IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンケン電気株式会社の特許一覧

特開2023-179877DCDCコンバータ、集積回路及び目標電圧生成回路
<>
  • 特開-DCDCコンバータ、集積回路及び目標電圧生成回路 図1
  • 特開-DCDCコンバータ、集積回路及び目標電圧生成回路 図2
  • 特開-DCDCコンバータ、集積回路及び目標電圧生成回路 図3
  • 特開-DCDCコンバータ、集積回路及び目標電圧生成回路 図4
  • 特開-DCDCコンバータ、集積回路及び目標電圧生成回路 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179877
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】DCDCコンバータ、集積回路及び目標電圧生成回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
H02M3/155 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092763
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】赤月 賢司
(72)【発明者】
【氏名】野島 高明
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA05
5H730AS01
5H730AS05
5H730BB13
5H730BB57
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD41
5H730FD61
5H730FG01
(57)【要約】
【課題】高精度な電源電圧を出力できるDCDCコンバータを提供する。
【解決手段】フィードバック電圧VFBと目標電圧VREFとの誤差信号によって出力電圧Voutを制御するDCDCコンバータであって、温度センサ18と、基準電圧VBGを生成するBG回路12と、温度Tの二次関数を用いて、温度センサ18の検出温度から補償値を算出する補償演算器24と、目標初期値DREF0を補償値によって補正して目標値DREFを生成する減算器25と、基準電圧VBGを用いて目標値DREFを目標電圧VREFに変換するDAC22と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィードバック電圧と目標電圧との誤差信号によって出力電圧を制御するDCDCコンバータであって、
温度センサと、
基準電圧を生成する基準電圧生成回路と、
温度の二次関数を用いて、前記温度センサの検出温度から補償値を算出する補償演算器と、
目標初期値を前記補償値によって補正して目標値を生成する補正器と、
前記基準電圧を用いて前記目標値を前記目標電圧に変換するデジタルアナログ変換器と、を備えることを特徴とするDCDCコンバータ。
【請求項2】
前記二次関数の係数が補正係数として出荷前検査時に書き込まれたメモリを備え、
前記補償演算器は、前記メモリの前記補正係数を用いて前記補償値を算出することを特徴とする請求項1に記載のDCDCコンバータ。
【請求項3】
前記補正係数は、異なる3通りの温度環境下において、前記デジタルアナログ変換器によって前記目標初期値から変換した目標初期電圧を用いた制御でそれぞれ実測された前記フィードバック電圧に基づいて、前記フィードバック電圧を前記二次関数としてモデル化して算出されることを特徴とする請求項2に記載のDCDCコンバータ。
【請求項4】
異なる3通りの温度環境下において、前記デジタルアナログ変換器によって前記目標初期値から変換した目標初期電圧を用いた制御でそれぞれ実測された前記フィードバック電圧が実測値として出荷前検査時に書き込まれたメモリを備え、
前記補償演算器は、前記メモリの前記実測値に基づいて、前記フィードバック電圧を前記二次関数としてモデル化して前記二次関数の係数を補正係数として算出し、算出した前記補正係数を用いて前記補償値を算出することを特徴とする請求項1に記載のDCDCコンバータ。
【請求項5】
前記補正係数は、少なくとも異なる3通りの温度環境下において、前記デジタルアナログ変換器によって前記目標初期値から変換した目標初期電圧を用いた制御でそれぞれ実測された前記フィードバック電圧に基づいて、前記フィードバック電圧をモデル化して算出されることを特徴とする請求項2に記載のDCDCコンバータ。
