(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179988
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】ドア開口の浸水抑止具
(51)【国際特許分類】
E06B 7/21 20060101AFI20231213BHJP
E06B 5/00 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
E06B7/21
E06B5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093003
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】スウ ガイキ
(72)【発明者】
【氏名】市村 仁志
(72)【発明者】
【氏名】菅 将憲
【テーマコード(参考)】
2E036
2E239
【Fターム(参考)】
2E036AA01
2E036BA01
2E036CA01
2E036DA16
2E036EC06
2E036GA02
2E239AC04
(57)【要約】
【課題】ドア開口に対する止水効果を出すために扉体が閉められる必要が無く、パテ等で扉体とドア枠の隙間を塞ぐ必要もないドア開口の浸水抑止具を提供する。
【解決手段】浸水抑止具1は、ドア枠83の左右の縦戸当たり83aの下部側および沓摺83bの各々のドア開口81側の面に密着する密着縁部を有し、ドア開口81の下部側を封鎖するように配置される止水板11と、縦戸当たり83aの下部側および沓摺83bの各々のドア開口81側の面に対向して止水板11の上記密着縁部をドア開口81側の面との間で挟む固定板12と、ドア枠83に形成されている雌螺子部に螺合されることで固定板12を移動させて、当該固定板12によって止水板11の上記密着縁部を、縦戸当たり83aの下部側および沓摺83bの各々のドア開口81側の面に押圧する雄螺子部材13と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア開口を開閉する扉体を支持するドア枠に取り付けられるドア開口の浸水抑止具であって、
上記ドア枠の左右の縦部材の下部側および上記ドア枠の下部の横部材の各々の上記ドア開口側の面に密着する密着縁部を有し、上記ドア開口の下部側を封鎖するように配置される止水板と、
互いに分離された、上記横部材側に配置される中央側部材と、上記左右の縦部材の下部側に配置される一対のサイド部材と、を有しており、上記中央側部材および上記一対のサイド部材が、上記横部材および上記縦部材の下部側の各々の上記ドア開口側の面に対向して上記止水板の上記密着縁部を上記ドア開口側の面とで挟む固定板と、
上記固定板を移動させて、当該固定板によって上記止水板の上記密着縁部を、上記ドア枠の左右の縦部材の下部側および上記ドア枠の下部の横部材の各々の上記ドア開口側の面に押圧する押圧手段と、
を備えることを特徴とするドア開口の浸水抑止具。
【請求項2】
請求項1に記載のドア開口の浸水抑止具において、上記押圧手段は、上記ドア枠の左右の縦部材の下部側および上記ドア枠の下部の横部材の各々の上記ドア開口側の面に形成されている雌螺子部と、この雌螺子部に螺合される雄螺子部材とからなることを特徴とするドア開口の浸水抑止具。
【請求項3】
請求項1に記載のドア開口の浸水抑止具において、上記止水板は伸縮性を有することを特徴とするドア開口の浸水抑止具。
【請求項4】
請求項1に記載のドア開口の浸水抑止具において、上記サイド部材は、上記ドア枠の縦部材の下部側に対向する縦部位と上記ドア枠の下部の横部材の端側に対向する横部位とを有することを特徴とするドア開口の浸水抑止具。
【請求項5】
請求項1に記載のドア開口の浸水抑止具において、上記中央側部材と上記サイド部材とが連結板で連結されることを特徴とするドア開口の浸水抑止具。
【請求項6】
請求項1に記載のドア開口の浸水抑止具において、上記ドア枠の左右の縦部材の下部側に対向する上記止水板の上記密着縁部と、上記ドア枠の下部の横部材に対向する上記止水板の上記密着縁部とによって、当該止水板に予め立体角部が形成されていることを特徴とするドア開口の浸水抑止具。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のドア開口の浸水抑止具において、上記止水板と上記固定板とが別体であることを特徴とするドア開口の浸水抑止具。
