍であって、かつ第二の電極16の中心対称位置にそれぞれ向かい合う形態で配置される。これにより、棒状の第二の電極16に対して、各電極板6との間の距離的なバランスがとれ、電気分解も良好に行われる。
電極板6は、チタンをメッシュ加工、又はエキスパンドメタル加工などにより網状に成型したものである。電極板6にプラチナメッキを施せば、耐久性も高まり処理効率アップにもなる。
【0039】
第一の電極14は、各電極板6の隣接する電極面15同士の間隔は、ここでは10mmとしており、これは5mm~12mmの範囲が電気分解には良好である。
また、第一の電極14の各電極板6は、それぞれ角部から上方に向けて端子棒13が取り付けられており、この端子棒13を介して第一の電極14の上部が電極保持部材9に固定される。また、端子棒13はリード線5と電気的に接続されている。
【0040】
各電極板6は、それぞれ電極面15同士が一定間隔を維持できるよう、電極押え材20を用いている。電極押え材20は、非導電性の材料、例えばPP(ポリプロピレン)からなる。
また、電極押え材20は、断面円形状の押え材(A)、押え材(B)及び押え材(C)の3種類の部品からなる。各押え材同士は、中心部に設けた一方が凹状、他方が凸の部位を、これらの間に電極面15を介在させて篏合し互いに連結させている。そして、両側に電極押え材(A)及び電極押え材(B)を配置し、中央部に電極押え材(C)を配置し、この電極押え材(C)の幅により、隣り合う電極面15同士の間隔を一定に確保している。
電極押え材20は、第一の電極14の上部近傍及び下部近傍の上下二箇所に配置し、電極面15同士の間隔維持の安定化を図っている。
【0041】
図4に示すように、第二の電極16は棒状であり、断面円形状の中心電極材30に、これを被うようにパイプ電極材32が嵌装された形態である。パイプ電極材32は、円筒状のパイプ材からなる。このように、第二の電極16は、その中心部の中心電極材30、およびこの周囲を被い、この中心電極材30に着脱自在に嵌装される円筒状等のパイプ電極材32を有する。パイプ電極材32は導電性を有し、中心電極材30とは互いに電気的に接触し導通している。
【0042】
また、中心電極材30の上端部には電極端子34が形成され、中心電極材30の下端部にはネジ溝が刻設されたネジ部36が突出形成されている。第二の電極16の上部は、電極端子34を介して電極保持部材9に固定される。
第二の電極16では、構造的にシリカ等のスケールは中心電極材30には付着せずパイプ電極材32に付着するため、電極のメンテナンス(クリーニング等)はパイプ電極材32についてのみ行えばよい。
【0043】
第三の電極18は、筒部40と底面部42からなる有底筒状の形状であり、材料はステンレス製で縦横の網目等が形成された網材が用いられている。
第三の電極18は、例えばステンレス製の針金をメッシュ状に織った網材を円筒状に丸め、筒状に成型したものである。このメッシュの目の粗さは、#2.5、或いは#5等があるが、ここでは目の粗い#2.5(メッシュ)を採用している。
【0044】
第三の電極18の筒部40は、円筒形状であり、筒部40の上下部の各周囲部には、それぞれ上カバー材、下カバー材が取り付けられている。筒部40の中間部には、補強用の環状線材45が取り付けられている。また、底面部42は、筒部40と同様の網目が形成された平坦な形状であり、その中央部には挿通孔部44が設けられたリング材46が取り付けられている。
【0045】
第三の電極18は、内部の中心位置に配置した第二の電極16の下端部を止着した状態で、この第二の電極16に保持され取り付けられる。第二の電極16に係る中心電極材30のネジ部36にナット部材48を螺着し固定することで、パイプ電極材32及び第三の電極18等が保持され、これらが中心電極材30に固定される形態となる。また、パイプ電極材32は予め中心電極材30に嵌めておき、この嵌めた状態で保持固定される。
ナット部材48を、中心電極材30のネジ部36にねじ込むことで、中心電極材30が第三の電極18の底面部42に接触し、第二の電極16と第三の電極18とは導通状態となる。第二の電極16と第三の電極18とは、共に接地(グランド)電極である。
