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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179847
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】人工血管
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/06 20130101AFI20231213BHJP
   A61F 2/07 20130101ALI20231213BHJP
【FI】
A61F2/06
A61F2/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092699
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小林 遼平
(72)【発明者】
【氏名】岡田 拓磨
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA15
4C097BB01
4C097CC02
4C097CC11
4C097DD04
4C097EE08
4C097MM04
(57)【要約】
【課題】トランスロケート法において、分枝管の根元におけるキンクの発生を好適に抑制することのできる人工血管を提供する。
【解決手段】人工血管1は、側面に開口12を有する本管10と、本管の開口に接続されるとともに、少なくとも、繊維を主材料とした第1層と、熱可塑性エラストマーを含み第1層よりも外側に配置された第2層と、繊維を主材料とした第2層よりも外側に配置された第3層を含む層構造を備える分枝管と、を有し、分枝管は、分枝管の表面全体に、前記分枝管の軸方向に沿って複数のクリンプが連続することで凹凸を繰り返すように形成されたクリンプ部23を備え、自然状態での前記分枝管の前記クリンプ部の各クリンプの圧縮比は、少なくとも、前記本管の前記開口から前記分枝管の前記軸方向に自然状態で30mmまでの範囲である前記分枝管の根元近傍部において、1.4~2.0である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面に開口を有する本管と、
前記本管の前記開口に接続されるとともに、少なくとも、繊維を主材料とした第1層と、熱可塑性エラストマーを含み前記第1層よりも外側に配置された第2層と、繊維を主材料とし、前記第2層よりも外側に配置された第3層を含む層構造を備える分枝管と、を有し、
前記分枝管は、前記分枝管の表面全体に、前記分枝管の軸方向に沿って複数のクリンプが連続することで凹凸を繰り返すように形成されたクリンプ部を備え、
自然状態での前記分枝管の前記クリンプ部の各クリンプの圧縮比は、少なくとも、前記本管の前記開口から前記分枝管の前記軸方向に自然状態で30mmまでの範囲である前記分枝管の根元近傍部において、1.4~2.0である、人工血管。
【請求項2】
120mmHgの圧力下における、前記分枝管の前記クリンプ部の各クリンプの圧縮比は、少なくとも前記分枝管の前記根元近傍部において、1.18~1.44である、請求項1に記載の人工血管。
【請求項3】
前記分枝管は、前記本管に対して傾斜する方向に接続されている、請求項1に記載の人工血管。
【請求項4】
前記分枝管の前記根元近傍部の外周に配置されるリング部をさらに有する、請求項1に記載の人工血管。
【請求項5】
前記分枝管の前記層構造は、前記繊維の編み管状体を前記第1層として、前記繊維の織り管状体を前記第3層として、それぞれ有する、請求項1に記載の人工血管。
【請求項6】
前記本管は、前記分枝管と同一の層構造を備える、請求項1に記載の人工血管。
【請求項7】
自然状態での前記分枝管の前記クリンプ部の各クリンプの圧縮比は、前記分枝管の全体に亘って、1.4~2.0である、請求項1に記載の人工血管。
【請求項8】
自然状態での前記分枝管の前記クリンプ部の各クリンプの圧縮比は、前記分枝管の全体に亘って、略均一である、請求項7に記載の人工血管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工血管に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の疾病などにより、生体の血管、特に大動脈のような太い血管を人工血管に置き換える必要がある場合がある。このような人工血管としては、本管と、本管に接続された分枝管と、を有するものが知られている(例えば下記の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、弓部大動脈置換術においてトランスロケート法が増えている。この方法は、オープンステントやエレファントトランクを併用した低侵襲な治療の際に、末梢側吻合をより近位側で行うことができ、また十分なランディングゾーンを確保することができるというメリットがある。一方で、トランスロケート法を用いることで、分枝管が長くなるとともにその根本が吻合先の血管に向けて急峻な角度で曲がる構成となり、分枝管の根元においてキンクが発生する可能性がある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、トランスロケート法において、分枝管の根元におけるキンクの発生を好適に抑制することのできる人工血管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明に係る人工血管は、側面に開口を有する本管と、前記本管の前記開口に接続されるとともに、少なくとも、繊維を主材料とした第1層と、熱可塑性エラストマーを含み前記第1層よりも外側に配置された第2層と、繊維を主材料とし、第2層よりも外側に配置された第3層を含む層構造を備える分枝管と、を有し、前記分枝管は、前記分枝管の表面全体に、前記分枝管の軸方向に沿って複数のクリンプが連続することで凹凸を繰り返すように形成されたクリンプ部を備え、自然状態での前記分枝管の前記クリンプ部の各クリンプの圧縮比は、少なくとも、前記本管の前記開口から前記分枝管の前記軸方向に自然状態で30mmまでの範囲である前記分枝管の根元近傍部において、1.4~2.0である。
