(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179971
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】乗客コンベアの手摺りベルト管理システム
(51)【国際特許分類】
B66B 31/02 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
B66B31/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092964
(22)【出願日】2022-06-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-15
(71)【出願人】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 敬仁
【テーマコード(参考)】
3F321
【Fターム(参考)】
3F321EA17
3F321EB07
3F321EC06
3F321HA23
(57)【要約】
【課題】手摺りベルトの清掃が必要な汚れを検出できる乗客コンベアと乗客コンベアの手摺りベルト管理システムを提供する。
【解決手段】エスカレータ10の手摺りベルト38を通常運転中の通常速度より遅い検査速度で走行させる制御装置50と、手摺りベルト38を検査速度で走行しているときに、その汚れ度合いを検査する検査装置72とを有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアの手摺りベルトを通常運転中の通常速度より遅い検査速度で走行させる制御装置と、
前記手摺りベルトを前記検査速度で走行させて、前記手摺りベルトの汚れ度合いを検査する検査装置と、
を有することを特徴とする乗客コンベアの手摺りベルト管理システム。
【請求項2】
前記汚れ度合いとは、予め定めた長さの前記手摺りベルトを前記検査装置で検査し、汚れていると判断した回数である汚れ検出回数を意味する、
請求項1に記載の乗客コンベアの手摺りベルト管理システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記汚れ検出回数が、予め定めた汚れ基準回数になった場合に、管理者に前記手摺りベルトの清掃を要求する清掃要求信号を発信する、
請求項2に記載の乗客コンベアの手摺りベルト管理システム。
【請求項4】
前記手摺りベルトの清掃装置を有し、
前記制御装置は、前記汚れ検出回数が、予め定めた汚れ基準回数になった場合に、前記清掃装置で前記手摺りベルトを清掃する、
請求項2に記載の乗客コンベアの手摺りベルト管理システム。
【請求項5】
前記検査装置は、
前記手摺りベルトを所定間隔毎に検査する、
請求項1に記載の乗客コンベアの手摺りベルト管理システム。
【請求項6】
前記検査装置は、
前記検査速度で走行している前記手摺りベルトを前記所定間隔毎に一旦停止させて停止中に検査を行うか、又は、前記検査速度で走行させながら検査を行う、
請求項5に記載の乗客コンベアの手摺りベルト管理システム。
【請求項7】
前記検査装置は、
前記手摺りベルトの表面への微粒子、粘着物、若しくは病原体の付着の有無、又は、前記手摺りベルトの表面の色の変化を検査する、
請求項1に記載の乗客コンベアの手摺りベルト管理システム。
【請求項8】
乗客コンベアの手摺りベルトを通常運転中の通常速度より遅い検査速度で走行させる制御装置と、
前記手摺りベルトを前記検査速度で走行させて、前記手摺りベルトの汚れ度合いを検査する検査装置と、
前記乗客コンベアの管理を行う管理サーバと、
を有し、
前記管理サーバは、前記手摺りベルトの汚れ度合いに基づいて、前記手摺りベルトを清掃する時間間隔である清掃サイクルを算出する、
ことを特徴とする乗客コンベアの手摺りベルト管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベアの手摺りベルト管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エスカレータや動く歩道などの乗客コンベアにおいて、手摺りベルトを清潔に保つために、清掃員が手摺りベルトを定期的に手で清掃したり、エスカレータ内部に清掃装置を設けて自動的に手摺りベルトを清掃できるようにしたりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-338984号公報