【請求項6】
異なる3通りの温度環境下において、前記デジタルアナログ変換器によって前記目標初期値から変換した目標初期電圧を用いた制御でそれぞれ実測された前記基準電圧が実測値として出荷前検査時に書き込まれたメモリを備え、
前記補償演算器は、前記メモリの前記実測値に基づいて、前記基準電圧を前記二次関数としてモデル化して前記二次関数の係数を補正係数として算出し、算出した前記補正係数を用いて前記補償値を算出することを特徴とする請求項1に記載のDCDCコンバータ。
【請求項7】
DCDCコンバータの出力電圧をフィードバック電圧と目標電圧との誤差信号によって制御する集積回路であって、
温度センサと、
基準電圧を生成する基準電圧生成回路と、
温度の二次関数を用いて、前記温度センサの検出温度から補償値を算出する補償演算器と、
目標初期値を前記補償値によって補正して目標値を生成する補正器と、
前記基準電圧を用いて前記目標値を前記目標電圧に変換するデジタルアナログ変換器と、を備えることを特徴とする集積回路。
【請求項8】
フィードバック電圧と比較する目標電圧を生成する目標電圧生成回路であって、
基準電圧を生成する基準電圧生成回路と、
温度の二次関数を用いて、温度センサから入力される検出温度から補償値を算出する補償演算器と、
目標初期値を前記補償値によって補正して目標値を生成する補正器と、
前記目標値を前記目標電圧に変換するデジタルアナログ変換器と、を備えることを特徴とする目標電圧生成回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準電圧源を使用するDCDCコンバータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
DCDCコンバータは、安定した基準電圧を生成するために、基準電圧としてバンドギャップリファレンス回路を一般的に使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5590240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、バンドギャップリファレンス回路は、僅かな温度特性を有しているためDCDCコンバータの出力電圧にも温度依存性が発生する。近年、DCDCコンバータは、負荷となるSoCやFPGAに対して高精度な電源電圧が求められる。従って、DCDCコンバータの僅かな温度依存性は、高精度な電源電圧が求められる負荷の要求精度を満たすことが困難となってきている。
【0005】
温度特性を改善する技術として、予めフラッシュメモリに記憶された係数を基に温度センサの値に応じて制御することで出力電流の温度依存性を改善する内容が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1は、温度特性自体がばらついた場合には最適に温度補償を行えない。特許文献1は、出力電流源に限定された内容であるため、DCDCコンバータの出力電圧の温度特性を改善できない。
【0007】
本発明は斯かる問題点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高精度な電源電圧を出力できるDCDCコンバータを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るDCDCコンバータ及び目標電圧生成回路は、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
本発明に係るDCDCコンバータは、フィードバック電圧と目標電圧との誤差信号によって出力電圧を制御するDCDCコンバータであって、温度センサと、基準電圧を生成する基準電圧生成回路と、温度の二次関数を用いて、前記温度センサの検出温度から補償値を算出する補償演算器と、目標初期値を前記補償値によって補正して目標値を生成する補正器と、前記基準電圧を用いて前記目標値を前記目標電圧に変換するデジタルアナログ変換器と、を備えることを特徴とする。
本発明に係る集積回路は、DCDCコンバータの出力電圧をフィードバック電圧と目標電圧との誤差信号によって制御する集積回路であって、温度センサと、基準電圧を生成する基準電圧生成回路と、温度の二次関数を用いて、前記温度センサの検出温度から補償値を算出する補償演算器と、目標初期値を前記補償値によって補正して目標値を生成する補正器と、前記基準電圧を用いて前記目標値を前記目標電圧に変換するデジタルアナログ変換器と、を備えることを特徴とする。
