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特開2023-179840画像生成装置、物体識別装置、及び画像生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179840
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】画像生成装置、物体識別装置、及び画像生成方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/00 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
G05D1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092686
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】中村 和行
(72)【発明者】
【氏名】西村 智貴
(72)【発明者】
【氏名】開田 真次
(72)【発明者】
【氏名】萩原 照満
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA05
5H301AA10
5H301BB10
5H301CC04
5H301CC07
5H301CC10
5H301GG07
5H301GG10
(57)【要約】
【課題】少ない演算量で的確に対象物を識別することが可能な画像を生成可能な画像生成装置を提供する。
【解決手段】画像生成装置は、予め定められた探知対象物を識別するための画像を生成する。画像生成装置は、入力部と、処理装置と、を備える。入力部には、センサが周囲を探知することにより生成された3次元点群データが入力される。処理装置は、入力部に入力された3次元点群データを、探知対象物に応じた向きの基準平面に射影することにより2次元画像を生成する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた探知対象物を識別するための画像を生成する画像生成装置において、
センサが周囲を探知することにより生成された3次元点群データが入力される入力部と、
前記入力部に入力された前記3次元点群データを、前記探知対象物に応じた向きの基準平面に射影することにより2次元画像を生成する処理装置と、
を備える、画像生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像生成装置であって、
前記処理装置は、前記基準平面に垂直な方向における位置に応じて各画素の描画パラメータを変化させた距離画像を前記2次元画像として生成する、画像生成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像生成装置であって、
前記探知対象物には、長尺体が含まれており、
前記処理装置は、前記基準平面を、前記長尺体の長手方向に平行な平面、又は、前記長尺体の長手方向に垂直な平面として、前記3次元点群データを当該基準平面に射影して前記2次元画像を生成する、画像生成装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画像生成装置であって、
前記探知対象物は、探知面に沿って配置されており、
前記処理装置は、前記基準平面を、前記探知面と同一の平面、又は、当該探知面に平行な平面として、前記3次元点群データを当該基準平面に射影して前記2次元画像を生成する、画像生成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像生成装置であって、
前記処理装置は、前記センサから入力された前記3次元点群データに基づいて前記探知面の位置を特定する、画像生成装置。
【請求項6】
請求項1に記載の画像生成装置であって、
前記処理装置は、前記センサから入力された前記3次元点群データから特定の3次元点群データを抽出し、前記特定の3次元点群データを前記基準平面に射影することにより2次元画像を生成する、画像生成装置。
【請求項7】
センサと、
前記センサが周囲を探知することにより生成された3次元点群データが入力される入力部と、前記入力部に入力された前記3次元点群データを、探知対象物に応じた向きの基準平面に射影することにより2次元画像を生成する処理装置と、を含む画像生成装置と、
を備え、
前記処理装置は、前記2次元画像を解析することにより前記探知対象物を識別する、物体識別装置。
【請求項8】
請求項7に記載の物体識別装置であって、
前記センサは、移動体に搭載されており、
前記処理装置は、前記移動体の移動中において、前記探知対象物を識別する、物体識別装置。
【請求項9】
請求項8に記載の物体識別装置であって、
