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特開2023-179904放射化放射能の計算評価方法及び放射能レベル区分ごとの重量の積算方法
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  • 特開-放射化放射能の計算評価方法及び放射能レベル区分ごとの重量の積算方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179904
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】放射化放射能の計算評価方法及び放射能レベル区分ごとの重量の積算方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 17/00 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
G21C17/00 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092821
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】千原 亮二
【テーマコード(参考)】
2G075
【Fターム(参考)】
2G075AA03
2G075BA03
2G075CA04
2G075CA05
2G075CA07
2G075CA08
2G075CA10
2G075CA14
2G075CA15
2G075CA25
2G075DA08
2G075FA05
2G075FA06
2G075FB07
2G075GA36
(57)【要約】
【課題】放射化放射能の計算評価を簡便に行う方法、及び放射能レベル区分ごとの重量の積算を簡便に行う方法を提供すること。
【解決手段】放射化放射能の計算評価方法は、原子炉の周辺の計算対象範囲に配置された対象物の放射化放射能を計算評価する方法であって、
前記計算対象範囲を、複数の領域に分割するステップと、
前記領域を、前記領域に配置された前記対象物の材質によって、さらに計算評価区分に分類するステップと、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉の周辺の計算対象範囲に配置された対象物の放射化放射能を計算評価する方法であって、
前記計算対象範囲を、複数の領域に分割するステップと、
前記領域を、前記領域に配置された前記対象物の材質によって、さらに計算評価区分に分類するステップと、を有する、
放射化放射能の計算評価方法。
【請求項2】
前記計算対象範囲の前記領域への分割は、前記原子炉からの距離を基準として行われる、
請求項1に記載の放射化放射能の計算評価方法。
【請求項3】
前記計算対象範囲の前記領域への分割は、中性子束の値を基準として行われる、
請求項1に記載の放射化放射能の計算評価方法。
【請求項4】
前記領域の前記計算評価区分への分類は、前記材質の放射化のされやすさを基準として行われる、
請求項1又は2に記載の放射化放射能の計算評価方法。
【請求項5】
計算評価された前記放射化放射能によって、前記計算評価区分が属する放射能レベル区分を決定するステップを有する、
請求項1又は2に記載の放射化放射能の計算評価方法。
【請求項6】
請求項5に記載の放射化放射能の計算評価方法において、さらに、
前記放射能レベル区分の各々について、そこに属する前記計算評価区分に含まれる前記対象物の重量を積算するステップを有する、
放射能レベル区分ごとの重量の積算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射化放射能の計算評価方法及び放射能レベル区分ごとの重量の積算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所などにおいて、放射化汚染による放射能濃度分布を求める方法が提案されている。例えば、特許文献1には、材料が異なる複数の部位を備える構造物について、部位の材料情報に基づいて放射化核種ごとの放射能濃度を算出する放射能濃度表示装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-211256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の放射化放射能の評価方法には、その評価のために多くの情報を必要とし、また、評価のための計算が煩雑であるとの問題がある。
