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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179891
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】吸着材料および吸着装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/34 20060101AFI20231213BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20231213BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
B01J20/34 H
B01J20/28 Z
B01D53/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092799
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷田 侑也
(72)【発明者】
【氏名】近藤 璃奈
(72)【発明者】
【氏名】宇佐見 真子
【テーマコード(参考)】
4D012
4G066
【Fターム(参考)】
4D012BA01
4D012CA03
4D012CA08
4D012CA20
4D012CB12
4D012CD06
4D012CG01
4G066AB24B
4G066AC11B
4G066AD06B
4G066AD20B
4G066BA22
4G066CA29
4G066CA35
4G066CA51
4G066CA56
4G066DA01
4G066DA04
(57)【要約】
【課題】従来の電磁波を照射することで発熱する吸着材料では、発熱効率にばらつきが生じて被吸着物質の脱離効率が低下する場合があった。本開示の技術が解決しようとする課題は、電磁波を照射することで発熱する吸着材料において、吸着材料の発熱効率を向上させて吸着材料の脱離効率を向上させることにある。
【解決手段】被吸着物質14を吸着可能な吸着材料10は、核11と有機配位子12で構成される周期構造を備える多孔質材料である。多孔質材料の吸着材料10は、電磁波で発熱する官能基13を分子として含む。電磁波を受けることで多孔質材料の吸着材料10が発熱し、吸着した被吸着物質14を離脱する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被吸着物質を吸着可能な吸着材料であって、
核と有機配位子で構成される周期構造を備える多孔質材料であり、
前記多孔質材料は、電磁波で発熱する官能基を分子として含み、前記電磁波を受けることで前記多孔質材料が発熱し、吸着した前記被吸着物質を離脱する吸着材料。
【請求項2】
請求項1に記載の吸着材料であって、
前記官能基は、前記核に直接、結合している吸着材料。
【請求項3】
請求項1に記載の吸着材料であって、
前記官能基は、前記有機配位子に直接、結合している吸着材料。
【請求項4】
請求項1に記載の吸着材料であって、
前記官能基は、ニトロ基またはヒドロキシ基である吸着材料。
【請求項5】
ガスを吸着する吸着装置であって、
請求項1~4のいずれか1つに記載の吸着材料が充填される吸着容器と、
前記吸着容器に形成された供給口と排出口と、
前記吸着材料に前記電磁波を照射する電磁波発生機を有し、
前記供給口から前記吸着容器に供給される前記ガスは、非極性ガスを含み、前記ガスが前記吸着材料に吸着され、前記電磁波発生機が発生する前記電磁波により前記吸着材料が発熱し、前記吸着材料から前記ガスが脱離して前記排出口から排出される吸着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばガス等の被吸着物質を吸着可能かつ加熱によって吸着した被吸着物質を脱離可能な吸着材料およびその吸着材料を用いた吸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車等の車両の蒸発燃料処理装置には、蒸発燃料を吸着して脱離するための吸着器が設けられる。吸着器には、燃料タンク内で発生した蒸発燃料を吸着する多孔質の吸着材が充填される。吸着材に吸着された蒸発燃料は、車両の走行時、すなわち内燃機関の稼働時にパージ通路へと脱離され、内燃機関へ通じる吸気通路に供給される。
