(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179950
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】ツイーター用振動板およびツイーター
(51)【国際特許分類】
H04R 7/02 20060101AFI20231213BHJP
H04R 7/12 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
H04R7/02 D
H04R7/02 G
H04R7/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092920
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】宮田 智矢
(72)【発明者】
【氏名】樋山 邦夫
【テーマコード(参考)】
5D016
【Fターム(参考)】
5D016AA01
5D016AA08
5D016CA05
5D016EA05
5D016EA10
5D016EC03
5D016EC05
5D016EC06
5D016EC07
5D016EC09
(57)【要約】
【課題】ハイレゾ音源での高音領域の音質に優れるツイーター用振動板およびツイーターを提供する。
【解決手段】ツイーター用振動板は、異方性を有する高弾性シートからなり、レーザドップラ振動計を用いて測定された20Hz以上40kHz以下の範囲内の周波数帯での振動プロファイルにおいて、周波数が20Hz以上20kHz以下の周波数帯では分割振動に起因するピークが検出されず、周波数が20kHzよりも大きく40kHz以下の範囲内の周波数帯で分割振動に起因するピークが複数検出される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異方性を有する高弾性シートからなり、
レーザドップラ振動計を用いて測定された20Hz以上40kHz以下の範囲内の周波数帯での振動プロファイルにおいて、
周波数が20Hz以上20kHz以下の周波数帯では分割振動に起因するピークが検出されず、
周波数が20kHzよりも大きく40kHz以下の範囲内の周波数帯で分割振動に起因するピークが複数検出される、ツイーター用振動板。
【請求項2】
前記高弾性シートが、引張弾性率が400GPa以上の高弾性繊維の織布、または引張弾性率が400GPa以上の高弾性繊維を一方向に配向したUDシートを2層以上積層した積層体であって、積層方向に互いに対向する前記UDシートは前記高弾性繊維の配向の方向が異なる異方性積層体である、請求項1に記載のツイーター用振動板。
【請求項3】
中央にドーム部を有し、前記ドーム部の直径が1cm以上5cm以下の範囲内にある、請求項1または2に記載のツイーター用振動板。
【請求項4】
密度が1.2g/cm3以上1.94g/cm3以下の範囲内にある、請求項1または2に記載のツイーター用振動板。
【請求項5】
前記振動プロファイルにおいて、前記分割振動に起因する複数のピークのうちの最大ピークの高さが、前記複数のピークの平均の5倍以下である、請求項1または2に記載のツイーター用振動板。
【請求項6】
請求項1または2に記載のツイーター用振動板を備えたツイーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツイーター用振動板およびツイーターに関する。
【背景技術】
【0002】
ツイーター用の振動板としては、高弾性の金属板が広く利用されている。金属板としては、アルミニウム合金やチタン合金が使用されている。また、振動板として、樹脂フィルムを表裏表皮基材とし、この中間層に、はがしマイカを積層した集成マイカシートまたはカーボン繊維を織ったクロスカーボンや芳香族ポリアミド繊維の織布またはアルミニウム合金シートまたはチタン合金シートを用いることが検討されている(特許文献1)。さらに、織布と、この織布の背面側に熱圧着一体化した紙板とを備え、織布は、表面側に織目を表出させたスピーカ用振動板も検討されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-247686号公報
