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特開2023-179898細線構造およびそれを用いたタッチセンサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179898
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】細線構造およびそれを用いたタッチセンサ
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20231213BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20231213BHJP
   H05K 3/10 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
G06F3/041 422
G06F3/044 128
H05K3/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092812
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】泉 健夫
(72)【発明者】
【氏名】衣笠 豊
【テーマコード(参考)】
5E343
【Fターム(参考)】
5E343AA02
5E343AA16
5E343AA22
5E343AA26
5E343AA34
5E343BB01
5E343BB23
5E343BB24
5E343BB25
5E343BB28
5E343BB44
5E343BB52
5E343CC73
5E343DD33
5E343ER01
5E343ER16
5E343GG13
(57)【要約】
【課題】導電層の電気抵抗値を小さくする。
【解決手段】細線構造20であって、基板5の少なくとも一方の外表面には、有底状の凹溝部10が設けられている。凹溝部10には、導電材料により構成される導電層22が設けられている。導電層22は、凹溝部10に埋設された導電材料からなる本体部23と、本体部23と一体に形成され、かつ、本体部23から凹溝部10の外方に向かって突出した導電材料からなる突出部24と、を含む。突出部24は、断面視において凹溝部10の幅寸法以下の幅寸法を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に設けられる細線構造であって、
前記基板の少なくとも一方の外表面には、有底状の凹溝部が少なくとも1つ設けられており、
前記凹溝部には、導電材料により構成される導電層が設けられており、
前記導電層は、
前記凹溝部に埋設された前記導電材料からなる本体部と、
前記本体部と一体に形成され、かつ、前記本体部から前記凹溝部の外方に向かって突出した前記導電材料からなる突出部と、を含み、
前記突出部は、断面視において前記凹溝部の幅寸法以下の幅寸法を有する、細線構造。
【請求項2】
請求項1に記載の細線構造において、
前記突出部は、前記凹溝部の幅寸法と同じ幅寸法を有する、細線構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の細線構造において、
少なくとも前記凹溝部には、無電解めっき触媒を含む樹脂溶剤からなる第一樹脂層が設けられている、細線構造。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の細線構造において、
前記凹溝部の周囲に位置する前記基板の外表面には、前記基板の材料と異なる樹脂材料からなる第二樹脂層が設けられている、細線構造。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の細線構造を備える、タッチセンサ。
【請求項6】
請求項5に記載のタッチセンサにおいて、
前記凹溝部の底部は、断面視において前記底部の少なくとも一部が湾曲状となるように構成されている、タッチセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、細線構造およびそれを用いたタッチセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1に示されるようなタッチセンサが知られている。具体的に、特許文献1には、複数の基板と、各基板に設けられた複数のセンサ電極と、を備えたタッチセンサが開示されている。複数のセンサ電極の各々は、導電性を有する複数の細線が互いに交差したメッシュパターンにより構成されている。各基板の一方の面には、各細線を形成するための有底状の凹溝部が設けられている。凹溝部には、銅などの導電金属からなる導電層が埋設されている。導電層は、その上面が凹溝部の開口近傍に位置するように形成されている(特許文献1の図8を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-021184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、直流抵抗に関する一般的な技術常識として、物体の電気抵抗率は一定であり、当該物体の断面積が大きくなるにつれて当該物体の電気抵抗値が小さくなる。この技術常識を前提として、特許文献1に示された細線構造では、導電層の幅寸法(細線の線幅)を狭小化しつつ、導電層の断面積を小さくする(すなわち、電気抵抗値を小さくする)ために、例えば凹溝部の深さ寸法を意図的に大きく設定する必要があった。
