(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179918
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】プレス成形方法及びそのプレス型
(51)【国際特許分類】
B21D 22/26 20060101AFI20231213BHJP
B21D 24/02 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
B21D22/26 D
B21D24/02 A
B21D22/26 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092857
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】川居 宥斗
(72)【発明者】
【氏名】三登 悠司
【テーマコード(参考)】
4E137
【Fターム(参考)】
4E137AA05
4E137AA08
4E137BA01
4E137BB01
4E137BC01
4E137CA09
4E137CA13
4E137DA13
4E137EA02
4E137EA03
4E137GA03
4E137GA08
4E137GB03
(57)【要約】
【課題】ハット型断面形状部の一方の側壁部が、他方の側壁部の湾曲率より大きな湾曲率で伸びフランジ成形となる方向へ湾曲されたプレス部品の伸びワレを低減しつつ、形状凍結性を向上できるプレス成形方法及びそのプレス型を提供する。
【解決手段】ハット型断面の一方の側壁部を形成する第1側壁成形部211と他方の側壁部を形成する第2側壁成形部212と他方の側壁部から延びるフランジ部を形成するフランジ成形部212Hとを有するポンチ21と、一方の側壁部から延びるフランジ部を形成するシワ押さえ部221を有するクッション22と、パッド23と、ダイ24とを備え、パッドが素材Wをポンチの天板成形部213に押圧し、クッションのシワ押さえ部とダイとが素材を挟持した状態で、ダイとポンチとが近接することによって、一方の側壁部とそのフランジ部とを絞り成形し、他方の側壁部とそのフランジ部とを曲げ成形する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向へ連続するハット型断面形状部を有し、当該ハット型断面形状部の一方の側壁部が、他方の側壁部の湾曲率より大きな湾曲率で伸びフランジ成形となる方向へ湾曲されたプレス部品を成形するプレス成形方法であって、
ハット型断面の天板部を形成する天板成形部と、前記一方の側壁部を形成する第1側壁成形部と、前記他方の側壁部を形成する第2側壁成形部と、前記他方の側壁部から延びるフランジ部を形成するフランジ成形部とを有するポンチと、
前記第1側壁成形部と分割され、前記一方の側壁部から延びるフランジ部を形成するシワ押さえ部を有して、前記ポンチに対して上下動可能に形成されたクッションと、
前記ポンチの前記天板成形部に素材を押圧するパッドと、
前記ポンチと前記クッションとに対向し、前記パッドの外周縁に沿って配置され、前記両側壁部と前記両フランジ部とを形成するダイ成形部を有するダイと、
前記パッドの押圧力以上の加圧力で前記ダイに対して前記クッションを押圧するクッション加圧装置とを備え、
前記パッドが前記素材を前記ポンチの天板成形部に押圧し、前記クッションのシワ押さえ部と前記ダイのダイ成形部とが前記素材を挟持した状態で、前記ダイと前記ポンチとが近接することによって、前記一方の側壁部と前記一方の側壁部から延びる前記フランジ部とを絞り成形し、前記他方の側壁部と前記他方の側壁部から延びるフランジ部とを曲げ成形することを特徴とするプレス成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたプレス成形方法において、
前記他方の側壁部は、前記天板部に対する曲げ角度を正規の曲げ角度より小さく成形し、後工程にて前記正規の曲げ角度に成形することを特徴とするプレス成形方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載されたプレス成形方法において、
前記パッドは、前記一方の側壁部における伸びフランジ成形の伸び率が大きい領域と当該伸び率が小さい領域とに対応して複数に分割し、
前記伸び率が大きい領域に対応する前記パッドの押圧力は、前記伸び率が小さい領域に対応する前記パッドの押圧力より小さいことを特徴とするプレス成形方法。
【請求項4】
長手方向へ連続するハット型断面形状部を有し、当該ハット型断面形状部の一方の側壁部が、他方の側壁部の湾曲率より大きな湾曲率で伸びフランジ成形となる方向へ湾曲されたプレス部品を成形するプレス型であって、
ハット型断面の天板部を形成する天板成形部と、前記一方の側壁部を形成する第1側壁成形部と、前記他方の側壁部を形成する第2側壁成形部と、前記他方の側壁部から延びるフランジ部を形成するフランジ成形部とを有するポンチと、
前記第1側壁成形部と分割され、前記一方の側壁部から延びるフランジ部を形成するシワ押さえ部を有して、前記ポンチに対して上下動可能に形成されたクッションと、
前記ポンチの前記天板成形部に素材を押圧するパッドと、
前記ポンチと前記クッションとに対向し、前記パッドの外周縁に沿って配置され、前記両側壁部と前記両フランジ部とを形成するダイ成形部を有するダイと、
前記パッドの押圧力以上の加圧力で前記ダイに対して前記クッションを押圧するクッション加圧装置とを備え、
前記パッドが前記素材を前記ポンチの天板成形部に押圧し、前記クッションのシワ押さえ部と前記ダイのダイ成形部とが前記素材を挟持した状態で、前記ダイと前記ポンチとが近接することによって、前記一方の側壁部と前記一方の側壁部から延びる前記フランジ部とを絞り成形し、前記他方の側壁部と前記他方の側壁部から延びるフランジ部とを曲げ成形することを特徴とするプレス型。
【請求項5】
請求項4に記載されたプレス型において、
前記クッションには、前記フランジ成形部の外周側に配置された連結部を備え、当該連結部と前記シワ押さえ部とが前記ポンチを取り巻くリング状に連結され、
前記連結部又は前記ダイには、対向する前記ダイの座部又は前記連結部の座部と当接するディスタンスブロックが装着されていることを特徴とするプレス型。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載されたプレス型において、
前記クッション加圧装置は、シリンダケースが前記ポンチの型台に装着され、前記シリンダケースに対して伸縮するシリンダロッドが前記クッションを押圧する流体シリンダ装置であって、プレス成形完了時から前記パッドが前記天板部と離間する時まで、前記シリンダロッドの伸長を停止させるロック機構を有することを特徴とするプレス型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス成形方法及びそのプレス型に関し、より詳しくは、長手方向へ連続するハット型断面形状部を有し、当該ハット型断面形状部の一方の側壁部が、他方の側壁部の湾曲率より大きな湾曲率で伸びフランジ成形となる方向へ湾曲されたプレス部品を成形するプレス成形方法及びそのプレス型に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、長手方向へ連続するハット型断面形状部を有するプレス部品100は、
図14(A)に示すように、素材(鋼板)SSをハット型断面の天板部101と左右の側壁部102、103とに曲げ成形するプレス成形方法によって得られることが知られている。すなわち、上記プレス部品100は、ハット型断面の成形面が形成された下型ポンチ201と、下型ポンチ201の天板成形部に素材SSを押圧するパッド202と、パッド202の外周側に位置しハット型断面の左右側壁部に沿って形成された曲げ刃203Dを有する上型ダイ203とを備え、パッド202が素材SSを下型ポンチ201に押圧した状態で上型ダイ203が下降し、その曲げ刃203Dが素材SSを下型ポンチ201に押圧して下型ポンチ201の成形面に沿った形状に曲げ成形するプレス成形方法によって得ることができる。
【0003】
ところが、ハット型断面形状部を有するプレス部品100は、ハット型断面形状部が長手方向で湾曲していることが多く、その場合、ハット型断面の一方の側壁部102が伸びフランジ成形となり、他方の側壁部103が縮みフランジ成形となることが多い。このプレス部品100を曲げ成形方法によって形成すると、伸びフランジ成形の側壁部102には引張応力が残留し、縮みフランジ成形の側壁部103には圧縮応力が残留することになる。
【0004】
そのため、
図14(B)に示すように、離型後のプレス部品100では、伸びフランジ成形の側壁部102が残留引張応力によって側壁内方(矢印X1の方向)へ変形し、縮みフランジ成形の側壁部103が残留圧縮応力によって側壁外方(矢印X2の方向)へ変形して、正規形状に凍結しにくい問題があった。また、左右の側壁部102、103がそれぞれ同方向(X1、X2)に変形することによって、ハット型断面形状部全体が捻り変形して、次工程への型セットも困難となる問題があった。更に、素材SSが、所謂、高張力鋼板(例えば、引張強度が1~1.2GPa程度の鋼板)であると、曲げ成形後におけるプレス部品100の捻り量が益々大きくなるため、プレス型における成形面の見込み修正を繰り返して行わざるを得ないという問題があった。
【0005】
この問題に対して、上記プレス部品100を絞り成形方法によって形成して、正規形状への形状凍結性を向上させる方法も考えられるが、特に高張力鋼板では、伸び率が低下するため、伸びフランジ成形の側壁部102において伸びワレが発生しやすいという問題があった。
【0006】
この点、特許文献1には、
図15、
