IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士通株式会社の特許一覧

特開2023-179957光切替装置、光切替システム、及び光切替方法
<>
  • 特開-光切替装置、光切替システム、及び光切替方法 図1
  • 特開-光切替装置、光切替システム、及び光切替方法 図2
  • 特開-光切替装置、光切替システム、及び光切替方法 図3
  • 特開-光切替装置、光切替システム、及び光切替方法 図4
  • 特開-光切替装置、光切替システム、及び光切替方法 図5
  • 特開-光切替装置、光切替システム、及び光切替方法 図6
  • 特開-光切替装置、光切替システム、及び光切替方法 図7
  • 特開-光切替装置、光切替システム、及び光切替方法 図8
  • 特開-光切替装置、光切替システム、及び光切替方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179957
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】光切替装置、光切替システム、及び光切替方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/03 20130101AFI20231213BHJP
   H04J 14/02 20060101ALI20231213BHJP
   H04B 10/27 20130101ALI20231213BHJP
   H04B 10/077 20130101ALI20231213BHJP
【FI】
H04B10/03
H04J14/02
H04B10/27
H04B10/077
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092945
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】續木 達也
(72)【発明者】
【氏名】石井 茂
(72)【発明者】
【氏名】藤田 武弘
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA46
5K102AD01
5K102LA21
5K102LA31
5K102LA52
5K102MA00
5K102MB10
5K102MB11
5K102MC03
5K102MH01
5K102MH13
5K102MH14
5K102MH22
5K102NA02
5K102PC12
5K102PC16
5K102PD14
5K102PH31
5K102PH41
5K102PH49
5K102RB12
(57)【要約】
【課題】マルチチャネル光から出力先のチャネルを精度良く特定する光切替装置、光切替システム、及び光切替方法を提供することを目的とする。
【解決手段】光切替装置は、マルチチャネル光が冗長的に入力される入力部と、前記マルチチャネル光から出力先のチャネルの正常な入力を確認するチャネル可変光フィルタと、正常に入力された前記チャネルを含む前記マルチチャネル光のいずれかを前記出力先である光伝送装置に出力する光スイッチと、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチチャネル光が冗長的に入力される入力部と、
前記マルチチャネル光から出力先のチャネルの正常な入力を確認するチャネル可変光フィルタと、
正常に入力された前記チャネルを含む前記マルチチャネル光のいずれかを前記出力先である光伝送装置に出力する光スイッチと、
を備える光切替装置。
【請求項2】
前記チャネル可変光フィルタは、前記マルチチャネル光の透過を制限することにより、前記出力先の前記チャネルの前記正常な入力を確認する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光切替装置。
【請求項3】
前記チャネル可変光フィルタは、前記出力先の前記チャネルのシングルチャネル光の一部の透過を許容し、前記出力先の前記チャネルを除いた残りのチャネルのシングルチャネル光又はマルチチャネル光の透過を規制することにより、前記出力先の前記チャネルの前記正常な入力を確認する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光切替装置。
【請求項4】
前記チャネル可変光フィルタを透過した前記出力先の前記チャネルのシングルチャネル光が入力される第1受光素子と、
前記第1受光素子への入力に基づいて、前記光スイッチを前記出力先の前記チャネルを含む前記マルチチャネル光の出力に切り替える切替制御部と、
をさらに含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光切替装置。
【請求項5】
前記出力先の前記チャネルの送信光が入力され、前記マルチチャネル光の前記チャネル可変光フィルタへの入力方向とは逆の入力方向で前記送信光を前記チャネル可変光フィルタに入力する光回路と、
前記チャネル可変光フィルタを透過した後の前記送信光が入力される第2受光素子と、
前記第2受光素子に入力される前記送信光の受光パワーが最大になる駆動電圧で前記チャネル可変光フィルタを駆動する駆動部と、
をさらに含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光切替装置。
【請求項6】
前記光回路には、前記光伝送装置から送信された前記送信光が入力される、
ことを特徴とする請求項5に記載の光切替装置。
【請求項7】
前記チャネル可変光フィルタを透過する前の前記送信光が入力される第3受光素子をさらに含み、
前記駆動部は、前記第3受光素子への入力に基づいて、前記光切替装置の立ち上げ時の処理を開始する、
ことを特徴とする請求項5に記載の光切替装置。
【請求項8】
前記駆動部は、前記駆動電圧にディザ信号を重畳して前記チャネル可変光フィルタの中心チャネルを維持する、
ことを特徴とする請求項5に記載の光切替装置。
【請求項9】
光分岐挿入装置と、
光伝送装置と、
マルチチャネル光が前記光分岐挿入装置から冗長的に入力される入力部、前記マルチチャネル光から出力先のチャネルの正常な入力を確認するチャネル可変光フィルタ、及び、正常に入力された前記チャネルを含む前記マルチチャネル光のいずれかを前記出力先である前記光伝送装置に出力する光スイッチを含む光切替装置と、
を備える光切替システム。
【請求項10】
マルチチャネル光が冗長的に入力され、
前記マルチチャネル光から出力先のチャネルの正常な入力をチャネル可変光フィルタで確認し、