前記センサは、1回のスキャンにより2次元点群データを生成するセンサであり、
前記移動体が移動しながら、前記センサが複数回のスキャンを行うことにより、前記3次元点群データを生成する、物体識別装置。
【請求項10】
請求項7に記載の物体識別装置であって、
前記探知対象物には、長尺体が含まれており、
前記処理装置は、前記基準平面に垂直な方向の位置に応じて各画素の描画パラメータを変化させた前記2次元画像である距離画像を生成し、
前記処理装置は、前記距離画像を前記描画パラメータに応じて二値化して更に輪郭を抽出した輪郭画像を生成し、
前記処理装置は、前記輪郭画像に基づいて前記長尺体の長手方向を特定して、当該長手方向に基づいて、前記探知対象物としての前記長尺体を識別する、物体識別装置。
【請求項11】
予め定められた探知対象物を識別するための画像を生成する画像生成方法において、
周囲を探知することにより3次元点群データを生成し、
前記3次元点群データに対して、前記探知対象物に応じて定められた向きの基準平面に射影する処理を行うことにより2次元画像を生成する、画像生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、主として、探知対象物を識別するための画像を生成する画像生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、レーザスキャナを用いて得られた3次元点群データから、円形対象物を検出する対象物検出装置を開示する。対象物検出装置は、3次元点群データを水平面に射影することにより、射影パターンを生成する。対象物検出装置は、射影パターンに基づいて円形対象物を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5464915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、3次元点群データを水平面に射影することのみが記載されている。そのため、対象物の形状又は向きによっては、射影パターンから対象物を識別することが困難になる可能性がある。一方で、3次元点群データを直接用いて対象物を識別する場合、演算量が膨大になる。
【0005】
本出願は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、少ない演算量で的確に対象物を識別することが可能な画像を生成する画像生成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本出願の第1の観点によれば、以下の構成の画像生成装置が提供される。即ち、予め定められた探知対象物を識別するための画像を生成する。画像生成装置は、入力部と、処理装置と、を備える。前記入力部は、センサが周囲を探知することにより生成された3次元点群データが入力される。前記処理装置は、前記入力部に入力された前記3次元点群データを、前記探知対象物に応じた向きの基準平面に射影することにより2次元画像を生成する。
【0008】
本出願の第2の観点によれば、以下の構成の物体識別装置が提供される。即ち、物体識別装置は、センサと、画像生成装置と、を備える。画像生成装置は、入力部と処理装置とを含む。前記入力部には、前記センサが周囲を探知することにより生成された3次元点群データが入力される。前記処理装置は、前記入力部に入力された前記3次元点群データを、前記探知対象物に応じた向きの基準平面に射影することにより2次元画像を生成する。
【0009】
本出願の第3の観点によれば、以下の画像生成方法が提供される。即ち、画像生成方法は、予め定められた探知対象物を識別するための画像を生成する。画像生成方法では、周囲を探知することにより3次元点群データを生成する。画像生成方法では、前記3次元点群データに対して、前記探知対象物に応じて定められた向きの基準平面に射影する処理を行うことにより2次元画像を生成する。
【発明の効果】
【0010】
本出願によれば、少ない演算量で的確に対象物を識別することが可能な画像を生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】AUVがパイプラインを検査する様子を示す概略図。
図2】AUVのブロック図。
図3】パイプラインを識別する処理を示すフローチャート。
図4】3次元点群データを海底面と同一の基準平面に射影して生成された距離画像を示す図。
図5】距離画像に基づいて生成された二値化画像を示す図。
図6】二値化画像に基づいて生成された輪郭画像を示す図。
図7】パイプラインの長手方向に平行な直線を示す図。
図8】パイプライン及び障害物を識別する処理を示すフローチャート。