本発明に係る目標電圧生成回路は、フィードバック電圧と比較する目標電圧を生成する目標電圧生成回路であって、基準電圧を生成する基準電圧生成回路と、温度の二次関数を用いて、温度センサから入力される検出温度から補償値を算出する補償演算器と、目標初期値を前記補償値によって補正して目標値を生成する補正器と、前記目標値を前記目標電圧に変換するデジタルアナログ変換器と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のDCDCコンバータは、フィードバック電圧との誤差信号の生成に用いる目標電圧を温度の二次関数を用いて算出した補償値で補正しているため、出力電圧をSoCやFPGA等の高精度な電源電圧として出力できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係るDCDCコンバータの実施の形態の構成を示す図である。
図2】出力電圧のバラツキを示す図である。
図3図1に示す目標電圧生成回路の動作を説明するフローチャートである。
図4】IC検査構成を説明するフローチャートである。
図5】従来制御の出力電圧と本発明の制御による出力電圧とを比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
本実施の形態のDCDCコンバータは、図1を参照すると、制御回路1と、リアクトルLと、コンデンサC1と、抵抗R1、R2と、を備え、入力電圧Vinを出力電圧Voutに変換して負荷PLに出力する。
【0013】
制御回路1は、パワーMOSFET等のスイッチング素子を内蔵したスイッチングレギュレータIC等の集積回路で構成される。制御回路1は、入力端子INと、グランド端子GNDと、スイッチング出力端子SWと、フィードバック電圧入力端子VOと、データ入力端子Dと、を備える。
【0014】
制御回路1はスイッチ素子Q1及びスイッチ素子Q2が直列に接続された直列回路11を備える。スイッチ素子Q1及びスイッチ素子Q2は、パワーMOSFET等のスイッチング素子である。直列回路11は、入力電圧Vinが入力される入力端子INと、接地電位(グランド:GND)に接続されたグランド端子GNDとの間に接続されている。スイッチ素子Q1は、入力端子IN側(高電位側)に配置され、スイッチ素子Q2は、グランド端子GND側(低電位側)に配置されている。スイッチ素子Q1とスイッチ素子Q2との接続点は、スイッチング出力端子SWに接続されている。
【0015】
制御回路1のスイッチング出力端子SWは、リアクトルLとコンデンサC1とを介して接地電位に接続され、リアクトルLとコンデンサC1との接続点が出力電圧Voutの出力端となる。
【0016】
抵抗R1と抵抗R2とは、リアクトルLとコンデンサC1との接続点と接地電位との間に接続されている。抵抗R1と抵抗R2との接続点は、制御回路1のフィードバック電圧入力端子VOに接続され、出力電圧Voutを抵抗R1、R2で分圧した電圧がフィードバック電圧VFBとしてフィードバック電圧入力端子VOに入力される。
【0017】
制御回路1は、フリップフロップ12と、発振回路(OSC)13と、ドライブ回路(DRV)14と、アンプ15と、コンパレータ16と、電流検出回路(CS)17と、温度センサ18と、目標電圧生成回路2と、を備える。
【0018】
フリップフロップ12は、RS型である。フリップフロップ12の出力(出力端子Q)は、ドライブ回路14に入力され、ドライブ回路14は、フリップフロップ12の出力に応じてスイッチ素子Q1及びスイッチ素子Q2をオンオフ制御する。
【0019】
フリップフロップ12は、発振回路13からのクロック信号がセット端子Sに入力される。発振回路13で生成されるクロック信号は、スイッチング周期を定める信号である。発振回路13からのクロック信号によってフリップフロップ12がセットされると、ドライブ回路14は、スイッチ素子Q1をオン制御すると共に、スイッチ素子Q2をオフ制御する。
【0020】
フィードバック電圧入力端子VOに入力されたフィードバック電圧VFBは、抵抗R4を介してアンプ15の反転入力端子に入力される。アンプ15は、出力がコンデンサC2及び抵抗R3を介して負帰還される差動増幅器である。アンプ15は、フィードバック電圧VFBと非反転入力端子の目標電圧VREFとの誤差増幅信号を出力する。
【0021】