【0005】
そこで本発明は、放射化放射能の計算評価を簡便に行う方法、及び放射能レベル区分ごとの重量の積算を簡便に行う方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、原子炉の周辺の計算対象範囲に配置された対象物の放射化放射能を計算評価する方法であって、
前記計算対象範囲を、複数の領域に分割するステップと、
前記領域を、前記領域に配置された前記対象物の材質によって、さらに計算評価区分に分類するステップと、を有する、
放射化放射能の計算評価方法である。
【0007】
(2)また、前記計算対象範囲の前記領域への分割は、前記原子炉からの距離を基準として行われる、(1)に記載の放射化放射能の計算評価方法である。
【0008】
(3)また、前記計算対象範囲の前記領域への分割は、中性子束の値を基準として行われる、(1)に記載の放射化放射能の計算評価方法である。
【0009】
(4)また、前記領域の前記計算評価区分への分類は、前記材質の放射化のされやすさを基準として行われる、(1)から(3)のいずれか1つに記載の放射化放射能の計算評価方法である。
【0010】
(5)また、計算評価された前記放射化放射能によって、前記計算評価区分が属する放射能レベル区分を決定するステップを有する、(1)から(4)のいずれか1つに記載の放射化放射能の計算評価方法である。
【0011】
(6)また、(5)に記載の放射化放射能の計算評価方法において、
さらに、前記放射能レベル区分の各々について、そこに属する前記計算評価区分に含まれる前記対象物の重量を積算するステップを有する、
放射能レベル区分ごとの重量の積算方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、放射化放射能の計算評価を簡便に行う方法、及び放射能レベル区分ごとの重量の積算を簡便に行う方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】原子力発電所の概要を示す図である。
図2】放射化放射能の計算評価及び放射能レベル区分ごとの重量の積算を行う方法のフローを示す図である。
図3】放射化放射能の計算評価及び放射能レベル区分ごとの重量の積算を行う方法における領域への分割などの例を示す図である。
図4】放射化放射能の計算評価及び放射能レベル区分ごとの重量の積算を行う方法における領域への分割などの例を示す図である。
図5】放射化放射能の計算評価及び放射能レベル区分ごとの重量の積算を行う方法における領域への分割などの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図1及び図2に主に基づいて説明する。
図1は、原子力発電所1の概要を示す図である。図2は、放射化放射能の計算評価及び放射能レベル区分ごとの重量の積算を行う方法のフローを示す図である。
本実施形態では、原子力発電所の廃止措置作業を例にして、放射化放射能の計算評価の方法及び放射能レベル区分ごとの重量の積算を行う方法を説明する。ただし、これらの方法は、原子力発電所の廃止措置作業においてのみ用いられるものではない。これらの方法は、放射化放射能のレベルを評価することに広く用いることができる。
【0015】
<原子力発電所の廃止措置作業と放射化>
原子力発電所の廃止措置作業においては、原子炉の周辺に配置された物の放射能汚染の状況を把握する必要がある。原子炉の周辺に配置された物は、原子炉内の核分裂反応で生じる中性子を受けることで、放射化されている場合があるためである。
具体的には、原子炉の周辺に配置された構造物や装置など、放射能汚染の対象となる物について、放射能レベルの区分ごとの総重量を算出する必要がある。それにより、原子力発電所の廃止措置作業を、安全に又円滑に行うことができるからである。
放射能レベルの区分ごとの総重量を算出するためには、放射能レベル区分ごとの重量の積算を行う必要がある。そのためには、放射能レベルの区分ごとに、その区分に属する物の重量を把握する必要がある。
【0016】
<放射能レベルの区分>
まず、放射能レベルの区分について説明する。放射能レベルの区分としては、次の区分が例示できる。