図9】3次元点群データを前後方向に垂直な基準平面に射影して生成された距離画像を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照して本出願の実施形態を説明する。初めに、図1及び図2を参照して、AUV10の概要について説明する。
【0013】
AUV10は、autonomous underwater vehicleの略称である。AUV10は、人が操縦することなく自律的に水中を航行する潜水機である。AUV10は、海底101に配置されたパイプライン100を探知して、パイプライン100を検査する。パイプライン100は、長尺体の一例である。図1に示すように、AUV10は、本体11と、推進装置12と、ロボットアーム13と、検査ツール14と、を備える。
【0014】
本体11には、バッテリー及びモータが設けられている。推進装置12は例えばスクリュープロペラ及び舵であり、モータが発生させた動力によってスクリュープロペラが回転することで、推進装置12は推進力を発生させる。これにより、AUV10を推進させることができる。また、舵を動作させることにより、AUV10を旋回させることができる。
【0015】
ロボットアーム13は、本体11の下部に設けられている。ロボットアーム13は、複数の関節を有している。それぞれの関節には、アクチュエータが設けられている。アクチュエータを駆動することにより、ロボットアーム13の姿勢を変更できる。検査ツール14は、ロボットアーム13の先端に取り付けられている。検査ツール14は、パイプライン100を検査するための機器を有する。例えば、検査ツール14が有する機器は、パイプライン100を撮影するためのカメラであってもよいし、パイプライン100の防食処理の劣化の程度を検査するための検査器であってもよい。
【0016】
図1及び図2に示すように、AUV10は、更に、制御装置15と、物体識別装置20と、を備える。
【0017】
制御装置15は、CPU等の演算装置と、SSD又はフラッシュメモリ等の記憶装置と、を備えるコンピュータである。制御装置15は、パイプライン100の探知結果に基づいて推進装置12を制御する。これにより、パイプライン100が配置された領域に沿ってAUV10を航行させることができる。また、制御装置15は、更にロボットアーム13を制御する。具体的には、制御装置15は、検査ツール14とパイプライン100の距離が予め定められた範囲を満たすように、ロボットアーム13を制御する。
【0018】
物体識別装置20は、物体を探知して識別する装置である。本実施形態では、パイプライン100が探知対象物である。パイプライン100は、探知面である海底101に沿って配置されている。「海底101に沿って配置」とは、パイプライン100が海底101に接触するように配置されているか、又は、海底101との距離を一定に保った位置にパイプライン100が配置されていることを示す。また、探知対象物は予め定められている。「予め定められている」とは、探知対象物の種類又は名称が特定されており、更に、探知対象物の形状、又は、おおよその位置が予め特定されていることである。図2に示すように、物体識別装置20は、センサ21と、画像生成装置22と、を備える。
【0019】
センサ21は、本体11の前部かつ下部に設けられている。センサ21は、ソナーである。センサ21は、平面状に音波を送信して反射波を受信することにより、各方向に存在する物体までの距離を求めて、2次元点群データを作成する。以下では、1回又は一連の音波の送受信を行って周囲を探知することをスキャンと称する。センサ21が1回のスキャンを行うことにより、AUV10の周囲の物体の位置を示す2次元点群データが得られる。AUV10が移動しながらセンサ21が複数回のスキャンを行うことにより、3次元点群データが得られる。3次元点群データの座標系は、例えばAUV10の座標系である。AUV10の座標系とは、AUV10の向きを基準として、前後軸、左右軸、上下軸で構成される座標系である。
【0020】
画像生成装置22は、センサ21が生成した3次元点群データに基づいて、探知対象物であるパイプライン100を識別するための画像を生成する。画像生成装置22は、入力部22aと、処理装置22bと、を備える。入力部22aには、センサ21が生成した3次元点群データが入力される。入力部22aは、具体的には、センサ21の3次元点群データを受信して増幅等の信号処理を行う信号処理モジュールである。入力部22aは、センサ21と有線通信又は無線通信を行う通信モジュールであってもよい。処理装置22bは、CPU等の演算装置と、SSD又はフラッシュメモリ等の記憶装置と、を備えるコンピュータである。処理装置22bは、記憶装置に予め記憶されたプログラムを演算装置が実行することにより、パイプライン100を識別するための画像を生成する処理等を行う。
【0021】
次に、図3から図7を参照して、処理装置22bが行う処理の詳細について説明する。
