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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179842
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】車体前部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20231213BHJP
   B60R 19/24 20060101ALI20231213BHJP
   B60R 19/34 20060101ALI20231213BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20231213BHJP
   B60R 19/04 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
B62D25/08 D
B60R19/24 H
B60R19/34
B62D25/20 C
B60R19/04 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092689
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】中西 祥一朗
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB16
3D203CA24
3D203CA45
3D203CA54
3D203CB09
3D203DA22
(57)【要約】
【課題】軽衝突時のフロントサイドフレームの損傷を抑制しつつ、スモールオーバーラップ衝突時の衝撃吸収性能を一層向上する。
【解決手段】車体前部構造Sでは、軽衝突時に第1衝突荷重がガセット30に作用したときには、変形許容部36が変形してガセット本体32及び突当部38の後側への変位を許容する。これにより、第1衝突荷重を変形許容部36によって吸収でき、第1衝突荷重のフロントサイドフレーム12への伝達を抑制できる。一方、スモールオーバーラップ衝突時に第2衝突荷重がガセット30に作用したときには、変形許容部36が変形して、ガセット本体32及び突当部38の後側且つ車幅方向内側への変位を許容し、突当部38の後端38Eが、延出部34に車幅方向外側から当接する。これにより、突当部38の後端38Eをフロントサイドフレーム12に早期に当接させて、第2衝突荷重をフロントサイドフレーム12に伝達できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前部の車幅方向両側において車両前後方向に延在された一対のフロントサイドフレームと、
車幅方向に延在され、一対の前記フロントサイドフレームの車両前側端部に連結されると共に、車幅方向外側端部が前記フロントサイドフレームよりも車幅方向外側に配置されたバンパビームと、
前記フロントサイドフレームの車幅方向外側に設けられたガセットと、
を備え、
前記ガセットは、
平面視で車両後側へ向かうに従い車幅方向内側へ傾斜する方向に沿って延在され、前記バンパビームの車幅方向外側端部の車両後側に隣接して配置されたガセット本体と、
ガセット本体の後端部から車両後側へ延出され、前記フロントサイドフレームの車幅方向外側に隣接して配置され且つ前記フロントサイドフレームに固定された固定部を後端部に有する延出部と、
前記ガセット本体の後端部から車両後側へ延出され、前記延出部の車幅方向外側に配置された突当部と、
前記延出部の前後方向中間部に設けられ、車両後方側への第1衝突荷重が入力されたときに変形して前記ガセット本体及び前記突当部の車両後側への変位を許容し、前記第1衝突荷重よりも高い車両後方側への第2衝突荷重が入力されたときに変形して前記ガセット本体及び前記突当部の車幅方向内側への変位を許容して前記突当部を前記延出部に車幅方向外側から当接させる変形許容部と、
を含んで構成されている車体前部構造。
【請求項2】
前記変形許容部は、前記延出部に対して車幅方向外側へ隆起され、平面視で車幅方向内側へ開放された形状に形成されており、
前記第1衝突荷重が前記ガセットに入力されたときに、前記変形許容部が長手方向中間部を起点に車両前後方向内側に変形し、