【0046】
第二の電極16において、パイプ電極材32を脱着する際には、ナット部材48を緩めて取り外し、中心電極材30からパイプ電極材32を引き抜けば簡単に外すことができる。そして、パイプ電極材32に付着したスケール等の異物を除去し、また必要により第三の電極18の掃除等を行う。第二の電極16に係るパイプ電極材32、及び第三の電極18については、これら電極の装着及び脱着は容易であり、メンテナンスも簡単に行える。
円筒状の第三の電極18により、電極部材2の浮き状態では電極部8のバランスが保て、また電極部材2を扱う際、電極部8の保護にも寄与する。
【0047】
図5に示すように、電極保持部材9は、電極部材2の上部を保持する保持本体部50、及び保持本体部50の上部を閉塞する保持カバー部52を有する。電極保持部材9は、合成樹脂材等の非導電性(絶縁)の材料を用いる。ここでは、電極保持部材9としての保持本体部50及び保持カバー部52に、耐衝撃性などに優れたABS樹脂材(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)を用いている。
電極保持部材9を保持本体部50と保持カバー部52に分けることで、両者間には作業領域が確保され、またリード線5と電極部8との接続部位等の管理及び防水が良好に行える。
【0048】
保持本体部50は、表面部54と裏面部55を有する円形の部材である。表面部54は蓋状で、周囲4か所には、浮き具10を取り付けるための係止突起56が形成されている。また、保持本体部50の一か所に係止用のフック57が設けられている。
また、裏面部55は円板状で、中央部には第二の電極16の端子棒34を保持する中央孔部58、その周囲の4か所には第一の電極14の各電極板6を保持する保持孔部59が設けられている。裏面部55の周辺の6か所には、表面部54をネジ等の止着具で固定するための孔部60が設けられている。
【0049】
第一の電極14の各電極板6の上部の端子棒13は、それぞれ保持本体部50の保持孔部59に嵌入可能であり、その上部側から端子棒13をナット等で止着する。この際、リード線5の端子を端子棒13に取り付け、リード線5と第一の電極14の各電極板6とを接続する。このように、電極板6の端子棒13を介して、リード線5を電気的に接続する。
第二の電極16についても、中心電極材30の上端部に形成された電極端子34を保持本体部50の中央孔部58に嵌入し、その上部側から電極端子34をナット等で止着し、この電極端子34にリード線5の端子を接続する。
【0050】
保持カバー部52は円板状で、中央部から少し変位した箇所を膨出させ、ここにリード線5を挿通させるケーブル孔部61が設けられている。また、保持カバー部52の周辺の6か所には止着具を取り付けるための孔部62が設けられている。
【0051】
図6は、電極部材2に係り、電極部8に電極保持部材9を取り付けた状態を示すものである。同図(a)は同図(b)に示すA-A線断面、同図(b)は側面図、同図(c)は平面図をそれぞれ示している。
なお、
図3は、
図6(a)に示すB-B線断面図である。
【0052】
図7(a)(b)は浮き具10を示したものである。ここで用いた浮き具10は、浮き材66及びこれを収納し或いは保持する浮きケース68等を有する。浮き材66としては、発泡スチロール等の気泡(独立気泡)を含ませた合成樹脂材などが用いられる。また、浮き具10として、内部に空気が充填された密閉状の容器を用いても良い。浮きケース68は、格子状に形成され、材料としてはPP(ポリプロピレン)等が用いられている。
【0053】
浮き具10は、ここでは左右に配置された一対の浮き具片10a,10bからなる。また、浮き材66も同様に一対の浮き材片、浮きケース68も同様に一対のケース片からなる。各浮き具片10a,10bは、それぞれ平面が円弧状かつ断面が矩形状であり、互いに凹状の部位を向い合せにして、電極保持部材9の周囲に取り付ける。また、各浮き具片10a,10b同士は、少しの隙間(S)を設けて配置する。保持本体部50のフック57は、前記隙間(S)の箇所に位置するように配置する。