【0022】
初めに、処理装置22bは、センサ21から入力部22aに入力された3次元点群データを取得する(S101)。次に、処理装置22bは、3次元点群データを解析して海底の位置を特定し、海底の位置に基づいて基準平面を決定する(S102)。センサ21と海底の間に物体が存在しない場合、センサ21は海底で反射した反射波を受信する。従って、3次元点群データには、海底を示す多数の点群が含まれている。海底を示す点群は大きな面を形成するため、処理装置22bは、3次元点群データのうち、海底を示す点群を特定できる。これにより、処理装置22bは、海底の位置を特定できる。本実施形態では、処理装置22bは、海底面を基準平面として決定する。ただし、基準平面は、海底面に平行な別の面であってもよいし、AUV10の座標系の前後軸及び左右軸に平行な面であってもよい。
【0023】
次に、処理装置22bは、3次元点群データを基準平面に射影して2次元画像を生成する(S103、図4)。このとき、処理装置22bは、基準平面に垂直な方向の位置に応じて、2次元画像の各画素の明度を異ならせる。従って、処理装置22bが生成する2次元画像は距離画像である。詳細には、基準平面である海底面から高い位置にある物体ほど2次元画像の各画素の明度を明るくする。従って、パイプライン100が存在する位置は、海底面と比較して、明度が大きい。2次元画像の明度は3段階以上であるため、2次元画像は二値化画像ではなく、グレースケール画像である。なお、基準平面からの距離が大きくなるにつれて各画素の明度を小さくしてもよい。また、明度に代えて、別の描画パラメータ、例えば、色相又は彩度を異ならせてもよい。
【0024】
次に、処理装置22bは、距離画像を二値化して二値化画像を生成する(S104、図5)。二値化画像とは、2つの描画パラメータで描画された画像である。本実施形態の二値化画像は、白と黒の2つで描画された画像である。処理装置22bは、基準平面からの距離に応じた閾値を設定し、閾値より大きいか否かに応じて描画パラメータを異ならせる。本実施形態では、閾値としてパイプライン100の半径を用いる。従って、海底面からパイプライン100の半径よりも高い位置にある物体を示す画素が白で描画され、それ以外の物体を示す画素が黒で描画される。これにより、パイプライン100が存在する範囲を明確にすることができる。なお、白と黒は逆であってもよい。また、本実施形態の閾値の定め方は一例であり、異なる値を用いてもよい。二値化画像を生成することにより、パイプライン100が存在する位置が明確になったり、その後の処理が容易になったりする。
【0025】
次に、処理装置22bは、二値化画像から輪郭画像を生成する(S105、図6)。輪郭画像とは、パイプライン100を示す画素の輪郭を抽出した画像である。輪郭を抽出する処理は公知であるため、簡単に説明する。即ち、処理装置22bは、白で描画された画素を、黒で描画された画素に隣接する境界画素と、黒で描画された画素に隣接しない除外画素と、に区分する。そして、境界画素については白での描画を維持し、除外画素については白から黒に変換する。以上により、隣接画像を生成できる。輪郭画像を生成することにより、パイプライン100の形状を際立たせることができる。
【0026】
次に、処理装置22bは、輪郭画像からパイプライン100の長手方向を特定する(S106)。輪郭画像から長手方向を特定する処理は、例えばハフ変換を用いて行うことができる。ハフ変換は、画像の特徴点を最も多く通る図形を生成する方法である。ハフ変換を用いることにより、パイプライン100の輪郭を通る線分を得ることができる。ハフ変換を行って得られた線分の方向を、パイプライン100の長手方向と特定する。また、ハフ変換を行うことにより複数の線分が得られる場合は、それぞれの線分の向きの平均等を用いて、パイプライン100の長手方向を特定する。なお、ハフ変換以外の処理を用いてパイプライン100の長手方向を特定してもよい。
【0027】
次に、処理装置22bは、距離画像及び長手方向に基づいてパイプライン100の中心線を特定する(S107)。具体的には、処理装置22bは、図7に示すように、ステップS106で求めた長手方向に平行な複数の線分を距離画像上に配置する。線分同士の距離は、例えばパイプライン100の直径以下であることが好ましく、パイプライン100の直径の1/2以下、1/5以下、又は1/10以下であることが更に好ましい。当然であるが、線分同士の距離は0より大きい。次に、処理装置22bは、各線分上に位置する画素の明度を合算して明度合算値を算出する。処理装置22bは、明度合算値が最も大きくなる線分をパイプライン100の中心線として特定する。以上のようにして、処理装置22bは、センサ21が取得したデータから、パイプライン100を識別する。
【0028】