【特許文献2】特開2009-21832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、ハイレゾ音源が開発され、ツイーターの音質の向上が望まれている。ハイレゾ音源の周波数帯域(例えば、40~50kHz)にまでツイーターのF特(周波数特性)を伸ばすために、振動板の最高共振周波数(fh)を40~50kHz付近まで高くすることは有効である。しかしながら、最高共振周波数が40~50kHzの振動板を実現しようとすると、ダイヤモンドや硬質セラミックを使用することが必要となる。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、ハイレゾ音源での高音領域の音質に優れるツイーター用振動板およびツイーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様は、異方性を有する高弾性シートからなり、レーザドップラ振動計を用いて測定された20Hz以上40kHz以下の範囲内の周波数帯での振動プロファイルにおいて、周波数が20Hz以上20kHz以下の周波数帯では分割振動に起因するピークが検出されず、周波数が20kHzよりも大きく40kHz以下の範囲内の周波数帯で分割振動に起因するピークが複数検出される、ツイーター用振動板である。
【0007】
本発明の第二の態様は、上記第一の態様のツイーター用振動板を備えたツイーターである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ハイレゾ音源での高音領域の音質に優れるツイーター用振動板およびツイーターを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るツイーター用振動板を示す斜視図である。
【
図2】実施例1で作製したツイーター用振動板の振動プロファイルである。
【
図3】振動プロファイルの測定装置の一例のブロック図である。
【
図4】本発明の第一実施形態に係るツイーター用振動板の原料として用いることができる高弾性シートの構成の一例を示す分解斜視図である。
【
図5】本発明の第二実施形態に係るツイーターを示す断面図である。
【
図6】実施例1~3および比較例1~2で作製したツイーター用振動板の振動プロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係るツイーター用振動板を、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第一実施形態に係るツイーター用振動板を示す斜視図である。
【0011】
図1において、ツイーター用振動板10は、全体として円板状をなし、中央に半球状のドーム部11を有するドーム型振動板とされている。ドーム部11を含め、この例のツイーター用振動板10の肉厚は、前面にわたってほぼ均一である。プレス成形によりドーム部11の肉厚がわずかに薄くなっている構成も可能である。ツイーター用振動板10の肉厚は、本発明では限定されないが、例えば、30μm以上200μm以下の範囲内にある。ドーム部11の直径は、本発明では限定されないが、例えば、1cm以上5cm以下の範囲内にある。なお、ツイーター用振動板10の形状は、ドーム型に限定されるものではなく、平面形状などのツイーター用振動板として用いられている各種の形状であってもよい。
【0012】
図2は、後述の実施例1で作製したツイーター用振動板の振動プロファイルである。振動プロファイルは、ツイーター用振動板を振動させたときの周波数と、その周波数でツイーター用振動板を振動させたときの振動加速度レベルとの関係を示す。
図2に示すように、振動プロファイルは、横軸がツイーター用振動板を振動させたときの周波数(単位:Hz)であり、縦軸が振動加速度レベル(単位:dBm/s
2/V)である。
【0013】
図3は、振動プロファイルの測定装置の一例のブロック図である。
図3において、振動プロファイル測定装置100は、パワーアンプ101と、LDV(レーザドップラ流速計)スキャニングヘッド102と、制御器103、計算機104とを有する。パワーアンプ101は、測定対象のツイーター用振動板を備える測定用ツイーター110に対して所定周波数の電気信号を送信して、ツイーター用振動板を振動させる。LDVスキャニングヘッド102は、レーザドップラ法によりツイーター用振動板の振動によって生じる空気の振動速度(流速)を測定する。制御器103は、パワーアンプ101とLDVスキャニングヘッド102とを制御すると共に、測定用ツイーター110に送信した電気信号の周波数と、空気の流速とを計算機104に送信する。
【0014】
振動プロファイルの測定は、次のようにして行うことができる。
まず、
図3に示すように、LDVスキャニングヘッド102の下方に測定用ツイーター110を配置する。LDVスキャニングヘッド102と測定用ツイーター110との距離Lは610nmとする。
【0015】