すなわち、放射能レベルの比較的高いもの(L1)、放射能レベルの比較的低いもの(L2)、放射能レベルの極めて低いもの(L3)及び放射性廃棄物として取り扱う必要のないもの(CL(クリアランスレベル))の4つの区分である。
【0017】
放射能レベル区分ごとの重量の積算を行うためには、まず、放射化放射能の計算評価を行う必要がある。以下、具体的な手順を説明する。
以下の説明では、原子炉周辺の計算対象となる範囲を原子炉圧力容器の周辺とする。
【0018】
<原子力発電所>
まず、原子力発電所1の概要、なかでも本実施形態に関係する箇所を、図1に基づいて説明する。図1は、原子力発電所1の概要を示す図である。
図1に示すように、原子力発電所1は、原子炉建物10とタービン建物20とに、大きく分けることができる。
【0019】
<原子炉建物>
原子炉建物10には、原子炉圧力容器(RPV)11が備えられている。原子炉圧力容器11には、ウラン燃料11Aと制御棒11Bとが備えられている。また、原子炉圧力容器11には、原子炉再循環ポンプ14が接続されている。原子炉再循環ポンプ14では、矢印Cに示すように、水が循環している。また、原子炉圧力容器11には、2つの隔離弁16が設けられている。原子炉圧力容器11は、隔離弁16及び第1の配管17を介して、タービン21と接続されている。
原子炉圧力容器11は、原子炉格納容器(PCV)12の中に配置されている。原子炉格納容器12には、圧力抑制室15が接続されている。また、原子炉格納容器12は、遮へい壁(BSW)13によって覆われている。
【0020】
<タービン建物>
一方、タービン建物20には、タービン21と、発電機22と、復水器23とが備えられている。タービン21には、矢印Aに示すように、原子炉圧力容器11から蒸気が流入する。また、タービン21には、発電機22が接続されている。タービン21は、原子炉圧力容器11からの蒸気で回転する。その回転が、発電機22に伝わる。その結果、発電が行われる。
また、タービン21は、復水器23に接続されている。復水器23では、原子炉圧力容器11からの蒸気が冷却され、水に戻される。この水は、矢印Bに示すように、第1のポンプ23P、第1の配管17及び隔離弁16を介して、原子炉圧力容器11に戻される。
また、復水器23には、原子炉補機冷却海水系(RSW)24が接続されている。復水器23での蒸気の冷却は、原子炉補機冷却海水系24によって行われる。
原子炉補機冷却海水系24は、海水を取り入れる取水口24E、海水を放水する放水口24D及び、取水口24Eと放水口24Dとを接続する第2の配管27を備える。また、取水口24Eの近傍には、第2のポンプ24Pが備えられている。原子炉補機冷却海水系24では、矢印Dに示すように、海水が取水口24Eから第2の配管27に流入する。この流入は、第2のポンプ24Pの作用による。そして、復水器23において、蒸気と海水との熱交換が行われる。すなわち、復水器23では蒸気が冷却されて水になり、一方、第2の配管27では、海水の温度が上昇する。そして、温度が上昇した海水は、矢印Eに示すように、第2の配管27を介して、放水口24Dから排出される。
【0021】
<放射化放射能の計算評価>
以下、計算対象範囲を原子炉圧力容器11の周辺とした場合の、放射化放射能の計算評価及び放射能レベル区分ごとの重量の積算について、図2から図5に基づいて説明する。
図2は、放射化放射能の計算評価及び放射能レベル区分ごとの重量の積算を行う方法のフローを示す図である。
図3から図5は、放射化放射能の計算評価及び放射能レベル区分ごとの重量の積算を行う方法における領域への分割などの例を示す図である。
なお、図2及び図3は、圧力容器内機器での例を示し、図4は、格納容器内機器での例を示し、図5は、遮へい壁13での例を示す。
図2に示すように、放射化放射能の計算評価は、計算対象範囲の決定、領域への分割、中性子束の値の計算、温度条件の設定、材質の設定、中性子照射期間の設定を経て行われる。以下、順に説明する。
なお、以下の説明は、評価計算の方法を示すための例である。そのため、例えば、計算対象範囲にあるすべての構造物や装置について言及するものではない。以下での言及は、評価計算の方法を説明するために必要な限度にとどめている。
【0022】
<計算対象範囲>
まず、計算対象範囲を設定する。図2から図5に示す例では、圧力容器内機器、格納容器内機器及び遮へい壁13を計算対象範囲とした。
