(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179994
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】電子部品ユニット
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20231213BHJP
G01R 15/20 20060101ALI20231213BHJP
G12B 17/02 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
H05K9/00 Q
G01R15/20 C
G12B17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093014
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(74)【代理人】
【識別番号】100184712
【弁理士】
【氏名又は名称】扇原 梢伸
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 彰一
(72)【発明者】
【氏名】青木 弘利
(72)【発明者】
【氏名】門馬 彰夫
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 市朗
(72)【発明者】
【氏名】喜多村 明
(72)【発明者】
【氏名】伊達 天祐
【テーマコード(参考)】
2F078
2G025
5E321
【Fターム(参考)】
2F078HA11
2F078HA13
2G025AA07
2G025AB01
2G025AC01
5E321AA21
5E321BB23
5E321GG05
(57)【要約】
【課題】新規な構造を実現することができる技術を提供する。
【解決手段】電子部品ユニット(電流センサ)のケース10の第1面11aや第3面13aにシールド層50を配置する一方、第2面12aにはシールド層50を配置していない。このため、ケース10の内側の面の全部にシールド層を配置する方式と比較して、シールド層50の配置を限定的なものにして製造コストを抑えることができる。また、シールド層50の効果が発揮されやすい第1面11aや第3面13aにシールド層50を配置する一方、シールド層50の効果が低下する第2面12aにはシールド層50を配置していないため、電子部品ユニット(電流センサ)のdV/dt特性(出力特性)を効率良く改善することができる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品と、
前記電子部品を内部に収納するケースと、
前記ケースの内側の面の一部に配置され、導電性を有するシールド層と、を備え、
前記ケースは、中央に開口を有する環状の第1部材と、前記第1部材の外周に起立して形成された第2部材と、前記第1部材の内周に起立して形成された第3部材と、を備え、
前記第3部材の内側には、導体を配置可能であり、
前記シールド層は、前記第1部材の内側の第1面、前記第3部材の外側の第3面のうち少なくとも1つの面に配置されており、前記第2部材の内側の第2面には配置されていないことを特徴とする電子部品ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の電子部品ユニットにおいて、
前記シールド層は、前記第1面及び前記第3面に配置されていることを特徴とする電子部品ユニット。
【請求項3】
請求項1に記載の電子部品ユニットにおいて、
前記シールド層は、カーボンペースト又は金属ペーストにより形成されていることを特徴とする電子部品ユニット。
【請求項4】
請求項1に記載の電子部品ユニットにおいて、
前記シールド層は、接地されていることを特徴とする電子部品ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を有する電子部品ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電流検出器を開示している。そして、特許文献1の電流検出器においては、中心空間部の四方の側面をシールド部材で覆っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そして、このような電流検出器等の電子部品ユニットでは、新規な構造が望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、新規な構造を実現することができる技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するため以下の解決手段を採用する。