(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179868
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】パイロット式電磁弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
F16K31/06 305L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092753
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木船 仁志
【テーマコード(参考)】
3H106
【Fターム(参考)】
3H106DA23
3H106DA35
3H106DB02
3H106DB23
3H106DB32
3H106DC02
3H106DC17
3H106DD02
3H106EE34
3H106EE35
3H106GB23
(57)【要約】
【課題】組立時に専用の工具を必要とせず、容易に組付けが可能なパイロット式電磁弁を提供する。
【解決手段】パイロット式電磁弁は、主弁体を摺動可能に収容する基部と、前記主弁体を主弁座から離間する側に向かって付勢するコイルばねと、前記基部に取り付けられて、前記コイルばねを支持するばね受け部材と、を有し、前記基部は、前記主弁体を挟んで主弁室と対向する側に副弁室を有し、前記パイロット弁口は前記副弁室と流出路とを連通しており、前記基部は、外周面に周溝または凹部を有し、前記ばね受け部材は、前記コイルばねを支持する支持部、前記支持部から前記基部に向かって延在する爪部、及び前記爪部に形成され前記周溝または前記凹部に係合する凸部を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主弁室に連通する流入路、前記主弁室内に配置された主弁座、及び流出路を備えた弁本体と、
パイロット弁口を備え、前記パイロット弁口の周囲において前記主弁座に着座可能である主弁体と、
前記パイロット弁口を遮蔽可能なパイロット弁体と、
前記パイロット弁体を駆動可能な駆動部と、
前記弁本体に取り付けられ、前記主弁体を摺動可能に収容する基部と、
前記主弁体を前記主弁座から離間する側に向かって付勢するコイルばねと、
前記基部に取り付けられて、前記コイルばねの下端側を支持するばね受け部材と、を有し、
前記ばね受け部材は、前記基部の外周面に取り付けられる、ことを特徴とするパイロット式電磁弁。
【請求項2】
前記基部は、外周面に周溝または凹部を有し、
前記ばね受け部材は、前記コイルばねを支持する支持部、前記支持部から前記基部に向かって延在する爪部、及び前記爪部に形成され前記周溝または前記凹部に係合する凸部を有することを特徴とする請求項1に記載のパイロット式電磁弁。
【請求項3】
前記支持部は、前記主弁座の径方向外方に位置する環状部である、
ことを特徴とする請求項2に記載のパイロット式電磁弁。
【請求項4】
前記環状部は、前記基部に当接して軸線方向に付勢力を付与するばね片を有する、
ことを特徴とする請求項3に記載のパイロット式電磁弁。
【請求項5】
前記爪部は平板状であって、前記凸部は、前記環状部の径方向内側を向くように半球状または円錐状に形成される、
ことを特徴とする請求項3に記載のパイロット式電磁弁。
【請求項6】
前記爪部の端部に複数のスリットを形成することにより、前記爪部の一部の延在する方向を、前記爪部の残りの延在方向に対して変更可能としており、前記爪部の一部を湾曲状に曲げることにより前記凸部が形成される、
ことを特徴とする請求項3に記載のパイロット式電磁弁。
【請求項7】
前記基部は、前記弁本体に対してねじ同士の螺合により取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のパイロット式電磁弁。
【請求項8】
