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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179895
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】工具、および加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23F 19/00 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
B23F19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092809
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】315017775
【氏名又は名称】ニデックマシンツール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】津田 晃伸
(72)【発明者】
【氏名】一幡 浩久
【テーマコード(参考)】
3C025
【Fターム(参考)】
3C025DD04
3C025DD11
(57)【要約】
【課題】ワークの隅部または逃げ部のカエリを除去することができる加工装置を提供する。
【解決手段】工具は、上下に延びる中心軸と交わる方向に広がるベース部と、前記ベース部から、前記中心軸から離れる方向に延び、周方向に配列される複数の凸部と、を有し、前記凸部は、少なくとも周方向一方側を臨む面に配置される第1の刃を有し、前記第1の刃は、前記中心軸から離れるにつれて上方に向かって湾曲する第1領域を有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に延びる中心軸と交わる方向に広がるベース部と、
前記ベース部から、前記中心軸から離れる方向に延び、周方向に配列される複数の凸
部と、を有し、
前記凸部は、少なくとも周方向一方側を臨む面に配置される第1の刃を有し、
前記第1の刃は、前記中心軸から離れるにつれて上方に向かって湾曲する第1領域を有する、
工具。
【請求項2】
上下に延びる中心軸と交わる方向に広がるベース部と、
前記ベース部から、前記中心軸から離れる方向に延び、周方向に配列される複数の凸
部と、を有し、
前記凸部は、少なくとも周方向一方側を臨む面に配置される第1の刃を有し、
前記第1の刃は、前記中心軸から離れるにつれて下方に向かって湾曲する第1領域を有する、
工具。
【請求項3】
前記第1の刃は、前記第1領域よりも前記中心軸側において、前記中心軸に近づく方向に延びる第2領域を有する、
請求項1または請求項2に記載の工具。
【請求項4】
前記複数の凸部は、周方向に配置される、
請求項1または2に記載の工具。
【請求項5】
前記ベース部は、前記中心軸方向に貫通し、周方向に構成される少なくとも1つ以上の貫通孔を有する、
請求項1または2に記載の工具。
【請求項6】
前記貫通孔の少なくとも一つは、前記凸部の周方向中央と前記中心軸と結ぶ仮想線上に配置される、
請求項5に記載の工具。
【請求項7】
前記貫通孔の数は、前記凸部の数と等しく、
前記貫通孔は、周方向に配置される、
請求項5に記載の工具。
【請求項8】
前記ベース部は、前記中心軸に沿って貫通する中心孔を有する、
請求項1または2に記載の工具。
【請求項9】
前記凸部は、周方向他方側を臨む面に配置される第2の刃を有し、
前記第2の刃は、
前記中心軸から離れるにつれて上方に向かって湾曲する第3領域と、
前記第3領域よりも前記中心軸側において、前記中心軸に近づく方向に延びる第4領域と、
を有する、請求項1に記載の工具。
【請求項10】
前記凸部は、周方向他方側を臨む面に配置される第2の刃を有し、
前記第2の刃は、
前記中心軸から離れるにつれて下方に向かって湾曲する第3領域と、
前記第3領域よりも前記中心軸側において、前記中心軸に近づく方向に延びる第4領域と、
を有する、
請求項2に記載の工具。
【請求項11】
前記凸部の径方向外方における周方向の幅は、前記凸部の径方向内方における周方向の幅よりも広い、
請求項1または2に記載の工具。
【請求項12】
請求項1または2に記載の工具と、
前記工具を、前記中心軸回りに回転不能に固定する工具固定部と、
前記中心軸とは異なる回転軸回りにワークを回転可能に支持する回転機構と、
を有し、
前記工具固定部は、前記工具を前記ワークに接触させる、加工装置。
【請求項13】
請求項5に記載の工具と、
前記工具を、前記中心軸回りに回転不能に固定する工具固定部と、
前記中心軸とは異なる回転軸回りにワークを回転可能に支持する回転機構と、
を有し、
前記工具固定部は、前記工具を前記ワークに接触させ、
