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特開2023-180006作業支援方法、作業支援システム、および、プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180006
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】作業支援方法、作業支援システム、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
A01B69/00 301
A01B69/00 303A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093036
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西井 康人
【テーマコード(参考)】
2B043
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043BA02
2B043BA07
2B043BA09
2B043BB01
2B043BB06
2B043BB07
2B043BB12
2B043BB14
2B043DA01
2B043DA17
2B043EA02
2B043EA08
2B043EA12
2B043EA13
2B043EA37
2B043EB05
2B043EB08
2B043EB15
2B043EB16
2B043EB17
2B043EB18
2B043EB22
2B043EC14
2B043ED12
2B043EE01
2B043EE02
2B043EE05
2B043EE06
(57)【要約】
【課題】作業車両における走行モードの切り替え後に適切な案内を行うことができる技術を提供する。
【解決手段】例示的な作業支援方法は、作業車両を用いた作業の支援を行う作業支援方法であって、圃場内において前記作業車両を自動で走行させる自動走行モードに切り替えることと、前記自動走行モードにおいて所定条件が満たされた場合、前記作業車両を手動で走行させる手動走行モードに切り替えることと、前記自動走行モードから前記手動走行モードに切り替えられたことを報知する切替報知を行うことと、を実行する。前記手動走行モードに切り替えられた際の前記作業車両の状況に応じて、前記切替報知の態様が異なる。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両を用いた作業の支援を行う作業支援方法であって、
圃場内において前記作業車両を自動で走行させる自動走行モードに切り替えることと、
前記自動走行モードにおいて所定条件が満たされた場合、前記作業車両を手動で走行させる手動走行モードに切り替えることと、
前記自動走行モードから前記手動走行モードに切り替えられたことを報知する切替報知を行うことと、
を実行し、
前記手動走行モードに切り替えられた際の前記作業車両の状況に応じて、前記切替報知の態様が異なる、作業支援方法。
【請求項2】
前記切替報知の態様の相違には、報知に用いる装置の相違と、同一の前記装置を用いて報知の仕方を異ならせることとの少なくともいずれか一方が含まれる、請求項1に記載の作業支援方法。
【請求項3】
前記切替報知の態様は、前記手動走行モードに切り替えられた際に前記作業車両が走行を継続する場合と、前記手動走行モードに切り替えられた際に前記作業車両が走行を停止する場合とで異なる、請求項1又は2に記載の作業支援方法。
【請求項4】
前記手動走行モードに切り替えられた際に前記作業車両が走行を継続する場合、音声を用いて前記切替報知を実行する、請求項3に記載の作業支援方法。
【請求項5】
前記手動走行モードに切り替えられた際に前記作業車両が走行を継続する場合には、前記作業車両に搭乗するオペレータがステアリング操作を行うことにより前記所定条件が満たされる場合が含まれる、請求項3に記載の作業支援方法。
【請求項6】
前記手動走行モードに切り替えられた際に前記作業車両が走行を停止する場合、表示を用いて前記切替報知を実行する、請求項3に記載の作業支援方法。
【請求項7】
前記手動走行モードに切り替えられた際に前記作業車両が走行を停止する場合には、前記作業車両が備える測位通信ユニットの不具合の発生により前記所定条件が満たされる場合と、前記作業車両が備える障害物センサによる障害物の検出により前記所定条件が満たされる場合とのうち少なくとも一方が含まれる、請求項3に記載の作業支援方法。
【請求項8】
前記ステアリング操作により前記所定条件が満たされて前記切替報知を実行した後に、前記作業車両の車速が制限されることを報知する車速制限報知を実行する、請求項5に記載の作業支援方法。
【請求項9】