フィードバック電圧VFBと目標電圧VREFとの誤差増幅信号は、コンパレータ16の反転入力端子に入力される。コンパレータ16の非反転入力端子は、電流検出回路17によって検出された電流信号が入力される。電流検出回路17は、ハイサイド側でスイッチ素子Q1を流れる電流を検出し、電流信号としてコンパレータ16の非反転入力端子に入力する。
【0022】
フリップフロップ12は、コンパレータ16の出力がリセット端子Rに入力され、電流信号が誤差増幅信号を上回ると、リセットされる。フリップフロップ12がリセットされると、ドライブ回路14は、スイッチ素子Q1をオフ制御すると共に、スイッチ素子Q2をオン制御する。これにより、DCDCコンバータは、ピーク電流モード制御で動作する。
【0023】
目標電圧生成回路2は、アンプ15の非反転入力端子に入力する目標電圧VREFを生成する。目標電圧生成回路2は、BG回路(バンドギャップリファレンス回路)21と、DAC(デジタルアナログ変換回路)22と、メモリ23と、補償演算器24と、減算器25と、を備える。
【0024】
DAC22は、BG回路21で生成される基準電圧VBGを用いて目標値DREFを目標電圧VREFに変換してアンプ15の非反転入力端子に入力する。
【0025】
BG回路21は、トランジスタのpn接合の温度特性を利用して、安定した基準電圧VBGを生成する基準電圧生成回路であるが、僅かな温度特性を有している。
【0026】
DCDCコンバータは、BG回路21が有している僅かな温度特性を、補償値で補正した目標値DREFを使用することでキャンセルしている。補償値は、温度センサ18によって検出された温度Tに基づいて補償演算器24で生成される。
【0027】
温度センサ18は、温度を検出するセンサ回路である。温度センサ18は、温度依存性を有する回路素子を利用して生成した温度検出電圧(バイポーラトランジスターのベース・エミッター間電圧など)を、温度検出電圧として補償演算器24に出力する。温度センサ18は、制御回路1内であって、BG回路21の温度を正確に検出可能な位置に配置されている。
【0028】
DCDCコンバータの出力電圧Voutは、図2に示すように、素子のバラツキ等に起因する絶対値バラツキを有すると共に、それぞれ異なる温度特性を有している。図2は、5台のDCDCコンバータが出力する出力電圧Voutを-40℃~150℃の範囲でそれぞれ測定したグラフである。出力電圧Voutの温度特性は、低温域及び高温域で上昇する傾向を示す。
【0029】
そこで、フィードバック電圧VFB(出力電圧Vout)と温度Tの関係を、以下に示す式(1)の様に2次関数式でモデル化した。式(1)において、係数a,bは、温度特性係数を、係数cは、フィードバック電圧VFBの極値を示す。
【0030】
【数1】
【0031】
式(1)を変形することによって、温度特性補正式は、式(2)で与えられる。
【0032】
【数2】
【0033】
Δcは、オフセット係数であり、温度特性係数a、bと共に、補正係数としてデータ入力端子Dからメモリ23に書き込まれる。補正係数a、b、Δcは、実測によって求められた値である。
【0034】
メモリ23は、フラッシュメモリ等の構成された記憶部であり、目標初期値DREF0が、補正係数a、b、Δcと共に記憶される。目標初期値DREF0と、補正係数a、b、Δcとは、異なる箇所に記憶しても良い。
【0035】
補償演算器24は、図3を参照すると、電源オンに伴って補正係数a、b、Δcをロードする(ステップS01)。次に、補償演算器24は、温度センサ18から入力される温度Tを取得し(ステップS02)、式(2)を用いて補償値を算出する(ステップS03)。
【0036】
減算器25は、メモリ23に記憶されている目標初期値DREF0をロードし、目標初期値DREF0から補償演算器24で算出された補償値を減算することで、目標値DREFを生成する(ステップS04)。すなわち、減算器25は、目標初期値DREF0を補償値によって補正して目標値DREFを生成する補正器として機能する。
【0037】
【数3】
【0038】
DAC22は、BG回路21で生成される基準電圧VBGを用い、DA変換係数を乗算することで、目標値DREFを目標電圧VREFに変換する(ステップS05)。
【0039】
【数4】
【0040】
補償演算器24は、温度センサ18から入力される温度Tの変化を所定の間隔で監視する(ステップS06)。そして、温度Tに変化があった場合、補償演算器24は、ステップS03に戻り、変化があった温度Tに基づいて補償値を算出する。これにより、温度Tの変化に伴って目標電圧VREFが変更され、動作中の温度Tの変化に対応することができる。
