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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179923
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】浮体構造物
(51)【国際特許分類】
   B63B 22/00 20060101AFI20231213BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20231213BHJP
   F03B 13/10 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
B63B22/00 C
B63B35/00 T
B63B22/00 Z
F03B13/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092865
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(74)【代理人】
【識別番号】100171583
【弁理士】
【氏名又は名称】梅景 篤
(72)【発明者】
【氏名】石黒 泰大
(72)【発明者】
【氏名】藤田 穣
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 宏幸
【テーマコード(参考)】
3H074
【Fターム(参考)】
3H074AA08
3H074AA12
3H074BB30
3H074CC16
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、通信が失敗する可能性を低減可能な浮体構造物を提供すること。
【解決手段】浮体構造物1は、所定の方向Dに延在している浮体2と、浮体2に設けられた複数の通信器6と、を備え、浮体2は、浮体構造物1が静止状態の水面Sに浮かべられたときに、水面Sから露出している露出部2aを備え、複数の通信器6は、露出部2aにおいて、浮体2が延在している方向Dに配列されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体構造物であって、
所定の方向に延在している浮体と、
前記浮体に設けられた複数の通信器と、を備え、
前記浮体は、前記浮体構造物が静止状態の水面に浮かべられたときに、前記水面から露出している露出部を備え、
前記複数の通信器は、前記露出部において、前記浮体が延在している方向に配列されている、浮体構造物。
【請求項2】
前記複数の通信器は、同じタイミングで通信を開始する、請求項1に記載の浮体構造物。
【請求項3】
前記複数の通信器は、互いに異なるタイミングで通信を開始し、
前記タイミングは、所定の周期に基づいて決定される、請求項1に記載の浮体構造物。
【請求項4】
前記浮体に設けられ、水流により回転するタービンと、
前記タービンの回転により発電する発電機と、
を更に備える、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の浮体構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、浮体構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
海等の水面に浮かべられ、通信器を用いて地上又は衛星と通信を行う浮体構造物が知られている。例えば、特許文献1には、浮体によって支持されて上方に突出する櫓と、該櫓に取り付けられた無線送信機と、を備える海洋観測ブイが記載されている。すなわち、この海洋観測ブイでは、無線送信機が浮体から上方に突出した位置に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4460723号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水面においては、浮体構造物の揺れ又は波浪により通信器が水没すると、通信が失敗するおそれがある。特許文献1に記載の海洋観測ブイにおいては、無線送信機が水面から離れているので、通信が失敗する可能性が低減される。一方で、このような構成においては、浮体から上方に突出した位置において通信器を支持するための複雑な構造体を設ける必要がある。
