(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179853
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】スタータ
(51)【国際特許分類】
F02N 11/00 20060101AFI20231213BHJP
H02K 7/10 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
F02N11/00 U
F02N11/00 V
H02K7/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092711
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 佑介
(72)【発明者】
【氏名】稲谷 展也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健介
【テーマコード(参考)】
5H607
【Fターム(参考)】
5H607AA05
5H607BB01
5H607BB04
5H607BB14
5H607DD08
5H607FF02
5H607JJ10
(57)【要約】
【課題】スタータの組立作業において、ガスケットの捻れが発生しにくく、また、捻れがあっても、外観検査ですぐに発見できる構造を持ったスタータを得ること。
【解決手段】センターハウジングのシール面とフロントハウジングのシール面との間、および電磁スイッチのシール面と前記フロントハウジングのシール面との間に装着されたガスケットを備え、前記ガスケットは、前記センターハウジングのシール面と前記フロントハウジングのシール面をシールする第一のシール部、および前記電磁スイッチのシール面と前記フロントハウジングのシール面をシールする第二のシール部、および前記第一のシール部と前記第二のシール部を結合する結合部を有しており、前記第一のシール部は、断面がL字形状を有し、そのL字形状の一方の辺が前記センターハウジングの外周面に張り出すようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転力を発生するモータ部、前記モータ部の出力をエンジンに接続する電磁スイッチ、および前記モータ部の出力を伝達する伝達機構を収容するセンターハウジングと、
エンジン側に設けられ、前記センターハウジングおよび前記電磁スイッチを保持するフロントハウジングと、
前記センターハウジングのシール面と前記フロントハウジングのシール面との間、および前記電磁スイッチのシール面と前記フロントハウジングのシール面との間に装着されたガスケットと、を備えたスタータであって、
前記ガスケットは、前記センターハウジングのシール面と前記フロントハウジングのシール面をシールする第一のシール部、および前記電磁スイッチのシール面と前記フロントハウジングのシール面をシールする第二のシール部、および前記第一のシール部と前記第二のシール部を結合する結合部を有しており、
前記第一のシール部は、断面がL字形状を有し、そのL字形状の一方の辺が前記センターハウジングの外周面に張り出し、他方の辺が前記センターハウジングのシール面と前記フロントハウジングのシール面との間に挟持されていることを特徴とするスタータ。
【請求項2】
前記ガスケットの前記結合部には突出部が設けられ、前記センターハウジングに設けられた穴部と嵌合していることを特徴とする請求項1に記載のスタータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、モータでエンジンを始動するスタータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンを始動するスタータにおいて、電磁スイッチがプランジャを吸引する力を利用して、シフトレバーを回動させ、出力軸と一体的に設けられたピニオンがシフトレバーによって軸方向に押し出されてリングギヤに噛合してエンジンを始動させ、エンジンの始動後にはピニオンをリングギヤから離脱させるという構造が多く採用されている。
エンジンへの取り付け面を有するハウジングの反エンジン側開口部は、モータと電磁スイッチとシフトレバーが取り付けられるように、それぞれを挿入するための開口部が一体となった略瓢箪形の複雑な形状となっており、シフトレバー挿入のための開口部はレバー挿入後に防水性を確保する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1のスタータのように、ハウジングがフロントハウジングとセンターハウジングに分割され、フロントハウジングとセンターハウジングをシールする第1輪部、及びフロントハウジングと電磁スイッチをシールする第2輪部、それらを繋ぐ結合部から構成された略瓢箪形のゴム製ガスケットを用いて防水性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構造において、ガスケットの第1輪部をセンターハウジング外側段差部に組み付ける際、第1輪部はセンターハウジング周方向に対して締め代をもっているために、第1輪部を径方向外側へ拡げながら装着される。このように組付けられる際に、断面略円形の第1輪部は、輪の径が大きいこともあり、装着時に捻れてしまう懸念がある。ガスケットが捻れて装着されると、捻れた個所で適切なシール性を確保できず、防水性が低下する懸念がある。また、捻れによるガスケットの変形が微小であると、ガスケットの第1輪部が正しく組付けられているか、または捻れて組付けられているかについては、スタータ組立後の外観検査において判断し難いという問題点があった。
【0006】
本願は、前述の問題を解決するための技術を開示するものであり、スタータの組立作業において、ガスケットの捻れが発生しにくく、また、捻れがあっても、外観検査ですぐに発見できる構造を持ったスタータを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に係わるスタータは、回転力を発生するモータ部と、前記モータ部の出力をエンジンに接続する電磁スイッチと、前記モータ部の出力を伝達する伝達機構を収容するセンターハウジングと、前記エンジン側に設けられ、前記センターハウジングおよび前記電磁スイッチを保持するフロントハウジングと、前記センターハウジングのシール面と前記フロントハウジングのシール面との間、および前記電磁スイッチのシール面と前記フロントハウジングのシール面との間に装着されたガスケットと、を備えたスタータであって、前記ガスケットは、前記センターハウジングのシール面と前記フロントハウジングのシール面をシールする第一のシール部、および前記電磁スイッチのシール面と前記フロントハウジングのシール面をシールする第二のシール部、および前記第一のシール部と前記第二のシール部を結合する結合部を有しており、