正常に入力された前記チャネルを含む前記マルチチャネル光のいずれかを前記出力先である光伝送装置に出力する、
光切替方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、光切替装置、光切替システム、及び光切替方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メトロ系の光伝送システムは複数のOADM(Optical Add/Drop Multiplexer:光分岐挿入装置)を備えている。OADMは光ファイバといった光伝送路によりリング状に接続されている。このように、メトロ系の光伝送システムではリングネットワークが構築されている。リングネットワークの構成では、1つの波長に対してトランスポンダを2枚用いる第1の方式と、1つの波長に対してトランスポンダを1枚用いる第2の方式が知られている。第2の方式において、現用系光伝送路から予備系光伝送路に光パスを切り替える技術も知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
なお、OADM以外にも、ROADM(Reconfigurable OADM:再構成可能な光分岐挿入装置)が知られている。OADMやROADMにはWDM(Wavelength Division Multiplexing:波長分割多重)ネットワークを効率よく、フレキシブルに、構築、変更、管理する機能が求められる。例えば、ROADMにはCDCG(Color-less, Direction-less, Contention-less, Grid-less)機能が求められる。Color-less機能は波長依存性(Colored)の制限を回避する機能である。Direction-less機能は方路依存性(Directional)の制限を回避する機能である。Contention-less機能は同一波長の衝突(Contention)の制限を回避する機能である。Grid-less機能は等間隔の光周波数(又は波長)グリッド上の波長多重や帯域の制限を回避する機能である(例えば特許文献2及び3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-175835号公報
【特許文献2】特開2017-034542号公報
【特許文献3】特開2012-105223号公報
【特許文献4】特開平6-120895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
第2の方式における現用系光伝送路から予備系光伝送路への光パスの切り替えは光パス切替装置によって行われる。光パス切替装置により光伝送路が現用系光伝送路と予備系光伝送路に二重化されている。光パス切替装置は、例えばCDCG機能を備えるROADM(以下、ROADM装置と記載)と、トランスポンダとの間に設けられる。第2の方式であるため、1つの波長に対してトランスポンダが1枚用いられる。
【0006】
ここで、ROADM装置には隣接するROADM装置から出力された多波長光(例えばWDM信号光など)が入力される。多波長光が入力されると、ROADM装置は多波長光から任意の波長の波長光を分離して光パス切替装置に出力し、トランスポンダに導く。分離される波長光の波長はROADM装置に接続されたネットワーク管理装置により設定される。ROADM装置は、設定に基づいて、多波長光から、1つの波長(単波長)である単波長光(以下、シングルチャネル光と記載)を分離する場合もあれば、複数の波長を含む複波長光(以下、マルチチャネル光と記載)を分離する場合もある。
【0007】
シングルチャネル光であれば、光パス切替装置は、現用系光伝送路に障害が発生してシングルチャネル光の入力を検知できなくなった時点で予備系光伝送路に光パスを切り替えることができる。1枚のトランスポンダは1つの波長に対応するため、光パス切替装置はシングルチャネル光を出力先であるトランスポンダに出力することができる。
【0008】
一方、マルチチャネル光の場合、光パス切替装置は、現用系光伝送路から予備系光伝送路に光パスを切り替えても、マルチチャネル光がトランスポンダに対応する1つの波長を含むとは限らない。このため、この波長をマルチチャネル光から特定しなければ、光パスを切り替えても、光パス切替装置はトランスポンダに対応する波長を含むマルチチャネル光をトランスポンダに出力することができない。すなわち、ROADM装置から出力されたマルチチャネル光が入力される場合、光パス切替装置はトランスポンダに対応する1つの波長の正常な入力を確認してからでないと、光パスを切り替えることができない。
【0009】
そこで、1つの側面では、マルチチャネル光から出力先のチャネルを精度良く特定する光切替装置、光切替システム、及び光切替方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの実施態様では、光切替装置は、マルチチャネル光が冗長的に入力される入力部と、前記マルチチャネル光から出力先のチャネルの正常な入力を確認するチャネル可変光フィルタと、正常に入力された前記チャネルを含む前記マルチチャネル光のいずれかを前記出力先である光伝送装置に出力する光スイッチと、を備える。
【発明の効果】
【0011】
マルチチャネル光から出力先のチャネルを精度良く特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1はWDMネットワークの一例である。
図2図2は光切替システムの一例である。
図3図3は光パス切替装置の一例である。
図4図4は波長特定部の一例である。
図5図5は光パス切替装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図6図6(a)は第1制御処理の一例を示すフローチャートである。図6(b)は第2制御処理の一例を示すフローチャートである。
図7図7はTOF(Tunable Optical Filter)の駆動電圧と中心波長と受光電流の関係の一例を示すグラフである。
図8図8はTOFにおける光スペクトルの一例である。
図9図9は効果の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本件を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1に示すように、WDMネットワークNWは、リングネットワーク#1,#2を含んでいる。リングネットワーク#1,#2はそれぞれ光伝送路(具体的には光ファイバ)を介してシングルチャネル光やマルチチャネル光など様々なチャネル光を伝送する。