前記工具固定部は、前記中心軸と略平行な方向に延びる回り止め機構を有し、
前記回り止め機構の少なくとも一部は、前記貫通孔に挿入される、加工装置。
【請求項14】
請求項8に記載の工具と、
前記工具を、前記中心軸回りに回転不能に固定する工具固定部と、
前記中心軸とは異なる回転軸回りにワークを回転可能に支持する回転機構と、
を有し、
前記工具固定部は、前記工具を前記ワークに接触させ、
前記工具固定部は、前記中心軸方向に延びる回転支持機構を有し、
前記回転支持機構の少なくとも一部は、前記中心孔に挿入される、加工装置。
【請求項15】
前記中心軸と前記回転軸とは、略平行である、
請求項12に記載の加工装置。
【請求項16】
前記工具よりも下方に配置される第2工具と、
前記第1工具固定部よりも下方に配置され、前記第2工具を前記中心軸回りに回転不能に固定する第2工具固定部と、
を有し、
前記第2工具は、
上下に延びる中心軸と交わる方向に広がるベース部と、
前記ベース部から、前記中心軸から離れる方向に延び、周方向に配列される複数の凸部と、
を有し、
前記凸部は、少なくとも周方向他方側を臨む面に配置される第3の刃を有し、
前記第3の刃は、前記中心軸から離れるにつれて下方に向かって湾曲する第5領域を
有し、
前記第1工具固定部は、前記第1工具を前記ワークの上面に接触させ、
前記第2工具固定部は、前記第2工具を前記ワークの下面に接触させる、
請求項12に記載の加工装置。
【請求項17】
前記回転機構は、前記ワークを前記回転軸について時計回りと反時計回りの両方に回転可能に支持する、請求項16に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工具、および加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ギヤの歯切り(ホブ)加工を行う加工装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような加工装置は、ギヤの歯を切削したのち、ギヤの歯の側面に発生するカエリを除去する必要がある。このような歯切り加工後のカエリは、ギヤの側面が上下方向に向くようにギヤを配置し、円盤状の工具で歯の側面を押すことによって切削し除去している。このとき、ギヤ(ワーク)および円盤状の工具の両方を回転させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-176415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のようなカエリの除去方法では、歯の側面(歯端面)において歯の底部分よりも工具側にR部を有するワークについては、R部のカエリが除去できないという課題があった。
【0005】
本開示の課題は、ワークの隅部または逃げ部のカエリを除去することができる加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る工具は、上下に延びる中心軸と交わる方向に広がるベース部と、前記ベース部から、前記中心軸から離れる方向に延び、周方向に配列される複数の凸部と、を有し、前記凸部は、少なくとも周方向一方側を臨む面に配置される第1の刃を有し、前記第1の刃は、前記中心軸から離れるにつれて上方に向かって湾曲する第1領域を有する。
【0007】
また、本開示に係る加工装置は、前記工具を、前記中心軸回りに回転不能に固定する工具固定部と、前記中心軸とは異なる回転軸回りにワークを回転可能に支持する回転機構と、を有し、前記工具固定部は、前記工具を前記ワークに接触させる。
【0008】
この工具、および加工装置によれば、ワークの隅部または逃げ部に形成されたR部、および隅部やカエリ部の形状に沿った複合的な形状に合わせて加工ができる。これによってワークの隅部または逃げ部のカエリを除去できる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、ワークの隅部または逃げ部のカエリを除去することができる加工装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施形態による加工装置の全体斜視図。
図2】本開示の実施形態による加工装置の側面図。
図3】本開示の実施形態による工具の底面図。
図4図3のA-A視でみた刃を示す図。
図5】本開示の実施形態による工具を歯車に押し当てた状態の斜視図。
図6】本開示の実施形態による工具をワークに押し当てた状態の断面図。
図7】本開示の他の実施形態による刃を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下明細書において、加工装置1の工具側を前、反対側を後と図面に記す。また、加工装置1の前方から見て左側を左、右側を右と図面に記す。加工装置1の上下方向の上側を上、下側を下と図面に記す。