【0005】
本開示は、簡易な構成で、通信が失敗する可能性を低減可能な浮体構造物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る浮体構造物は、所定の方向に延在している浮体と、浮体に設けられた複数の通信器と、を備える。浮体は、浮体構造物が静止状態の水面に浮かべられたときに、水面から露出している露出部を備える。複数の通信器は、露出部において、浮体が延在している方向に配列されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、簡易な構成で、通信が失敗する可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係る浮体構造物の斜視図である。
図2図2は、図1に示される通信器の構成を示す図である。
図3図3は、複数の通信器の配置を説明するための図である。
図4図4は、図1に示される浮体構造物における通信を説明するための図である。
図5図5は、複数の通信器が通信を開始するタイミングの別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1]実施形態の概要
本開示の一側面に係る浮体構造物は、所定の方向に延在している浮体と、浮体に設けられた複数の通信器と、を備える。浮体は、浮体構造物が静止状態の水面に浮かべられたときに、水面から露出している露出部を備える。複数の通信器は、露出部において、浮体が延在している方向に配列されている。
【0010】
浮体構造物が水面に浮かべられた際に波浪が生じると、浮体には波浪の進行方向に沿った力が作用する。この浮体に作用する力が小さくなるように、浮体構造物が自然と向きを変えることが知られている。つまり、浮体が延在している方向(浮体の延在方向)が波浪の進行方向に沿うように、浮体構造物の向きが変更され得る。このとき、浮体の延在方向において浮体構造物は揺動する。上記浮体構造物では、複数の通信器が、露出部において浮体の延在方向に配列されている。したがって、複数の通信器のうちいずれかの通信器が、浮体構造物の揺れ又は波浪により水没した場合であっても、残りの通信器が水没する可能性を低減することができる。したがって、浮体から上方に突出した位置において通信器を支持するための複雑な構造体を設けなくても、通信が失敗する可能性を低減することができる。この結果、簡易な構成で、通信が失敗する可能性を低減することが可能となる。
【0011】
いくつかの実施形態では、複数の通信器は、同じタイミングで通信を開始してもよい。上述のように、浮体構造物の揺れ又は波浪が生じたとしても、浮体の全体が同時に水没する可能性は低く、浮体の延在方向における一部が水没するにとどまる。したがって、複数の通信器が同じタイミングで通信を開始することにより、複数の通信器のうちの一部の通信器が水没により通信を行えなかったとしても、残りの通信器が通信を行うことができる。この結果、通信が失敗する可能性を一層低減することが可能となる。
【0012】
いくつかの実施形態では、複数の通信器は、互いに異なるタイミングで通信を開始してもよい。該タイミングは、所定の周期に基づいて決定されてもよい。浮体構造物の揺動周期及び波の周期は、浮体構造物が使用される水域に応じてある程度定まり得る。これらの周期を考慮して、複数の通信器が通信を開始するタイミングを決定することにより、複数の通信器のうちの一部の通信器が水没した場合であっても、残りの通信器が通信を行うことができる。この結果、通信が失敗する可能性を一層低減することが可能となる。
【0013】
いくつかの実施形態では、浮体構造物は、浮体に設けられ、水流により回転するタービンと、タービンの回転により発電する発電機と、を備えていてもよい。例えば、浮体から上方に突出した位置において通信器を支持するための構造体が設けられたとすると、タービンに流入する水流を乱し、発電効率を低下させるおそれがある。この浮遊構造体では、そのような構造体を設ける必要が無いので、タービンに流入する水流の乱れを抑えることができる。この結果、発電効率の低下を抑制することが可能となる。
【0014】
[2]実施形態の例示
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。以下の説明において、「上流」又は「下流」との語は、水の流れを基準として用いられる。「前」との語は、水の流れの上流側を意味し、「後」との語は、水の流れの下流側を意味する。
