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特開2023-179897環境配慮コンクリート、プレキャストコンクリート、環境配慮コンクリート用組成物、及び環境配慮コンクリート製造方法
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  • 特開-環境配慮コンクリート、プレキャストコンクリート、環境配慮コンクリート用組成物、及び環境配慮コンクリート製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179897
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】環境配慮コンクリート、プレキャストコンクリート、環境配慮コンクリート用組成物、及び環境配慮コンクリート製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/08 20060101AFI20231213BHJP
   C04B 18/08 20060101ALI20231213BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20231213BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20231213BHJP
   C04B 14/28 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
C04B28/08
C04B18/08 Z
C04B18/14 A
C04B18/14 Z
C04B22/06 Z
C04B14/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092811
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000220675
【氏名又は名称】東京都下水道サービス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000229667
【氏名又は名称】日本ヒューム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 大勇
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】秋元 昌哲
(72)【発明者】
【氏名】江口 秀男
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MA00
4G112PA10
4G112PA27
4G112PA29
4G112PB03
(57)【要約】
【課題】従来より二酸化炭素の排出量が少ない環境配慮されたコンクリートを提供する。
【解決手段】
ポルトランドセメントを含まず、水と、産業副産物と、アルカリ刺激材と、膨張材と、細骨材と、粗骨材と、減水剤とが配合される。このうち、産業副産物は、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、及びシリカフュームを含む。アルカリ刺激材は、消石灰又は炭酸カルシウムを含む。さらに、細骨材は、大気中及び/又は排気ガス中から抽出された二酸化炭素を原料として含んで製造された炭酸カルシウムを含む。これにより、強度を高めることができる。よって、同強度の場合には炭酸カルシウムを使用しても減水剤の配合量を減らせるため、コスト的に実使用可能な環境配慮されたコンクリートとなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポルトランドセメントを含まず、
水と、産業副産物と、アルカリ刺激材と、膨張材と、細骨材と、粗骨材と、減水剤とが配合され、
前記産業副産物は、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、及びシリカフュームを含み、
前記アルカリ刺激材は、消石灰又は炭酸カルシウムを含み、
前記細骨材は、大気中及び/又は排気ガス中から抽出された二酸化炭素を原料として含んで製造された前記炭酸カルシウムを含む
ことを特徴とする環境配慮コンクリート。
【請求項2】
前記水を170kg/m3、前記フライアッシュを207kg/m3、前記高炉スラグ微粉末を207kg/m3、前記シリカフュームを30kg/m3、前記消石灰を20kg/m3、前記膨張材を30kg/m3、前記細骨材を639kg/m3、前記粗骨材を959kg/m3、及び前記減水剤を5.434kg/m3を標準の配合として、
重量パーセントにおいて、前記水を60~105%、前記フライアッシュを10~110%、前記高炉スラグ微粉末を90~190%、前記シリカフュームを50~130%、前記消石灰を0~500%、前記膨張材を60~130%、前記細骨材を80~250%、前記粗骨材を80~125%、及び前記減水剤を50~350%の割合で配合する
ことを特徴とする請求項1に記載の環境配慮コンクリート。
【請求項3】
細骨材率を30~60%として、
前記細骨材に含まれる前記炭酸カルシウムは、細骨材置換率で25%~250%である
ことを特徴とする請求項2に記載の環境配慮コンクリート。
【請求項4】
前記産業副産物として、
下水道汚泥焼却灰26kg/m3を標準の配合として、重量パーセントにおいて、前記下水道汚泥焼却灰を200%までの割合で配合する