【発明の効果】
【0007】
上記のように構成した人工血管によれば、自然状態での分枝管のクリンプ部の各クリンプの圧縮比は、少なくとも、本管の開口から分枝管の軸方向に自然状態で30mmまでの範囲である分枝管の根元近傍部において、1.4~2.0であるため、トランスロケート法において、分枝管の根元におけるキンクの発生を好適に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る人工血管を示す図である。
図2】本実施形態に係る人工血管の分枝管を示す図である。
図3】比較例に係る分枝管の根元において、キンクが生じる様子を示す図である。
図4】キンクの発生の有無の試験方法を説明するための写真である。
図5】変形例1に係る人工血管を示す図である。
図6】変形例2に係る人工血管を示す図である。
図7】変形例3に係る人工血管を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の記載は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0010】
以下、図1図2を参照して、本実施形態に係る人工血管1を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る人工血管1を示す図である。図2は、本実施形態に係る人工血管1の分枝管20を示す図である。
【0011】
人工血管1は、図1に示すように、側面に開口12を有する本管10と、本管10の開口12に接続される4つの分枝管20と、を有する。
【0012】
<本管10>
図1に示すように、本管10は、本管10の延在方向に延びる内腔14を有する管状の部材である。本管10の延在方向の両端には開口部16、17が形成されている。本管10は、本管10の表面に形成された凹凸状のクリンプ部13を有する。クリンプ部13は、本管10の延在方向に沿って凹凸が繰り返された波状の断面形状を有する。
【0013】
本管10は、例えば、第1層(内層)、第2層(中層)、および第3層(外層)を少なくとも備える多層構造の管状部材で構成することができる。
【0014】
第1層は、例えば、編み管状体で構成することができる。第1層は、繊維(例えば、ポリエステル)を主材料として構成することができる。
【0015】
第2層は、例えば、無孔質の管状体で構成することができる。第2層は、熱可塑性エラストマー(例えば、スチレン系エラストマー)で構成することができる。
【0016】
第3層は、例えば、織り管状体で構成することができる。第3層は、繊維(例えば、ポリエステル)を主材料として構成することができる。
【0017】
本管10を構成する層の数、各層の厚み、構造等については、特に制限されない。
【0018】
図1に示すように、本管10の開口12には分枝管20が接続されている。本管10の側面には4つの開口12が形成されている。
【0019】
本管10に接続される分枝管20の個数は特に限定されない。本管10に形成される開口12の個数および位置等は、本管10に接続する分枝管20の個数および位置等に合わせて適宜変更することができる。
【0020】
<分枝管>
本実施形態では、4つの分枝管20は略同一の構成を有する。分枝管20は、本管10に固定されている。分枝管20の本管10に対する固定方法は、特に限定されないが、例えば、WO2021065039に記載された方法など、公知の方法が用いられる。
【0021】
分枝管20は、図1に示すように、分枝管20の延在方向に延びる内腔24を有する管状の部材である。分枝管20の延在方向の両端には開口部26、27が形成されている。
【0022】
分枝管20は、開口部27が形成された側が本管10と接続されている。分枝管20は、図1図2に示すように、分枝管20の表面全体に、分枝管20の軸方向に沿って複数のクリンプが連続することで凹凸を繰り返すように形成されたクリンプ部23を有する。
【0023】
本実施形態において、自然状態での分枝管20のクリンプ部23の各クリンプの圧縮比は、分枝管20の全体に亘って、1.4~2.0である。ここで圧縮比とは、図2に示すように、分枝管20の軸方向に沿ったクリンプ1つ分の基材長(クリンプ前の直線時の長さ)L1を、分枝管20の軸方向に沿ったクリンプ1つ分のクリンプ長L2で割った値である。このように、圧縮比を分枝管20の全体に亘って、1.4~2.0とすることによって、分枝管20の根元だけでなく全体に亘ってキンクの発生を抑制することができる。
【0024】
また、本実施形態において、自然状態での分枝管20のクリンプ部23の各クリンプの圧縮比は、分枝管20の全体に亘って、略均一である。この構成によれば、分枝管20に作用する応力が、分枝管20の全体に均一に分散しやすくなるため、キンクの発生をより好適に抑制することができる。
