(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180003
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】測位装置、駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02K 11/21 20160101AFI20231213BHJP
【FI】
H02K11/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093032
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】岸 直樹
(72)【発明者】
【氏名】小島 和彦
【テーマコード(参考)】
5H611
【Fターム(参考)】
5H611AA01
5H611BB09
5H611QQ03
5H611RR02
5H611RR04
5H611UA01
(57)【要約】
【課題】軌道の曲線部における位置検知部の増加を抑制できる測位装置等を提供する。
【解決手段】測位装置は、レールに沿って移動可能な可動子に取り付けられる磁気スケールC2、C4を測位するために当該レール上に配置され、その間隔が磁気スケールC2、C4の軌道方向の長さより小さい複数の磁気センサS4~S6を備え、少なくとも一つの磁気センサS4~S6が、レールの曲線部において磁気スケールC2、C4の中央の軌跡RTより外側にずれた位置に配置される。隣接する磁気センサS4~S6から等しい距離に磁気スケールC2、C4の中央がある際の当該磁気スケールC2、C4の端部(C2”、C4’)と当該磁気センサS5の距離「a/2」と、磁気センサS5に磁気スケールC2、C4の中央が最接近した際の当該磁気スケールC2、C4の中央(C3’)と当該磁気センサS5の距離「a/2」が実質的に等しい。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道に沿って移動可能な可動子に取り付けられる測位スケールを測位するために当該軌道上に配置され、その間隔が前記測位スケールの軌道方向の長さより小さい複数の位置検知部を備え、
少なくとも一つの前記位置検知部が、前記軌道の曲線部において前記測位スケールの中央の軌跡より外側にずれた位置に配置される、
測位装置。
【請求項2】
前記曲線部における複数の前記位置検知部が、前記測位スケールの中央の軌跡から実質的に等しい距離だけ外側にずれた位置に配置される、請求項1に記載の測位装置。
【請求項3】
隣接する前記位置検知部から等しい距離に前記測位スケールの中央がある際の当該測位スケールの端部と当該各位置検知部の距離と、前記各位置検知部に前記測位スケールの中央が最接近した際の当該測位スケールの中央と当該各位置検知部の距離が実質的に等しい、請求項2に記載の測位装置。
【請求項4】
前記曲線部における複数の前記位置検知部の間隔が実質的に一定である、請求項1から3のいずれかに記載の測位装置。
【請求項5】
前記位置検知部は、前記軌道の直線部において前記測位スケールの中央の軌跡上に配置される、請求項1から3のいずれかに記載の測位装置。
【請求項6】
軌道に沿って駆動される可動子と、
前記可動子に取り付けられる測位スケールを測位するために前記軌道上に配置され、その間隔が前記測位スケールの軌道方向の長さより小さい複数の位置検知部と、
を備え、
少なくとも一つの前記位置検知部が、前記軌道の曲線部において前記測位スケールの中央の軌跡より外側にずれた位置に配置される、
駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道に沿って移動可能な可動子の測位装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、可動子を軌道に沿って移動させる駆動装置としてのリニア搬送システムが開示されている。軌道に沿って配置された複数の磁気センサが、可動子に取り付けられた磁気スケール(すなわち可動子)を測位する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようなリニア搬送システムにおける軌道は、直線部だけでなく曲線部を含みうる。曲線部では、典型的には直線状の磁気スケールの端部と軌道の間に径方向または横方向のずれが生じる。このため、磁気スケールの端部が、曲線軌道上に配置された磁気センサから外れてしまう恐れがある。そこで、曲線部における磁気センサの間隔を例えば直線部より小さくすることが考えられるが、磁気センサの配置数が増えることでコストが高くなってしまう。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、軌道の曲線部における位置検知部の増加を抑制できる測位装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の測位装置は、軌道に沿って移動可能な可動子に取り付けられる測位スケールを測位するために当該軌道上に配置され、その間隔が測位スケールの軌道方向の長さより小さい複数の位置検知部を備える。少なくとも一つの位置検知部が、軌道の曲線部において測位スケールの中央の軌跡より外側にずれた位置に配置される。
【0007】
この態様では、軌道の曲線部において位置検知部が測位スケールの中央の軌跡より外側にずれた位置に配置されることで、当該位置検知部と測位スケールの端部の間の径方向のずれが低減される。このため、測位スケールの端部が位置検知部から外れにくくなり、従来のように位置検知部の間隔を小さくする必要がなくなる。従って、本発明によれば、軌道の曲線部における位置検知部の増加を抑制できる。
【0008】
本発明の別の態様は、駆動装置である。この装置は、軌道に沿って駆動される可動子と、可動子に取り付けられる測位スケールを測位するために軌道上に配置され、その間隔が測位スケールの軌道方向の長さより小さい複数の位置検知部と、を備える。少なくとも一つの位置検知部が、軌道の曲線部において測位スケールの中央の軌跡より外側にずれた位置に配置される。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや、これらの表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラム等に変換したものも、本発明に包含される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、軌道の曲線部における位置検知部の増加を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】リニア搬送システムの全体構造を示す斜視図である。
【
図2】リニア搬送システムにおける位置検知部等によって構成される測位装置を模式的に示す。
【
図3】移動する磁気スケールの測位主体が移動元の磁気センサから移動先の磁気センサに切り替わる様子を模式的に示す。
【
図4】レールの曲線部における複数の磁気センサの典型的な配置と磁気スケールCの移動の様子を模式的に示す上面図である。
【
図5】磁気センサの中間のスケール位置にいる磁気スケールを模式的に示す。
【
図6】本実施形態に係る測位装置における複数の磁気センサの配置と磁気スケールの移動の様子を模式的に示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下では実施形態ともいう)について詳細に説明する。説明および/または図面においては、同一または同等の構成要素、部材、処理等に同一の符号を付して重複する説明を省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明の簡易化のために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施形態に記載される全ての特徴やそれらの組合せは、必ずしも本発明の本質的なものであるとは限らない。
【0013】