【特許文献2】特開2008-297072号公報
【特許文献3】特許第5352733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように乗客コンベアの手摺りベルトを清掃員が清掃する場合に、乗客コンベアが多数あると人手や時間がかかる。また、清掃装置により自動で清掃する場合には、手摺りベルトを常時又は定期的に清掃を行っているが、手摺りベルトの汚れが少ない場合でも清掃動作をするので非効率であり、その上、常時動作している場合には、清掃装置に用いられている消毒液や塗布剤などの消耗品の交換周期や接触するローラなどの部材の劣化を早めてしまうという問題点があった。
【0005】
そこで本発明の実施形態は上記問題点に鑑み、手摺りベルトの清掃が必要な汚れを検出できる乗客コンベアの手摺りベルト管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、乗客コンベアの手摺りベルトを通常運転中の通常速度より遅い検査速度で走行させる制御装置と、前記手摺りベルトを前記検査速度で走行しているときに、前記手摺りベルトの汚れ度合いを検査する検査装置と、を有することを特徴とする乗客コンベアの手摺りベルト管理システムである。
【0007】
また、本発明の実施形態は、乗客コンベアの手摺りベルトを通常運転中の通常速度より遅い検査速度で走行させる制御装置と、前記手摺りベルトを前記検査速度で走行させて、前記手摺りベルトの汚れ度合いを検査する検査装置と、前記乗客コンベアの管理を行う管理サーバと、を有し、前記管理サーバは、前記手摺りベルトの汚れ度合いに基づいて、前記手摺りベルトを清掃する時間間隔である清掃サイクルを算出する、ことを特徴とする乗客コンベアの手摺りベルト管理システムである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態1のエスカレータの側面から見た説明図であり、上階側から見て左側の部材を省略した図面である。
【
図3】手摺りベルトの汚れの検査と清掃の制御関係のブロック図である。
【
図4】実施形態1の手摺りベルトの管理運転のフローチャートである。
【
図5】手摺りベルトの汚れ検出制御のフローチャートである。
【
図6】実施形態2の手摺りベルトの管理運転のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態の乗客コンベアの手摺りベルト管理システムについて、図面を参照して説明する。
【実施形態1】
【0010】
実施形態1の乗客コンベアの手摺りベルト管理システムについて、
図1~
図5を参照して説明する。本実施形態では、乗客コンベアとしてエスカレータ10で説明する。
【0011】
(1)エスカレータ10
エスカレータ10の全体の構造について
図1を参照して説明する。
図1は、エスカレータ10を左側面から見た説明図である。但し、エスカレータ10の内部構造をわかりやすくするために、エスカレータ10の左側の部材の図示を省略している。なお、エスカレータ10の前後方向を説明するときは、上階側から下階側を見下ろし、上階側が後側、下階側が前側とする。
【0012】
エスカレータ10の枠組みであるトラス12が、建屋1の上階側と下階側に跨がって支持アングル2,3を用いて前後方向に沿って支持されている。
【0013】
トラス12の上端部にある上階側の機械室14内部には、踏段30を走行させる駆動装置18、左右一対の踏段スプロケット24,24、左右一対のベルトスプロケット27,27が設けられている。この駆動装置18は、モータ20と、減速機21と、この減速機21の出力軸に取り付けられた駆動小スプロケット19と、モータ20の回転を停止させ、かつ、停止状態を保持するディスク式の電磁ブレーキ23とを有している。左右一対の踏段スプロケット24,24には、同軸に駆動大スプロケット17が取り付けられ、駆動小スプロケット19との間に無端状の駆動チェーン22が架け渡されている。左右一対の踏段スプロケット24,24と左右一対のベルトスプロケット27,27とは、不図示の連結ベルトにより連結され同期して回転する。また、上階側の機械室14内部には、モータ20や電磁ブレーキ23などを制御する制御装置50が設けられている。