次に、測定用ツイーター110の端子をパワーアンプ101と接続する。LDVスキャニングヘッド102を用いて、レーザドップラ法によりツイーター用振動板の振動によって生じる空気の振動速度(流速)を測定しながら、パワーアンプ101にて、測定用ツイーター110に対して電気信号を送信する。電気信号の電圧は、例えば、測定用ツイーター110の端子電圧をテスター(AC電圧)で測定して0.3Vになるように調整する。電気信号の周波数は、例えば、20Hzから50kHzまでとする。
【0016】
計算機104にて、レーザドップラ法により得られた振動板の速度から振動加速度レベルを算出する。そして、測定用ツイーター110に送信した電気信号の周波数と振動加速度レベルとから振動プロファイルを作成する。
【0017】
図2に示すように、本実施形態のツイーター用振動板は、振動プロファイル周波数が20Hz以上20kHz以下の周波数帯では分割振動に起因するピークが検出されず、周波数が20kHzよりも大きく40kHz以下の範囲内の周波数帯で分割振動に起因するピークが複数検出される。分割振動とは、振動板が局所的に分割して振動し、振動板全体が波打つように振動した状態となる現象である。分割振動が発生すると、局所的な振動の干渉によって生成したピークが複数検出される。分割振動に起因する複数のピークのうちの最大ピークの高さは、複数のピークの平均の5倍以下であることが好ましい。ピークの高さはベースラインからの高さである。ベースラインは、ピークの始めとピークの終わりとを結ぶ直線である。
【0018】
ツイーター用振動板は、異方性を有する高弾性シートから構成されている。異方性を有するとは、高弾性シートの表面に沿って直交する方向において、弾性が異なる部位を有することを意味する。高弾性シートとしては、UDシート、織布を用いることができる。
【0019】
UDシートは、高弾性繊維を一方向に配向させてマトリックス樹脂に含侵させたものである。UDシートは、高弾性繊維が配向されている配向方向において弾性が高く、配向方向に直交する方向において弾性が低い特性を有する。UDシートで用いられる高弾性繊維は、引張弾性率が400GPa以上であることが好ましく、500GPa以上であることがより好ましい。高弾性繊維としては、炭素繊維、アラミド繊維、ポリ(p-フェニレンベンゾビスオキザール:PBO)繊維を用いることができる。炭素繊維の例としては、ピッチ系炭素繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、フェノール系炭素繊維などを挙げることができる。マトリックス樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよいし、熱硬化性樹脂であってもよい熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、液晶ポリマー樹脂またはこれらの樹脂を2種以上含むブレンド樹脂を用いることができる。
【0020】
図4は、本発明の第一実施形態に係るツイーター用振動板の原料として用いることができる高弾性シートの構成の一例であって、UDシートを用いた高弾性シートの分解斜視図である。
図4において、高弾性シート12は、5枚のUDシート13a~13eを積層した積層体である。UDシート13a~13eはそれぞれ、高弾性繊維14a~14eが矢印で示す方向に配向されている。UDシート13a~13eは、積層方向(Z方向)において対向するUDシートの高弾性繊維の配向の方向が90度ずつずらした状態で積層されている。すなわち、UDシート13a、13c、13eの高弾性繊維14a、14c、14eはX方向に配向されていて、UDシート13b、13dの高弾性繊維14b、14dはY方向に配向されている。高弾性シート12は、X方向の弾性とY方向の弾性が高く、X方向およびY方向以外の方向の弾性が低い異方性を有する。なお、高弾性シート12を構成するUDシートの枚数は、特に制限はない。UDシートの枚数は、2枚以上10枚以下の範囲内にあることが好ましく、3枚以上8枚以下の範囲内であることがより好ましく、3枚以上8枚以下の範囲内にあることがより好ましく、3枚または5枚であることがさらに好ましい。また、積層方向において対向するUDシートの高弾性繊維の配向方向の角度のずれは、特に制限はない。高弾性繊維の配向方向の角度は、例えば、30度、45度、60度、90度ずつずれていてもよい。
【0021】
織布は、縦糸と横糸とを交差させて布状に形成したものである。織布は、マトリックス樹脂に含侵させたものであることが好ましい。縦糸と横糸は高弾性繊維である。高弾性繊維は、引張弾性率が400GPa以上であることが好ましく、500GPa以上であることがより好ましい。織布で用いられる高弾性繊維およびマトリックス樹脂の例は、UDシートで用いられる高弾性繊維およびマトリックス樹脂と同じである。織布は、縦糸および横糸の延びる方向の弾性が、その他の方向と比較して弾性が高い異方性を有する。