【0015】
図1を参照して、一実施形態に係る浮体構造物を説明する。図1は、一実施形態に係る浮体構造物の斜視図である。図1に示される浮体構造物1は、浮力によって水に浮かぶことが可能な構造物である。本実施形態では、浮体構造物1として、海等の水中において水流FWを利用して発電を行う水中浮遊式水流発電装置が例示される。浮体構造物1は、運用時においては、水中に浮遊した状態で配置されている。浮体構造物1は、浮体2と、クロスビーム3と、タービン4と、発電機5と、複数の通信器6と、を備えている。
【0016】
浮体2は、水に浮かぶことが可能な浮体である。浮体構造物1の運用時においては、浮体2は、水中を浮遊する。浮体2は、ポッドとも称される。浮体2は、方向Dに延在している。すなわち、方向Dは浮体2の長手方向である。浮体2の形状は、例えば、方向Dに延びる中心軸線を有する円筒形状である。本実施形態では、浮体2は、浮体2の前部が水流FWの上流に位置し、浮体2の後部が水流FWの下流に位置するように、配置されている。したがって、方向Dと水流FWの方向とが一致している。本実施形態では、浮体構造物1は、一対の浮体2を備える。一対の浮体2は、例えば左右に離間して配置されている。一対の浮体2は、クロスビーム3によって連結されている。クロスビーム3は、例えば、矩形板状の部材である。
【0017】
浮体2は、水底に配置されたシンカ7に係留索8を介して接続されている。シンカ7は、例えば摩擦式のシンカでもよく、その他のシンカでもよい。なお、シンカ7に代えて水底に固定されたアンカに係留索8が接続されていてもよい。アンカは、パイル式のアンカでもよく、サクション式のアンカでもよく、その他のアンカでもよい。係留索8の下端はシンカ7に接続され、係留索8の上端は一対の浮体2にそれぞれ接続されている。係留索8の上端は、一対の浮体2に代えて、クロスビーム3に接続されていてもよい。
【0018】
一対の浮体2には、それぞれケーブル9が接続されている。ケーブル9は、発電機5によって生成された電力を伝送するための送電ケーブルと、不図示の陸上設備と通信するための通信ケーブルと、を含む。ケーブル9は、係留索8に沿って浮体2からシンカ7に向けて延在していると共に、水底に沿って係留索8から陸上設備に向けて延在している。
【0019】
タービン4は、発電用のタービンである。タービン4は、水流FWを受けて回転するように構成されている。タービン4は、浮体2の後部に回転可能に設けられている。本実施形態では、タービン4として、いわゆるダウンウィンド型のタービンが採用されている。なお、タービン4は、アップウィンド型のタービンであってもよい。タービン4は、複数枚のブレードを含む。本実施形態では、タービン4は、2枚のブレードを含む。本実施形態では、浮体構造物1は、ダウンウィンド型のタービンを採用しているので、浮体2の下流にブレードが配置されている。タービン4には、不図示の回転軸が連結されている。ブレードの回転、すなわちタービン4の回転は、回転軸を介して発電機5に伝達される。回転軸は、例えば浮体2の中心軸線上に沿って設けられている。
【0020】
発電機5は、タービン4の回転の運動エネルギを電気エネルギに変換する機器であり、タービン4の回転力を受けて発電する。発電機5は、浮体2に収容されている。発電機5には、パワーコンディショナが接続されていてもよい。発電機5は、パワーコンディショナに対し発電電力を出力する。パワーコンディショナは、発電機5の発電電力の調整及び発電運転制御を行う。発電電力の調整は、交流電力である発電電力を直流電力に変換し、所望の周波数となるように直流電力を交流電力に変換することによって行われる。パワーコンディショナには、高圧受電部が接続されていてもよい。高圧受電部は、パワーコンディショナから出力される交流電力を変圧する。
【0021】
