(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179908
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】防滑塗布材及び防滑施工方法
(51)【国際特許分類】
E01C 11/26 20060101AFI20231213BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20231213BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20231213BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20231213BHJP
C09D 125/08 20060101ALI20231213BHJP
C09D 133/00 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
E01C11/26 Z
C09D201/00
C09D7/61
C09D5/02
C09D125/08
C09D133/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092832
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】521033066
【氏名又は名称】株式会社モアグリップ
(74)【代理人】
【識別番号】100130281
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 道幸
(74)【代理人】
【識別番号】100214813
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 幸江
(72)【発明者】
【氏名】名倉 孝次
【テーマコード(参考)】
2D051
4J038
【Fターム(参考)】
2D051AA08
2D051AB03
2D051AD07
2D051AE02
2D051AF07
2D051AF17
2D051AG17
2D051AG18
2D051AH02
4J038CC021
4J038CG001
4J038KA08
4J038KA20
4J038MA10
4J038PB05
4J038PC04
(57)【要約】
【課題】
歩行面の意匠性を維持又は改善しつつ、滑りにくい歩行面を形成させることができる防滑塗布材及び防滑施工方法を提供することにある。
【解決手段】
粒径が4mm以下にされた陶磁器、瓦、火山灰若しくは炭又はこれらが混合されたものからなる骨材と、骨材を該歩行面に固着させるバインダとからなり、骨材の重量が、骨材とバインダとの合計重量に対して8%を超え50%未満であることを特徴とし、バインダが、水系合成樹脂エマルジョンからなることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行面に塗布する該歩行面での滑りを防止するための防滑塗布材において、
粒径が4mm以下にされた陶磁器、瓦、火山灰若しくは炭又はこれらが混合されたものからなる骨材と、
該骨材を該歩行面に固着させるバインダとからなり、
該骨材の重量が、該骨材と該バインダとの合計重量に対して8%を超え50%未満であることを特徴とする防滑塗布材。
【請求項2】
前記バインダが、水系合成樹脂エマルジョンからなることを特徴とする請求項1記載の防滑塗布材。
【請求項3】
前記バインダが、アクリル・スチレン共重合体水性エマルジョンからなることを特徴とする請求項1記載の防滑塗布材。
【請求項4】
前記陶磁器が、陶磁器製便器、陶磁器製便器タンク、陶磁器製シンク又は陶磁器製タイルであることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の防滑塗布材。
【請求項5】
前記瓦が、廃瓦であることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の防滑塗布材。
【請求項6】
色彩の異なる前記骨材を、混合したことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の防滑塗布材。
【請求項7】
歩行面での滑りを防止するための防滑施工方法において、
粒径が4mm以下にされた陶磁器、瓦、火山灰若しくは炭又はこれらが混合されたものからなる骨材と、該骨材を該歩行面に固着させるバインダとを、該骨材の重量が、該骨材と該バインダとの合計重量に対して8%を超え50%未満になるように混合し、該歩行面に塗布することを特徴とする防滑施工方法。
【請求項8】
前記バインダが、水系合成樹脂エマルジョンからなることを特徴とする請求項7記載の防滑施工方法。
【請求項9】
前記バインダが、アクリル・スチレン共重合体水性エマルジョンからなることを特徴とする請求項7記載の防滑施工方法。
【請求項10】
前記陶磁器が、陶磁器製便器、陶磁器製便器タンク、陶磁器製シンク又は陶磁器製タイルであることを特徴とする請求項7~請求項9のいずれか1項に記載の防滑施工方法。
【請求項11】
前記瓦が、廃瓦であることを特徴とする請求項7~請求項9のいずれか1項に記載の防滑施工方法。
【請求項12】
