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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179885
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】ダンパ装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/134 20060101AFI20231213BHJP
   F16D 7/02 20060101ALI20231213BHJP
   F16D 43/21 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
F16F15/134 A
F16D7/02 A
F16D43/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092783
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】上原 宏
【テーマコード(参考)】
3J068
【Fターム(参考)】
3J068AA07
3J068BA02
3J068BB05
3J068CB05
3J068GA02
3J068GA08
(57)【要約】
【課題】ダンパ装置のトルクリミッタユニットに対するダンパユニットの径方向の位置ずれを抑える。
【解決手段】このダンパ装置は、トルクリミッタユニット10と、ダンパユニット20と、位置決め構造と、を備えている。トルクリミッタユニット10は、フライホイール2の軸方向の第1側の面に固定されるダンパカバー11を有する。ダンパユニット20は、外周端部がダンパカバー11の内周端部よりも軸方向の第2側に配置され、トルクリミッタユニット10を介してフライホイール2との間で動力を伝達する。位置決め構造は、摩擦ディスク13のコアプレート16の外周面をトルクリミッタユニットのダンパカバー11の内面に当接可能にして、トルクリミッタユニット10対してダンパユニット20を径方向に位置決めする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源側の部材に装着可能なダンパ装置であって、
前記動力源側の部材の軸方向の第1側の面に固定される環状のカバープレートを有するトルクリミッタユニットと、
外周端部が前記カバープレートの内周端部よりも軸方向の第2側に配置され、前記トルクリミッタユニットを介して前記動力源との間で動力を伝達するダンパユニットと、
前記トルクリミッタユニットに対して前記ダンパユニットを径方向に位置決めするための位置決め構造と、
備えたダンパ装置。
【請求項2】
前記カバープレートは、円板状の摩擦部と、前記摩擦部の径方向外方に設けられ前記動力源側の部材に装着される取付部と、を有し、
前記トルクリミッタユニットは、
前記カバープレートの摩擦部の軸方向の第2側に配置され、前記摩擦部に押圧される摩擦ディスクと、
をさらに有し、
前記ダンパユニットは円板状の入力回転体を有し、前記入力回転体は、外周端部が前記カバープレートの摩擦部の軸方向の第2側に位置するように配置されるとともに、外周端部の軸方向の第1側の側面に前記摩擦ディスクの内周部が固定されており、
前記位置決め構造は、前記摩擦ディスクの外周端面を前記トルクリミッタユニットのカバープレートに当接可能とすることにより、前記トルクリミッタユニットに対して前記ダンパユニットを径方向に位置決めする、
請求項1に記載のダンパ装置。
【請求項3】
前記カバープレートの摩擦部は、前記取付部に対して軸方向の第1側にオフセットされており、
前記カバープレートは、軸方向に延び前記摩擦部と前記取付部とを連結する連結部をさらに有し、
前記摩擦ディスクの外周端面は、前記連結部の内面に当接可能である、
請求項2に記載のダンパ装置。
【請求項4】
前記摩擦ディスクは、コアプレートと、前記コアプレートの両面に固定された1対の摩擦部材と、を有し、
前記コアプレートの外周端面は、前記1対の摩擦部材の外周端面よりも径方向外方に突出して前記カバープレートの連結部内面に当接可能である、
請求項3に記載のダンパ装置。
【請求項5】
前記ダンパユニットの入力回転体は、