処理装置22bは、パイプライン100の中心線の位置に応じて推進装置12を制御する(S108)。具体的には、処理装置22bは、AUV10がパイプライン100の中心線に沿って航行するように、推進装置12を制御する。ここで、距離画像は、AUV座標系の3次元点群データを射影した画像である。従って、距離画像上の位置とAUV10の位置関係は既知である。そのため、処理装置22bは、パイプライン100の中心線に対するAUV10の変位を特定できる。処理装置22bは、AUV座標系の左右軸の変位がゼロに近づくように推進装置12を制御する。
【0029】
上述したステップS101からステップS108の処理は一定周期で繰り返し行われる。そのため、仮にパイプライン100に対してAUV10が左右軸に変位しても、左右軸の変位がゼロになるように修正される。従って、パイプライン100に沿ってAUV10を航行させ続けることができる。その結果、自動でパイプライン100の検査を行うことができる。
【0030】
また、2回目以降のステップS103では、処理装置22bは、センサ21から取得した3次元点群データのうち特定の領域の3次元点群データを抽出し、特定の領域の3次元点群データを基準平面に射影する。特定の領域とは、探知対象物が存在すると推定される領域である。処理装置22bは、特定の領域以外の領域の3次元点群データを基準平面に射影しない。そのため、処理装置22bが取り扱うデータ量を低減することができる。
【0031】
具体的には、処理装置22bは、以下の処理を行って特定の領域を定める。本実施形態では、ステップS107の処理を行うことにより、パイプライン100の中心線が特定される。次のスキャンで取得されるパイプライン100は、特定した中心線の近傍に存在すると推定される。従って、処理装置22bは、特定した中心線の周囲の領域を特定の領域として取り扱う。例えば、複数のパイプライン100が並べて設置されている場合、処理装置22bは、ステップS107で特定したパイプライン100を含み、その隣のパイプライン100を含まない領域を特定の領域として取り扱う。更に具体的には、処理装置22bは、ステップS107で特定した中心線に平行であって、かつ、上下軸に平行な境界平面を定める。境界平面は、特定した中心線に対して左右一対で定められる。境界平面で挟まれる領域が特定の領域である。境界平面と中心線の距離は、パイプライン100の設置間隔未満である。このように特定の領域を定めることにより、隣接して配置されたパイプライン100を誤認識する可能性を低減できる。
【0032】
なお、3次元点群データから特定の3次元点群データを抽出する処理は必須ではなく省略することもできる。つまり、2回目以降のステップS103においても、取得した全ての3次元点群データを基準平面に射影してもよい。
【0033】
3次元点群データを直接用いて、パイプライン100を識別したり、パイプライン100の位置を特定したりする処理は、膨大な数の点に対して様々な行列演算を行う必要があるため、演算量が膨大となる。これに対し、本実施形態のように3次元点群データから距離画像を生成する処理は、主として各画素における、3次元座標系の1点から基準平面までの距離を算出するだけでよい。そのため、本実施形態の処理は、3次元データを直接的に取り扱う場合と比較して演算量が少ない。そして、距離画像の生成後に行われる処理は2次元の画像処理であるため、3次元データを直接的に取り扱う場合と比較して演算量が少ない。以上により、3次元データを直接的に取り扱う場合と比較して少ない演算量で、パイプライン100を識別したり、パイプライン100の位置を特定したりすることができる。
【0034】
本実施形態でパイプライン100の中心線を特定した処理は一例であり、異なる処理でパイプライン100の中心線を特定することもできる。例えば、ステップS106で得られた2本の線分の中央を通る直線をパイプライン100の中心線として特定してもよい。あるいは、二値化画像に白で描画された領域の中央を通る直線をパイプライン100の中心線として特定してもよい。
【0035】
また、本実施形態で生成する距離画像又は二値化画像等は、パイプライン100の中心線を特定する処理以外にも用いることができる。例えば、海底におけるパイプライン100の位置を記録するための処理に、距離画像又は二値化画像等を用いてもよい。
【0036】
次に、図8及び図9を参照して、3次元点群データを別の基準平面に射影する処理について説明する。
【0037】
上述したように、AUV10は、検査ツール14とパイプライン100の距離が予め定められた範囲を満たすように、ロボットアーム13を制御する。しかし、パイプライン100の上方に障害物が存在したり、パイプライン100が識別できない場合、制御装置15は、パイプライン100から検査ツール14を遠ざける。
【0038】
