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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179861
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】ルアー
(51)【国際特許分類】
   A01K 85/16 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
A01K85/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092738
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】500411212
【氏名又は名称】株式会社デプス
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】奥村 和正
【テーマコード(参考)】
2B307
【Fターム(参考)】
2B307BA42
2B307BA46
2B307BA49
2B307BA70
(57)【要約】
【課題】1つのルアーで後側ボディの回転範囲や、引かれている方向に対する進行方向をその場で変更可能なルアーを提供する。
【解決手段】前側ボディと、前記前側ボディとは別体として形成された後側ボディと、前記前側ボディと前記後側ボディとを互いに連結するジョイント機構とを備え、前記後側ボディが、前記ジョイント機構に設けられた所定回転軸周りに回転するように構成されているルアーであって、前記ジョイント機構が、前記前側ボディと前記後側ボディとの間の距離を変更できるように構成されており、前記前側ボディと前記後側ボディとの間の距離が小さくなるに従って、前記後側ボディの前記所定回転軸周りの回転角度が小さくなるように規制する回転規制機構をさらに備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前側ボディと、前記前側ボディとは別体として形成された後側ボディと、前記前側ボディと前記後側ボディとを互いに連結するジョイント機構とを備え、前記後側ボディが、前記ジョイント機構に設けられた所定回転軸周りに回転するように構成されているルアーであって、
前記ジョイント機構が、前記前側ボディと前記後側ボディとの間の距離を変更できるように構成されており、
前記前側ボディと前記後側ボディとの間の距離が小さくなるに従って、前記後側ボディの前記所定回転軸周りの回転角度が小さくなるように規制する回転規制機構をさらに備えることを特徴とするルアー。
【請求項2】
前記回転規制機構が、前記前側ボディと前記後側ボディとの間に設けられ、前記後側ボディが前記所定回転軸周りに回転した場合に前記前側ボディに干渉するように構成されている請求項1記載のルアー。
【請求項3】
前記回転規制機構が、前記前側ボディ又は前記後側ボディのいずれか一方に設けられた嵌合凸部と他方に設けられた嵌合凹部とを備え、
前記嵌合凸部と前記嵌合凹部とが、前記前側ボディと前記後側ボディの間の距離を縮めることで互いに嵌合するように構成されている請求項1記載のルアー。
【請求項4】
前記回転規制機構が、前記嵌合凸部と前記嵌合凹部とが互いに嵌合する手前の状態において、前記後側ボディが前記所定回転軸周りに回転した場合に前記嵌合凸部と前記嵌合凹部とが干渉するように構成されている請求項3記載のルアー。
【請求項5】
前記嵌合凸部が、弾性部材であり、
前記嵌合凸部と前記嵌合凹部とが互いに嵌合することで、前記弾性部材の反発力が前記前側ボディ及び前記後側ボディに作用するように構成されている請求項3記載のルアー。
【請求項6】
ラインが取り付けられるラインアイをさらに備えてり、
前記ラインアイが、前記前側ボディの前端面と、前記前側ボディの側面とにそれぞれ設けられている請求項5記載のルアー。
【請求項7】
前記ジョイント機構が、一端部が前記前側ボディに取り付けられ、他端部が前記後側ボディに取り付けられる連結シャフトと、前記連結シャフトに設けられ前記所定回転軸となる回転連結ピンとを具備し、
前記連結シャフトが、前記前側ボディ内又は前記後側ボディ内に対して進退可能に構成されている請求項1乃至6のいずれかに記載のルアー。