外周端部の軸方向の第1側の側面に前記コアプレートの内周端部が固定された第1プレートと、
前記第1プレートの軸方向の第2側に前記第1プレートと対向して配置され、前記第1プレートと相対回転不能に固定された第2プレートと、
を有している、
請求項4に記載のダンパ装置。
【請求項6】
前記動力源の部材は、動力源に対してフレキシブルプレートを介して固定される、請求項1から5のいずれかに記載のダンパ装置。
【請求項7】
動力源側の部材に装着可能なダンパ装置であって、
前記動力源側の部材に取り付けられるトルクリミッタユニットと、
前記トルクリミッタユニットを介して前記動力源との間で動力を伝達するダンパユニットと、
前記トルクリミッタユニットに対して前記ダンパユニットを径方向に位置決めするための位置決め構造と、
を備え、
前記トルクリミッタユニットは、
円板状の摩擦部と、前記摩擦部の径方向外方に前記摩擦部に対して軸方向にオフセットされて配置された取付部と、を有する環状のカバープレートと、
前記カバープレートの摩擦部に押圧されるとともに、外周端面が前記カバープレートの内面に当接可能な摩擦ディスクと、
を有し、
前記位置決め構造は、前記摩擦ディスクの外周端面を前記カバープレートの内面に当接させることにより前記トルクリミッタユニットに対して前記ダンパユニットを径方向に位置決めする、
ダンパ装置。
【請求項8】
前記ダンパユニットは、前記摩擦ディスクの内周部が固定された入力側回転体を有し、
前記カバープレートの内周端部と、前記ダンパユニットの入力側回転体の外周端部と、は軸方向にオフセットされて配置されている、請求項7に記載のダンパ装置。
【請求項9】
前記カバープレートは、軸方向に延び前記摩擦部と前記取付部とを連結する連結部をさらに有し、
前記摩擦ディスクは、コアプレートと、前記コアプレートの両面に固定された1対の摩擦部材と、を有し、
前記コアプレートの外周端面は、前記1対の摩擦部材の外周端面よりも径方向外方に突出して前記カバープレートの連結部内面に当接可能である、
請求項7又は8に記載のダンパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパ装置、特に、動力源側の部材に装着可能なダンパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばエンジン及び電動機を備えたハイブリッド車両では、エンジン始動時等において出力側から過大なトルクがエンジン側に伝達するのを防止するために、特許文献1に示されるようなトルクリミッタ機能を有するダンパ装置が用いられている。
【0003】
特許文献1のダンパ装置は、1対のプレート及び複数のトーションスプリングを有するダンパユニットを有しており、このダンパユニットの外周側にトルクリミッタユニットが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-196013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のダンパ装置では、トルクリミッタユニットはフライホイールに固定され、ダンパユニットは変速装置等の入力軸に装着される場合が多い。このような状況において、特にフライホイールがフレキシブルプレート介してエンジン側の部材に固定されている場合、トルクリミッタユニットにおいて、摩擦ディスクに対するコーンスプリングの押圧力が回転中に不均一になる場合がある。このような現象が生じると、摩擦ディスクはダンパユニットに固定されているので、トルクリミッタユニットに対するダンパユニットの径方向位置がずれてしまうという不具合が発生する。
【0006】
本発明の課題は、ダンパ装置の運転中におけるトルクリミッタユニットに対するダンパユニットの径方向の位置ずれを抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の第1側面に係るダンパ装置は、動力源側の部材に装着可能である。このダンパ装置は、トルクリミッタユニットと、ダンパユニットと、位置決め構造と、を備えている。トルクリミッタユニットは、動力源側の部材の軸方向の第1側の面に固定される環状のカバープレートを有する。ダンパユニットは、外周端部がカバープレートの内周端部よりも軸方向の第2側に配置され、トルクリミッタユニットを介して動力源との間で動力を伝達する。位置決め構造は、トルクリミッタユニットに対してダンパユニットを径方向に位置決めする。