図16に示すように、下型ポンチ301と、下型ポンチ301に素材SSを押圧するパッド302と、パッド302の外周側に成形面を有する上型ダイ303とを備え、長手方向へ連続する略ハット型断面を有し、その天板部401を挟んで対向する位置に伸びフランジ成形部402と縮みフランジ成形部403とが形成されたプレス部品400を、展開抜きされた素材SSを冷間で曲げ加工して形成するプレス成形方法であって、伸びフランジ成形部402及び縮みフランジ成形部403から離間する位置で天板部401の素材部分SS1Aをパッド302が押圧した状態で、上型ダイ303は、下型ポンチ301に近接して伸びフランジ成形部402及び縮みフランジ成形部403を形成する素材部分SS2、SS3を、下型ポンチ301に対して縮みフランジ成形側から伸びフランジ成形側へ回転移動させてから、下型ポンチ301に押圧するプレス成形方法が開示されている。
【0007】
このプレス成形方法によれば、縮みフランジ成形部403側から伸びフランジ成形部402側へ素材SSを供給できるので、伸びフランジ成形部402での伸びワレを低減できる効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に開示されているプレス成形方法では、伸びフランジ成形部402と縮みフランジ成形部403とが天板部401を挟んで対向する位置に形成されていない場合には、伸びフランジ成形部402及び縮みフランジ成形部403を形成する素材部分SS2、SS3を、下型ポンチ301に対して縮みフランジ成形側から伸びフランジ成形側へ移動させことができない。
【0010】
したがって、長手方向へ連続するハット型断面形状部を有し、当該ハット型断面形状部の一方の側壁部が、他方の側壁部の湾曲率より大きな湾曲率で伸びフランジ成形となる方向へ湾曲されたプレス部品の場合(例えば、ハット型断面形状部の一方の側壁部が伸びフランジ成形となる方向へ大きな湾曲率で湾曲しているが、他方の側壁部が直線状に延設されている場合又は僅かに縮みフランジ成形となるように小さな湾曲率で湾曲している場合)には、伸びフランジ成形の一方の側壁部に対する素材の供給が不足して、伸びフランジ成形となる一方の側壁部において伸びワレが発生するという問題があった。
【0011】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、ハット型断面形状部の一方の側壁部が、他方の側壁部の湾曲率より大きな湾曲率で伸びフランジ成形となる方向へ湾曲されたプレス部品の伸びワレを低減しつつ、形状凍結性を向上できるプレス成形方法及びそのプレス型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係るプレス成形方法及びプレス型は、次のような構成を有している。
(1)長手方向へ連続するハット型断面形状部を有し、当該ハット型断面形状部の一方の側壁部が、他方の側壁部の湾曲率より大きな湾曲率で伸びフランジ成形となる方向へ湾曲されたプレス部品を成形するプレス成形方法であって、
ハット型断面の天板部を形成する天板成形部と、前記一方の側壁部を形成する第1側壁成形部と、前記他方の側壁部を形成する第2側壁成形部と、前記他方の側壁部から延びるフランジ部を形成するフランジ成形部とを有するポンチと、
前記第1側壁成形部と分割され、前記一方の側壁部から延びるフランジ部を形成するシワ押さえ部を有して、前記ポンチに対して上下動可能に形成されたクッションと、
前記ポンチの前記天板成形部に素材を押圧するパッドと、
前記ポンチと前記クッションとに対向し、前記パッドの外周縁に沿って配置され、前記両側壁部と前記両フランジ部とを形成するダイ成形部を有するダイと、
前記パッドの押圧力以上の加圧力で前記ダイに対して前記クッションを押圧するクッション加圧装置とを備え、
前記パッドが前記素材を前記ポンチの天板成形部に押圧し、前記クッションのシワ押さえ部と前記ダイのダイ成形部とが前記素材を挟持した状態で、前記ダイと前記ポンチとが近接することによって、前記一方の側壁部と前記一方の側壁部から延びる前記フランジ部とを絞り成形し、前記他方の側壁部と前記他方の側壁部から延びるフランジ部とを曲げ成形することを特徴とする。
【0013】
本発明においては、ハット型断面の天板部を形成する天板成形部と、一方の側壁部を形成する第1側壁成形部と、他方の側壁部を形成する第2側壁成形部と、他方の側壁部から延びるフランジ部を形成するフランジ成形部とを有するポンチと、第1側壁成形部と分割され、一方の側壁部から延びるフランジ部を形成するシワ押さえ部を有して、ポンチに対して上下動可能に形成されたクッションと、ポンチの天板成形部に素材を押圧するパッドと、ポンチとクッションとに対向し、パッドの外周縁に沿って配置され、両側壁部と両フランジ部とを形成するダイ成形部を有するダイと、パッドの押圧力以上の加圧力でダイに対してクッションを押圧するクッション加圧装置とを備え、パッドが素材をポンチの天板成形部に押圧し、クッションのシワ押さえ部とダイのダイ成形部とが素材を挟持した状態で、ダイとポンチとが近接することによって、一方の側壁部と一方の側壁部から延びるフランジ部とを絞り成形し、他方の側壁部と他方の側壁部から延びるフランジ部とを曲げ成形するので、長手方向へ連続するハット型断面形状部を有し、当該ハット型断面形状部の一方の側壁部が他方の側壁部の湾曲率より大きな湾曲率で伸びフランジ成形となる方向へ湾曲されたプレス部品における一方の側壁部の伸びワレを低減しつつ、正規形状への形状凍結性を向上できる。
【0014】
すなわち、ハット型断面の天板部を形成する天板成形部と、一方の側壁部を形成する第1側壁成形部と、他方の側壁部を形成する第2側壁成形部と、他方の側壁部から延びるフランジ部を形成するフランジ成形部とを有するポンチと、第1側壁成形部と分割され、一方の側壁部から延びるフランジ部を形成するシワ押さえ部を有して、ポンチに対して上下動可能に形成されたクッションと、ポンチの天板成形部に素材を押圧するパッドと、ポンチとクッションとに対向し、パッドの外周縁に沿って配置され、両側壁部と両フランジ部とを形成するダイ成形部を有するダイと、パッドの押圧力以上の加圧力でダイに対してクッションを押圧するクッション加圧装置とを備えているので、ポンチとパッドとが天板部側の素材を挟持し、クッションとダイとが一方の側壁部側の素材を挟持しつつ、ポンチとダイとが近接することによって、伸びフランジ成形となる一方の側壁部と一方の側壁部から延びるフランジ部とを絞り成形することができる。また、ポンチとパッドとが天板部側の素材を挟持し、ポンチとダイとが近接することによって、他方の側壁部と他方の側壁部から延びるフランジ部とを曲げ成形することができる。
【0015】
また、ポンチとクッションとパッドとダイとが協働して、伸びフランジ成形となる一方の側壁部と一方の側壁部から延びるフランジ部とを絞り成形する初期の段階では、ポンチとダイとが、他方の側壁部側の素材を殆んど曲げ成形していない。そのため、クッション加圧装置がパッドの押圧力以上の加圧力でクッションをダイに対して押圧することによって、伸びフランジ成形となる一方の側壁部側の素材がポンチ側へ流入する流入量を抑制しつつ、他方の側壁部側から伸びフランジ成形となる一方の側壁部側へ素材を流入させることができる。
【0016】
また、パッドが素材をポンチの天板成形部に押圧し、クッションのシワ押さえ部とダイのダイ成形部とが素材を挟持した状態で、ダイとポンチとが近接することによって、一方の側壁部と一方の側壁部から延びるフランジ部とを絞り成形し、他方の側壁部と他方の側壁部から延びるフランジ部とを曲げ成形するので、他方の側壁部側から一方の側壁部側への素材の供給を受けながら、一方の側壁部と一方の側壁部から延びるフランジ部とを絞り成形することによって、一方の側壁部と一方の側壁部から延びるフランジ部の伸び率が低減され、伸び率の低減に伴って引張残留応力も減少できる。その結果、伸びフランジ成形となる一方の側壁部と一方の側壁部から延びるフランジ部の伸びワレを低減でき、形状凍結性を高めることができる。
【0017】
よって、本発明によれば、ハット型断面形状部の一方の側壁部が、他方の側壁部の湾曲率より大きな湾曲率で伸びフランジ成形となる方向へ湾曲されたプレス部品の伸びワレを低減しつつ、形状凍結性を向上できるプレス成形方法を提供することができる。
【0018】
(2)(1)に記載されたプレス成形方法において、
前記他方の側壁部は、前記天板部に対する曲げ角度を正規の曲げ角度より小さく成形し、後工程にて前記正規の曲げ角度に成形することを特徴とする。
【0019】
本発明においては、他方の側壁部は、天板部に対する曲げ角度を正規の曲げ角度より小さく成形し、後工程にて前記正規の曲げ角度に成形するので、一方の側壁部と一方の側壁部から延びるフランジ部とを絞り成形するときには、他方の側壁部は、天板部に対する曲げ角度を正規の曲げ角度より小さく成形する。そのため、一方の側壁部と一方の側壁部から延びるフランジ部とを絞り成形する際、他方の側壁部側の素材がパッドとポンチの天板成形部との隙間を通過しやすくなり、他方の側壁部側から伸びフランジ成形となる一方の側壁部側へ素材をより多く流入させることができる。その結果、一方の側壁部と一方の側壁部から延びるフランジ部とを絞り成形するときの伸びワレをより一層低減でき、形状凍結性をより一層高めることができる。
【0020】
(3)(1)又は(2)に記載されたプレス成形方法において、
前記パッドは、前記一方の側壁部における伸びフランジ成形の伸び率が大きい領域と当該伸び率が小さい領域とに対応して複数に分割し、
前記伸び率が大きい領域に対応する前記パッドの押圧力は、前記伸び率が小さい領域に対応する前記パッドの押圧力より小さいことを特徴とする。
【0021】
本発明においては、パッドは、一方の側壁部における伸びフランジ成形の伸び率が大きい領域と当該伸び率が小さい領域とに対応して複数に分割し、伸び率が大きい領域に対応するパッドの押圧力は、伸び率が小さい領域に対応するパッドの押圧力より小さいので、一方の側壁部と一方の側壁部から延びるフランジ部とを絞り成形する際、一方の側壁部の伸びフランジ成形の伸び率が大きい領域において、他方の側壁部側から一方の側壁部側へ流入する素材の流入量をより一層増加させることができる。そのため、絞り成形時において、伸びフランジ成形の伸び率が大きい領域の一方の側壁部と一方の側壁部から延びるフランジ部の伸びワレをより一層低減でき、形状凍結性をより一層高めることができる。
【0022】