なお、以下の解決手段及び括弧書中の文言はあくまで例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。また、本発明は、以下の解決手段に示す各発明特定事項を少なくとも1つ含む発明とすることができる。さらに、以下の解決手段に示す各発明特定事項には、発明特定事項を限定する要素を追加して下位概念化することができ、発明特定事項を限定する要素を削除して上位概念化することもできる。
【0007】
解決手段1:本解決手段の電子部品ユニットは、電子部品と、前記電子部品を内部に収納するケースと、前記ケースの内側の面の一部に配置され、導電性を有するシールド層と、を備え、前記ケースは、中央に開口を有する環状の第1部材と、前記第1部材の外周に起立して形成された第2部材と、前記第1部材の内周に起立して形成された第3部材と、を備え、前記第3部材の内側には、導体を配置可能であり、前記シールド層は、前記第1部材の内側の第1面、前記第3部材の外側の第3面のうち少なくとも1つの面に配置されており、前記第2部材の内側の第2面には配置されていないことを特徴とする電子部品ユニットである。
【0008】
本解決手段の電子部品ユニットは、以下の構成を備えている。
(1)電子部品を備えている。電子部品は、電子部品ユニットに必要な電子的な要素である。電子部品は、例えば、コアや基板等である。
(2)電子部品を内部に収納するケースを備えている。ケースは、一部が開口していてもよく、開口していなくてもよい。ケースの内部には、一又は複数の電子部品が収納される。
【0009】
(3)ケースの内側の面の一部には、導電性を有するシールド層が配置されている。
ケースの内側の面とは、ケースを構成する部材のうち最も外側に配置される部材の外側の面以外の面である。このため、ケースを構成する部材のうちケースの内部に配置されている部材の外側を向いている面も、ケースの内側の面である。
【0010】
(4)ケースは、中央に開口を有する環状の第1部材と、第1部材の外周に起立して形成された第2部材と、第1部材の内周に起立して形成された第3部材と、を備えている。ケースは、第1部材~第3部材以外の部材を備えていてもよい。
(5)第3部材の内側には、導体を配置可能である。導体は、第3部材の内側の少なくとも一部に配置されていればよく、第1部材の開口から突出して配置されていてもよい。導体は、電流が流れる部材であり、例えば、配線やバスバーである。導体は、電子部品に作用する(電界による影響を及ぼす)部材である。電子部品は、導体に流れる電流を測定することができる。
【0011】
(6)シールド層は、第1部材の内側の第1面、第3部材の外側の第3面のうち少なくとも1つの面に配置されており、第2部材の内側の第2面には配置されていない。
すなわち、シールド層は、第1面だけ、第3面だけ、又は、第1面及び第3面に配置されているが、第2面には配置されていない。
【0012】
本解決手段によれば、第1面や第3面にシールド層を配置する一方、第2面にはシールド層を配置していないため、ケースの内側の面の全部にシールド層を配置する方式と比較して、シールド層の配置を限定的なものにして製造コストを抑えることができる。
【0013】
また、本解決手段によれば、シールド層の効果が発揮されやすい第1面や第3面にシールド層を配置する一方、シールド層の効果が低下する第2面にはシールド層を配置していないため、電子部品ユニットのdV/dt特性(出力特性)を効率良く改善することができる。
【0014】
解決手段2:本解決手段の電子部品ユニットは、上述したいずれかの解決手段において、前記シールド層は、前記第1面及び前記第3面に配置されていることを特徴とする電子部品ユニットである。
【0015】
本解決手段では、シールド層は、第1面及び第3面の両方の面に配置されている。第1面及び第3面の両方の面にシールド層を形成することにより、シールド層を配置する領域を広く確保することができる。
【0016】
本解決手段によれば、シールド層は、第1面及び第3面に配置されているため、シールド層の効果が発揮されやすい第1面と、シールド層の効果が発揮されやすい第3面とによって、シールド層の効果を相乗的に向上させることができる。
【0017】