【0015】
例えば、リングネットワーク#1は波長λ1のシングルチャネル光や、波長λ2のシングルチャネル光を伝送する。リングネットワーク#1は互いに異なる波長λ1,λ2を含むマルチチャネル光や、互いに異なる波長λ1,λ2,λ3を含むマルチチャネル光を伝送する。同様に、リングネットワーク#2は波長λ3のシングルチャネル光や、互いに異なる波長λ1,λ2,λ3を含むマルチチャネル光を伝送する。なお、マルチチャネル光はWDM技術により互いに異なる波長を多重化(又は合波)したチャネル光であってもよい。
【0016】
リングネットワーク#1,#2は複数のROADM装置10,20,30,40,50を備えている。リングネットワーク#1,#2はROADM装置20,40,50を共用している。ここで、ROADM装置10は光伝送路を介して異なる局舎のROADM装置20,50に接続されている。ROADM装置10は光伝送路より短い局内配線を介して同じ局舎内の光パス切替装置11に接続されている。ROADM装置20は光伝送路を介して異なる局舎のROADM装置10,30,40に接続されている。ROADM装置20は同じ局舎内で局内配線を介して光パス切替装置21に接続されている。ROADM装置30は光伝送路を介して異なる局舎のROADM装置20,50に接続されている。ROADM装置30は同じ局舎内で局内配線を介して光パス切替装置31に接続されている。ROADM装置40は光伝送路を介して異なる局舎のROADM装置20,50に接続されている。ROADM装置50は光伝送路を介して異なる局舎のROADM装置10,30,40に接続されている。ROADM装置50は同じ局舎内で局内配線を介して3つの光パス切替装置51,52,53に接続されている。なお、光パス切替装置11,21,31,51,52,53は光切替装置の一例である。
【0017】
また、光パス切替装置11は同じ局舎内で局内配線を介してトランスポンダ(図1においてTRPNと表記)15と接続されている。光パス切替装置21は同じ局舎内で局内配線を介してトランスポンダ25と接続されている。光パス切替装置31は同じ局舎内で局内配線を介してトランスポンダ35と接続されている。光パス切替装置51,52,53はそれぞれ同じ局舎内で局内配線を介してトランスポンダ55,56,57と接続されている。なお、トランスポンダ15,25,35,55,56,57は光伝送装置の一例である。
【0018】
トランスポンダ15は波長λ1のシングルチャネル光を出力する。光パス切替装置11にはこの波長λ1のシングルチャネル光が入力される。波長λ1のシングルチャネル光が入力されると、光パス切替装置11は波長λ1のシングルチャネル光を2つに分岐し、いずれもROADM装置10に出力する。なお、トランスポンダ25,35及び光パス切替装置21,31は基本的にトランスポンダ15及び光パス切替装置11と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0019】
ROADM装置10は波長λ1のシングルチャネル光の一方をROADM装置20に出力する。また、ROADM装置10は波長λ1のシングルチャネル光の他方をROADM装置10に入力された波長λ2のシングルチャネル光と合波して波長λ1,λ2のマルチチャネル光を生成し、ROADM装置50に出力する。ROADM装置20は波長λ2のシングルチャネル光の一方をROADM装置10に出力する。また、ROADM装置20は波長λ2のシングルチャネル光の他方をROADM装置20に入力された波長λ1のシングルチャネル光及び波長λ3のシングルチャネル光と合波して波長λ1,λ2,λ3のマルチチャネル光を生成し、ROADM装置40に出力する。
【0020】
ROADM装置30は波長λ3のシングルチャネル光の一方をROADM装置20に出力し、波長λ3のシングルチャネル光の他方をROADM装置50に出力する。ROADM装置40は入力された波長λ1,λ2,λ3のマルチチャネル光を増幅してROADM装置50に出力する。ROADM装置50は入力された波長λ3のシングルチャネル光を光パス切替装置51に出力する。ROADM装置50は入力された波長λ1,λ2,λ3のマルチチャネル光を光パス切替装置51,52,53に出力する。ROADM装置50は入力された波長λ1,λ2のマルチチャネル光を光パス切替装置52,53に出力する。このように、ROADM装置50はマルチチャネル光を光パス切替装置51,52,53に出力する場合がある。
【0021】
光パス切替装置51は入力された波長λ1,λ2,λ3のマルチチャネル光からトランスポンダ55に対応する波長λ3を特定する。光パス切替装置51は波長λ3を特定すると、入力された波長λ1,λ2,λ3を含むマルチチャネル光と、入力された波長λ3のシングルチャネル光のいずれかをトランスポンダ55に出力する。例えば、現用系光伝送路に障害が発生しておらず、正常な運用状態である通常状態であれば、光パス切替装置51は入力された波長λ3のシングルチャネル光をトランスポンダ55に出力する。逆に、現用系光伝送路に障害が発生した異常状態であれば、光パス切替装置51は入力された波長λ1,λ2,λ3を含むマルチチャネル光をトランスポンダ55に出力する。
【0022】
光パス切替装置52は、通常状態であれば、入力された波長λ1,λ2,λ3のマルチチャネル光から、トランスポンダ56に対応する波長λ2を特定する。光パス切替装置52は波長λ2を特定すると、入力された波長λ1,λ2,λ3を含むマルチチャネル光をトランスポンダ56に出力する。光パス切替装置52は、異常状態であれば、入力された波長λ1,λ2のマルチチャネル光から、トランスポンダ56に対応する波長λ2を特定する。光パス切替装置52は波長λ2を特定すると、入力された波長λ1,λ2を含むマルチチャネル光をトランスポンダ56に出力する。
【0023】
光パス切替装置53は、通常状態であれば、入力された波長λ1,λ2,λ3のマルチチャネル光から、トランスポンダ57に対応する波長λ1を特定する。光パス切替装置52は波長λ1を特定すると、入力された波長λ1,λ2,λ3を含むマルチチャネル光をトランスポンダ57に出力する。光パス切替装置53は、異常状態であれば、入力された波長λ1,λ2のマルチチャネル光から、トランスポンダ57に対応する波長λ1を特定する。光パス切替装置53は波長λ1を特定すると、入力された波長λ1,λ2を含むマルチチャネル光をトランスポンダ57に出力する。
