(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179921
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 19/04 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
F04D19/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092863
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149009
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 稔久
(72)【発明者】
【氏名】板東 龍矢
【テーマコード(参考)】
3H131
【Fターム(参考)】
3H131AA07
3H131CA31
3H131CA36
(57)【要約】
【課題】圧力損失を低減することが可能な真空ポンプを提供すること。
【解決手段】真空ポンプ1は、ハウジング2と、排気管7と、ロータ円筒部23と、ステータ円筒部6と、を備える。排気管7は、ハウジング2の側面に配置され、ハウジング2に吸引された気体を排出する。ステータ円筒部6は、ハウジング2に収納され、ロータ円筒部23に対向して配置されている。ステータ円筒部6の一部が、回転軸A1の方向において、排気管7と重なるように配置されている。排気管7は、気体の入口側の第1端31と、出口側の第2端32と、を有する。排気管7は、第1端31から第2端32の方向に、排気管7と重なるように配置されたステータ円筒部23の一部と対向して配置された対向部35を有する。対向部35は、排気管7の内径dが、第1端31から第2端32に向かって大きくなる形状を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を吸引する吸気口を有するハウジングと、
前記ハウジングの側面に配置され、前記ハウジングに吸引された気体を排出する排気管と、
前記ハウジングに収納され、回転軸を中心に回転するロータ円筒部と、
前記ハウジングに収納され、前記ロータ円筒部に対向して配置されたステータ円筒部と、を備え、
前記ステータ円筒部の一部が、前記回転軸の方向において、前記排気管と重なるように配置され、
前記排気管は、気体の入口側の第1端と、出口側の第2端と、を有し、
前記排気管は、前記第1端から前記第2端の方向に、前記排気管と重なるように配置された前記ステータ円筒部の一部と対向して配置された対向部を有し、
前記対向部は、前記排気管の内径が、前記第1端から前記第2端に向かって大きくなる形状を有する、
真空ポンプ。
【請求項2】
前記対向部は、前記排気管の内径が、前記第1端から前記第2端に向かって大きくなる傾斜面を有する、請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項3】
前記傾斜面は、前記第1端から形成されている、
請求項2に記載の真空ポンプ。
【請求項4】
前記対向部は、前記第1端と前記傾斜面との間に、前記排気管の内径が一定となる平面を有する、
請求項2に記載の真空ポンプ。
【請求項5】
前記傾斜面と、前記回転軸に対して垂直であって前記傾斜面の前記ハウジング側の端を通る面とのなす角度は、45度未満である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の真空ポンプ。
【請求項6】
前記回転軸に沿った方向において、前記対向部の前記吸気口と反対側の端の位置は、前記ステータ円筒部の前記吸気口と反対側の端の位置と一致している、
請求項1~4のいずれかに記載の真空ポンプ。
【請求項7】
前記排気管は、内側に前記対向部が配置された排気管本体を更に有し、
前記対向部は、前記排気管本体と別体である、
請求項1~4のいずれかに記載の真空ポンプ。
【請求項8】
前記排気管本体は、前記ハウジングに固定され、
前記対向部は、前記ステータ円筒部に固定される、
請求項7に記載の真空ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置等の分野において、高真空雰囲気にするために真空ポンプが用いられて居る(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に示す真空ポンプには、気体を吸引する吸引口を有するハウジングと、吸引した気体をハウジングから排気する排気管が設けられている。ハウジングには、吸気口側に配置されたタービンポンプ部と、排気管側に配置されたドラッグポンプ部が収納されている。ハウジング内の気体は排気管に流入して排気される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ハウジングから気体が流入する排気管の流入口にドラッグポンプ部が重なっているため、排気管を流れる気体が、ドラッグポンプ部の外側において渦となる場合があった。渦が発生すると、圧力損失が発生して排気性能が悪化することがあった。