【0041】
補正係数a、b、Δcは、出荷前のIC検査工程において決定して、メモリ23に書き込む。IC検査工程は、メモリ23に目標初期値DREF0のみが記憶されている状態である。IC検査工程でDCDCコンバータを動作させると、DAC22は、目標初期値DREF0を目標初期電圧VREF0に変換し、DCDCコンバータは、フィードバック電圧VFBと目標初期電圧VREF0との誤差増幅信号によって制御する。
【0042】
図4を参照すると、DCDCコンバータを温度Tの低温環境(例えば、定格温度の下限)に置いて動作させ、フィードバック電圧VFB1を測定する(ステップS11)。
【0043】
次に、DCDCコンバータを温度Tの常温環境(例えば、室温)に置いて動作させ、フィードバック電圧VFB2を測定する(ステップS12)。
【0044】
次に、DCDCコンバータを温度Tの高温環境(例えば、定格温度の上限)に置いて動作させ、フィードバック電圧VFB3を測定する(ステップS13)。低温-常温-
高温の順番に測定を行うことで測定時間を短縮できるが、測定の順番には特に制限はない。
【0045】
次に、温度Tでのフィードバック電圧VFB1、温度Tでのフィードバック電圧VFB2、温度Tでのフィードバック電圧VFB3を用いることで、補正係数a、b、Δcを算出する(ステップS14)。温度T、T、Tは、温度センサ18の検出値とする良い。
この場合、温度センサ18によって検出された温度Tを出力する温度出力端子を制御回路1に設けることで、フィードバック電圧VFB1、VFB2、VFB3と共にそれぞれ温度T、T、Tを測定することができる。
【0046】
式(1)の連立方程式を解くことで、温度特性係数a、b、cは、以下の式(5)、(6)、(7)で算出される。
【0047】
【数5】
【0048】
【数6】
【0049】
【数7】
【0050】
また、オフセット係数Δcは、式(8)に示すように、温度T(常温環境)でのフィードバック電圧VFB2と目標初期電圧VREF0と差分とした。目標初期電圧VREF0は、目標初期値DREF0にBG回路21のDA変換係数を乗算した定数である。
【0051】
【数8】
【0052】
一方、c及びΔcの計算式が非常に複雑であるため、計算の効率や設備の性能などを考慮し、cを温度T(常温環境)でのフィードバック電圧(VFB2)に設定し、Δcを常温環境でのフィードバック電圧(VFB2)と目標初期電圧(VREF0)との差分にすることも可能である。
この場合の簡略化したΔcの算出方法を式(9)に示す。ここで、目標初期電圧(VREF0)は、目標初期値(DREF0)にBG回路21のDA変化係数を乗算した定数である。
【0053】
【数9】
【0054】
次に、ステップS14で算出した補正係数a、b、Δcをデータ入力端子Dからメモリ23に書き込み(ステップS15)、IC検査工程を終了する。
【0055】
式(5)、(6)、(7)は、補償演算器24が実行することもできる。この場合、温度T、T、Tと、フィードバック電圧VFB1、VFB2、VFB3と、をデータ入力端子Dからメモリ23に書き込むことで、補償演算器24は、補正係数a、b、Δcを算出し、さらに補償値を算出する。
【0056】
オフセット係数Δcは、メモリ23に補正係数a、b、Δcを書き込んだ後に再測定したフィードバック電圧VFBによって修正しても良い。この場合、オフセット係数Δcは、再測定したフィードバック電圧VFBと目標初期電圧VREF0との差分で修正する。このオフセット係数Δcの修正工程は、フィードバック電圧VFB1、VFB2、VFB3の最後の測定工程に継続して行うと、作業時間を短縮できる。
【0057】
図5は、フィードバック電圧VFBと目標初期電圧VREF0との誤差増幅信号による従来の制御と、フィードバック電圧VFBと補償値で補正された目標電圧VREFとの誤差増幅信号による本発明の制御とを比較したグラフである。図5において、従来の制御で出力された出力電圧Voutは、点線で、本発明の制御で出力された出力電圧Voutは、実線でそれぞれ示す。
【0058】
図5(a)、(b)、(c)に示すように、従来の制御で温度特性がばらついた場合にも、本発明の制御は、温度依存性をキャンセルできる。さらに、絶対値バラツキの補正も同時に行うことができるため、超高精度な出力電圧を発生することができる。
【0059】