前記第2衝突荷重が前記ガセットに入力されたときに、前記変形許容部が後端部を起点に車幅方向内側へ曲げ変形する請求項1に記載の車体前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の車体前部構造では、スペーサ(ガセット)が、バンパリインフォースメント(バンパビーム)の車幅方向外側端部から車両後側へ突出している。フロントサイドメンバ(フロントサイドフレーム)の車幅方向外側壁部には、車幅方向外側へ開放された凹部が形成され、凹部は、スペーサよりも車両後側に配置されている。そして、スモールオーバーラップ衝突時には、クラッシュボックスが圧縮変形して、スペーサが車両後側へ移動する。スペーサが車両後側へさらに移動すると、スペーサの後端部の係止部が、フロントサイドメンバの凹部の段差部に係止される。これにより、衝突荷重をスペーサによってフロントサイドメンバに伝達することができる。
【0003】
また、車両の軽衝突(低速での前面衝突)時には、スペーサがフロントサイドメンバに係止されず、クラッシュボックスのみが圧縮変形する。これにより、衝突荷重がフロントサイドメンバに伝達されないため、フロントサイドフレームの損傷を抑制できる。このため、例えば、車両の骨格を構成するフロントサイドフレームの交換を抑制できる。その結果、車両の軽衝突時における修理コストの増加を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-33960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記車体前部構造では、以下に示す点において、改善の余地がある。すなわち、上記車体前部構造では、上述のように、スモールオーバーラップ衝突では、クラッシュボックスの圧縮変形後に、スペーサがフロントサイドメンバに係止される。このため、スモールオーバーラップ衝突の初期では、スペーサがフロントサイドメンバに係止されるまで、衝突荷重がフロントサイドメンバに荷重されない。一方、スモールオーバーラップ衝突時では、早期に衝突荷重をフロントサイドメンバに伝達することで、スモールオーバーラップ衝突時の衝撃吸収性能を一層向上することができる。よって、上記車体前部構造では、スモールオーバーラップ衝突時の衝撃吸収性能を一層向上するという点において、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、軽衝突時のフロントサイドフレームの損傷を抑制しつつ、スモールオーバーラップ衝突時の衝撃吸収性能を一層向上することができる車体前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、車両の前部の車幅方向両側において車両前後方向に延在された一対のフロントサイドフレームと、車幅方向に延在され、一対の前記フロントサイドフレームの車両前側端部に連結されると共に、車幅方向外側端部が前記フロントサイドフレームよりも車幅方向外側に配置されたバンパビームと、前記フロントサイドフレームの車幅方向外側に設けられたガセットと、を備え、前記ガセットは、平面視で車両後側へ向かうに従い車幅方向内側へ傾斜する方向に沿って延在され、前記バンパビームの車幅方向外側端部の車両後側に隣接して配置されたガセット本体と、ガセット本体の後端部から車両後側へ延出され、前記フロントサイドフレームの車幅方向外側に隣接して配置され且つ前記フロントサイドフレームに固定された固定部を後端部に有する延出部と、前記ガセット本体の後端部から車両後側へ延出され、前記延出部の車幅方向外側に配置された突当部と、前記延出部の前後方向中間部に設けられ、車両後方側への第1衝突荷重が入力されたときに変形して前記ガセット本体及び前記突当部の車両後側への変位を許容し、前記第1衝突荷重よりも高い車両後方側への第2衝突荷重が入力されたときに変形して前記ガセット本体及び前記突当部の車幅方向内側への変位を許容して前記突当部を前記延出部に車幅方向外側から当接させる変形許容部と、を含んで構成されている車体前部構造である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の1又はそれ以上の実施形態によれば、軽衝突時のフロントサイドフレームの損傷を抑制しつつ、スモールオーバーラップ衝突時の衝撃吸収性能を一層向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態に係る車体前部構造が適用された車両の前部の左側部分を模式的に示す上側から見た平面図である。
図2図1に示される車両の前部の左側部分を示す左側から見た側面図である。
図3図1に示されるガセットの後端部を拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本実施形態に係る車体前部構造Sについて説明する。なお、図面に適宜示される矢印UPは、車体前部構造Sが適用された車両(自動車)Vの車両上側を示し、矢印FRは車両前側を示し、矢印LHは車両左側(車幅方向一方側)を示している。以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、車両上下方向、車両前後方向、車両左右方向を示すものとする。