【0023】
<領域への分割>
次に、設定した計算対象範囲を、複数の領域に分割する。この領域分割は、対象とする区域の中性子束の値や、対象とする区域の原子炉からの距離(水平距離および高さ)により行うことができる。
【0024】
<温度条件>
計算対象範囲の中に、温度条件の異なる区域が含まれている場合には、領域への分割は、同じ温度条件の区域の中で行うことが好ましい。温度条件とは、その区域の通常の温度又はその区域の通常の環境温度をいう。
同じ温度条件の区域の中で領域への分割を行うことが好ましい理由は、放射化放射能の計算評価には、温度条件を用いる必要があるためである。同じ温度条件の区域の中で領域への分割を行うと、分割された領域の中での温度条件が1つに定まる。それにより、放射化放射能の計算評価を簡潔にすることができる。
【0025】
例えば、圧力容器内機器には、図3に示すように、温度条件の異なる区域が含まれている。炉心下端と炉心上端とでは、その温度条件が異なる。炉心下端の温度条件は、炉水入口温度である。これに対して、炉心上端の温度条件は、炉水出口温度である。
圧力容器内機器においては、領域への分割は、温度条件が同じ区域のなかで行われている。具体的には、温度条件が炉水入口温度である炉心下端の中で領域への分割が行われ、また、温度条件が炉水出口温度である炉心上端の中で領域への分割が行われている。
【0026】
領域への分割の基準は、前述のように、中性子束の値や、原子炉からの距離とすることができる。なかでも、領域への分割は、中性子束の値を基準として行われることが好ましい。放射化放射能の計算評価を行う際に、実際の放射能により近しい計算結果を得ることができるからである。
放射化放射能の計算評価には、中性子束の値を用いる必要がある。そのため、領域内での各部分での中性子束の値が同等であれば、放射化放射能の計算評価を行った際に、実際の放射能に近い値を得ることができる。
以上のように、領域への分割を中性子束の値により行うことで、放射化放射能の計算評価結果がより妥当なものになる。
【0027】
ただし、中性子束の値を、計算対象範囲の中で網羅的に求めることは、煩雑な作業になりうる。そこで、領域への分割の基準を、中性子束の値ではなく、原子炉からの距離、より詳しくは、炉心中心からの距離とすることが好ましい。中性子束の値は、原子炉からの距離に依存し、また、原子炉からの距離の把握は、中性子束の値の把握よりも通常容易であるからである。
領域への分割を、原子炉からの距離(水平距離および高さ)により行うことで、簡便に、また一義的に領域への分割を行うことができ、領域内の対象物を把握することが容易になる
【0028】
具体例を図3に示す。本実施形態では、図3に示すように、圧力容器内機器において、炉心下端は、炉心下端1と炉心下端2との2つの領域に分割されている。また、炉心上端は、炉心上端1と炉心上端2との2つの領域に分割されている。
炉心下端1と炉心下端2とでは、領域内で最も原子炉からの距離が近い点、より詳しくは、炉心中心からの距離が近い点が異なる。炉心下端1は、炉心中心からの水平距離が0mm以上1720mm未満であり、かつ炉心中心からの高さが24875mm以上25432mm未満の領域である。炉心下端2は、炉心中心からの水平距離が、1720mm以上1880mm未満であり、かつ炉心中心からの高さが24875mm以上25432mm未満の領域である。
同様に、炉心上端も、炉心中心からの水平距離及び炉心中心からの高さにより、炉心上端1と炉心上端2との2つの領域に分割されている。
このように、圧力容器内機器では、温度条件に加えて、炉心中心からの水平距離及び炉心中心からの高さにより、合計4つの領域、1-1、1-2、1-3及び1-4に分割されている。
【0029】
<格納容器内機器、遮へい壁>
格納容器内機器及び遮へい壁についても、圧力容器内機器と同様に、炉心中心からの水平距離及び炉心中心からの高さにより、領域への分割することができる。
格納容器内機器は、図4に示すように、炉心中心からの水平距離及び炉心中心からの高さにより、2-1、2-2及び2-3の3つの領域に分割されている。
また、遮へい壁は、図5に示すように、炉心中心からの水平距離及び炉心中心からの高さにより、3-1、3-2及び3-3の3つの領域に分割されている。
【0030】
図3に示す圧力容器内機器では、主に炉心中心からの距離により領域分割され、図4に示す格納容器内機器では、主に炉心中心からの高さにより領域分割されている。