【0024】
このように、本実施形態では1つの波長に対してトランスポンダを1枚用いる方式であるため、トランスポンダ55には単一の波長λ3のシングルチャネル光が入力される。同様に、トランスポンダ56には単一の波長λ2のシングルチャネル光が入力され、トランスポンダ57には単一の波長λ1のシングルチャネル光が入力される。なお、図1に示すように、ROADM装置50、光パス切替装置51,52,53、及びトランスポンダ55,56,57によって光切替システムSTを構築することができる。
【0025】
次に、図2を参照して、ROADM装置50の詳細を説明する。なお、ROADM装置10,20,30,40は基本的にROADM装置50と同様の構成を有するため、詳細な説明は省略する。
【0026】
ROADM装置50はMCS(Multicast Switch)60と6つのクライアント側光入出力ポート(以下、単に光ポートという)C1,C2,C3,C4,C5,C6を備えている。6つの光ポートC1,C2,C3,C4,C5,C6はMCS60と接続されている。また、光ポートC1,C3は光パス切替装置51に接続されている。光ポートC2,C5は光パス切替装置52に接続されている。光ポートC4,C6は光パス切替装置53に接続されている。MCS60は、3つの1×6光スプリッタ(図2以後においてSPLと表記)61,62,63と、6つの3×1光スイッチ(図2以後においてSWと表記)71,72,73,74,75,76を備えている。図2において、1×6光スプリッタ61,62,63はそれぞれ3×1光スイッチ71,72,73,74,75,76の全てと接続されているが、一部の接続を省略して示している。
【0027】
1×6光スプリッタ61はROADM装置50の第1方路から入力された波長λ3のシングルチャネル光を6つに分岐する。1×6光スプリッタ62はROADM装置50の第2方路から入力された波長λ1,λ2,λ3のマルチチャネル光を6つに分岐する。1×6光スプリッタ63はROADM装置50の第3方路から入力された波長λ1,λ2のマルチチャネル光を6つに分岐する。なお、方路は接続対象との間に延びる光伝送路を表している。
【0028】
3×1光スイッチ71は、第1方路、第2方路、第3方路の中の所望の1つである第1方路を方路選択し、第1方路からのシングルチャネル光を3×1光スイッチ71に接続された光ポートC1から出力する。言い換えれば、第2方路及び第3方路から入力される各マルチチャネル光は遮断される。これにより、光ポートC1における同一波長λ3の衝突を回避することができる。3×1光スイッチ71は波長λ3のシングルチャネル光を、光ポートC1を介して光パス切替装置51に出力する。
【0029】
3×1光スイッチ72,73,74は、いずれも、第1方路、第2方路、第3方路の中の所望の1つである第2方路を方路選択する。3×1光スイッチ72,73,74は第2方路からのマルチチャネル光を3×1光スイッチ72,73,74のそれぞれに接続された光ポートC2,C3,C4から出力する。言い換えれば、第1方路から入力されるシングルチャネル光及び第3方路から入力されるマルチチャネル光はいずれも遮断される。これにより、光ポートC2,C3,C4における同一波長λ2の衝突を回避することができる。3×1光スイッチ72,73,74は波長λ1,λ2,λ3のマルチチャネル光をそれぞれ、光ポートC2,C3,C4を介して光パス切替装置51,52,53に出力する。
【0030】
3×1光スイッチ75,76は、いずれも、第1方路、第2方路、第3方路の中の所望の1つである第3方路を方路選択する。3×1光スイッチ75,76は第3方路からのマルチチャネル光を3×1光スイッチ75,76のそれぞれに接続された光ポートC5,C6から出力する。言い換えれば、第1方路から入力されるシングルチャネル光及び第2方路から入力されるマルチチャネル光はいずれも遮断される。これにより、光ポートC5,C6における同一波長λ1の衝突を回避することができる。3×1光スイッチ75,76は波長λ1,λ2のマルチチャネル光をそれぞれ、光ポートC5,C5を介して光パス切替装置52,53に出力する。
【0031】
次に、図3を参照して、光パス切替装置52の詳細を説明する。なお、光パス切替装置51,53は基本的に光パス切替装置52と同様の構成を有するため、詳細な説明は省略する。
【0032】
光パス切替装置52は、光スプリッタ81,91、波長特定部82,92、切替制御部100、及び光スイッチ101を備えている。また、光パス切替装置52は、光スプリッタ83,84,93,94,102、フォトダイオード(図3以後においてPDと表記)85,95を備えている。さらに、光パス切替装置52は、ROADM側光入力ポートR2r,R5r、ROADM側光出力ポートR2t,R5t、クライアント側光出力ポートC1t、及びクライアント側光入力ポートC1rを備えている。ROADM側光入力ポートR2r,R5rは入力部の一例である。
【0033】
なお、本実施形態では、一例として、光スプリッタ81と光スイッチ101を結ぶ光パスを現用系光パスとして説明し、光スプリッタ91と光スイッチ101を結ぶ光パスを予備系光パスとして説明する。光スプリッタ91と光スイッチ101を結ぶ光パスを現用系光パスとし、光スプリッタ81と光スイッチ101を結ぶ光パスを予備系光パスとしてもよい。
【0034】
光スプリッタ81はROADM側光入力ポートR2rと接続されている。ROADM側光入力ポートR2rは光ポートC2と同じ局舎内で局内配線を介して接続されている。したがって、ROADM側光入力ポートR2rには光ポートC2から出力された波長λ1,λ2,λ3のマルチチャネル光が入力される。これにより、光スプリッタ81にはROADM側光入力ポートR2rから出力された波長λ1,λ2,λ3のマルチチャネル光が入力される。また、光スプリッタ81は波長特定部82と光スイッチ101にも接続されている。したがって、光スプリッタ81は波長λ1,λ2,λ3のマルチチャネル光を2つに分岐して、波長特定部82と光スイッチ101のそれぞれに出力することができる。
【0035】
光スプリッタ91はROADM側光入力ポートR5rと接続されている。ROADM側光入力ポートR5rは光ポートC5と局内配線を介して接続されている。したがって、ROADM側光入力ポートR5rには光ポートC5から出力された波長λ1,λ2のマルチチャネル光が入力される。これにより、光スプリッタ91にはROADM側光入力ポートR5rから出力された波長λ1,λ2のマルチチャネル光が入力される。また、光スプリッタ91は波長特定部92と光スイッチ101にも接続されている。したがって、光スプリッタ91は波長λ1,λ2のマルチチャネル光を2つに分岐して、波長特定部92と光スイッチ101のそれぞれに出力することができる。