図1は、本発明に係る駆動装置の一態様であるリニア搬送システム1の全体構造を示す斜視図である。リニア搬送システム1は、環状のレールまたは軌道を構成する固定子2と、当該固定子2に対して駆動されレールに沿って移動可能な複数の可動子3A、3B、3C、3D(以下では総称して可動子3ともいう)を備える。固定子2に設けられる電磁石またはコイルと、可動子3に設けられる永久磁石が互いに対向することで、環状のレールに沿ってリニアモータが構成されている。なお、固定子2が形成するレールは環状に限らない任意の形状でよい。例えば、レールは直線状でもよいし、曲線状でもよいし、一つのレールが複数のレールに分岐してもよいし、複数のレールが一つのレールに合流してもよい。また、固定子2が形成するレールの設置方向も任意である、
図1の例では水平面内にレールが配設されるが、レールは鉛直面内に配設されてもよいし、任意の傾斜角の平面内や曲面内に配設されてもよい。
【0014】
固定子2は、水平方向を法線方向とするレール面21を有する。レール面21はレールの形成方向に沿って帯状に延在し、
図1の例のように環状のレールを形成する場合は(仮想的な)両端が連結された無端帯状となる。このように任意の形状のレールを形成可能なレール面21には、電磁石を備える複数の駆動モジュール(不図示)が、レールに沿って連続的または周期的に埋設または配置されている。駆動モジュールにおける電磁石は、可動子3の永久磁石および/または電磁石自体に対してレールに沿った推進力を及ぼす磁界を発生させる。具体的には、これらの多数の電磁石に三相交流等の駆動電流を流すと、永久磁石を備える可動子3をレールに沿う所望の接線方向に直線駆動する移動磁界が発生する。なお、
図1の例では環状のレールを水平面内に形成するレール面21の法線方向が水平方向であったが、レール面21の法線方向は鉛直方向その他の任意の方向でもよい。
【0015】
固定子2において、レール面21に対して垂直な上面または下面に設けられる測位部22には、可動子3に取り付けられる測位対象または測位スケールとしての磁気スケール(
図1では不図示)の位置を測定可能な複数の位置検知部としての磁気センサ(
図1では不図示)が連続的にまたは周期的に埋設されている。一定ピッチの縞状の磁気パターンまたは磁気目盛りによって形成される磁気スケールを測位対象とする磁気センサは、一般的に複数の磁気検出ヘッドを備える。磁気スケールの磁気パターンのピッチまたは周期に対して、複数の磁気検出ヘッドの間隔をずらすことによって、磁気センサは磁気スケールの位置を高精度に測定できる。二つの磁気検出ヘッドが設けられる典型的な磁気センサでは、例えば、二つの磁気検出ヘッドの間隔が磁気スケールの磁気パターンに対して1/4ピッチずれている(位相が90度ずれている)。なお、以上とは逆に、可動子3に磁気センサを設け、固定子2に磁気スケールを設けてもよい。また、測位部22によって測定された可動子3の位置を時間で微分すれば可動子3の速度を検知でき、当該速度を時間で微分すれば可動子3の加速度を検知できる。
【0016】
固定子2に設けられる位置検知部および可動子3に取り付けられる測位対象または測位スケールは以上のような磁気式に限らず、光学式その他の方式でもよい。光学式の場合、可動子3には一定ピッチの縞模様または目盛りによって形成される光学スケールが取り付けられ、固定子2には光学スケールの縞模様を光学的に読み取り可能な光学センサが設けられる。磁気式や光学式では、位置検知部が測位対象(磁気スケールや光学スケール)を非接触で測定するため、可動子3が搬送する被搬送物が飛散して測位箇所(固定子2の上面)に入り込んだ場合の位置検知部の故障等のリスクを低減できる。但し、光学式では測位箇所に入り込んだ液体や粉体等の被搬送物によって光学スケールが覆われると測位精度が悪化してしまうため、磁性が無視できる被搬送物であれば測位箇所に入り込んでも測位精度を悪化させない磁気式とするのが好ましい。
【0017】
可動子3は、固定子2のレール面21に対向する可動子本体31と、可動子本体31の上部から水平方向に張り出して固定子2の測位部22に対向する被測位部32と、被測位部32とは反対側(固定子2から遠い側)に可動子本体31から水平方向に張り出して被搬送物が載置または固定される搬送部33を備える。可動子本体31は、レールに沿って固定子2のレール面21に埋設されている複数の電磁石と対向する一または複数の永久磁石(不図示)を備える。固定子2の電磁石が発生させる移動磁界が可動子3の永久磁石および/または電磁石自体にレールの接線方向の直線動力または推進力を加えるため、可動子3は固定子2に対してレール面21に沿って直線駆動される。