【0008】
このダンパ装置では、ダンパユニットの外周端部がカバープレートの内周端部よりも軸方向の第2側に配置されている場合であっても、位置決め構造によって、トルクリミッタユニットに対してダンパユニットを径方向に位置決めすることができる。
【0009】
(2)好ましくは、カバープレートは、円板状の摩擦部と、摩擦部の径方向外方に設けられ動力源側の部材に装着される取付部と、を有している。また、トルクリミッタユニットは、カバープレートの摩擦部の軸方向の第2側に配置され摩擦部に押圧される摩擦ディスクと、をさらに有している。この場合、好ましくは、ダンパユニットは円板状の入力回転体を有し、入力回転体は、外周端部がカバープレートの摩擦部の軸方向の第2側に位置するように配置されるとともに、外周端部の軸方向の第1側の側面に摩擦ディスクの内周部が固定されている。そして、位置決め構造は、摩擦ディスクの外周端面をトルクリミッタユニットのカバープレートに当接可能とすることにより、トルクリミッタユニットに対してダンパユニットを径方向に位置決めする。
【0010】
この装置では、ダンパユニットの外周端部がカバープレートの内周端部よりも軸方向の第2側に配置されている場合であっても、入力回転体の軸方向の第1側に固定された摩擦ディスクの外周端面をトルクリミッタユニットのカバープレートに当接可能とすることによって、トルクリミッタユニットに対してダンパユニットを径方向に位置決めすることができる。
【0011】
(3)好ましくは、カバープレートの摩擦部は、取付部に対して軸方向の第1側にオフセットされている。また、カバープレートは、軸方向に延び摩擦部と取付部とを連結する連結部をさらに有している。そして、摩擦ディスクの外周端面は、連結部の内面に当接可能である。
【0012】
(4)好ましくは、摩擦ディスクは、コアプレートと、コアプレートの両面に固定された1対の摩擦部材と、を有している。この場合、コアプレートの外周端面は、1対の摩擦部材の外周端面よりも径方向外方に突出してカバープレートの連結部内面に当接可能である。
【0013】
この装置では、ダンパユニットが径方向にずれた場合、ダンパユニットに固定された摩擦ディスクのコアプレートの外周端面が、カバープレートの連結部内面に当接する。これにより、トルクリミッタユニットに対するダンパユニットの径方向の位置ずれを抑えることができる。
【0014】
ここで、コアプレートは平板で外径を精度良く管理することができる。このため、コアプレートの外周端面とカバープレートの連結部内面との隙間を精度良く管理でき、ダンパユニットの径方向の位置ずれをさらに小さくすることができる。
【0015】
(5)好ましくは、ダンパユニットの入力回転体は、第1プレートと第2プレートとを有している。第1プレートは、外周端部の軸方向の第1側の側面にコアプレートの内周端部が固定されている。第2プレートは、第1プレートの軸方向の第2側に第1プレートと対向して配置され、第1プレートと相対回転不能に固定されている。
【0016】
(6)好ましくは、動力源の部材は、動力源に対してフレキシブルプレートを介して固定される。
【0017】
(7)本発明の第2側面に係るダンパ装置は、動力源側の部材に装着可能である。このダンパ装置は、動力源側の部材に取り付けられるトルクリミッタユニットと、トルクリミッタユニットを介して動力源との間で動力を伝達するダンパユニットと、トルクリミッタユニットに対してダンパユニットを径方向に位置決めするための位置決め構造と、
を備えている。
【0018】
トルクリミッタユニットは、環状のカバープレートと、摩擦ディスクと、を有している。カバープレートは、円板状の摩擦部と、摩擦部の径方向外方に摩擦部に対して軸方向にオフセットされて配置された取付部と、を有する。摩擦ディスクは、カバープレートの摩擦部に押圧されるとともに、外周端面がカバープレートの内面に当接可能である。そして、位置決め構造は、摩擦ディスクの外周端面をカバープレートの内面に当接させることによりトルクリミッタユニットに対してダンパユニットを径方向に位置決めする。
【0019】