【0014】
トラス12の下端部にある下階側の機械室16内部には、左右一対の従動スプロケット26,26が設けられている。上階側の左右一対の踏段スプロケット24,24と下階側の左右一対の従動スプロケット26,26との間には、左右一対の無端状の踏段チェーン28,28が架け渡されている。左右一対の踏段チェーン28,28の間には、複数の踏段30の左右一対の第1輪301,301が一定間隔毎に連結されている。モータ20が回転すると踏段30の第1輪301は、トラス12に固定された不図示の第1輪専用の案内レールを走行し、踏段30の第2輪302は、トラス12に固定された第2輪専用の案内レール25を走行する。
【0015】
トラス12の上部の左右両側には、左右一対の欄干36,36が立設されている。この欄干36の上部には手摺りレール39が設けられ、この手摺りレール39に沿って無端状の手摺りベルト38が移動する。
【0016】
左右一対の欄干36の上階側の正面下部には上階側の正面スカートガード40が設けられ、下階側の正面下部には下階側の正面スカートガード42が設けられている。正面スカートガード40,42から手摺りベルト38の出入口であるインレット部46,48がそれぞれ突出している。左右一対の欄干36の側面下部には、スカートガード44がそれぞれ設けられ、左右一対のスカートガード44,44の間を踏段30が走行する。
【0017】
手摺りベルト38は、ベルトスプロケット27が踏段スプロケット24と共に回転することにより踏段30と同期して移動する。例えば、
図1に示すように、踏段30が下降しているときは、手摺りベルト38は、欄干36の上端部にある手摺りレール39に沿って下階側に向かって走行し、下階側のインレット部48から正面スカートガード42内に進入し、欄干36の側面下部にあるスカートガード44内を上へ移動し、複数の案内ローラ66を経てベルトスプロケット27に架け渡されて駆動力が与えられ、その後、複数の案内ローラ64を経て上階側のインレット部46から正面スカートガード40の外に現れる。また、回転するベルトスプロケット27に、走行する手摺りベルト38を押圧するための押圧部材68が、ベルトスプロケット27の下方に設けられている。
【0018】
上階側の左右一対のスカートガード44,44の間の乗降口である、機械室14の天井面には、上階側の乗降板32が水平に設けられている。下階側の左右一対のスカートガード44,44の間の乗降口である、機械室16の天井面には、下階側の乗降板34が水平に設けられている。上階側の乗降板32の先端には櫛歯状のコム60が設けられ、このコム60に踏段30が進入したり、引き出されたりする。また、下階側の乗降板34の先端にも櫛歯状のコム62が設けられている。
【0019】
(2)手摺りベルト38の清掃装置70と検査装置72
エスカレータ10には、
図1に示すように、左右一対の手摺りベルト38,38を清掃するために、上階側の正面スカートガード40の近傍である、上階側の左右一対の欄干36,36の下部に、左右一対の清掃装置70,70が設けられ、下階側の正面スカートガード42の近傍であって、下階側の左右一対の欄干36,36の下部には、左右一対の検査装置72,72が設けられている。
【0020】
上階側に設けられている清掃装置70は、
図2に示すように、拭き掃除器76を有している。拭き掃除器76は、布や紙などの清掃シート78を巻き付けた巻出し軸80と、この巻出し軸80から巻き出された清掃シート78を巻き取る巻取り軸82を有し、巻出し軸80と巻取り軸82との間には、清掃シート78を手摺りベルト38に押圧する押圧台84が設けられている。この押圧台84は、エアシリンダよりなる押圧部材86によって清掃シート78を押圧したり、その押圧を解除したりする。巻取り軸82には、清掃シート78の巻き取りを行うための巻取りモータ90が設けられている。清掃装置70にはさらに、これら巻取りモータ90と押圧部材86を制御するための清掃制御部88が設けられている。清掃制御部88は、手摺りベルト38を清掃するときは、後から説明する清掃速度で走行する手摺りベルト38の表面に清掃シート78を押圧部材86によって押圧して、