【請求項8】
前記ジョイント機構が、
前記前側ボディ内又は前記後側ボディ内において前記進退方向に延び、前記連結シャフトが挿入される内部空洞と、
前記内部空洞の内面に形成され、前記回転連結ピンと係合して前記連結シャフトの他端部を前記内部空洞に位置決めする係合穴と、をさらに具備し、
前記係合穴が、前記前側ボディ又は前記後側ボディの前後方向に対して複数並べて設けられている請求項7記載のルアー。
【請求項9】
隣り合う前記係合穴が、互いに連通しているとともに、その境界に前記回転連結ピンの径よりも幅が狭い幅狭部を有しており、
前記回転連結ピンが、前記幅狭部を乗り越えることで前記後側ボディの前後方向に移動して隣の前記係合穴に係合するように構成されている請求項7記載のルアー。
【請求項10】
少なくとも一つの前記係合穴が、前記前側ボディ又は前記後側ボディの外方へ貫通しており、その開口から前記回転連結ピンを抜き取れるように構成されている請求項8記載のルアー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルアーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば魚を模擬したルアーには、頭部側を模擬した前側ボディと、尾部側を模擬した後側ボディと、これらのボディを連結するジョイント機構とを備え、前側ボディに対して後側ボディが所定回転軸周りに回転可能に取り付けられたものがある。このルアーは、リトリーブ時に前側ボディに対して後側ボディが回転し、このアクションによって対象魚の興味を引くことができる(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、対象魚の活性や環境の違い等によって対象魚が興味を示すルアーアクションが異なる。例えば対象魚の活性が低い場合には、激しいアクションをするルアーには興味を示し難く、逆に対象魚の活性が高い場合には、激しいアクションのルアーに興味を示し易くなる。このため、様々な状況に対応するためには、後側ボディの回転範囲が異なるルアーを複数種類用意しなくてはならず、1種類のルアーだけで複数の状況に対応することは難しかった。
【0004】
しかしながら、複数種類のルアーを用意すれば、様々な状況に対応可能ではあるものの、ルアーの交換等に手間が発生してしまい、使い勝手が良いものとは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3231387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述したような問題に鑑みてなされたものであり、1つのルアーで後側ボディの回転範囲をその場で変更可能なルアーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るルアーは、前側ボディと、前記前側ボディとは別体として形成された後側ボディと、前記前側ボディと前記後側ボディとを互いに連結するジョイント機構とを備え、前記後側ボディが、前記ジョイント機構に設けられた所定回転軸周りに回転するように構成されているルアーであって、前記ジョイント機構が、前記前側ボディと前記後側ボディとの間の距離を変更できるように構成されており、前記前側ボディと前記後側ボディとの間の距離が小さくなるに従って、前記後側ボディの前記所定回転軸周りの回転角度が小さくなるように規制する回転規制機構をさらに備えることを特徴とするものである。
【0008】
このような構成によれば、前側ボディと後側ボディとの間の距離を変更でき、かつ、その距離が短くなるに従って、後側ボディの所定回転軸周りの回転角度が小さくなるように構成したので、後側ボディの回転角度を変更できる。その結果、一つのルアーでアクションの強弱を変更できるので、ルアーを交換することなく様々な状況に対応できる。
【0009】
後側ボディの所定回転軸周りの回転角度を変更するための具体的な態様としては、前記回転規制機構が、前記前側ボディと前記後側ボディとの間に設けられ、前記後側ボディが前記所定回転軸周りに回転した場合に前記前側ボディに干渉するように構成したものが挙げられる。
【0010】