前記基部は、前記弁本体の一部をカシメることにより前記弁本体に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のパイロット式電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイロット式電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、冷凍サイクルの膨張弁と蒸発器との間に介装されるパイロット式電磁弁が、特許文献1に開示されている。パイロット式電磁弁において、ソレノイドを励磁するとプランジャがコイルばねの弾力に抗し偏位し、補助弁体が主弁体のパイロット開口を開放する。それにより、主弁体の上下の空間に差圧が生じることで弁座が開口し、流体(冷媒)を流入孔から流出孔に向かって流すことができる。一方、ソレノイドを消磁すると、コイルばねの弾力によりプランジャが移動し、補助弁体が主弁体のパイロット開口を遮断すると共に、主弁体が弁座を閉止するため、流体の流れが中断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のパイロット式電磁弁においては、パイプ台の下端内周に、全周において径方向に突出する鍔部を形成し、前記鍔部をコイルばねの下端を係止する係止部として用いている。このため、別個の係止部品を使用する必要がなく、部品点数を抑制できる。しかしながら、鍔部を形成するためにパイプ台の内周面を中グリする切削加工を行っているため、専用の工具が必要となることに加え、加工の手間もかかる。また、形成された鍔部の内径が、コイルばねの外径より小さいため、コイルばねの外径部を縮径しながら鍔部内周を通過させて組み付ける必要があり、作業性が悪いという問題もある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、組立時に専用の工具を必要とせず、容易に組付けが可能なパイロット式電磁弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のパイロット式電磁弁は、
主弁室に連通する流入路、前記主弁室内に配置された主弁座、及び流出路を備えた弁本体と、
パイロット弁口を備え、前記パイロット弁口の周囲において前記主弁座に着座可能である主弁体と、
前記パイロット弁口を遮蔽可能なパイロット弁体と、
前記パイロット弁体を駆動可能な駆動部と、
前記弁本体に取り付けられ、前記主弁体を摺動可能に収容する基部と、
前記主弁体を前記主弁座から離間する側に向かって付勢するコイルばねと、
前記基部に取り付けられて、前記コイルばねの下端側を支持するばね受け部材と、を有し、
前記ばね受け部材は、前記基部の外周面に取り付けられる、ことを特徴とする、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、組立時に専用の工具を必要とせず、容易に組付けが可能なパイロット式電磁弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態にかかるパイロット式電磁弁の縦断面図である。
【
図2】
図2は、外側コイルばねの周辺を拡大して示す断面図である。
【
図3】
図3(a)は、ばね受け部材の平面図であり、
図3(b)は、
図3(a)に示すばね受け部材をA-A線で切断して側面視した断面図である。
【
図5】
図5(a)は、変形例にかかるばね受け部材の平面図であり、
図5(b)は、
図5(a)に示すばね受け部材をB-B線で切断して側面視した断面図である。
【
図6】
図6は、変形例にかかるばね受け部材の斜視図である。
【
図7】
図7(a)は、別の変形例にかかるばね受け部材の平面図であり、
図7(b)は、
図7(a)に示すばね受け部材をC-C線で切断して側面視した断面図である。
【
図8】
図8は、別の変形例にかかるばね受け部材の斜視図である。
【
図9】
図9は、
図7(a)に示すばね受け部材の矢印Dで示す部位を拡大して示す断面図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態にかかるパイロット式電磁弁の縦断面図である。
【
図11】
図11は、第2の実施形態にかかる外側コイルばねの周辺を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明のパイロット式電磁弁の実施形態について説明する。なお、本明細書中、下方とはプランジャ側をいい、上方とはプランジャに対する吸引子側をいうものとする。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態にかかるパイロット式電磁弁1の縦断面図である。パイロット式電磁弁1の軸線をLとする。
【0011】
パイロット式電磁弁1は、弁本体2と、この弁本体2に螺着される基部4と、基部4を介して弁本体2に装着される駆動部3と、主弁体5を有する。