【0011】
図1図3に示されるように、車体前部構造Sは、車両Vの前部に適用されている。また、車体前部構造Sは、車両Vの左右方向中央に対して左右対称に構成されている。このため、以下の説明では、車両Vの前部における左側部分の車体前部構造Sについて説明し、車両Vの前部における右側部分の車体前部構造Sについての説明は省略する。車体前部構造Sは、フロントサイドフレーム12と、バンパビーム20と、ガセット30と、を含んで構成されている。
【0012】
(フロントサイドフレーム12について)
フロントサイドフレーム12は、前後方向に延在された中空の略矩形柱状に形成され、車両Vの前部の車幅方向外側部分に配置されて、車両Vの前部の骨格を構成している。そして、車両Vの前部におけるフロントサイドフレーム12よりも車幅方向内側の空間が、車両VのパワーユニットPを収容するエンジンルームとして構成されている。フロントサイドフレーム12の前端部には、フランジ部12Aが形成されている。
【0013】
フロントサイドフレーム12の前側には、クラッシュボックス14が設けられている。クラッシュボックス14は、前後方向を軸方向とする略矩形筒状に形成されており、クラッシュボックス14の後端部には、フランジ部14Aが形成されている。フランジ部14Aは、フロントサイドフレーム12のフランジ部12Aと前後方向に対向して配置されて、フランジ部12Aに締結固定されている。また、クラッシュボックス14の車幅方向内側には、矩形枠状のラジエータサポート16が設けられている。
【0014】
(バンパビーム20について)
バンパビーム20は、車幅方向に延在されて、車両Vの前端部における骨格を構成している。バンパビーム20は、その長手方向から見て、略B字形状に形成されている。これにより、バンパビーム20は、上下一対の矩形閉断面を有する閉断面構造を成している。そして、クラッシュボックス14の前端部がバンパビーム20の車幅方向外側部分に連結されており、クラッシュボックス14とバンパビーム20との連結状態では、バンパビーム20の車幅方向外側端部20Aがクラッシュボックス14及びフロントサイドフレーム12よりも車幅方向外側へ突出している。これにより、バンパビーム20がフロントサイドフレーム12にクラッシュボックス14を介して間接的に連結されている。また、バンパビーム20は、平面視で、車幅方向中央部が前側へ凸となるように、略円弧状に湾曲している。
【0015】
(ガセット30について)
ガセット30は、鋼板によって構成されると共に、全体として中空の略矩形柱状に形成されている。ガセット30は、バンパビーム20の車幅方向外側端部20Aの後側に隣接配置されると共に、クラッシュボックス14及びフロントサイドフレーム12の前端部の車幅方向外側に配置されている。ガセット30は、平面視で、後側へ向かうに従い車幅方向内側へ傾斜する方向(図1の矢印A方向及び矢印B方向であり、以下、この方向を傾斜方向と称する)に沿って延在しており、ガセット30の前端部がクラッシュボックス14に対して車幅方向外側に離間して配置されている。ガセット30は、ガセット30の前部を構成するガセット本体32と、ガセット30の後端部を構成する延出部34と、ガセット本体32の後端部から傾斜方向一方側(図1の矢印A方向側)へ延出された突当部38と、を含んで構成されている。
【0016】
ガセット本体32は、傾斜方向を軸方向とする略矩形筒状に形成されている。具体的には、ガセット本体32は、上下方向を板厚方向とする上壁32Aと、上壁32Aの車幅方向内側端部から下側へ延出された内側壁32Bと、上壁32Aの車幅方向外側端部から下側へ延出された外側壁32Cと、内側壁32B及び外側壁32Cの下端部同士を連結する下壁32Dと、を含んで構成されている。そして、ガセット本体32の前端部が、バンパビーム20の車幅方向外側端部20Aの後側に隣接配置されて、バンパビーム20に接合等によって連結されている。なお、ガセット本体32の前端部を、図示しないステー等によってバンパビーム20に連結してもよい。また、バンパビーム20に支持部材を設けて、当該支持部材によって、ガセット本体32の前端部を支持するように構成してもよい。ガセット本体32における内側壁32Bの後端部は、フロントサイドフレーム12の前端部の車幅方向外側に近接して配置されている。
【0017】