また、前記回転規制機構が、前記前側ボディ又は前記後側ボディのいずれか一方に設けられた嵌合凸部と他方に設けられた嵌合凹部とを備え、前記嵌合凸部と前記嵌合凹部とが、前記前側ボディと前記後側ボディの間の距離を縮めることで互いに嵌合するように構成してもよい。
【0011】
このような構成によれば、嵌合凸部と嵌合凹部とが互いに嵌合することで、後側ボディが所定回転軸周りに殆ど又は完全に回転しなくなる。その結果、後側ボディが回転する場合に比べてルアーアクションが弱くなり、例えば対象魚の活性が低い状況でも魚の興味を示し易くなる。
【0012】
後側ボディの所定回転軸周りの回転角度を変更するためのより具体的な態様としては、前記回転規制機構が、前記嵌合凸部と前記嵌合凹部とが互いに嵌合する手前の状態において、前記後側ボディが前記所定回転軸周りに回転した場合に前記嵌合凸部と前記嵌合凹部とが互いに干渉するように構成したものが挙げられる。
【0013】
また、前記嵌合凸部が、弾性部材であり、前記弾性部材が前記嵌合凹部に嵌合することにより、前記弾性部材の反発力が前記前側ボディ及び前記後側ボディに作用するように構成してもよい。
【0014】
このような構成によれば、前側ボディ及び後側ボディに弾性部材の反発力が作用した状態と作用していない状態とに簡単に切り替えられる。そして、前者の状態は、後者の状態に比べて接触音を抑えられる。なぜなら、リトリーブを止めると、前者の状態では、弾性部材の反発力によって後側ボディが初期位置に戻るのに対し、後者の状態では、慣性に従って後側ボディがより大きく回転する。この状態からリトリーブを開始すると、前者の状態に比べて後者の状態の方が後側ボディの回転角度が大きくなるので、接触音が生じ易くなるからである。その結果、一つのルアーでアクションだけでなく接触音の大きさも変更できるようになり、より幅広い状況に対応できるようになる。
【0015】
一般的なルアーは、前側ボディの前端面にラインアイが取り付けられている。このようなルアーは、リトリーブ時に釣り人に向かって直線的に進行する。一方、釣り場の状況によっては、例えば岸に沿って横向きにルアーを進行させたいこともある。
【0016】
そこで、ラインが取り付けられるラインアイをさらに備えており、前記ラインアイが、前記前側ボディの前端面と、前記前側ボディの側面とにそれぞれ設けられているものであってもよい。
【0017】
このような構成によれば、前側ボディの側面に設けられたラインアイにラインを取り付けると、リトリーブ時、後側ボディが所定方向のみに回転し、リトリーブを止めると、弾性部材の反発力によって元に戻ろうとする後側ボディが水を押し、釣り人から見て横方向へ進行する。したがって、リトリーブを間欠的に繰り返すことで、ルアーを釣り人から見て横方向へ進行させることができる。一方、前側ボディの前端面に設けられたラインアイにラインを取り付けると、ルアーを釣り人に向かって直進させることもできる。これにより、一つのルアーでアクションだけでなく進行方向も変更できるようになり、より幅広い状況に対応できるようになる。
【0018】
また、前記ジョイント機構が、一端部が前記前側ボディに取り付けられ、他端部が前記後側ボディに取り付けられる連結シャフトと、前記連結シャフトに設けられ前記所定回転軸となる回転連結ピンとを具備し、前記連結シャフトが、前記前側ボディ内又は前記後側ボディ内に対して進退可能に構成してもよい。
【0019】
このような構成によれば、連結シャフトをいずれかのボディに対して進退させるだけで、前側ボディと後側ボディとの間の距離を変更できる。その結果、極めて簡単にルアーアクションを変更できる。
【0020】
また、前記ジョイント機構が、前記前側ボディ内又は前記後側ボディ内において前記進退方向に延び、前記連結シャフトが挿入される内部空洞と、前記内部空洞の内面に形成され、前記回転連結ピンと係合して前記連結シャフトの他端部を前記内部空洞に位置決めする係合穴と、をさらに具備し、前記係合穴が、前記前側ボディ又は前記後側ボディの前後方向に対して複数並べて設けられているものであってもよい。
【0021】
このような構成によれば、連結シャフトが、係合穴に係合された回転連結ピンによって位置決めされているので、外力が加わっても簡単に進退方向へ移動しなくなる。これにより、例えばルアーが障害物などに衝突して外力が加わっても、連結シャフトがボディに対して進退せず、不用意にルアーアクションが変わることを防止できる。