【0054】
浮きケース68の各ケース片68a(68b)は、それぞれ円弧状の格子及び中心方向に向かう格子が形成されている。また、ケース片68a(68b)には、それぞれ内側に2か所、係止部70が形成され、またそれぞれ内側及び外側に浮き材66を保持するための保持片72が設けられている。
【0055】
各浮き具片10a(10b)は、電極保持部材9の左右の周囲部に、それぞれ向かい合せて対称な状態で取り付ける。この場合、保持本体部50の2箇所に設けた係止突起56を、それぞれ浮き具片10aの係止部70に係止させて取り付け、保持本体部50の他方側の2箇所についても同様に係止させる。こうして、電極保持部材9の周囲部の左右対称箇所にそれぞれ浮き具片10a(10b)を配置する。
【0056】
浮き具10を浮き具片10a,10bに分割したのは、浮き具10を電極保持部材9に取り付けるのが比較的容易に行え、また浮きのバランスもよいためである。浮き具10は、ここでは一対の浮き具片を用いているが、他に複数対の浮き具片を用いる形態としてもよい。浮き具片は、全体のバランスをとるため左右対称或いは均等な間隔で配置する。また、浮き具10として全体が円環状の形態としてもよい。
浮き具10の浮き材66を浮きケース68に収納、保持したことから、浮き材66の交換等が容易となり、メンテナンスも簡単に行える。
【0057】
なお、電極保持部材9のフック57は、例えば、水槽等の投入口が狭い場合等、浮き具10が邪魔になって電極部材2を水槽等に投入できないときに使用する。この場合、電極部材2の電極保持部材9から浮き具10を外し、電極保持部材9と電極部8のみの電極部材(2)とする。浮き具10は、各浮き具片10aの係止部70を電極保持部材9の係止突起56から外せば、脱着できる。
【0058】
そして浮き具10に代え、フック57を用いて、電極部材(2)を上方の吊り具等に係止させて吊り下げ、或いは水槽の縁等にフック57を係止させ、電極保持部材9の一部を残して電極部8を水中に没入させる。つまり、フック57の係止等により、電極部材(2)を、浮き具10を用いた場合と同様に、浮いた状態に保持する。これにより、電極部材(2)を水槽等に投入することが可能となり、水槽等の投入口が狭い場合であっても、水素水生成器の利用が可能となる。
なおこの場合、水槽等の水量を適宜な状態に調整してもよい。
【0059】
図8は、電源部材4における給電回路部12の電気回路図であり、
図9は電極部8の模式図である。
電極部8の電極板6と直流電源部13との間には、可変抵抗74を介して、直流電源からの直流電流を高周波の交流に変換して電極板6(A)、6(B)、6(C)、6(D)の2つに交流電圧を与え、残りの2つは接地電極としている。
【0060】
高周波スイッチ75A,75Bには、データセレクタ78より高周波交流2本と直流1本が接続されている。そして、カウンタ分周器73によりデータセレクタ78の出力切替を行い、接地電極と交流電極とを交換し接地電極を交流電極に切り換えることにより、電極に付着したスケールを取り払っている。
このため、第一の電極14に付着するシリカ等のスケールのクリーニング(メンテナンス)は、接地電極と交流電極との切り換えによって行える。
【0061】
高周波スイッチ76A,76Bと高周波スイッチ77A,77Bは、抵抗79A,79Bをそれぞれ介して、データセレクタ78を経て高周波切換指令を与えるFF回路よりなる高周波切換回路80が接続されている。この高周波切換回路80には、制御信号に応動して発振周波数が変化する電圧制御発信器(VCO)からなる高周波発振回路81が接続されている。この高周波発振回路81には、ランダム電圧発生器を内蔵した制御回路82が接続されている。
【0062】
高周波発振回路81は可変周波数の発振回路であって、電圧制御発信器(VCO)に与えられる制御信号の電圧値によってその発振周波数が制御される。このとき、交流の発振周波数約5~100kHzを中心に変動幅±3~5kHzのFM変調をかける。ここでは、周波数の変動幅は、例えば、中心周波数(30KHz)の上下に3~5KHzとしている。