【請求項8】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のドア開口の浸水抑止具において、上記止水板に上記固定板の全部または一部が装着されていることを特徴とするドア開口の浸水抑止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドア開口からの外水の浸入を抑止する浸水抑止具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ドア枠に開き戸式の扉体が開閉可能に取り付けられ、下枠の内側に下部戸当りが凸設され、ドア枠、戸当りおよび扉体に対して着脱可能な板材が戸当りに立て掛けられ、板材の下端部に沿って下部シールが設けられ、板材の側端部に沿って側部シールが設けられ、扉体が閉じた状態において板材の下端部と下部シールとが戸当りと扉体との間に挟持され、板材の側端部と側部シールとが戸当りと扉体との間に挟持される防水ドア構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記防水ドア構造は、上記扉体が閉じた状態において、上記板材の下端部と上記下部シールとが上記戸当りと上記扉体との間に挟持され、上記板材の側端部と上記側部シールとが上記戸当りと上記扉体との間に挟持される構造であるため、上記ドア開口に対する止水効果を出すためには、扉体が閉められている必要がある。このため、屋内から屋外へ避難する必要が生じた場合に、この屋外への避難が困難になるおそれがある。
【0005】
また、パテ等でドアとドア枠の隙間を塞ぐ対策では、外水が引いた後にパテを撤去する必要があり、この撤去作業に手間がかかる等の欠点がある。
【0006】
この発明は、ドア開口に対する止水効果を出すために扉体が閉められる必要が無く、パテ等で扉体とドア枠の隙間を塞ぐ必要もないドア開口の浸水抑止具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のドア開口の浸水抑止具は、ドア開口を開閉する扉体を支持するドア枠に取り付けられるドア開口の浸水抑止具であって、
上記ドア枠の左右の縦部材の下部側および上記ドア枠の下部の横部材の各々の上記ドア開口側の面に密着する密着縁部を有し、上記ドア開口の下部側を封鎖するように配置される止水板と、
互いに分離された、上記横部材側に配置される中央側部材と、上記左右の縦部材の下部側に配置される一対のサイド部材と、を有しており、上記中央側部材および上記一対のサイド部材が、上記横部材および上記縦部材の下部側の各々の上記ドア開口側の面に対向して上記止水板の上記密着縁部を上記ドア開口側の面とで挟む固定板と、
上記固定板を移動させて、当該固定板によって上記止水板の上記密着縁部を、上記ドア枠の左右の縦部材の下部側および上記ドア枠の下部の横部材の各々の上記ドア開口側の面に押圧する押圧手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
上記の構成であれば、上記押圧手段は、上記固定板を移動させて、当該固定板によって上記止水板の上記密着縁部を、上記ドア枠の左右の縦部材の下部側および上記ドア枠の下部の横部材の各々の上記ドア開口側の面に押圧するので、ドア開口に対する止水効果を出すために扉体が閉められている必要は無く、屋内から屋外へ避難する必要が生じた場合には、上記ドア開口から避難することができる。また、上記止水板は、上記ドア枠の左右の縦部材の下部側および上記ドア枠の下部の横部材の各々の上記ドア開口側の面に密着する密着縁部を有するので、パテ等で扉体とドア枠の隙間を塞ぐことなく、外水が上記止水板をすり抜けて屋内に浸水するのを抑止することができる。また、上記横部材に対向する中央側部材と、上記左右の縦部材の下部側に対向する一対のサイド部材と、が互いに分離されているので、上記止水板の上記密着縁部を、上記ドア枠の左右の縦部材の下部側および沓摺の各々の上記ドア開口側の面に的確に押圧させることができる。
【0009】
上記押圧手段は、上記ドア枠の左右の縦部材の下部側および上記ドア枠の下部の横部材の各々の上記ドア開口側の面に形成されている雌螺子部と、この雌螺子部に螺合される雄螺子部材とからなっていてもよい。これによれば、上記ドア枠に上記止水板を直接的に螺子固定することができる。また、当該浸水抑止具をドア開口に装着した状態で扉体を閉められる構造とすることが容易になる。