【0022】
また、隣り合う前記係合穴が、互いに連通しているとともに、その境界に前記回転連結ピンの径よりも幅が狭い幅狭部を有しており、前記回転連結ピンが、前記幅狭部を乗り越えることで前記後側ボディの前後方向に移動して隣の前記係合穴に係合するように構成してもよい。
【0023】
このような構成によれば、回転連結ピンが幅狭部を乗り越えて前後方向へ移動できる構造になっているので、連結シャフトをボディに対して進退させるだけで、極めて簡単にルアーアクションを変更できる。
【0024】
また、少なくとも一つの前記係合穴が、前記前側ボディ又は前記後側ボディの外方へ貫通しており、その開口から前記回転連結ピンを抜き取れるように構成してもよい。
【0025】
このような構成によれば、例えば一方のボディが破損した場合に、回転連結ピンを抜き取れば、その破損したボディを交換できる。
【発明の効果】
【0026】
このように本発明に係るルアーであれば、所定回転軸の位置を変更して1つのルアーであっても後側ボディの回転範囲を変更できる。その結果、同じルアーを使いながらも、釣り場の状況に合わせてルアーアクションを変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1実施形態に係るルアー模式的に示す側面図。
図2】第1実施形態に係るルアーにおいて後側ボディの回転角度が最も大きい状態を模式的に示すA-A断面図、B-B断面図及びC-C断面図。
図3】第1実施形態に係るルアーにおいて後側ボディの回転角度が最も大きい状態における動作を模式的に示す断面図。
図4】第1実施形態に係るルアーにおいて後側ボディの回転角度が制限された状態を模式的に示す断面図。
図5】第1実施形態に係るルアーにおいて後側ボディがほぼ回転しないようにした状態を模式的に示す断面図。
図6】第1実施形態に係るルアーの変形例を模式的に示す断面図。
図7】第2実施形態に係るルアーの嵌合凸部と嵌合凹部とが嵌合していない状態を模式的に示す断面図。
図8】第2実施形態に係るルアーの嵌合凸部と嵌合凹部とが嵌合した状態を模式的に示す断面図。
図9】第2実施形態に係るルアーの動作を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の一実施形態に係るルアー100について図1図6を参照しながら説明する。
【0029】
<第1実施形態のルアー100の構成>
図1に示すように、本実施形態のルアー100は、ルアーフィッシングに用いられるものであり、小魚の形態を模擬したボディ1を備えたものである。対象魚としては、例えばブラックバス等のフィッシュイーターが挙げられる。以降の説明では、ボディ1の尾部と頭部を結ぶ全長方向に沿って設定されたX軸、ボディ1の背中側と腹側を結ぶ体高方向に沿って設定されたY軸、ボディ1の一対の側面部を結ぶ体幅方向に沿って設定されたZ軸も用いながら説明する。
【0030】
ボディ1は、体幅よりも体高のほうが大きい扁平状をなすものであり、水面又は水中を魚が縦向きとなった状態で進行するように用いられる。このため、ボディ1の腹側に設けられた各フックアイに対してフックFが取り付けられる。また、ボディ1の材質は、例えば各種樹脂材料、木材、金属等を用いることができる。
【0031】
ボディ1についてさらに詳述すると、図1に示すようにボディ1は2つのパーツから構成してある。ボディ1は、魚の頭部及び胴部の前方側の一部を模し、顎部分にラインアイLIが設けられた前側ボディ11と、魚の尾部側を模した後側ボディ12とを具備しており、前側ボディ11と後側ボディ12はそれぞれ別体として形成されている。
【0032】
前側ボディ11と後側ボディ12とは、ジョイント機構2により連結されている。第1実施形態のジョイント機構2は、前側ボディ11に対して後側ボディ12が、そのジョイント機構2に設けられた所定回転軸RA周りを回転可能に連結する。この所定回転軸RAは、具体的にはボディ1の体高方向であるY軸方向に沿って延びている。また、所定回転軸RAの後側ボディ12に対する位置は変更可能に構成されている。さらに、ジョイント機構2は、全長方向であるX軸方向に対して前側ボディ11と後側ボディ12の間の距離(離間距離)を変更して前側ボディ11と後側ボディ12とを連結できるように構成されている。また、前側ボディ11における後側端部と後側ボディ12の前側端部との間には、前側ボディ11に対する後側ボディ12の位置に応じ、後側ボディ12の回転角度を制限する回転規制機構3が形成されている。