【0006】
本発明の課題は、渦発生による圧力損失を低減することが可能な真空ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る真空ポンプは、ハウジングと、排気管と、ロータ円筒部と、ステータ円筒部と、を備える。ハウジングは、気体を吸引する吸気口を有する。排気管は、ハウジングの側面に配置され、ハウジングに吸引された気体を排出する。ロータ円筒部は、ハウジングに収納され、回転軸を中心に回転する。ステータ円筒部は、ハウジングに収納され、ロータ円筒部に対向して配置されている。ステータ円筒部の一部が、回転軸の方向において、排気管と重なるように配置されている。排気管は、気体の入口側の第1端と、出口側の第2端と、を有する。排気管は、第1端から第2端の方向に、排気管と重なるように配置されたステータ円筒部の一部と対向して配置された対向部を有する。対向部は、排気管の内径が、第1端から第2端に向かって大きくなる形状を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、渦発生による圧力損失を低減することが可能な真空ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態にかかる真空ポンプの断面図である。
【
図2】(a)真空ポンプの排気口近傍の拡大断面図である、(b)真空ポンプの排気口を示す模式図である。
【
図3】実施形態にかかる真空ポンプの排気管近傍の拡大断面図である。
【
図4】
図2(b)に筒部の形状を追加した図である。
【
図5】(a)実施形態にかかる排気管を第1端側から視た模式的な斜視図である、(b)排気管の対向部の形状を示す斜視図である、(c)対向部の形状を示す側面図である。
【
図6】(a)
図3に空気の流れを示す流線を追加した図である、(b)対向部が設けられていない排気管を用いた従来の真空ポンプにおける流線を示した図である。
【
図7】実施形態の変形例における真空ポンプの部分拡大断面図である。
【
図8】(a)実施形態の変形例の対向部を示す斜視図である、(b)実施形態の変形例の対向部を示す正面図である、(c)実施形態の変形例の対向部を示す側面図である。
【
図9】実施形態の変形例における真空ポンプの部分拡大断面図である。
【
図10】(a)実施形態の変形例の対向部の形状を示す斜視図である、(b)実施形態の変形例の対向部の形状を示す正面図である、(c)実施形態の変形例の対向部の形状を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示にかかる実施の形態の真空ポンプについて図面を参照しながら説明する。
【0011】
(真空ポンプ1の概要)
図1は、実施形態に係る真空ポンプ1の断面図である。
【0012】
真空ポンプ1は、タービン部P1と、ドラッグポンプ部P2と、を含む。タービン部P1は、ターボ分子ポンプを構成する。ドラッグポンプ部P2は、ネジ溝ポンプを構成する。真空ポンプ1は、排気対象空間を含む排気対象装置に接続されている。排気対象空間からのガスは、タービン部P1で排気された後、ドラッグポンプ部P2で排気され、真空ポンプ1の外に排気される。
【0013】
真空ポンプ1は、
図1に示すように、ハウジング2と、ロータ3と、モータ4と、複数のステータ翼ユニット5と、ステータ円筒部6と、を有する。
【0014】
(ハウジング2)
ハウジング2は、ロータ3と、モータ4と、複数のステータ翼ユニット5と、ステータ円筒部6と、排気管7と、を収容する。
【0015】
ハウジング2は、ケーシング8と、ベース9と、固定フランジ10と、を有する。ハウジング2は、アルミニウム合金または鉄等の金属によって形成されている。ケーシング8は、一端に固定フランジ10を有する筒状の部材である。
【0016】
ケーシング8は、複数のステータ翼ユニット5と、ロータ3に設けられた複数段のロータ翼ユニット22と、を収容する。ケーシング8は、第1端部11と、第2端部12と、側面部13と、を有する。
【0017】