通信器6は、不図示の地上の通信設備又は不図示の衛星と通信を行うための機器である。通信器6は、浮体2に設けられている。本実施形態では、一対の浮体2のそれぞれに、2つの通信器6が設けられている。通信器6の配置の詳細は後述する。通信器6は、電波を利用する方式により、通信を行う。通信器6は、ビーコンとも称される。例えば係留索8が切断されたことによって浮体2と係留索8との接続が解除された場合又は浮体構造物1の整備が行われる場合に、浮体構造物1が水中から水上に浮上することがある。このような場合に、通信器6は、水面から露出して地上の通信設備又は衛星に対して通信を行う。一例として、通信器6は、浮体構造物1の位置情報を送信する。なお、通信器6が水没した場合には、通信器6は、地上の通信設備又は衛星と通信を行うことができない。これは、通信器6から放射される電波等の通信信号が水の影響により減衰することに起因する。
【0022】
次に、図2を参照して、通信器6の構成を説明する。図2は、図1に示される通信器の構成を示す図である。
【0023】
図2に示されるように、通信器6は、通信部6aと、基板6bと、バッテリー6cと、を備える。通信部6aは、基板6bに搭載され、地上の通信設備又は衛星に対して電波を放射する部分である。通信部6aは、アンテナを含む。基板6bには、通信部6aの他、通信回路を構成する電子部品等が搭載されている。バッテリー6cは、通信器6に電力を供給する。本実施形態では、通信部6aは基板6bの一方の面上に配置されており、バッテリー6cは基板6bの他方の面から通信部6aとは反対側に延在している。
【0024】
次に、図3を参照して、複数の通信器6の配置を詳細に説明する。図3は、複数の通信器の配置を説明するための図である。
【0025】
図3に示されるように、複数の通信器6は、露出部2aに設けられている。露出部2aは、浮体2のうち、浮体構造物1が静止状態の水面Sに浮かべられたときに、水面Sから露出している部分である。ここで、「静止状態の水面S」とは、水面に波浪が存在せず、いわゆる水面が凪いでいる状態をいう。通信器6は、露出部2aにおいて浮体2に埋設されており、露出部2aにおける浮体2の外表面から少なくとも通信部6aが露出するように、露出部2aに設けられている。本実施形態では、通信部6a及び基板6bが浮体2から露出しており、バッテリー6cは浮体2に埋設されている。
【0026】
複数の通信器6は、露出部2aにおいて方向Dに配列されている。すなわち、複数の通信器6は、露出部2aにおいて、浮体2の長手方向に配列されている。複数の通信器6は、等間隔で配列されていてもよく、互いに異なる間隔で配列されていてもよい。方向Dにおいて互いに隣り合う2つの通信器6間の方向Dにおける間隔は、例えば浮体構造物1の方向Dにおける長さ及び浮体構造物1が使用される水域における水面の状態等によって、決定される。「浮体構造物1が使用される水域における水面の状態」は、例えば、浮体構造物1が使用される水域において、予め収集された、波高の統計データ及び波の周期の統計データに基づいて決定される。例えば、通信器6が水没する程度の波高を有する波のうち、所定の頻度よりも頻繁に発生する波の周期から、波の間隔が算出される。そして、当該間隔とは異なる間隔に、方向Dにおいて互いに隣り合う2つの通信器6間の方向Dにおける間隔が設定される。
【0027】
本実施形態では、複数の通信器6は、同じタイミングで通信を開始する。各通信器6は、所定の時間間隔及び所定の時間幅で地上の通信設備又は衛星に対して通信を行う。本実施形態では、各通信器6は、浮体構造物1の運用時、すなわち浮体2が水中に配置されている場合であっても、通信部6aから電波を放射している。なお、浮体構造物1の運用時においては、地上の通信設備又は衛星との通信は失敗している。これは、上述のように、通信部6aからの放射された電波が水の影響により減衰することに起因する。各通信器6は、浮体構造物1が水上に浮上したことを検知したことに応じて、通信部6aからの電波の放射を開始してもよい。すなわち、各通信器6は、浮体構造物1の運用時においては、通信を行っていなくてもよい。
【0028】
次に、図4を参照して、浮体構造物1の作用効果を説明する。図4は、図1に示される浮体構造物における通信を説明するための図である。
【0029】
浮体構造物1が水面に浮かべられた際に波浪が生じると、浮体2には波浪の進行方向に沿った力が作用する。波浪によって浮体2に作用する力が小さく(最小に)なるように、浮体構造物1が自然と向きを変えることが知られている。つまり、浮体2が延在している方向Dが波浪の進行方向に沿うように、浮体構造物1の向きが変更され得る。このとき、図4に示されるように、方向Dにおいて浮体構造物1は揺動する。具体的には、浮体構造物1(浮体2)の前部が下降し、かつ、浮体構造物1(浮体2)の後部が上昇する状態と、方向Dにおける浮体構造物1(浮体2)の前部が上昇し、かつ、浮体構造物1(浮体2)の後部が下降する状態と、が交互に繰り返される。