色彩の異なる前記骨材を、混合することを特徴とする請求項7~請求項9のいずれか1項に記載の防滑施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩道タイルや歩道レンガ等の歩行面での滑りを防止するための防滑塗布材及び防滑施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、歩行面の滑りを防止する方法として、さまざまな方法が用いられている。この滑り止め部材として、例えば、特許文献1に示すような滑り防止テープがある。この滑り防止テープは、滑りを防止したい面に貼付するもので、金属箔をベースとして、その金属箔ベースの上面に、透明な樹脂フィルムを設けるとともに、樹脂フィルムの裏面、すなわち、金属箔ベースに対向する面に、模様等からなる表示層を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の滑り防止テープでは、剥がれやすく、部分的に貼付するので、歩行面の意匠性を損ねやすいという問題点があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、歩行面の意匠性を維持又は改善しつつ、滑りにくい歩行面を形成させることができる防滑塗布材及び防滑施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の防滑塗布材は、粒径が4mm以下にされた陶磁器、瓦、火山灰若しくは炭又はこれらが混合されたものからなる骨材と、
骨材を歩行面に固着させるバインダとからなり、骨材の重量が、骨材とバインダとの合計重量に対して8%を超え50%未満であることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の防滑塗布材は、バインダが、水系合成樹脂エマルジョンからなることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の防滑塗布材は、バインダが、アクリル・スチレン共重合体水性エマルジョンからなることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の防滑塗布材は、陶磁器が、陶磁器製便器、陶磁器製便器タンク、陶磁器製シンク又は陶磁器製タイルであることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の防滑塗布材は、瓦が、廃瓦であることを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の防滑塗布材は、色彩の異なる骨材を、混合したことを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の防滑施工方法は、粒径が4mm以下にされた陶磁器、瓦、火山灰若しくは炭又はこれらが混合されたものからなる骨材と、骨材を歩行面に固着させるバインダとを、骨材の重量が、骨材とバインダとの合計重量に対して8%を超え50%未満になるように混合し、歩行面に塗布することを特徴とする。
【0013】
請求項8記載の防滑施工方法は、バインダが、水系合成樹脂エマルジョンからなることを特徴とする。
【0014】
請求項9記載の防滑施工方法は、バインダが、アクリル・スチレン共重合体水性エマルジョンからなることを特徴とする。
【0015】
請求項10記載の防滑施工方法は、陶磁器が、陶磁器製便器、陶磁器製便器タンク、陶磁器製シンク又は陶磁器製タイルであることを特徴とする。
【0016】
請求項11記載の防滑施工方法は、瓦が、廃瓦であることを特徴とする。
【0017】
請求項12記載の防滑施工方法は、色彩の異なる骨材を、混合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の防滑塗布材及び防滑施工方法は、歩行面の意匠性を維持又は改善しつつ、滑りにくい歩行面を形成させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る防滑塗布材の製造方法及び施工方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は、本発明に係る防滑塗布材の製造方法及び施工方法を示す説明図である。
【0021】
本発明に係る防滑塗布材は、歩道タイルや歩道レンガ等の歩行面での滑りを防止するためのもので、材質的には、表面が滑りやすい磁器タイルや石材等の歩行面に塗布することが可能なものである。このように、塗布する歩行面は、屋外でも屋内でもよく、また、材質や形状により制限されるものではない。
【0022】
防滑塗布材は、陶磁器、瓦、火山灰若しくは炭又はこれらが混合されたものからなる骨材と、骨材を塗布面に固着させるバインダとを混合したものである。
【0023】
骨材は、粒径が4mm以下にされた陶磁器、瓦、火山灰若しくは炭又はこれらが混合されたものからなり、粒や粉が混在しているものでも、粒又は粉のいずれかであってもよい。尚、粒と粉とが混在する場合、その混合の比率は任意である。陶磁器及び瓦は、粒径が4mm以下に粉砕されたものを使用する。火山灰や炭は、粒径が4mm以下のものであれば、粉砕せずに用いてもよい。粒径が4mmよりも大きな火山灰や炭は、粉砕して粒径が4mm以下にすることになる。尚、骨材は、粒径が4mm以下であればよく、後述するスプレーガンによる塗布等を考慮すると粒径が1.5mm以下が好ましい。