【0063】
制御回路82は、高周波発振回路81へその発振周波数を制御するための制御電圧を供給する。この制御回路82はランダム信号発生器を内蔵し、それが発生するランダム信号に応じて電圧値の変化する制御信号を出力する。シストレジスタ(SFR)83は16ステージ構成のものであり、その蓄積情報は端子Q0~Q15より並列に読み取ることが出来るように構成されている。このシフトレジスタ83のシフト動作は、シフトレジスタ83の端子CKにパルス発生器(PG)84より供給されるシフトパルスによって制御される。パルス発生器84が反転動作を行い、反転する毎に急激な周波数変動を行っている。
【0064】
ゲートGTは、排他的論理和動作を行うゲートであり、一致検出回路として作用する。このゲートGTの入力端子の一方には前期シフトレジスタSFRの偶数ステージ、例えば、第6ステージの端子Q6より出力される信号が、また、他方には奇数ステージ、例えば、第9ステージの端子Q9より出力される信号が各々入力される。このゲートGTによる一致検出の結果は、シフトレジスタSFRの端子Dより最下位の第0ステージへ入力される。この情報を逐次上位へシフトして行くことによってシフトレジスタ83内に乱数情報が蓄えられる。
【0065】
シフトレジスタ83内に蓄えられた乱数情報は、適当に選択された約半数のステージから抵抗器によって取り出される。ここでは、第1、第3、第8、第10、第12~15の各ステージから信号を取り出している。抵抗器rは、これら各ステージの端子Q1、Q3、Q8、Q10、Q12~Q15を共通の接続点Aに接続している。この接続点Aは、高周波発振回路81を構成する電圧制御発振器(VCO)に接続されている。また一方、電圧制御発振器(VCO)はパルス発生器(PG)84に接続されている。
【0066】
従って、これら各ステージに蓄積された乱数情報のパターンが変化すると、高レベルと低レベルとに接続される抵抗器rの合成値が夫々変化するため、接続点Aの電圧がこれに応じて変動してランダム信号が作成される。接続点Aの電圧は抵抗R1とコンデンサC1によりゆるやかな変動になるが、パルス発生器84からの信号により急激な上下変動が起こる。
【0067】
パルス発生器84は、例えば5Hzを中心周波数とする連続パルスを送出するパルス発生器であって、電圧制御発振器(VCO)に入力される信号の電圧値に従って繰返しパルスの周期が変化するように構成されている。この周波数の変動範囲は、中心周波数の上下に夫々数kHz程度のものとなっている。
【0068】
このパルス発生器84の端子には、前記接続点Aの電圧が抵抗器R5を介して与えられる。従って、このパルス発生器84はシフトレジスタSFRによるランダム信号に応じてそのパルス繰返し周期が変動することになる。シフトレジスタSFRは、パルス発生器84の出力をシフトパルスとして用いている。従って、電圧制御発振器(VCO)に出力される制御信号はその電圧値、変動周期共に全くランダムに変化することになるとともに、抵抗R5とコンデンサC4により、接続点Aの出力が急激な周波数変動を作り出している。
【0069】
制御回路82に於いては、制御信号をシフトレジスタ83の約半数のステージに蓄積された乱数情報のパターンを利用して作成している。更に前述のようにシフトレジスタ83の入力情報として、偶数、奇数の各々から1ステージずつ選ばれた情報の一致検出結果を用いているため、ゆるやかな変動電圧値が急上昇して急降下するような極めて変動の激しい部分が頻繁に現れ、この時に衝撃波が発生する。
【0070】
ここで、電源部材4の給電回路部12と、電極部8との電気的接続について説明する。
図9(a)は、電極部8における第一の電極14の各電極板6、第二の電極16、及び第三の電極18の配置形態を示している。