【0012】
図1に示すように、加工装置1は、回転機構2と、工具4と、工具固定部6と、回り止め機構8と、を備える。本明細書においては、加工装置1のワークの一例であるホブ加工後の歯車Wを例に説明する。本実施形態の加工装置1は、ホブ加工後の歯車Wの歯端面に発生するカエリを除去する装置である。
【0013】
歯車Wは、歯W1と、R部(隅部)W2と、歯底W3と、上下に設けられる歯端面W4を有する歯車である。歯車Wは、歯底W3の径R1よりも大きい径R2の位置から、R部W2の始点が設けられるワークである(図6参照)。
【0014】
回転機構2は、歯車Wを固定するとともに回転させる。回転機構2には、歯車Wを固定し回転させるアクチュエータが内蔵される。図2に示すように、歯車Wは、歯端面W4が上下方向に向くように回転機構2に固定される。回転機構2は、歯車Wに設けられ回転軸C2が挿通する軸孔(図示せず)をつかんで歯車Wを固定し、歯車Wの軸孔を中心に、歯車Wを時計回りと反時計回りを繰り返して回転させる。
【0015】
工具4は、回転機構2によって、回転する歯車Wの歯端面W4に押し当てて使用する。本実施形態の加工装置1は、工具固定部6の上方に固定される第1工具4aと、工具固定部6の下方に固定される第2工具4bと、を備える。第1工具4aおよび第2工具4bは、歯車Wの上下の歯端面W4に押し付けられ、上下の歯端面W4を一度に加工する。
【0016】
図3に示すように、工具4は、円盤状のベース部10と、ベース部10の周囲に複数設けられる凸部12と、複数の刃14と、複数の貫通孔16と、中心軸C1に沿って上下に延びる中心孔18と、を有する。図2に示すように、工具4は、中心軸C1が回転軸C2と略平行になるように設定される。これによって、歯車Wと工具4の相対的な位置決めが容易となる。
【0017】
なお本実施形態では、上側の第1工具4aについて説明する。下側の第2工具4bは、第1工具4aを上下対称とした形状であるため、説明を省略する。図3に示すように、ベース部10は、上下方向に延びる中心孔18と交わる方向に広がる。ベース部10は、厚みのある円柱状の工具鋼を加工することによって形成される。ベース部10の外周は、外周の内側から後述する刃の曲面14aに向けて傾斜する。
【0018】
凸部12は、ベース部10の中心軸C1から離れる方向に向けて延びる部分である。凸部12は、ベース部10の周方向に間隔を隔てて設けられる。本実施形態では、凸部12は、等間隔に12個設けられる。凸部12は、先端部12aからベース部10の中心に向かうにつれて幅が縮小している。言い換えると、凸部12の径方向外方における周方向の幅は、凸部12の径方向内方における周方向の幅よりも広い、これによって、凸部12の先端部12aが、外周10aに対して鋭角に交差するように形成される。これにより、刃14が形成される凸部12の先端部12aの形状が切削性を向上させる。
【0019】
刃14は、少なくとも周方向一方側を臨む面に配置される。本実施形態では、周方向一方側を臨む面に配置される第1の刃14と、周方向他方側を臨む面に配置される第2の刃15と、を有する。図4に示すように、第1の刃14は、曲面(第1領域の一例)14aと、平面(第2領域の一例)14bと、を含む。曲面14aは、中心孔18から離れるにつれて上方に向かって湾曲し、刃14の先端部12aを形成する。平面14bは、曲面14aよりも中心孔18側において、中心軸C1に近づく方向に延びる。第2の刃15も第1の刃14と同様に曲面(第3領域の一例)15aと、平面(第4領域の一例)15bと、を含む。第2の刃15の曲面15aと、平面15bの構成は、第1の刃14と同様である。なお、第2工具4bは、第1工具4aと同様に、第1の刃14に相当する第3の刃(図示せず)、および第2の刃15に相当する第4の刃を有する。また、第3の刃は、第3の刃の曲面(第5領域の一例)と、第3の刃の平面(第6領域の一例)と、を有する。第4の刃は、第4の刃の曲面(第7領域の一例)と、第4の刃の平面(第8領域の一例)と、を有する。これら曲面14aおよび曲面15aは、第1工具4aと上下が反対になるため、下方に向かって湾曲する。
【0020】
図5に示すように、第1の刃14および第2の刃15は、回転する歯車Wに押し当てられることによって、歯車Wを切削する。本実施形態では、第1の刃14は、凸部12の左側の先端部12aに設けられる。第2の刃15は、凸部12の右側の先端部12aに設けられる。これによって、歯車Wが反時計回りCCWに回転するときは、左側の先端部12aに設けられる第1の刃14によって、歯車Wを切削することにより歯端面W4のカエリを除去できる。一方、歯車Wが時計回りCWに回転するときは、右側の先端部12aに設けられる第2の刃15によって、歯車Wを切削することにより歯端面W4のカエリを除去できる。なお、本実施形態では、第1の刃14と対向する面にある、回転軸C2からみて右隣の凸部12Rの第2の刃15Rを用いて歯車Wを切削する。