【0003】
多孔質の吸着材は、例えば金属有機構造体(MOF:Metal Organic Framewоrks)等の有機無機物、ゼオライト等の無機物、活性炭等の有機物を吸着材料として含む。多孔質の吸着材は、加熱されることで吸着した被吸着物質を脱離する。これにより吸着機能が再生して繰り返し被吸着物質を吸着することができる。例えばマイクロ波等の電磁波を照射することで吸着材を加熱する技術が従来考案されている。従来用いられていたゼオライト等は、電磁波を照射される際に発熱し難い。従来、電磁波を照射される際の発熱効率が高いセラミックス、金属塩、金属等の電磁波発熱材を準備し、電磁波発熱材と吸着材を共に利用する技術が考案されていた。
【0004】
特許文献1には、マイクロ波の照射による発熱効率が高い電磁波発熱材(SiC)を吸着材(ゼオライト)と混錬させ、混錬物を硬化させた繊維状または粒子状の吸着体が開示される。図7は、従来の吸着装置50を模式的に示す図である。吸着装置50は、被吸着物質を吸着するための吸着容器51を有する。吸着容器51には、粒子状の吸着材料52と粒子状の電磁波発熱材53が混錬されて充填される。吸着容器51は、供給口54と排出口55を有する。吸気口54から吸着容器51内へと被吸着物質を含むガスが供給される。被吸着物質は、吸着材料52によって吸着容器51内で吸着される。排出口55から被吸着物質が取り除かれたガスが排出される。
【0005】
図7に示すように吸着装置50は、吸着容器51へ電磁波を照射する電磁波発生機56を有する。電磁波発生機56から吸着容器51へ電磁波を照射すると、先ず電磁波発熱材53が発熱する。その後、電磁波発熱材53と接触している吸着材料52に熱が伝わる。吸着材料52が熱伝導で加熱されると、吸着材料52に吸着されていた被吸着物質が吸着材料52から脱離する。従来の吸着装置50では、電磁波発熱材53と吸着材料52の接触面積が小さいため、電磁波発熱材53から吸着材料52への熱伝導が阻害されるおそれがある。また、電磁波発熱材53と吸着材料52は、吸着容器51内でランダムに分布する。そのため吸着容器51の領域毎に吸着材料52の加熱にばらつきが生じる。加熱が促進しない領域の吸着材料52は、脱離効率が低下する場合がある。さらに加熱のばらつきによって吸着容器51内で熱膨張差が生じ、吸着装置50の破損に繋がる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5207043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書に開示の技術が解決しようとする課題は、電磁波を照射することで発熱する吸着材料において、吸着材料の発熱効率を向上させて吸着材料の脱離効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一つの態様によると被吸着物質を吸着可能な吸着材料は、核と有機配位子で構成される周期構造を備える多孔質材料である。多孔質材料は、電磁波で発熱する官能基を分子として含む。電磁波を受けることで多孔質材料が発熱し、吸着した被吸着物質を離脱する。
【0009】
したがって電磁波を照射することで官能基が発熱する。これにより官能基を分子として含む吸着材料が直に加熱される。そのため吸着材料の発熱効率が向上する。これにより吸着材料に吸着された被吸着物質を加熱する効率が上がり、被吸着物質が脱離し易くなる。かくして吸着材料の脱離効率を向上させることができる。
【0010】
本開示の他の態様によると官能基は、核に直接、結合している。したがって吸着材料の多孔質の分子構造において、被吸着物質が吸着される空間の大きさを、官能基を設けない場合と略同じにできる。そのため官能基を設けない場合と略同等のガスを吸着でき、かつ脱離効率については官能基を設けない場合より向上させることができる。
【0011】
本開示の他の態様によると官能基は、有機配位子に直接、結合している。したがって有機配位子は、官能基を発熱させた時に官能基から直に加熱される。そのため吸着材料の加熱特性を向上させることができる。これにより吸着材料から被吸着物質が脱離する脱離効率をさらに高めることができる。
【0012】