【0036】
このように、光パス切替装置52には、ROADM側光入力ポートR2r,R5rにより、波長λ1,λ2,λ3のマルチチャネル光と波長λ1,λ2のマルチチャネル光が冗長的に入力される。
【0037】
波長特定部82には光スプリッタ81から出力された波長λ1,λ2,λ3のマルチチャネル光が入力される。波長特定部82は、このマルチチャネル光が入力されると、マルチチャネル光がトランスポンダ56に対応する特定の1つの波長λ2を含むか否かを確認する。例えば、上述した通常状態であれば、波長特定部82はマルチチャネル光が波長λ2を含むと確認することができる。逆に、上述した異常状態であれば、波長特定部82にはマルチチャネル光が入力されない場合がある。また、異常状態であれば、仮に波長特定部82にマルチチャネル光が入力されても、マルチチャネル光が波長λ2を含んでいない可能性もある。このような場合、波長特定部82はマルチチャネル光が波長λ2を含まないと確認することができる。なお、波長特定部82の詳細な構成については後述する。また、波長特定部92は基本的に波長特定部82と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0038】
切替制御部100は波長特定部82,92を監視し、監視結果に基づいて光スイッチ101の切り替えを制御する。例えば、通常状態から異常状態に移行すれば、切替制御部100は光スイッチ101の光パスを現用系光パスから予備系光パスに切り替える。一方、光伝送路の障害が復旧し、異常状態から通常状態に移行した場合には、切替制御部100は光スイッチ101の光パスを予備系光パスから現用系光パスに切り替えることもあれば、切り替えないこともある。例えば、障害が復旧後に予備系光パスを新たに現用系光パスとして運用し、元の現用系光パスを新たに予備系光パスとして運用する場合には、切替制御部100は光スイッチ101の光パスを予備系光パスから現用系光パスに切り替えなくてもよい。
【0039】
なお、切替制御部100はハードウェア回路によって実現することができる。ハードウェア回路はCPU(Central Processing Unit)を含むプロセッサとメモリであってもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)であってもよい。また、ハードウェア回路はLSI(Large-Scale Integration)であってもよいし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)であってもよい。
【0040】
光スイッチ101は、現用系光パスに制御されている場合、光スプリッタ81から入力された波長λ1,λ2,λ3を含むマルチチャネル光を出力する。光スイッチ101は、予備系光パスに制御されている場合、光スプリッタ91から入力された波長λ1,λ2を含むマルチチャネル光を出力する。
【0041】
光スイッチ101はクライアント側光出力ポートC1tに接続されている。クライアント側光出力ポートC1tはトランスポンダ56の受信部Rxと同じ局舎内で局内配線を介して接続されている。したがって、光スイッチ101から出力されたマルチチャネル光はクライアント側光出力ポートC1tを経由してトランスポンダ56の受信部Rxに入力される。
【0042】
このように、光スイッチ101は、トランスポンダ56に、光パス切替装置52に接続されたトランスポンダ56が対象とする波長λ2を含むマルチチャネル光を出力する。光スイッチ101が現用系光パスに制御されている通常状態であれば、波長λ1,λ2,λ3を含むマルチチャネル光をトランスポンダ56に出力する。光スイッチ101が予備系光パスに制御されている異常状態であれば、波長λ1,λ2を含むマルチチャネル光をトランスポンダ56に出力する。すなわち、光スイッチ101は、正常状態であっても異常状態であっても、トランスポンダ56が対象とする波長λ2を含むマルチチャネル光を出力する。
【0043】
光スプリッタ102はクライアント側光入力ポートC1rに接続されている。クライアント側光入力ポートC1rはトランスポンダ56の送信部Txと同じ局舎内で局内配線を介して接続されている。したがって、クライアント側光入力ポートC1rには送信部Txから送信された波長λ2´のシングルチャネル光(以下、波長λ2´の送信光という)が入力される。光スプリッタ102にはクライアント側光入力ポートC1rから出力された波長λ2´の送信光が入力される。なお、波長λ2´は波長λ2と共通する。具体的には、波長λ2´は波長λ2と同一又は近似する。また、光スプリッタ102は光スプリッタ83,93と接続されている。したがって、光スプリッタ102は波長λ2´の送信光を2つ分岐して、光スプリッタ83,93のそれぞれに出力することができる。
【0044】
光スプリッタ83はROADM側光出力ポートR2t及び光スプリッタ84と接続されている。光スプリッタ83は波長λ2´の送信光を2つに分岐して、ROADM側光出力ポートR2t及び光スプリッタ84のそれぞれに出力する。ROADM側光出力ポートR2tは光ポートC2と同じ局舎内で局内配線を介して接続されている。したがって、ROADM側光出力ポートR2tには波長λ2´の送信光が入力される。光ポートC2にはROADM側光出力ポートR2tから出力された波長λ2´の送信光が入力される。
【0045】
光スプリッタ93はROADM側光出力ポートR5t及び光スプリッタ94と接続されている。光スプリッタ93は波長λ2´の送信光を2つに分岐して、ROADM側光出力ポートR5t及び光スプリッタ94のそれぞれに出力する。ROADM側光出力ポートR5tは光ポートC5と同じ局舎内で局内配線を介して接続されている。したがって、ROADM側光出力ポートR5tには光スプリッタ93から出力された波長λ2´の送信光が入力される。光ポートC5にはROADM側光出力ポートR5tから出力された波長λ2´の送信光が入力される。
【0046】
光スプリッタ84は波長λ2´の送信光を2つに分岐して、波長特定部82とフォトダイオード85のそれぞれに出力する。波長特定部82は、光スプリッタ84から入力された波長λ2´の送信光に基づいて、マルチチャネル光がトランスポンダ56に対応する特定の1つの波長λ2を含むか否かを確認する。フォトダイオード85は光スプリッタ84から入力された波長λ2´の送信光の受光パワーを検出する。なお、本実施形態では、光パス切替装置52に光スプリッタ84及びフォトダイオード85を設けたが、後述する切替制御部100の制御内容によっては、光スプリッタ84及びフォトダイオード85を設けずに省略してもよい。