また、一方の側壁部と一方の側壁部から延びるフランジ部とを絞り成形する際、一方の側壁部の伸びフランジ成形の伸び率が小さい領域において、パッドの押圧力が相対的に大きくなるので、他方の側壁部側から一方の側壁部側へ流入する素材の流入量を減少させることができる。そのため、他方の側壁部と他方の側壁部から延びるフランジ部とにおいて、素材の流入に伴う変形を抑制でき、形状凍結性を向上させることができる。
【0023】
(4)長手方向へ連続するハット型断面形状部を有し、当該ハット型断面形状部の一方の側壁部が、他方の側壁部の湾曲率より大きな湾曲率で伸びフランジ成形となる方向へ湾曲されたプレス部品を成形するプレス型であって、
ハット型断面の天板部を形成する天板成形部と、前記一方の側壁部を形成する第1側壁成形部と、前記他方の側壁部を形成する第2側壁成形部と、前記他方の側壁部から延びるフランジ部を形成するフランジ成形部とを有するポンチと、
前記第1側壁成形部と分割され、前記一方の側壁部から延びるフランジ部を形成するシワ押さえ部を有して、前記ポンチに対して上下動可能に形成されたクッションと、
前記ポンチの前記天板成形部に素材を押圧するパッドと、
前記ポンチと前記クッションとに対向し、前記パッドの外周縁に沿って配置され、前記両側壁部と前記両フランジ部とを形成するダイ成形部を有するダイと、
前記パッドの押圧力以上の加圧力で前記ダイに対して前記クッションを押圧するクッション加圧装置とを備え、
前記パッドが前記素材を前記ポンチの天板成形部に押圧し、前記クッションのシワ押さえ部と前記ダイのダイ成形部とが前記素材を挟持した状態で、前記ダイと前記ポンチとが近接することによって、前記一方の側壁部と前記一方の側壁部から延びる前記フランジ部とを絞り成形し、前記他方の側壁部と前記他方の側壁部から延びるフランジ部とを曲げ成形することを特徴とする。
【0024】
本発明においては、ハット型断面の天板部を形成する天板成形部と、一方の側壁部を形成する第1側壁成形部と、他方の側壁部を形成する第2側壁成形部と、他方の側壁部から延びるフランジ部を形成するフランジ成形部とを有するポンチと、第1側壁成形部と分割され、一方の側壁部から延びるフランジ部を形成するシワ押さえ部を有して、ポンチに対して上下動可能に形成されたクッションと、ポンチの天板成形部に素材を押圧するパッドと、ポンチとクッションとに対向し、パッドの外周縁に沿って配置され、両側壁部と両フランジ部とを形成するダイ成形部を有するダイと、パッドの押圧力以上の加圧力でダイに対してクッションを押圧するクッション加圧装置とを備え、パッドが素材をポンチの天板成形部に押圧し、クッションのシワ押さえ部とダイのダイ成形部とが素材を挟持した状態で、ダイとポンチとが近接することによって、一方の側壁部と一方の側壁部から延びるフランジ部とを絞り成形し、他方の側壁部と他方の側壁部から延びるフランジ部とを曲げ成形するので、長手方向へ連続するハット型断面形状部を有し、当該ハット型断面形状部の一方の側壁部が他方の側壁部の湾曲率より大きな湾曲率で伸びフランジ成形となる方向へ湾曲されたプレス部品における一方の側壁部の伸びワレを低減しつつ、形状凍結性を向上できる。
【0025】
すなわち、ハット型断面の天板部を形成する天板成形部と、一方の側壁部を形成する第1側壁成形部と、他方の側壁部を形成する第2側壁成形部と、他方の側壁部から延びるフランジ部を形成するフランジ成形部とを有するポンチと、第1側壁成形部と分割され、一方の側壁部から延びるフランジ部を形成するシワ押さえ部を有して、ポンチに対して上下動可能に形成されたクッションと、ポンチの天板成形部に素材を押圧するパッドと、ポンチとクッションとに対向し、パッドの外周縁に沿って配置され、両側壁部と両フランジ部とを形成するダイ成形部を有するダイと、パッドの押圧力以上の加圧力でダイに対してクッションを押圧するクッション加圧装置とを備えているので、ポンチとパッドとが天板部側の素材を挟持し、クッションとダイとが一方の側壁部側の素材を挟持しつつ、ポンチとダイとが近接することによって、伸びフランジ成形となる一方の側壁部と一方の側壁部から延びるフランジ部とを絞り成形することができる。また、ポンチとパッドとが天板部側の素材を挟持し、ポンチとダイとが近接することによって、他方の側壁部と他方の側壁部から延びるフランジ部とを曲げ成形することができる。
【0026】
また、ポンチとクッションとパッドとダイとが協働して、伸びフランジ成形となる一方の側壁部と一方の側壁部から延びるフランジ部とを絞り成形する初期の段階では、ポンチとダイとが、他方の側壁部側の素材を殆んど曲げ成形していない。そのため、クッション加圧装置がパッドの押圧力以上の加圧力でクッションをダイに対して押圧することによって、伸びフランジ成形となる一方の側壁部側の素材ポンチ側へ流入する流入量を抑制しつつ、他方の側壁部側から伸びフランジ成形となる一方の側壁部側へ素材を流入させることができる。
【0027】
また、パッドが素材をポンチの天板成形部に押圧し、クッションのシワ押さえ部とダイのダイ成形部とが素材を挟持した状態で、ダイとポンチとが近接することによって、一方の側壁部と一方の側壁部から延びるフランジ部とを絞り成形し、他方の側壁部と他方の側壁部から延びるフランジ部とを曲げ成形するので、他方の側壁部側から一方の側壁部側への素材の供給を受けながら、一方の側壁部と一方の側壁部から延びるフランジ部とを絞り成形することによって、一方の側壁部と一方の側壁部から延びるフランジ部の伸び率が低減され、伸び率の低減に伴って引張残留応力も減少できる。その結果、伸びフランジ成形となる一方の側壁部と一方の側壁部から延びるフランジ部の伸びワレを低減でき、形状凍結性を高めることができる。
【0028】
よって、本発明によれば、ハット型断面形状部の一方の側壁部が、他方の側壁部の湾曲率より大きな湾曲率で伸びフランジ成形となる方向へ湾曲されたプレス部品の伸びワレを低減しつつ、形状凍結性を向上できるプレス型を提供することができる。
【0029】
(5)(4)に記載されたプレス型において、
前記クッションには、前記フランジ成形部の外周側に配置された連結部を備え、当該連結部と前記シワ押さえ部とが前記ポンチを取り巻くリング状に連結され、
前記連結部又は前記ダイには、対向する前記ダイの座部又は前記連結部の座部と当接するディスタンスブロックが装着されていることを特徴とする。
【0030】
本発明においては、クッションには、フランジ成形部の外周側に配置された連結部を備え、当該連結部とシワ押さえ部とがポンチを取り巻くリング状に連結され、連結部又はダイには、対向するダイの座部又は連結部の座部と当接するディスタンスブロックが装着されているので、クッションのシワ押さえ部とダイのダイ成形部とが素材を挟持した状態で、連結部又はダイに装着されたディスタンスブロックが、対向するダイの座部又は連結部の座部と当接することができる。そのため、一方の側壁部と一方の側壁部から延びるフランジ部とを絞り成形する際、ポンチに対してクッションが上下方向で傾斜するのを防止して、クッションのシワ押さえ部とダイのダイ成形部とのクリアランスを所定値に維持することができる。したがって、一方の側壁部と一方の側壁部から延びるフランジ部の絞り成形に伴う伸びワレを、より安定して低減でき、形状凍結性を高めることができる。
【0031】
(6)(4)又は(5)に記載されたプレス型において、
前記クッション加圧装置は、シリンダケースが前記ポンチの型台に装着され、前記シリンダケースに対して伸縮するシリンダロッドが前記クッションを押圧する流体シリンダ装置であって、プレス成形完了時から前記パッドが前記天板部と離間する時まで、前記シリンダロッドの伸長を停止させるロック機構を有することを特徴とする。
【0032】
本発明においては、クッション加圧装置は、シリンダケースがポンチの型台に装着され、シリンダケースに対して伸縮するシリンダロッドがクッションを押圧する流体シリンダ装置であって、プレス成形完了時からパッドが天板部と離間する時まで、シリンダロッドの伸長を停止させるロック機構を有するので、プレス機械のロッキング機構付きのダイクッションピンを用いることなく、プレス成形完了後のプレス部品を変形させずにプレス型から離型させることができる。そのため、ロッキング機構付きのダイクッションピンを備えていない汎用的なプレス機械に、本プレス型を仕掛けることができる。したがって、プレス部品の形状凍結後の製品精度を維持しつつ、プレス成形における生産性を高めることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、ハット型断面形状部の一方の側壁部が、他方の側壁部の湾曲率より大きな湾曲率で伸びフランジ成形となる方向へ湾曲されたプレス部品の伸びワレを低減しつつ、形状凍結性を向上できるプレス成形方法及びそのプレス型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の実施形態に係るプレス成形方法によって形成するプレス部品の概略斜視図である。
【
図2】
図1に示すプレス部品の断面図であって、(A)は
図1に示すC1-C1断面図を示し、(B)は
図1に示すC2-C2断面図を示し、(C)は
図1に示すC3-C3断面図を示す。
【
図3】
図1に示すプレス部品を
図2(A)に示す断面でプレス成形するときの要部断面図であって、(A)はプレス成形途中の要部断面図を示し、(B)はプレス成形完了時の要部断面図を示す。
【
図4】
図1に示すプレス部品のA領域における板厚増減率の分布図であって、(A)は
図3に示すプレス成形方法において他方の側壁側から一方の側壁側への素材の流入を阻止したときのA領域における板厚増減率の分布図を示し、(B)は
図3に示すプレス成形方法において他方の側壁側から一方の側壁側への素材の流入が有るときのA領域における板厚増減率の分布図を示す。
【
図5】
図3に示すプレス成形方法における第1変形例の要部断面図であって、(A)は他方の側壁部の曲げ角度を小さく成形する第1工程におけるプレス成形完了時の要部断面図を示し、(B)は他方の側壁部の曲げ角度を正規の曲げ角度に成形する第2工程におけるプレス成形完了時の要部断面図を示す。
【
図6】