前記作業車両が前記自動走行モードで後進走行している際に前記手動走行モードに切り替わった場合、前記切替報知の実行後に、前記作業車両が前進走行を行うことを報知する前進走行報知を実行する、請求項1に記載の作業支援方法。
【請求項10】
前記前進走行報知の実行後、前記作業車両の車速が制限されることを報知する車速制限報知を実行する、請求項9に記載の作業支援方法。
【請求項11】
前記手動走行モードから前記自動走行モードに移行したことを報知する自動走行モード移行報知を実行する、請求項1に記載の作業支援方法。
【請求項12】
前記自動走行モード移行報知の実行後、前記作業車両が進行する方向を報知する進行方向報知を実行する、請求項11に記載の作業支援方法。
【請求項13】
複数種類の音の報知のタイミングの一部に重複が生じ、先のタイミングの第1報知の音の出力中に次のタイミングの第2報知の音を出力する必要が生じた場合に、前記第1報知の音を途中で終了し、当該終了後に区切りの期間を設けて前記第2報知の音を出力する、請求項1に記載の作業支援方法。
【請求項14】
作業車両を用いた作業の支援を行う作業支援システムであって、
圃場内において前記作業車両を自動で走行させる自動走行モード中に所定条件が満たされた場合に、前記作業車両を手動で走行させる手動走行モードに切り替える制御部と、
前記自動走行モードから前記手動走行モードに切り替えられたことを報知する切替報知を行う報知部と、
を備え、
前記手動走行モードに切り替えられた際の前記作業車両の状況に応じて、前記切替報知の態様が異なる、作業支援システム。
【請求項15】
作業車両を用いた作業の支援を行う作業支援方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記コンピュータを、
圃場内において前記作業車両を自動で走行させる自動走行モードに切り替えることと、
前記自動走行モードにおいて所定条件が満たされた場合、前記作業車両を手動で走行させる手動走行モードに切り替えることと、
前記自動走行モードから前記手動走行モードに切り替えられたことを報知する切替報知の処理を行うことと、
を実行する手段として機能させ、
前記手動走行モードに切り替えられた際の前記作業車両の状況に応じて、前記切替報知の態様が異なる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業支援方法、作業支援システム、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場内を自動走行する作業車両が知られる(例えば特許文献1参照)。オペレータの操作による走行が必要とされる状況が存在するために、作業車両は自動走行モードと手動走行モードとを切替可能に設けられる。特許文献1には、作業車両の運転モードが自動走行モードと手動走行モードとのいずれであるかを、作業車両の運転者、あるいは、作業車両の近傍にいる人に通知する技術が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-168883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動走行モードから手動走行モードとへ切り替わった場合に、作業車両の状況は必ずしも同じではない。例えば、自動走行モードから手動走行モードに切り替わった場合に、走行が継続されることや、走行が停止されることがある。走行が継続される場合と、走行が停止される場合とで、その後のオペレータの操作対応に違いが生じることがある。このために、走行モードの切り替え後の案内にも工夫の余地があると考えられる。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、作業車両における走行モードの切り替え後に適切な案内を行うことができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的な作業支援方法は、作業車両を用いた作業の支援を行う作業支援方法であって、圃場内において前記作業車両を自動で走行させる自動走行モードに切り替えることと、前記自動走行モードにおいて所定条件が満たされた場合、前記作業車両を手動で走行させる手動走行モードに切り替えることと、前記自動走行モードから前記手動走行モードに切り替えられたことを報知する切替報知を行うことと、を実行する。前記手動走行モードに切り替えられた際の前記作業車両の状況に応じて、前記切替報知の態様が異なる。
【0007】
本発明の例示的な作業支援システムは、作業車両を用いた作業の支援を行う作業支援システムであって、圃場内において前記作業車両を自動走行させる自動走行モード中に所定条件が満たされた場合に、前記作業車両を手動走行させる手動走行モードに切り替える制御部と、前記自動走行モードから前記手動走行モードに切り替えられたことを報知する切替報知を行う報知部と、を備える。前記手動走行モードに切り替えられた際の前記作業車両の状況に応じて、前記切替報知の態様が異なる。