【0025】
本発明者らは、自然状態での分枝管20のクリンプ部23の各クリンプの圧縮比を1.4~2.0にすることによって、トランスロケート法において、分枝管20の根元におけるキンクの発生を好適に抑制することを発見した。
【0026】
ここで、圧縮比が1.4未満の場合、図3に示すように、キンクが発生する可能性がある。一方、圧縮比が2.0より大きい場合、クリンプ部23の凹凸形状が好適に形成されない可能性がある。
【0027】
また、120mmHgの圧力下における分枝管20のクリンプ部23の各クリンプの圧縮比は、分枝管20の全体に亘って、1.18~1.44であることが好ましい。この構成によれば、分枝管20の根元におけるキンクの発生をより好適に抑制することができる。
【0028】
分枝管20は、本管10よりも小さな内径及び外径を有する。
【0029】
分枝管20は、例えば、第1層(内層)、第2層(中層)、および第3層(外層)を少なくとも備える多層構造の管状部材で構成することができる。
【0030】
第1層は、例えば、編み管状体で構成することができる。第1層は、繊維(例えば、合成繊維であるポリエステルや天然繊維であるシルク)を主材料として構成することができる。
【0031】
第2層は、例えば、無孔質の管状体で構成することができる。第2層は、熱可塑性エラストマー(例えば、スチレン系エラストマー)で構成することができる。
【0032】
第3層は、例えば、織り管状体で構成することができる。第3層は、繊維(例えば、合成繊維であるポリエステルや天然繊維であるシルク)を主材料として構成することができる。
【0033】
分枝管20は、図1に示すように、本管10に対して、傾斜する方向に接続されている。分枝管20の本管10に対する傾斜角度は、40~50度であることが好ましい。このように、分枝管20が本管10に対して傾斜するように接続されることによって、トランスロケート法において、分枝管20の根元におけるキンクの発生をより好適に抑制することができる。
【0034】
また、分枝管20の外周には、図1に示すように、リング部30が配置される。リング部30は、分枝管20のうち本管10に近い側に配置される。具体的には、リング部30は、分枝管20の根元近傍部20Aの外周に配置される。ここで、根元近傍部20Aとは、本管10の開口12から分枝管20の軸方向に自然状態で30mmまでの範囲と定義される。リング部30は、クリンプ部23の凹部に嵌合するように配置される。
【0035】
リング部30を構成する材料としては、特に限定されないが、ステンレスなどを用いることができる。このように分枝管20の外周にリング部30が配置されることによって、トランスロケート法において、分枝管20の根元におけるキンクの発生をより好適に抑制することができる。
【0036】
以上のように構成された人工血管1は、例えば下記の製造方法によって製造することができる。
【0037】
まず、軸方向に等間隔にクリンプ部(蛇腹)13が形成されるように、上述した3層から構成される直線状の基材を軸方向に圧縮し、圧縮した状態で基材に熱を加えて蛇腹状のクリンプ部13を定着させて、本管10を製造する。
【0038】
次に、軸方向に等間隔にクリンプ部(蛇腹)23が形成されるように、上述した3層から構成される直線状の基材を軸方向に圧縮し、圧縮した状態で基材に熱を加えて蛇腹状のクリンプ部23を定着させて、分枝管20を製造する。
【0039】
次に、公知の方法で、分枝管20を本管10に固定する。以上の工程によって、本実施形態に係る人工血管1を製造することができる。
【0040】
<実施例>
次に、本発明の効果を実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに限定されるわけではない。
【0041】
<試験方法>
図4に示すように、ISO7198に準拠し、検体内腔にRO水を充填して100mmHgに加圧した状態で、マンドレルMに沿わせてキンクの発生の有無を確認した。このとき、マンドレルMの半径を順々に小さくしていき、キンクが発生したマンドレルの半径をキンク半径とした。すなわち、キンク半径が小さいほど、耐キンク性能が高いことになる。例えば図4に示すように、5.5mmのマンドレルMに沿わせた際にキンクが発生した場合、キンク半径は5.5mmとなる。
【0042】
実施例1として、直径10mm、圧縮比が1.63~1.71(10クリンプ長:19~20mm)の人工血管を5つ準備した。実施例2として、直径10mm、圧縮比が1.41(10クリンプ長:23mm)の人工血管を5つ準備した。実施例3として、直径8mm、圧縮比が1.63~1.71(10クリンプ長:19~20mm)の人工血管を5つ準備した。実施例4として、直径8mm、圧縮比が1.41(10クリンプ長:23mm)の人工血管を5つ準備した。比較例1として、直径10mm、圧縮比が1.16~1.35(10クリンプ長:24~28mm)の人工血管を5つ準備した。比較例2として、直径8mm、圧縮比が1.16~1.35(10クリンプ長:24~28mm)の人工血管を5つ準備した。なお、実施例1~4および比較例1、2の人工血管の基材長は、すべて3.25mmである。また、実施例1~4において、投影機を用いて側方から見た場合の自然状態におけるクリンプ高さは、1.5~1.9mmであった。
【0043】
各実施例および各比較例に係る人工血管のキンク半径を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