延出部34は、車幅方向を板厚方向とし且つ前後方向を長手方向とする略長尺板状に形成されている。延出部34の前端部は、傾斜方向他方側へ屈曲されて、ガセット本体32の内側壁32Bの後端部に接続されている。これにより、延出部34が内側壁32Bから後側へ延出している。延出部34は、フロントサイドフレーム12の車幅方向外側に隣接配置されている。延出部34の後端部は、固定部34Aとして構成されている。そして、固定部34Aに形成された固定孔(図示省略)に車幅方向外側から挿入された固定ボルトBL(広義には、固定部材として把握される要素である)が、フロントサイドフレーム12の車幅方向外側の壁部に設けられたナットNに螺合されて、固定ボルトBLによって固定部34Aがフロントサイドフレーム12に締結固定されている。
【0018】
延出部34の前後方向中間部(前端部と固定部34Aとの間)には、変形許容部36が形成されている。変形許容部36は、平面視で、延出部34に対して車幅方向外側へ隆起し且つ車幅方向内側へ開放された略U字形板状に形成されており、変形許容部36における前端部及び後端部が、延出部34にそれぞれ接続されている。すなわち、延出部34では、変形許容部36の前端部において車幅方向外側へ略90度に折り曲げられ、変形許容部36の長手方向中間部において車幅方向内側へ略180度に折り返されて、変形許容部36の後端部において後側へ略90度に折り曲げられている。変形許容部36の長手方向中間部(前後方向中間部)は、第1屈曲部36Aとして構成され、第1屈曲部36Aは、平面視で車幅方向内側へ開放された略半円状に形成されている。また、変形許容部36の後端部は、第2屈曲部36Bとして構成されている。ここで、変形許容部36は略U字形状としたがこれに限らず、平面視で、延出部34に対して車幅方向外側へ隆起し且つ車幅方向内側へ開放された形状であればよい。
【0019】
そして、詳細については後述するが、車両Vの前面衝突における軽衝突(例えば、時速略10km/hでの衝突体との前面衝突)時に、後側への第1衝突荷重がバンパビーム20に入力されたときには、ガセット30の変形許容部36が、第1屈曲部36Aを起点に曲げ変形して、前後方向に圧縮するように構成されている。すなわち、車両Vの軽衝突時に変形許容部36が第1屈曲部36Aを起点に曲げ変形するように、変形許容部36における第1屈曲部36Aの機械的強度が設定されている。これにより、車両Vの軽衝突時では、変形許容部36によって、ガセット本体32のフロントサイドフレーム12に対する後側への相対変位を許容するようになっている。
【0020】
また、車両Vの前面衝突におけるスモールオーバーラップ衝突時に、後側への第2衝突荷重がバンパビーム20の車幅方向外側端部20Aに入力されたときには、ガセット30の変形許容部36が、第2屈曲部36Bを起点として曲げ変形し、平面視で後側且つ車幅方向内側へ倒れるように設定されている。すなわち、車両Vのスモールオーバーラップ衝突時に変形許容部36が第2屈曲部36Bを起点に曲げ変形するように、変形許容部36における第2屈曲部36Bの機械的強度が設定されている。これにより、車両Vのスモールオーバーラップ衝突では、変形許容部36によって、ガセット本体32の車幅方向内側(詳しくは、後側且つ車幅方向内側)への変位を許容するようになっている。なお、第2衝突荷重は、車両Vのスモールオーバーラップ衝突時にバンパビーム20の車幅方向外側端部20Aに入力される衝突荷重を想定しているため、第2衝突荷重が第1衝突荷重よりも高い荷重値となっている。
【0021】
突当部38は、ガセット本体32の上壁32A、外側壁32C、及び下壁32Dから傾斜方向一方側へ延出している。すなわち、突当部38は、傾斜方向一方側から見て、車幅方向内側へ開放された略U字形状に形成されている。突当部38は、ガセット本体32の上壁32Aから延出された上側突当片38Aと、ガセット本体32の外側壁32Cから延出された外側突当片38Bと、ガセット本体32の下壁32Dから延出された下側突当片38Cと、を有しており、上側突当片38A及び下側突当片38Cの車幅方向外側端部同士が、外側突当片38Bによって連結されている。突当部38は、平面視で、延出部34の車幅方向外側に配置されている。ここで、変形許容部36は略U字形状としたがこれに限らず、傾斜方向一方側から見て、車幅方向内側へ開放された形状であればよい。
【0022】
上側突当片38A及び下側突当片38Cの車幅方向内側部分には、切欠部38Dが形成されている。切欠部38Dは、平面視で、車幅方向内側へ開放された略円弧状に形成されており、切欠部38Dの車幅方向内側に変形許容部36が配置されている。また、突当部38の後端38Eは、平面視で、後側へ向かうに従い車幅方向外側へ傾斜しており、延出部34の後部(変形許容部36よりも後側部分)に対して車幅方向外側に離間して配置されている。すなわち、突当部38の後端38Eと延出部34との間には、車幅方向において所定の間隙Gが形成されている。
【0023】