【0047】
光スプリッタ94は波長λ2´の送信光を2つに分岐して、波長特定部92とフォトダイオード95のそれぞれに出力する。波長特定部92は、光スプリッタ94から入力された波長λ2´の送信光に基づいて、マルチチャネル光がトランスポンダ56に対応する特定の1つの波長λ2を含むか否かを確認する。フォトダイオード95は光スプリッタ94から入力された波長λ2´の送信光の受光パワーを検出する。なお、本実施形態では、光パス切替装置52に光スプリッタ94及びフォトダイオード95を設けたが、上述した制御内容によっては、光スプリッタ94及びフォトダイオード95を設けずに省略してもよい。
【0048】
次に、図4を参照して、波長特定部82の詳細を説明する。
【0049】
波長特定部82は、第1光サーキュレータ82A、TOF82B、第2光サーキュレータ82C、フォトダイオード82D,82E、及びTOFドライバ82Fを含んでいる。第1光サーキュレータ82A及び第2光サーキュレータ82CはTOF82Bの前後に配置される。TOF82Bはチャネル可変光フィルタの一例である。第2光サーキュレータ82Cは光回路の一例である。フォトダイオード82Dは第1受光素子の一例である。フォトダイオード82Eは第2受光素子の一例である。TOFドライバ82Fは駆動部の一例である。なお、図4に示す波長特定部82の外部に設けられたフォトダイオード85は第3受光素子の一例である。
【0050】
第1光サーキュレータ82A及び第2光サーキュレータ82Cはいずれも3ポートタイプの光サーキュレータである。3ポートタイプの光サーキュレータでは、第1ポートに入力された光は第2ポートから出力される。第2ポートに入力された光は第3ポートから出力される。第3ポートに入力された光は第1ポートから出力される。
【0051】
なお、波長特定部92は基本的に波長特定部82と同様の構成を有するため、詳細な説明は省略する。例えば、波長特定部82が備えるフォトダイオード82Dと同様のフォトダイオード92Dを波長特定部92は備えている。
【0052】
第1光サーキュレータ82Aは、波長λ1,λ2,λ3のマルチチャネル光が波長特定部82に入力されると、このマルチチャネル光は第1光サーキュレータ82Aの第1ポートに入力される。第1光サーキュレータ82Aは、波長λ1,λ2,λ3のマルチチャネル光が第1ポートに入力されると、TOF82Bと接続された第1光サーキュレータ82Aの第2ポートから出力する。これにより、TOF82Bには波長λ1,λ2,λ3のマルチチャネル光が入力される。一方、第1光サーキュレータ82Aは、TOF82Bを透過した波長λ2´の送信光が第2ポートに入力されると、フォトダイオード82Eと接続された第1光サーキュレータ82Aの第3ポートから出力する。これにより、フォトダイオード82Eに波長λ2´の送信光が入力される。
【0053】
TOF82Bは、TOFドライバ82Fから出力される駆動電圧に基づいて、特定の1つの波長を有するシングルチャネル光の一部の透過を許容する。言い換えれば、TOF82Bはこの特定の1つの波長を除いた残りの波長を有するシングルチャネル光又はマルチチャネル光の透過を制限(具体的には規制)する。本実施形態では、TOF82Bはトランスポンダ56に対応する波長λ2のシングルチャネル光の一部の透過を許容するように適切に制御する。制御の詳細は後述する。このように適切に制御した状態において、TOF82Bに波長λ1,λ2,λ3のマルチチャネル光が入力されると、TOF82Bは波長λ2のシングルチャネル光の一部を透過する。これにより、TOF82Bは波長λ2の有無又は波長λ2の正常な入力を波長λ1,λ2,λ3のマルチチャネル光に確認することができる。なお、波長λ2と波長λ2´は共通するため、TOF82Bは波長λ2´の送信光の一部の透過も許容する。
【0054】
第2光サーキュレータ82Cは、波長λ2´の送信光が波長特定部82に入力されると、この送信光は第2光サーキュレータ82Cの第3ポートに入力される。第2光サーキュレータ82Cは、波長λ2´の送信光が第3ポートに入力されると、TOF82Bと接続された第2光サーキュレータ82Cの第1ポートから出力する。これにより、TOF82Bには波長λ2´の送信光が入力される。一方、第2光サーキュレータ82Cは、TOF82Bを透過した波長λ2のシングルチャネル光の一部が第1ポートに入力されると、フォトダイオード82Dと接続された第2光サーキュレータ82Cの第2ポートから出力する。これにより、フォトダイオード82Dには波長λ2のシングルチャネル光の一部が入力される。
【0055】
フォトダイオード82Dは入力された波長λ2のシングルチャネル光の一部の受光パワーを検出する。フォトダイオード82Eは入力された波長λ2´の送信光の一部の受光パワーを検出する。
【0056】
TOFドライバ82Fは、フォトダイオード85が検出した受光パワーに応じた受光電流を監視し、受光電流が所定値以上になるまで待機する。TOFドライバ82Fは、受光電流が所定値以上になると、光パス切替装置52に波長λ2´の送信光が入力されたと判断する。これにより、TOFドライバ82Fは光パス切替装置52の立ち上げ時の第1制御処理を開始する。詳細は後述するが、第1制御処理は駆動電圧をスイープ(掃引)し、フォトダイオード82Eが検出した受光パワーに応じた受光電流が最大になる駆動電圧を発見する処理である。
【0057】
また、TOFドライバ82Fは第1制御処理を終了すると、運用状態に移行し、後述する第2制御処理を開始する。第2制御処理は、フォトダイオード82Eが検出した受光パワーに応じた受光電流に基づいて、駆動電圧を低速にディザ制御し、TOF82Bの中心波長を維持する処理である。ディザ制御は駆動電圧にディザ信号を重畳する制御であって、駆動電圧を小刻みに揺動する制御を含んでいる。フォトダイオード82Eに代えて、フォトダイオード82Dを利用してもよい。なお、TOFドライバ82Fは上述したハードウェア回路によって実現することができる。TOFドライバ82Fは切替制御部100と一体(例えば1チップ)であってもよいし、別体(例えば2チップ以上)であってもよい。
【0058】