【0030】
浮体構造物1では、複数の通信器6が、浮体2の露出部2aにおいて方向Dに配列されている。したがって、浮体構造物1の揺れにより、複数の通信器6のうちいずれかの通信器6が水没した場合であっても、残りの通信器6が水没する可能性を低減することができる。図4に示される例では、浮体2の後部に設けられた通信器6が水没しているが、浮体2の前部に設けられた通信器6は水面から露出している。
【0031】
波浪は浮体2の延在方向に進行するので、波浪により、複数の通信器6のうちいずれかの通信器6が水没した場合であっても、残りの通信器6が水没する可能性を低減することができる。したがって、浮体2から上方に突出した位置において通信器6を支持するための複雑な構造体を設けなくても、通信が失敗する可能性を低減することができる。この結果、簡易な構成で、通信が失敗する可能性を低減することが可能となる。
【0032】
浮体構造物1では、複数の通信器6は、同じタイミングで通信を開始する。上述のように、浮体構造物1の揺れ又は波浪が生じたとしても、浮体2の全体が同時に水没する可能性は低く、方向Dにおける一部が水没するにとどまる。図4に示される例では、浮体2の後部に設けられた通信器6は水没するが、浮体2の前部に設けられた通信器6は水没せず、水面から露出している。このように、方向Dにおける浮体2の一部が水没したとしても、複数の通信器6のうちいずれかの通信器6が水面から露出している。したがって、複数の通信器6が同じタイミングで通信を開始することにより、複数の通信器6のうちの一部の通信器6が水没により通信を行えなかったとしても、残りの通信器6が通信を行うことができる。この結果、通信が失敗する可能性を一層低減することが可能となる。
【0033】
上述のように、タービン4は、浮体2の後部に設けられ、水流FWを受けて回転するように構成されている。浮体構造物1において、仮に浮体2から上方に突出した位置において通信器6を支持するための構造体が設けられたとすると、浮体構造物1の運用時においてタービン4に流入する水流FWを乱し、発電効率を低下させるおそれがある。浮体構造物1では、そのような構造体を設ける必要が無く、通信器6が浮体2に埋設されているので、浮体2の外表面からの通信器6の突出量が抑えられる。したがって、タービン4に流入する水流FWの乱れを抑えることができる。この結果、発電効率の低下を抑制することが可能となる。
【0034】
浮体構造物1では、通信器6が浮体2に埋設されているので、落雷の可能性を低減することができる。したがって、浮体構造物1には、避雷針を設ける必要が無いので、浮体構造物1の構造を簡易化することが可能となる。
【0035】
次に、図5を参照して、複数の通信器6が通信を開始するタイミングの変形例を説明する。図5は、複数の通信器が通信を開始するタイミングの別の例を示す図である。本変形例は、複数の通信器が通信を開始するタイミングにおいて、上述した実施形態と相違する。以下、上述した実施形態と本変形例との相違点を主として説明する。
【0036】
図5に示されるように、本変形例では、複数の通信器6は、互いに異なるタイミングで通信を開始する。複数の通信器6が通信を開始するタイミングは、所定の周期に基づいて決定される。
【0037】
所定の周期は、浮体構造物1が使用される水域における波Wの周期Tを少なくとも含む。この場合、複数の通信器6が通信を開始するタイミングは、例えば、以下のように決定される。まず、周期Tが算出される。周期Tは、例えば、上述した波の周期の統計データに基づいて算出される。例えば、周期Tは、通信器6が水没する程度の波高を有する波のうち、所定の頻度より頻繁に発生する波の周期の平均値又は中央値として算出される。続いて、周期Tと、複数の通信器6が通信を開始するタイミングの時間間隔と、が互いに異なるように、該タイミングが決定される。
【0038】