図3に示すプレス成形方法における第2変形例の要部平面図である。
【
図7】
図6に示すD-D断面における要部断面図である。
【
図8】
図1に示すプレス部品(C1-C1断面)をプレス成形するプレス型の成形開始時における断面図である。
【
図9】
図8に示すプレス型の成形途中時における断面図である。
【
図10】
図8に示すプレス型の成形完了時における断面図である。
【
図11】
図8に示すプレス型においてプレス部品離型後の断面図である。
【
図12】
図8に示すプレス型の変形例の成形開始時における断面図である。
【
図13】
図12に示すプレス型の成形途中時における断面図である。
【
図14】従来のハット型断面形状部を有するプレス部品の要部断面図であって、(A)は曲げ成形によるプレス成形方法の要部断面図を示し、(B)は曲げ成形したプレス部品の離型後の要部断面図を示す。
【
図15】特許文献1に記載されたプレス成形法の平面図である。
【
図16】
図15に示すプレス成形方法における成形途中の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に、本発明の実施形態に係るプレス成形方法及びプレス型について、図面を参照して詳細に説明する。はじめに、本実施形態に係るプレス成形方法によって形成するプレス部品とそのプレス成形方法について説明し、プレス成形後における板厚分布状況のCAE解析結果を説明する。次に、本プレス成形方法に使用するプレス型について説明する。
【0036】
<本プレス成形方法によって形成するプレス部品>
まず、本実施形態に係るプレス成形方法によって形成するプレス部品について、
図1、
図2を用いて説明する。
図1に、本発明の実施形態に係るプレス成形方法によって形成するプレス部品の概略斜視図を示す。
図2に、
図1に示すプレス部品の断面図であって、(A)は
図1に示すC1-C1断面図を示し、(B)は
図1に示すC2-C2断面図を示し、(C)は
図1に示すC3-C3断面図を示す。
【0037】
図1、
図2に示すように、本実施形態に係るプレス成形方法によって形成するプレス部品10は、長手方向へ連続するハット型断面形状部1を有し、当該ハット型断面形状部1の一方の側壁部11が、他方の側壁部12の湾曲率X2より大きな湾曲率X1で伸びフランジ成形となる方向へ湾曲されたプレス部品10である。本プレス部品10は、例えば、自動車の車体を構成するフロアメンバー等に適用され、その場合、素材Wに高張力鋼板を用いることが好ましい。素材Wは、例えば、引張強度が980MPa以上の高張力鋼板を使用することもできる。
【0038】
ここでは、ハット型断面形状部1の一方の側壁部11が伸びフランジ成形となる方向へ大きな湾曲率X1で湾曲し、他方の側壁部12が僅かに縮みフランジ成形となる方向に小さな湾曲率X2で湾曲しているが、必ずしもこれに限る必要はない。他方の側壁部12は、例えば、僅かに伸びフランジ成形となる方向に小さな湾曲率X2で湾曲していても良く、略直線状に延設されていても良い。なお、湾曲率X1、X2は、側壁部11、12の長手方向へ延設された湾曲面を形成する半径R1、R2の逆数の百分率であり、側壁部11、12が複数の湾曲率X1、X2の湾曲面で形成されている場合は、最大のものを意味する。
【0039】
また、ハット型断面形状部1は、天板部13と、天板部13の幅方向両端部から板内側へ折れ曲がる側壁部11、12と、側壁部11、12の先端部から板外側へ折れ曲がるフランジ部11H、12Hとを備えている。
図2(A)、(B)において、実線で示す他方の側壁部12とフランジ部12Hは、天板部13に対して正規の曲げ角度α0で曲げ成形され、仮想線で示す他方の側壁部12aとフランジ部12Haは、天板部13に対して正規の曲げ角度α0より小さい曲げ角度αで曲げ成形されている。これは、複数の工程に分けて成形するが、本プレス成形方法の変形例にて詳述する。
【0040】
また、一方の側壁部11は、天板部13の長手方向の半分程度のA領域に形成され、他方の側壁部12は、天板部13の長手方向全体のB領域に形成されているが、A領域及びB領域の範囲は、必ずしもこれに限定されるものではない。また、
図2(C)に示すように、天板部13は、長手方向の中間部にて鈍角θで板外側へ折れ曲がり、緩やかな反り形状となっているが、この反り形状についても、これに限定されるものではない。なお、後述する本プレス成形方法において、A領域は絞り成形され、B領域は曲げ成形される。
【0041】
<本プレス成形方法>
次に、本実施形態に係るプレス成形方法について、
図1~
図3を用いて説明する。
図3に、
図1に示すプレス部品を
図2(A)に示す断面でプレス成形するときの要部断面図であって、(A)はプレス成形途中の要部断面図を示し、(B)はプレス成形完了時の要部断面図を示す。
【0042】
図1~
図3に示すように、本プレス成形方法は、長手方向へ連続するハット型断面形状部1を有し、当該ハット型断面形状部1の一方の側壁部11が、他方の側壁部12の湾曲率X2より大きな湾曲率X1で伸びフランジ成形となる方向へ湾曲されたプレス部品10を成形するプレス成形方法であって、ポンチ21と、クッション22と、パッド23と、ダイ24と、クッション加圧装置25とを備え、パッド23が素材Wをポンチ21の天板成形部213に押圧し、クッション22のシワ押さえ部221とダイ24のダイ成形部241とが素材Wを挟持した状態で、ダイ24とポンチ21とが近接することによって、一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hとを絞り成形し、他方の側壁部12と他方の側壁部12から延びるフランジ部12Hとを曲げ成形するプレス成形方法である。
【0043】
ここで、ポンチ21は、ハット型断面の天板部13を形成する天板成形部213と、一方の側壁部11を形成する第1側壁成形部211と、他方の側壁部12を形成する第2側壁成形部212と、他方の側壁部12から延びるフランジ部12Hを形成するフランジ成形部212Hとを有する。また、クッション22は、ポンチ21の第1側壁成形部211と分割され、一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hを形成するシワ押さえ部221を有して、ポンチ21に対して上下動可能に形成されている。クッション22は、成形開始時には、シワ押さえ部221とポンチ21の天板成形部213とが略同一の高さとなる位置まで上昇している。そのため、パッド23が素材Wをポンチ21の天板成形部213に押圧するのと同時又は僅かに遅れて、クッション22のシワ押さえ部221とダイ24のダイ成形部241とが素材Wを挟持する。
【0044】
また、パッド23は、ポンチ21の天板成形部213に所定の押圧力P1で素材Wを押圧するように形成されている。パッド23の押圧装置26は、ダイ24を支持する型台に装着されている。また、ダイ24は、ポンチ21とクッション22とに対向し、パッド23の外周縁に沿って配置され、両側壁部11、12と両フランジ部11H、12Hとを形成するダイ成形部241を有する。また、クッション加圧装置25は、パッド23の押圧力P1以上の加圧力P2でダイ24に対してクッション22を押圧するように形成されている。なお、クッション加圧装置25は、プレス成形完了時からパッド23が天板部13から離間するまで、クッション22の作動(上昇)を停止させるロック機構を備えている。
【0045】
上記プレス成形方法によれば、長手方向へ連続するハット型断面形状部1を有し、当該ハット型断面形状部1の一方の側壁部11が他方の側壁部12の湾曲率X2より大きな湾曲率X1で伸びフランジ成形となる方向へ湾曲されたプレス部品10における一方の側壁部11の伸びワレを低減しつつ、正規形状への形状凍結性を向上できる。
【0046】
すなわち、ハット型断面の天板部13を形成する天板成形部213と、一方の側壁部11を形成する第1側壁成形部211と、他方の側壁部12を形成する第2側壁成形部212と、他方の側壁部12から延びるフランジ部12Hを形成するフランジ成形部212Hとを有するポンチ21と、第1側壁成形部211と分割され、一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hを形成するシワ押さえ部221を有して、ポンチ21に対して上下動可能に形成されたクッション22と、ポンチ21の天板成形部213に素材Wを押圧するパッド23と、ポンチ21とクッション22とに対向し、パッド23の外周縁に沿って配置され、両側壁部11、12と両フランジ部11H、12Hとを形成するダイ成形部241を有するダイ24と、パッド23の押圧力P1以上の加圧力P2でダイ24に対してクッション22を押圧するクッション加圧装置25とを備えているので、ポンチ21とパッド23とが天板部13側の素材Wを挟持し、クッション22とダイ24とが一方の側壁部11側の素材Wを挟持しつつ、ポンチ21とダイ24とが近接することによって、伸びフランジ成形となる一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hとを絞り成形することができる。また、ポンチ21とパッド23とが天板部13側の素材Wを挟持し、ポンチ21とダイ24とが近接することによって、他方の側壁部12と他方の側壁部12から延びるフランジ部12Hとを曲げ成形することができる。
【0047】
また、ポンチ21とクッション22とパッド23とダイ24とが協働して、伸びフランジ成形となる一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hとを絞り成形する初期の段階では、ポンチ21とダイ24とが、他方の側壁部12側の素材Wを殆んど曲げ成形していない。そのため、クッション加圧装置25がパッド23の押圧力P1以上の加圧力P2でクッション22をダイ24に対して押圧することによって、伸びフランジ成形となる一方の側壁部11側の素材Wがポンチ21側へ流入する流入量を抑制しつつ、他方の側壁部12側から伸びフランジ成形となる一方の側壁部11側へ素材Wを流入させることができる。また、一方の側壁部11側の素材Wは、ポンチ21側へ流入する流入量が抑制されることによって、伸びフランジ成形となる方向への伸び量も抑制させることができる。