本開示の他の態様によると官能基は、ニトロ基またはヒドロキシ基である。したがって極性が大きく電磁波の照射による発熱量の多い官能基を吸着材料に結合させる。これにより吸着材料の発熱効率をさらに高めることができる。
【0013】
本開示の他の態様によるとガスを吸着する吸着装置は、吸着材料が充填される吸着容器を有する。吸着装置は、吸着容器に形成された供給口と排出口を有する。吸着装置は、吸着材料に電磁波を照射する電磁波発生機を有する。供給口から吸着容器に供給されるガスは、非極性ガスを含む。ガスが吸着材料に吸着され、電磁波発生機が発生する電磁波により吸着材料が発熱し、吸着材料からガスが脱離して排出口から排出される。
【0014】
したがって電磁波を照射する際、非極性のガス自体はほとんど発熱しない。そのため吸着容器内の吸着量の差に依らず、吸着材料を一様に発熱させることができる。例えば、吸着容器内において供給口に近いほどガスの吸着量が多く、排出口に近いほどガスの吸着量が少ない。ガスの吸着量の差に依らず、吸着容器内の吸着材料を一様に発熱させることにより、吸着材料を一様に熱膨張させることができる。これにより吸着材料や吸着容器が熱膨張差で破損してしまうことを抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本明細書に開示の技術によれば、電磁波を照射することで発熱する吸着材料において、吸着材料の発熱効率を向上させて吸着材料の脱離効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の吸着材料を備える吸着装置の概略図である。
図2】第1実施形態に係る吸着材料の分子構造を模式的に示した図である。
図3】第2実施形態に係る吸着材料の分子構造を模式的に示した図である。
図4】第1実施例に係る有機配位子と官能基の構造式を示す図である。
図5】第2実施例に係る有機配位子と官能基の構造式を示す図である。
図6】被吸着物質の比誘電率を示すグラフである。
図7】従来の吸着体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の好ましい第1の実施形態を、図1,2,6に基づいて説明する。説明中の同じ参照番号は、重複する説明をしないが、同じ機能を有する同じ要素を意味する。図1は本開示の吸着材料を備える吸着装置の概略図である。図2は第1実施形態に係る吸着材料の分子構造を模式的に示した図である。図6は被吸着物質の比誘電率を示すグラフである。
【0018】
図1に示すように吸着装置30は、被吸着物質を吸着するための吸着容器31を有する。吸着容器31には、粒子状の吸着材料10が充填される。吸着容器31は、一端に供給口32を有する。吸着容器31は、供給口32の反対側の端部に排出口33を有する。供給口32から被吸着物質を含むガスが吸着容器31内に供給される。吸着容器31内では、吸着材料10によって被吸着物質が吸着される。排出口33からは、被吸着物質を取り除かれたガスが排出される。
【0019】
図1に示すように吸着装置30は、吸着容器31内の吸着材料10へ電磁波を照射する電磁波発生機34を有する。電磁波発生機34からは、例えば300MHz~30GHz、より好ましくは例えば2.45GHzの周波数の電磁波が照射される。吸着容器31内の吸着材料10は、例えば400℃以下、より好ましくは20~35℃の常温の温度条件において電磁波発生機34から電磁波の照射を受ける。吸着材料10は、電磁波の照射によって加熱され、加熱によって吸着した被吸着物質を脱離して再生する。
【0020】
図1に示すように吸着容器31は、供給口32に近い供給口側領域31aと、排出口33に近い排出口側領域31bを有する。被吸着物質の吸着量は、供給口側領域31aで多く、特に供給口32に近いほど多い。被吸着物質の吸着量は、排出口側領域31bで少なく、特に排出口33に近いほど少ない。仮に被吸着物質が電磁波の照射を受けて発熱する場合、供給口側領域31aの発熱量が多くなり、排出口側領域31bの発熱量が少なくなる。そのため供給口側領域31aの吸着材料10と排出口側領域31bの吸着材ら用の熱膨張差が大きくなる。この熱膨張差により吸着材料10や吸着容器31が、例えば供給口側領域31aと排出口側領域31bの間で破損する恐れがある。そのため吸着装置30は、電磁波の照射による発熱量が少ない被吸着物質、例えば極性が小さい被吸着物質を対象にして吸着する。
【0021】