【0018】
可動子3の被測位部32には、測位対象または測位スケールとしての磁気スケールや光学スケールが、固定子2の測位部22に設けられる位置検知部(磁気センサや光学センサ)と対向するように設けられる。位置検知部が固定子2の上面に設けられる
図1の例では、磁気スケール等の測位対象が可動子3の被測位部32の下面に取り付けられる。測位部22および被測位部32が磁気式の場合、レール面21の電磁石および可動子本体31の永久磁石の間の磁界が、測位部22および被測位部32の磁気測位に影響しないように、固定子2においてはレール面21と測位部22を異なる面または離れた箇所に形成し、可動子3においては可動子本体31と被測位部32を異なる面または離れた箇所に形成するのが好ましい。
【0019】
図1では四つの可動子3A、3B、3C、3Dが例示されたが、例えば少量の被搬送物を多数搬送するリニア搬送システム1では、1,000を超える数の可動子3が必要になることも想定される。
【0020】
図2は、リニア搬送システム1における位置検知部等によって構成される測位装置4を模式的に示す。測位装置4は、一または複数(図示の例では一つ)の可動子Cに取り付けられる測位スケールとしての磁気スケール(以下では便宜的に磁気スケールCともいう)を測位するために、固定子2の軌道方向または可動子Cの移動方向(
図2における左右方向)に沿って測位部22(
図1における固定子2の上面)に埋設または配置される複数(図示の例では四つ)の位置検知部としての磁気センサS0~S3を備える。
【0021】
各磁気センサS0~S3の移動方向の間隔は互いに異なっていてもよいが、本実施形態では全ての間隔が等しい例を説明する。なお、後述するレールの曲線部における各磁気センサS0~S3の間隔は、
図2に模式的に示されるレールの直線部における各磁気センサS0~S3の間隔と異なっていてもよい。例えば、レールの直線部における各磁気センサS0~S3の間隔X
0/1、X
1/2、X
2/3は全て30mmである。
【0022】
以上の30mmの各磁気センサS0~S3の間隔X0/1、X1/2、X2/3に対して、磁気スケールCの移動方向の長さは例えば48mmである。このように本実施形態では、各磁気センサS0~S3の移動方向または軌道方向の間隔(30mm)が、磁気スケールCの移動方向または軌道方向の長さ(48mm)より小さい。
【0023】
磁気スケールCは、移動方向における両端部EL、ERと、当該両端部EL、ERに移動方向の両側から挟まれた長尺のスケール本体ABを有する。スケール本体ABには、移動方向に沿って等間隔に設けられる多数の磁気目盛りまたは磁気パターンが形成されている。スケール本体ABにおける磁気目盛りを検知した各磁気センサS0~S3は、公知のリニアエンコーダにおいて一般的なA相およびB相のパルスを出力する。典型的には、A相のパルスとB相のパルスは位相が互いに90度異なっている。なお、磁気スケールCの両端部EL、ERにも、スケール本体ABと同様の磁気目盛りが形成されていてもよい。
【0024】
磁気スケールCの各端部EL、ERの移動方向の長さは例えば8mmである。この場合のスケール本体ABの移動方向の長さは、磁気スケールCの長さ48mmから両端部EL、ERの合計の長さ16mmを引いた32mmである。このように本実施形態では、各磁気センサS0~S3の移動方向の間隔(30mm)が、磁気スケールCのスケール本体ABの移動方向の長さ(32mm)より小さい。
【0025】