前記第一のシール部は、断面がL字形状を有し、そのL字形状の一方の辺が前記センターハウジングの外周面に張り出し、他方の辺が前記センターハウジングのシール面と前記フロントハウジングのシール面との間に挟持されているものである。
【発明の効果】
【0008】
本願によれば、前記ガスケットは、前記センターハウジングのシール面と前記フロントハウジングのシール面をシールする前記第一のシール部の断面に、L字形状が設けられたので、捻れに対する剛性が高く、スタータの組立作業において、ガスケットの捻れが発生しにくい。また、前記ガスケットは、L字形状の一方の辺が前記センターハウジングの外周面に張り出して設けられ、他方の辺が前記センターハウジングのシール面と前記フロントハウジングのシール面との間に挟持されるように配置されているので、捻れがあっても、外観検査ですぐに発見することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係わるスタータの断面図である。
【
図2】実施の形態1に係わるスタータのセンターハウジングとフロントハウジングとの間に挟持されたガスケットの第一のシール部を示す
図1のA部の拡大図である。
【
図3】実施の形態1に係わるスタータのガスケットをモータ側から見た正面図である。
【
図4】実施の形態1に係わるスタータのガスケットをフロントハウジング側から見た
図3の裏面図である。
【
図5】実施の形態1に係わるスタータのガスケットにおける
図4のBB断面を示す断面図である。
【
図6】実施の形態1に係わるスタータのガスケットにおけるガスケットとセンターハウジングの組付けを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1によるスタータを示す断面図である。
図1において、スタータ1は、電磁スイッチ2、モータ部3、シフトレバー4、シャフト5、ピニオン6を備える。スタータ1は、始動信号に応じて電磁スイッチ2が付勢されるとシフトレバー4を移動させ、シフトレバー4を介してシャフト5と係合されたピニオン6を前方に押し出しエンジンのリングギヤ(図示しない)と噛合わせる。また、スタータ1は、モータ部3に電磁スイッチ2を介してモータ部3に電流を流し、モータ部3によりエンジンの駆動力になる回転力を発生させる。シャフト5と係合されたピニオン6が回転しエンジンへ動力を伝達することでエンジンを始動させる。
【0011】
スタータ1は、モータ部3の出力をエンジンに接続する電磁スイッチ2と、モータ部3の出力を伝達する伝達機構となる遊星減速機構を収容するセンターハウジング10と、エンジン側に設けられ、センターハウジング10および電磁スイッチ2を保持するフロントハウジング8を備えている。また、ハウジングは、エンジンへの取付部となるフロントハウジング8と遊星減速機構を収容するセンターハウジング10に分割されている。
図2は、
図1のA部を拡大した図であり、スタータ1は、センターハウジング10とフロントハウジング8との間に、ガスケット7が設けられ、センターハウジング10のシール面11とフロントハウジング8のシール面9との間が第一のシール部でシールされ、防水性が確保されている。また、
図1の電磁スイッチ2とフロントハウジング8との間にも、ガスケット7が設けられ、電磁スイッチのシール面14とフロントハウジング8のシール面9との間とが第二のシール部でシールされ、防水性が確保されている。
【0012】
次に、ガスケット7について説明する。
図3は実施の形態1におけるガスケット7をモータ側から見た正面図である。
図4は
図3のガスケット7の裏面図である。
図5は実施の形態1におけるガスケットを示す
図3のBB断面を示す断面図である。
図3から
図5に示すように、実施の形態1によるガスケット7は、センターハウジング10のシール面11をシールする第一のシール部12、電磁スイッチ2のシール面14をシールする第二のシール部13、及び第一のシール部12と第二のシール部13を繋ぐ結合部15からなるゴム製などの弾性体で構成され、フロントハウジング8のモータ側開口部、センターハウジング10とフロントハウジング8の結合部、およびフロントハウジング8と電磁スイッチ2との結合部をシールしている。
【0013】
図6は、ガスケット7の組付けを示す斜視図である。ガスケット7の第一のシール部12は断面をL字形状とすることで、捻れに対する剛性が上がっており、センターハウジング10への装着時に捻れにくく、組付け性が向上されている。また、第一のシール部12の断面を略L字形状に形成し、そのL字形状の一方の辺をセンターハウジング10の外周面に張り出す構成としている(
図2参照)。また、L字形状の他方の辺はセンターハウジング10のシール面11とフロントハウジング8のシール面9との間に挟持される。
このような構成にすることで、捻れて組み付けされた場合であっても、組立後の外観検査において、捻れたことが容易に判断できる。また、ガスケット7の第一のシール部12の断面のL字形状の一方の辺をセンターハウジング10の外周面に張り出すことにより、センターハウジング10の外周面に対して締め代を持つように固定されるため、
図6のようにガスケット7をセンターハウジング10に組付けた後に、センターハウジング10にフロントハウジング8を組付ける作業が容易となる。
【0014】
結合部15に設けた2個所の突出部16は、センターハウジング10に設けた穴部17の内周面に対して締め代を持ち嵌合する。突出部16が穴部17に挿入固定されることで、ガスケット7の装着時にモータの回転方向のずれを防止することができる。また、ガスケット7がモータの回転軸方向へも更に外れにくくなり、センターハウジング10とフロントハウジング8の組付け作業性が更に向上する。
【0015】
本願は、例示的な実施の形態が記載されているが、実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0016】
1 スタータ、2 電磁スイッチ、3 モータ部、4 シフトレバー、5 シャフト、6 ピニオン、7 ガスケット、8 フロントハウジング、9 シール面、10 センターハウジング、11 シール面、12 第一のシール部、13 第二のシール部、14 シール面、15 結合部、16 突出部、17 穴部。