解決手段3:本解決手段の電子部品ユニットは、上述したいずれかの解決手段において、前記シールド層は、カーボンペースト又は金属ペーストにより形成されていることを特徴とする電子部品ユニットである。
【0018】
本解決手段では、シールド層は、カーボンペースト又は金属ペーストにより形成されている(塗布材料)。シールド層は、1層でもよく、複数層でもよく、カーボンペーストと金属ペーストとを重ねて塗布した層であってもよい。
【0019】
本解決手段によれば、シールド層は、ペーストにより形成されているため、シールド層を塗布によって形成することができ、製造しやすくコストダウンも可能である。
【0020】
解決手段4:本解決手段の電子部品ユニットは、上述したいずれかの解決手段において、前記シールド層は、接地されていることを特徴とする電子部品ユニットである。
【0021】
本解決手段では、シールド層は、接地されている。シールド層は、基板のグランドに接続して接地してもよく、その他のグランドに接続して接地してもよい。
【0022】
本解決手段によれば、シールド層は、接地されているため、シールド層の効果をより一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、新規な構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態の電流センサ100を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態の電流センサ100を示す分解斜視図である。
【
図7】シールド層無しのケースを用いた電流センサの検証結果を示す図である。
【
図8】第1タイプのケースを用いた電流センサの検証結果を示す図である。
【
図9】第2タイプのケースを用いた電流センサの検証結果を示す図である。
【
図10】第3タイプのケースを用いた電流センサの検証結果を示す図である。
【
図11】第4タイプのケースを用いた電流センサの検証結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の電流センサ100を示す斜視図である。
図2は、本実施形態の電流センサ100を示す分解斜視図である。なお、以下の図面においては、実際の物の大きさや長さを変更・誇張して図示したり、存在する部品を省略して図示したりしている箇所もある。
【0026】
図1に示すように、電流センサ100(電子部品ユニット)は、電流を測定するためのセンサであり、ケース10と、コア20(電子部品)と、基板30(電子部品)と、を備えている。
ケース10は、コア20及び基板30を内部に収納する箱型の部材であり、中央に貫通孔が形成されている。ケース10における貫通孔の周囲は、図中手前側が開口しており、図中奥側は開口していない。
ケース10の貫通孔には、一次導体(バスバーBU)を配置可能である。一次導体は、ケース10の貫通孔の中央に配置してもよく、中央からずれた位置に配置してもよく、複数本を配置してもよい。
【0027】
図2に示すように、ケース10(ケースの収納空間)には、コア20が収納され、コア20に重ねて基板30が収納される。
ケース10は、中央に開口40(
図3参照)を有する環状の第1部材11と、第1部材11の外周に起立して形成された第2部材12と、第1部材11の内周に起立して形成された第3部材13と、を備えている。
【0028】
コア20は、積層コアである。コア20は、その内側に一次導体(バスバーBU;
図1参照)を挿通させた状態で、一次電流の導通により発生する磁界を収束可能である。
コア20には、周方向の少なくとも一箇所にエアギャップ21が形成されている。エアギャップ21内にはホール素子31等の磁気検出素子(感磁素子、磁電変換素子等)が配置されており、ホール素子31は、コア20で収束させた磁界強度に応じた検出信号を出力する。
【0029】
基板30は、ケース10の収納スペースの形状に合わせて横向きU字形状となっている。基板30には、ホール素子31が実装される他、図示しない各種の部品やICチップ等が実装されることで、電流検出回路が形成されている。電流検出回路は、ホール素子31から出力される電圧信号を増幅し、また、各種の電気的処理を行って検出電圧を出力する。
【0030】
基板30には、外部コネクタ32が実装されており、外部コネクタ32は、電流センサ100の組み立て状態においてケース10から突出して配置される。電流センサ100は、外部コネクタ32を通じて出力回路への電源供給を行ったり、電流検出回路から検出電圧を出力したりすることができる。