【0005】
しかしながら、凹溝部の深さを大きく設定した場合には、凹溝部を基板に形成するための製造プロセスが困難となる。一方、凹溝部の深さを大きく設定せずに、導電層の幅を狭小化した場合には、必然的に導電層の断面積が小さくなる。その結果、導電層の電気抵抗値が大きくなる。このように、特許文献1の細線構造では、導電層の幅を狭小化しつつ、導電層の断面積を小さくする(電気抵抗値を小さくする)ことが困難となっていた。
【0006】
本開示は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、タッチセンサ等に適用される細線構造において、導電層の断面積を相対的に大きくすることにより、導電層の電気抵抗値を相対的に小さくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本開示の一実施形態は、基板に設けられる細線構造であって、基板の少なくとも一方の外表面には、有底状の凹溝部が少なくとも1つ設けられている。凹溝部には、導電材料により構成される導電層が設けられている。導電層は、凹溝部に埋設された導電材料からなる本体部と、本体部と一体に形成され、かつ、本体部から凹溝部の外方に向かって突出した前記導電材料からなる突出部と、を含む。そして、突出部は、断面視において凹溝部の幅寸法以下の幅寸法を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によると、導電層の電気抵抗値を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係るタッチセンサの全体を示す分解斜視図である。
図2図2は、基板の構成を示す分解斜視図である。
図3図3は、センサ電極の一部を拡大して示す部分拡大平面図である。
図4図4は、基板の断面構成を概略的に示した縦断面図である。
図5図5は、図4に示したV部を拡大して示した部分拡大図である。
図6図6は、凹溝部における細線の形成工程を概略的に示した図である。
図7図7は、実施形態の変形例1の断面構成を示した図4相当図である。
図8図8は、実施形態の変形例2の断面構成を示した図4相当図である。
図9図9は、実施形態の変形例3の断面構成を示した図4相当図である。
図10図10は、その他の実施形態における基板の断面構成を概略的に示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0011】
図1は、本開示の実施形態に係るタッチセンサ1の全体を示している。このタッチセンサ1は、例えば液晶表示ディスプレイのような表示装置(図示しない)に適用される静電容量方式のセンサ型入力装置である。このタッチセンサ1は、例えばカーナビゲーション等の車載装置、パーソナルコンピュータのディスプレイ機器、携帯電話、携帯情報端末、携帯型ゲーム機、コピー機、券売機、現金自動預け払い機、時計などに対する入力装置として用いられる。
【0012】
以下の説明において、後述するカバー部材2の操作面4が位置する側(タッチセンサ1の視認側)をタッチセンサ1の「上側」とし、その反対側をタッチセンサ1の「下側」として、タッチセンサ1を構成する各要素の位置関係を定めるものとする。
【0013】
(カバー部材)
図1に示すように、タッチセンサ1は、光透過性を有するカバー部材2を備えている。カバー部材2は、例えばカバーガラスまたはプラスチック製のカバーレンズからなる。カバー部材2は、例えば平面視長方形の板状に形成されている。
【0014】
カバー部材2の下面の周縁部には、スクリーン印刷等により黒色等の暗色で略額縁状の加飾部3が形成されている。この加飾部3で囲まれた内部の矩形領域は、透光可能なビューエリアとなっている。すなわち、使用者は、このビューエリアを介して、タッチセンサ1の下側に配置した表示装置からの視覚的情報を得ることができる。ビューエリアに対応するカバー部材2の上面は、タッチ操作に伴い使用者の手指などが接触する操作面4として構成されている。
【0015】
(基板)
図2に示すように、タッチセンサ1は、2つの基板5,5を備えている。基板5,5は、上側基板6および下側基板7により構成されている。上側基板6および下側基板7の各々は、平面視で略長方形状を有する。上側基板6は、タッチセンサ1の視認側に配置される。具体的に、上側基板6は、カバー部材2の下側に積層配置される。下側基板7は、図示しない表示装置が位置する側に配置される。