ことを特徴とする請求項3に記載の環境配慮コンクリート。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の環境配慮コンクリートで形成された
ことを特徴とするプレキャストコンクリート。
【請求項6】
ポルトランドセメントを含まず、
産業副産物と、アルカリ刺激材と、膨張材と、細骨材と、減水剤とが配合され、
前記産業副産物は、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、及びシリカフュームを含み、
前記アルカリ刺激材は、消石灰又は炭酸カルシウムを含み、
前記細骨材は、大気中及び/又は排気ガス中から抽出された二酸化炭素を原料として含んで製造された前記炭酸カルシウムを含む
ことを特徴とする環境配慮コンクリート用組成物。
【請求項7】
ポルトランドセメントを含まず、
水と、産業副産物と、アルカリ刺激材と、膨張材と、細骨材と、粗骨材と、減水剤を配合し、
前記産業副産物は、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、及びシリカフュームを含み、
前記アルカリ刺激材は、消石灰又は炭酸カルシウムを含み、
前記細骨材は、大気中及び/又は排気ガス中から抽出された二酸化炭素を原料として含んで製造された炭酸カルシウムを含み、
遠心力成形で締め固める、振動成型する、又は、現場施工で打設する
ことを特徴とする環境配慮コンクリート製造方法。
【請求項8】
前記産業副産物は、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、及びシリカフュームを含み、 前記アルカリ刺激材は、消石灰又は炭酸カルシウムを含み、
前記水を170kg/m3、前記フライアッシュを207kg/m3、前記高炉スラグ微粉末を207kg/m3、前記シリカフュームを30kg/m3、前記消石灰を20kg/m3、前記膨張材を30kg/m3、前記細骨材を639kg/m3、前記粗骨材を959kg/m3、及び前記減水剤を5.434kg/m3を標準の配合として、
重量パーセントにおいて、前記水を60~105%、前記フライアッシュを10~110%、前記高炉スラグ微粉末を90~190%、前記シリカフュームを50~130%、前記消石灰を0~500%、前記膨張材を60~130%、前記細骨材を80~250%、前記粗骨材を80~125%、及び前記減水剤を50~350%の割合で配合し、
前記産業副産物として、下水道汚泥焼却灰26kg/m3を標準の配合として、重量パーセントにおいて、前記下水道汚泥焼却灰を200%までの割合で配合し、
細骨材率を30~60%として、前記細骨材に含まれる前記炭酸カルシウムは、細骨材置換率で25%~250%である
ことを特徴とする請求項7に記載の環境配慮コンクリート製造方法。
【請求項9】
成形後に高圧高温養生する
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の環境配慮コンクリート製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にポルトランドセメントを用いない環境配慮コンクリート、プレキャストコンクリート、環境配慮コンクリート用組成物、及び環境配慮コンクリート製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的に環境への意識が高まり、地球温暖化対策が世界規模での共通課題として認識されるようになってきている。このため、各国では、地球温暖化対策として、二酸化炭素等の温室効果ガスの削減に向けて本格的な取り組みを始めている。この取り組みの一つとして、セメント製造時に、多くの二酸化炭素を排出することが着目されている。
【0003】
ここで、特許文献1によれば、コンクリートの遠心成形工程にて発生するコンクリートスラッジをスラッジケーキとスラッジ液とに分離するスラッジ分離装置と、このスラッジ分離装置にて分離されたスラッジ液から炭酸カルシウムを析出させる析出反応装置と、炭酸カルシウムが析出した析出液から炭酸カルシウムを分離する炭酸カルシウム分離装置とを具備するコンクリートスラッジ処理装置が記載されている。この装置において、析出反応装置は、常圧容器にて形成された析出反応装置本体と、この析出反応装置本体に設けられ析出反応装置本体内へ炭酸カルシウムの種結晶を供給する種結晶供給手段と、析出反応装置本体に設けられ析出反応装置本体内へ二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給手段と、析出反応装置本体に設けられこの析出反応装置本体内の内容物を分散する分散手段とを有している。
この特許文献1の装置では、二酸化炭素供給手段にて供給される二酸化炭素として、石油や天然ガスの燃焼排ガスまたは廃棄物の焼却排ガスに含まれるものを用いるため、二酸化炭素の削減に資することができる。
【0004】
一方、特許文献2によれば、水と、産業副産物と、アルカリ刺激材と、膨張材と、細骨材と、粗骨材と、高性能減水剤とが配合され、製造されることで、塗布等が必要なく、耐用年数が長い耐酸性コンクリートが記載されている。
この特許文献2の耐酸性コンクリートは、産業廃棄物として、下水道汚泥焼却灰等を用いることで、積極的にゴミを資源として利用するという観点で、環境に配慮している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-279552号公報