本実施の形態では、ピーク電流モード制御のDCDCコンバータ(Buckコンバータ)について説明したが、目標電圧生成回路2は、目標電圧VREFを使用する各種の電子回路(例えば、他の電流モード制御、電圧モード制御、ヒステリシス制御等のコンバータ)に適用できる。また、電源トポロジーとしては、Boostコンバータ、SEPICコンバータ、CUKコンバータ、フラバックコンバータなど、様々な電源トポロジーに適応できる。
【0060】
本実施の形態では、フィードバック電圧VFBを測定して補正係数a、b、Δcを算出したが、基準電圧VBGの出力端子を設け、基準電圧VBGを直接測定して補正係数a、b、Δcを算出しても良い。この場合は、基準電圧VBGを温度依存性に起因する出力電圧Voutの温度依存性を改善できる。基準電圧VBGを温度依存性が出力電圧Voutの温度依存性の主要因である場合に有効である。
【0061】
以上説明したように、本実施の形態は、フィードバック電圧VFBと目標電圧VREFとの誤差信号によって出力電圧Voutを制御するDCDCコンバータであって、温度センサ18と、基準電圧VBGを生成するBG回路21(基準電圧生成回路)と、温度Tの二次関数を用いて、温度センサ18の検出温度から補償値を算出する補償演算器24と、目標初期値DREF0を補償値によって補正して目標値DREFを生成する減算器25(補正器)と、基準電圧VBGを用いて目標値DREFを目標電圧VREFに変換するDAC22(デジタルアナログ変換器)と、を備える。
この構成により、フィードバック電圧VFBとの誤差信号の生成に用いる目標電圧VREFを温度Tの二次関数を用いて算出した補償値で補正しているため、出力電圧VoutをSoCやFPGA等の高精度な電源電圧として出力できる。
【0062】
さらに、本実施形態において、二次関数の係数が補正係数a、b、Δcとして出荷前検査時に書き込まれたメモリ23を備え、補償演算器24は、メモリ23の補正係数a、b、Δcを用いて補償値を算出する。
この構成により、補正係数a、b、Δcは、IC検査工程にて製品の温度特性に応じたものを書き込むことができる。補償演算器24は、製品毎の補正係数a、b、Δcを用いて補償値を算出できるため、製品毎に最適な温度補償を実現できる。さらに、製品毎の補正係数a、b、Δcを用いて算出された補償値は、同時に絶対値ばらつきも補正することができるため、トータルでの出力電圧Voutの精度も改善できる。
【0063】
さらに、本実施形態において、補正係数a、b、Δcは、異なる3通りの温度環境下(温度T、T、T)において、DAC22によって目標初期値DREF0から変換した目標初期電圧VREF0を用いた制御でそれぞれ実測されたフィードバック電圧VFB1、VFB2、VFB3に基づいて、フィードバック電圧VFBを温度の二次関数としてモデル化して算出される。
【0064】
さらに、本実施形態において、出荷前検査時に書き込まれた、異なる3通りの温度環境下(温度T、T、T)において、DAC22によって目標初期値DREF0から変換した目標初期電圧VREF0を用いた制御でそれぞれ実測されたフィードバック電圧VFB1、VFB2、VFB3を実測値として記憶するメモリ23を備え、補償演算器24は、メモリ23の実測値(温度T、T、T、フィードバック電圧VFB1、VFB2、VFB3)に基づいて、フィードバック電圧VFBを温度の二次関数としてモデル化して補正係数a、b、Δcを算出し、算出した補正係数a、b、Δcを用いて補償値を算出する。
【0065】
なお、補正係数a、b、Δcの算出方法は、本発明の実施形態に限定されず、最小二乗法などによって算出しても良い。
また、IC検査工程におけるフィードバック電圧の測定は、異なる3通りの温度環境下に限定されるものではなく、異なる4通り、異なる5通りのように、測定温度を増やすことも可能である。
【0066】
なお、本発明が上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、上記構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。なお、同一構成要素には、各図において、同一符号を付している。
【符号の説明】
【0067】
1 制御回路
2 目標電圧生成回路
11 直列回路
12 フリップフロップ
13 発振回路(OSC)
14 ドライブ回路
15 アンプ
16 コンパレータ
17 電流検出回路(CS)
18 温度センサ
21 BG回路(バンドギャップリファレンス回路)
22 DAC(デジタルアナログ変換回路)
23 メモリ
24 補償演算器
25 減算器
図1
図2
図3
図4
図5