【0021】
図6に示すように、第1の刃14の平面14bは、歯車Wの歯端面W4のカエリを除去する。曲面14aは、歯車WのR部W2のカエリを除去する。曲面14aの曲率は歯車WのR部W2の曲率と一致し、曲面14aの形状がR部W2に転写される。第2の刃15も第1の刃14と同様の構成である。また、以下明細書においても、第2の刃15の構成は、第1の刃14と同様であるため、第1の刃14についてのみ説明する。
【0022】
図3および図5に示すように、複数の貫通孔16は、中心軸C1の方向にベース部10を貫通し、回り止め機構8の棒状部材8aが挿通する孔である。貫通孔16は、刃14を歯車Wに押し当てる位置に対応して設けられる。したがって貫通孔16の数は、凸部12の数と等しく、本実施形態では12個である。これによって、中心孔18を回転軸として、工具4を周方向に回転させるだけで簡単に段取り替えができ、工具の寿命も延びる。例えば、図5に示す凸部12の左右の先端部12aの第1の刃14および第2の刃15によって歯車Wのカエリを除去する場合、棒状部材8aは、凸部12の右隣にある貫通孔16から数え6個目の貫通孔16に挿通する。
【0023】
図3に示すように、貫通孔16は、中心孔18と凸部12の間に配置される。貫通孔16は、ベース部10の中心から凸部12の左右中央(周方向中央)を結ぶ仮想線X上に設けられる。これによって凸部12と中心孔18の間の肉を確保できる。このため、周方向に隣接する凸部12の間に貫通孔16が配置される場合に比べて、工具4の剛性が向上する。
【0024】
中心孔18は、中心軸C1方向に延びる工具固定部6のハブ(回転支持機構の一例)6a(図2参照)を挿通する孔である。中心孔18の周囲には、複数(本実施形態では2つ)のボルト孔18bが設けられ、複数のボルト孔18bを挿通するボルトによって、工具4が工具固定部6に固定される。
【0025】
図2に示すように、工具固定部6は、上方に配置され第1工具4aを固定する第1工具固定部6bと、下方に配置され第2工具4bを固定する第2工具固定部6cと、を有する。工具固定部6は、歯車Wに対して第1工具4aを上方から押し当てるとともに、第2工具4bを下方から押し当てる装置である。本実施形態では、第1工具固定部6bと、第2工具固定部6cとは上下対称の構造である。工具固定部6は、工具4の中心孔18を挿通するハブ6aと、工具を上下に移動させるシリンダ(図示なし)と、を有する。工具固定部6は、歯車Wが加工位置にセットされると、シリンダを作動させて、ハブ6aを上下に移動させる。本実施形態では、上側のハブ6aが第1工具4aを下方に移動させ、下側のハブ6aが第2工具4bを上方に移動させる。このようにして、歯車Wを第1工具4aおよび第2工具4bによって挟み込む。
【0026】
図2に示すように、回り止め機構8は、中心軸C1と略平行な方向に延びる棒状部材8aと、棒状部材8aを固定するナット8bと、を有する。本実施形態では、棒状部材8aは円柱形の金属部材である。しかし、棒状部材は角柱などであってもよい。この場合、貫通孔16は、棒状部材8aの形状に合わせて形状を変更することが好ましい。棒状部材8aは、上下の工具固定部6と、第1工具4aおよび第2工具4bの貫通孔16と、を通過する。これによって、第1工具4aおよび第2工具4bが工具固定部6に対して回転することを防止する。
【0027】
次に、加工装置1によるカエリ取り作業について説明する。
【0028】
まず、図2に示すように歯W1を加工した歯車Wを回転機構2にセットする。回転機構2によって歯車Wを時計回りCWに回転させる。歯車Wを回転させると、工具固定部6のハブ6aに固定した第1工具4aを下降させ、第2工具4bを上昇させる。第1工具4aおよび第2工具4bは、貫通孔16を貫通した棒状部材8a上をスライドしながら上昇及び下降する。
【0029】
図5および図6に示すように、工具固定部6は、第1工具4aを下降させ、第2工具4bを上昇させると、歯車Wに対して、第1工具4aを上方から押し当てるとともに第2工具4bを下方から押し当てる。工具固定部6は、歯車Wの歯端面W4に第1工具4aおよび第2工具4bを押し当て、第1工具4aおよび第2工具4bは、歯車Wの歯端面W4およびR部を切削しカエリを除去する。このとき、上記のとおり、歯車Wが時計回りCWに回転するときは、第1工具4aおよび第2工具4bの凸部12Rの、中心軸C1側からみて右側に設けられる先端部12aの第2の刃15Rによって、歯車Wを切削する。
【0030】