【特許文献2】国際特開第2019/172349号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1に記載の炭酸カルシウムを、特許文献2に記載の耐酸性コンクリートに加えることで、更に環境に配慮することが考えられる。
しかしながら、特許文献1の炭酸カルシウムを、単に特許文献2に記載の耐酸性コンクリートに加えるだけではコスト増になるだけであり、当業者にとって、積極的、実用的に利用することは考えられなかった。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上述の問題を解消し、二酸化炭素の削減に資する炭酸カルシウムを耐酸性コンクリートに適切に加えて、実用的な環境配慮コンクリートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の環境配慮コンクリートは、ポルトランドセメントを含まず、水と、産業副産物と、アルカリ刺激材と、膨張材と、細骨材と、粗骨材と、減水剤とが配合され、前記産業副産物は、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、及びシリカフュームを含み、前記アルカリ刺激材は、消石灰又は炭酸カルシウムを含み、前記細骨材は、大気中及び/又は排気ガス中から抽出された二酸化炭素を原料として含んで製造された炭酸カルシウムを含むことを特徴とする。
本発明の環境配慮コンクリートは、前記水を170kg/m3、前記フライアッシュを207kg/m3、前記高炉スラグ微粉末を207kg/m3、前記シリカフュームを30kg/m3、前記消石灰を20kg/m3、前記膨張材を30kg/m3、前記細骨材を639kg/m3、前記粗骨材を959kg/m3、及び前記減水剤を5.434kg/m3を標準の配合として、重量パーセントにおいて、前記水を60~105%、前記フライアッシュを10~110%、前記高炉スラグ微粉末を90~190%、前記シリカフュームを50~130%、前記消石灰を0~500%、前記膨張材を60~130%、前記細骨材を80~250%、前記粗骨材を80~125%、及び前記減水剤を50~350%の割合で配合することを特徴とする。
本発明の環境配慮コンクリートは、細骨材率を30~60%として、前記細骨材に含まれる前記炭酸カルシウムは、細骨材置換率で25%~250%であることを特徴とする。
本発明の環境配慮コンクリートは、前記産業副産物として、下水道汚泥焼却灰26kg/m3を標準の配合として、重量パーセントにおいて、前記下水道汚泥焼却灰を200%までの割合で配合することを特徴とする。
本発明のプレキャストコンクリートは、前記環境配慮コンクリートで形成されたことを特徴とする。
本発明の環境配慮コンクリート用組成物は、ポルトランドセメントを含まず、産業副産物と、アルカリ刺激材と、膨張材と、細骨材と、減水剤とが配合され、前記産業副産物は、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、及びシリカフュームを含み、前記アルカリ刺激材は、消石灰又は炭酸カルシウムを含み、前記細骨材は、大気中及び/又は排気ガス中から抽出された二酸化炭素を原料として含んで製造された炭酸カルシウムを含むことを特徴とする。
本発明の環境配慮コンクリート製造方法は、ポルトランドセメントを含まず、水と、産業副産物と、アルカリ刺激材と、膨張材と、細骨材と、粗骨材と、減水剤を配合し、前記産業副産物は、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、及びシリカフュームを含み、前記アルカリ刺激材は、消石灰又は炭酸カルシウムを含み、前記細骨材は、大気中及び/又は排気ガス中から抽出された二酸化炭素を原料として含んで製造された炭酸カルシウムを含み、遠心力成形で締め固める、振動成型する、又は、現場施工で打設することを特徴とする。
本発明の環境配慮コンクリート製造方法は、前記産業副産物は、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、及びシリカフュームを含み、前記アルカリ刺激材は、消石灰又は炭酸カルシウムを含み、前記水を170kg/m3、前記フライアッシュを207kg/m3、前記高炉スラグ微粉末を207kg/m3、前記シリカフュームを30kg/m3、前記消石灰を20kg/m3、前記膨張材を30kg/m3、前記細骨材を639kg/m3、前記粗骨材を959kg/m3、及び前記減水剤を5.434kg/m3を標準の配合として、重量パーセントにおいて、前記水を60~105%、前記フライアッシュを10~110%、前記高炉スラグ微粉末を90~190%、前記シリカフュームを50~130%、前記消石灰を0~500%、前記膨張材を60~130%、前記細骨材を80~250%、前記粗骨材を80~125%、及び前記減水剤を50~350%の割合で配合し、前記産業副産物として、下水道汚泥焼却灰26kg/m3を標準の配合として、重量パーセントにおいて、前記下水道汚泥焼却灰を200%までの割合で配合し、細骨材率を30~60%として、前記細骨材に含まれる前記炭酸カルシウムは、細骨材置換率で25%~250%であることを特徴とする。