【0016】
図4に示すように、各基板5は、第一層8を有する。第一層8の材料としては、例えばアクリル(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、エポキシ等のような光透過性を有する樹脂材、シリコン材、またはガラス材が挙げられる。第一層8の厚みは、例えば20μm~100μmである。
【0017】
各基板5は、第二層9を有する。第二層9は、後述する複数の凹溝部10を形成するための層である。第二層9は、絶縁性および透過性を有する樹脂材料により構成されている。この実施形態において、第二層9は、第一層8の上側に積層配置される。第二層9の厚みは、柔軟性を確保するために、例えば3μm~20μmに設定される。
【0018】
図4および図5に示すように、第二層9の上面(基板5の上面)には、有底状の複数の凹溝部10が設けられている。複数の凹溝部10は、後述するセンサ電極15、配線部、および、パッド33の各々を構成するための要素である。
【0019】
各凹溝部10の深さ(図5に示した寸法D)は、例えば0.5μm~5.0μmに設定される。各凹溝部10の幅(図5に示した寸法W1)は、例えば0.5μm~20.0μmに設定される。好ましくは、各凹溝部10は、幅寸法W1を深さ寸法Dで除した値が0.8~5.0の範囲に含まれるように構成される。
【0020】
各凹溝部10は、側部11,11および底部12を有する。この実施形態において、側部11,11は、側部11,11同士の間隔が凹溝部10の底部12から開口側に向かって徐々に拡がるように、基板5の厚み方向に対して傾斜している。底部12は、略平坦状に形成されている。なお、この実施形態の凹溝部10には、側部11と底部12とが交わる位置に隅角部が形成されている。
【0021】
なお、凹溝部10の幅寸法W1は、凹溝部10の開口側における側部11,11同士の距離を指すものとする。また、凹溝部10の幅寸法W1は、後述する第一樹脂層21の厚みを除いた側部11,11同士の距離として定めている。
【0022】
(粘着層)
図2に示すように、上側基板6の上側には、カバー部材2と上側基板6とを固着するための粘着層14が設けられている。また、上側基板6の下側には、上側基板6と下側基板7とを固着するための粘着層14が設けられている。各粘着層14は、光透過性を有する。具体的に、各粘着層14は、例えば光学用粘着剤(OCA:Optical Clear Adhesive)からなる。各粘着層14は、上側基板6および下側基板7の各々と略同じ大きさおよび略同じ形状を有する。
【0023】
(センサ電極)
図1および図2に示すように、タッチセンサ1は、静電容量方式による複数のセンサ電極15を備えている。複数のセンサ電極15は、各基板5に設けられている。
【0024】
複数のセンサ電極15は、複数の送信電極16および複数の受信電極17により構成されている。複数の送信電極16および複数の受信電極17は、各基板5においてビューエリアに対応する位置に配置されている。タッチセンサ1では、ビューエリア内に位置する複数の送信電極16および複数の受信電極17を通じて操作面4に接触した使用者の手指(検知対象物)によるタッチ操作の検知が可能となっている。
【0025】
各送信電極16は、後述するフレキシブル配線板34を介して図示しない駆動回路に接続されている。各送信電極16は、この駆動回路により周囲に電界を放射するように構成されている。一方、各受信電極17は、フレキシブル配線板34を介して図示しない検出回路に接続されている。各受信電極17は、各送信電極16から放射された電界を受信するように構成されている。
【0026】
各送信電極16および各受信電極17は、平面視において互いに交差(図示例では直交)するように配置されている。そして、各送信電極16と各受信電極17とが重なり合う領域にはノードが形成されている。このノードは、静電容量を生成可能な領域として構成されている。
【0027】
複数の送信電極16は、下側基板7の上面に設けられている。各送信電極16は、下側基板7の長辺方向に沿って延びている。複数の送信電極16は、下側基板7の短辺方向に並んで配置されている。なお、図1および図2では、図示を簡略化するために、一つの送信電極16の一部のみを示している。
【0028】
複数の受信電極17は、上側基板6の上面に設けられている。すなわち、複数の受信電極17は、上側基板6においてタッチセンサ1の視認側(カバー部材2の操作面4が位置する側)に配置されている。複数の受信電極17は、下側基板7を介して複数の送信電極16と絶縁される。各受信電極17は、上側基板6の短辺方向に沿って延びている。複数の受信電極17は、上側基板6の長辺方向に間隔を並んで配置されている。なお、図1および図2では、図示を簡略化するために、一つの受信電極17の一部のみを示している。