【0008】
本発明の例示的なプログラムは、作業車両を用いた作業の支援を行う作業支援方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、前記コンピュータを、圃場内において前記作業車両を自動で走行させる自動走行モードに切り替えることと、前記自動走行モードにおいて所定条件が満たされた場合、前記作業車両を手動で走行させる手動走行モードに切り替えることと、前記自動走行モードから前記手動走行モードに切り替えられたことを報知する切替報知の処理を行うことと、を実行する手段として機能させる。前記手動走行モードに切り替えられた際の前記作業車両の状況に応じて、前記切替報知の態様が異なる。
【発明の効果】
【0009】
例示的な本発明によれば、作業車両における走行モードの切り替え後に適切な案内を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】作業支援システムの概略の構成を示すブロック図
図2A】コンバインの概略の構成を示す側面図
図2B】コンバインの概略の構成を示す平面図
図3】トラクタの概略の構成を示す側面図
図4】田植機の概略の構成を示す側面図
図5】作業車両の構成を示すブロック図
図6】携帯通信端末の構成を示すブロック図
図7】手動走行モードから自動走行モードへの切替処理の一例を示すフローチャート
図8】自動走行モードから手動走行モードへの切替処理の一例を示すフローチャート
図9】主変速レバーの状態を示す模式図
図10】コンバインにおける脱穀粒の排出作業について説明するための模式図
図11】作業車両が備える操作部の構成例を示すブロック図
図12】自動走行モードへの切り替え後における作業支援処理を例示するフローチャート
図13】自動走行が後進で開始される例を示す模式図
図14】自動走行が後進で開始される例を示す模式図
図15】手動走行モードへの切り替え後における作業支援処理を例示するフローチャート
図16】自動走行モードから手動走行モードへと切り替えられた際に作業車両の走行が継続される例を説明するための模式図
図17】作業車両1の走行が継続される場合に音声報知を用いる利点を説明するための模式図
図18】主変速レバーの状態を説明するための模式図
図19】音声報知の有無を設定する設定画面の一例を示す図
図20】音声報知の有無を個別に設定する設定画面の一例を示す図
図21】音声報知の音量を設定する設定画面の一例を示す図
図22】音声報知の音量を個別に設定する設定画面の一例を示す図
図23】音声報知の音の詳細を設定する設定画面の一例を示す図
図24】音声報知に利用する音源データを設定する設定画面の一例を示す図
図25】作業車両の状態に応じた報知態様の設定処理を例示するフローチャート
図26A】作業支援システムが備える作業車両が、コンバイン、トラクタ、および、田植機のうちのいずれである場合にも共通して適用される音声報知を例示するテーブル
図26B】作業支援システムが備える作業車両が、コンバイン、トラクタ、および、田植機のうちのいずれである場合にも共通して適用される音声報知を例示するテーブル
図27】作業支援システムが備える作業車両がコンバインである場合に適用される音声報知を例示するテーブル
図28】作業支援システムが備える作業車両がトラクタである場合に適用される音声報知を例示するテーブル
図29】作業支援システムが備える作業車両が田植機である場合に適用される音声報知を例示するテーブル
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書では、方向を以下のように定義する。まず、作業車両が作業時に進行する方向を「前」とし、その逆方向を「後」とする。また、作業車両の進行方向に向かって右側を右とし、左側を左とする。そして、作業車両の前後方向および左右方向に垂直な方向を上下方向とする。このとき、重力方向を下とし、その反対側を上とする。以上の方向は単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定する意図はない。
【0012】
<1.作業支援システムの概要>
図1は、本発明の実施形態に係る作業支援システム100の概略の構成を示すブロック図である。図1に示すように、作業支援システム100は、作業車両1と、携帯通信端末2と、遠隔操作装置3とを備える。作業支援システム100は、作業車両1を用いた作業の支援を行うシステムである。詳細には、作業支援システム100は、圃場内を自動走行可能に設けられる作業車両1を用いた作業の支援を行うシステムである。作業支援システム100は、より詳細には、圃場内を走行する作業車両1を用いて行う圃場作業の支援を行う圃場作業支援システムである。
【0013】
なお、作業支援システム100は、作業車両1を用いた作業の支援を行う作業支援方法を実行する。作業支援システム100は、圃場内を自動走行可能に設けられる作業車両1を用いた作業の支援を行う作業支援方法を実行する。