【0012】
弁本体2は、軸線Lに直交する方向に延在する本体部20と、本体部20の中央に軸線Lと同軸に形成された中空の中央円筒部21とを連設してなる。本体部20内には、対向して配置される高圧流路(流入路)22及び低圧流路(流出路)23が形成され、中央円筒部21内から本体部20に向かって、円形開口部24が形成されている。円形開口部24の内部が主弁室MCを形成する。
【0013】
不図示の高圧配管が接続される高圧流路22の内方端は、円形開口部24の内方端と連通している。また、不図示の低圧配管が接続される低圧流路23の内方側はL字状に曲がり、円筒状端部23aの内部に接続されている。円筒状端部23aは、円形開口部24内に同軸に突き出しており、円筒状端部23aの上端が、主弁座23bとなる。
【0014】
弁本体2に対し、基部4を挟んで駆動部3が配設されている。
【0015】
駆動部3は、ハウジング31と、巻線32aと、巻線32aが巻回されたボビン32bと、ボビン32bの内側に配置された吸引子33と、吸引子33とハウジング31とを連結する止めねじ34と、薄肉円管状の案内スリーブ35と、プランジャ36と、内側コイルばね37とを備える。プランジャ36の下端には、下方に向かって突出するテーパ状のパイロット弁体36dが形成される。巻線32aとボビン32bとでコイルを構成し、ハウジング31、巻線32a、ボビン32b、及び吸引子33により、ソレノイドのステータを構成する。
【0016】
ハウジング31は、有頂筒状のドーム部31aを有する。ドーム部31aの開放する下端を遮蔽する円板部31bが配置されている。巻線32a及びボビン32bは、ドーム部31aの頂部と円板部31bとの間に上下方向に挟持されて配置される。円板部31bは、中央開口31cを有する。ドーム部31aは、横穴31dを有しており、横穴31dに装着されたグロメットGMを介して配線HNが挿入され、巻線32aと外部の電源(不図示)とを接続している。
【0017】
吸引子33は、ドーム部31aの頂部下面中央に止めねじ34を介して連結される。案内スリーブ35は、吸引子33の下部外周に挿入され、端面溶接(例えばTig溶接)され、中央開口31cを通過して下方に延在する。プランジャ36は、案内スリーブ35内に挿入されており、案内スリーブ35内を軸線L方向に摺動可能となっている。
【0018】
プランジャ36の上端に、袋穴36aが形成され、また円筒側面に全長にわたって縦溝36bが形成されており、さらに袋穴36aの底部近傍と、縦溝36bとを連通する連通孔36cが形成されている。内側コイルばね37は、袋穴36a内に配置され、その上端を吸引子33の下面に当接させ、その下端を袋穴36aの底部に当接させることで、プランジャ36を弁本体2側に付勢する。
【0019】
中空円筒状の基部4は、縮径部41と、拡径部42と、下部筒部43とを連設してなる。縮径部41の上端には、ハウジング31の円板部31bの下面が突き当てられて固定される。下部筒部43は、弁本体2の円形開口部24に挿入されている。下部筒部43の外周に形成された雄ねじ43aを、中央円筒部21の内周に形成された雌ねじ21aに螺合させることにより、基部4は弁本体2に組付けられる。
【0020】
基部4の中央には、小径内周部44と、大径内周部45とが形成されている。小径内周部44内には、案内スリーブ35の下端が挿入され、ロウ付け等により固定されている。大径内周部45内に、主弁体5が配置される。
【0021】
主弁体5は、中央弁体51と、中央弁体51の周囲に同軸に配置される中空筒状の周囲弁体52とからなる。中空円筒状の周囲弁体52には、外周段部52aが下部に形成され、また内周に段付き開口52bが形成されている。
【0022】
段付き開口52bには、二段円筒状の中央弁体51が嵌合配置されている。中央弁体51には、パイロット弁口51aが軸線L方向に沿って貫通形成され、その上端にパイロット弁体36dが着座して遮蔽可能となっている。中央弁体51の下面は、主弁座23bに対し着座可能に対向する。周囲弁体52の径方向内側であって中央弁体51上方が、副弁室SCを構成する。
【0023】
副弁室SCは、プランジャ36の縦溝36bと案内スリーブ35との間の隙間を介して、袋穴36aやプランジャ36の背面側空間(吸引子33とに挟持された空間)に連通している。これにより、プランジャ36を軸線L方向に挟んだ両端側にて、流体圧力の均衡を図ることができる。
【0024】