図2の二点鎖線に示すように、手摺りベルト38に密着させて清掃する。また、清掃制御部88は、清掃シート78を巻き取るときは、押圧部材86による清掃シート78の押圧を一旦解除し、
図2の実線に示すように手摺りベルト38と清掃シート78との間に隙間を形成して、巻取りモータ90を一定時間動作させ、巻取り軸82で古い清掃シート78を巻き取った後に、新しく巻き出された清掃シート78を押圧部材86によって手摺りベルト38に再び押圧して清掃する。
【0021】
下階側に設けられている検査装置72は、手摺りベルト38の表面を撮影するカメラ92と、カメラ92で撮影された画像を解析する解析装置94とが一体になったものである。解析装置94は、カメラ92で撮影した手摺りベルト38の表面の画像に関して、予め撮影した基準画像と比較して微粒子が付着しているか、粘着物が付着しているか、又は、ウイルスや細菌、カビ等の病原体が付着しているか等を解析するものである。また、手摺りベルト38の表面の色に関しても、基準の色を予め記憶しておき、色の変化の度合いを解析する。解析装置94は、付着物(例えば、微粒子)が基準値(例えば、単位面積当たりm個)以上付着している場合、粘着物が付着している場合、ウイルス等の病原体が付着している場合、及び色の変化の度合いが基準値以上の場合のいずれであっても、汚れが検出されたと判断し、制御装置50に汚れ検出信号を出力する。具体例としては、カメラ92に可視光のライトとブラックライトを設ける。そして、可視光のライトで可視光を手摺りベルト38の表面に当てて、カメラ92がその静止画像を撮影し、解析装置94は、その静止画像と基準画像を比較して、付着物が基準値以上付着しているか、色の変化の度合いが基準値以上であるかを解析する。それが終了すると、ブラックライトで可視領域の400mmよりも波長の短い光(紫外線)を手摺りベルト38の表面に当てて、カメラ92がその静止画像を撮影し、解析装置94は、その静止画像における蛍光反応等に基づいて、体液等の粘着物が付着しているか否かを検出する。
【0022】
また、ウイルス等の病原体が付着しているか否かの検査には、バイオセンサを用いてもよい。バイオセンサとは、生体分子を識別できる検査機器である。具体的には、酵素などの生物学的要素(バイオセンシング要素)と分析物との反応を電気信号に変換することにより、検査時の検体にあるヘモグロビンや特異抗原などの特定の分子の存在もしくは濃度を感知し、測定する機能を持つ。バイオセンサは、基質認識部、変換器、処理装置からなる。基質認識部は、検体の特定分子を識別するものであり、基質認識部と検体との化学反応もしくは化学反応の生成物を基に、特定分子を認識し、測定する役割を果たす。本実施形態では、この基質認識部を手摺りベルト38の表面に位置させる。変換器は、基質認識部による物質識別素子となる抗体や酵素などの認識及び測定結果を、電気信号に変換する。処理装置は、認識された電気信号を正確に読み取るために適切な単位に変換するものである。
【0023】
(3)エスカレータ10の電気的構成
次に、エスカレータ10における手摺りベルト38の汚れの検査と清掃の制御関係の電気的構成について、
図3のブロック図を参照して説明する。
【0024】
上階側の機械室14に設けられた制御装置50には、上階側の左右両側に設けられた清掃装置70,70の清掃制御部88,88、下階側の左右両側に設けられた検査装置72,72、モータ20の回転/停止、回転方向、回転速度を制御する駆動回路29が接続されている。この駆動回路29には、モータ20と電磁ブレーキ23が接続されている。
【0025】
左右のそれぞれの清掃制御部88には、押圧部材86、巻取りモータ90が接続されている。
【0026】
制御装置50は、通常運転、停止待機状態、手摺りベルト38の管理運転を実施できる。
【0027】
通常運転とは、建屋1の営業時間中に乗客が乗っているときに実行するものであり、このときの踏段30(手摺りベルト38)の走行速度は、通常速度(例えば、20m/分)である。