【0031】
〔dV/dt特性〕
電流センサ100においては、一次導体での電圧のステップ状変化が出力信号(検出電圧)の変化に影響を及ぼすことが分かっている。具体的には、一次電流の急峻な電圧変化は、出力信号に対するノイズとして大きく影響することが分かっており、これを電流センサ100や出力信号のdV/dt特性と称する。このようなdV/dt特性は、一次導体とコア20や電流検出回路との間に存在する浮遊容量を介してノイズが伝わるためであると考えられる。
【0032】
そして、このようなノイズの出力信号に対する影響は、コア20を電流検出回路のグランド(GND)に接地させることで抑制することが可能である。この理由は、コア20を接地させることで、ノイズ成分がグランド側にほとんど吸収され、電流検出回路に伝導しにくくなるからである。本実施形態では、コア20の表面(外周面)に接合した板状のニッケル端子33を通じて電流検出回路のグランドにコア20を接地させている。
【0033】
〔シールド層〕
また、本実施形態では、dV/dt特性を改善するために、電流センサ100にシールド層を配置している。dV/dt特性の改善は、このシールド層によって行ってもよく、上述したように、コア20を接地させることによって行ってもよく、両方の対策を組み合わせて行ってもよい。
シールド層は、ケース10の内側の面の一部に配置され、導電性を有する層である。
ここで、dV/dt特性とは、上述した通りであるが、一次導体(バスバーBU)と電流検出回路(センサ回路、ASIC等)との電界結合によるノイズの特性である。
【0034】
本実施形態では、ケース10の内側の面にカーボンペーストを塗布することによってシールド層を配置している。シールド層は、電流検出回路のグランドに金属ピン等で接触させることで接地させることができる。なお、電流検出回路のグランドは、電源(Vcc電源)のグランド端子に接続することができる。
【0035】
シールド層を配置する箇所は、電流センサ100の内部の電子部品の配置場所や性能、ケース10の大きさや形状、一次導体の配置場所や性能によって異ならせることができる。すなわち、カーボンペーストの塗布位置は、一次導体を配置する位置との兼ね合いで決定することができる。本実施形態のような貫通型の電流センサの場合には、一次導体と結合しやすいケース内側の特定の場所に配置することが好ましい。
そして、本実施形態では、以下に示す4つのタイプのうち、第1タイプ以外のタイプ、すなわち、第2タイプ~第4タイプのいずれかを採用することができる。以下、それぞれのタイプを順番に説明する。
【0036】
〔第1タイプ〕
図3は、第1タイプのケース10を示す図であり、
図3(A)は斜視図を示し、
図3(B)は正面図を示している。
第1タイプでは、ケース10の第2部材12(図中では、ケース10の側面(周囲)を形成する部材)の内側の第2面12aにシールド層50を配置している。
本実施形態では、第1タイプは、採用していない。
【0037】
〔第2タイプ〕
図4は、第2タイプのケース10を示す図であり、
図4(A)は斜視図を示し、
図4(B)は正面図を示している。
第2タイプでは、ケース10の第3部材13(貫通孔を形成する部材)の外側の第3面13aにシールド層50を配置している。
第2タイプによれば、ケース10の中心に配置される一次導体(バスバーBU)からの影響を低減させることができる。
【0038】
〔第3タイプ〕
図5は、第3タイプのケース10を示す図であり、
図5(A)は斜視図を示し、
図5(B)は正面図を示している。
第3タイプでは、ケース10の第1部材11(図中では、底面を形成する部材)の内側の第1面11aにシールド層50を配置している。
第3タイプによれば、ケース10の底面側からの影響を低減させることができる。
【0039】
〔第4タイプ〕
図6は、第4タイプのケース10を示す図であり、
図6(A)は斜視図を示し、
図6(B)は正面図を示している。
第4タイプは、第2タイプ及び第3タイプを組み合わせたタイプであり、ケース10の第1面11a、第3面13aにシールド層50を配置している。
第4タイプによれば、ケース10の中心に配置される一次導体(バスバー)からの影響や、ケース10の底面側からの影響を低減させることができる。
【0040】
第2タイプから第4タイプにおいて、シールド層50は、第1面11a、第3面13aの各面の少なくとも一部に配置してもよい。
【0041】