【0033】
ジョイント機構2は、図2(a)~図2(c)に示すように、一端部が前側ボディ11に固定され、他端部が後側ボディ12に対して回転可能に連結される一対の連結シャフト21と、後側ボディ12内に形成されて連結シャフト21の他端部が挿入される内部空洞2Vと、各連結シャフト21の他端部を後側ボディ12に対して回転可能に連結する回転連結ピン22と、回転連結ピン22と係合して連結シャフト21の他端部を内部空洞2Vの所定位置に位置決めする複数の係合穴23とを備えている。この回転連結ピン22が、回転軸RAとなる。
【0034】
一対の連結シャフト21は、全長方向であるX軸方向に沿って延びるものであり、体高方向であるY軸方向に対して離間させて並行に並べて設けられている。連結シャフト21の両端部には、Y軸方向に向かって開口するリング21a,21bが形成されている。連結シャフト21の一端部は、前側ボディ11に対して一体となるように構成されている。例えば前側ボディ11が樹脂で形成されており、連結シャフト21が金属で形成されている場合には一体成型によって連結シャフト21の一端部は前側ボディ11の内部に埋め込まれる。なお、本実施形態の連結シャフト21の一端部は、前側ボディ11に対して回転不能に固定されている。またリング21bは、連結シャフト21を挿入できる内径を有しており、そのリング21bに挿入された回転連結ピン22によって連結シャフト21の他端部に対して後側ボディ12がY軸周りに回転可能に連結される。
【0035】
内部空洞2Vは、後側ボディ12において全長方向であるX軸方向に沿って延びており、連結シャフト21の他端部がX軸方向に対して進退可能に構成されている。第1実施形態では、各連結シャフト21に対してそれぞれ内部空洞2Vが形成されており、各内部空洞2Vには、体高方向であるY軸方向に対して延びる係合穴23が複数形成されている。また、各内部空洞2Vは、後側ボディ12の前面に開口しており、連結シャフト21は、この開口から内部空洞2Vへ挿入されている。
【0036】
各係合穴23は、後側ボディ12の全長方向であるX軸方向に複数並べて設けられており、本実施形態では4つ設けられている。具体的には、各係合穴23は、回転連結ピン22の軸方向へ延びており、各内部空洞2Vを貫通するように形成されている。各係合穴23は、回転連結ピン22を挿入できる形状に形成されている。また、隣り合う係合穴23は、互いに連通して繋がっている。そして、互いに連通した係合穴23の境界部分には、回転連結ピン22の径よりも幅が狭い幅狭部23aが形成されている。これにより、回転連結ピン22は、所定の係合穴23と係合した状態から幅狭部23aを乗り越えることで隣の係合穴23に移動できるようになっている。すなわち、回転連結ピン22は、わざわざ係合穴23から抜き取らなくても他の係合穴23に移動させて係合できる。したがって、回転連結ピン22を移動させていずれかの係合穴23に係合させることにより、4つのいずれかの係合穴23の位置に所定回転軸RAの位置を変更できる。
【0037】
そして、図2(a)~図2(c)に示すように、後側ボディ12の最も前側に配置されている係合穴23に回転連結ピン22を係合し、連結シャフト21の他端部を回転可能に連結した場合、前側ボディ11と後側ボディ12との離間距離が最も大きくなる。また、図4及び図5に示すように、後側ボディ12の後側に配置されている係合穴23に回転連結ピン22を係合し、連結シャフト21の他端部を回転可能に連結した場合、前側ボディ11と後側ボディ12との間の離間距離を縮めることができる。
【0038】
また、本実施形態の係合穴23は、前側の3つは、両端が後側ボディ12を貫通することなく閉じており、最も後側の一つは、一端が後側ボディ12を貫通して外部と連通している。本実施形態では、後側ボディ12の水面側を向く上面に開口している。この開口は、着脱可能な蓋体24によって塞がれており、不用意に回転連結ピン22が抜け落ちることを防止している。回転連結ピン22は、最も後側の係合穴23に移動させると、後側ボディ12から抜き取ることができる一方、他の係合穴23に移動させると、後側ボディ12から抜き取れなくなる。そして、回転連結ピン22を抜き取ると、後側ボディ12から連結シャフト21を抜いて前側ボディ11を取り外し、例えば破損した方を交換することができる。なお、後側ボディ12を貫通する係合穴23の数は、少なくとも一つあればよいが、二つ以上あってもよい。