【0028】
停止待機状態とは、建屋1の営業時間中に乗客がエスカレータ10に一定時間t1(例えば、30分間)乗りこまないときに省エネのために踏段30の走行を停止させる制御である。
【0029】
手摺りベルト38の管理運転とは、建屋1の営業終了後に手摺りベルト38の汚れ度合いを検査し、その検査結果に対応して手摺りベルト38を清掃する運転である。
但し、検査するときには、手摺りベルト38を通常速度より遅い検査速度(例えば、1~2m/分)で1m毎に間欠的に移動させ、停止中に検査装置72で検査を行う。このように停止したときに検査を行うのは、手摺りベルト38を移動させながら検査装置72で検査を行う場合と比較して、より正確な検査が可能になるからである。また、検査速度で移動させるのは、通常速度のように早い速度で移動させると、検査のために停止するまでの制動距離が1m以上となってしまい、1m毎に検査できない場合があるからである。
【0030】
上記「汚れ度合い」とは、予め定めた長さ(例えば、一周分の長さ)の手摺りベルト38を検査装置72で検査し、汚れていると判断した回数(以下、「汚れ検出回数」という)を意味する。
【0031】
手摺りベルト38を清掃装置70で清掃するときは、手摺りベルト38を清掃運転速度(例えば、5m/分)で移動させる。検査速度より早い清掃運転速度で移動させるのは、この清掃運転速度で手摺りベルト38を移動させても清掃装置70で清掃でき、清掃時間を短縮できるからである。しかし、清掃時に通常速度のように早い速度で移動させると、清掃状態にムラが発生する可能性が高いので、試験的に清掃を行って、きれいに掃除ができる清掃運転速度を予め決定する。
【0032】
(4)手摺りベルト38の管理運転の制御方法
次に、手摺りベルト38の管理運転の制御方法について
図4と
図5のフローチャートを参照して説明する。
【0033】
ステップS1において、エスカレータ10の踏段30が、例えば、下降するように運転されている。そしてステップS2に進む。
【0034】
ステップS2において、建屋1の営業時間が終了し、エスカレータ10が運転を終了していればステップS3に進み(YESの場合)、運転が終了していなければステップS1に戻る(NOの場合)。
【0035】
ステップS3において、制御装置50は、エスカレータ10の停止操作を行い、ステップS4に進む。
【0036】
ステップS4において、制御装置50は、手摺りベルト38の汚れ検出制御を行い、終了すればステップS5に進む。この手摺りベルト38の汚れ検出制御方法については後から詳しく説明する。なお、汚れ検出制御方法において、汚れが検出されれば制御装置50における汚れ検出フラグがONとなり、検出されていなければOFFとなる。
【0037】
ステップS5において、汚れ検出フラグがONとなり手摺りベルト38に汚れが検出されていればステップS6に進み(YESの場合)、汚れ検出フラグがOFFであり汚れが検出されていなければステップS14に進み(NOの場合)、エスカレータ10を完全停止させる。
【0038】
ステップS6において、手摺りベルト38に汚れが検出されているので、制御装置50は、手摺りベルト38の清掃装置70を動作させ、ステップS7に進む。
【0039】
ステップS7において、制御装置50は、検査速度よりも速い清掃運転速度まで手摺りベルト38を加速しステップS8に進む。
【0040】
ステップS8において、清掃装置70によって手摺りベルト38が清掃され、ステップS9に進む。
【0041】
ステップS9において、手摺りベルト38の清掃時間が所定時間経過していればステップS10に進み(YESの場合)、清掃時間が経過していなければステップS8に戻る(NOの場合)。この清掃時間とは、例えば、手摺りベルト38が清掃装置70を起点として清掃速度で一周する間の時間である。これによって、手摺りベルト38の全周に渡って清掃を行うことができる。
【0042】
ステップS10において、制御装置50は、清掃装置70を停止させ、ステップS11に進む。
【0043】
ステップS11において、制御装置50は、手摺りベルト38の汚れ検出制御を再び行う。そしてステップS12に進む。これは、清掃装置70で手摺りベルト38の汚れが取れたか否かを確認するためである。