(8)好ましくは、ダンパユニットは、摩擦ディスクの内周部が固定された入力側回転体を有している。そして、カバープレートの内周端部と、ダンパユニットの入力側回転体の外周端部と、は軸方向にオフセットされて配置されている。
【0020】
(9)好ましくは、カバープレートは、軸方向に延び摩擦部と取付部とを連結する連結部をさらに有している。また、摩擦ディスクは、コアプレートと、コアプレートの両面に固定された1対の摩擦部材と、を有している。そして、コアプレートの外周端面は、1対の摩擦部材の外周端面よりも径方向外方に突出してカバープレートの連結部内面に当接可能である。
【発明の効果】
【0021】
以上のような本発明では、トルクリミッタユニットに対するダンパユニットの径方向の位置ずれを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態によるダンパ装置を有する動力伝達装置の断面図。
図2図1のダンパ装置の一部正面図。
図3図1の拡大部分図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[全体構成]
図1は、本発明の一実施形態によるダンパ装置を有する動力伝達装置1の断面図である。この動力伝達装置1は、フライホイール2と、ダンパ装置3と、を有している。また、図2は一部の部品を取り除いた動力伝達装置1の正面部分図である。図1において、動力伝達装置1の左側にエンジンが配置され、右側に電動機や変速装置等を含む駆動ユニットが配置されている。
【0024】
なお、以下の説明において、軸方向とは、ダンパ装置3の回転軸Oが延びる方向である。また、周方向とは、回転軸Oを中心とした円の周方向であり、径方向とは、回転軸Oを中心とした円の径方向である。なお、周方向とは、回転軸Oを中心とした円の周方向に完全に一致している必要はなく、また、径方向とは、回転軸Oを中心とした円の直径方向に完全に一致している必要はない。
【0025】
[フライホイール2]
フライホイール2は、図示しないエンジン側の部材にフレキシブルプレート5を介して固定されている。フライホイール2は、図1に示すように、円板状の部材であり、環状部2aと収容部2bとを有している。
【0026】
環状部2aは、フライホイール2の最外周部に設けられている。環状部2aの駆動ユニット側(軸方向の第1側で、図1の右側)の表面には、複数のネジ穴が形成されるとともに、ノックピンが固定されている。収容部2bは、環状部2aの径方向内方に形成されている。収容部2bは、環状部2aの取り付け表面からエンジン側に所定の深さを有している。
【0027】
[ダンパ装置3]
ダンパ装置3は、フライホイール2の環状部2aの軸方向の第1側に固定され、エンジンと駆動ユニットとの間で伝達されるトルクを制限するとともに、回転変動を減衰するための装置である。ダンパ装置3は、トルクリミッタユニット10と、ダンパユニット20と、を有している。
【0028】
[トルクリミッタユニット10]
トルクリミッタユニット10は、フライホイール2とダンパユニット20との間で伝達されるトルクを制限する。図3に拡大して示すように、トルクリミッタユニット10は、ダンパカバー11(カバープレートの一例)と、プレッシャプレート12と、摩擦ディスク13と、コーンスプリング14と、支持プレート15と、を有している。
【0029】
ダンパカバー11は、プレートであり、摩擦部11aと、取付部11bと、連結部11cと、を有している。
【0030】
摩擦部11aは、円板状であり、ダンパカバー11の内周部に形成されている。取付部11bは、摩擦部11aの径方向外方に形成され、ボルトを介してフライホイール2の環状部2aに固定される。摩擦部11aは、取付部11bに対して軸方向の第1側にオフセットされて形成されている。連結部11cは、軸方向に延びる筒状に形成され、摩擦部11aの外周部と取付部11bの内周部とを連結している。
【0031】
プレッシャプレート12は、環状であり、ダンパカバー11の摩擦部11aに対して軸方向の第2側に摩擦部11aと所定の間隔をあけて対向して配置されている。
【0032】
摩擦ディスク13は、ダンパカバー11の摩擦部11aとプレッシャプレート12との軸方向間に配置されている。摩擦ディスク13は、コアプレート16と、コアプレート16の両側面にリベットにより固定された1対の摩擦部材17と、を有している。そして、一方の摩擦部材17がダンパカバー11の摩擦部11aに当接し、他方の摩擦部材17がプレッシャプレート12に当接している。