主弁体5の下部に、外側コイルばね(単にコイルばねともいう)53が配置されている。
【0025】
図2は、外側コイルばね53の周辺を拡大して示す断面図である。外側コイルばね53は、上部側で円筒状にワイヤが巻回された円筒巻き部53aと、下部側でワイヤが下方に向かって巻径が増大するように円錐状に巻回された円錐巻き部53bとを有する複合コイルばねである。
【0026】
円筒巻き部53aは、周囲弁体52の外周段部52aに上端を当接させ、周囲弁体52の外周に沿って延在している。円錐巻き部53bは、基部4の大径内周部45の下端に形成されたテーパ部46に沿って延在し、その下端をばね受け部材54に当接させている。
【0027】
図3(a)は、ばね受け部材54の平面図であり、
図3(b)は、
図3(a)に示すばね受け部材54をA-A線で切断して側面視した断面図である。
図4は、ばね受け部材54の斜視図である。
【0028】
図において、金属板材をプレス加工によって形成できるばね受け部材54は、環状部(支持部)54aと、環状部54aの外周に連設され周方向に等間隔に配置された3つ以上の爪部54bとを有する。各爪部54bは平板状であって、環状部54aに対し折り曲げられて軸線方向に(組付けられた状態では下部筒部43側に向かって)延在しており、その端部近傍に径方向内側を向くよう塑性変形により形成された半球状または円錐状の凸部54cを有する。
【0029】
図2において、基部4の下部筒部43における下端近傍外周には、周方向に延在する周溝43bが形成されている。組付時には、基部4内に主弁体5を挿入した状態で、外側コイルばね53を周囲弁体52と下部筒部43との環状隙間に挿入し、その上端を外周段部52aに当接させたのち、基部4の下方からばね受け部材54を接近させる。
【0030】
このとき、外側コイルばね53の下端が、ばね受け部材54の環状部54aの上面に当接し、爪部54bが下部筒部43における下端外周に当接する。さらにばね受け部材54を上昇させると、凸部54cが下部筒部43の外周に乗り上がることで、爪部54bが径方向外側に反るように弾性変形する。ばね受け部材54を上昇させ続けると、
図2に示すように凸部54cが周溝43bに係合することにより、爪部54bが弾性変形より復帰するが、弾性変形の一部が残存することで、凸部54cは周溝43bに向かって付勢され、これによりばね受け部材54は下部筒部43に取り付けられ、脱落することが抑制される。環状部54aは、主弁座23bの径方向外方に位置すると好ましい。外側コイルばね53とばね受け部材54を組付けた基部4は、その後の工程で弁本体2に組付けられる。
【0031】
このように、特殊工具を用いることなく作業者の手により、ばね受け部材54をワンタッチで、しかも下部筒部43に対する軸線L回りの爪部54bの位相にかかわらず組み付けることができるため、組立工数の低減を図ることができる。また、下部筒部43の周溝43bは汎用の切削工具により形成でき、さらにばね受け部材54は、プレス成形などにより形成できるため、比較的安価に製作できる。なお、外側コイルばね53及びばね受け部材54の組付は、基部4の天地を逆にして行ってもよい。
【0032】
さらに、周溝43bの代わりに、下部筒部43の周方向に沿って等間隔に、凸部54cと同数の凹部を形成することもできる。かかる場合、組付時には、下部筒部43の凹部に対して軸線L回りの爪部54bの位相を合わせて、ばね受け部材54を押し込む必要があるが、組付後においては、凹部と凸部54cの係合によって下部筒部43とばね受け部材54との相対回動が抑えられる。これにより、両者間の相対摺動に起因した摩耗が抑制されるため、パイロット式電磁弁1を通過する流体に混入するおそれのある摩耗粉の量を減少させることができる。
【0033】
(パイロット式電磁弁の動作)
図1に示すように、内側コイルばね37の付勢力により、中央弁体51が下方に付勢されて主弁座23bに着座した閉弁状態では、高圧流路22を介して低圧流路23へと流体は流れない。かかる閉弁状態では、高圧流路22の流体圧が、主弁室MC及び部品同士の隙間を介して副弁室SCに伝達され、副弁室SC内の流体圧も高圧となっているが、円筒状端部23aの内側は、それに対して低圧となっている。
【0034】
閉弁状態から、外部の電源より配線HNを介して巻線32aに電力が供給されると、ソレノイドが励磁されてON状態となり、プランジャ36が内側コイルばね37の付勢力に抗して吸引子33側に引き上げられ、パイロット弁体36dが主弁体5から離れてパイロット弁口51aが開く。