このように、本実施形態のケースにおいては、シールド層50は、第1面11a、第3面13aのうち少なくとも1つの面に配置されており、第2面12aには配置されていない。なお、シールド層50は、第2部材12の外側の面にも配置されていない。
【0042】
図7は、シールド層無しのケースを用いた電流センサの検証結果を示す図である。
検証は、一次導体に入力電圧を与え、出力電圧がどのように変化するかを確認している(以下、
図8~
図11においても同様)。図中(A)は一次導体に対して入力される入力電圧を示しており、図中(B)は電流センサにより検出される出力電圧を示している(この点も、
図8~
図11において同様)。ここで、
図7では、基板及びコアを接地しており、
図8~
図11では、基板及びシールド層を接地している。
【0043】
図7中(A):入力電圧の波形は、図中3箇所(左、中、右)で大きく変化している。
図7中(B):この場合、出力電圧の波形も、入力電圧の波形と似たように、3箇所で大きく変化している。ここでは、誤動作量(dV/dtの誤動作量)は「888mVp-p」であった。
誤動作量は、出力電圧の波形の乱れを示しており、波形が乱れるほど(誤動作量の値が大きいほど)、dV/dt特性が悪くなり、波形が直線に近づくほど(誤動作量の値が小さいほど)、dV/dt特性が良くなる。
【0044】
そして、この
図7に示すシールド層無しの電流センサでは、誤動作量が「888mVp-p」となっており、これが基準値となる。このため、「888mVp-p」よりも値が小さくなれば、dV/dt特性は向上しており、「888mVp-p」よりも値が大きくなれば、dV/dt特性は悪くなる。
【0045】
図8は、第1タイプのケースを用いた電流センサの検証結果を示す図である。
図8中(A):入力電圧の波形は、図中3箇所で大きく変化している。
図8中(B):この場合、出力電圧の波形も、入力電圧の波形と似たように、3箇所で大きく変化している。ここでは、誤動作量は「1040mVp-p」であった。
第1タイプのケースの場合、誤動作量は、基準値の「888mVp-p」よりも大きな値となっている。このため、本実施形態では、第1タイプのケースは、採用していない。
【0046】
図9は、第2タイプのケースを用いた電流センサの検証結果を示す図である。
図9中(A):入力電圧の波形は、図中3箇所で大きく変化している。
図9中(B):この場合、出力電圧の波形も、入力電圧の波形の変化に沿って、3箇所で変化しているが、
図7(B)ほど大きく変化していない。ここでは、誤動作量は「168mVp-p」であった。
第2タイプのケースの場合、誤動作量は、基準値の「888mVp-p」よりも小さな値となっている。このため、本実施形態では、第2タイプのケースは、採用可能である。
【0047】
図10は、第3タイプのケースを用いた電流センサの検証結果を示す図である。
図10中(A):入力電圧の波形は、図中3箇所で大きく変化している。
図10中(B):この場合、出力電圧の波形も、入力電圧の波形の変化に沿って、3箇所で変化しており、
図9(B)よりも変化はしているが、
図7(B)ほど大きく変化していない。ここでは、誤動作量は「424mVp-p」であった。
第3タイプのケースの場合、誤動作量は、基準値の「888mVp-p」よりも小さな値となっている。このため、本実施形態では、第3タイプのケースは、採用可能である。
【0048】
図11は、第4タイプのケースを用いた電流センサの検証結果を示す図である。
図11中(A):入力電圧の波形は、図中3箇所で大きく変化している。
図11中(B):この場合、出力電圧の波形は、入力電圧の波形とは異なり、ほとんど変化していない。ここでは、誤動作量は「96mVp-p」であった。
第4タイプのケースの場合、誤動作量は、基準値の「888mVp-p」よりも小さな値となっている。このため、本実施形態では、第4タイプのケースは、採用可能である。
【0049】
図12は、検証結果の一覧を示す図である。
シールド層無しのケースを用いた電流センサの場合、誤動作量は「888mVp-p」である(
図7参照)。
第1タイプのケースを用いた電流センサの場合、誤動作量は「1040mVp-p」である(
図8参照)。
第2タイプのケースを用いた電流センサの場合、誤動作量は「168mVp-p」である(
図9参照)。
第3タイプのケースを用いた電流センサの場合、誤動作量は「424mVp-p」である(
図10参照)。
第4タイプのケースを用いた電流センサの場合、誤動作量は「96mVp-p」である(