【0039】
回転規制機構3は、回転連結ピン22が係合される係合穴23が後側ボディ12の後側に配置されているほど、その後側ボディ12の回転角度が小さくなるように構成されている。本実施形態の回転規制機構3は、前側ボディ11の後側端部に形成された体高方向であるY軸方向に延びる体高方向から見てV字状の嵌合凹部31と、後側ボディ12の前側端部に形成されたY軸方向に延びる体高方向から見てV字状の嵌合凸部32とを備えている。嵌合凹部31と嵌合凸部32とは、概略同じV字状をなしている。
【0040】
そして、図2(a)~図2(c)に示すように、回転連結ピン22を後側ボディ12の最も前側又は前側から2番目にある係合穴23に係合し、連結シャフト21と後側ボディ12とが連結されている状態では、嵌合凸部32は、嵌合凹部31の外側にあり、後側ボディ12の回転を阻害しないように構成されている。
【0041】
一方、図4(a)及び図4(b)に示すように、回転連結ピン22を後側ボディ12の前側から3番目にある係合穴23に係合し、連結シャフト21と後側ボディ12とが連結されている状態では、後側ボディ12が所定角度以上回転すると、嵌合凸部32の先端部が嵌合凹部31の壁面と干渉し、それ以上回転できなくなるように構成されている。
【0042】
また、図5に示すように、回転連結ピン22を後側ボディ12の前側から4番目にある係合穴23に係合し、連結シャフト21と後側ボディ12が連結されている状態では、嵌合凹部31と嵌合凸部32がほぼ合致するように嵌合した状態となり、後側ボディ12はほとんど回転できない状態となる。
【0043】
すなわち、回転規制機構3は、回転連結ピン22の位置の変更によって前側ボディ11と後側ボディ12の全長方向であるX軸方向の離間距離が小さくなるほど、後側ボディ12の回転角度(回転可能範囲)が小さくなるように構成されている。言い換えると、前側ボディ11と後側ボディ12のX軸方向の離間距離が大きくなるほど、後側ボディ12は前側ボディ11に対して大きく回転させることができ、大きなルアーアクションが可能となる。
【0044】
<第1実施形態のルアー100の効果>
このように構成された第1実施形態のルアー100であれば、連結シャフト21の他端部の後側ボディ12内への差し込み量を変更するとともに、後側ボディ12において全長方向に沿って並べて設けられた係合穴23のいずれかに回転連結ピン22を移動させることで、所定回転軸RAの位置を簡単に変更できる。
【0045】
また、回転規制機構3により、後側ボディ12が前側ボディ11に対して近くに設定されるほど、後側ボディ12の所定回転軸周りの回転角度を小さくできる。すなわち、後側ボディ12の位置を前側ボディ11に対して遠くに設定するほど、後側ボディ12の回転量が大きくなり、これに伴って大きなルアーアクションが可能となる。また、係合穴23が全長方向に沿って4つ並べて設けられているので、後側ボディ12の回転量については段階的に変化させることができる。
【0046】
所定回転軸RAの位置の変更は、回転連結ピン22を後側ボディ12に対し移動させるだけで実現できるので、例えばルアー釣りをしている最中のその場で後側ボディ12の回転量を適宜調節できる。したがって、1つのルアー100だけであっても、状況に応じた後側ボディ12の回転量を実現できるので、従来のルアーように複数用意しなくても多彩なルアーアクションが可能となり、使い勝手が良い。
【0047】
<第1実施形態の変形例> 図6に示すように、係合穴23は、少なくとも2つあればよく、後側ボディ12の回転量を2段階で変更可能に構成してもよい。この場合、例えば一方の係合穴23に回転連結ピン22が係合されている場合、嵌合凹部31と嵌合凸部32とが嵌合した状態となって後側ボディ12が回転しないようにし、他方の係合穴23に回転連結ピン22が係合されている場合、嵌合凹部31と嵌合凸部32とが嵌合する手前の状態となって互いに干渉するまで後側ボディ12が回転するようにしてもよい。
【0048】