図2に示すように吸着材料10は、いわゆる金属有機構造体(MOF)あるいは共有結合性有機構造体(COF)と呼ばれる多孔質構造体である。吸着材料10は、格子状に配列する核11の間に有機配位子12が結合する構造で構成される。核11は、MOFの場合、例えばマグネシウム、カルシウム、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、銅、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、クロム、モリブデン、スカンジウム等の金属原子である。例えば亜鉛等がより好ましい。等の金属原子である。核11は、COFの場合、例えばベンゼン環等の共有結合で結合される分子である。隣接する核11同士は、有機配位子12によって結合される。
【0022】
図2に示すように有機配位子12は、例えば2以上の配位性の官能基を芳香環、不飽和結合等の剛直構造を有する骨格に置換した構造である。有機配位子12が含む配位性の官能基は、例えばカルボキシル基、イミダゾール基、水酸基、スルホン酸基、ピリジン基、三級アミン基、アミド基、チオアミド基等である。有機配位子12には、官能基13が直接、結合する。官能基13は、官能基13自体あるいは官能基13が結合した有機配位子12に極性を持たせる官能基である。官能基13は、例えばニトロ基、ニトロソ基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基等の電子吸引性基、あるいはヒドロキシ基、アミノ基等の極性官能基である。官能基13は、吸着材料10の格子構造に対して所定の周期の間隔で結合する。官能基13は、吸着材料10において略均一に分布する。
【0023】
図2に示すように有機配位子12で連結される核11の格子構造の中には、例えば炭酸ガス、ブタンガス等の非極性、あるいはガソリン、エタノール、アンモニア等の極性が比較的小さい被吸着物質分子14を収容可能な空間が形成される。収容可能な被吸着物質14は、有機配位子12に結合した官能基13と干渉しない大きさである。吸着材料10は、被吸着物質分子14を多孔質の格子構造に収容することで被吸着物質14を吸着できる。
【0024】
図2に示す吸着材料10に電磁波を照射すると、電荷の偏りがある官能基13が発熱する。そのため官能基13を直接結合させた有機配位子12が加熱される。そのため吸着材料10が概ね一様に加熱される。これにより吸着材料10に吸着された被吸着物質14が加熱される。加熱された被吸着物質は、吸着材料10の格子構造から脱離する。被吸着物質14は、誘電率の低い物質であり、電磁波が照射される際に直接は発熱しない。そのため被吸着物質14の吸着率の差に依らず吸着材料10が一様に加熱される。しかも吸着材料10が一様に加熱されることにより、直接発熱しない被吸着物質14を効率良く加熱できる。
【0025】
本開示の吸着材料10で吸着可能な被吸着物質14の種類について検討した。図6は、2.45GHz、20~35℃の条件における各種物質の比誘電率を示す。比誘電率は、電磁波の周波数と加熱前の温度によって変化する。本開示においては吸着装置30(図1参照)を使用する条件を含むように上記条件を設定した。上記条件においてアンモニアの比誘電率を25として、水の比誘電率が77、アセトンの比誘電率が26、エタノールの比誘電率が8、ガソリンの比誘電率が2である。本開示では、2.45GHz、20~35℃の条件において誘電率がアンモニア以下の物質を誘電率の低い物質と定義した。誘電率の低い物質が、吸着材料10で吸着可能な被吸着物質14に相当する。例えば炭酸ガス、ブタンガスは、2.45GHz、20~35℃の条件において誘電率がアンモニア以下である。
【0026】
上述するように被吸着物質14を吸着可能な吸着材料10は、図2に示すように核11と有機配位子12で構成される周期構造を備える多孔質材料である。多孔質材料の吸着材料10は、電磁波で発熱する官能基13を分子として含む。電磁波を受けることで多孔質材料の吸着材料10が発熱し、吸着した被吸着物質14を離脱する。
【0027】
したがって電磁波を照射することで官能基13が発熱する。これにより官能基13を分子として含む吸着材料10が直に加熱される。そのため吸着材料10の発熱効率が向上する。これにより吸着材料10に吸着された被吸着物質14を加熱する効率が上がり、被吸着物質14が脱離し易くなる。かくして吸着材料10の脱離効率を向上させることができる。