【0031】
なお、格納容器内機器及び遮へい壁では、圧力容器内機器とは異なり、温度条件が1つである。そのため、格納容器内機器及び遮へい壁では、圧力容器内機器で行われたような温度条件での分類分けは行われていない。
【0032】
<中性子束の値の計算>
次に、中性子束の値の計算について説明する。
中性子束の値の計算は、計算評価範囲全体に行う。また、放射化放射能の計算評価における中性子束の値の設定は、分割された領域ごとに行う。
領域は、前述のように、炉心中心からの距離に基づいて分割されている。そのため、同一の領域なかでは、中性子束の値は、大きくはばらついていないと考えられるためである。
中性子束の値の計算は、例えば、対象物の形状や線源スペクトルなどに基づいて、二次元DORTコードを用いて行うことができる。
なお、放射化放射能の計算評価において設定する中性子束の値は、各領域の中での中性子束の値の最大値にすることが好ましい。これにより、安全をより担保しやすい放射化放射能の計算評価を行うことができるからである。
【0033】
<温度条件の設定>
なお、図2に示す計算評価のフローでは、中性子束の値の計算の後に温度条件の設定の項目が記載されている。ただし、本実施形態では、前述のように、領域への分割の前に温度条件を考慮している。そのため、分割された各領域について、その温度条件は定まっている。したがって、温度条件の設定の項目において、特段の考慮は不要である。
一方、本実施形態とは異なり、領域への分割の間に温度条件を考慮していない場合には、温度条件の設定の項目において、温度条件による分類を行うことが好ましい。後の放射化放射能の計算評価を、簡潔にすることができるためである。
【0034】
<材質の設定>
次に、材質の設定について説明する。計算評価は、計算評価の対象とする材質ごとに各々行う。材質、より詳しくは、材質ごとの元素組成によって、放射化のされやすさが異なるためである。
そのため、計算評価において設定する材質は、放射化する前の物質である出発物質の元素組成が整備された材質から選定する必要がある。
出発物質の元素組成が整備された材質としては、例えば、SUS304、SUS304L、SUS316、SUS316L、コンクリート、炭素鋼などがある。
【0035】
図4に基づいて具体的に説明する。図4は、格納容器内機器についての、放射化放射能の計算評価の例を示す図である。
【0036】
格納容器内機器は、領域番号2-1、2-2及び2-3の、3つの領域に分割されている。そのうちの領域番号2-1の格納容器内階層1Fを例にして、材質の設定について説明する。
図4に示す物量調査結果における代表材質とは、計算対象範囲に含まれる対象物を構成する材料のなかで、主要な材料の材質を示す。また、主要な材料とは、重量面からして対象物を主に構成している材料をいう。
格納容器内階層1Fでは、図4の小区分番号9から19が示すように、代表材質として、11種類の材質の材料が使用されている。これらの材質に対応する部分のすべてについて、個別に放射化放射能の計算評価を行うことは煩雑である。
【0037】
放射化のされやすさは、材質、より詳しくは、材質ごとの元素組成によって異なる。ただし、材質の中には、元素組成が近い材料もある。そこで、元素組成が近い材料を、一群の材質としてまとめる。すなわち、材料を、放射化のされやすさを基準として分類する。これにより、放射化放射能の計算評価を簡潔にすることができる。
その際に設定する材質は、上述の、出発物質の元素組成が整備された材質から選定する。これにより、放射化放射能の計算評価を行うことができる。選定された材質は、その元素組成が明らかになっているからである。ここで、例外的に、元素組成が明らかになっている材質のいずれにも放射化のされやすさの差異が大きい代表材質の場合、特に設定する材質よりも代表材質の放射化のされやすさが大きい場合には、当該代表材質の対象物の重量が計算評価範囲全体の対象物の重量に対して無視できるほど小さいことを担保したうえで設定する必要がある。
【0038】
図4に示す格納容器内階層1Fを例にして説明する。格納容器内階層1Fでは、小区分番号9から19の11種の代表材質を、計算評価区分番号9から12の4つの計算評価区分にまとめている。ここで、計算評価区分とは、後の放射化放射能の計算評価において、1つのまとまりとして計算する区分を意味する。