【0035】
パイロット弁口51aが開くと、副弁室SC内の流体が、パイロット弁口51aを介して低圧流路23へと流出するため、主弁室MC内の流体圧に対して副弁室SC内の流体圧が低下し、主弁体5を下方に押圧する押圧力が減少することで、上方への押圧力及び外側コイルばね53の付勢力が優勢となって、主弁体5は基部4に対して上昇する。主弁体5の上昇により、中央弁体51が主弁座23bから離間して開弁状態となり、主弁室MC内の流体は、中央弁体51と主弁座23bとの間の隙間を介して、低圧流路23側へと流出する。
【0036】
これに対し、開弁状態から巻線32aへの電力供給が遮断されると、ソレノイドの励磁が中断してOFF状態となるため、プランジャ36が内側コイルばね37の付勢力により吸引子33側へと押し戻され、パイロット弁体36dが主弁体5に近接してパイロット弁口51aに着座して遮蔽する。
【0037】
パイロット弁口51aが遮蔽されると、パイロット弁口51aから低圧流路23への流体の流出が停止し、それにより副弁室SC内の流体圧が増大するため、副弁室SC内の流体圧の増大に伴って、主弁体5が下方に押圧される。主弁体5が下降することで、中央弁体51の下面が主弁座23bに着座して閉弁状態となり、主弁室MC内の流体が、中央弁体51と主弁座23bとの間の隙間を介して、低圧流路23側へと流出することが阻止される。
【0038】
(変形例1)
図5(a)は、変形例にかかるばね受け部材54Aの平面図であり、
図5(b)は、
図5(a)に示すばね受け部材54AをB-B線で切断して側面視した断面図である。
図6は、ばね受け部材54Aの斜視図である。ばね受け部材54Aも、上述した実施形態のパイロット式電磁弁1に使用することができる。
【0039】
図において、金属板材をプレス加工によって形成できるばね受け部材54Aは、環状部(支持部)54Aaと、環状部54Aaの外周に連設され周方向に等間隔に配置された3つ以上の爪部54Abとを有する。各爪部54Abは、環状部54Aaに対し折り曲げられて軸線方向に延在しており、端部近傍に径方向内側を向いた半球状の凸部54Acを有する。爪部54Ab,及び凸部54Acは、上述した実施形態と同様な構成である。
【0040】
さらに、環状部54Aaは、周方向に隣接する爪部54Abの中間位置において、ばね片54Adを有する。少なくとも3つ以上のばね片54Adは、環状部54Aaの外周の一部をL字スリット状にカットすることで、環状部54Aaの外周に沿った方向に延在する片持ち状に形成できる。ばね片54Adの一端は環状部54Aaに連結され、その他端(先端)は、環状部54Aaの上面から持ち上げられてなる。ばね片54Adの先端は、半円状に形成されていると、相手部品の傷つきが防止されるので好ましい。
【0041】
図2を参照して、凸部54Acを周溝43bに係合させることにより、ばね受け部材54Aを下部筒部43に取り付けると、ばね片54Adが下部筒部43の下端に当接して弾性変形する。ばね片54Adの弾性変形により、ばね受け部材54Aは下方に付勢され、凸部54Acは周溝43bの下縁に向かって押圧され固定される。このように下部筒部43に対してばね受け部材54Aの当接部を増やすことで、周溝43bに対する凸部54Acのがたつきが抑制される。周溝43bの代わりに、下部筒部43に凹部を設けて凸部54Acを係合させる場合も同様である。
【0042】
(変形例2)
図7(a)は、別の変形例にかかるばね受け部材54Bの平面図であり、
図7(b)は、
図7(a)に示すばね受け部材54BをC-C線で切断して側面視した断面図である。
図8は、ばね受け部材54Bの斜視図である。
図9は、
図7(a)に示すばね受け部材54Bの矢印Dで示す部位を拡大して示す断面図である。ばね受け部材54Bも、上述した実施形態のパイロット式電磁弁1に使用することができる。
【0043】
図において、金属板材をプレス加工によって形成できるばね受け部材54Bは、環状部(支持部)54Baと、環状部54Baの外周に連設され周方向に等間隔に配置された3つ以上の爪部54Bbとを有する。各爪部54Bbは、環状部54Baに対し折り曲げられて軸線方向に延在している。
【0044】