また、同図(b)に示すように、給電回路部12と電極部8との接続形態として、電極部8の第一の電極14の4枚の電極板6の内、対角方向に向い合う一対の電極板6を交流が流れるメイン電極(M)とし、他の一対の電極板6を接地電極(G)としている。
【0071】
たとえば、第一の電極14の4つの電極板6は、対角方向に向かう2つの電極(電極板6(A),(C))がメイン電極(M)となり、他の2つの電極(電極板6(B),(D))が接地電極(G)となるようにしている。これらの電極は、第一の電極14に係る電極板6の電極面15のクリーニングのために、例えば3分~15分毎にメイン電極(M)と接地電極(G)とが切り換えられるようになっている(左右矢印)。
【0072】
また、第二の電極16は接地電極の状態であるため、前記第一の電極14に係る接地電極(G)と同様な電気的機能を発揮する。この場合、第一の電極14がメイン電極(M)となった場合、これから第二の電極16に対しても電流の流れが発生する。
第二の電極16は、第一の電極14に係る電気分解の効果を高めるために設けた接地電極(G)であり、これにより電気分解の能力が高められる(数%程度)ことが確認されている。
【0073】
次に、水素水生成器の稼働について説明する。
図2に示す電源部材4は、給電回路部12及び直流電源部13等の他、電源スイッチ85、タイマー部86、中継端子台87,88、表示部89、運転表示ランプ90、電流計92,電流調整器94,漏電遮断器96、ファン98等を有する。
この電源部材4は、交流(AC100V)を電源としている。
【0074】
そして、電源部材4の給電回路部12からは、電気の中継端子台87及びリード線5を介して電極部材2に電力が供給される。中継端子台87は、第一の電極14の各電極板6、第二の電極16及び第三の電極18と電気的に接続されている。
水素水生成器において、電極部材2は水槽内等に投入し、一部を水面に浮かせ電極部8は水中で使用し、また電源部材4は地上(空中)に配置して使用する。
【0075】
このため、稼働に際しては先ず電極部材2を水中に投入する。このときの電極部材2は、電極部8が水中に没入された状態となり、また浮き具10により、電極保持部材9及び浮き具10の一部(又は半分)は水面に浮遊した状態となる。このように、電極部材2は一部が水面に浮いた状態となる。この状態で、水素水生成器に係る電源部材4及び電極部材2の稼働が開始継続される。
【0076】
さて、地上に配置された電源部材4の電源スイッチ85がオンされると、電気分解に係る電力が給電回路部12から電極部材2の電極板6等に供給される。
給電回路部12では、制御回路82からランダム信号に対応した制御信号が高周波発振回路81に送出され、発振周波数が制御されてランダムに変化する。そして高周波発信回路から高周波切換回路80にランダムに変化する高周波信号が与えられる。
【0077】
高周波切換回路80にランダムな高周波信号が与えられると、ここから高周波の切換指令が出され、第1、第2と1つの接地信号が高周波スイッチ75A、75Bに与えられ一対の交流信号が高周波スイッチでON、OFFされる。これにより、ランダムに変化する高周波交流が形成され、水中に配置されている4枚の電極板6の内の一対にこれを印加し、他の一対の電極板6は接地する。
【0078】
ここで、高周波発振回路81から送出される発振周波数は、その電圧値及びその電圧値の持続時間が全くランダムに変化するとともに、電圧値が急上昇してから急降下する極めて激しく変動する部分を頻繁に含んでいる。
これにより、給電回路部12からの給電による電解処理により発生した水素、酸素のバブル(泡)は、高周波と衝撃波により小さいナノサイズの微小バブル(ナノバブル)までになり水中に溶存する。このナノバブルの水素水の発生は、検査機関の検査により確認されている。
【0079】
電源部材4における給電回路部12では、電源スイッチ85のON及びOFFの制御、ランプ等の点灯、消灯、及びタイマーの管理等が行われる。ここでは、タイマー部86に設けた24時間タイマーにより、電解処理の時間を、24時間内において自在にОN、ОFF指定することができる。また漏電遮断器96は、通電時に電極部材2等が水中から引き上げられた場合、あるいは電極同士が接触(ショート)した場合等には、自動的に通電が停止するよう制御している。