本発明の環境配慮コンクリート製造方法は、成形後に高圧高温養生することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐酸性コンクリートの細骨材を置き換えるように、大気中及び/又は排気ガス中から抽出された二酸化炭素を原料として含んで製造された炭酸カルシウムを加えることで、当業者に予期できなかった程度に強度を高められる。このため、従来のコンクリートと同じ強度でよければ、減水剤の配合量を減らしてコストを削減できる。よって、結果的にコンクリート製造時の二酸化炭素を削減することが可能で、実用的な環境配慮コンクリートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例に係る圧縮強度試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第一実施形態>
本発明の発明者らは、「二酸化炭素(CO2)ニュートラル」、「CO2ネガティブ」コンクリートを製造することを目指して鋭意実験と開発を進めた。その結果、特許文献1に示す遠心成形コンクリートから排出されるコンクリートスラッジやスラッジケーキなどを利用し、大気中又は排気ガスから抽出した二酸化炭素を反応させて製造した炭酸カルシウムに着目した。この炭酸カルシウムは、コンクリートに配合されると流動性が高くなるため、減水剤を多量に必要としてコスト増となる。このため、炭酸カルシウムは、通常、高流動コンクリートにしか配合されなかった。
【0012】
これについて、本発明者らは、特許文献2に示す耐酸性コンクリートに炭酸カルシウムを添加すると、顕著な強度増加がみられることを見いだし、減水剤を少なくしても同じ強度とすることが可能であることに着目し、本発明を完成させるに至った。さらに、オートクレーブ養生(高圧高温養生)を併用することで、さらに強度を増加させることが可能であることも見いだした。
【0013】
以下、本発明の環境配慮コンクリートの実施の形態について説明する。
本実施形態に係る環境配慮コンクリートは、水と、産業副産物と、アルカリ刺激材と、膨張材と、細骨材と、粗骨材と、減水剤とが配合される。このうち、産業副産物は、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、及びシリカフュームを含む。アルカリ刺激材は、消石灰又は炭酸カルシウムを含む。細骨材は、大気中及び/又は排気ガス中から抽出された二酸化炭素を原料として含んで製造された炭酸カルシウムを含むことを特徴とする。
【0014】
このうち、本実施形態に係る環境配慮コンクリートに用いる水は、特に制限されず、水道水であってもよい。本実施形態に係る水のpH等も任意である。
【0015】
また、本実施形態に係る環境配慮コンクリートの産業副産物は、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、及びシリカフュームを含むことを特徴とする。
【0016】
本実施形態に係るフライアッシュは、火力発電所において石炭の微粉炭燃焼の集塵機で捕集されるコンクリート用のポラゾン石炭灰(フライアッシュ)である。本実施形態に係るフライアッシュは、例えば、JIS A 6201で規定された、フライアッシュII種又はこれらの類似品、密度2.20g/cm3程度のものであることが好適である。フライアッシュは、主成分がシリカとアルミナなので、アルカリ刺激材によりカルシウムシリケート水和物等を生成するポゾラン反応により硬化する。
【0017】
また、本実施形態に係る高炉スラグ微粉末は、銑鉄製造過程で副産される微粉末である。この高炉スラグ微粉末は、例えば、JIS A 6206で規定された、粉末度4000の比表面積のもの等が好適である。また、密度が2.91g/cmg/cm3程度のものであることが好適である。高炉スラグ微粉末も、アルカリ刺激剤により、カルシウムシリケート水和物及びカルシウムアルミネート水和物を生成して硬化する「潜在水硬性」により硬化する。
【0018】
また、本実施形態に係るシリカフュームは、アーク式電気炉から排ガス中のダストとして集塵される大部分が非晶質で球形のシリカ(SiO2)等である。このシリカフュームは、JIS A 6207で規定された、密度2.30g/cm3程度のものを用いることが好適である。シリカフュームは、遠心後の硬化体の緻密化と強度向上のために用いることが好適である。
【0019】
これに加えて、本実施形態に係る産業副産物は、下水道汚泥焼却灰を更に含んでいてもよい。この下水道汚泥焼却灰としては、特許文献2に記載されているような、下水汚泥焼却灰を粒度調整した「スーパーアッシュ」を用いることが好適である。
【0020】
また、本実施形態に係る環境配慮コンクリートは、アルカリ刺激材として、主に消石灰を含むことが好適である。この消石灰は、例えば、JIS R9001特号に該当する水酸化カルシウム(Ca(OH)2)を用いることが好適である。また、消石灰の密度は、2.30g/cm3程度であることが好適である。
このアルカリ刺激材により、従来のポルトランドセメントを全く使用しなくても、フライアッシュ及び高炉スラグ微粉末を硬化させることが可能となる。
なお、後述するように、アルカリ刺激材として、細骨材として砂を置換する炭酸カルシウムを用いることも可能である。
【0021】
また、本実施形態に係る膨張材は、粉体状で水分の供給によって膨張し、乾燥収縮によるひび割れを低減する性質の物質である。本実施形態の膨張材の例として、石灰系膨張材、エトリンガイト系(カルシウムサルフォアルミネート系)膨張材、エトリンガイト-生石灰複合系膨張材等が挙げられる。このうち、本実施形態においては、膨張材として、石灰系膨張材を用いることが好適である。また、膨張材は、例えば、日本工業規格JIS A 6202等で規定された品質に適合するものであることが好適である。
【0022】
また、本実施形態に係る細骨材は、砕砂(砂)及び炭酸カルシウムを用いることが可能である。