【0010】
上記止水板は、伸縮性を有してもよい。これによれば、上記止水板の上記密着縁部を上記ドア開口側の面に押圧することにおいて、上記止水板に伸びが必要となる場合に、この伸びを容易に生じさせることができる。
【0011】
上記サイド部材は、上記ドア枠の縦部材の下部側に対向する縦部位と上記ドア枠の下部の横部材の端側に対向する横部位とを有してもよい。これによれば、当該サイド部材における縦部材の縦側と上記横部材の端の横側が交差する角部位によって、上記止水板における上記密着縁部の角部位を的確に押圧することができる。
【0012】
上記中央側部材と上記サイド部材とが連結板で連結されてもよい。これによれば、上記中央側部材と上記サイド部材とが連結板で一体化されるので、当該固定板における全体剛性を高めることができる。
【0013】
上記ドア枠の左右の縦部材の下部側に対向する上記止水板の上記密着縁部と、上記ドア枠の下部の横部材に対向する上記止水板の上記密着縁部とによって、当該止水板に予め立体角部が形成されていてもよい。これによれば、上記ドア枠における下部側の角位置の浸水抑止力を高めることができる。
【0014】
上記止水板と上記固定板とが別体であってもよい。これによれば、上記固定板と上記止水板とを別々で収納保管することができる。
【0015】
或いは、上記止水板に上記固定板の全部または一部が装着されていてもよい。これによれば、浸水抑止具の部品紛失のおそれが少なくなり、ドア枠への組み付け容易化も図れる。
【発明の効果】
【0016】
本発明であれば、ドア開口に対する止水効果を出すために扉体が閉められている必要が無いので、屋内から屋外へ避難する必要が生じた場合には、上記ドアから避難することができ、また、パテ等で扉体とドア枠の隙間を塞ぐ必要もないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態のドア開口の浸水抑止具および当該浸水抑止具が取り付けられた玄関ドアを示した概略の斜視図である。
【
図2】同図(A)は扉体が開けられた状態の玄関ドアの水平断面図であり、同図(B)は扉体が閉じられた状態の玄関ドアの水平断面図である。
【
図3】玄関ドアに取り付けられた実施形態の浸水抑止具の屋内側から見た正面図である。
【
図4】同図(A)は扉体が開けられた状態の玄関ドアおよび実施形態のドア開口の浸水抑止具の水平断面図であり、同図(B)は扉体が閉じられた状態の玄関ドアおよび実施形態のドア開口の浸水抑止具の水平断面図である。
【
図5】同図(A)は立体角部が予め形成されている止水板を示した概略の斜視図であり、同図(B)は止水板の設置時に当該止水板に立体角部を形成する例を示した概略の斜視図である。
【
図6】
図3のA-A矢視の概略の拡大縦断面図である。
【
図7】実施形態の浸水抑止具の玄関ドアへの取り付け手順例を示した説明図である。
【
図8】実施形態における固定板のドア枠への固定の他の例を示した概略の斜視図である。
【
図9】同図(A)は玄関ドアに取り付けられた他の実施形態の浸水抑止具の屋内側から見た正面図であり、同図(B)は同図(A)のB-B矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように、実施形態のドア開口の浸水抑止具1は、例えば、玄関ドア8に取り付けて用いられる。浸水抑止具1の玄関ドア8への取り付けは、例えば、豪雨により自宅への外水の接近が予想される場合に行われる。通常時においては、浸水抑止具1は、専用のバッグに収納されるか、或いは、玄関等に設けた収納ボックス等に収納することができる。
【0019】
玄関ドア8は、
図2(A)、
図2(B)にも示すように、ドア開口81を開閉する扉体82がヒンジ84によって回動可能にドア枠83に支持される構造を有する。上記ドア枠83は、上側戸当たり(図示せず)と、左右の縦部材としての縦戸当たり83aと、下部の横部材としての沓摺83bと、を有する。
【0020】
上記の上側戸当たり、縦戸当たり83a、および沓摺83bの各々の屋外側面には、風雨の屋内への浸入を阻止するゴムパッキン85が貼付されている。このゴムパッキン85は、例えば、内部が空洞で変形容易であり、上記扉体82が閉じられることで、この扉体82に押圧されて変形し、扉体82の縁部の屋内面側と、上記上側戸当たり、縦戸当たり83a、および沓摺83bの各々の屋外側面との間を封止する。なお、一般に、ゴムパッキン85によって、外水の屋内への浸入を阻止することは困難である。