【0048】
また、伸びフランジ成形となる一方の側壁部11側の素材Wは、ポンチ21側へ流入する流入量と伸びフランジ成形となる方向への伸び量とが抑制され、他方の側壁部12側から一方の側壁部11側への素材Wの供給を受けながら、一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hとを絞り成形することによって、一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hの伸び率が低減され、伸び率の低減に伴って引張残留応力も減少できる。その結果、伸びフランジ成形となる一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hの伸びワレを低減でき、正規形状への形状凍結性を高めることができる。
【0049】
よって、本プレス成形方法によれば、ハット型断面形状部1の一方の側壁部11が、他方の側壁部12の湾曲率X2より大きな湾曲率X1で伸びフランジ成形となる方向へ湾曲されたプレス部品10の伸びワレを低減しつつ、形状凍結性を向上できるプレス成形方法を提供することができる。
【0050】
<プレス成形後の板厚分布>
次に、プレス成形後における板厚分布状況のCAE解析結果を、
図4を用いて説明する。
図4に、
図1に示すプレス部品のA領域における板厚増減率の分布図であって、(A)は
図3に示すプレス成形方法において他方の側壁部側から一方の側壁部側への素材の流入を阻止したときのA領域における板厚増減率の分布図を示し、(B)は
図3に示すプレス成形方法において他方の側壁部側から一方の側壁部側への素材の流入が有るときのA領域における板厚増減率の分布図を示す。
【0051】
なお、
図4では、板厚増減率をドットの分布密度によって表示している。ドットの分布密度が高い領域は、板厚減少率が大きく、ドットの分布密度が低い領域は、板厚増加率が大きい。ここでは、板厚減少率が10%を超過した場合、伸びワレが発生したと判断する。伸びワレが発生した箇所は、白抜きに表示されている。また、板厚増加率が10%を超過した場合、シワが発生したと判断する。ここでは、シワは発生していない。
【0052】
図4(A)に示すように、
図3に示すプレス成形方法において他方の側壁部12側から一方の側壁部11側への素材Wの流入を阻止したときには、伸びフランジ成形となる一方の側壁部11(フランジ部を含む)のA領域において、複数の箇所で板厚減少率が10%を超過し、伸びワレが発生している。これに対して、
図4(B)に示すように、
図3に示すプレス成形方法において他方の側壁部12側から一方の側壁部11側への素材Wの流入が有るときには、伸びフランジ成形となる一方の側壁部11(フランジ部を含む)のA領域において、板厚減少率が10%を超過することがなく、伸びワレは発生していない。
【0053】
よって、
図4に示す板厚増減率の分布状況からも、本プレス成形方法によれば、ハット型断面形状部1の一方の側壁部11が、他方の側壁部12の湾曲率X2より大きな湾曲率X1で伸びフランジ成形となる方向へ湾曲されたプレス部品10の伸びワレを低減しつつ、形状凍結性を向上できることを推認できる。
【0054】
<本プレス成形方法の変形例>
次に、本プレス成形方法の変形例について、
図5~
図7を用いて説明する。
図5、
図3に示すプレス成形方法における第1変形例の要部断面図であって、(A)は他方の側壁部の曲げ角度を小さく成形する第1工程におけるプレス成形完了時の要部断面図を示し、(B)は他方の側壁部の曲げ角度を正規の曲げ角度に成形する第2工程におけるプレス成形完了時の要部断面図を示す。
図6に、
図3に示すプレス成形方法における第2変形例の要部平面図を示す。
図7に、
図6に示すD-D断面における要部断面図を示す。
【0055】
(本プレス成形方法における第1変形例)
本プレス成形方法は、本発明の要旨を変更しない範囲であれば、種々の形態に変更することが可能である。例えば、本プレス成形方法における第1変形例では、
図5に示すように、他方の側壁部12は、天板部13に対する曲げ角度αを正規の曲げ角度α0より小さく成形し、後工程にて正規の曲げ角度αに成形する。
【0056】
ここでは、
図5(A)に示すプレス型20Bを備えた第1工程において、一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hとを絞り成形すると同時に、他方の側壁部12は、天板部13に対する曲げ角度αを正規の曲げ角度α0より小さく成形する。また、
図5(B)に示すプレス型30を備えた第2工程において、他方の側壁部12は、天板部13に対する正規の曲げ角度α0に成形する。
【0057】
なお、第1工程のプレス型20Bは、前述した本プレス成形方法に使用するプレス型20と同様に、ポンチ21B、クッション22、パッド23、ダイ24B、クッション加圧装置25とを備えている。ポンチ21Bとダイ24Bは、天板部13に対して曲げ角度αで折り曲げた他方の側壁部12aとフランジ部12Haとに沿って形成されている。第2工程のプレス型30は、ハット型断面に形成されたポンチ31と、ポンチ31に素材Wを押圧するパッド33と、他方の側壁部12とそのフランジ部12Hを形成するダイ32とを備えている。
【0058】
この場合、一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hとを絞り成形するときには、他方の側壁部12は、天板部13に対する曲げ角度αを正規の曲げ角度α0より小さく成形するので、一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hとを絞り成形する際、他方の側壁部12側の素材Wがパッド23とポンチ21との隙間を通過しやすくなり、他方の側壁部12側から伸びフランジ成形となる一方の側壁部11側へ素材Wをより多く流入させることができる。その結果、一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hとを絞り成形するときの伸びワレをより一層低減でき、形状凍結性をより一層高めることができる。
【0059】
(本プレス成形方法における第2変形例)
本プレス成形方法における第2変形例では、
図6、
図7に示すように、パッド23は、一方の側壁部11における伸びフランジ成形の伸び率β(β1)が大きい領域Y1と当該伸び率β(β2)が小さい領域Y2とに対応して複数(例えば、2つ)に分割し、伸び率β(β1)が大きい領域Y1に対応するパッド23aの押圧力P11は、伸び率β(β2)が小さい領域Y2に対応するパッド23bの押圧力P12より小さい。なお、本プレス成形方法における第2変形例に使用するプレス型20Cは、押圧力P11、P12に対応して異なるパッド押圧装置26a、26bを備えている。また、パッド23a、23bの押圧力P11、P12は、ポンチ21の天板成形部213に対する単位面積当たりの荷重を意味ずる。
【0060】
この場合、一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hとを絞り成形する際、一方の側壁部11の伸びフランジ成形の伸び率β1(β)が大きい領域Y1において、パッド23aの押圧力P11が相対的に小さくなるので、パッド23aとポンチ21の天板成形部213との間に挟持された素材Wの摩擦力が減少して、他方の側壁部12側から一方の側壁部11側へ流入する素材Wの流入量γ1をより一層増加させることができる。そのため、絞り成形時において、伸びフランジ成形の伸び率β1(β)が高い領域Y1の一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hの伸びワレをより一層低減でき、形状凍結性をより一層高めることができる。
【0061】
また、一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hとを絞り成形する際、一方の側壁部11の伸びフランジ成形の伸び率β2(β)が小さい領域Y2において、パッド23bの押圧力P12が相対的に大きくなるので、パッド23bとポンチ21の天板成形部213との間に挟持された素材Wの摩擦力が増加して、他方の側壁部12側から一方の側壁部11側へ流入する素材Wの流入量γ2を減少させることができる。そのため、他方の側壁部12と他方の側壁部12から延びるフランジ部12Hとにおいて、素材Wの流入に伴う変形を抑制でき、形状凍結性を向上させることができる。
【0062】
<本プレス型>
次に、本他の実施形態に係るプレス型について、
図1、
図8~
図11を用いて説明する。
図8に、
図1に示すプレス部品(C1-C1断面)をプレス成形するプレス型の成形開始時における断面図を示す。
図9に、
図8に示すプレス型の成形途中時における断面図を示す。
図10に、
図8に示すプレス型の成形完了時における断面図を示す。
図11に、
図8に示すプレス型においてプレス部品離型後の断面図を示す。
【0063】
本他の実施形態に係るプレス型20は、
図1、
図8~
図11に示すように、長手方向へ連続するハット型断面形状部1を有し、当該ハット型断面形状部1の一方の側壁部11が、他方の側壁部12の湾曲率X2より大きな湾曲率X1で伸びフランジ成形となる方向へ湾曲されたプレス部品10を成形するプレス型20であって、
ハット型断面の天板部13を形成する天板成形部213と、一方の側壁部11を形成する第1側壁成形部211と、他方の側壁部12を形成する第2側壁成形部212と、他方の側壁部12から延びるフランジ部12Hを形成するフランジ成形部212Hとを有するポンチ21と、
第1側壁成形部211と分割され、一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hを形成するシワ押さえ部221を有して、ポンチ21に対して上下動可能に形成されたクッション22と、
ポンチ21の天板成形部213に素材Wを押圧するパッド23と、