このうち、砂としては、JIS A 5005 砕砂(硬質砂岩)に該当するもので、密度が2.62 g/cm3程度のものを用いることが好適である。
【0023】
本実施形態に係る炭酸カルシウムは、大気中及び/又は排気ガス中から抽出された二酸化炭素を原料として含んで製造されたものを用いる。この二酸化炭素は、例えば、大気中から吸収圧縮設備で吸収又は圧縮されたものを用いることが可能である。または、大気中に400ppm程度含まれる非圧縮の二酸化炭素を用いてもよい。さらに、石油、石炭、天然ガス等の燃焼排ガス、及び/又は廃棄物の焼却排ガスに含まれる二酸化炭素を用いることも可能である。このうち、燃焼排ガスは、セメント製造に使用されるロータリーキルン炉の排ガスを用いることも可能である。さらに、廃棄物の焼却排ガスは、下水汚泥の焼却時の排ガスを用いることも可能である。この場合は、上述の下水道汚泥焼却灰の取得と同時に、排ガスを炭酸カルシウム製造に用いることが可能となる。これらの二酸化炭素を、遠心成形コンクリートから排出されるコンクリートスラッジやスラッジケーキ等に反応させることで、炭酸カルシウムを製造可能である。この製造設備は、例えば、特許文献1に記載されたコンクリートスラッジ処理装置を用いることも可能である。
【0024】
加えて、本実施形態に係る炭酸カルシウムは、熱乾燥させると二酸化炭素を放出する可能性があるため、自然乾燥又は脱水のみして用いることも可能である。この場合、例えば、水を10~20%程度含むような状態の炭酸カルシウムを使用可能である。この場合、後述する水の配合量を、本実施形態に係る環境配慮コンクリートの用途、性状により適宜、変更して対応可能である。
【0025】
なお、本実施形態に係る細骨材として、更に、スラグ系骨材、例えば高炉の水砕スラグから製造した細骨材、電気炉酸化スラグ骨材等も用いることが可能である。
【0026】
また、本実施形態に係る粗骨材は、一般的な砂岩の粗骨材を使用可能である。この粗骨材は、例えば、JIS A 5005 砕石2005(硬質砂岩)に該当するもので、密度が2.67g/cm3程度のものであることが好適である。
【0027】
また、本実施形態に係る減水剤は、コンシステンシーに影響することなく単位水量を大幅に減少させる、又は単位水量に影響することなくスランプを大幅に増加させる化学混和剤である。本実施形態の減水剤は、例えば、JIS A 6204に該当する高性能減水剤を用いることが好適である。この高性能減水剤としては、例えば、ポリカルボン酸系の密度1.00g/cm3程度のものを用いることが好適である。
【0028】
また、本実施形態に係る環境配慮コンクリートは、水170kg/m3、フライアッシュ207kg/m3、高炉スラグ微粉末207kg/m3、シリカフューム30kg/m3、消石灰20kg/m3、膨張材30kg/m3、細骨材639kg/m3、粗骨材959kg/m3、及び減水剤5.434kg/m3を標準の配合とすることを特徴とする。
【0029】
このうち、水は、標準の配合を100重量パーセントとして、60~105%を配合することが好適である。つまり、100kg/m3~175kg/m3の水を配合することが好適である。この配合であれば、スラッジ水の排出が良好となる。また、60%以下であると、ノンスラッジとなり、遠心成形性が低下し、コンクリート形成品の最終的な強度とが低下する。また、105%以上であると、スラッジ水が増して、強度が低下する。
【0030】
同様に、フライアッシュは、10~110%の割合で配合することが好適である。このうち、配合量の減少に伴い徐々に強度は向上するものの、高炉スラグ微粉末の使用量が増加するため、10%程度までを下限とすることが好適である。また、110%以上配合すると、強度が低下するため好ましくない。
【0031】
また、高炉スラグ微粉末は、90~190%の割合で配合することが好適である。ここで、配合量を少なくすると、フライアッシュの量が増して強度が低下するため、90%程度を下限とすることが好適である。逆に、使用量の増加に伴い徐々に強度は向上するものの、フライアッシュの量が低下するため、190%程度までの配合を上限とすることが好適である。
【0032】
また、スーパーアッシュは、0~200%の割合で配合することが好適である。すなわち、無使用の0%でもよく、配合の割合を少なくすると、硬化体の強度が向上する。逆に、200%より多く配合すると、硬化体の強度低下が顕著になるため、好ましくない。
【0033】
また、シリカフュームは、50~130%の割合で配合することが好適である。この配合であれば、遠心後の硬化体の緻密化と強度向上とを実現可能となる。50%未満であると、内面の脆弱層は無くなるものの、緻密化と強度向上が実現しなくなる。また、130%より多く配合すると、硬化体の内面の脆弱層が増して、下水道管としての性能が低下し、強度も向上しない。
【0034】
つまり、本実施形態の産業副産物の混合比率としては、フライアッシュ及び高炉スラグ微粉末を主成分として、シリカフュームを配合する。さらに、スーパーアッシュは、配合してもしなくてもよい。
【0035】
また、消石灰は、0~500%(0~100kg/m3)の割合で配合することが好適である。50%未満の配合であると、強度が低下するため、後述するように炭酸カルシウムの量を調整することが好適である。200%より多く配合しても、強度は向上しない。しかしながら、消石灰を200%より多く配合すると、中性化抑制効果が得られる。水酸化カルシウムの混入量が増すと硬化体の中性化深さが顕著に小さくなる。すなわち、水酸化カルシウムの添加量を増加させると、中性化抑制効果が得られる。