可動子Cおよび/または磁気スケールCには基準マークとしてのリファレンスマークZが設けられる。最初にリファレンスマークZを磁気的に検知した各磁気センサS0~S3は、公知のリニアエンコーダにおいて一般的なZ相のパルスを出力する。リファレンスマークZに応じて出力されるZ相のパルスは可動子Cの基準位置の特定に利用される。具体的には、リファレンスマークZを最初に検知してZ相のパルスを最初に出力した磁気センサが、後述する計数部による磁気スケールCのA/B相の磁気目盛りの計数を開始する基準センサとなる。以下では、第0磁気センサS0が磁気スケールCにとっての基準センサとなる場合について説明する。図示の状態は、基準センサとしての第0磁気センサS0の上にリファレンスマークZがあり、当該リファレンスマークZを検知した第0磁気センサS0の計数部50が、計数値「0」から磁気スケールCのA/B相の磁気目盛りの計数を開始する状態である。
【0026】
以上の磁気スケールCについての説明は、他の不図示の可動子に取り付けられる他の磁気スケールにも同様に当てはまる。但し、以上の各部の寸法やリファレンスマークの位置は磁気スケール毎に任意に決められる。以下でも特に言及しない限り、磁気スケールCについての説明は他の磁気スケールにも同様に当てはまるものとする。
【0027】
各磁気センサS0~S3は、磁気スケールCのスケール本体ABおよび/または両端部EL、ERに形成されているA/B相の磁気目盛りを計数する計数部50~53を備える。各計数部50~53における計数値の増減の方向は、各磁気センサS0~S3が検知する磁気スケールC(すなわち可動子C)の移動方向に対応する。例えば、可動子Cが
図2における左側から右側に移動する場合に各計数部50~53における計数値が、各磁気センサS0~S3が出力するA/B相のパルスの数に応じて増加し、可動子Cが
図2における右側から左側に移動する場合に各計数部50~53における計数値が、各磁気センサS0~S3が出力するA/B相のパルスの数に応じて減少する。
【0028】
可動子Cがレール上を移動すると、その磁気スケールCを測位する磁気センサS0~S3が順次切り替わる。
図3は、特許文献1において、左側から右側に移動する磁気スケールCの測位主体が移動元の磁気センサS0から移動先の磁気センサS1に切り替わる様子を模式的に示す。図示されるように、磁気センサS0、S1の切り替えは、磁気スケールCのスケール本体ABが二つの隣接する磁気センサS0、S1の検知範囲に跨がっている状態で行われる。図示の例では、磁気センサS0、S1が磁気スケールCの移動方向の中央(リファレンスマークZの位置)に関して対称な位置SW1、SW2にあるタイミングで、磁気スケールCの測位主体が磁気センサS0から磁気センサS1に切り替えられる。
【0029】
第1切替位置SW1は、左端部ELとスケール本体ABの境界から所定距離のスケール本体AB内の位置であり、第2切替位置SW2は、右端部ERとスケール本体ABの境界から所定距離のスケール本体AB内の位置である。図示の例では、第1切替位置SW1のスケール本体ABの左端からの距離と、第2切替位置SW2のスケール本体ABの右端からの距離は例えば1mmである。この場合、第1切替位置SW1のスケール本体ABの中央からの距離と、第2切替位置SW2のスケール本体ABの中央からの距離は15mmであり、その和(30mm)が磁気センサS0、S1の間隔X0/1と一致する。
【0030】
磁気スケールCの測位主体が磁気センサS0から磁気センサS1に切り替わる際、移動元の磁気センサS0の計数部50の計数値が、移動先の磁気センサS1の計数部51の計数値に引き継がれる。以下では、各磁気センサS0~S3が磁気スケールCの中央(リファレンスマークZの位置)を検知する場合の各計数部50~53の計数値を零、各磁気センサS0~S3が磁気スケールCの中央より可動子Cの移動方向と反対側(
図3における左側)において磁気目盛りを検知する場合の各計数部50~53の計数値を正、各磁気センサS0~S3が磁気スケールCの中央より可動子Cの移動方向側(
図3における右側)において磁気目盛りを検知する場合の各計数部50~53の計数値を負とする。
【0031】