ポンチ21とクッション22とに対向し、パッド23の外周縁に沿って配置され、両側壁部11、12と両フランジ部11H、12Hとを形成するダイ成形部241を有するダイ24と、
パッド23の押圧力P1以上の加圧力P2で前記ダイ24に対してクッション22を押圧するクッション加圧装置25とを備え、
パッド23が素材Wをポンチ21の天板成形部213に押圧し、クッション22のシワ押さえ部221とダイ24のダイ成形部241とが素材Wを挟持した状態で、ダイ24とポンチ21とが近接することによって、一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hとを絞り成形し、他方の側壁部12と他方の側壁部12から延びるフランジ部12Hとを曲げ成形するプレス型20である。
【0064】
ここでは、本プレス型20のポンチ21、クッション22、パッド23、ダイ24、クッション加圧装置25について、本プレス成形方法にて既に説明した内容と共通する点は、重複するため、その説明を割愛し、本プレス成形方法にて説明していない点を中心に説明する。
【0065】
本プレス型20には、ポンチ21を支持する型台28と、ダイ24を支持する型台29とを備えている。また、クッション加圧装置25は、クッション22をダイ24側に加圧する加圧ピン251と、加圧ピン251を上下動可能に支持する支持プレート252とを備えている。
【0066】
また、加圧ピン251と支持プレート252は、ポンチ21の型台28に上下動可能に収納されている。ポンチ21の型台28には、下降位置の支持プレート252を受け止める落下止め253が装着されている。支持プレート252は、プレス機械のダイクッションピン3と当接して、ダイクッションピン3の加圧力を加圧ピン251に伝達するように形成されている。加圧ピン251は、拡径された頭部251Tを有し、支持プレート252の下降位置にて、頭部251Tが型台28の受座281に収容される。なお、プレス機械は、ダイクッションピン3を下死点で一時停止させるロッキング機構を備えている。
【0067】
また、ダイ24には、他方の側壁部12と他方の側壁部12から延びるフランジ部12Hを形成するダイ成形部241の位置に鋼材の曲げ刃24Mが挿入されている。また、ダイ24の型台29には、パッド23をポンチ21側に押圧するパッド23の押圧装置26が装着されている。パッド23の押圧装置26は、例えば、窒素ガスを封入したシリンダケースからシリンダロッド261が上下方向に伸縮するガス加圧シリンダで構成されている。また、パッド23の押圧装置26のシリンダロッド261は、成形開始時にパッド23がダイ成形部241より先行して素材Wに当接するように伸長している。
【0068】
本プレス型20は、以下のように作動する。はじめに、
図8に示すように、プレス機械のダイクッションピン3を作動させて、クッション加圧装置25の加圧ピン251を上昇位置まで上昇させ、クッション22のシワ押さえ部221をポンチ21の天板成形部213と略同一の高さまで移動させる。そして、シワ押さえ部221と天板成形部213との上に、素材Wを載置させ、ダイ24とポンチ21とを近接させることによって、パッド23が素材Wをポンチ21の天板成形部213に所定の押圧力P1で押圧する。
【0069】
次に、
図9に示すように、ダイ24とポンチ21とを更に近接させて、ダイ24のダイ成形部241とクッション22のシワ押さえ部221とが一方の側壁部11側の素材Wを所定の加圧力P2で挟持した状態で、一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Tとを絞り成形する。この絞り成形初期の段階では、ポンチ21の第2側壁成形部212及びフランジ成形部212Hに対するダイ成形部241の隙間が大きく、他方の側壁部12側の素材Wは、僅かに曲げ成形された状態である。また、ダイ24のダイ成形部241とクッション22のシワ押さえ部221とが一方の側壁部11側の素材Wを挟持する加圧力P2は、パッド23が素材Wをポンチ21の天板成形部213に押圧する押圧力P1より大きい。
【0070】
そのため、伸びフランジ成形となる一方の側壁部11側の素材Wがポンチ21側へ流入する流入量を抑制しつつ、他方の側壁部12側から伸びフランジ成形となる一方の側壁部11側へ素材Wを流入させることができる。また、一方の側壁部11側の素材Wは、ポンチ21側へ流入する流入量が抑制されることによって、伸びフランジ成形となる方向への伸び量も抑制させることができる。
【0071】
次に、
図10に示すように、ダイ24とポンチ21とを下死点の状態まで近接させて、一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hとから成るA領域の絞り成形を完了させ、他方の側壁部12と他方の側壁部12から延びるフランジ部12Hから成るB領域の曲げ成形を完了させる。この下死点の状態で、プレス機械のダイクッションピン3は、ロッキング機構が作動して一時的に上昇を停止する。
【0072】
次に、
図11に示すように、ダイ24がポンチ21から離間して、上死点に移動すると、ダイクッションピン3のロッキング機構が解除されて、加圧ピン251を上昇位置まで移動させる。このとき、クッション22は、シワ押さえ部221に当接された成形完了後のプレス部品10を、ポンチ21から離型させる。なお、ポンチ21にリフト装置4を装着させ、リフト装置4のリフトピン41が他方の側壁部12から延びるフランジ部12Hを持ち上げることによって、成形完了後のプレス部品10を、変形させずにバランス良く、ポンチ21から離型させることができる。
【0073】
以上のように、本プレス型20では、パッド23が素材Wをポンチ21の天板成形部213に押圧し、クッション22のシワ押さえ部221とダイ24のダイ成形部241とが素材Wを挟持した状態で、ダイ24とポンチ21とが近接することによって、一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hとを絞り成形し、他方の側壁部12と他方の側壁部12から延びるフランジ部12Hとを曲げ成形する。そのため、他方の側壁部12側から一方の側壁部11側への素材Wの供給を受けながら、一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hとを絞り成形することによって、一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hの伸び率が低減され、伸び率の低減に伴って引張残留応力も減少できる。その結果、伸びフランジ成形となる一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hの伸びワレを低減でき、形状凍結性を高めることができる。
【0074】
よって、本プレス型20によれば、ハット型断面形状部1の一方の側壁部11が、他方の側壁部12の湾曲率X2より大きな湾曲率X1で伸びフランジ成形となる方向へ湾曲されたプレス部品10の伸びワレを低減しつつ、形状凍結性を向上できるプレス型20を提供することができる。
【0075】
また、本プレス型20においては、
図8~
図11に示すように、クッション22には、フランジ成形部212Hの外周側に配置された連結部222を備え、当該連結部222とシワ押さえ部221とがポンチ21を取り巻くリング状に連結され、連結部222又はダイ24には、対向するダイ24の座部242又は連結部222の座部223と当接するディスタンスブロック27が装着されていることが好ましい。また、クッション22に対するクッション加圧装置25の加圧位置(加圧ピン251の位置)は、シワ押さえ部221の位置と連結部222の位置との両方に設けることが好ましい。
【0076】
この場合、クッション22のシワ押さえ部221とダイ24のダイ成形部241とが素材Wを挟持した状態で、連結部222又はダイ24に装着されたディスタンスブロック27が、対向するダイ24の座部242又は連結部222の座部223と当接することができる。そのため、一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hとを絞り成形する際、ポンチ21に対してクッション22が上下方向で傾斜するのを防止して、クッション22のシワ押さえ部221とダイ24のダイ成形部241とのクリアランスを所定値に維持することができる。したがって、一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hの絞り成形に伴う伸びワレを、より安定して低減でき、形状凍結性を高めることができる。
【0077】
<本プレス型の変形例>
次に、本プレス型の変形例について、
図12、
図13を用いて説明する。
図12に、
図8に示すプレス型の変形例の成形開始時における断面図を示す。
図13に、
図12に示すプレス型の成形途中時における断面図を示す。
【0078】
本プレス型20は、本発明の要旨を変更しない範囲であれば、種々の形態に変更することが可能である。例えば、上述したクッション加圧装置25は、クッション22をダイ24側に加圧する加圧ピン251と、加圧ピン251を上下動可能に支持する支持プレート252とを備え、支持プレート252は、プレス機械のダイクッションピン3と当接して、ダイクッションピン3の加圧力を加圧ピン251に伝達するように形成されている。しかし、クッション加圧装置25は、必ずしも、これに限定される必要はない。
【0079】
例えば、
図12、
図13に示すように、クッション加圧装置25Dは、シリンダケース252Dがポンチ21Dの型台28Dに装着され、シリンダケース252Dに対して伸縮するシリンダロッド251Dがクッション22Dを押圧する流体シリンダ装置25Dであって、プレス成形完了時からパッド23が天板部13と離間する時まで、シリンダロッド251Dの伸長を停止させるロック機構25DRを有するものでも良い。
【0080】
この場合、プレス機械のロッキング機構付きのダイクッションピン3を用いることなく、プレス成形完了後のプレス部品10を変形させずにプレス型20Dから離型させることができる。そのため、ロッキング機構付きのダイクッションピン3を備えていない汎用的なプレス機械に、本プレス型20Dを仕掛けることができる。したがって、プレス部品10の形状凍結後の製品精度を維持しつつ、プレス成形における生産性を高めることができる。