これにより、検査ツール14の破損を抑制することができる。この種のパイプライン100及び障害物の探知においても、画像生成装置22を用いることができる。以下、この処理の詳細について説明する。なお、この処理の探知対象物は、パイプライン100と、パイプライン100の周囲の障害物である。
【0039】
初めに、処理装置22bは、センサ21から3次元点群データを取得する(S201)。次に、処理装置22bは、基準平面を決定する(S202)。基準平面は、例えば、AUV10の前後方向に垂直な平面、又は、パイプライン100の長手方向に垂直な平面である。AUV10の前後方向は、AUV座標系の座標軸の1つである。パイプライン100の長手方向は、上述したステップS106の処理により特定できる。基準平面は、例えば、現在のAUV10の位置よりも所定距離だけ前方であることが好ましい。
【0040】
次に、処理装置22bは、3次元点群データを基準平面に射影して、二値化画像を生成する(S203)。処理装置22bは、基準平面に物体が存在する場合は白で描画し、基準平面に物体が存在しない場合は黒で描画する。なお、二値化画像に代えて距離画像を生成してもよい。次に、処理装置22bは、二値化画像からパイプライン100を識別する(S204)。パイプライン100の識別は、パイプライン100のおおよその位置、及び、パイプライン100の大きさに基づいて行うことができる。なお、パイプライン100のおおよその位置及び大きさは既知である。あるいは、上述したステップS107の処理によりパイプライン100の位置及び大きさを特定することもできる。なお、障害物が存在する範囲によっては、パイプライン100を識別できないこともある。
【0041】
次に、処理装置22bは、パイプライン100の周囲に障害物があるか否かを判定する(S205)。具体的には、処理装置22bは、図9の左の図に示すように、パイプライン100の上部に障害物検出領域を定め、この領域に物体が存在した場合は障害物があると判定する。図9の中央の図には、障害物検出領域に障害物があるときの二値化画像が示されている。また、図9の右の図には、障害物がパイプライン100を覆っており、パイプライン100が検出できない場合の例が示されている。従って、処理装置22bは、ステップS204において、パイプライン100を識別できない場合は、パイプライン100の周囲に障害物があると判定する。
【0042】
次に、処理装置22bは、障害物の判定結果に基づいて、ロボットアーム13を制御する(S206)。具体的には、パイプライン100の周囲に障害物があると判定した場合、検査ツール14が障害物に接触しないように、ロボットアーム13の姿勢を変化させる。
【0043】
上述したステップS201からステップS206の処理は一定周期で繰り返し行われる。そのため、パイプライン100の周囲に障害物が出現したタイミングにおいて、検査ツール14を障害物から退避させることができる。
【0044】
以上に説明したように、本実施形態の画像生成装置22は、予め定められたパイプライン100を識別するための画像を生成する画像生成方法を行う。画像生成装置22は、入力部22aと、処理装置22bと、を備える。入力部22aは、センサ21が周囲を探知することにより生成された3次元点群データが入力される。処理装置22bは、入力部22aに入力された3次元点群データを、パイプライン100に応じた向きの基準平面に射影することにより2次元画像を生成する。以上が特徴1である。
【0045】
2次元画像を用いてパイプライン100を識別することにより、3次元点群データを直接的に用いる方法と比較して、演算量を大幅に低減できる。特に、2次元画像はパイプライン100に応じた向きの基準平面に射影されているため、2次元画像を用いても的確にパイプライン100を識別可能な画像を生成できる。
【0046】
本実施形態の画像生成装置22において、処理装置22bは、基準平面に垂直な方向における位置に応じて各画素の描画パラメータを変化させた距離画像を2次元画像として生成する。以上が特徴2である。
【0047】
これにより、二値化画像と比較して情報量が多いため、探知対象物をより正確に識別できる可能性がある。
【0048】
本実施形態の画像生成装置22において、探知対象物には、長尺体であるパイプライン100が含まれている。処理装置22bは、基準平面を、パイプライン100の長手方向に平行な平面、又は、パイプライン100の長手方向に垂直な平面として、3次元点群データを当該基準平面に射影して2次元画像を生成する。以上が特徴3である。
【0049】
これにより、長尺体の特徴が表れ易い面を基準平面にできるため、探知対象物を的確に識別できる。
【0050】