ここで、本実施形態において、この消石灰の配合量は、後述する炭酸カルシウムの配合量により調整されてもよい。炭酸カルシウムの配合比率によっては、消石灰を配合しなくてもよいことが、本発明者らの予備試験で示されている。この場合は、炭酸カルシウムを、細骨材の砂の置換に加えて、アルカリ刺激剤の役割として使用可能である。
【0036】
また、膨張材は、60~130%の割合で配合することが好適である。60%未満であると、収縮ひび割れ防止効果が不十分となる。130%より多くても、収縮ひび割れ防止効果は向上しない。
【0037】
また、細骨材は、80~250%の割合で配合することが好適である。80%未満であると、細骨材が少なく粗骨材が過多であるため、硬化体の表面が粗々しくなり、強度が低下するため好ましくない。125%より多いと、細骨材と水とが増え、強度が低下するため好ましくない。
【0038】
ここで、本実施形態の炭酸カルシウム(CaCO3)は、細骨材のうち砂の置き換えとして、細骨材置換率で25%~250%の割合で配合することが好適である。炭酸カルシウムの量が25%より少ないと、十分な強度が得られず、二酸化炭素の削減効果も少なくなる。また、250%より多いと、粘性が高くなりすぎて、減水剤の配合量を増加させすぎ、コストが高くなるため好ましくない。また、上述したように、炭酸カルシウムの含水率に応じて、水との関係で配合量(配合比)を変更することも可能である。
なお、細骨材として、砂をまったく用いずに、主に炭酸カルシウムを用いるような構成も可能である。
【0039】
また、粗骨材は、80~125%の割合で配合することが好適である。80%未満であると、細骨材と水とが増え、強度が低下するため好ましくない。125%より多いと、粗骨材が過多で細骨材が少なく、硬化体表面が粗々しくなり、強度が低下するため好ましくない。
【0040】
また、減水剤は、50~350%の割合で配合することが好適である。50%未満であると、水が増えて製品の強度が低下するため好ましくない。350%より多いと過添加であり、流動性が過大となり、更に凝結遅延が生じ強度が低下し、コストも増大するため好ましくない。
なお、本実施形態において、炭酸カルシウムの配合量が増大すると流動性が増大するため、打設時の性状を確認しながら、減水剤の配合割合を調整することが好適である。
また、本実施形態においては、減水剤は、水の内割り置き換えで用いることが好適である。
【0041】
また、本実施形態に係る環境配慮コンクリート用組成物として、上述の環境配慮コンクリートの水を除いたプレミックスや混合物(以下、単に「混合物」と称する。)の形式で提供されてもよい。この混合物は、更に、粗骨材、細骨材に含まれる砂、及び減水剤のいずれか又は任意の組み合わせを除いた形式で提供されてもよい。この場合、プレキャストか現場打設かにより、配合比等を変更してもよい。
【0042】
本実施形態に係る環境配慮コンクリートは、遠心力成形で締め固める、振動成型する、又は、現場施工で打設されて製造されてもよい。
【0043】
具体的には、本実施形態に係る環境配慮コンクリートは、プレキャストコンクリートの製造に用いることが可能である。このプレキャストコンクリートは、特に強度が必要な製品に用いることが好適である。専用工場においてコンクリート製品を製造する際に、最適な組成と強度に設定することで、製造効率を高め、製造コストを最適化することができる。
【0044】
ここで、本実施形態に係る環境配慮コンクリートは、遠心力成形で締め固めてもよい。この遠心力成形では、上述の割合で配合された水、産業副産物、アルカリ刺激材、膨張材、細骨材、粗骨材、及び減水剤の混合物(以下、単に「混合物」という。)を遠心成形用型枠に充填し、同型枠を成形機の上で高速回転させ、遠心力を利用して最終的に30~50G程度の加速度で締固め、余剰水をスラッジ水として排出する。この際、余剰水が適切に排水されて緻密に締固められるよう、数段階に加速度を大きくして締固めてもよい。この段階としては、例えば、5G、15G、35Gを、それぞれ、1分、1分、7分の割合で締固めする。このように遠心力成形の締固めで製造することで、本実施形態に係る環境配慮コンクリートにより、強度のみならず耐酸性を高めて、更に、蒸気養生の時間を短くし、高性能な円筒状構造物等を製造することが可能となる。
なお、このスラッジ水に二酸化炭素を付加して、上述の炭酸カルシウムの製造に用いることも可能である。
【0045】
さらに、本実施形態の環境配慮コンクリートは、上述の遠心成形の他に、振動形成されたプレキャストコンクリートとしてとしても用いることが可能である。
振動成形製品の対象としては、ボックスカルバートやマンホールなどが挙げられる。何れの製品も、ヒューム管等のプレキャストコンクリートの製造工程と同様の製造方法で製造可能である。すなわち、遠心成形を振動成形に変更するだけで製造することが可能である。したがって、本実施形態の混合物は、振動形成のプレキャストコンクリート製品の製造にも適用することが可能である。
【0046】
本実施形態の混合物を実製品に適用する場合の配合例としては、後述する実施例の表1に記載したような配合を用いることが好適である。現場施工の場合も、適宜調整可能である。
【0047】
この際、本実施形態の環境配慮コンクリートは、適用する製品によっては、要求性能が異なる場合があり得る。
この場合、コンクリートにおける水(W)とセメント(C)の割合(W/C)に相当する様に、混合物の水(W)と総粉体量(P)との割合(W/P)を微調整するだけで対応可能である。または、このW/Pの代わりに、水(W)結合材(B)比(以下、「W/B」という。)を用いて調整することも可能である。ここで、本実施形態に係るW/Bは、強度と流動性の要求性能を満足する範囲で、減少させたり増加させたりすることが可能である。