第1端部11は、排気対象装置に取り付けられる。第1端部11には、吸気口14が設けられている。第2端部12は、ロータ3の回転軸A1に沿った方向において、固定フランジ10と反対側に位置している。第2端部12は、ベース9に接続される。側面部13は、第1端部11と第2端部12を繋ぐ。ケーシング8の内側には、第1内部空間S1が形成される。
【0018】
ベース9は、ケーシング8の第2端部12側の開口を塞ぐように配置されている。ベース9は、ステータ円筒部6と、ロータ3に設けられているロータ円筒部23と、を収納する。ベース9は、ベース端部15と、ベース底部16と、ベース側部17と、排気口18と、を有する。ベース端部15は、ケーシング8の第2端部12に接続される。ベース底部16は、ベース端部15とは反対側の端である。ベース側部17は、ベース端部15とベース底部16の間に配置されている。ベース側部17は、ベース9の側面である。ベース9の内側には、第2内部空間S2が形成される。第2内部空間S2は、第1内部空間S1と連通している。排気口18は、ベース側部17に形成されている。排気口18は、第2内部空間S2と連通している。後述する
図2(a)に示すように、ベース側部17の外周面には、排気口18の周縁に凹部17aが形成されている。凹部17aには、後述する
図3に示すように排気管7の突条部43が嵌る。
【0019】
固定フランジ10は、
図1に示すように、ケーシング8に接続されている。固定フランジ10は、ケーシング8から突出している。固定フランジ10は、ボルト(図示せず)によって排気対象装置に固定される。なお、「接続」とは、互いに別体の部材が接合されることを含むものとする。また、「接続」とは、一体の部材において別々の部分が連なっていることを含むものとする。
【0020】
(ロータ3)
ロータ3は、シャフト21と、複数段のロータ翼ユニット22と、ロータ円筒部23と、を有する。
【0021】
シャフト21は、ロータ3の回転軸A1に沿った方向に延びている。以下の説明では、回転軸A1に沿った方向において、ケーシング8からベース9に向かう方向が下方と定義され、その反対方向が上方と定義される。
【0022】
真空ポンプ1は、保護軸受29と、軸受24と、を含む。保護軸受29は、シャフト21の上部側のラジアル方向の振れを制限するタッチダウンベアリングとして機能する。保護軸受29は、ベース9に取り付けられている。シャフト21が定常回転している状態では、シャフト21と保護軸受29は接触しておらず、大外乱が加わった場合や、回転の加速または減速時にシャフト21の振れ回りが大きくなった場合に、シャフト21が保護軸受29の内輪の内面に接触する。保護軸受29は、例えばボールベアリング等を用いることができる。
【0023】
軸受24は、ロータ3を回転可能に支持する。軸受24は、ベース9に取り付けられている。軸受24は、例えば磁気軸受を用いることができる。ただし、軸受24は、ボールベアリングなどの他の種類の軸受を用いてもよい。
【0024】
複数段のロータ翼ユニット22は、それぞれシャフト21に接続されている。複数段のロータ翼ユニット22は、回転軸A1に沿った方向に互いに間隔をおいて配置されている。各々のロータ翼ユニット22は、複数のロータ翼25を含む、図示を省略するが、複数のロータ翼25の各々は、シャフト21を中心にして放射状に延びている。なお、図面においては、複数段のロータ翼ユニット22の1つ、および複数のロータ翼25の1つのみに符号が付されており、他のロータ翼ユニット22および他のロータ翼25の符号は省略されている。
【0025】
ロータ円筒部23は、シャフト21に接続されている。ロータ円筒部23は、ロータ翼ユニット22の下方に配置されている。ロータ円筒部23は、円筒状であり、回転軸A1に沿った方向に延びている。ロータ円筒部23は、シャフト21の外周側においてシャフト21を囲むように配置されている。
【0026】
(モータ4)
モータ4は、ロータ3を回転駆動する。モータ4としては、例えばDCブラシレスモータが用いられる。モータ4は、モータロータ26と、モータステータ27と、を有する。モータロータ26は、シャフト21に取り付けられている。モータステータ27は、ベース9に取り付けられている。モータステータ27は、モータロータ26と向かい合って配置されている。
【0027】
(複数段のステータ翼ユニット5)
複数段のステータ翼ユニット5は、ケーシング8の内面に接続されている。複数段のステータ翼ユニット5は、回転軸A1に沿った方向において、互いに間隔を空けて配置されている。複数段のステータ翼ユニット5の各々は、複数段のロータ翼ユニット22の間に配置されている。各々のステータ翼ユニット5は、複数のステータ翼28を含む。図示を省略するが、複数のステータ翼28は、それぞれシャフト21を中心として放射状に延びている。
【0028】