次に、図5を参照して、光パス切替装置52の概略的な動作について説明する。光パス切替装置52はTOFドライバ82Fと切替制御部100が連携して動作する。なお、光パス切替装置51,53については基本的に光パス切替装置52の動作と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0059】
まず、TOFドライバ82Fは光パス切替装置52の電源がONになるまで待機する(ステップS1:NO)。電源がONになると(ステップS1:YES)、光パス切替装置52に電力が供給され、TOFドライバ82Fは後述する第1制御処理を開始する(ステップS2)。第1制御処理を終了すると、TOFドライバ82Fは運用状態に移行し(ステップS3)、後述する第2制御処理を開始する(ステップS4)。
【0060】
第2制御処理を終了すると、TOFドライバ82Fは運用状態が終了するまで、第2制御処理を繰り返す(ステップS5:NO)。すなわち、運用中では第2制御処理が繰り返される。運用状態が終了すると(ステップS5:YES)、TOFドライバ82Fは処理を終了する。例えば光パス切替装置52の保守作業や交換が発生すると、運用状態が終了し、TOFドライバ82Fは処理を終了する。
【0061】
次に、図6乃至図8を参照して、上述した第1制御処理及び第2制御処理の詳細について説明する。
【0062】
まず、第1制御処理について説明する。図6(a)に示すように、第1制御処理が開始すると、TOFドライバ82Fは光パス切替装置52に波長λ2´の送信光が入力されるまで待機する(ステップS11:NO)。具体的には、TOFドライバ82Fはフォトダイオード85が検出した受光パワーに応じた受光電流を監視し、受光電流が所定値以上になるまで待機する。受光電流が所定値以上になると、TOFドライバ82Fは光パス切替装置52に波長λ2´の送信光が入力されたと判断する(ステップS11:YES)。波長λ2´の送信光が入力されると、TOFドライバ82Fは、フォトダイオード82Eが検出した受光パワーに応じた受光電流に基づいて、TOF82Bの駆動電圧を特定し(ステップS12)、第1制御処理を終了する。
【0063】
具体的には、図7に示すように、TOFドライバ82Fは、フォトダイオード82Eが検出した受光パワーに応じた受光電流から最大受光電流を特定し、特定した最大受光電流に対応する駆動電圧V_λ2を発見して特定する。TOF82Bが透過する中心波長(又は中心チャネル)は駆動電圧に応じて変化するが、この駆動電圧V_λ2でTOF82Bを制御すれば、フォトダイオード82Eが検出する波長λ2´の送信光の受光パワーが最大になる。結果的に受光電流が最大になる。
【0064】
ここで、上述したように、波長λ2´と波長λ2は共通する。このため、駆動電圧V_λ2でTOF82Bを制御すれば、TOF82Bは波長λ2´だけでなく、波長λ2も透過する。一方で、波長λ2と異なる波長λ1,λ3は遮断される。したがって、波長λ1,λ2,λ3のマルチチャネル光がTOF82Bに入力されると、入力方向とは逆の入力方向で入力された波長λ2´の送信光に起因して、TOF82Bは波長λ2のシングルチャネル光の一部を出力する。
【0065】
すなわち、受光最大電流に対応する駆動電圧V_λ2によってTOFドライバ82FがTOF82Bの中心波長を中心波長λ2に制御すると、TOF82Bは波長λ2のシングルチャネル光の一部を出力する。このように、駆動電圧V_λ2を特定すれば、TOFドライバ82FはTOF82Bの中心波長を駆動電圧V_λ2に応じた中心波長λ2に制御することができる。
【0066】
これにより、図8に示すように、波長λ1,λ2,λ3のマルチチャネル光がTOF82Bに入力されても、TOF82Bは波長λ2のシングルチャネル光の一部を透過する。特に、波長λ2の周波数帯F1(GHz:ギガヘルツ)より狭い周波数帯F2(GHz)で波長λ2の光スペクトルを切り取ることで、TOF82Bから出力される波長λ2のシングルチャネル光の一部への波長λ1,λ3の混在を高精度に回避することができる。フォトダイオード82Dはこのようなシングルチャネル光の一部の受光パワーを検出する。なお、第1制御処理において、ステップS11の処理は省略してもよい。この場合、光スプリッタ84,94及びフォトダイオード85,95を省略することができ、これにより、光パス切替装置52を小型化することができる。
【0067】
次に、第2制御処理について説明する。図6(b)に示すように、第2制御処理が開始すると、TOFドライバ82Fは駆動電圧をディザ制御する(ステップS21)。より詳しくは、TOFドライバ82Fは駆動電圧を低速にディザ制御し、TOF82Bの中心波長(即ち中心チャネル)を維持する。図7を参照して説明したTOF82Bの駆動電圧と中心波長の直線的な関係は温度変化や時間経過に応じて変化する。このため、TOFドライバ82Fは駆動電圧を低速にディザ制御し、TOF82Bの中心波長を維持する。これにより、フォトダイオード82Dは波長λ2のシングルチャネル光の受光パワーを最大に近い状態でほぼ定常的に検出することができる。
【0068】
次いで、切替制御部100は光パスの切替要否を決定する(ステップS22)。より詳しくは、切替制御部100はフォトダイオード82Dが検出した受光パワーに応じた現用系受光電流を監視する。同様に、切替制御部100はフォトダイオード92Dが検出した受光パワーに応じた予備系受光電流を監視する。切替制御部100は、現用系受光電流と予備系受光電流に基づいて、障害発生の有無を判断し、光パスの切替要否を決定する。
【0069】
光パスの切替が必要である場合(ステップS23:YES)、切替制御部100は光スイッチ101の光パスを切り替え(ステップS24)、TOFドライバ82Fは第2制御処理を終了する。光パスの切替が不要である場合(ステップS23:NO)、ステップS24の処理をスキップして、TOFドライバ82Fは第2制御処理を終了する。
【0070】
例えば、光伝送路の二重化により現用系受光電流と予備系受光電流の両方が発生している場合、切替制御部100は通常状態であると判断する。この場合、光スイッチ101の光パスが現用系光パスに維持されていれば、切替制御部100は光パスの切替不要を決定する。現用系受光電流が発生せずに、予備系受光電流が発生している場合、切替制御部100は異常状態であると判断する。この場合、光スイッチ101の光パスが現用系光パスであれば、光パスの切替要を決定する。光スイッチ101の光パスが予備系光パスに維持されている状態で、障害復旧等により現用系受光電流と予備系受光電流の両方が発生すると、切替制御部100は光パスの切替要を決定することもあれば切替不要を決定することもある。例えば、障害が復旧後に予備系光パスを新たに現用系光パスとして運用し、元の現用系光パスを新たに予備系光パスとして運用する場合には、切替制御部100は光パスの切替不要を決定する。光スイッチ101には波長λ1,λ2,λ3を含むマルチチャネル光と波長λ1,λ2を含むマルチチャネル光の両方が入力されているが、切替制御により一方のマルチチャネル光が出力される。