【0080】
水素水生成器を用いて水を電気分解した場合、特に、第一の電極14に係る接地電極等にスケール(シリカ等の不純物)が付着する。スケールの付着により、各電極に係る電流値が低下し、処理効率が悪化する。
このため、第一の電極14に係る電極板6は、接地電極と交流電極との切り換え(例えば12分毎)により、電極板6の電極面15におけるスケールのクリーニングを行うことができる。
【0081】
一方、第二の電極16についても、パイプ電極材32にスケールが付着するためスケールの除去等、電極の保守(メンテナンス)を行う。この場合、第二の電極16に係る中心電極材30にはスケールが付着しないため、実質的にはメンテナンスの必要はない。
第三の電極18についても、スケールが多少付着する場合があり、この場合も同様のメンテナンスを行う。メンテナンスは、装置の使用時間にもよるが、スケール(不純物)の付着の程度により定期的或いは適宜行う。
【0082】
第二の電極16及び第三の電極18のメンテナンスでは、第二の電極16(及び第三の電極18)の下部に螺着されたナット部材48を取り外す。この取り外しにより、第三の電極18及び第二の電極16に係るパイプ電極材32は外すことができる。パイプ電極材32は、中心電極材30から引き抜けば簡単に外れる。
【0083】
そして、ブラシ、洗剤材等を用いて、パイプ電極材32に付着したスケールを除去し掃除する。併せて、第三の電極18の筒部、底面部等についても、スケール等の付着があればこれを除去する。
電極部材2の電極部8は露出した形態であるため、第一の電極14、第二の電極16及び第三の電極18の何れについてもメンテナンスは容易であり耐久性、作業性にも寄与する。
【0084】
この水素水生成器の電源部材4で用いた給電回路部12は、これから供給される高周波交流による電気分解により、微細なバブルによる高い濃度のナノバブル水素水が生成されることが確認されている。
また、ここでは電源部材4から電力(高周波交流等)を供給し、水槽内に電極部材2を投入して水素水生成器を稼働させ、試験を行ったのでその結果を示す。
【0085】
図10は、試験結果を示す表であり、原水からの導電率(μs/cm)、ORP(mV)、水素濃度(ppb)、遊離塩素(mg/L)、総塩素(mg/L)等の変化を測定した。なお、水槽内の水量は500リットル、水温は26.4℃である。また、電極ドライブ用電圧は24Vとし、また12分毎に第一の電極14に係るメイン電極(M)と接地電極(G)とを切り換えた。
そして、原水の状態から、水素水生成器の稼働時間の経過につき、1時間後、2時間後、~8時間後について測定した。
【0086】
前記表によれば、1時間後にはORP値がマイナスとなり、また8時間後には-343mvと目標とした数値(-300mv)はクリアした。ORP値は、酸化力・還元力を示すものであり、これがマイナスに大きいほど還元力が強いことになる。水素水として、ORP値が-300mvでは、高濃度の水素水が発生していることが示されている。また、多少ではあるが塩素の量の減少がみられた。
なお、他に第三の電極18のメッシュの目の粗さが#5及び#2.5のものについて、同様の試験を行った。その結果、ORP値の下がりは目の粗い#2.5の方が、ОRP値が早く下がっていることが確認され、これは水の流れが改善されたためと思われる。
【0087】
通常、水中に溶け込んだ水素(バブル等)は時間の経過とともに多くが空気中に放出され、通常数日しか溶存しない。しかし、ナノバブル化された水素は長時間水中に溶存されることが知られている。前記水素水生成器による電気分解で生成された水素水は、その多くがナノバブル化されたナノバブル水素水として水中に溶存しており、このため、長期保存可能な水素水としてその効果が持続することから、安心して保存及び管理が行え、実用的にも優れた水素水としての効果が期待できる。
【0088】