【0029】
各センサ電極は、例えば、後述する複数の細線構造20を規則的に並べて形成したメッシュパターン18を含むように構成されている(図3参照)。このメッシュパターン18は、例えば、複数の細線構造20により構成された複数のセル(例えばひし形状)を規則的に並べて形成した網目構造を有する。なお、各センサ電極は、メッシュパターン18と異なるパターンを含んでいてもよい。
【0030】
(細線構造)
図4に示すように、タッチセンサ1は、複数の細線構造20を備えている。図5に示すように、この実施形態の各細線構造20は、凹溝部10、第一樹脂層21、および、導電層22により構成されている。なお、図4および図5では、第一樹脂層21および導電層22を強調して示すために、第一樹脂層21および導電層22の各々にドットハッチングを付している。
【0031】
(第一樹脂層)
図5に示すように、第一樹脂層21は、凹溝部10に導電層22を形成するための下地となる層である。第一樹脂層21は、無電解めっき触媒を含む樹脂溶剤からなる。無電解めっき触媒には、例えばパラジウム(Pd)が含まれる。なお、無電解めっき触媒には、パラジウム(Pd)に代えて、白金(Pt)またはクロム(Cr)が含まれていてもよい。
【0032】
第一樹脂層21は、凹溝部10の底部12および側部11,11と、凹溝部10の周囲に位置する基板5の外表面(この実施形態では第二層9の外表面)とに配置されている。第一樹脂層21は、乾燥により溶剤成分の揮発が進んだ後の、凹溝部10の側部11,11および底部12と基板5の外表面とに残留したパラジウム(Pd)を含む固形成分に相当する。第一樹脂層21の厚さ(図5に示した寸法T)は、例えば10nm~100nmである。
【0033】
(導電層)
図5に示すように、導電層22は、細線構造20の導電性を担保するための要素である。この実施形態において、導電層22は、例えば無電解めっき処理により形成されためっき層である。具体的に、導電層22は、無電解めっき処理により、凹溝部10の側部11,11および底部12に形成された第一樹脂層21に対して積層配置される。
【0034】
導電層22は、導電材料により構成されている。この導電材料としては、例えば、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)のような導電金属、またはこれらの合金が挙げられる。
【0035】
導電層22は、本体部23および突出部24を含む。本体部23は、凹溝部10に埋設された導電材料からなる。突出部24は、本体部23から凹溝部10の外方に向かって突出した導電材料からなる。突出部24は、本体部23と一体に形成されている。この実施形態の突出部24は、突出部24の断面形状が略矩形状となるように形成されている。
【0036】
なお、この実施形態では、図5に示した本体部23と突出部24との仮想的な界面Aを、基板5の外表面と略面一となる位置(図5に示した仮想線の位置)として定めるものとする。これにより、本体部23の高さ寸法(図5に示した寸法H1)は、凹溝部10の深さ寸法Dから第一樹脂層21の厚み寸法Tを差し引いた値となる。また、突出部24の高さ寸法(図5に示した寸法H2)は、界面Aから突出部24の頂点までの距離に相当する。
【0037】
本開示の実施形態における特徴的構成として、突出部24は、断面視において凹溝部10の幅寸法以下の幅寸法を有する。この実施形態において、突出部24の幅寸法(図5に示した寸法W2)は、凹溝部10の幅寸法W1と略同じである。すなわち、突出部24の幅寸法W2は、凹溝部10の幅寸法W1と同様に、例えば0.5μm~20.0μmに設定される。なお、突出部24の幅寸法W2は、凹溝部10の幅方向において最大値を示す位置の寸法であるものとして定められる。
【0038】
ここで、突出部24の高さ寸法(図5に示した寸法H2)は、例えば1.0μmに設定される。すなわち、導電層22の高さ(図5に示した寸法H3)は、例えば1.5μm~6.0μmに設定される。
【0039】
(配線部)
図1および図2に示すように、タッチセンサ1は、複数の配線部を備えている。複数の配線部は、複数の送信電極16および複数の受信電極17により構成されている。複数の送信電極16および複数の受信電極17は、図示しない外部回路(上述した駆動回路および検出回路)と電気的に接続される。
【0040】
複数の第一配線部31および複数の第二配線部32は、ビューエリアの外側に配置されている。具体的に、複数の第一配線部31および複数の第二配線部32は、操作面4の側から見た平面視において加飾部3と重なる位置に配置されている。すなわち、複数の第一配線部31および複数の第二配線部32は、加飾部3により操作面4の側から視認できないようになっている。
【0041】