各爪部54Bbには、その上端から環状部54Baに向かってせん断加工を施すことにより、複数(ここでは2つ)のスリット54Bcが平行に形成される。スリット54Bcを形成することにより、爪部54Bbの上端部側は、中央の中央爪54Bdと、中央爪54Bdを挟んで両側に配置される一対の側部爪54Beとに分けられることとなる。このため、爪部54Bbの下部側と同じ方向に延在する側部爪54Beに対し、中央爪54Bdは、側部爪54Beとは異なる方向に延在可能となる。ここでは、中央爪54Bdは、
図9に示すように、側部爪54Beに対して環状部54Baの径方向内側に向かって突出するように湾曲状に曲げられる。このとき、中央爪54Bdの上端における径方向内側縁は、側部爪54Beの上端における径方向内側縁よりも径方向外側にあると好ましく、それにより組付時における下部筒部43との干渉を回避できる。中央爪54Bdの突出部が、凸部を構成する。
【0045】
図2を参照して、中央爪54Bdを周溝43bに係合させることにより、ばね受け部材54Bを下部筒部43に取り付けることができる。本変形例においては、側部爪54Beを下部筒部43の外周に当接させながら、中央爪54Bdのみ周溝43bに係合させることができるため、ばね受け部材54Bの保持力をより高めることができる。周溝43bの代わりに、下部筒部43に凹部を設けて中央爪54Bdを係合させる場合も同様である。
【0046】
(第2の実施形態)
図10は、第2の実施形態にかかるパイロット式電磁弁1Cの縦断面図である。
図11は、外側コイルばね53の周辺を拡大して示す断面図である。
【0047】
本実施形態のパイロット式電磁弁1Cは、第1の実施形態に対し、弁本体2Cと、基部4Cと、ばね受け部材54Cの形状が異なる。それ以外の構成については、上述した実施形態と同様であるため、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0048】
弁本体2Cは、軸線Lに直交する方向に延在する本体部20Cと、本体部20Cの中央に軸線Lと同軸に形成された中空の中央円筒部21Cとを連設してなる。本実施形態においては、中央円筒部21Cに基部4Cの縮径部41Cにつながる拡径部42Cを嵌合させ、中央円筒部21Cの上端のカシメ部21Caを径方向内側にカシメて塑性変形させることにより、基部4Cが弁本体2Cに取り付けられる。
【0049】
基部4Cの下部筒部43Cは、第1の実施形態に対して、下端部側が切除された形状を有し、それに伴い周溝43Cbが上方にシフトした位置で下部筒部43Cの外周に形成されている。また、周溝43Cbが上方にシフトしたことに応じて、ばね受け部材54Cの爪部54Cbが上方に向かって延長されている。
【0050】
図11に示すように、凸部54Ccを周溝43Cbに係合させることにより、ばね受け部材54Cを下部筒部43Cに取り付けることができる。かかる場合、環状部(支持部)54Caは、第1の実施形態と同様な位置に配置されるため、環状部54Caによって下端が支持される外側コイルばね53の全長が変わることなく、外側コイルばね53の付勢力を維持することができる。本実施形態によれば、第1の実施形態に対して、下部筒部43Cの小型化・軽量化を図ることができ、例えばパイロット式電磁弁1Cを車載用途に用いた場合、車両の軽量化などを図ることができる。また、ばね受け部材54Bを用いることで下部筒部43Cが弁室に張り出す体積が減少し、弁室容量が拡大するため圧損を低減する効果がある。
【0051】
上述した実施形態では、パイロット弁体とプランジャとが一体であるが、パイロット弁体とプランジャとを別体としてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1、1C パイロット式電磁弁
2、2C 弁本体
20、20C 本体部
21Ca カシメ部
21 中央円筒部
22 高圧流路
23 低圧流路
23b 主弁座
3 駆動部
31 ハウジング
32a 巻線
32b ボビン
33 吸引子
34 止めねじ
35 案内スリーブ
36 プランジャ
36d パイロット弁体
4、4C 基部
41 縮径部
42 拡径部
43 下部筒部
43b 周溝
5 主弁体
51 中央弁体
51a パイロット弁口
52 周囲弁体
53 外側コイルばね
53a 円筒巻き部
53b 円錐巻き部
54、54A、54B、54C ばね受け部材
54a、54Aa、54Ba、54Ca 環状部
54b、54Ab、54Bb、54Cb 爪部
54c、54Ac、54Cc 凸部
54Ad ばね片
54Bc スリット
54Bd 中央爪
54Be 側部爪
MC 主弁室