【0022】
ツイーター用振動板10の製造方法としては、例えば、プレス成形法を用いることができる。プレス成形法は、高弾性シートを所定の型に挟んで、プレスする方法である。
【0023】
ツイーター用振動板10の高弾性繊維とマトリックス樹脂の含有量は、本発明では限定されないが、例えば、体積比で20:80~80:20の範囲内にある。高弾性繊維とマトリックス樹脂の含有量は、体積比で30:70~70:30の範囲内にあることが好ましい。
【0024】
ツイーター用振動板10の密度は、本発明では限定されないが、例えば、1.20/cm3以上1.94g/cm3以下の範囲内にある。ツイーター用振動板10の密度は、1.40/cm3以上1.90g/cm3以下の範囲内にあることが好ましく、1.60/cm3以上1.85g/cm3以下の範囲内にあることが特に好ましい。
【0025】
以上のような構成とされた本実施形態のツイーター用振動板10は、異方性を有する高弾性シートからなるので、共振振動が起こりにくい。また、本実施形態のツイーター用振動板10は、人間の可聴領域とされる20Hz以上20kHz以下の周波数帯では分割振動に起因するピークが検出されず、人間の可聴領域を超える周波数が20kHzよりも大きく40kHz以下の範囲内の周波数帯で分割振動に起因するピークが複数検出される。よって、本実施形態のツイーター用振動板10によれば、人間の可聴領域において、特異的なピークが発生せず、人間の可聴領域を超える領域で分割振動が生じるので特異的なピークが発生しない。このため、本実施形態のツイーター用振動板10はハイレゾ音源での高音領域の音質に優れる。
【0026】
また、本実施形態のツイーター用振動板10において、高弾性シートが、引張弾性率が400GPa以上の高弾性繊維の織布、または引張弾性率が400GPa以上の高弾性繊維を一方向に配向したUDシートを2層以上積層した積層体であって、積層方向に互いに対向する前記UDシートは前記高弾性繊維の配向の方向が異なる異方性積層体である場合には、引張弾性率の異方性が大きくなる。このため、分割振動が起こる周波数がより高くなるので、ハイレゾ音源での高音領域の音質がより向上する。
【0027】
また、本実施形態のツイーター用振動板10において、ドーム部11の直径が1cm以上5cm以下の範囲内にあると、分割振動が起こる周波数がさらに高くなるので、ハイレゾ音源での高音領域の音質がさらに向上する。
【0028】
また、本実施形態のツイーター用振動板10において、密度が1.2g/cm3以上1.94g/cm3以下の範囲内にあると、弾性が高くなるので、分割振動が起こる周波数がより確実に高くなるので、ハイレゾ音源での高音領域の音質がさらに向上する。
【0029】
また、本実施形態のツイーター用振動板10の振動プロファイルにおいて、分割振動に起因する複数のピークのうちの最大ピークの高さが、複数のピークの平均の5倍以下であると、分割振動によるピークのばらつきが小さくなるので、ハイレゾ音源での高音領域の音質がさらに向上する。
【0030】
[第二実施形態]
図5は、本発明の第二実施形態に係るツイーターを示す断面図である。
図5において、ツイーター20は、ツイーター用振動板10と、フレーム21と、トッププレート22と、スピーカケース23と、ボビン24と、ボイスコイル25と、ヨーク26と、第1磁石27と、第2磁石28と、を有する。
【0031】
フレーム21は、ツイーター用振動板10を振動可能に支持する。トッププレート22は、中央に孔部22aを有する円板である。スピーカケース23は、フレーム21とトッププレート22を支持する。ボビン24は筒状体であって、一方の端部がトッププレート22に固定され、他方の端部がトッププレート22の孔部22aの内側に位置するように配置されている。ボイスコイル25は、ボビン24の外周面に巻回されている。ヨーク26は、中央に凸部26aを有する円板である。ヨーク26の凸部26aは、ボビン24の内側に挿入される。第1磁石27は、中央に孔部を有する円板の永久磁石であり、ヨーク26の凸部26aの周囲に配置されている。第2磁石28は、中央に孔部を有する円板の永久磁石であり、スピーカケース23とヨーク26との間に配置されている。
【0032】
以上のような構成とされた本実施形態のツイーター20は、ツイーター用振動板10が第一実施形態のツイーター用振動板10であるため、ハイレゾ音源での高音領域の音質に優れる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【実施例0034】