【0081】
なお、流体シリンダ装置25Dをクッション22Dに対してバランス良く配置することによって、一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hとを絞り成形する際、ポンチ21に対してクッション22が上下方向で傾斜するのを防止して、クッション22のシワ押さえ部221とダイ24のダイ成形部241とのクリアランスを所定値に維持することが好ましい。
【0082】
また、クッション22Dには、前述のように、フランジ成形部212Hの外周側に配置された連結部222を備え、当該連結部222とシワ押さえ部221Dとがポンチ21を取り巻くリング状に連結され、連結部222又はダイ24には、対向するダイ24の座部242又は連結部222の座部223と当接するディスタンスブロック27が装着されていても良い。この場合も、クッション22Dに対するクッション加圧装置25Dの加圧位置(シリンダロッド251Dの位置)は、シワ押さえ部221Dの位置と連結部222の位置に設けることが好ましい。これによって、一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hの絞り成形に伴う伸びワレを、より安定して低減でき、形状凍結性を高めることができる。
【0083】
<作用効果>
以上、詳細に説明したように、本実施形態のプレス成形方法によれば、ハット型断面の天板部13を形成する天板成形部213と、一方の側壁部11を形成する第1側壁成形部211と、他方の側壁部12を形成する第2側壁成形部212と、他方の側壁部12から延びるフランジ部12Hを形成するフランジ成形部212Hとを有するポンチ21、21B、21Dと、第1側壁成形部211と分割され、一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hを形成するシワ押さえ部221、221Dを有して、ポンチ21、21B、21Dに対して上下動可能に形成されたクッション22、22Dと、ポンチ21、21B、21Dの天板成形部213に素材Wを押圧するパッド23、23Cと、ポンチ21、21B、21Dとクッション22、22Dとに対向し、パッド23、23Cの外周縁に沿って配置され、両側壁部11、12と両フランジ部11H、12Hとを形成するダイ成形部241を有するダイ24、24Bと、パッド23、23Cの押圧力P1以上の加圧力P2でダイ24、24Bに対してクッション22、22Dを押圧するクッション加圧装置25、25Dとを備え、パッド23、23Cが素材Wをポンチ21、21B、21Dの天板成形部213に押圧し、クッション22、22Dのシワ押さえ部221とダイ24、24Bのダイ成形部241とが素材Wを挟持した状態で、ダイ24、24Bとポンチ21、21B、21Dとが近接することによって、一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hとを絞り成形し、他方の側壁部12と他方の側壁部12から延びるフランジ部12Hとを曲げ成形するので、長手方向へ連続するハット型断面形状部1を有し、当該ハット型断面形状部1の一方の側壁部11が他方の側壁部12の湾曲率X2より大きな湾曲率X1で伸びフランジ成形となる方向へ湾曲されたプレス部品10における一方の側壁部11の伸びワレを低減しつつ、正規形状への形状凍結性を向上できる。
【0084】
すなわち、ハット型断面の天板部13を形成する天板成形部213と、一方の側壁部11を形成する第1側壁成形部211と、他方の側壁部12を形成する第2側壁成形部212と、他方の側壁部12から延びるフランジ部12Hを形成するフランジ成形部212Hとを有するポンチ21、21B、21Dと、第1側壁成形部211と分割され、一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hを形成するシワ押さえ部221を有して、ポンチ21、21B、21Dに対して上下動可能に形成されたクッション22、22Dと、ポンチ21、21B、21Dの天板成形部213に素材Wを押圧するパッド23、23Cと、ポンチ21、21B、21Dとクッション22、22Dとに対向し、パッド23、23Cの外周縁に沿って配置され、両側壁部11、12と両フランジ部11H、12Hとを形成するダイ成形部241を有するダイ24、24Bと、パッド23、23Cの押圧力P1以上の加圧力P2でダイ24、24Bに対してクッション22、22Dを押圧するクッション加圧装置25、25Dとを備えているので、ポンチ21、21B、21Dとパッド23、23Cとが天板部13側の素材Wを挟持し、クッション22、22Dとダイ24、24Bとが一方の側壁部11側の素材Wを挟持しつつ、ポンチ21、21B、21Dとダイ24、24Bとが近接することによって、伸びフランジ成形となる一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hとを絞り成形することができる。また、ポンチ21、21B、21Dとパッド23、23Cとが天板部13側の素材Wを挟持し、ポンチ21、21B、21Dとダイ24、24Bとが近接することによって、他方の側壁部12と他方の側壁部12から延びるフランジ部12Hとを曲げ成形することができる。
【0085】
また、ポンチ21、21B、21Dとクッション22、22Dとパッド23、23Cとダイ24、24Bとが協働して、伸びフランジ成形となる一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hとを絞り成形する初期の段階では、ポンチ21、21B、21Dとダイ24、24Bとが、他方の側壁部12側の素材Wを殆んど曲げ成形していない。そのため、クッション加圧装置25、25Dがパッド23、23Cの押圧力P1以上の加圧力P2でクッション22、22Dをダイ24、24Bに対して押圧することによって、伸びフランジ成形となる一方の側壁部11側の素材Wがポンチ21側へ流入する流入量を抑制しつつ、他方の側壁部12側から伸びフランジ成形となる一方の側壁部11側へ素材Wを流入させることができる。
【0086】
また、パッド23、23Cが素材Wをポンチ21、21B、21Dの天板成形部213に押圧し、クッション22、22Dのシワ押さえ部221とダイ24、24Bのダイ成形部241とが素材Wを挟持した状態で、ダイ24、24Bとポンチ21、21B、21Dとが近接することによって、一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hとを絞り成形し、他方の側壁部12と他方の側壁部12から延びるフランジ部12Hとを曲げ成形するので、他方の側壁部12側から一方の側壁部11側への素材Wの供給を受けながら、一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hとを絞り成形することによって、一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hの伸び率が低減され、伸び率の低減に伴って引張残留応力も減少できる。その結果、伸びフランジ成形となる一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hの伸びワレを低減でき、正規形状への形状凍結性を高めることができる。
【0087】
よって、本実施形態によれば、ハット型断面形状部1の一方の側壁部11が、他方の側壁部12の湾曲率X2より大きな湾曲率X1で伸びフランジ成形となる方向へ湾曲されたプレス部品10の伸びワレを低減しつつ、形状凍結性を向上できるプレス成形方法を提供することができる。
【0088】
また、本実施形態によれば、他方の側壁部12は、天板部13に対する曲げ角度αを正規の曲げ角度α0より小さく成形し、後工程にて前記正規の曲げ角度αに成形するので、一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hとを絞り成形するときには、他方の側壁部12は、天板部13に対する曲げ角度αを正規の曲げ角度α0より小さく成形する。そのため、一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hとを絞り成形する際、他方の側壁部12側の素材Wがパッド23とポンチ21Bの天板成形部213との隙間を通過しやすくなり、他方の側壁部12側から伸びフランジ成形となる一方の側壁部11側へ素材Wをより多く流入させることができる。その結果、一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hとを絞り成形するときの伸びワレをより一層低減でき、形状凍結性をより一層高めることができる。
【0089】
また、本実施形態によれば、パッド23Cは、一方の側壁部11における伸びフランジ成形の伸び率β(β1)が大きい領域Y1と当該伸び率β(β2)が小さい領域Y2とに対応して複数に分割し、伸び率β(β1)が大きい領域Y1に対応するパッド23aの押圧力P11は、伸び率β(β2)が小さい領域Y2に対応するパッド23bの押圧力P12より小さいので、一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hとを絞り成形する際、一方の側壁部11の伸び率β1(β)が大きい領域Y1において、他方の側壁部12側から一方の側壁部11側へ流入する素材Wの流入量γ1をより一層増加させることができる。そのため、絞り成形時において、伸びフランジ成形の伸び率β1(β)が大きい領域Y1の一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hの伸びワレをより一層低減でき、形状凍結性をより一層高めることができる。
【0090】