そして、車両Vの軽衝突時に変形許容部36が第1屈曲部36Aを起点に曲げ変形し、ガセット本体32がフロントサイドフレーム12に対して後側へ相対変位するときには、切欠部38Dによって突当部38と変形許容部36との干渉を抑制するように、切欠部38Dの形状が設定されている。また、車両Vのスモールオーバーラップ衝突時に変形許容部36が第2屈曲部36Bを起点に曲げ変形し、ガセット本体32が後側且つ車幅方向内側へ変位するときには、突当部38の後端38Eが、延出部34の後部に車幅方向外側から当接するように構成されている。また、このときには、切欠部38Dによって突当部38と変形許容部36との干渉を抑制するように、切欠部38Dの形状が設定されている。
【0024】
(作用及び効果について)
次に、衝突体との軽衝突時及びスモールオーバーラップ衝突時における車体前部構造Sの挙動を説明しつつ、本実施の形態の作用及び効果について説明する。
【0025】
(軽衝突時について)
車両Vの衝突体との前面衝突における軽衝突時には、車両後側への第1衝突荷重がバンパビーム20に入力される。このため、後側への第1衝突荷重が、クラッシュボックス14及びガセット本体32に入力される。これにより、クラッシュボックス14が前後方向に圧縮変形して、第1衝突荷重を吸収する。よって、第1衝突荷重がクラッシュボックス14からフロントサイドフレーム12の前端部に伝達されることを抑制できる。
【0026】
また、このときには、第1衝突荷重がバンパビーム20からガセット本体32に入力される。このため、第1衝突荷重によって、ガセット30の変形許容部36が、第1屈曲部36Aを起点に曲げ変形して、前後方向に圧縮する。すなわち、変形許容部36の前部が後側へ変位して(図3の矢印D参照)、ガセット本体32及び突当部38がフロントサイドフレーム12に対して後側へ相対変位する(図3において、1点鎖線にて示されるガセット30を参照)。これにより、突当部38のフロントサイドフレーム12からの離間状態が維持されて、突当部38がフロントサイドフレーム12に衝突することを抑制できる。また、このときには、変形許容部36の第1屈曲部36Aが変形することで、ガセット30に入力された第1衝突荷重が変形許容部36によって吸収される。したがって、第1衝突荷重がガセット30の固定部34Aからフロントサイドフレーム12に伝達されることを抑制できる。以上により、軽衝突時におけるフロントサイドフレーム12の損傷を抑制できる。
【0027】
(スモールオーバーラップ衝突について)
車両Vの衝突体とのスモールオーバーラップ衝突では、衝突体Cが、主として、バンパビーム20の車幅方向外側端部20Aに衝突する(図1参照)。このため、後側への第2衝突荷重がバンパビーム20の車幅方向外側端部20Aに入力される。これにより、主として、バンパビーム20の車幅方向外側端部20Aが、クラッシュボックス14の連結部位を起点に後側へ折れ曲がるように変形する。
【0028】
また、車幅方向外側端部20Aに入力された第2衝突荷重は、ガセット30に入力されて、ガセット本体32に沿って傾斜方向一方側(後方側)へ伝達される。このため、ガセット30の変形許容部36が、第2屈曲部36Bを起点として曲げ変形して、後側且つ車幅方向内側へ倒れる(図3の矢印E参照)。これにより、ガセット本体32及び突当部38が、後側且つ車幅方向内側に変位して、突当部38の後端38Eが、延出部34の後部に車幅方向外側から突き当たる。詳しくは、突当部38が、平面視で、第2屈曲部36Bを中心に車幅方向内側へ回動して、突当部38の後端38Eが、延出部34の後部に突き当たる(図3において、2点鎖線にて示されるガセット30を参照)。このため、ガセット本体32及び突当部38が、フロントサイドフレーム12によって支持されるようになる。これにより、スモールオーバーラップ衝突時において、衝突体Cに対する反力を、ガセット30及びバンパビーム20から有効に作用させることができる。また、このときには、第2衝突荷重がガセット本体32及び突当部38よってフロントサイドフレーム12に伝達される。これにより、第2衝突荷重をフロントサイドフレーム12によって吸収することができる。なお、第2衝突荷重は、第1衝突荷重よりも高いため、車両Vの衝突体とのスモールオーバーラップ衝突時には、変形許容部36の第1屈曲部36Aも変形する。すなわち、スモールオーバーラップ衝突時には、変形許容部36の前部が後部に接近しつつ、第2屈曲部36Bを起点として曲げ変形する。
【0029】