[実施例1]
ピッチ系炭素繊維(引張弾性率:880GPa、密度:2.18g/cm3)を一方向に配向させて、ポリアミド樹脂(引張弾性率:2.9GPa、密度:1.2g/cm3)に含侵させたUDシートを用意した。UDシートのピッチ系炭素繊維とナイロン樹脂の含有量は、体積比で50:50であった。UDシートの密度は1.7g/cm3であった。
【0035】
UDシートのピッチ系炭素繊維の配向方向が90度ずつずれるように、3枚のUDシート積層した。得られたUDシートの積層体を、プレス成形法により成形して、ドーム部の直径が1インチのドーム型振動板を作製した。
次いで、得られたドーム型振動板を用いて、
図5に示す構成のツイーターを製造した。
【0036】
[実施例2]
ピッチ系炭素繊維(引張弾性率:785GPa、密度:2.17g/cm3)を一方向に配向させて、エポキシ樹脂(引張弾性率:2.0GPa、密度:1.2g/cm3)に含侵させたUDシートを用意した。UDシートのピッチ系炭素繊維とエポキシ樹脂の含有量は、体積比で50:50であった。UDシートの密度は1.7g/cm3であった。
このUDシートを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ドーム型振動板を作製し、得られたドーム型振動板をツイーターを製造した。
【0037】
[実施例3]
ピッチ系炭素繊維(引張弾性率:785GPa、密度:2.17g/cm3)を用いて作製した織布を、エポキシ樹脂(引張弾性率:2.0GPa、密度:1.2g/cm3)に含侵させた織布シートを用意した。織布シートのピッチ系炭素繊維とエポキシ樹脂の含有量は、体積比で50:50であった。織布シートの密度は1.7g/cm3であった。
UDシートの代わりに、この織布シート1枚を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ドーム型振動板を作製し、得られたドーム型振動板を用いてツイーターを製造した。
【0038】
[比較例1]
PAN系炭素繊維(引張弾性率:200GPa、密度:1.80g/cm3)を用いて作製した織布を、エポキシ樹脂(引張弾性率:2.0GPa、密度:1.2g/cm3)に含侵させた織布シートを用意した。織布シートのPAN系炭素繊維とエポキシ樹脂の含有量は、体積比で50:50であった。織布シートの密度は1.7g/cm3であった。
UDシートの代わりに、この織布シート1枚を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ドーム型振動板を作製し、得られたドーム型振動板を用いてツイーターを製造した。
【0039】
[比較例2]
UDシートの代わりに、アルミニウムシート(密度:2.7g/cm3)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ドーム型振動板を作製し、得られたドーム型振動板を用いてツイーターを製造した。
【0040】
[評価]
(振動板の振動プロファイル)
実施例1~3および比較例1~2で得られたツイーターを用いて、振動板の振動プロファイルを測定した。その結果を、
図6に示す。
【0041】
図6の結果から、実施例1~3で得られたツイーターの振動板は、周波数が20Hz以上20kHz以下の周波数帯では分割振動に起因するピークが検出されず、周波数が20kHzよりも大きく50kHz以下の範囲内の周波数帯で分割振動に起因するピークが検出された。この結果から、実施例1~3で得られたツイーターによれば、人間の可聴領域において特異的なピークが発生せず、人間の可聴領域を超える領域で分割振動が生じて特異的なピークが発生しないため、ハイレゾ音源での高音領域の音質に優れる。一方、比較例1で得られたツイーターの振動板は、周波数が20Hz以上20kHz以下の周波数帯では分割振動に起因するピークが検出された。比較例2で得られたツイーターの振動板(アルミニウムシート)は、共振によるピークが確認された。これは、アルミニウムシートは等方性であるためである。
10…ツイーター用振動板、11…ドーム部、12…高弾性シート、13a、13b、13c、13d、13e…UDシート、14a、14b、14c、14d、14e…高弾性繊維、20…ツイーター、21…フレーム、22…トッププレート、22a…孔部、23…スピーカケース、24…ボビン、25…ボイスコイル、26…ヨーク、26a…凸部、27…第1磁石、28…第2磁石、100…振動プロファイル測定装置、101…パワーアンプ、102…LDVスキャニングヘッド、103…制御器、104…計算機、110…測定用ツイーター