図11参照)。
【0050】
これらの検証結果から、以下の内容が明らかとなった。
第1タイプのケース(
図3)では、一次導体(バスバーBU)と基板30との結合(電界結合)が増加し、センサ回路に電界が印加されることからdV/dt特性が悪化する。
一方、第2タイプのケース(
図4)、又は、第3タイプのケース(
図5)では、一次導体からの電界がシールド層50に印加され、一次導体とセンサ回路との結合が低下し、dV/dt特性が改善された結果となっている。
【0051】
特に、第2タイプのケース(
図4)のシールド層50を配置している場所は、一次導体との結合をよりシールドすることができるのでより良好な特性となっている。
さらに、第2タイプと第3タイプとを組み合わせた第4タイプのケース(
図6)とすることにより、シールド特性が向上し、dV/dt特性が、より一層、改善されている。
【0052】
そして、本実施形態では、一次導体との結合を遮蔽(シールド)しやすい場所にシールド層50を配置(カーボンペーストを塗布)したケースを採用している。
また、本実施形態のような貫通型の電流センサ100では、シールド層50を配置する場所によって、dV/dt特性が良くなったり悪くなったりすることがあり、その中でも第2タイプのケースのシールド層50を配置している場所が、最も支配的な場所(シールド層が最も有効に機能する場所)となっている。
【0053】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)本実施形態によれば、第1面11aや第3面13aにシールド層50を配置する一方、第2面12aにはシールド層50を配置していないため、ケース10の内側の面の全部にシールド層を配置する方式と比較して、シールド層50の配置を限定的なものにして製造コストを抑えることができる。
【0054】
(2)本実施形態によれば、シールド層50の効果が発揮されやすい第1面11aや第3面13aにシールド層50を配置する一方、シールド層50の効果が低下する第2面12aにはシールド層50を配置していないため、電流センサ100のdV/dt特性(出力特性)を効率良く改善することができる。
【0055】
このように、dV/dt特性を悪化させる場所をケース内の数ある面の中から特定し、その場所に対しては、あえてシールド層を配置しないようにすることで、電流センサの全体的なdV/dt特性を向上させつつ、それによって製造コストも抑えることができるという発想は、従来には存在しない発想であり、そのような発想を実現している本実施形態の構造は、従来には存在しない新規な構造である。
【0056】
(3)本実施形態によれば、シールド層50は、第1面11a及び第3面13aに配置されているため、シールド層50の効果が発揮されやすい第1面11aと、シールド層50の効果が発揮されやすい第3面13aとによって、シールド層50の効果を相乗的に向上させることができる。
また、単純に2つの面を選択するのではなく、直交する2つの面(第1面11a及び第3面13a)を選択することにより、様々な方向からの影響をシールドすることができる。
【0057】
(4)本実施形態によれば、シールド層50は、ペーストにより形成されているため、シールド層50を塗布によって形成することができ、製造しやすくコストダウンも可能である。
【0058】
(5)本実施形態によれば、シールド層50は、接地されているため、シールド層50の効果をより一層向上させることができる。
【0059】
(6)本実施形態の電流センサ100は、ケース10内にカーボンペーストを塗布した電流センサである。従来の電流センサは、ケースの内部に金属板等を配置し、グランド(GND)に接続してdV/dt特性を改善したり、ケースの内部のコアをグランドに接続してdV/dt特性を改善したりしていた。
【0060】
しかし、フェライトコアの場合、グランドに接続することができない。一方、ケイ素鋼板コアの場合は、コアをグランドに接続することはできるが、絶縁性のワニスをコアに塗布しているので接続を取るのが難しく、はんだ不良等の原因となったり、グランドに接続するためにレーザ加工、及び、抵抗溶接等でメタルをコアに接続してグランドに接続しているため、構成が複雑化したりしていた。
【0061】
また、コアをグランドに接続するだけでは、dV/dt特性を思うように改善できない場合もある。この理由は、コアは、磁束を集めるためだけに形状が決まっており、dV/dt特性を改善させるような形状にはなっていないからである。