具体的には、小区分10から13の4つの代表材質であるSUS316、SUS32A、SUS32B及びSUS14を、計算評価区分番号10の1つの計算評価区分にまとめている。SUS32A、SUS32B及びSUS14の放射化のされやすさがSUS316に近いためである。
同様に、小区分番号14及び15を計算評価区分11にまとめ、小区分番号16及び17を計算評価区分12にまとめている。
このように、放射化のされやすさを基準として、放射化のされやすさが近い代表材質を1つの計算評価区分にまとめることで、放射化放射能の計算評価を簡潔にすることができる。例えば、格納容器内階層1Fでは、計算評価の数が、11から4に削減されている。
【0039】
また、格納容器内機器では、図4に示すように、格納容器内階層2Fにおいても、放射化のされやすさの近い代表材料が、1つの計算評価区分にまとめられている。具体的には、小区分番号23及び24のS25CとS28Cとが、1つの計算評価区分16にまとめられている。
【0040】
<中性子照射期間の設定>
次に、中性子照射期間の設定について説明する。放射化の程度は、中性子束の値などに加えて、中性子が照射されていた期間にも依存する。そのため、例えば、中性子の照射が停止されていた期間がある場合には、それを考慮したうえで放射化放射能の計算評価を行うことが好ましい。
また、中性子照射期間の途中において部品の交換がなされた場合にも、その部品について、中性子照射期間を実態に即して設定することが好ましい。
図3に、圧力容器内機器の炉心下端1について、代表材質ごとに異なる中性子照射期間を設定した例を示す。すなわち、領域番号1-1の炉心下端1において、計算評価区分1のSUS304は、中性子照射期間を全期間としている。一方、炉心下端2における計算評価区分2のSUS316Lは、シュラウド交換後の期間としている。
このように、計算評価の対象物の状況に応じた中性子照射期間を設定することで、より正確に放射化放射能の計算評価を行うことができる。
【0041】
以上のようにして、計算対象範囲に配置された対象物について、分割された領域ごとに、中性子束の値、温度条件、材質、中性子照射期間などを決定することができる。これらの値が決定されると、放射化放射能の計算評価が可能になる。
【0042】
<放射化放射能の計算評価>
放射化放射能の計算評価について説明する。
放射化放射能の計算評価、言い換えると放射化汚染による放射性物質濃度の計算は、例えば、放射性物質生成崩壊計算コードORIGEN-S(I. C. Gauld, et al.:”ORIGEN-S: SCALE SYSTEM MODULE TO CALCULATE FUEL DEPLETION,ACTINIDE TRANSMUTATION, FISSION PRODUCT BUILDUP AND DECAY, AND ASSOCIATEDRADIATION SOURCE TERMS”, ORNL/TM-2005/39, Version 5.1 Vol. II, Book1, Sect.F7)を用いて行うことができる。そして、前述の中性子束の値、中性子照射履歴を考慮した中性子照射期間及び対象物の材質などを用いて,推定放射化量を計算し放射化放射能を評価した。
【0043】
<放射能レベルの区分ごとの重量の積算>
次に、放射能レベルの区分ごとの重量の積算について説明する。
放射能レベルの区分ごとの重量の積算の手順は以下の通りである。すなわち、計算評価した放射化放射能の値に応じて、各計算評価区分について、属する放射能レベルの区分を決定する。その上で、各放射能レベルの区分に属する計算評価区分について、同計算評価区分内の対象物の重量をたし合わせる。これにより、各放射能レベルの区分ごとに、その区分に属する対象物の総重量を算出することができる。
【0044】
以下、図3から図5を参照しながら、具体的に説明する。
図3から図5のいくつかの計算評価区分について、重量、放射化放射能の計算評価及び放射能レベルの区分の欄に、説明用の記号を記入している。具体的には、重量の欄には、W1からW11を記入し、放射化放射能の計算評価の欄には、B1からB11を記入し、放射能レベルの区分の欄には、L1からL3及びCLを記入している。
W1からW11は、それぞれ重量(kg)を示し、B1からB11は、それぞれ単位重量当たりの放射能の強さ(Bq/g)を示す。