【0044】
ステップS12において、手摺りベルト38にまだ汚れが残っており、検出されれば、制御装置50は、清掃装置70では落とせない汚れであると判断してステップS13に進み(YESの場合)、汚れが検出されていなければ清掃装置70で手摺りベルト38の汚れが取れたと判断してステップS14に進む(NOの場合)。
【0045】
ステップS13において、制御装置50は、清掃装置70では手摺りベルト38の汚れを落とせなかったとして、建屋1において当該エスカレータ10を管理する管理者へ清掃を行うよう清掃要求信号を発信し、ステップS14に進む。
【0046】
ステップS14において、制御装置50はエスカレータ10を完全に停止させ終了する。
【0047】
(5)手摺りベルト38の汚れ検出制御
次に、手摺りベルト38の管理運転のステップS4とステップS11で行った手摺りベルト38の汚れ検出制御について、
図5のフローチャートを参照して説明する。
【0048】
ステップS20において、制御装置50は、手摺りベルト38の汚れ検出制御をONし、ステップS21に進む。
【0049】
ステップS21において、制御装置50は手摺りベルト38を検査速度で運転し、ステップS22に進む。
【0050】
ステップS22において、制御装置50は手摺りベルト38を停止させ、ステップS23に進む。
【0051】
ステップS23において、検査装置72が手摺りベルト38の表面を検査し、付着物が存在するか、粘着物が存在しているか、ウイルス等の病原体が付着しているか、及び手摺りベルト38の色が変化しているかのうちのいずれか1以上を検査し、ステップS24に進む。
【0052】
ステップS24において、手摺りベルト38に汚れがあり、制御装置50が検査装置72からの汚れ検出信号を受信した場合にはステップS25に進み(YESの場合)、汚れがなく、汚れ検出信号を受信しなかった場合にはステップS26に進む(NOの場合)。
【0053】
ステップS25において、汚れが検出されているので、制御装置50は汚れ検出カウンタを+1にして、ステップS26に進む。
【0054】
ステップS26において、汚れの有無にかかわらず検査が一回終了したので、制御装置50は手摺りベルト38の検査カウンタを+1にして、ステップS27に進む。
【0055】
ステップS27において、検査した回数が予め定めた検査回数に到達していればステップS28に進み(YESの場合)、到達していなければステップS31に進む(NOの場合)。この検査回数としては、例えば手摺りベルト38を検査速度で1m進めて停止させ、停止した状態で検査を行い、検査終了後にさらに検査速度で1m進めて、最終的に一周検査し終えるまでの回数に設定されている。手摺りベルト38が一周(全長)30mであれば、検査回数は30回となる。
【0056】
ステップS28において、制御装置50は、汚れ検出カウンタがカウントした数である汚れ検出回数が汚れ基準回数k(例えば、k=1)以上であればステップS29に進み(YESの場合)、そうでなければステップS30に進む(NOの場合)。
【0057】
ステップS29において、汚れ検出回数が汚れ基準回数k以上であるため、制御装置50は手摺りベルト38が汚れているとして手摺りベルト38の汚れ検出フラグをONにして、ステップS30に進む。
【0058】
ステップS30において、制御装置50は、手摺りベルト38の汚れ検出制御をOFFにする。
【0059】
ステップS31において、ステップS27で手摺りベルト38の1周分の検査が未だ済んでおらず、検査回数に到達していないと判断されたので、検査速度で再び運転して、ステップS32に進む。
【0060】
ステップS32において、手摺りベルト38が検査速度で1m進めばステップS22に戻って手摺りベルト38を停止させ(YESの場合)、1m進んでいなければステップS31に戻る(NOの場合)。これによって、手摺りベルト38の汚れ検査は、1m毎に行われ、最終的に手摺りベルト38が1周するまで行われる。
【0061】
(6)効果
本実施形態によれば、建屋1の営業終了後に乗客がいない状態で手摺りベルト38の汚れ度合いを検出できる。
【0062】
また、検査装置72による検査は、手摺りベルト38の走行を一旦停止させて行うため、正確に検査できる。