【0014】
[1-1.作業車両]
作業車両1は、圃場内を走行する作業車両を広く含む。作業車両1は、例えば、コンバイン、トラクタ、田植機、各種の収穫機、または、薬液の散布を行う散布機等である。以下、本発明が適用されるコンバイン1C、トラクタ1T、および、田植機1Rの構成例にいて簡単に説明する。
【0015】
図2Aは、本発明の実施形態に係るコンバイン1Cの概略の構成を示す側面図である。図2Aにおいて、符号Fは圃場を示す。図2Bは、本発明の実施形態に係るコンバイン1Cの概略の構成を示す平面図である。図2Aおよび図2Bに示すように、コンバイン1Cは、機台1C1、エンジン1C2、脱穀装置1C3、グレンタンク1C4、運転部1C5、排出オーガ1C6、刈取部1C7、および一対の走行部1C8を含む。
【0016】
機台1C1 は、各部を支持するフレームである。エンジン1C2は、コンバイン1Cの各部に動力を供給する。作業機の一例である刈取部1C7は、機台1C1の前端に配置される。刈取部1C7は、圃場Fで生育した穀稈を刈り取る。刈取部1C7には、刈取部1C7を昇降させる昇降シリンダ(不図示)が連結される。すなわち、刈取部1C7は昇降可能に設けられる。
【0017】
脱穀装置1C3は、刈取部1C7によって刈り取られた穀稈を脱穀処理する。グレンタンク1C4は、脱穀粒を貯留する。排出オーガ1C6は、グレンタンク1C4内の脱穀粒をコンバイン1Cの外部に排出するために脱穀粒を搬送する。運転部1C5は、運転者が搭乗する部分である。運転部1C5には、運転者が座るための運転座席1C5a と、コンバイン1Cの操舵を行うためのステアリングホイール(ハンドル)1C5bと、コンバイン1Cを操縦するための様々な操作部(不図示)とが含まれる。一対の走行部1C8は、左右方向に間隔をあけて配置される。一対の走行部1C8のそれぞれには、エンジン1C2から駆動力が伝達可能に設けられる。走行部1C8の駆動により、コンバイン1Cは圃場Fを走行する。
【0018】
図3は、本発明の実施形態に係るトラクタ1Tの概略の構成を示す側面図である。図3においても、符号Fは圃場を示す。トラクタ1T は、圃場F内を走行する走行機体1T1と、走行機体1T1の後部に装着された作業機としての耕耘機1T2とを備える。作業機としては、耕耘機1T2以外にも、例えば、プラウ、施肥機、草刈機、播種機等を用いることができる。
【0019】
走行機体1T1は、機体部1T3と、機体部1T3を支持し左右方向に互いに間隔を隔てて配置される一対の走行部1T4とを備える。各走行部1T4は、前輪1T4aおよび後輪1T4bを含む。前輪1T4aおよび後輪1T4bの少なくとも一方は、機体部1T3の前方に配置されるエンジン1T5から駆動力を伝達可能に設けられる。走行部1T4の駆動により、走行機体1T1は圃場Fを走行する。機体部1T3は、運転者が搭乗する運転部1T6を備える。運転部1T6には、運転者が座るための運転座席1T6aと、走行機体1T1の操舵を行うためのステアリングホイール1T6bと、運転者が各種操作を行うための操作部(不図示)とが含まれる。
【0020】
耕耘機1T2は、昇降リンク機構1T7を介して機体部1T3の後方に連結される。機体部1T3の後部には、エンジン1T5の駆動力を耕耘機1T2に出力するためのPTO軸(パワーテイクオフ軸)1T8と、耕耘機1T2を昇降駆動するための左右一対の昇降シリンダ(不図示)と、が配置される。PTO軸1T8には、トランスミッション1T9を介して、エンジン1T5の駆動力が伝達される。
【0021】
図4は、本発明の実施形態に係る田植機1Rの概略の構成を示す側面図である。田植機1Rは、圃場F内を走行しながら、圃場Fの地面に苗を植え付ける植付作業を行う。田植機1Rは、走行機体1R1と、走行機体1R1の後方に配置される作業機としての植付部1R2とを備える。
【0022】
走行機体1R1は、機体部1R3と、機体部1R3を支持し左右方向に互いに間隔を隔てて配置される一対の走行部1R4 とを備える。各走行部1R4は、前輪1R4aおよび後輪1R4bを含む。前輪1R4aおよび後輪1R4bの少なくとも一方は、機体部1R3の前方に配置されるエンジン1R5から駆動力を伝達可能に設けられる。走行部1R4の駆動により、走行機体1R1は圃場Fを走行する。機体部1R3は、運転者が搭乗する運転部1R6を備える。運転部1R6には、運転者が座るための運転座席1R6aと、走行機体1R1の操舵を行うためのステアリングホイール1R6bと、運転者が各種操作を行うための操作部(不図示)とが含まれる。
【0023】
植付部1R2は、昇降リンク機構1R7を介して機体部1R3の後方に連結される。機体部1R3の後部には、エンジン1R5の駆動力を植付部1R2に出力するためのPTO軸1R8と、植付部1R2を昇降駆動するための昇降シリンダ1R9とが配置される。PTO軸1R8には、トランスミッション(不図示)を介して、エンジン1R5の駆動力が伝達される。