また、放射能レベルの区分のL1、L2、L3及びCLは、前述したように、以下の区分を示している。すなわち、L1は、放射能レベルの比較的高い区分を示し、L2は、放射能レベルの比較的低い区分を示し、L3は、射能レベルの極めて低い区分を示し、CLは、放射性廃棄物として取り扱う必要のない区分、すなわちクリアランスレベルの区分を示している。
【0045】
<放射能レベル区分の決定>
前述の説明用の記号を用いて、放射能レベルの区分ごとの重量の積算について説明する。
まず、計算評価した放射化放射能の値に応じて、各計算評価区分の属する放射能レベルの区分を決定する。
図3から図5に示す例では、計算評価区分1のB1(Bq/g)及び計算評価区分6のB6(Bq/g)が、放射能レベルの区分L1に属する放射化放射能の値であるとする。
同様に、計算評価区分2のB2(Bq/g)、計算評価区分4のB4(Bq/g)、計算評価区分8のB8(Bq/g)、計算評価区分21のB21(Bq/g)及び計算評価区分22のB22(Bq/g)が、放射能レベルの区分L2に属する放射化放射能の値であるとする。
また、計算評価区分18のB18(Bq/g)及び計算評価区分20のB20(Bq/g)が、放射能レベルの区分L3に属する放射化放射能であるとする。
また、計算評価区分17のB17(Bq/g)及び計算評価区分19のB19(Bq/g)が、放射能レベルの区分CLに属する放射化放射能であるとする。
【0046】
次に、各放射能レベルの区分に属する計算評価区分について、その重量をたし合わせる。
前述の例では、放射能レベルL1には、計算評価区分1及び6が属する。そのため、放射能レベルL1に属する対象物の総重量は、計算評価区分1の重量であるW1(kg)と、計算評価区分6の重量であるW6(kg)との和となる。
同様に、放射能レベルL2に属する対象物の総重量は、W2(kg)、W4(kg)、W8(kg)、W21(kg)及びW22(kg)の和となる。
また、放射能レベルL3に属する対象物の総重量は、W18(kg)とW20(kg)との和となる。
また、放射能レベルCLに属する対象物の総重量は、W17(kg)とW19(kg)との和となる。
以上のようにして、放射能レベル区分ごとの積算重量を求めることができる。
なお、図2に示す、放射能レベルの区分ごとの重量の積算は、前述の説明の内容の概念をイメージとして記したものである。
【0047】
以上のように、本実施形態の放射化放射能の計算評価及び放射能レベル区分ごとの重量の積算を行う方法では、中性子束の値が同等と考えられる領域を設定し、その領域を材質ごとにさらに分類する。これにより、放射化放射能の計算評価において、計算条件などの整理や、計算自体を簡素化することができる。
具体的には、計算条件を整理するための、機器の重量などの情報の分類や整理を簡素化することができる。また、計算評価における計算条件の入力作業工数を低減することができる。さらに、評価計算の回数を削減することができる。例えば、評価計算の回数は、(領域分割数)×(各領域の材質数の和)×(各領域及び材質の中性子照射期間設定数の和)にまで、削減することができる。
以上のように、本実施形態の方法によれば計算評価に要する時間を短縮することができ、業務効率を向上させることができる。
【0048】
また、本実施形態の放射化放射能の計算評価及び放射能レベル区分ごとの重量の積算を行う方法は、上述のように、計算を容易にすることができることに加えて、現場調査の手間を少なくすることができるとの効果も有する。
すなわち、通常、原子炉周辺の対象物すべてを測位することは困難な状況である。そこで、計算評価において空間的な領域を定義することにより、すべての対象物を測位することなく、各対象物に対して、その領域に含まれているか否かを判断することができる。これにより、現場調査の手間を低減又は省くことが可能になるというものである。
【符号の説明】
【0049】
1 原子力発電所
10 原子炉建物
11 原子炉圧力容器(RPV)
11A ウラン燃料
11B 制御棒
12 原子炉格納容器(PCV)
13 遮へい壁(BSW)
14 原子炉再循環ポンプ
15 圧力制御室
16 隔離弁
17 第1の配管
20 タービン建物
21 タービン
22 発電機
23 復水器
23P 第1のポンプ
24 原子炉補機冷却海水系(RSW)
24P 第2のポンプ
24E 取水口
24D 放水口
27 第2の配管
図1
図2
図3
図4
図5