【0033】
コアプレート16は、図2に示すように、環状に形成されるとともに、径方向外方に開く複数の放射状のスリットを有している。また、コアプレート16は、内周面から径方向内方に突出する複数の突出部16aを有している。コアプレート16の外周端面は1対の摩擦部材17の外周端面から突出するように形成されている。すなわち、コアプレート16の外径は、1対の摩擦部材17の外径よりも大きく形成されている。そして、コアプレート16の外周端面は、ダンパカバー11の連結部11cの内周面と所定の隙間(例えば、0.5~1mm)を介して径方向に対向している。
【0034】
コーンスプリング14は、プレッシャプレート12の軸方向の第2側に配置され、支持プレート15はコーンスプリング14のさらに軸方向の第2側に配置されている。すなわち、コーンスプリング14は、プレッシャプレート12と支持プレート15との間に配置され、プレッシャプレート12を介して摩擦ディスク13をダンパカバー11の摩擦部11aに押圧している。
【0035】
支持プレート15は、支持部15aと、取付部15bと、を有している。支持部15aは、環状であり、支持プレート15の内周部に形成されている。支持部15aはプレッシャプレート12と軸方向に対向しており、この支持部15aとプレッシャプレート12とによって、コーンスプリング14を挟持している。
【0036】
取付部15bは複数の固定用孔を有しており、支持プレート15は、固定用孔を通過するボルトによってダンパカバー11とともにフライホイール2の環状部2aに固定される。
【0037】
[ダンパユニット20]
図1に示すように、ダンパユニット20は、クラッチプレート21(第1プレートの一例)及びリティニングプレート22(第2プレートの一例)と、ハブフランジ23と、複数のトーションスプリング24と、ヒス発生機構25と、を有している。
【0038】
ここで、クラッチプレート21及びリティニングプレート22の外周端部は、ダンパカバー11の摩擦部11a(すなわち、ダンパカバー11の内周端部)に対して、軸方向の第2側に配置されている。
【0039】
クラッチプレート21の外周部において、軸方向の第1側の側面には、摩擦ディスク13のコアプレート16の突出部16aがリベット26により固定されている。クラッチプレート21は、円板状に形成され、複数の窓部を有している。リティニングプレート22は、クラッチプレート21の軸方向の第2側に配置され、クラッチプレート21と軸方向に間隔をあけて対向して配置されている。リティニングプレート22は、円板状に形成され、クラッチプレート21の窓部と対向する位置に複数の窓部を有している。クラッチプレート21とリティニングプレート22とは、リベット27により互いに固定されており、軸方向及び回転方向に相対移動不能である。
【0040】
ハブフランジ23は、中心部に形成された筒状のハブ31と、ハブ31の外周面から径方向外方に延びるフランジ32と、を有している。ハブフランジ23は、クラッチプレート21及びリティニングプレート22に対して相対回転可能である。ハブ31とフランジ32とは相対回転不能に連結されている。ハブ31の内周面にはスプライン孔31aが形成されており、このスプライン孔31aに、駆動ユニットの入力軸がスプライン係合可能である。フランジ32は、円板状に形成され、クラッチプレート21とリティニングプレート22との軸方向間に配置されている。フランジ32は複数の収容部を有している。各収容部は、クラッチプレート21の窓部及びリティニングプレート22の窓部と対応する位置に形成されている。
【0041】
複数のトーションスプリング24は、フランジ28の収容部に収容され、クラッチプレート21の窓部及びリティニングプレート22の窓部によって軸方向及び径方向に保持されている。また、トーションスプリング24の円周方向の両端面は、それぞれ各窓部及び収容部の円周方向の端面に当接可能である。
【0042】
ヒス発生機構25は、複数のブッシュやコーンスプリング等を有している。このヒス発生機構25は、クラッチプレート21及びリティニングプレート22とハブフランジ23とが相対回転したときに摩擦抵抗(ヒステリシストルク)を発生させる。
【0043】