【0028】
図2に示すように官能基13は、有機配位子12に直接、結合している。したがって有機配位子12は、官能基13を発熱させた時に官能基13から直に加熱される。そのため吸着材料10の加熱特性を向上させることができる。これにより吸着材料10から被吸着物質14が脱離する脱離効率をさらに高めることができる。
【0029】
図2に示すように官能基13は、ニトロ基またはヒドロキシ基である。したがって極性が大きく電磁波の照射による発熱量の多い官能基13を吸着材料10に結合させる。これにより吸着材料10の発熱効率をさらに高めることができる。
【0030】
図2に示すようにガスを吸着する吸着装置30は、吸着材料10が充填される吸着容器31を有する。吸着装置30は、吸着容器31に形成された供給口32と排出口33を有する。吸着装置30は、吸着材料10に電磁波を照射する電磁波発生機34を有する。供給口32から吸着容器31に供給されるガスは、非極性ガスを含む。ガスが吸着材料10に吸着され、電磁波発生機34が発生する電磁波により吸着材料10が発熱し、吸着材料10からガスが脱離して排出口33から排出される。
【0031】
したがって電磁波を照射する際、非極性のガス自体はほとんど発熱しない。そのため吸着容器31内の吸着量の差に依らず、吸着材料10を一様に発熱させることができる。例えば、吸着容器31内において供給口32に近いほどガスの吸着量が多く、排出口33に近いほどガスの吸着量が少ない。ガスの吸着量の差に依らず、吸着容器31内の吸着材料10を一様に発熱させることにより、吸着材料10を一様に熱膨張させることができる。これにより吸着材料10や吸着容器31が熱膨張差で破損してしまうことを抑制できる。
【0032】
本開示の第2の実施形態を、図1,3に基づいて説明する。図3は第2実施形態に係る吸着材料の分子構造を模式的に示した図である。吸着材料20は、粒子状であり、図1に示す吸着装置30において吸着材料10に代えて吸着容器31に収容される。吸着材料20は、供給口32から供給されたガスの中から被吸着物質を吸着し、被吸着物質を取り除かれたガスを排出口33へ排出する。吸着材料20が吸着した被吸着物質は、電磁波発生機34から電磁波の照射を受けることで吸着材料20から脱離する。
【0033】
図3に示すように吸着材料20は、いわゆる金属有機構造体(MOF)あるいは共有結合性有機構造体(COF)と呼ばれる多孔質構造体である。吸着材料20は、格子状に配列する核21の間に有機配位子22が結合する構造で構成される。核21は、MOFの場合、例えばマグネシウム、カルシウム、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、銅、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、クロム、モリブデン、スカンジウム等の金属原子である。例えば亜鉛等がより好ましい。核21は、COFの場合、例えばベンゼン環等の共有結合で結合される分子である。隣接する核21同士は、有機配位子22によって結合される。
【0034】
図3に示すように核21には、官能基23が直接、結合する。官能基23は、官能基23自体あるいは官能基23が結合した核21に極性を持たせる官能基である。官能基23は、例えばニトロ基、ニトロソ基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基等の電子吸引性基、あるいはヒドロキシ基、アミノ基等の極性官能基である。官能基23は、吸着材料20の格子構造に対して所定の周期の間隔で結合する。官能基23は、吸着材料20において略均一に分布する。有機配位子12は、例えば2以上の配位性の官能基を芳香環、不飽和結合等の剛直構造を有する骨格に置換した構造である。有機配位子12が含む配位性の官能基は、例えばカルボキシル基、イミダゾール基、水酸基、スルホン酸基、ピリジン基、三級アミン基、アミド基、チオアミド基等である。
【0035】