【0048】
また、必要に応じて細骨材率(s/a)や混和剤(Ad)添加量等も適宜調整して、混合物のフレッシュ性状(スランプ:SLや、空気量:Air)を、適用する製品の要求性能に合わせることが可能である。
なお、適切な養生方法と温度管理を十分に行えば、本実施形態の混合物を用いて、現場で打設することも可能である。
【0049】
また、本実施形態に係る環境配慮コンクリートは、成形後に蒸気養生され、該蒸気養生の前置時間が1.5時間以上であることを特徴とする。プレキャストコンクリートは、脱型までの時間を短縮して、生産効率を上げるために、蒸気養生を行うことがある。この場合、対象とする製品や配合条件などによって、前置時間、上昇温度(昇温)、最高温度、保持時間、除冷方法等の蒸気養生条件を調整することが好適である。このうち、前置時間は、注水から温度上昇を開始するまでの時間である。
本実施形態においては、例えば、前置時間を1.5~6時間、昇温を15~25℃/時間、60~75℃で3~5時間以上保持し、その後、試験室温度にて徐冷して、気中養生するといった条件を用いる。このような条件で蒸気養生することで、混合物の凝結や硬化(強度発現性)を早め、製造効率を高められる。
【0050】
さらに、本実施形態に係る環境配慮コンクリートは、成形後に高圧高温養生されてもよいことを特徴とする。
すなわち、オートクレーブ養生(高圧高温養生)を併用することで、さらに強度を増加させることが可能である。この高圧高温養生の条件としては、例えば、高温高圧釜にて、90℃~220℃、1~6時間程度の養生を行うことが可能である。
【0051】
また、本実施形態に係る環境配慮コンクリートのスランプフローは、550±100mm程度とすることが好適である。つまり、本実施形態の混合物のフレッシュ性状は、高流動タイプとなる。これにより、成形時における型枠内への充填性を高め、余剰水をスラッジ水として円滑に排水し、良好な締固め効果を得ることが可能となる。また、水と、混合物との重量比(以下、単に「水粉体比」という。)は、20~60%程度になる。
【0052】
また、本実施形態に係る環境配慮コンクリートの空気量は、2.0±1.5%、すなわち0.5~3.5%であることが好適である。これにより、ワーカビリティーを向上させつつ、所望の強度を得ることができる。
また、本実施形態において、この空気量は、AE(Air Entraining)剤等の空気量調整剤により調整可能である。このAE剤の例として、陰イオン系、陽イオン系、非イオン系、及び両性系の各種界面活性剤が挙げられる。また、この陰イオン系の界面活性剤の例として、樹脂系、アルキルベンゼンスルホン酸系、高級アルコールエステル系等の界面活性剤が挙げられる。本実施形態においては、特に、変性ロジン酸化合物系陰イオン界面活性剤を用いることが好適である。なお、AE剤と減水剤との両方の性質をもつ、AE減水剤を用いることも可能である。
【0053】
また、本実施形態に係る環境配慮コンクリートにおいては、繊維等を混入させてもよい。この繊維等の例としては、ビニロン繊維、アクリル繊維、炭素繊維、金属繊維等の各種有機又は無機繊維の繊維状物質が挙げられる。また、他にも、ゼオライト、シリカ質微粉末、炭酸カルシウム、ベントナイト等の粘土鉱物、石膏、ケイ酸カルシウム等を適宜配合してもよい。
【0054】
また、本実施形態に係る環境配慮コンクリートにおいては、他にも、流動化剤、遅延剤、防水混和剤、防湿混和剤、発泡剤、増粘剤、防凍剤、着色剤、ワーカビリティー増進剤、防しょう剤、消泡剤、凝結調整剤、収縮低減剤、セメント急硬材、高分子エマルション等を適宜配合することが可能である。
【0055】
以上のように構成することで、以下のような効果を得ることができる。
近年、地球温暖化対策が世界規模での共通課題として認識されるようになり、その深刻さが刻々と増している状況下にある。このため、各国では、CO2等の温室効果ガスの削減に向けて本格的な取組みを既に始めている。
しかしながら、炭酸カルシウムを従来の普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートに加えると、流動性が高くなる。このため、従来、石灰岩由来の炭酸カルシウムが、高流動コンクリートに適用するために用いられていた。しかしながら、高流動コンクリートのような特殊なコンクリートではなく、一般的なコンクリートに炭酸カルシウムを混入すると、流動性を確保するための減水剤の配合量が増加してコスト増となる。このため、実質的に当業者により実使用することは考えられなかった。
【0056】
これに対して、本発明者らは、特許文献2に記載の耐酸性コンクリートに、炭酸カルシウムを混入すると圧縮強度が増加することを見いだした。
ここで、従来の石灰岩由来の炭酸カルシウムを、普通ポルトランドセメントの高流動コンクリートに適用しても強度増加は見られないことが知られていた。
このため、実施例に示すような、本実施形態に係る環境配慮コンクリートの強度増加は、当業者に予期せぬ顕著な効果である。
【0057】
さらに、特許文献2に記載の耐酸性コンクリートは、普通ポルトランドセメントを用いていないために、硬化に必要なカルシウム(Ca)が最低限となる配合になっている。
これに対して、本実施形態に係る環境配慮コンクリートでは、炭酸カルシウム(CaCO3)によるCaが追加されたために、硬化の活性度が高まったためと考えられる。