また、例えば各係合穴23をいずれも後側ボディ12を貫通するように形成してもよい。この場合、後側ボディ12の外部からどの係合穴23にも回転連結ピン22を抜き差しできるので、隣り合う係合穴23を必ずしも連通させる必要はない。つまり、前側ボディ11と後側ボディ12との離間距離を変える場合、毎回係合穴23から回転連結ピン22を抜き取ることで、係合穴23を連通させておかなくても、回転連結ピン22を係合させたい係合穴23に挿入して係合させることができる。
【0049】
また、連結シャフト21の本数は2本に限られるものではなく、1本もしくは3本以上であっても構わない。所定回転軸RAについては体高方向であるY軸方向に延びるものに限られず、例えば体幅方向であるZ軸方向に延びるものであってもよい。言い換えると、ルアー100は、後側ボディ12が水平面内で回転するものに限られず、水平面に対して上下動するように構成されたものであってもよい。このような場合には、各フックアイについてはボディ1の側面部に設けられていてもよい。
【0050】
また、内部空洞2V及び係合穴23は、前側ボディ11に設けられていてもよいし、前側ボディ11と後側ボディ12の両方に設けられていても良い。第1実施形態では、連結シャフト21の一端部を前側ボディ11に対し回転しないように固定したが、前側ボディ11に対し回転するように固定してもよい。回転規制機構3の嵌合凹部31及び嵌合凸部32は、V字状のものに限られるものではない。例えば四角形状のものであってもよい。
【0051】
<第2実施形態のルアー100の構成>
次に第2実施形態のルアー100について図7図9を参照しながら説明する。
【0052】
本実施形態のルアー100は、第1実施形態のルアー100においてさらに後側ボディ12の回転に対する抵抗を変更可能に構成されたものである。具体的には、本実施形態のルアー100は、第1実施形態のルアー100の嵌合凹部31及び嵌合凸部32を変え、さらにボディ1の前端面に設けられたラインアイL1に加え、ボディ1の側面に第2のラインアイL2を設けたものである。具体的には、本実施形態の篏合凸部32は、前側ボディ11に設けられ、篏合凹部31は、後側ボディ12に設けられている。本実施形態の第2のラインアイL2は、前側ボディ11の側面から横方向に突出するように設けられる。なお、第2のラインアイL2は、本実施形態のようにボディ1の片側面のみに設けてもよく、両側面に設けてもよい。
【0053】
嵌合凹部31は、後側ボディ12の前側ボディ11と対向する面に設けられた矩形状の凹み31´であり、嵌合凸部32は、前側ボディ11から後側ボディに向かって突出する矩形板状の弾性部材32´であり、前側ボディ11と後側ボディ12との離間距離を縮めることで、この弾性部材32´の先端部が凹み31´に篏合するようになっている。なお、弾性部材32´は、金属、樹脂等で形成された薄板状をなすものであり、その一端部は前側ボディ11内に固定されている。
【0054】
図7(a)及び図7(b)に示すように、弾性部材32´が凹み31´に篏合していない非篏合状態では、後側ボディ12が所定回転軸RA周りに回転しても板状の弾性部材32´はほとんど又は全く曲げられないため、抵抗がほぼ発生しない。一方、図8(a)及び図8(b)に示すように、弾性部材32´が凹み31´に篏合した篏合状態では、後側ボディ12が所定回転軸RA周りに回転すると弾性部材32´が曲げられるため、その弾性による抵抗が発生し、ダンパとして作用する。
【0055】
<第2実施形態のルアー100の動作>
図7(a)及び図7(b)に示すように、非篏合状態とし、かつ、第1のラインアイL1にラインが結ばれている場合、ルアー100は、リトリーブすることにより、ラインLに引っ張られている方向にそのまま進行する。
【0056】
一方、図8(a)及び図8(b)に示すように、篏合状態とし、かつ、第2のラインアイL2にラインLが結ばれている場合、ルアー100は、リトリーブを間欠的に繰り返すことにより、ラインLに引っ張られている方向に対して公差する方向(概略直交する方向)に進行する。詳述すると、図9(a)に示すように、リトリーブすると、ラインLでボディ1の側面部が体幅方向に引っ張られ、水の抵抗で後側ボディ12がラインLで引っ張られているのとは反対側へと回転する。この後側ボディ12の回転により、弾性部材32´は曲げられて反対側に戻ろうとする反力が蓄えられた状態となる。この状態で、図9(b)に示すように、リトリーブを止めると、弾性部材32´は自然状態に戻ろうとするので、後側ボディ12はラインで引っ張られていたときとは反対側に回転する。この回転時に後側ボディ12は水を掻き出し、前側ボディ11側へと推進力を発生させるので、ルアー100は体幅方向ではなく全長方向に進行することになる。