複数段のロータ翼ユニット22と複数段のステータ翼ユニット5とは、タービン部P1(ターボ分子ポンプ)を構成する。なお、図面においては、複数のステータ翼ユニット5の1つ、および複数のステータ翼28の1つのみに符号が付されており、他のステータ翼ユニット5および他のステータ翼28の符号は省略されている。
【0029】
(ステータ円筒部6)
ステータ円筒部6は、ロータ円筒部23の径方向外側に配置されている。ステータ円筒部6は、ベース9に接続されている。ステータ円筒部6は、ロータ円筒部23の径方向において、ロータ円筒部23と向かい合って配置されている。
【0030】
ステータ円筒部6の内周面には、らせん状のネジ溝が設けられている。ロータ円筒部23とステータ円筒部6は、ドラッグポンプ部P2(ネジ溝ポンプ)を構成する。なお、らせん状のネジ溝は、ステータ円筒部6の内周面ではなく、ロータ円筒部23の外周面に設けられていてもよい。ステータ円筒部6は、その一部が、回転軸A1の方向において、排気管7と重なるように配置されている。また、ステータ円筒部6は、その一部が、回転軸A1を中心とする動径方向において、排気管7と重なるように配置されている。
【0031】
図2(a)は、
図1の排気口18近傍の拡大断面図であり、排気管7を取り外した状態を示す図である。
図2(b)は、排気口18近傍を軸A2方向に沿った見た模式図である。
図2(a)に示すように、ステータ円筒部6は、ベース9の排気口18の一部を覆うように配置されている。
図2(b)に示すように、ステータ円筒部6の一部が排気口18と重なるように配置されている。
図2(a)に示すように、ステータ円筒部6の径方向外側の面のうちベース9の排気口18と対向する部分には、後述する排気管7の第1端31が挿入されるように凹部6aが形成されている。また、排気口18の中心軸が軸A2として示されている。
【0032】
また、ステータ円筒部6の吸気口14と反対側の下端が、端6bとして示されている。また、排気口18の最も吸気口14側の位置が上位置18pとして示されている。ステータ円筒部6の端6bは、排気口18の上位置18pよりも下方(ベース底部16側)に配置されている。
図2(a)に示すように、凹部6aのうち最も上方の位置を上位置6pとすると、上位置6pと、上位置18pは、回転軸A1に沿った方向において一致している。
図2(b)では、上位置6pは上位置18pに重なるため、括弧内に符号を示す。
【0033】
(排気管7)
図3は、
図1の排気管7近傍を示す拡大断面図である。
図3は、
図2(a)のハウジング2に排気管7を取り付けた状態を示す図である。
【0034】
排気管7は、ハウジング2と同様の材料で形成されており、例えば、アルミニウム合金または鉄等の金属によって形成されている。
図3に示すように、排気管7は、回転軸A1に対して垂直方向に配置されている。排気管7は、ベース9の排気口18の軸A2に沿って配置されている。排気管7は、ハウジング2のベース側部17に形成された排気口18に挿入されている。排気管7は、略円筒状である。排気管7は、第1端31と、第2端32と、第1端31から第2端32まで形成された排気路33と、を有する。第1端31には、第1開口31aが形成されている。第1開口31aは、ハウジング2の内部空間に連通している。第2端32には、第2開口32aが形成されている。第2開口32aは、第1開口31aと対向して配置されている。排気路33は、第1開口31aと第2開口32aを繋ぐ。排気路33は、回転軸A1に対して垂直な方向に沿って形成されている。
【0035】
排気管7は、排気管本体34と、対向部35と、を含む。排気管本体34は、筒部41と、フランジ部42と、突条部43と、を含む。筒部41は、排気管7の筒状の部分である。筒部41は、排気管7のうち軸A2に垂直な断面が円環形状の部分である。筒部41の両端は、上述した第1端31と第2端32である。第1端31は、排気口18に挿入されている。フランジ部42は、第2端32において筒部41の周囲に配置されている。フランジ部42は、補助ポンプ等に接続される。突条部43は、第1端31と第2端32の間の筒部41の外周面に配置されている。排気管7が排気口18に取り付けられる際に、突条部43は凹部17aに嵌められている。
【0036】
対向部35は、筒部41の内側に配置されている。対向部35は、筒部41の内側のうち吸気口14側(すなわち、排気上流側)に配置されている。本実施形態では、対向部35は、排気管本体34と一体的に形成されている。対向部35は、回転軸A1に沿った方向において、ステータ円筒部6の外周側と対向するように配置されている。また、対向部35は、軸A2に沿った方向において、ステータ円筒部6と対向するように配置されている。本実施形態では、対向部35は、第1端31から、第1端31と第2端32の間の位置まで形成されている。