図2に示すように、複数の第一配線部31は、下側基板7の上面に形成されている。各第一配線部31の一端部は、各送信電極16の端部と電気的に接続されている。複数の第一配線部31は、各々の他端部が下側基板7における所定の位置(図2の紙面左側に位置する辺)に集束するように配置されている。
【0042】
複数の第二配線部32は、上側基板6の上面に形成されている。各第二配線部32の一端部は、各受信電極17の端部と電気的に接続されている。複数の第二配線部32は、各々の他端部が上側基板6における所定の位置(図2の紙面左側に位置する辺)に集束するように配置されている。
【0043】
なお、図示しないが、第1および第二配線部31,32の各々は、少なくとも1つの細線構造20により構成されている。
【0044】
(パッド)
図1および図2に示すように、各第一配線部31の他端部には、後述するフレキシブル配線板34と電気的に接続するためのパッド33が設けられている。また、各第二配線部32の他端部にもパッド33が設けられている。
【0045】
(フレキシブル配線板)
図1に示すように、タッチセンサ1は、フレキシブル配線板34を備えている。フレキシブル配線板34は、柔軟性を有しかつ変形状態でもその電気的特性が変化しないように構成されている。フレキシブル配線板34は、例えばポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の可撓性を有する絶縁フィルムからなる。フレキシブル配線板34は、例えば異方導電性接着剤(図示せず)により基板5に固着される。
【0046】
(細線構造の形成工程)
次に、図6を参照しながら、細線構造20の形成工程について説明する。細線構造20の形成工程は、第1~第5工程を含む。
【0047】
第1工程では、複数の凹溝部10を、例えばインプリント工法を用いて、基板5の第二層9に形成する。このとき、図5に示したテーパー角θが90°~135°の範囲となるように、複数の凹溝部10を形成するのが好ましい。なお、テーパー角θは、凹溝部10の底部12と側部11とのなす角度として定められる。
【0048】
第2工程では、第一樹脂層21を、基板5の外表面および複数の凹溝部10に形成する。具体的には、複数の凹溝部10が形成された基板5の第二層9において、バーコータまたは印刷を用いてめっきプライマを基板5の外表面および複数の凹溝部10に対してコーティングする。上記めっきプライマは、例えば無電解めっき触媒(Pd)を含む樹脂溶剤により構成されている。
【0049】
上記コーティングにおいて液体状のめっきプライマを所定時間乾燥させることにより、めっきプライマにおける溶剤成分が揮発していく。この揮発が進行すると、パラジウム(Pd)を含む固形成分が凝固する。これにより、第一樹脂層21が、基板5の外表面および複数の凹溝部10に形成される。
【0050】
第3工程では、転写型レジストとしての機能を有する第二樹脂層25を、基板5とは異なる樹脂材料を用いて、各凹溝部10の周囲(図6では凹溝部10,10同士の間)に位置する基板5の外表面に形成する。具体的に、第二樹脂層25を、図5に示した寸法H2と同じ高さ或いは寸法H2以上の高さとなるように、基板5の外表面上に位置する第一樹脂層21に積層配置する。第二樹脂層25の材料としては、永久レジスト材料として適用可能な材料(例えば、アクリル系またはポリエステル系の樹脂材料)が用いられる。なお、第3工程において第二樹脂層25の高さを調整することにより、第4工程において突出部24の高さ寸法H2を適宜変えることが可能である。
【0051】
第4工程では、導電層22を形成する。具体的に、第一樹脂層21および第二樹脂層25を形成した後に無電解めっき処理を行う。無電解めっき処理を行うことにより、各凹溝部10に形成された第一樹脂層21に含まれるパラジウム(Pd)を触媒としてめっき成長が進行し、めっき金属(例えばCu)が析出する。これにより、導電層22の本体部23が各凹溝部10に形成される。さらに、めっき成長の進行に伴い、めっき金属が、基板5の外表面を超えて、各凹溝部10の両側に位置する第二樹脂層25の上面と略面一となる高さまで析出するようになる。これにより、導電層22の突出部24が形成される。
【0052】
第5工程では、導電層22の形成後に第二樹脂層25を除却する。これにより、細線構造20の形成工程が終了する。
【0053】
[実施形態の作用効果]
上述のように、導電層22は、凹溝部10に埋設された本体部23と、本体部23と一体に形成されかつ本体部23から凹溝部10の外方に向かって突出した突出部24と、を含む。すなわち、導電層22は、その高さ寸法(図5に示した寸法H3)が凹溝部10の深さ寸法(図5に示した寸法D)よりも大きくなるように構成されている。
【0054】