図示の例では、リファレンスマークZの位置が計数値「0」に対応し、第1切替位置SW1が例えばリファレンスマークZとの距離(15mm)に相当する正の計数値「+15,000」に対応し、第2切替位置SW2が例えばリファレンスマークZとの距離(15mm)に相当する負の計数値「-15,000」に対応する。なお、物理的な距離(15mm)に対する計数値の変化の絶対値(15,000)の比をセンサ分解能Rともいい、本実施形態ではR=1,000(=15,000/15)で一定とする。また、第1切替位置SW1の計数値を切替計数値ともいい、第2切替位置SW2の計数値を開始計数値ともいう。図示の例では、切替計数値と開始計数値は正負の符号のみが異なる。図示の状態のように磁気スケールCの第1切替位置SW1が磁気センサS0の上に来ると、その計数部50の切替計数値「+15,000」が第2切替位置SW2にある磁気センサS1の計数部51の開始計数値「-15,000」に変換される。以降は磁気センサS1が磁気スケールCの測位主体となって、その計数部51が開始計数値「-15,000」から次の磁気センサへの切替計数値「+15,000」まで計数する。
【0032】
図1に示されるように、リニア搬送システム1におけるレールまたは軌道は、直線部だけでなく曲線部を含みうる。
図4は、レールの曲線部における複数の磁気センサS4~S6の典型的な配置と磁気スケールCの移動の様子を模式的に示す上面図である。本図の例では、磁気スケールCが半径rのレールの曲線部に沿って、スケール位置C1~C5の順に移動する。各スケール位置C1~C5における磁気スケールC(以下では便宜的に磁気スケールC1~C5ともいう)の長手方向に延びるスケール中心線L1~L5は、磁気スケールCまたは可動子Cの中央(リファレンスマークZの位置)を通る。また、半径rの経路RTは、磁気スケールCまたは可動子Cの中央(リファレンスマークZの位置)が通過する軌跡である。複数(図示の例では三つ)の磁気センサS4~S6は、磁気スケールCの中央の軌跡RT上に実質的に等間隔に配置される。具体的には、磁気センサS4、S5の間隔と、磁気センサS5、S6の間隔は、共に半径rの扇形における中心角2θおよび/または弧長l(=2πr×2θ/360)によって表される。
【0033】
磁気スケールCがスケール位置C1にいる場合、その中央および/またはスケール中心線L1が磁気センサS4の直上にある。この時、磁気スケールC1の中央と磁気センサS4の距離は実質的に「0」である。また、前述のように、この状態における磁気センサS4の不図示の計数部の計数値は「0」になっている。磁気スケールCがスケール位置C3にいる場合、その中央および/またはスケール中心線L3が磁気センサS5の直上にある。この時、磁気スケールC3の中央と磁気センサS5の距離は実質的に「0」である。また、前述のように、この状態における磁気センサS5の不図示の計数部の計数値は「0」になっている。磁気スケールCがスケール位置C5にいる場合、その中央および/またはスケール中心線L5が磁気センサS6の直上にある。この時、磁気スケールC5の中央と磁気センサS6の距離は実質的に「0」である。また、前述のように、この状態における磁気センサS6の不図示の計数部の計数値は「0」になっている。
【0034】
図5は、スケール位置C2、C4にいる磁気スケールCを模式的に示す。スケール位置C2は、前述のスケール位置C1、C3の中点であり、それぞれとなす半径rの扇形における中心角は共にθであり弧長は共にl/2である。また、磁気スケールC2に対する磁気センサS4、S5は、それぞれ
図3における磁気スケールCに対する磁気センサS0、S1に対応する。すなわち、前述のように、磁気センサS4、S5が磁気スケールC2の移動方向の中央に関して対称な位置SW1、SW2にあるスケール位置C2において、磁気スケールC2の測位主体が磁気センサS4から磁気センサS5に切り替えられる。スケール位置C4は、前述のスケール位置C3、C5の中点であり、それぞれとなす半径rの扇形における中心角は共にθであり弧長は共にl/2である。また、磁気スケールC4に対する磁気センサS5、S6は、それぞれ
図3における磁気スケールCに対する磁気センサS0、S1に対応する。すなわち、前述のように、磁気センサS5、S6が磁気スケールC4の移動方向の中央に関して対称な位置SW1、SW2にあるスケール位置C4において、磁気スケールC4の測位主体が磁気センサS5から磁気センサS6に切り替えられる。
【0035】