【0037】
図4は、
図2(b)に筒部41を二点鎖線で示した図である。
図4に示すように、ステータ円筒部6は、筒部41の内側に吸気口側からはみ出すように配置されている。ステータ円筒部6のうち筒部41の内側にはみ出している部分を突出部分61として示す。突出部分61は、分かり易くするためにハッチングで示されている。対向部35は、軸A2に沿った方向から視て突出部分61と重なるように配置されている。
【0038】
図5(a)は、排気管7を第1端31側から視た模式的な斜視図である。
図5(a)では、分かり易くするために対向部35と筒部41の境界が二点鎖線で示されているが、一体的に形成されているため対向部35と筒部41の間は繋がっており、実際には境界は形成されていない。対向部35にハッチングが示されている。また、
図5(a)では、突条部43が省略されている。
図5(a)に示すように、対向部35は、第1端31における筒部41の内側の一部を塞ぐように配置されている。
図5(b)は、対向部35の形状を示す斜視図である。
図5(c)は、対向部35の形状を示す側面図である。
【0039】
対向部35は、
図3および
図5(c)に示すように、第1端面51と、第2端面52と、傾斜面53とを有する。第1端面51は、第1端31における対向部35の端面である。第1端面51は、回転軸A1に沿って配置されている。第1端面51は、第1端31の一部を形成する。第2端面52は、対向部35の第2端32側の端面である。第2端面52は、第1端31と第2端32の間に配置されている。傾斜面53は、第1端面51の下方の端51aと、第2端面52の下方の端52aを繋ぐように配置されている。端51aは、傾斜面53のハウジング2側の端ともいえる。端52aは、傾斜面53のハウジング2とは反対側の端ともいえる。
【0040】
傾斜面53は、
図3に示すように、回転軸A1に沿った方向における排気路33の内径dが第1端31から第2端32に向かって大きくなるように形成されている。回転軸A1に対して垂直であって傾斜面53の第1端31側の端51aを通る面PS1と、傾斜面53との成す角度を傾斜角度θとすると、傾斜角度θは45度未満が好ましい。
【0041】
また、
図3に示すように、回転軸A1に沿った方向における対向部35の吸気口14と反対側の端51aの位置は、ステータ円筒部6の吸気口14と反対側の端6bの位置と一致している。しかしながら、端51aの位置はこれに限定されず、例えば、突出部分61の回転軸A1方向の長さの80%の位置から120%の位置の間の位置に設定することもできる。
【0042】
上述したように回転軸A1に沿った方向において、ステータ円筒部6と重なるように排気管7が配置されている。これによって、ステータ円筒部6の回転軸A1に沿った方向における長さ(すなわち、ネジ溝ポンプの排気空間の距離)を十分に確保して排気性能を高め、かつ、排気管7における排気路33の内径を十分に確保して排気性能を高めることができるにもかかわらず、真空ポンプ1の全体の高さを低くすることができる。
【0043】
図6(a)は、
図3に排気の流れを示す流線を追加した図である。
図6(b)は、対向部35が設けられていない排気管1007を用いた従来の真空ポンプ1001における排気の流れを示す流線を示した図である。
【0044】
図6(b)に示すように、対向部35が設けられていない構成では、排気路1033のステータ円筒部1006の径方向外側に空間S1001が形成される。この空間S1001に剥離渦1082が発生し易くなる。剥離渦1082は、排気路1033を通って外部に排出される気体の流れである流線1081から剥離した気体の流れである。このような剥離渦1082が発生すると圧力損失が生じるが、
図6(a)に示すように、本実施形態の真空ポンプ1では傾斜面53を形成することにより流線81に示すように傾斜面53に沿って気体が排出されるため剥離渦の発生を抑制することができる。
剥離渦の発生を抑制することにより、圧力損失を防止できるとともに、排気路への堆積物の付着を抑制することもできる。
【0045】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0046】
上記実施形態では、対向部35は排気管本体34と一体的に形成されているが、別体として形成されていてもよい。
図7は、対向部が排気管本体と別体である排気管107を用いた真空ポンプ101の部分拡大断面図である。
図7に示すように、排気管107は、排気管本体34と、対向部135と、を有する。