また、一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hとを絞り成形する際、一方の側壁部11の伸び率β2(β)が小さい領域Y2において、パッド23bの押圧力P12が相対的に大きくなるので、他方の側壁部12側から一方の側壁部11側へ流入する素材Wの流入量γ2を減少させることができる。そのため、他方の側壁部12と他方の側壁部12から延びるフランジ部12Hとにおいて、素材Wの流入に伴う変形を抑制でき、形状凍結性を向上させることができる。
【0091】
本他の実施形態に係るプレス型20、20B、20C、20Dによれば、ハット型断面の天板部13を形成する天板成形部213と、一方の側壁部11を形成する第1側壁成形部211と、他方の側壁部12を形成する第2側壁成形部212と、他方の側壁部12から延びるフランジ部12Hを形成するフランジ成形部212Hとを有するポンチ21、21B、21Dと、第1側壁成形部211と分割され、一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hを形成するシワ押さえ部221を有して、ポンチ21、21B、21Dに対して上下動可能に形成されたクッション22、22Dと、ポンチ21、21B、21Dの天板成形部213に素材Wを押圧するパッド23、23Cと、ポンチ21、21B、21Dとクッション22、22Dとに対向し、パッド23、23Cの外周縁に沿って配置され、両側壁部11、12と両フランジ部11H、12Hとを形成するダイ成形部241を有するダイ24、24Bと、パッド23、23Cの押圧力P1以上の加圧力P2でダイ24、24Bに対してクッション22、22Dを押圧するクッション加圧装置25、25Dとを備え、パッド23、23Cが素材Wをポンチ21、21B、21Dの天板成形部213に押圧し、クッション22、22Dのシワ押さえ部221とダイ24、24Bのダイ成形部241とが素材Wを挟持した状態で、ダイ24、24Bとポンチ21、21B、21Dとが近接することによって、一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hとを絞り成形し、他方の側壁部12と他方の側壁部12から延びるフランジ部12Hとを曲げ成形するので、長手方向へ連続するハット型断面形状部1を有し、当該ハット型断面形状部1の一方の側壁部11が他方の側壁部12の湾曲率X2より大きな湾曲率X1で伸びフランジ成形となる方向へ湾曲されたプレス部品10における一方の側壁部11の伸びワレを低減しつつ、正規形状への形状凍結性を向上できる。
【0092】
すなわち、ハット型断面の天板部13を形成する天板成形部213と、一方の側壁部11を形成する第1側壁成形部211と、他方の側壁部12を形成する第2側壁成形部212と、他方の側壁部12から延びるフランジ部12Hを形成するフランジ成形部212Hとを有するポンチ21、21B、21Dと、第1側壁成形部211と分割され、一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hを形成するシワ押さえ部221、221Dを有して、ポンチ21、21B、21Dに対して上下動可能に形成されたクッション22、22Dと、ポンチ21、21B、21Dの天板成形部213に素材Wを押圧するパッド23、23Cと、ポンチ21、21B、21Dとクッション22、22Dとに対向し、パッド23、23Cの外周縁に沿って配置され、両側壁部11、12と両フランジ部11H、12Hとを形成するダイ成形部241を有するダイ24、24Bと、パッド23、23Cの押圧力P1以上の加圧力P2でダイ24、24Bに対してクッション22、22Dを押圧するクッション加圧装置25、25Dとを備えているので、ポンチ21、21B、21Dとパッド23、23Cとが天板部13側の素材Wを挟持し、クッション22、22Dとダイ24、24Bとが一方の側壁部11側の素材Wを挟持しつつ、ポンチ21、21B、21Dとダイ24、24Bとが近接することによって、伸びフランジ成形となる一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hとを絞り成形することができる。また、ポンチ21、21B、21Dとパッド23、23Cとが天板部13側の素材Wを挟持し、ポンチ21、21B、21Dとダイ24、24Bとが近接することによって、他方の側壁部12と他方の側壁部12から延びるフランジ部12Hとを曲げ成形することができる。
【0093】
また、ポンチ21、21B、21Dとクッション22、22Dとパッド23、23Cとダイ24、24Bとが協働して、伸びフランジ成形となる一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hとを絞り成形する初期の段階では、ポンチ21、21B、21Dとダイ24、24Bとが、他方の側壁部12側の素材Wを殆んど曲げ成形していない。そのため、クッション加圧装置25、25Dがパッド23、23Cの押圧力P1以上の加圧力P2でクッション22、22Dをダイ24、24Bに対して押圧することによって、伸びフランジ成形となる一方の側壁部11側の素材Wがポンチ21、21B、21D側へ流入する流入量を抑制しつつ、他方の側壁部12側から伸びフランジ成形となる一方の側壁部11側へ素材Wを流入させることができる。
【0094】
また、パッド23、23Cが素材Wをポンチ21、21B、21Dの天板成形部213に押圧し、クッション22、22Dのシワ押さえ部221とダイ24、24Bのダイ成形部241とが素材Wを挟持した状態で、ダイ24、24Bとポンチ21、21B、21Dとが近接することによって、一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hとを絞り成形し、他方の側壁部12と他方の側壁部12から延びるフランジ部12Hとを曲げ成形するので、他方の側壁部12側から一方の側壁部11側への素材Wの供給を受けながら、一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hとを絞り成形することによって、一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hの伸び率が低減され、伸び率の低減に伴って引張残留応力も減少できる。その結果、伸びフランジ成形となる一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hの伸びワレを低減でき、正規形状への形状凍結性を高めることができる。
【0095】
よって、本他の実施形態によれば、ハット型断面形状部1の一方の側壁部11が、他方の側壁部12の湾曲率X2より大きな湾曲率X1で伸びフランジ成形となる方向へ湾曲されたプレス部品10の伸びワレを低減しつつ、形状凍結性を向上できるプレス型20、20B、20C、20Dを提供することができる。
【0096】
また、本他の実施形態によれば、クッション22には、フランジ成形部212Hの外周側に配置された連結部222を備え、当該連結部222とシワ押さえ部221とがポンチ21を取り巻くリング状に連結され、連結部222又はダイ24、24Bには、対向するダイ24、24Bの座部242又は連結部222の座部223と当接するディスタンスブロック27が装着されているので、クッション22のシワ押さえ部221とダイ24、24Bのダイ成形部241とが素材Wを挟持した状態で、連結部222又はダイ24、24Bに装着されたディスタンスブロック27が、対向するダイ24、24Bの座部242又は連結部222の座部223と当接することができる。そのため、一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hとを絞り成形する際、ポンチ21、21Bに対してクッション22が上下方向で傾斜するのを防止して、クッション22のシワ押さえ部221とダイ24、24Bのダイ成形部241とのクリアランスを所定値に維持することができる。したがって、一方の側壁部11と一方の側壁部11から延びるフランジ部11Hの絞り成形に伴う伸びワレを、より安定して低減でき、形状凍結性を高めることができる。
【0097】
また、本他の実施形態によれば、クッション加圧装置25Dは、シリンダケース252Dがポンチ21Dの型台28Dに装着され、シリンダケース252Dに対して伸縮するシリンダロッド251Dがクッション22Dを押圧する流体シリンダ装置25Dであって、プレス成形完了時からパッド23が天板部13と離間する時まで、シリンダロッド251Dの伸長を停止させるロック機構25DRを有するので、プレス機械のロッキング機構付きのダイクッションピン3を用いることなく、プレス成形完了後のプレス部品10を変形させずにプレス型20Dから離型させることができる。そのため、ロッキング機構付きのダイクッションピン3を備えていない汎用的なプレス機械に、本プレス型20Dを仕掛けることができる。したがって、プレス部品10の形状凍結後の製品精度を維持しつつ、プレス成形における生産性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、長手方向へ連続するハット型断面形状部を有し、当該ハット型断面形状部の一方の側壁部が、他方の側壁部の湾曲率より大きな湾曲率で伸びフランジ成形となる方向へ湾曲されたプレス部品を成形するプレス成形方法及びそのプレス型として利用できる。
【符号の説明】
【0099】
1 ハット型断面形状部
10 プレス部品
11、12、12a 側壁部
11H、12H、12Ha フランジ部
13 天板部
20、20B、20C、20D プレス型
21、21B、21D ポンチ
22、22D クッション
23、23C、23a、23b パッド
24、24B ダイ
25、25D クッション加圧装置
25D 流体シリンダ装置
25DR ロック機構
27 ディスタンスブロック
28、28D 型台
211 第1側壁成形部
212 第2側壁成形部
213 天板成形部
212H フランジ成形部
221、221D シワ押さえ部
222 連結部
223 座部
241 ダイ成形部
242 座部
251D シリンダロッド
252D シリンダケース
P1、P11、P12 押圧力
P2 加圧力
W 素材
X1、X2 湾曲率
Y1、Y2 領域
α、α0 曲げ角度
β、β1、β2 伸び率