【0021】
浸水抑止具1は、
図3、
図4(A)および
図4(B)にも示すように、止水板11と、固定板12と、頭部付きボルト等からなる雄螺子部材(押圧手段)13と、を備える。
【0022】
止水板11は、密着性および伸縮性を有するゴム板等からなり、左右の縦戸当たり83a間の間隔よりも僅かに狭い横幅を有しており、また、高さは、例えば20cm~50cm程度であり、上記ドア開口81の下部側を封鎖するように配置される。止水板11は、
図5(A)にも示すように、ドア開口81の下部側を封鎖する水受け面110と、上記ドア枠83の左右の縦戸当たり83aの下部側のドア開口81側の面(内面)および沓摺83bのドア開口81側の面(内面)に各々密着する密着縁部として、縦折縁部111および横折縁部112を有する。そして、この止水板11は、水受け面110と、縦折縁部111と、横折縁部112とからなる水密性を有する立体角部が予め形成されたものとなっている。また、縦折縁部111および横折縁部112には、後述する雄螺子部材13が挿通される複数の貫通孔が所定間隔で形成されている。
【0023】
固定板12は、ドア枠83の左右の縦戸当たり83aの下部側および沓摺83bの各々のドア開口81側の面に対向し、止水板11の上記密着縁部である縦折縁部111および横折縁部112をドア開口81側の面とで挟むように配置される。また、固定板12は、一対のサイド部材121と、沓摺83bの中央側に対向する中央側部材122とを備える。サイド部材121は、上記ドア枠83の縦戸当たり83aの下部側に対向する縦部位121aと沓摺83bの端側に対向する横部位121bとを有するL字形に形成されている。これら中央側部材122および上記一対のサイド部材121は、互いに分離された別部材である。サイド部材121は、例えば、止水板11の高さと同じ高さを有する。また、例えば、サイド部材121および中央側部材122は、ステンレスやアルミニウム合金等からなるアングル部材を用いて作製することができる。
【0024】
サイド部材121および中央側部材122には、上記縦折縁部111および横折縁部112に形成されている複数の貫通孔の配置に対応する間隔で複数の雄螺子挿通孔12aが形成されている。また、例えば、縦部位121aに形成されている雄螺子挿通孔12aは、
図6等にも示すように、縦長孔であり、横部位121bに形成されている雄螺子挿通孔12aは横長孔であり(
図4参照)、中央側部材122に形成されている雄螺子挿通孔12aは円孔である。サイド部材121に形成されている雄螺子挿通孔12aが上記のように長孔であると、このサイド部材121の取り付け位置の上下方向および左右方向の調整が可能となる。
【0025】
ドア枠83の左右の縦戸当たり83aの下部側および沓摺83bの各々の上記ドア開口81側の面には、
図2(A)および
図2(B)に示すように、雌螺子部83dが上記雄螺子挿通孔12aの配置に合致する間隔で形成されている。ドア枠83は、浸水抑止具1の装着が可能な仕様として予め設計されたものであり、このドア枠83には、雌螺子部83dが予め形成されている。雌螺子部83dは、ドア枠83の左右の縦戸当たり83aの下部側および沓摺83bの各々の上記ドア開口81側の板材に形成された螺子孔でもよいが、この螺子孔に代わる貫通孔と、当該貫通孔に螺子孔を臨ませて固定された裏ナットとから成る構成であれば、止水状態での雄螺子部材13の引き抜きに対する抵抗力を高めることができる。浸水抑止具1が装着されない通常時には、上記雌螺子部83dには、異物の入り込みを阻止するキャップ部材が嵌め込まれる。
【0026】
雄螺子部材13は、固定板12の雄螺子挿通孔12aを通って雌螺子部83dに螺合されることで、当該固定板12におけるサイド部材121および中央側部材122をそれぞれ異なる方向に移動させて、当該固定板12によって止水板11の上記密着縁部を、ドア枠83の左右の縦戸当たり83aの下部側および沓摺83bの各々のドア開口81側の面に押圧する。
【0027】
浸水抑止具1の玄関ドア8への取り付けにおいては、扉体82を開けた状態で、