さらに、ケースの内部に金属板を配置し、金属板をグランドに接続し、コアもグランドに接続する場合、金属板もコアもグランドに接続する必要がある。その上、金属板を使うことで重量が増加する。
【0062】
そこで、本実施形態では、ケースの内側の面に導電性を有するシールド層(カーボンペーストを塗布した層)を形成することで、重量減少、コストダウンを図り、必要な箇所へシールド層を形成可能としている。シールド層は、ペーストにより形成しているので、金属のシールド(蒸着やスパッタリング等の真空成膜)に比べ安価に構成可能である。また、ケース内のシールド層への接続は、金属ピン等で接触させるだけで良好な接続が得られる。
【0063】
〔変形形態〕
本発明は、上述した実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施することができる。
(1)電子部品ユニットは、電流センサの例で説明したが、電流センサ以外の電子部品ユニット(例えば、ゲートドライバ、電源モジュール、LEDドライバ、トランス、リアクタ、携帯情報端末、携帯電話機、充電器等)であってもよい。
(2)シールド層を接地している場合、コアも接地することができる。また、シールド層は、接地しなくてもよい。
【0064】
(3)電子部品ユニット(電流センサ)は、充填品であっても、充填無し品(未充填品)であってもよい。充填品とは、ケースの収納空間の内部を封止樹脂等により充填したものである。充填無し品とは、ケースの収納空間の内部を封止樹脂等により充填していないものである。なお、「充填品」の場合は、封止樹脂が絶縁体で誘電率を有するので、電界の集中が起こり、dV/dtの誤動作量は、「充填無し品」よりも大きくなる可能性がある。しかし、上述した実施形態のシールド層の構成を採用することにより、充填品であっても、十分な品質を確保した製品とすることができる。
【0065】
(4)シールド層は、メッキ、スパッタリング、蒸着等で金属の膜(メタル層)を構成したものであってもよい。
(5)電子部品ユニット(電流センサ)は、シールド層を配置するだけでなく、さらに絶縁層(絶縁ペースト)を配置したものであってもよい。
【0066】
(6)シールド層を構成する材料は、ケースの内側の面に塗布するだけでなく、ケースに混ぜ込むようにしてもよい。
(7)シールド層は、メタル(金属)ペーストで形成してもよい。
(8)ニッケル端子33は、実装しなくてもよい。
【0067】
(9)ケース10の形状やシールド層50の厚みは、任意に変更することができる。
dV/dt特性の向上には、ケース10の各面を単独でみると、第3面13aのシールド層50が最も寄与し(
図4の第2タイプ)、ついで第1面11aのシールド層50が寄与する(
図5の第3タイプ)。
【0068】
このため、「第3面13aのシールド層50の面積」<「第1面11aのシールド層50の面積」とすることができる。これにより、第3面13aについては少ない塗布量で大きなシールド効果を得ながら、第1面11aについてはシールド効果の底上げを図ることができる。
一方、「第3面13aのシールド層50の面積」>「第1面11aのシールド層50の面積」とすることもできる。これにより、第3面13aのシールド効果を向上させることができる。
なお、シールド層50は、面積が増えるほどシールド効果が向上する。
【0069】
また、「第3面13aのシールド層50の厚み」<「第1面11aのシールド層50の厚み」とすることができる。これにより、第3面13aについては少ない塗布量で大きなシールド効果を得ながら、第1面11aについてはシールド効果の底上げを図ることができる。
一方、「第3面13aのシールド層50の厚み」>「第1面11aのシールド層50の厚み」とすることもできる。これにより、第3面13aのシールド効果をより向上させることができる。
なお、シールド層50は、厚みが増えるほどシールド効果が向上する。
【0070】
ホール素子31は、GMR(Giant Magneto Resistive)素子やTMR(Tunnel Magneto Resistance)素子など、磁界を検出して出力を変動させる素子で置き換えてもよい。
【符号の説明】
【0071】
10 ケース
11 第1部材
11a 第1面
12 第2部材
12a 第2面
13 第3部材
13a 第3面
20 コア
21 エアギャップ
30 基板
31 ホール素子
32 外部コネクタ
33 ニッケル端子
40 開口
50 シールド層
100 電流センサ