また、ガセット本体32は、平面視で車両後側へ向かうに従い車幅方向内側へ傾斜する方向に沿って延在している。このため、突当部38の延出部34への当接後に、衝突体Cが車両Vに対して後側へさらに侵入すると、フロントサイドフレーム12が突当部38との当接部位を起点として、車幅方向内側へ折れ曲がる。これにより、フロントサイドフレーム12の折れ曲がり部が、パワーユニットPに当たり、パワーユニットPからの反力が、ガセット30を介して衝突体Cに作用する。以上により、スモールオーバーラップ衝突では、ガセット30によって第2衝突荷重をフロントサイドフレーム12に早期に伝達させることができると共に、衝突体Cに対する反力を有効に作用させることができる。
【0030】
以上、説明したように、車体前部構造Sでは、ガセット本体32が、バンパビーム20の車幅方向外側端部20Aの後側で且つフロントサイドフレーム12の車幅方向外側において、傾斜方向に延在されている。また、ガセット30の延出部34がガセット本体32の後端部から後側へ延出しており、延出部34の固定部34Aがフロントサイドフレーム12の車幅方向外側壁部に締結固定されている。ここで、ガセット30では、突当部38が、ガセット本体32の後端部から後側(傾斜方向一方側)へ延出しており、延出部34の車幅方向外側に配置されている。また、延出部34の前後方向中間部には、変形許容部36が設けられている。そして、車両Vの軽衝突時にバンパビーム20に入力される第1衝突荷重がガセット30に作用したときには、変形許容部36が変形してガセット本体32及び突当部38の後側への変位を許容する。これにより、上述したように、車両Vの軽衝突時において、第1衝突荷重を変形許容部36によって吸収することができると共に、第1衝突荷重のフロントサイドフレーム12への伝達を抑制することができる。よって、軽衝突時におけるフロントサイドフレーム12の損傷を抑制できる。一方、スモールオーバーラップ衝突時にバンパビーム20に入力される第2衝突荷重がガセット30に作用したときには、変形許容部36が変形して、ガセット本体32及び突当部38の後側且つ車幅方向内側への変位を許容する。また、このときには、突当部38の後端38Eが、延出部34の後部に車幅方向外側から当接する(突き当たる)。すなわち、スモールオーバーラップ衝突時には、変形許容部36の曲げ変形に連動して突当部38が車幅方向内側に変位するため、突当部38と延出部34との間の間隙Gを適切に設定することで、突当部38の後端38Eをフロントサイドフレーム12に早期に当接させて、第2衝突荷重をフロントサイドフレーム12に伝達することができる。以上により、本実施形態の車体前部構造Sによれば、軽衝突時のフロントサイドフレーム12の損傷を抑制しつつ、スモールオーバーラップ衝突時の衝撃吸収性能を一層向上することができる。
【0031】
また、変形許容部36は、平面視で、延出部34に対して車幅方向外側へ隆起され、車幅方向内側へ開放されたU字形板状に形成されている。そして、軽衝突時に第1衝突荷重がガセット30に入力されたときには、変形許容部36が長手方向中間部の第1屈曲部36Aを起点に車両前後方向内側に変形して、ガセット本体32及び突当部38の後側への変位が許容される。一方、スモールオーバーラップ衝突時に第2衝突荷重がガセット30に入力されたときに、変形許容部36が後端部の第2屈曲部36Bを起点に曲げ変形して、ガセット本体32及び突当部38の後側且つ車幅方向内側への変位が許容される。すなわち、ガセット本体32から後側へ延出された板状の延出部34に、曲げ加工によって形成された変形許容部36を設けることで、衝突形態に応じたガセット本体32及び突当部38の挙動を変更することができる。したがって、簡易な構成で、軽衝突時のフロントサイドフレーム12の損傷を抑制しつつ、スモールオーバーラップ衝突時の衝撃吸収性能を一層向上することができる。
【0032】
なお、本実施の形態では、変形許容部36を含む延出部34の幅寸法(上下方向の寸法)や板厚寸法を特に規定していないが、軽衝突時及びスモールオーバーラップ衝突時における変形許容部36の曲げ変形状態に応じて、延出部34の幅寸法(上下方向の寸法)や板厚寸法を適宜設定可能である。例えば、変形許容部36の第1屈曲部36A及び第2屈曲部36Bにおける幅寸法や板厚寸法を適宜変更して、変形許容部36の第1屈曲部36A及び第2屈曲部36Bにおける機械的強度を適宜設定することができる。
【0033】
また、本実施の形態では、変形許容部36の前後方向の寸法(変形許容部36の前部と後部との前後方向の離間距離)について、特に規定していないが、軽衝突時における変形許容部36の変形状態に応じて、変形許容部36の前後方向の寸法を適宜設定可能である。
【符号の説明】
【0034】
12 フロントサイドフレーム
20 バンパビーム
20A 車幅方向外側端部
30 ガセット
32 ガセット本体
34 延出部
36 変形許容部
38 突当部
S 車体前部構造
図1
図2
図3