【0071】
以上、本実施形態によれば、光パス切替装置52は、ROADM側光入力ポートR2r,R5rと、TOF82Bと、光スイッチ101とを備えている。ROADM側光入力ポートR2r,R5rには波長λ1,λ2,λ3のマルチチャネル光と波長λ1,λ2のマルチチャネル光が冗長的に入力される。TOF82Bはこれらのマルチチャネル光から出力先のトランスポンダ56に対応するチャネルλ2の正常な入力を確認する。光スイッチ101は正常に入力されたチャネルλ2を含むマルチチャネル光のいずれかをトランスポンダ56に出力する。これらの構成により、光パス切替装置52は、マルチチャネル光から出力先のチャネルλ2を精度良く特定し、光パスを適確に切り替えることができる。
【0072】
特に、本実施形態によれば、ROADM装置50やトランスポンダ56に特別な構成を設けずに、光パス切替装置52はマルチチャネル光から単独で自律的にトランスポンダ56のチャネルλ2を特定する。このため、例えば図9に示すように、同じ光切替システムST内に設けられたROADM装置50やトランスポンダ56との装置間通信が不要となる。したがって、ROADM装置50やトランスポンダ56の選択の幅を広げることができる。なお、光パス切替装置51も光パス切替装置52と同様にトランスポンダ55のチャネルλ3を自律的に特定することができる。また、光パス切替装置53も光パス切替装置52と同様にトランスポンダ57のチャネルλ1を自律的に特定することができる。
【0073】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明に係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、上述した図1及び図2では、トランスポンダ15,25,35からトランスポンダ55,56,57へのチャネル光の伝送を一例として説明した。しかしながら、トランスポンダ55,56,57からトランスポンダ15,25,35へのチャネル光の伝送も本実施形態に含めてもよい。すなわち、本実施形態では、チャネル光の片方向の伝送だけでなく、チャネル光の双方向の伝送であってもよい。
【0074】
なお、以上の説明に関して更に以下の付記を開示する。
(付記1)マルチチャネル光が冗長的に入力される入力部と、前記マルチチャネル光から出力先のチャネルの正常な入力を確認するチャネル可変光フィルタと、正常に入力された前記チャネルを含む前記マルチチャネル光のいずれかを前記出力先である光伝送装置に出力する光スイッチと、を備える光切替装置。
(付記2)前記チャネル可変光フィルタは、前記マルチチャネル光の透過を制限することにより、前記出力先の前記チャネルの前記正常な入力を確認する、ことを特徴とする付記1に記載の光切替装置。
(付記3)前記チャネル可変光フィルタは、前記出力先の前記チャネルのシングルチャネル光の一部の透過を許容し、前記出力先の前記チャネルを除いた残りのチャネルのシングルチャネル光又はマルチチャネル光の透過を規制することにより、前記出力先のチャネルの前記正常な入力を確認する、ことを特徴とする付記1に記載の光切替装置。
(付記4)前記チャネル可変光フィルタを透過した前記出力先の前記チャネルのシングルチャネル光が入力される第1受光素子と、前記第1受光素子への入力に基づいて、前記光スイッチを前記出力先の前記チャネルを含む前記マルチチャネル光の出力に切り替える切替制御部と、をさらに含むことを特徴とする付記1から3のいずれか1項に記載の光切替装置。
(付記5)前記出力先の前記チャネルの送信光が入力され、前記マルチチャネル光の前記チャネル可変光フィルタへの入力方向とは逆の入力方向で前記送信光を前記チャネル可変光フィルタに入力する光回路と、前記チャネル可変光フィルタを透過した後の前記送信光が入力される第2受光素子と、前記第2受光素子に入力される前記送信光の受光パワーが最大になる駆動電圧で前記チャネル可変光フィルタを駆動する駆動部と、をさらに含むことを特徴とする付記1から3のいずれか1項に記載の光切替装置。
(付記6)前記光回路には、前記光伝送装置から送信された前記送信光が入力される、ことを特徴とする付記5に記載の光切替装置。
(付記7)前記チャネル可変光フィルタを透過する前の前記送信光が入力される第3受光素子をさらに含み、前記駆動部は、前記第3受光素子への入力に基づいて、前記光切替装置の立ち上げ時の処理を開始する、ことを特徴とする付記5に記載の光切替装置。
(付記8)前記駆動部は、前記駆動電圧にディザ信号を重畳して前記チャネル可変光フィルタの中心チャネルを維持する、ことを特徴とする付記5に記載の光切替装置。
(付記9)前記光伝送装置は、前記マルチチャネル光が入力された場合、単一のチャネルのチャネル光を受信する、ことを特徴とする付記1に記載の光切替装置。
(付記10)前記光回路は、3ポートタイプの光サーキュレータを含む、ことを特徴とする付記5に記載の光切替装置。
(付記11)光分岐挿入装置と、光伝送装置と、マルチチャネル光が前記光分岐挿入装置から冗長的に入力される入力部、前記マルチチャネル光から出力先のチャネルの正常な入力を確認するチャネル可変光フィルタ、及び、正常に入力された前記チャネルを含む前記マルチチャネル光のいずれかを前記出力先である前記光伝送装置に出力する光スイッチを含む光切替装置と、を備える光切替システム。
(付記12)マルチチャネル光が冗長的に入力され、前記マルチチャネル光から出力先のチャネルの正常な入力をチャネル可変光フィルタで確認し、正常に入力された前記チャネルを含む前記マルチチャネル光のいずれかを前記出力先である光伝送装置に出力する、光切替方法。
【符号の説明】
【0075】
NW WDMネットワーク
ST 光切替システム
10,20,30,40,50 ROADM装置
11,21,31,51,52,53 光パス切替装置
15,25,35,55,56,57 トランスポンダ
82A 第1光サーキュレータ
82B TOF
82C 第2光サーキュレータ
82D,82E フォトダイオード
82F TOFドライバ
85 フォトダイオード
100 切替制御部
101 光スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9