【0063】
また、手摺りベルト38の汚れ度合いが基準を上回った場合には、清掃装置70で清掃できる。このとき、従来のように営業中連続して、又は、定期的に行うのではなく、手摺りベルト38が汚れたときのみ清掃を行うため、消耗品の交換周期を長くできる。
【0064】
また、清掃装置70で手摺りベルト38の汚れが落ちなかったときのみ、管理者に手動で手摺りベルト38の汚れを清掃するように清掃要求信号を発信できる。そのため、手摺りベルト38を手動で清掃するのは、本当に必要な場合のみとなる。
【0065】
(7)変更例
上記実施形態では、手摺りベルト38の汚れ検出制御において、検査速度から手摺りベルト38を一旦停止させ、検査装置72で検査を行ったが、手摺りベルト38を停止させず検査速度で移動しながら検査を行ってもよい。この場合であっても、検査速度は低速であるため、かなり正確に検査できる。
【0066】
また、上記実施形態では、汚れ検出回数=1としたが、これに代えて手摺りベルト38の何%汚れていれば汚れていると判断するような制御であってもよい。例えば、手摺りベルト38の20%汚れているときに清掃を実施する場合、手摺りベルト38の長さを一周30mとして、1m毎に検査を行うとすると30回検査することになるので、汚れ検出回数=6のときに長さの20%が汚れていると判断して、清掃を実施する。
【0067】
また、上記実施形態では、手摺りベルト38が1m進む度に停止させて検査をしたが、これに限らず、50cm、又は2mなど、任意に設定できる。
【実施形態2】
【0068】
次に、実施形態2のエスカレータ10について、
図6のフローチャートを参照して説明する。実施形態1では、手摺りベルト38の清掃装置70と検査装置72を有していたが、本実施形態は、検査装置72のみ有する場合であり、その場合の手摺りベルト38の管理運転について説明する。なお、本実施形態の手摺りベルト管理システムの例としては、エスカレータ10と、当該エスカレータ10を保守メンテナンスする会社などが有している遠隔監視センターの管理サーバからなるシステムが挙げられる。
【0069】
ステップS40において、エスカレータ10が運転されているので、ステップS41に進む。
【0070】
ステップS41において、建屋1の営業が終了し、エスカレータ10の運転が終了していればステップS42に進み(YESの場合)、終了していなければステップS40に戻る(NOの場合)。
【0071】
ステップS42において、制御装置50は、エスカレータ10の停止操作を行い、ステップS43に進む。
【0072】
ステップS43において、制御装置50は、手摺りベルト38の汚れ検出制御を行う。これは実施形態1の
図5のフローチャートで説明した制御方法と同様である。そしてステップS44に進む。
【0073】
ステップS44において、制御装置50は、手摺りベルト38の汚れが検出されていればステップS45に進み(YESの場合)、検出されていなければステップS47に進み、エスカレータ10を完全に停止させる。
【0074】
ステップS45において、制御装置50は、手摺りベルト38の汚れが検出されているため、建屋1においてエスカレータ10を管理する管理者へ手摺りベルト38の清掃を手動で行うように要求する清掃要求信号を発信し、ステップS46に進む。
【0075】
ステップS46においては、制御装置50は、当該エスカレータ10の遠隔監視センターの管理サーバへ汚れ検出に関する情報を発信する。そしてステップS47に進む。
【0076】
ステップS47では、制御装置50は、エスカレータ10を完全に停止させ、終了する。
【0077】
遠隔監視センターの管理サーバでは、受信されたエスカレータ10の汚れ検出に関する情報から、そのエスカレータ10の手摺りベルト38の清掃サイクル(例えば、一ヶ月に何回清掃する必要があるか)を下記の方法で算出し、管理者へ通知する。
【0078】
すなわち、汚れ検出に関する情報とは、汚れ検出回数が汚れ基準回数kに到達した時刻を意味し、管理サーバは、前回報告があった時刻と今回報告があった時刻との差から、汚れ検出回数が汚れ基準回数kに到達するまでの到達時間(例えば、3日間)を計算する。この到達時間を清掃サイクル時間として、管理サーバは管理者に、清掃サイクル時間(3日間)毎に清掃するように指示する、清掃サイクルの情報を通知する。