【0024】
図5は、本発明の実施形態に係る作業車両1の構成を示すブロック図である。なお、図5に示す構成は、図2Aおよび図2Bに示されるコンバイン1C、図3に示されるトラクタ1T、および、図4に示される田植機1Rに適用可能な構成である。
【0025】
図5に示すように、作業車両1は制御部10を備える。制御部10は、例えば、演算装置、入出力部、および、記憶部101を含んで構成されるコンピュータである。演算装置は、例えばプロセッサ又はマイクロプロセッサである。記憶部101は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)のような主記憶装置である。記憶部101は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)のような補助記憶装置をさらに含んでもよい。記憶部101には、各種のプログラム及びデータ等が記憶されている。演算装置は、各種のプログラムを記憶部101から読み出して実行する。
【0026】
上記のハードウェアとソフトウェアとの協働により、制御部10を、走行モード制御部102、走行制御部103、作業機制御部104、および、報知制御部105として動作させることができる。制御部10は、1つのハードウェアで構成されてもよいし、互いに通信可能な複数のハードウェアで構成されてもよい。
【0027】
なお、制御部10が備える各機能部102~105は、上述のように、演算装置にプログラムを実行させること、すなわちソフトウェアにより実現されてよいが、他の手法により実現されてもよい。各機能部102~105は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いて実現されてもよい。すなわち、各機能部102~105は、専用のIC等を用いてハードウェアにより実現されてもよい。また、各機能部102~105は、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現されてもよい。また、各機能部102~105は、概念的な構成要素である。1つの構成要素が実行する機能が、複数の構成要素に分散されてよい。また、複数の構成要素が有する機能が1つの構成要素に統合されてもよい。
【0028】
制御部10には、測位通信ユニット11、通信処理部12、センサ13、操作部14、表示部15、および、音出力部16が接続される。すなわち、作業車両1は、測位通信ユニット11、通信処理部12、センサ13、操作部14、表示部15、および、音出力部16を備える。
【0029】
測位通信ユニット11は、不図示の測位アンテナを含み、当該測位アンテナが測位衛星から受信した測位信号を用いて、作業車両1の位置を例えば緯度および経度の情報として取得する。測位通信ユニット11は、作業車両1の位置情報を制御部10へ出力する。測位通信ユニット11は、例えば、図示しない基準局からの測位信号を適宜の方法で受信した上で、公知のRTK-GNSS(Real Time Kinematic GNSS)法を利用して測位を行ってよい。また、例えば、測位通信ユニット11は、DGNSS(Differential GNSS)法を利用して測位を行ってもよい。
【0030】
通信処理部12は、通信アンテナ12aを介して携帯通信端末2との間でデータの送受信を行う。なお、通信アンテナ12aは、携帯通信端末2と無線通信を行うためのアンテナである。無線通信には、Wi-Fi(登録商標)等の無線LAN(Local Area Network)及びBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信等が利用されてよい。また、作業車両1には、携帯電話回線及びインターネットを利用した通信を行うための携帯通信用のアンテナが設けられてもよい。このような構成の場合、制御部10が有する記憶部101に記憶される情報の一部を外部のサーバに記憶させることもできる。また、制御部10とサーバとが連携して、上述した制御部10の機能が実現されてもよい。
【0031】
センサ13は、作業車両1に関わる情報を検知して、検知した情報を制御部10へ出力する。本実施形態において、センサ13には、複数種類のセンサが含まれる。複数種類のセンサのそれぞれは、制御部10に信号を入力可能に接続される。複数種類のセンサには、例えば、慣性計測装置、障害物センサ、昇降位置センサ、レバー位置センサ、又は、オンオフセンサ等が含まれてよい。
【0032】