表1において、「<2」は、マンドレルの最小半径である2mmでもキンクが生じなかったことを意味する。
【0046】
表1から、直径が8mmおよび10mm、いずれの場合であっても、圧縮比が1.41および1.63~1.71の場合、キンクの発生が抑制されることが分かった。
【0047】
<加圧時の圧縮比の測定>
次に、各実施例および各比較例に係る人工血管において、120mmHgで加圧したときの圧縮比を測定した。測定方法としては、人工血管に対して標線を付けて、加圧前後で同一か所の10クリンプ分の長さをスケールで測定した。測定箇所としては、2~8点において測定を行った。圧縮比としては、基材長である3.25mmを上述した測定方法で測定したクリンプ長で割ることによって算出した。測定結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
表2から、120mmHGの圧力下における、分枝管20のクリンプ部23の圧縮比が1.18~1.44であるときに、キンクの発生をより好適に抑制することができることが分かった。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係る人工血管1は、側面に開口12を有する本管10と、本管10の開口12に接続されるとともに、少なくとも、繊維を主材料とした第1層と、熱可塑性エラストマーを含み第1層よりも外側に配置された第2層と、繊維を主材料とし、第2層よりも外側に配置された第3層を含む層構造を備える分枝管20と、を有し、分枝管20は、分枝管20の表面全体に、分枝管20の軸方向に沿って複数のクリンプが連続することで凹凸を繰り返すように形成されたクリンプ部23を備え、自然状態での分枝管20のクリンプ部23の各クリンプの圧縮比は、少なくとも、本管10の開口12から分枝管20の軸方向に自然状態で30mmまでの範囲である分枝管20の根元近傍部20Aにおいて、1.4~2.0である。このように構成された人工血管1によれば、分枝管20の根元におけるキンクの発生を好適に抑制することができる。
【0051】
また、120mmHgの圧力下における、分枝管20のクリンプ部23の各クリンプの圧縮比は、少なくとも分枝管20の根元近傍部20Aにおいて、1.18~1.44である。このように構成された人工血管1によれば、分枝管20の根元におけるキンクの発生をより好適に抑制することができる。
【0052】
また、分枝管20は、本管10に対して傾斜する方向に接続されている。このように構成された人工血管1によれば、分枝管20の根元におけるキンクの発生をより好適に抑制することができる。
【0053】
また、人工血管1は、分枝管20の根元近傍部20Aの外周に配置されるリング部30をさらに有する。このように構成された人工血管1によれば、分枝管20の根元におけるキンクの発生をより好適に抑制することができる。
【0054】
また、分枝管20の層構造は、繊維の編み管状体を第1層として、繊維の織り管状体を第3層として、それぞれ有する。このように構成された人工血管1によれば、人工血管1の分枝管20に耐キンク性を維持させつつ、より高い耐圧性を付与することができる。
【0055】
また、本管10は、分枝管20と同一の層構造を備える。このように構成された人工血管1によれば、人工血管1の本管10に耐キンク性を維持させつつ、より高い耐圧性を付与することができる。
【0056】
以上、実施形態を通じて本発明に係る人工血管1を説明したが、本発明は実施形態において説明した構成に限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0057】
例えば上述した実施形態では、分枝管20は、本管10に対して傾斜する方向に接続されていた。しかしながら、図5に示すように、分枝管120は、本管10に対して直交する方向に接続されていてもよい。また、分枝管120のうち、本管10の径方向において異なる向きに延びている1本(図1において右斜め下方に延びている1本)は、弓部大動脈置換術時の人工心肺などからの送血に用いるため、この1本のみが本管10に対して直交する方向に接続されていてもよい。
【0058】
また、上述した実施形態では、人工血管1は、分枝管20の外周に配置されるリング部30を有していた。しかしながら、図6に示すように、人工血管2は、リング部を有しない構成であってもよい。さらに、図7に示すように、人工血管3は、リング部を有さず、かつ、分枝管120が本管10に対して直交する方向に接続される構成であってもよい。
【0059】
また、上述した実施形態では、自然状態での分枝管20のクリンプ部23の各クリンプの圧縮比は、分枝管20の全体に亘って、1.4~2.0であった。しかしながら、自然状態での分枝管20のクリンプ部23の各クリンプの圧縮比は、少なくとも根元近傍部20Aにおいて、1.4~2.0であれば、分枝管20の全体に亘って、1.4~2.0でなくてもよい。
【0060】
また、上述した実施形態では、胸部に用いられる人工血管を例に挙げて説明したが、本発明の人工血管は腹部にも用いることができる。さらに、人工血管およびステントグラフトを組み合わせていわゆるオープンステントグラフトにも用いることができる。
【符号の説明】
【0061】
1、2 人工血管、
10 本管、
12 開口、
20、120 分枝管、
23 クリンプ部、
30 リング部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7