図7の(a)に示すように、止水板11をドア開口81に配置する。このとき、ドア枠83の左右の縦戸当たり83aの下部側のドア開口81側の面に止水板11の縦折縁部111を位置させ、沓摺83bのドア開口81側の面に止水板11の横折縁部112を位置させる。
【0028】
次に、
図7の(b)に示すように、固定板12の中央側部材122を配置し、この中央側部材122の雄螺子挿通孔12aに雄螺子部材13を通し、各雄螺子部材13を沓摺83bの雌螺子部83dに螺合させて、中央側部材122および止水板11の横折縁部112を沓摺83bに留め付ける。
【0029】
次に、
図7の(c)に示すように、サイド部材121の雄螺子挿通孔12aに雄螺子部材13を通し、各雄螺子部材13を縦戸当たり83aの雌螺子部83dに螺合させて、サイド部材121と止水板11の縦折縁部111を縦戸当たり83aに留め付ける。この留め付けにより、サイド部材121が移動して、止水板11の縦折縁部111が左右の縦戸当たり83aのドア開口81側の面に押圧される。そして、この押圧に伴い、水受け面110は略均一に横方向に伸びる。
【0030】
次に、
図7の(d)に示すように、サイド部材121における横部位121bの雄螺子挿通孔12aに通した雄螺子部材13を本締めする。この本締めにより、止水板11の立体角部が、ドア枠83の下側角に適正な圧力で押圧される。さらに、
図7の(e)に示すように、サイド部材121における縦部位121aの雄螺子挿通孔12aに通した雄螺子部材13を本締めする。この本締めにより、止水板11の縦折縁部111が、縦戸当たり83aの下側のドア開口81側の面に適正な圧力で押圧される。
【0031】
そして、
図7の(f)に示すように、中央側部材122の雄螺子挿通孔12aに通した雄螺子部材13を本締めする。この本締めにより、止水板11の横折縁部112が沓摺83bのドア開口81側の面に適正な圧力で押圧される。
【0032】
上記の構成であれば、雄螺子部材13を雌螺子部83dに螺合させることで、固定板12が移動されて、止水板11の上記密着縁部がドア開口81側の面に押圧されるので、ドア開口81に対する止水効果を出すために扉体82が閉められている必要は無く、屋内から屋外へ避難する必要が生じた場合には、扉体82を開けて避難することができる。なお、固定板12は、互いに分離された、一対のサイド部材121と中央側部材122とからなるので、一対のサイド部材121を互いに反対側に移動させて、止水板11の上記密着縁部を、左右の縦戸当たり83aにそれぞれ押圧させることができる。また、止水板11は、ドア枠83の左右の縦戸当たり83aの下部側および沓摺83bの各々のドア開口81側の面(内面)に密着する密着縁部を有するので、パテ等で扉体82とドア枠83の隙間を塞ぐことなく、外水が止水板11をすり抜けて屋内に浸水するのを抑制することができる。
【0033】
止水板11が伸縮性を有すると、雄螺子部材13をドア枠83に形成されている雌螺子部83dに螺合させて止水板11の上記密着縁部をドア開口81側の面に押圧し密着させることにおいて、止水板11に伸びが必要となる場合に、この伸びを容易に生じさせることができる。ただし、止水板11がこのような伸びを生じる構成に限らない。例えば、止水板11の下端部および両端側だけが密着性を有するゴム板からなり、このゴム板に、たるんだ状態の防水シートが水密状態に接着された構造であってもよい。かかる構成でも、上記たるみ状態の防水シートに伸びが必要となる場合に、たるみ状態から当該伸びを容易に生じさせることができる。もちろん、止水板11の横幅が左右の縦戸当たり83a間の間隔に一致していれば、止水板11は必ずしも伸縮性を有していなくてもよい。ただし、止水板11の横幅が左右の縦戸当たり83a間の間隔よりも長くされた構成では、設置において横折縁部112に皺が生じるので、あまり好ましくない。
【0034】
雌螺子部83dがドア枠83の左右の縦戸当たり83aの下部側および沓摺83bの各々のドア開口81側の面に形成されていると、ドア枠83の左右の縦戸当たり83a間に止水板11を直接的に螺子固定することができる。また、当該浸水抑止具1をドア開口81に装着した状態で扉体82を閉められる構造とすることが容易になる。なお、雌螺子部83dが縦戸当たり83aのドア開口81側の面に形成されることに限らない。例えば、