ところで、直流抵抗に関する一般的な技術常識として、物体の電気抵抗率は一定であり、当該物体の断面積が大きくなるにつれて当該物体の電気抵抗値が小さくなる。この技術常識を前提として、本開示の実施形態に係る細線構造20では、突出部24を有しない従来の導電層(例えば上記特許文献1に開示された導電層)との対比において、本体部23の断面積と突出部24の断面積とが合わさることにより、導電層22の断面積が相対的に大きくなる。その結果、導電層22の電気抵抗値は、上述による従来の導電層の電気抵抗値よりも小さくなる。
【0055】
そして、突出部24は、断面視において凹溝部10の幅寸法以下の幅寸法を有する。すなわち、突出部24の幅寸法(図5に示した寸法W2)は、凹溝部10の幅寸法(図5に示した寸法W1)以下の大きさに抑えられている。これにより、細線構造20では、導電層22の幅寸法(すなわち、1つの細線の線幅)を狭小化しつつ、凹溝部10の深さ寸法を意図的に大きく設定しなくても、導電層22の断面積を相対的に大きくすることが可能となる。
【0056】
したがって、本開示の実施形態に係る細線構造20では、導電層22の電気抵抗値を小さくすることができる。
【0057】
また、この実施形態の突出部24は、凹溝部10の幅寸法(寸法W1)と同じ幅寸法(寸法W2)を有する。かかる構成によれば、導電層22の幅寸法(細線の線幅)を狭小化しつつ、導電層22の断面積をより一層大きくすることができる。したがって、導電層22の電気抵抗値をより一層小さくすることができる。
【0058】
また、少なくとも凹溝部10の底部12および側部11には、無電解めっき触媒を含む樹脂溶剤からなる第一樹脂層21が積層配置されている。この第一樹脂層21により、凹溝部10に埋設された導電層22(特に本体部23)の積層状態を安定させることができる。
【0059】
[実施形態の変形例1]
上記実施形態では、細線の形成工程で示した第5工程において、導電層22の形成後に第二樹脂層25を除却する形態を示したが、この形態に限られない。例えば、図7に示した変形例1のように、第5工程を省略して、第二樹脂層25を残した状態にしてもよい。
【0060】
図7に示すように、第二樹脂層25は、凹溝部10の周囲に位置する基板5の外表面において、該外表面上に位置する第一樹脂層21に対して積層配置されている。第二樹脂層25は、上記実施形態で説明したように、基板5の材料と異なる樹脂材料からなる。そして、第二樹脂層25は、導電層22における突出部24の露出部分(側面部分)を覆うように構成されている。かかる構成により、突出部24の露出部分が減少して、突出部24を適切に保護することができる。
【0061】
[実施形態の変形例2]
上記実施形態では、突出部24の断面形状が略矩形状となる形態を示したが、この形態に限られない。例えば、図8に示した変形例2のように、突出部24の断面形状は、略半円形状であってもよい。このような変形例であっても、上記実施形態と同様に、導電層22の幅寸法(細線の線幅)を狭小化しつつ、凹溝部10の深さ寸法を意図的に大きく設定しなくても、導電層22の断面積を相対的に大きくすることが可能となる。
【0062】
[実施形態の変形例3]
上記実施形態では、凹溝部10において側部11と底部12とが交わる位置に隅角部が形成される形態を示したが、この形態に限られない。例えば、図9に示した変形例3のように、側部11と底部12とが交わる位置に隅角部が形成されていなくてもよい。すなわち、変形例3では、断面視において凹溝部10の底部12が湾曲状に形成されている。具体的に、凹溝部10は、断面視において底部12の全体が略半円形状となるように構成されている。
【0063】
この変形例によれば、例えば、図9に示した凹溝部10の反対側に位置する基板5の外表面側(図9の紙面下側)から凹溝部10に向かって外光が入射したときに、当該外光が略半円形状の底部12(具体的には、底部12側に位置する導電層22の本体部23)に当たると、当該外光が乱反射する。この乱反射により、当該外光が様々な方向に拡散しやすくなる。これにより、凹溝部10の反対側に位置する基板5の外表面から見た者(例えば、タッチセンサ1の使用者)は、図9に示した凹溝部10に設けられた導電層22を視認し難くなる。すなわち、細線構造20のいわゆる「線見え」が防止される。したがって、この変形例では、タッチセンサ1の見栄えを良くすることができる。
【0064】
ところで、上記実施形態では、複数のセンサ電極15、複数の配線部、および複数のパッド33を基板5の上面側(操作面4側)に設けた形態を示したが、複数のセンサ電極15、複数の配線部、および複数のパッド33を、基板5の下面側(すなわち、基板5の、操作面4の反対側に位置する面)に設けてもよい。このような形態では、各凹溝部10が基板5の下面側に形成されることになる。これにより、基板5の上面側(基板5の、操作面4が位置する側の面)から外光が入射した場合には、当該外光が略半円形状の底部12に当たることより乱反射して様々な方向に拡散する。その結果、上述したように、細線構造20のいわゆる「線見え」が防止されて、タッチセンサ1の見栄えが良好となる。