【0024】
陶磁器や瓦は、特に種類を限定せず、また新品や新古品や製造途中のものでも使用済みの廃材(廃瓦等)でもいずれであってもよく、また、新品等と廃材との混合物でもよい。陶磁器の例としては、これらに限定されないが、陶磁器製便器、陶磁器製便器タンク、陶磁器製シンク又は陶磁器製タイルがある。瓦は、いぶし瓦、陶器瓦等である。陶磁器や瓦には、練り土成形焼成品を含むものである。火山灰にあっては、どの山等を由来とするかや、火山灰の種類によって制限されるものではない。炭は、そもそもの炭にされた木材の種類や炭にされた温度や炭の固さ等によって制限されるものではない。
【0025】
骨材は、陶磁器、瓦、火山灰若しくは炭が混合されたものであってもよく、色彩の異なる骨材である陶磁器、瓦、火山灰、炭を混合して使用するようにしてもよい。色彩の異なるものを混合することで、混合の割合等の違いで、様々な色彩の防滑塗布材を創り出すことが可能になる。
【0026】
バインダは、水系合成樹脂エマルジョンで、特に、アクリル・スチレン共重合体水性エマルジョンであることが好ましく、例えば、アクリル・スチレン共重合体、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート、フタル酸ジ-ノルマル-ブチル、エチレングリコール及び水等から構成されている。
【0027】
防滑塗布材は、骨材の重量が、骨材とバインダとの合計重量に対して8%を超え50%未満である。
【0028】
次に、本発明の防滑塗布材の製造方法及び施工方法を、
図1を用いて説明する。尚、骨材については、廃材となった陶磁器や廃瓦や火山灰や炭の例で説明する。
【0029】
まず、バインダは、あらかじめ製造工場で調合・製造され、所望の防滑塗布材の量に見合った上述した重量に計量する(S110)。
【0030】
陶磁器や瓦や火山灰や炭は、工場や作業現場や飛散現場から回収され、産業廃棄物処分工場において、まずは異物や汚れの除去として洗浄が行われる(S120)。次に、陶磁器や瓦を、粉砕する(S121)(火山灰や炭については、必要に応じて粉砕する)。粉砕の目安は粒径が4mm以下である。そして、粉砕された陶磁器や瓦や火山灰や炭を、ふるいに掛けて粒径が大きいものを取り除く(S122)。粒径が4mmよりも大きな粒は、さらに粉砕し直すようにする。
【0031】
そして、粒径が4mm以下となった陶磁器や瓦や火山灰や炭からなる骨材を、所望の防滑塗布材の量に見合った上述した重量にそれぞれ計量する(S123)。尚、洗浄(S120)は、必須ではない。また、骨材に、不必要な水分が含まれる場合には、粉砕(S121)やふるい(S122)の前後の適当な段階で、乾燥の処理を施す必要がある場合もある。乾燥方法としては、天日干しや機械乾燥等で、特に乾燥方法により限定されるものではない。また、計量(S123)を行った場所と塗布面のある現場が離れているような場合には、計量後の骨材を、それぞれ袋詰めするようにしてもよい。
【0032】
次に、骨材とバインダとを、上述の割合で混合する(S111)。混合することで、本件の防滑塗布材となる。混合する場所は、塗布の施工現場でも、それ以外の場所であってもよい。
【0033】
塗布面は、上述した例えば歩行面である。そして、最初に、必要に応じて塗布面の洗浄を行い(S100)、次に下地処理としてシーラーを塗布する(S101)。尚、シーラーの塗布は、必須ではない。
【0034】
その上で、塗布面に防滑塗布材を塗布する(S102)。塗布方法は、こて当てでも刷毛塗りでも噴き付けでもよい。塗布する回数は、1回でもかまわないが、2回以上であってもよい。
【0035】
以上のような構成の本実施の形態における防滑塗布材によれば、滑りにくい歩行面(塗布面)を実現することができる。実際に、本発明の防滑塗布材(骨材の粒径は、1.5mm以下)を塗布した塗布面の滑り係数(JIS A 1454のCSR試験機「OY・PSM」と互換性を持つ携帯型測定器「ONO・PPSM試験機」で測定したCSR)は、湿潤状態の場合でCSR平均値=0.83であり、防滑性に優れている。尚、骨材の粒径が1.5mm以上になれば、さらに防滑性に優れることになる。
【0036】
また、防滑塗布材は、既に施工された歩行面に対して塗布可能であり、また、骨材の粒径が1.5mm程度の場合には、スプレーガンで噴き付けできるので、広範囲な塗布も可能である。
【0037】
尚、骨材に、いろいろな色の陶磁器製便器、陶磁器製便器タンク、陶磁器製シンク又は陶磁器製タイルを用い、また、いろいろな色の瓦を用いることで、それぞれの骨材の色を生かした防滑塗布材となり、意匠性に優れた塗布面に仕上げることも可能である。更に、色彩の異なる骨材を混合することで、元々の歩行面の色に沿った配色等が可能で、様々な色彩の意匠面を形成させることが可能である。例えば、元の歩行面の表面が退色したりして意匠性が損なわれた状態で、本願の防滑塗布材を塗布することで、防滑性を付加したうえで、意匠性を蘇らせることも可能である。このように、本願の防滑塗布材は、歩行面の意匠性を維持又は改善しつつ、滑りにくい歩行面を形成させることができる。
【0038】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように、本発明によれば、歩行面の意匠性を維持又は改善しつつ、滑りにくい歩行面を形成させることができる防滑塗布材及び防滑施工方法を提供することができる。