本実施形態の画像生成装置22において、探知対象物であるパイプライン100は、探知面である海底101に沿って配置されている。処理装置22bは、基準平面を、海底101と同一の平面、又は、海底101に平行な平面として、3次元点群データを当該基準平面に射影して2次元画像を生成する。以上が特徴4である。
【0051】
これにより、探知面に対して探知対象物の特徴が表れ易い面を基準平面にできるため、探知対象物を的確に識別できる。
【0052】
本実施形態の画像生成装置22において、処理装置22bは、センサ21から入力された前記3次元点群データに基づいて海底101の位置を特定する。以上が特徴5である。
【0053】
これにより、センサ21を用いて、海底101の位置の特定と、パイプライン100の識別と、を行うことができる。従って、センサ21を有効に活用できる。
【0054】
本実施形態の画像生成装置22において、処理装置22bは、センサ21から入力された前記3次元点群データから特定の3次元点群データを抽出し、特定の3次元点群データを基準平面に射影することにより2次元画像を生成する。以上が特徴6である。
【0055】
これにより、処理装置22bが取り扱うデータ量を低減できる。
【0056】
本実施形態の物体識別装置20は、画像生成装置22と、センサ21と、を備える。処理装置22bは、距離画像を解析することによりパイプライン100を識別する。以上が特徴7である。
【0057】
本実施形態の物体識別装置20において、センサ21は、AUV10に搭載されている。処理装置22bは、AUV10の移動中において、パイプライン100を識別する。以上が特徴8である。
【0058】
これにより、物体識別装置20の識別結果に応じた処理をリアルタイムで行うことができる。
【0059】
本実施形態の物体識別装置20において、センサ21は、1回のスキャンにより2次元点群データを生成するセンサ21である。AUV10が移動しながら、センサ21が複数回のスキャンを行うことにより、3次元点群データが生成される。以上が特徴9である。
【0060】
これにより、安価なセンサを用いて3次元点群データを生成できる。
【0061】
本実施形態の物体識別装置20において、処理装置22bは、基準平面に垂直な方向の位置に応じて各画素の描画パラメータを変化させた2次元画像である距離画像を生成する。処理装置22bは、距離画像を描画パラメータに応じて二値化して更に輪郭を抽出した輪郭画像を生成する。処理装置22bは、輪郭画像に基づいてパイプライン100の長手方向を特定して、長手方向に基づいて、探知対象物としてのパイプライン100を識別する。以上が特徴10である。
【0062】
これにより、パイプライン100を的確に識別できる。
【0063】
上述した特徴1から特徴10は矛盾が生じない限り、適宜組み合わせることができる。例えば、特徴3には、特徴1,2の少なくとも1つを組み合わせることができる。特徴4には、特徴1から3の少なくとも1つを組み合わせることができる。特徴5には、特徴1から4の少なくとも1つを組み合わせることができる。特徴6には、特徴1から5の少なくとも1つを組み合わせることができる。特徴7には、特徴1から6の少なくとも1つを組み合わせることができる。特徴8には、特徴1から7の少なくとも1つを組み合わせることができる。特徴9には、特徴1から8の少なくとも1つを組み合わせることができる。特徴10には、特徴1から9の少なくとも1つを組み合わせることができる。
【0064】
以上に本出願の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0065】
ロボットアーム13及び検査ツール14は必須の構成要素ではなく、省略することができる。この場合、物体識別装置20は、パイプライン100の位置を特定して記憶する。
【0066】
上記実施形態では、処理装置22bが画像の生成及び物体の識別を行う。これに代えて、処理装置22bが画像の生成のみを行い、処理装置22b以外の機器が物体の識別を行ってもよい。
【0067】
上記実施形態では、AUV10の航行中にリアルタイムで物体識別装置20がパイプライン100を識別する。これに代えて、物体識別装置20は、AUV10の航行中は2次元画像を生成して記憶し、AUV10の寄港後にパイプライン100の識別を行ってもよい。
【0068】
上記実施形態では、移動体としてのAUV10に搭載される物体識別装置20及び画像生成装置22について説明したが、他の移動体に搭載されてもよい。例えば、車両、船舶、又は、飛行体に搭載されてもよい。また、移動体は自律移動体に限られず、オペレータが運転する移動体であってもよい。
【0069】
車両の例としては、工事現場又は農場等の作業現場を走行する自律走行車を挙げることができる。この自律走行車は、探知対象物としての側溝を検出して回避行動を行う。あるいは、自律走行車は、探知対象物としての側溝に沿って走行してもよい。側溝は長尺体の一例である。