【0065】
なお、図10では、底部12の全体が略円形状に形成された形態を示したが、この形状に限られない。例えば、図示しないが、底部12の、図10における紙面右側および左側のいずれか一方に、上記隅角部が形成されていてもよい。すなわち、底部12の少なくとも一部が湾曲状に形成されていれば、上述のように、細線構造20のいわゆる「線見え」が防止されて、タッチセンサ1の見栄えを良くすることができる。
【0066】
[その他の実施形態]
上記実施形態および上記各変形例のタッチセンサ1では、略矩形状のビューエリアを適用した形態を示したが、この形態に限られない。すなわち、ビューエリアは、例えば平面視で略円形状や五角形状などの多角形状を有していてもよい。
【0067】
上記実施形態および上記各変形例では、第二層9が第一層8の上側に位置する形態を示したが、この形態に限られない。例えば、第二層9が第一層8の下側に位置していてもよい。
【0068】
上記実施形態および上記各変形例では、2つの基板5,5(上側基板6および下側基板7)を用いた形態を示したが、この形態に限られない。すなわち、1つの基板5のみを用いた形態であってもよい。かかる形態では、2つの第二層9,9を第一層8の上側および下側の双方に形成した1つの基板5(図示せず)を用いればよい。この場合において、例えば、複数の送信電極16および複数の第一配線部31を第一層8の下側に位置する第二層9に設ける一方、複数の受信電極17および複数の第二配線部32を第一層8の上側に位置する第二層9に設けるようにしてもよい。
【0069】
上記実施形態および上記各変形例では、基板5が第一層8および第二層9を有する形態を示したが、この形態に限られない。例えば、図10に示すように、基板5が第一層8のみを有する形態であってもよい。かかる形態では、凹溝部10および細線構造20が第一層8の上面および下面の少なくともいずれか一方に形成されていればよい。
【0070】
上記実施形態および上記各変形例では、各送信電極16が図2に示した基板5の長手方向に沿って延びる一方、各受信電極17が基板5の短手方向に沿って延びる形態を示したが、この形態に限られない。すなわち、各送信電極16が基板5の短手方向に沿って延びる一方、各受信電極17が長手方向に沿って延びていてもよい。
【0071】
上記実施形態および上記各変形例では、カバー部材2およびフレキシブル配線板34が基板5に取り付けられた状態のタッチセンサ1を示したが、この形態に限られない。すなわち、本開示によるタッチセンサ1の概念には、カバー部材2およびフレキシブル配線板34などを基板5に取り付ける前の状態が含まれる。さらに、本開示のタッチセンサ1の概念には、基板5が形成される前の状態となる長尺状の母材(例えば、図示しない長尺のフープ状部材)において、上述による複数のセンサ電極15が当該母材に形成された構成も含まれる。
【0072】
上記実施形態および上記各変形例では、第一樹脂層21を、基板5の外表面および凹溝部10の双方に設けた形態を示したが、この形態に限られない。すなわち、第一樹脂層21は、少なくとも凹溝部10に設けられていればよい。この場合、細線構造20の形成工程に関する第2工程において、コーティングを行った後に、例えばスキージ(図示せず)を用いて、第二層9の上面にめっきプライマが残らないように処理すればよい。なお、スキージの代わりに、ウエス等を用いて第二層9の上面に残留するめっきプライマを拭き取ってもよい。
【0073】
上記実施形態および上記各変形例では、本開示の細線構造20を適用したタッチセンサ1について例示したが、これに限られない。例えば、本開示の細線構造20を、タッチセンサ以外の技術分野(例えば、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(OLED)、マイクロLED表示装置、太陽電池装置、ヒータ装置、アンテナ装置、電磁波遮蔽シートなどの様々な技術分野)に広く適用することが可能である。
【0074】
以上、本開示についての実施形態を説明したが、本開示は上述の実施形態のみに限定されず、本開示の範囲内で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本開示は、細線構造およびそれを用いたタッチセンサとして産業上の利用が可能である。
【符号の説明】
【0076】
1:タッチセンサ
2:カバー部材
4:操作面
5:基板
6:上側基板
7:下側基板
8:第一層
9:第二層
10:凹溝部
11:側部
12:底部
14:粘着層
15:センサ電極
16:送信電極
17:受信電極
18:メッシュパターン
20:細線構造
21:第一樹脂層
22:導電層
23:本体部
24:突出部
25:第二樹脂層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10