図3に示すように有機配位子22で連結される核21の格子構造の中には、例えば炭酸ガス、ブタンガス等の非極性、あるいはガソリン、エタノール、アンモニア等の極性が比較的小さい被吸着物質分子24を収容可能な空間が形成される。吸着材料20が吸着可能な被吸着物質24の対象は、2.45GHz、20~35℃の条件において誘電率がアンモニア以下の誘電率の低い物質である(図6参照)。吸着材料20の格子構造の空間には、被吸着物資14(図2参照)よりも大きいサイズの被吸着物質24を収容できる。吸着材料20は、被吸着物質分子24を多孔質の格子構造に収容することで被吸着物質24を吸着できる。
【0036】
図3に示す吸着材料20に電磁波を照射すると、電荷の偏りがある官能基23が発熱する。そのため官能基23を直接結合させた核21が加熱される。そのため吸着材料20が概ね一様に加熱される。これにより吸着材料20に吸着された被吸着物質24が加熱される。加熱された被吸着物質は、吸着材料20の格子構造から脱離する。被吸着物質24は、誘電率の低い物質であり、電磁波が照射される際に直接は発熱しない。そのため被吸着物質24の吸着率の差に依らず吸着材料20が一様に加熱される。しかも吸着材料20が一様に加熱されることにより、直接発熱しない被吸着物質24を効率良く加熱できる。
【0037】
上述するように官能基23は、図3に示すように核21に直接、結合している。したがって吸着材料20の多孔質の分子構造において、被吸着物質24が吸着される空間の大きさを、官能基23を設けない場合と略同じにできる。そのため官能基23を設けない場合と略同等のガスを吸着でき、かつ脱離効率については官能基23を設けない場合より向上させることができる。
【0038】
以下に本開示に係る実施例について具体的に説明する。本開示はこれらの実施例に何ら限定されることはない。図4は第1実施例に係る有機配位子と官能基の構造式を示す図である。図5は第2実施例に係る有機配位子と官能基の構造式を示す図である。
【実施例0039】
図4に示すように吸着材料は、亜鉛を核とし、有機配位子12を2-エチルイミダゾールとするMOFである。有機配位子12には、官能基13が直接、結合される。官能基13は、ニトロ基である。そのため吸着材料は、既存のMOF(MAF-6(Zn))と異なる新たな構造のMOFである。20~35℃の温度条件で2.45GHzの電磁波を照射する。電磁波によって電化に偏りのあるニトロ基の官能基13が発熱する。これにより官能基13を直接結合された有機配位子12が直に加熱される。
【実施例0040】
図4に示すように吸着材料は、亜鉛を核とし、有機配位子12を2-エチルイミダゾールとするMOFである。有機配位子12には、官能基13が直接、結合される。官能基13は、ヒドロキシ基である。そのため吸着材料は、既存のMOF(MAF-6(Zn))と異なる新たな構造のMOFである。20~35℃の温度条件で2.45GHzの電磁波を照射する。電磁波によって電化に偏りのあるニトロ基の官能基13が発熱する。これにより官能基13を直接結合された有機配位子12が直に加熱される。
【0041】
以上、具体的な実施形態について説明したが、本願で開示する技術はその他各種変更を加えた形態でも実施可能なものである。20~35℃の温度条件で2.45GHzの電磁波を吸着材料に照射する吸着装置を例示した。電磁波の照射によって官能基が顕著に発熱し、かつ被吸着物質が直接発熱しない状態になるのであれば、温度条件や電磁波の周波数の条件は例示したものに限定されない。
【0042】
核、有機配位子、官能基それぞれが1種類である場合を例示した。これに代えて2種類以上の核、または2種類以上の有機配位子、または2種類以上の官能基を含む構成としても良い。官能基は、所定の周期間隔で一部の有機配位子または核に結合していても良く、全ての有機配位子または核に結合していても良い。核と有機配位子のいずれか一方に官能基が直接結合される場合を例示した。これに代えて、核と有機配位子の両方に官能基を直接結合させる構成としても良い。
【符号の説明】
【0043】
10…吸着材料(多孔質材料)
11…金属原子(核)
12…有機配位子
13…官能基
14…被吸着物質
20…吸着材料(多孔質材料)
21…金属原子(核)
22…有機配位子
23…官能基
24…被吸着物質
30…吸着装置
31…吸着容器、31a…供給口側領域、31b…排出口側領域
32…供給口
33…排出口
34…電磁波発生機
50…吸着装置
51…吸着容器
52…吸着材料
53…電磁波発熱材
54…供給口
55…排出口
56…電磁波発生機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7