加えて、本実施形態に係る大気中及び/又は排気ガス中から抽出された二酸化炭素を原料として含んで製造された前記炭酸カルシウムは、微粒子であり、水と親和性が高い。このため、細骨材の砂と置換として混入すると、見かけ上の紛体量が増加して、緻密性も増加することで、強度増加に寄与すると考えられる。
さらに、オートクレーブ養生(高圧高温養生)を併用することで、圧縮強度を数割程度、増加させることが可能となる。これは、熱養生により、Caと本実施形態に係る環境配慮コンクリートの活性度が著しく高まった結果と考えられる。
【0058】
このため、特許文献2に記載の耐酸性コンクリートに、適切に大気中及び/又は排気ガス中から抽出された二酸化炭素を原料として含んで製造された炭酸カルシウムを加えることで、強度の高いコンクリートを製造することができ、実用性を高めることができる。さらに、本実施形態に係る環境配慮コンクリートでは、強度が高まるため、その分単位水量を増加し、W/Bを高くすることで、同じ強度を比較するとコストアップを抑えることができる。
このように構成することにより、結果的にコンクリート製造時の二酸化炭素を削減することが可能となる。
【0059】
なお、本実施形態に係る環境配慮コンクリートは、遠心成形して製造するプレキャストコンクリート以外の用途に用いることが可能である。
たとえば、本実施形態に係る環境配慮コンクリートは、通常の建築、各種生産製造施設等においても用いることが可能である。
【0060】
また、本実施形態の産業副産物として、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、下水道汚泥焼却灰、及びシリカフューム以外のものを用いることも可能である。たとえば、CaやSiや各種無機金属等を含む、バイオマス発電所の焼却灰、煤塵、鉱物精錬の残渣等も用いることが可能である。
また、アルカリ刺激材として、消石灰以外にも、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属水和物、石膏等も用いることが可能である。
【0061】
次に図面に基づき本発明を実施例によりさらに説明するが、以下の具体例は本発明を限定するものではない。
【実施例0062】
(コンクリートの配合)
本実施例の環境配慮コンクリートを製造するための混合物(以下、単に「本混合物」と称する。)を、本実施例の実験対象とした。本混合物を用いて、遠心成形と振動成形により作製した硬化体(以下、単に「硬化体」と称する。)を形成した。
本実施例における使用材料の種類と品質は、特許文献2に準じたものを使用した。加えて、炭酸カルシウムは、エコタンカル(日本コンクリート工業社製)とし、細骨材である砂の質量置換で用いた。減水剤(SP)は、高性能減水剤であるマスターグレニウム8000SS(ポゾリスソリューションズ社製)を用いた。
本混合物を用いたコンクリートの配合を、下記の表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
硬化体として、それぞれ、No.1~No.10(以下、「#1~#10」と表記する。)の組成のものを用いた。このうち、炭酸カルシウムを含まない#1及び#6が比較例、#2~#5及び#7~#10が実施例となる。
【0065】
表1の項目のうち、「W/B%」は水結合材比(%)、「s/a%」は細骨材率(%)「Sp%」は減水剤(SP)の混和量(%)を、それぞれ示す。また、「W」は水、「P」は総粉体量、「S」は細骨材、「G」は粗骨材の量を、単位量(kg/m3)として表わしたものである。
さらに、「炭カル」は炭酸カルシウムの量を、単位量(kg/m3)として表わし、砂置換としたものである。
【0066】
「計算上のCO2Kg-CO2/t」は、形成されたコンクリートにおける二酸化炭素の排出量(トン(t))を示す。この割合として、プラスの値が製造時に排出される二酸化炭素が生じることを示し、マイナスの場合は結果として製造時に二酸化炭素の排出を削減できることを示す。すなわち、炭酸カルシウムに含まれる二酸化炭素は、40wt%である。大気中及び/又は排気ガス中から抽出された二酸化炭素を用いた炭酸カルシウムを用いることで、本実施例のコンクリート製造時に排出される二酸化炭素を、結果として減少させられる。
【0067】
(製造方法)
各硬化体#1~#10は、練り量は25Lで、練混ぜ時間は3分~6分とした。減水剤は、標準使用量を重量%で1%として、性状を目視で確認しながら調整した。
混練後、供試体を成形し、蒸気養生は、前置き6時間で昇温20℃/時間、最高温度65℃で4時間保持とした。脱型後は20℃±2℃の水中養生とした。
材齢は、各3本で1、7、14、28dとした。また、比較のためにオートクレーブ養生(180℃、4時間)も行った。
【0068】
(圧縮強度試験結果)
試験結果を下記の表2に示す。この表2をグラフにしたものを、図1として示す。
【0069】
【表2】
【0070】
圧縮強度は、炭酸カルシウムの添加量を増やすと、大きくなる傾向を示した。さらに、オートクレーブ養生を行うと、飛躍的に高まっていた。
また、炭酸カルシウムの添加量を増やすと、ワーカビリティーが小さくなるため、減水剤の使用は増える傾向があった。しかしながら、単位水量を増加し、W/Bを高くすることで、同じ強度を比較するとコストアップを抑えることができると考えられた。
【0071】
なお、上記実施の形態の構成及び動作は例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実行することができることは言うまでもない。
図1