【変更例】
【0079】
上記実施形態では、建屋1の営業時間後に手摺りベルト38の検査と清掃を行ったが、営業中であっても停止待機状態において手摺りベルト38の検査と清掃を行ってもよい。
【0080】
また、上記実施形態1では、清掃装置70を上階側に設け、検査装置72を下階側に設けたが、これに限らず清掃装置70を下階側に、検査装置72を上階側に設けてもよく、また清掃装置70と検査装置72を両方とも上階側又は下階側に設けてもよい。
【0081】
また、上記実施形態2においてのみ遠隔監視センターの管理サーバへ情報を発信したが、これに代えて実施形態1のエスカレータ10においても管理サーバへ情報を発信してもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、エスカレータ10に適用して説明したが、これに代えて動く歩道に適用してもよい。
【0083】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0084】
1・・・建屋、10・・・エスカレータ、38・・・手摺りベルト、50・・・制御装置、70・・・清掃装置、72・・・検査装置
【手続補正書】
【提出日】2023-06-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアの手摺りベルトを通常運転中の通常速度より遅い検査速度で走行させる制御装置と、
前記手摺りベルトを前記検査速度で走行させて、前記手摺りベルトの汚れ度合いを検査するものであって、前記検査速度で走行している前記手摺りベルトを当該手摺りベルトの長さの所定間隔毎に一旦停止させて停止中に検査を行うか、又は、前記検査速度で走行させながら検査を行う検査装置と、
を有し、
前記汚れ度合いとは、予め定めた長さの前記手摺りベルトを前記検査装置で検査し、汚れていると判断した回数である汚れ検出回数を意味する、
ことを特徴とする乗客コンベアの手摺りベルト管理システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記汚れ検出回数が、予め定めた汚れ基準回数になった場合に、管理者に前記手摺りベルトの清掃を要求する清掃要求信号を発信する、
請求項1に記載の乗客コンベアの手摺りベルト管理システム。
【請求項3】
前記手摺りベルトの清掃装置を有し、
前記制御装置は、前記汚れ検出回数が、予め定めた汚れ基準回数になった場合に、前記清掃装置で前記手摺りベルトを清掃する、
請求項1に記載の乗客コンベアの手摺りベルト管理システム。
【請求項4】
前記検査装置は、
前記手摺りベルトの表面への微粒子、粘着物、若しくは病原体の付着の有無、又は、前記手摺りベルトの表面の色の変化を検査する、
請求項1に記載の乗客コンベアの手摺りベルト管理システム。
【請求項5】
乗客コンベアの手摺りベルトを通常運転中の通常速度より遅い検査速度で走行させる制御装置と、
前記手摺りベルトを前記検査速度で走行させて、前記手摺りベルトの汚れ度合いを検査する検査装置と、
前記乗客コンベアの管理を行う管理サーバと、
を有し、
前記管理サーバは、前記手摺りベルトの汚れ度合いに基づいて、前記手摺りベルトを清掃する時間間隔である清掃サイクルを算出する、
ことを特徴とする乗客コンベアの手摺りベルト管理システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明の実施形態は、乗客コンベアの手摺りベルトを通常運転中の通常速度より遅い検査速度で走行させる制御装置と、前記手摺りベルトを前記検査速度で走行させて、前記手摺りベルトの汚れ度合いを検査するものであって、前記検査速度で走行している前記手摺りベルトを当該手摺りベルトの長さの所定間隔毎に一旦停止させて停止中に検査を行うか、又は、前記検査速度で走行させながら検査を行う検査装置と、を有し、前記汚れ度合いとは、予め定めた長さの前記手摺りベルトを前記検査装置で検査し、汚れていると判断した回数である汚れ検出回数を意味する、ことを特徴とする乗客コンベアの手摺りベルト管理システムである。