[位置決め構造]
この実施形態では、ダンパユニット20の外周端部(詳細には、クラッチプレート及びリティニングプレート21,22の外周端部)と、ダンパカバー11の内周端部(詳細には摩擦部11aの内周端部)と、が軸方向にオフセットされ、軸方向において互いにオーバーラップしていない。したがって、例えば、ダンパユニット20を構成する部材の外周部を、トルクリミッタユニット10のダンパカバー11に当接させることによってダンパユニット20の径方向の移動を規制することができない。
【0044】
そこで、この実施形態では、前述のように、コアプレート16の外径を、摩擦部材17の外径よりも大きく形成し、コアプレート16の外周端面が、ダンパカバー11の連結部11cの内周面と所定の隙間(例えば、0.5~1mm)を介して径方向に対向するようにしている。
【0045】
このため、回転中にダンパユニット20が径方向にずれた場合、ダンパユニット20に固定されたコアプレート16の外周端面がダンパカバー11の連結部11cの内面に当接し、そのずれが規制される。すなわち、コアプレート16の外周端面と連結部11cの内周面との接触によって、ダンパユニット20はトルクリミッタユニット10に対して径方向に位置決めされる。
【0046】
特に、コアプレート16は平板状で曲げ加工等されていないので、外周端面の径方向寸法を、容易に、かつ正確に管理することができる。したがって、当接する相手側の連結部11cの内周面を切削加工することにより、コアプレート16と連結部11c内周面との間の隙間を厳しく管理することができる。このため、トルクリミッタユニット10に対するダンパユニット20の径方向のずれを小さく抑えることができる。
【0047】
[動作]
エンジンからフライホイール2に伝達された動力は、トルクリミッタユニット10を介してダンパユニット20に入力される。ダンパユニット20では、トルクリミッタユニット10の摩擦ディスク13が固定されているクラッチプレート21及びリティニングプレート22に動力が入力され、この動力は、トーションスプリング24を介してハブフランジ23に伝達される。そして、ハブフランジ23から、さらに出力側の電動機、発電機、変速機等に動力が伝達される。
【0048】
また、例えば、エンジン始動時においては、出力側の慣性量が大きいために、出力側からエンジンに過大なトルクが伝達される場合がある。このような場合は、トルクリミッタユニット10によってエンジン側に伝達されるトルクが所定値以下に制限される。
【0049】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0050】
(a)コアプレート16の外周端面と、ダンパカバー11の連結部内周面と、との隙間は一例であって、これに限定されない。
【0051】
(b)前記実施形態では、ダンパカバー11の内周面に対して、摩擦ディスク13のコアプレート16の外周端面を当接可能としたが、摩擦ディスク13の他の部分、例えば、摩擦部材17の外周端面を当接可能としてもよい。
【0052】
(c)前記実施形態では、フライホイール2がフレキシブルプレート5を介してエンジン側の部材に連結されている装置に対して本発明を適用したが、本発明の適用はこのような装置に限定されない。
【0053】
(d)本発明の位置決め構造は、前記実施形態に限定されない。例えば、ダンパユニット20のリティニングプレート22の外周端部を、トルクリミッタユニット10の構成部品に当接させるようにしてもよい。
【0054】
(e)前記実施形態では、ダンパユニット20の外周端部が、ダンパカバー11の内周端部よりも軸方向の第2側に配置されている装置において本発明を適用したが、摩擦ディスクの外周端面をダンパカバー11の内面に当接させて位置決め構造を構成する場合は、ダンパユニット20の外周端部とダンパカバー11の内周端部との位置関係は前記実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0055】
2 フライホイール(動力源側の部材)
3 ダンパ装置
5 フレキシブルプレート
10 トルクリミッタユニット
11 ダンパカバー(カバープレート)
13 摩擦ディスク
16 コアプレート
17 摩擦部材
20 ダンパユニット
21 第1プレート
22 第2プレート
図1
図2
図3