図8(a)は、対向部135を示す斜視図である。
図8(b)は、対向部135を示す正面図である。
図8(c)は、対向部135を示す側面図である。
【0047】
図8(a)に示すように、対向部135は、対向部本体141と、取付部142と、を有する。対向部本体141は、上述した対向部35と同様の形状である。取付部142は、対向部本体141のハウジング2側に配置されている。取付部142は、板状であり、ステータ円筒部6側の面142aが、回転軸A1と平行に配置されている。
図7に示すように、回転軸A1に沿った方向において、取付部142のベース底部16側の端面142bの位置は、ステータ円筒部6の端6bの位置と一致している。取付部142には、面142aに対して垂直に貫通孔142cが形成されている。
図7のT部拡大図に示すように、ステータ円筒部6の凹部6aが形成されている部分にネジ穴6cが形成されている。ネジ90が貫通孔142cからネジ穴6cに挿入されて、取付部142がステータ円筒部6にネジ止めされることによって、対向部35をステータ円筒部6に固定することができる。なお、排気管本体34は、ベース9に固定されている。
【0048】
上記実施形態では、対向部35の第1端面51の下方の端51aから第2端面52の下方の端52aまで傾斜面53が形成されているが、これに限らなくてもよく、傾斜面53と端51aの間に平面が形成されていてもよい。
【0049】
このような構成の対向部235を有する排気管207を備えた真空ポンプ201の部分拡大図を
図9に示す。
図9に示す対向部235は、対向部35と異なり、対向部35の第1端面51の下方の端51aから第2端面52に向かって軸A2と平行な平面254が形成されている。平面254では、回転軸A1に沿った方向における排気路33の内径dが一定となる。平面254のハウジング2とは反対側の端から第2端面52の端52aまで傾斜面53が形成されている。
【0050】
上記実施形態では、対向部35は、第1端31から、第1端31と第2端32の間の位置まで形成されているが、第1端31から第2端32まで形成されていてもよい。
【0051】
上記実施形態の対向部35には、第2端32側に第2端面52が形成されているが、第2端面52が形成されていなくてもよい。このような構成の対向部235を
図10(a)~(c)に示す。
図10(a)は、対向部335の形状を示す斜視図である。
図10(b)は、対向部335の形状を示す正面図である。
図10(c)は、対向部335の形状を示す側面図である。
図10(a)~
図10(c)に示すように、対向部335は、第1端面51と傾斜面253とを有し、第2端面が形成されていない。傾斜面253は、下方から視て三角形状に形成されている。
【0052】
上記実施形態では、対向部35は直線状の傾斜面53が形成されているが、傾斜面は直線状に限らず、曲面(例えば、凹曲面または凸曲面)等であってもよい。対向部35の傾斜面53の代わりに、対向部は、排気管の内径が、第1端から第2端に向かって大きくなる階段状の形状であっても良い。これらの形状を総称して、排気管の内径が、第1端から第2端に向かって大きくなる形状と称する。
【0053】
(態様)
上述した複数の例示的な実施例体は、以下の態様の具体例であることが当業者より理解される。
【0054】
(第1態様)真空ポンプは、ハウジングと、排気管と、ロータ円筒部と、ステータ円筒部と、を備える。ハウジングは、気体を吸引する吸気口を有する。排気管は、ハウジングの側面に配置され、ハウジングに吸引された気体を排出する。ロータ円筒部は、ハウジングに収納され、回転軸を中心に回転する。ステータ円筒部は、ハウジングに収納され、ロータ円筒部に対向して配置されている。ステータ円筒部の一部が、回転軸の方向において、排気管と重なるように配置されている。排気管は、気体の入口側の第1端と、出口側の第2端と、を有する。排気管は、第1端から第2端の方向に、排気管と重なるように配置されたステータ円筒部の一部と対向して配置された対向部を有する。対向部は、排気管の内径が、第1端から第2端に向かって大きくなる形状を有する。
【0055】
第1態様に係る真空ポンプでは、ステータ円筒部の一部が、回転軸の方向において排気管と重なる構成において、排気管のステータ円筒部と重なる部分に対向部を設け、対向部は、排気管の内径が、第1端から第2端に向かって大きくなるように形成されている。これにより、ステータ円筒部の外側に剥離渦が発生する空間をなくすことができ、気体が対向部に沿って排気されるので、渦発生による圧力損失を低減し、真空ポンプの排気性能を向上することができる。
【0056】
(第2態様)対向部は、排気管の内径が、第1端から第2端に向かって大きくなる傾斜面を有する。