次に、回転機構2は、歯車Wを反時計回りCCWに回転させる。歯車Wが反時計回りCCWに回転するときは、第1工具4aおよび第2工具4bの凸部12の、中心軸C1側からみて左側に設けられる先端部12aの第1の刃14によって、歯車Wを切削することにより歯端面W4のカエリを除去する。回転機構2は、歯車Wを時計回りCWと反時計回りCCWに繰り返して回転させる。
【0031】
このように加工装置1は、歯車Wのカエリを除去し終えると、工具固定部6によって第1工具4aを上昇させ、第2工具4bを下降させて、歯車Wから第1工具4aおよび第2工具4bを離す。
【0032】
このようなカエリ取り(除去)作業を繰り返す場合、第1の刃14および第2の刃15が摩耗することもある。このように第1の刃14および第2の刃15が摩耗した場合の、交換手順について説明する。まず、回り止め機構8のナット8bをはずし、棒状部材8aを上方に移動させる。そして、棒状部材8aを、第1工具4aおよび第2工具4bの貫通孔16から引き抜く。
【0033】
次に、第1工具4aおよび第2工具4bを回転させ、上記の手順で使用した凸部12と異なる凸部12が歯車Wを切削する位置となるようにセットする。その状態で、棒状部材8aを貫通孔16に挿通させて、ナット8bを締める。これによって、第1工具4aおよび第2工具4bの歯の交換が完了する。
【0034】
以上説明した通り、本開示の加工装置1によれば、歯車WのR部W2のカエリを除去することができる。このとき、回り止め機構8によって、第1工具4aおよび第2工具4bが回転することを防止できるため、歯車WのR部W2に第1工具4aおよび第2工具4bの曲面を押し当てても、第1工具4aおよび第2工具4bと歯車Wとの摩擦によって第1工具4aおよび第2工具4bが回転することを防止できる。この結果、この加工装置1によれば、第1の刃14の平面14bおよび第2の刃の平面15bによって歯車Wの歯端面W4のカエリを除去するとともに、第1の刃14の曲面14aおよび第2の刃15の曲面15aによってR部W2のカエリも除去できる。
【0035】
さらに加工装置1は、第1の刃14および第2の刃15が摩耗した場合であっても、第1工具4aおよび第2工具4bを回転させることによって、凸部12の位置を変更し、摩耗していない第1の刃14および第2の刃15に簡単に交換することができる。なお、加工装置1は、凸部12のない円盤状の工具も使用可能である。この場合、棒状部材8aを工具固定部6から外し、工具を回転させてもよい。このように、加工装置1は、本開示の工具4以外も使用可能な汎用性のある装置である。
【0036】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0037】
(a)上記実施形態では、第1工具4aの曲面14aが中心軸C1から離れるにつれて上方に向かって湾曲する曲面14aを例に説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば図7に示すように、曲面214aが中心軸C1から離れるにつれて下方に向かって湾曲し、湾曲した部分が曲率の異なる曲線と直線とを組み合わせた複合的な形状を形成してもよい。このような刃214によれば、曲面214aと、平面214bによって、歯車Wの逃げ部と平面のカエリを同時に除去できる。
【0038】
(b)上記実施形態では、凸部12が12個、貫通孔が12個の例を用いて説明したが、凸部12の数および貫通孔16の数は、適宜変更可能である。
【0039】
(c)上記実施形態では、回り止め機構8は、第1工具4aおよび第2工具4bの貫通孔16を通過する棒状部材8aを用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。回り止め機構8は第1工具4aおよび第2工具4bの回転を防止できる構造であれば適宜変更可能である。
【0040】
(d)上記実施形態では、第1工具4aおよび第2工具4bの第1の刃14から第4の刃までを設ける例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されない。第1の刃14と第2の刃15は、いずれか一方が配置されてもよい。第3の刃と、第4の刃も同様である。これによっても歯車Wの上下面のカエリを一度に除去できる。
【符号の説明】
【0041】
1:加工装置,2:回転機構,4:工具
4a:第1工具,4b:第2工具
6:工具固定部,6a:ハブ(回転支持機構の一例)
6b:第1工具固定部,6c:第2工具固定部
8:回り止め機構,10:ベース部,12:凸部
14:第1の刃,14a:曲面(第1領域の一例),14b:平面(第2領域の一例)
15:第2の刃,15a:曲面(第3領域の一例),15b:平面(第4領域の一例)
16:貫通孔,18:中心孔
C1:中心軸,C2:回転軸
CCW:反時計回り,CW:時計回り
W:歯車,X:仮想線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7