また、前記水素水生成器によって生成した水素水は、人の健康維持管理、美容等幅広く効果が確認されており、他には家畜の病気、臭気の軽減、植物の生育、成長促進に寄与すること等についても期待されている。
なお、水の電気分解の際には、陽極から酸素ガスが発生して酸素水が一部生成されるが、酸素水についても一定の効果が確認されており、水素水と同様に飲料等も可能である。
【0089】
以上説明したように、この実施の形態に係る水素水生成器によれば、電極部材と電源部材とを分けたことから取り扱い、維持管理が容易となり、また水素水生成に係る容器として、水槽等、身近にある水をためておく容器が利用できて維持、管理が容易となり、また容器の容量また水の量も調節できて汎用性にも優れ、併せて電極の管理も容易である。また、水素水の長期保存が可能となり実用的にも大きく寄与する。
【0090】
併せて、この水素水生成器によれば、電極部材に係る各電極のメンテナンスが容易で、特にメンテナンスの必要なパイプ電極材等の着脱が容易に行えて、電極におけるスケール等の不純物の汚れの除去等の掃除も簡単に行えて保守性が改善され、これにより電極の電気伝導特性も良好な状態が維持され電気分解にも寄与し、水素水の大量生成にもつながる。
【符号の説明】
【0091】
2 電極部材
4 電源部材
5 リード線
6 電極板
8 電極部
9 電極保持部材
10 浮き具
10a,10b 浮き具片
12 給電回路部
14 第一の電極
16 第二の電極
18 第三の電極
30 中心電極材
32 パイプ電極材
50 保持本体部
52 保持カバー部
66 浮き材
68 浮きケース
【手続補正書】
【提出日】2022-09-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に投入される電極部材と、空中に配置されリード線により前記電極部材に電力を供給する電源部材と、を有し、
前記電極部材は、水の電気分解を行う電極部と、この電極部の上部を保持する電極保持部材と、前記電極部を水中に保持するとともに、前記電極保持部材を水面の上部に浮かせる浮き具と、を具備し、
前記電極部として、断面L字状の4枚の電極板からなる第一の電極、及び棒状の第二の電極を設け、前記電極部の中央部位の周囲に前記電極板をそれぞれ配置し、これら電極板の角部が向き合う前記中央部位に前記第二の電極を配置し、
前記水中に投入した前記電極部材の一部を、前記浮き具の浮力によって水面上に浮かせ、この状態で前記電源部材から水中に没入する前記電極部に給電し、電解処理により前記水中に水素水を生成することを特徴とする水素水生成器。
【請求項2】
前記第二の電極として、中心電極材とこれを被うパイプ電極材とから構成し、当該パイプ電極材を前記中心電極材に対して着脱自在に形成したことを特徴とする請求項1に記載の水素水生成器。
【請求項3】
前記電極部材の浮き具として、二又は三以上の複数部分からなる浮き具片を設け、これら浮き具片を前記電極保持部材の周囲に配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の水素水生成器。
【請求項4】
前記浮き具の浮き具片は、それぞれ浮き材を浮きケースに収納した形状であり、これら浮き具片を前記電極保持部材の周囲に配置したことを特徴とする請求項3に記載の水素水生成器。
【請求項5】
前記電極保持部材は、前記電極部の上部を保持する保持本体部、及び当該保持本体部の上部を閉塞する保持カバー部を有することを特徴とする請求項3に記載の水素水生成器。
【請求項6】
前記第一の電極の4枚の電極板をそれぞれ網体で形成し、この第一の電極の周囲に網体からなる筒状の第三の電極を配置し、
前記第一の電極の4枚の電極板を、それぞれ一対の交流電極と2つの接地電極として構成し、かつ前記第二の電極及び前記第三の電極をそれぞれ接地電極としたことを特徴とする請求項1に記載の水素水生成器。
【請求項7】
前記第一の電極の電極板に係る交流電極に高周波交流を通電させるに際し、前記高周波交流として周波数5~100kHzを中心に変動幅±3~5kHzのFM変調を加えたことを特徴とする請求項6に記載の水素水生成器。