本変形例では、複数の通信器6は、互いに異なるタイミングで通信を開始する。該タイミングは、所定の周期に基づいて決定される。浮体構造物1の揺動周期及び波の周期は、浮体構造物1が使用される水域に応じてある程度定まり得る。例えば、周期Tと、複数の通信器6が通信を開始するタイミングの時間間隔と、が互いに異なるように、該タイミングが決定される。図5に示される例では、波Wにより浮体2の前部に設けられた通信器6は水没するが、浮体2の後部に設けられた通信器6は水没せず、水面から露出している。複数の通信器6が通信を開始するタイミングは、周期Tと、複数の通信器6が通信を開始するタイミングの時間間隔と、が互いに異なるように、決定されるので、浮体2の後部に設けられた通信器6は水面から露出している状態で通信を行うことができる。このように、浮体構造物1が使用される水域に応じて定まり得る周期を考慮して、複数の通信器6が通信を開始するタイミングを決定することにより、複数の通信器6のうちの一部の通信器6が水没した場合であっても、残りの通信器6が通信を行うことができる。この結果、通信が失敗する可能性を一層低減することが可能となる。
【0039】
なお、本開示に係る浮体構造物は、上述した実施形態及び変形例に限定されない。
【0040】
上述した実施形態及び変形例では、複数の通信器6は、一対の浮体2にそれぞれ設けられているが、複数の通信器6は、一対の浮体2のうちのいずれか一方の浮体2にのみ設けられていてもよい。
【0041】
上述した実施形態及び変形例では、各浮体2には、2つの通信器6が設けられているが、各浮体2に設けられる通信器6の数は2つに限定されない。各浮体2には、3つ以上の通信器6が設けられてもよい。
【0042】
上述した実施形態及び変形例では、通信器6は、電波を利用する方式により、通信を行っていたが、通信方式はこれに限定されない。例えば、通信器6は、光信号を利用する方式により、通信を行ってもよい。
【0043】
通信器6は、浮体2に埋設されていなくてもよい。通信器6は、露出部2aに固定された筐体内に、少なくとも通信部6aが露出するように収容されてもよい。例えば、基板6b及びバッテリー6cが筐体に収容され、通信部6aが筐体から露出してもよい。あるいは、バッテリー6cのみが筐体に収容され、通信部6a及び基板6bが筐体から露出してもよい。
【0044】
複数の通信器6は、露出部2aにおいて、方向Dに配列されていればよく、直線状に並んでいなくてもよい。方向Dにおいて互いに隣り合う2つの通信器6間の方向Dにおける間隔は、任意の間隔であってもよい。これらの場合においても、浮体構造物1の揺れ又は波浪により、複数の通信器6のうちいずれかの通信器6が水没した場合であっても、残りの通信器6が水没する可能性を低減することができる。
【0045】
所定の周期は、周期Tに加えて、浮体構造物1の揺動周期を更に含んでいてもよい。この場合、複数の通信器6が通信を開始するタイミングは、例えば、以下のように決定される。まず、周期Tに加えて、浮体構造物1の揺動周期が算出される。浮体構造物1の揺動周期は、例えば、構造物の構造パラメータ及び水面の状態から、構造物が該水面に浮かべられたときの、構造物の揺動周期を推定するシミュレーションにより、算出される。例えば、浮体構造物1の構造パラメータ及び浮体構造物1が配置される水域の水面の状態を、上記シミュレーションに入力することで、浮体構造物1の揺動周期が算出される。続いて、周期T及び浮体構造物1の揺動周期と、複数の通信器6が通信を開始するタイミングの時間間隔と、が互いに異なるように、該タイミングが決定される。
【0046】
浮体構造物1は、水中浮遊式水流発電装置に限定されない。浮体構造物1は、水に浮かぶことができる浮体構造物であればよく、タービン4と発電機5とを備えていなくてもよい。浮体構造物1の別の例は、水上航走体(Autonomous Surface Vehicle:ASV)、自律型水中航走体(Autonomous Underwater Vehicle:AUV)、洋上中継器、及び海洋観測ブイを含む。
【0047】
本開示は、例えば、国際連合が主導する持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)の目標14.海の豊かさを守ろう「海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する。」に貢献することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 浮体構造物
2 浮体
2a 露出部
4 タービン
5 発電機
6 通信器
D 方向
FW 水流
S 静止状態の水面
図1
図2
図3
図4
図5