【0057】
第2態様に係る真空ポンプでは、対向部が傾斜面を有している。これにより、ステータ円筒部の外側に剥離渦が発生する空間をなくすことができ、気体が傾斜面に沿って排気されるので、渦発生による圧力損失を低減し、真空ポンプの排気性能を向上することができる。
【0058】
(第3態様)第1態様に係る真空ポンプにおいて、傾斜面は、第1端から形成されている。
【0059】
第3態様に係る真空ポンプでは、ステータ円筒部の排気管と重なる端から直ちに傾斜面が形成されているので、剥離渦の発生をさらに良好に抑制して真空ポンプの排気性能を向上することができる。
【0060】
(第4態様)第1態様に係る真空ポンプにおいて、対向部は、第1端と傾斜面との間に、排気管の内径が一定となる平面を有する。
【0061】
第4態様に係る真空ポンプのように、ステータ円筒部の排気管と重なる端から平面および傾斜面が形成される構造であっても、剥離渦が発生する空間をなくすことができるので、剥離渦の発生を抑制して真空ポンプの排気性能を向上することができる。
【0062】
(第5態様)第1~第4態様に係る真空ポンプにおいて、傾斜面と、回転軸に対して垂直であって傾斜面のハウジング側の端を通る面とのなす角度は、45度未満である。
【0063】
第5態様に係る真空ポンプでは、傾斜角度を45度未満とすることによって、傾斜角度が45度以上の場合と比較して、剥離渦が発生する空間の形成をさらに良好に抑制し、剥離渦の発生をさらに良好に抑制することができる。
【0064】
(第6態様)第1~第4態様に係る真空ポンプにおいて、回転軸に沿った方向において、対向部の吸気口と反対側の端の位置は、ステータ円筒部の吸気口と反対側の端の位置と一致している。
【0065】
第6態様に係る真空ポンプでは、対向部の吸気口と反対側の端の位置は、ステータ円筒部の吸気口と反対側の端の位置と一致しているので、剥離渦の発生する空間をさらに良好になくすことができ、真空ポンプの排気性能を向上することができる。
【0066】
(第7態様)第1~第4態様に係る真空ポンプにおいて、排気管は、内側に対向部が配置された排気管本体を更に有する。対向部は、排気管本体と別体である。
【0067】
第7態様に係る真空ポンプでは、対向部と排気管本体を別々に取り付けることができる。たとえば、ステータ円筒部と排気管が排気管に沿った方向において重ならない構成の真空ポンプに対しては排気管本体だけを用い、本実施形態のようにステータ円筒部と排気管が排気管に沿った方向において重なる構成の真空ポンプに対しては排気管本体と対向部を用いることで、異なる構成の真空ポンプに対して排気管本体を共通に用いることができる。
【0068】
(第8態様)第7態様に係る真空ポンプにおいて、排気管本体は、ハウジングに固定される。対向部は、ステータ円筒部に固定される。
【0069】
第8態様に係る真空ポンプでは、排気管本体をハウジングに固定し、対向部をステータ円筒部に固定することで、排気管をハウジングに固定することができる。また、ステータ円筒部の熱を対向部に伝達し、対向部の温度を上昇させることができるので、対向部に堆積物が付着することを防止することができる。
【符号の説明】
【0070】
1:真空ポンプ、2:ハウジング、3:ロータ、4:モータ、5:ステータ翼ユニット、6:ステータ円筒部、6a:凹部、6b:端、6c:ネジ穴、6p:上位置、7:排気管、8:ケーシング、9:ベース、10:固定フランジ、11:第1端部、12:第2端部、13:側面部、14:吸気口、15:ベース端部、16:ベース底部、17:ベース側、17a:凹部、18:排気口、18p:上位置、21:シャフト、22:ロータ翼ユニット、23:ロータ円筒部、24:軸受、25:ロータ翼、26:モータロータ、27:モータステータ、28:ステータ翼、29:保護軸受、31:第1端、31a:第1開口、32:第2端、32a:第2開口、33:排気路、34:排気管本体、35:対向部、41:筒部、42:フランジ部、43:突条部、51:第1端面、51a:端、52:第2端面、52a:端、53:傾斜面、61:突出部分、90:ネジ、101:真空ポンプ、107:排気管、135:対向部、141:対向部本体、142:取付部、142a:面、142b:端面、142c:貫通孔、201:真空ポンプ、207:排気管、235:対向部、253:傾斜面、254:平面、335:対向部、1001:真空ポンプ、1006:ステータ円筒部、1007:排気管、1033:排気路、1081:流線、1082:剥離渦、A1:回転軸、A2:軸、P1:タービン部、P2:ドラッグポンプ部、PS1:面、S1:第1内部空間、S1001:空間、S2:第2内部空間、d:内径、θ:傾斜角度