【0057】
<第2実施形態のルアー100の効果>
このように第2実施形態のルアー100であれば、弾性部材32´による抵抗をボディ1に作用させるかどうかを手動で切り替えることができる。また、弾性部材32´による抵抗が作用する篏合状態では、弾性部材32´の弾性復帰力により後側ボディ12が所定回転軸RA周りに回転した状態から元の状態に戻るようにできる。このため、ルアー100の第2ラインアイL2にラインLを結び、体幅方向に沿ってルアー100を引っ張るようにした場合には、ルアー100をラインLで引っ張っている方向に対して横方向に移動させることが可能となる。また、弾性部材32´による抵抗が作用しない非篏合状態にし、第1のラインアイL1にラインLを結べば、通常通りルアー100の移動方向とラインLで引っ張る方向を全長方向で一致させることもできる。
【0058】
したがって、前側ボディ11と後側ボディ12の離間距離を変え、ラインLを取り付ける場所を変更するだけで、ルアー100の挙動を大きく変更することができる。つまり、それぞれのルアー100の移動方向を実現するために複数種類のルアーを用意する必要がない。
【0059】
本発明は、前側ボディと、前記前側ボディとは別体として形成された後側ボディと、前記前側ボディと前記後側ボディとを互いに連結するジョイント機構とを備え、前記後側ボディが、前記ジョイント機構に設けられた所定回転軸周りに回転するように構成されているルアーであって、前記ジョイント機構が、一端部が前記前側ボディに取り付けられるとともに、他端部が前記後側ボディに取り付けられ、前記前側ボディ内又は前記後側ボディ内に対して進退可能に構成されている連結シャフトと、前記連結シャフトに設けられ前記所定回転軸となる回転連結ピンとを具備し、前記連結シャフトを前記前側ボディ内又は前記後側ボディ内に対して進退させることで前記前側ボディと前記後側ボディとの間の距離を変更できるように構成されているものであってもよい。
【0060】
また、本発明は、前側ボディと、前記前側ボディとは別体として形成された後側ボディと、前記前側ボディと前記後側ボディとを互いに連結するジョイント機構とを備え、前記後側ボディが、前記ジョイント機構に設けられた所定回転軸周りに回転するように構成されているルアーであって、前記ジョイント機構が、一端部が前記前側ボディに取り付けられるとともに、他端部が前記後側ボディに取り付けられ、前記前側ボディ内又は前記後側ボディ内に対して進退可能に構成されている連結シャフトと、前記連結シャフトに設けられ前記所定回転軸となる回転連結ピンと、前記前側ボディ内又は前記後側ボディ内において前記進退方向に延び、前記連結シャフトが挿入される内部空洞と、前記内部空洞の内面に形成され、前記回転連結ピンと係合して前記連結シャフトの他端部を前記内部空洞に位置決めする係合穴と、をさらに具備し、前記係合穴が、前記前側ボディ又は前記後側ボディの前後方向に対して複数並べて設けられており、少なくとも一つの前記係合穴が、前記前側ボディ又は前記後側ボディの外方へ貫通しており、その開口から前記回転連結ピンを抜き取れるように構成されているものであってもよい。
【0061】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の一部同士の組み合わせや、変形等を行っても構わない。
【符号の説明】
【0062】
1 :ボディ
2 :ジョイント機構
2V :内部空洞
3 :回転規制機構
11 :前側ボディ
12 :後側ボディ
21 :連結シャフト
22 :回転連結ピン
23 :係合穴
23a :幅狭部
31 :嵌合凹部
31´ :凹み
32´ :弾性部材
100 :ルアー
F :フック
LI :ラインアイ
L2 :第2のラインアイ
RA :所定回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9