【0070】
また、他の車両の例としては、農作業用の車両を挙げることができる。この車両は、畑に設けられた畝を検出して、畝に沿って作業を行いながら走行する。畝は、探知対象物であり、かつ、長尺体の一例である。また、探知対象物として、畝に設けられた作物を追加してもよい。この場合、この車両は、作物に対して薬剤の散布等の農作業を行うことができる。
【0071】
飛行体の例としては、ドローンを挙げることができる。このドローンは、壁又は天井に設けられた配管に沿って飛行して、配管を検査する。配管は、探知対象物であり、かつ、長尺体の一例である。また、探知対象物として、壁又は天井に設けられた空調機器を追加してもよい。この場合、このドローンは、空調機器に対してメンテナンス作業等を行うことができる。
【0072】
上記実施形態でAUV10を用いて説明した技術内容は、矛盾が生じない限り、他の移動体にも適用可能である。例えば、センサ21から入力された3次元点群データから特定の3次元点群データを抽出する処理を、上記の農作業用の車両に適用可能である。具体的には、最初は、処理装置22bは、センサ21から入力された3次元点群データのうち、上下方向の位置が畝の高さ以下の特定の3次元点群データを抽出する。これにより、特定の3次元点群データには、畝の上に生えている農作物があまり含まれないため、畝の形状を的確に検出できる。なお、畝の高さは既知であるが、3次元点群データに基づいて畝の高さを求めてもよい。次に、処理装置22bは、図3のフローチャートで示した処理を行い、畝の位置と長手方向を特定する。その後、処理装置22bは、畝の長手方向及び上下方向と平行であり、畝の幅方向の中央を通る境界平面を定める。処理装置22bは、左右の境界平面で挟まれる領域の3次元点群データを抽出し、抽出した特定の3次元点群データを、車両側面に平行な基準平面に射影して2次元画像を生成する。処理装置22bは、2次元画像に基づいて農作物の位置及び形状を識別する。
【0073】
上記実施形態では、探知対象物に長尺体が含まれているが、探知対象物に長尺体が含まれていなくてもよい。この場合、探知対象物に応じた向きの基準平面が適用されることが好ましい。例えば、探知対象物が特徴的な形状の面を有する場合、特徴的な形状の面に平行又は略平行の基準平面が適用されることが好ましい。
【0074】
上記実施形態では、1回のスキャンで2次元点群データを生成するセンサ21を用いるが、1回のスキャンで3次元点群データを生成するセンサ、例えば3次元LIDAR(Laser Imaging Detectiоn and Ranging)を用いてもよい。
【0075】
上記実施形態では、物体識別装置20及び画像生成装置22が移動体に搭載されるが、移動体以外の機器に搭載されてもよい。この場合、物体識別装置20は、1回のスキャンで3次元点群データを生成するセンサを備えることが好ましい。
【0076】
上記実施形態で示したフローチャートは一例であり、一部の処理を省略したり、一部の処理の内容を変更したり、新たな処理を追加したりしてもよい。
【0077】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するように構成又はプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、及び/又は、それらの組み合わせ、を含む回路又は処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路又は回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、又は手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、又は、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであっても良いし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラム又は構成されているその他の既知のハードウェアであっても良い。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、又はユニットはハードウェアとソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェア及び/又はプロセッサの構成に使用される。
【符号の説明】
【0078】
10 AUV(移動体)
11 本体
12 推進装置
13 ロボットアーム
14 検査ツール
15 制御装置
20 物体識別装置
21 センサ
22 画像生成装置
22a 入力部
22b 処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9