これらのスケール位置C2、C4では、磁気センサS4~S6が磁気スケールCの両端部を検知する。この時、磁気スケールCの各端部と各磁気センサS4~S6は、径方向または横方向に距離「a」(
図5では便宜的に磁気センサS5についてのみ示す)だけずれている。なお、幾何学的関係に基づいて「a=r/cosθ-r」と表される。
【0036】
以上のように、磁気スケールCが半径rのレールの曲線部に沿ってスケール位置C1~C5の順に移動する場合、磁気スケールCと磁気センサS4~S6の距離は、スケール位置C1、C3、C5における「0」と、スケール位置C2、C4における「a」の間で大きく変動する。特に、スケール位置C2、C4におけるずれ「a」のために、磁気スケールCの端部が、曲線軌道RT上に配置された磁気センサS4~S6から外れてしまう恐れがある。そこで、曲線部における磁気センサS4~S6の間隔(弧長l)を例えば直線部より小さくすることが考えられるが、磁気センサS4~S6の配置数が増えることでコストが高くなってしまう。以下で説明する本実施形態は、レールの曲線部における磁気センサS4~S6等の位置検知部の増加を抑制できる測位装置4を提供することを目的とする。
【0037】
図6は、本実施形態に係る測位装置4における複数の磁気センサS4~S6の配置と磁気スケールCの移動の様子を模式的に示す上面図である。本実施形態でも
図4と同様に磁気スケールCがスケール位置C1~C5の順に移動するが、
図6では便宜的に
図5と同様にスケール位置C2、C4のみを示す。スケール位置C1、C3、C5の図示は省略するが、それぞれの磁気スケールCの中央の位置C1’、C3’、C5’を代表的に示す。本実施形態では、少なくとも一つの磁気センサS4~S6が、レールの曲線部において磁気スケールCの中央の軌跡RTより外側(径方向)にずれた位置に配置される。
図6の例では、全ての磁気センサS4~S6が、磁気スケールCの中央の軌跡RTから実質的に等しい距離「a/2」だけ外側にずれた位置に配置される。この距離「a/2」は、
図5のスケール位置C2、C4における磁気スケールCの各端部と各磁気センサS4~S6の径方向のずれ「a」の半分である。
【0038】
磁気スケールCがスケール位置C1にいる場合、その中央(C1’)と磁気センサS4の距離は「a/2」である。磁気スケールCがスケール位置C3にいる場合、その中央(C3’)と磁気センサS5の距離は「a/2」である。磁気スケールCがスケール位置C5にいる場合、その中央(C5’)と磁気センサS6の距離は「a/2」である。
【0039】
スケール位置C2では、磁気センサS4が磁気スケールC2の一端部(
図6における上端部または左端部)を検知し、磁気センサS5が磁気スケールC2の他端部(
図6における下端部または右端部)を検知する。この時、便宜的に磁気センサS5についてのみ示されるように、磁気スケールC2の他端部(C2”)と磁気センサS5は径方向または横方向に距離「a/2」だけずれている。ここで、他端部C2”は、磁気スケールC2のスケール中心線L2と、磁気センサS5の中央を通る径方向の直線の交点である。同様に、磁気スケールC2の一端部(C2’)と磁気センサS4は径方向または横方向に距離「a/2」だけずれている。ここで、一端部C2’は、磁気スケールC2のスケール中心線L2と、磁気センサS4の中央を通る径方向の直線の交点である。このように、隣接する磁気センサS4、S5から等しい距離(スケール位置C2)に磁気スケールC2の中央がある際の当該磁気スケールC2の端部(C2’および/またはC2”)と当該各磁気センサS4、S5の距離「a/2」と、各磁気センサS4、S5に磁気スケールCの中央が最接近した際の当該磁気スケールC1、C3の中央(C1’、C3’)と当該各磁気センサS4、S5の距離「a/2」が実質的に等しい。
【0040】
スケール位置C4では、磁気センサS5が磁気スケールC4の一端部(
図6における上端部または右端部)を検知し、磁気センサS6が磁気スケールC4の他端部(