図8に示すように、雌螺子部83dが縦戸当たり83aよりも屋内側の位置においてドア枠83に形成されていてもよい。このような構成においては、押圧手段の構成要素となるクランプ部材131を用い、このクランプ部材131の屋内側部に形成されている貫通孔に雄螺子部材13を差し込み、この雄螺子部材13を雌螺子部83dにねじ込む。これにより、クランプ部材131の屋外側部によってサイド部材121を左右の縦戸当たり83a側に押圧することができる。なお、外水の水圧で縦折縁部111がずれ動かないように、クランプ部材131の屋外側部の内側に突起を設け、この突起がサイド部材121の縦部位121aおよび縦折縁部111に形成した孔部に嵌り込む構造としてもよい。
【0035】
サイド部材121が縦部位121aと沓摺83bの端側に対向する横部位121bとを有するL字形状をなすと、当該サイド部材121の縦部位121aと横部位121bが交差する角部位によって、止水板11の上記密着縁部による角部位を的確に押圧することができる。
【0036】
図9(A)および
図9(B)に示すように、サイド部材121における横部位121bと中央側部材122とがアングル材からなる連結板123によって連結される構成としてもよい。これによれば、サイド部材121と中央側部材122とが連結板123で一体化されるので、当該固定板12における全体剛性を高めることができる。連結板123には、貫通孔が2か所に形成されており(1つは長孔とされている)、中央側部材122に形成されている雄螺子挿通孔12aと、横部位121bに形成されている雄螺子挿通孔12aおよび連結板123の貫通孔に雄螺子部材13を通し、この雄螺子部材13を雌螺子部83dにねじ込むことで、連結板123がドア枠83に固定される。
【0037】
なお、横部位121bが無くてL字形をなさないサイド部材121を用いる構造としてもよく、この構造においても、横部位121bと中央側部材122とを連結板で連結することができる。この構成では連結板がL字形をなす。そして、このL字形の外面角に凸部を有すると、この凸部によって止水板11の上記密着縁部による角部位を適切に押圧することが可能である。
【0038】
図5(A)に示したように、上記ドア枠83の左右の縦戸当たり83aの下部側に対向する上記止水板11の縁部と、上記止水板11における上記沓摺83bに対向する上記止水板11の縁部とで、水密性を有する立体角部が予め形成されていると、上記ドア枠83における下部側の角位置の浸水抑止力を高めることができる。ただし、上記立体角部が予め形成されていることに限られない。
図5(B)に示すように、板状の止水板11の下角部に直角の切り込み11aを形成しておき、この止水板11の設置に際して、上記切り込み11aの縁同士を付き合わせることで立体角を形成することもできる。このような立体角においては、上記の付き合わせる縁間にEPDMゴムテープ等を介在させることで、この縁間での止水性能を向上させることができる。EPDMゴムテープ等は、上記切り込み11aの縁に予め接着されていてもよい。
【0039】
止水板11と固定板12とが互いに独立した別部材であると、止水板11と固定板12とを別々で収納保管することができる。ただし、このような別部材とする構成に限定されず、止水板11の左右の上記密着縁部に固定板12におけるサイド部材121が接着剤によって水密状態に装着されている構造でもよい。このような構造であれば、浸水抑止具1の部品紛失のおそれが少なくなり、ドア枠83への組み付け容易化も図れる。さらには、止水板11の下端の上記密着縁部に中央側部材122も接着剤によって水密状態に装着されている構造でもよい。ただし、かかる構造では、止水板11における横折縁部112の横方向の伸び可能部分が、サイド部材121との間の狭い隙間部分のみとなる。
【0040】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 :浸水抑止具
8 :玄関ドア
11 :止水板
11a :切り込み
12 :固定板
12a :雄螺子挿通孔
13 :雄螺子部材(押圧手段)
81 :ドア開口
82 :扉体
83 :ドア枠
83a :縦戸当たり(左右の縦部材)
83b :沓摺(下部の横部材)
83d :雌螺子部
84 :ヒンジ
85 :ゴムパッキン
110 :水受け面
111 :縦折縁部
112 :横折縁部
121 :サイド部材
121a :縦部位
121b :横部位
122 :中央側部材
123 :連結板
131 :クランプ部材