図6における下端部または左端部)を検知する。この時、便宜的に磁気センサS5についてのみ示されるように、磁気スケールC4の一端部(C4’)と磁気センサS5は径方向または横方向に距離「a/2」だけずれている。ここで、一端部C4’は、磁気スケールC4のスケール中心線L4と、磁気センサS5の中央を通る径方向の直線の交点である。同様に、磁気スケールC4の他端部(C4”)と磁気センサS6は径方向または横方向に距離「a/2」だけずれている。ここで、他端部C4”は、磁気スケールC4のスケール中心線L4と、磁気センサS6の中央を通る径方向の直線の交点である。このように、隣接する磁気センサS5、S6から等しい距離(スケール位置C4)に磁気スケールC4の中央がある際の当該磁気スケールC4の端部(C4’および/またはC4”)と当該各磁気センサS5、S6の距離「a/2」と、各磁気センサS5、S6に磁気スケールCの中央が最接近した際の当該磁気スケールC3、C5の中央(C3’、C5’)と当該各磁気センサS5、S6の距離「a/2」が実質的に等しい。
【0041】
以上のように、磁気スケールCが半径rのレールの曲線部に沿ってスケール位置C1~C5の順に移動する場合、磁気スケールCと磁気センサS4~S6の距離は、各スケール位置C1~C5において「a/2」で実質的に一定である。
図5の例では磁気スケールCと磁気センサS4~S6のずれの最大値がスケール位置C2、C4において「a」であったのに対し、本実施形態では磁気スケールCと磁気センサS4~S6のずれの最大値が図示の全てのスケール位置C1~C5において半分の「a/2」に低減される。このため、磁気スケールC1~C5が磁気センサS4~S6から外れにくくなり、
図5のように磁気センサS4~S6の間隔(中心角2θおよび/または弧長l)を小さくする必要がなくなる。従って、本実施形態によれば、レールの曲線部における磁気センサS4~S6の増加を抑制できる。
【0042】
図6の例では磁気センサS4~S6が磁気スケールCの中央の軌跡RTから距離「a/2」だけ外側にずれた位置に配置されたが、当該距離は「a/2」に限らず「0」より大きく「a」より小さければ上記と同様の効果が得られる。例えば、当該距離は「a/3」より大きく「2a/3」より小さくするのが好ましく、「2a/5」より大きく「3a/5」より小さくするのが更に好ましく、「a/2」とするのが最適である。
【0043】
なお、
図6における磁気センサS4~S6は、半径「r+a/2」の円周上に実質的に等間隔(中心角2θ)で配置される。各磁気センサS4~S6間の弧長l’は「2π(r+a/2)×2θ/360」と表される。この弧長l’は、磁気スケールCの移動方向または軌道方向の長さ(48mm)より小さく、好ましくは磁気スケールCのスケール本体ABの移動方向または軌道方向の長さ(32mm)より小さい。また、
図6のレールの曲線部では磁気センサS4~S6が磁気スケールCの中央の軌跡RTより外側にずれた位置に配置されたが、
図2で模式的に表されるレールの直線部では磁気センサS0~S3が磁気スケールCの中央の軌跡RT上に配置されるのが好ましい。
【0044】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。例示としての実施形態における各構成要素や各処理の組合せには様々な変形例が可能であり、そのような変形例が本発明の範囲に含まれることは当業者にとって自明である。
【0045】
実施形態では、可動子に設けられる永久磁石と固定子に設けられる電磁石の間の磁力に基づいて可動子を駆動するリニア搬送システムを例示したが、本発明は磁気以外の任意の原理(例えば電気や流体)に基づく任意の駆動装置に適用できる。
【0046】
なお、実施形態で説明した各装置や各方法の構成、作用、機能は、ハードウェア資源またはソフトウェア資源によって、あるいは、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働によって実現できる。ハードウェア資源としては、例えば、プロセッサ、ROM、RAM、各種の集積回路を利用できる。ソフトウェア資源としては、例えば、オペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 リニア搬送システム、2 固定子、3 可動子、4 測位装置、22 測位部、32 被測位部。