なお、慣性計測装置は、3軸の角速度センサと3方向の加速度センサとを含み、作業車両1の姿勢を計測可能な装置であってよい。障害物センサは、作業車両1の周囲に存在する障害物を検知するセンサであり、例えば超音波センサ、カメラ、レーダ、又は、LiDAR(Light Detection And Ranging)等であってよい。昇降位置センサは、昇降可能に設けられる作業機の昇降位置を検知するセンサであってよい。例えば、昇降位置センサは、上述した刈取部1C7(図2A等参照)、耕耘機1T2(図3参照)、又は、植付部1R2(図4参照)の昇降位置を検知するセンサであってよい。レバー位置センサは、作業車両1が備える操作レバーの位置を検知するセンサであってよい。操作レバーは、例えば変速レバー等であってよい。作業車両1が複数の操作レバーを備える場合、各操作レバーに対してレバー位置センサが設けられてよい。オンオフセンサは、作業車両1が備えるスイッチがオン状態であるか、オフ状態であるかを検知するセンサであってよい。作業車両1が複数のスイッチを備える場合、各スイッチに対してオンオフセンサが設けられてよい。
【0033】
操作部14は、作業車両1の運転部に搭乗する運転者が操作を行う部分を広く含む。操作部14は、運転者の制御部10へ指令を可能とする。操作部14は、例えば、ボタン、レバー、ダイヤル、又は、タッチパネル等であってよい。
【0034】
表示部15は、制御部10からの指令に応じて情報の表示を適宜行う。表示部15は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electroluminescence)ディスプレイであってよい。表示部15はタッチパネルを有する構成としてよく、この場合、表示部15が上述の操作部14を兼ねてもよい。
【0035】
音出力部16は、制御部10からの指令に応じて音を適宜出力する。音には、音声やブザー音が含まれてよい。音出力部16は、詳細には音声出力用のスピーカとブザーとのうちの少なくとも一方を含む構成であってよい。
【0036】
本実施形態では、表示部15および音出力部16は、制御部10からの指令によって報知を行う報知部17を構成する。なお、報知部17は、表示部15と音出力部16とのいずれか一方のみによって構成されてもよい。また、報知部17は、表示部15および音出力部16以外を用いて構成されてもよい。報知部17は、例えば、発光手段あるいは振動発生手段等によって構成されてもよい。
【0037】
走行モード制御部102は、手動走行モードと自動走行モードとの切り替えを制御する。当該切り替えの制御の詳細については後述する。手動走行モードは、作業車両1の運転部に運転者(オペレータ)が搭乗し、運転者が作業車両1の運転を行うモードである。自動走行モードは、圃場F内において作業車両1を自動走行させるモードである。ここで、自動走行とは、作業車両1が備える制御部10により走行に関する装置が制御されることで、予め定められた経路に沿うように少なくとも操舵が自律的に行われることを意味する。自動走行は、操舵に加え、例えば、車速と、作業機による作業とのうちの少なくとも一方が自律的に行われる構成であってもよい。
【0038】
自動走行モードには、例えば、自動直進モードと、有人自動走行モードと、無人自動走行モードとのうち、少なくともいずれか1つのモードが含まれてよい。自動直進モードにおいては、ステアリング操作(ステアリングホイールの操作、ハンドルの操作)の制御のみが自動で行われる。自動直進モードにおいては、例えば、車速の制御、作業機の昇降の制御、および、作業機の動作のオンオフの制御は、手動で行われる。有人自動走行モードにおいては、運転者が作業車両1の運転部に搭乗した状態で、直進走行による作業や旋回走行が自動で行われる。有人自動走行モードにおいては、例えば車速の制御や作業機の昇降制御について、自動と手動との切り替えが可能である。無人自動走行モード(ロボットモード)においては、運転者が作業車両1の運転部に搭乗せず、全ての操作が自動で行われる。
【0039】
走行制御部103は、走行モードが自動走行モードである場合、作業車両1の走行系の少なくとも一部について自動制御を行う。走行制御部103は、例えば自動走行モードが自動直進モードであれば、作業車両1が予め定められた経路に沿って走行するようにステアリング操作を自動で制御する。走行制御部103は、例えば自動走行モードが有人自動走行モードや無人自動走行モードであれば、ステアリング操作および車速の調整を自動で制御する。
【0040】
作業機制御部104は、作業車両1の作業系の制御を、走行モードに応じて行う。作業機制御部104は、走行モードが手動走行モードや自動直進モードである場合、例えば、作業車両1の運転部に設けられる操作レバーの運転者の操作に応じて作業機の昇降制御を行う。作業機制御部104は、走行モードが有人自動走行モードや無人自動走行モードである場合、例えば、作業機の昇降制御を自動で行う。
【0041】
報知制御部105は、所定の条件を満たした場合に、例えば、報知部17に含まれる表示部15や音出力部16を制御して、画面表示や音声を用いた報知を行わせる。所定の条件は、例えば、作業車両1に搭乗する運転者としてのオペレータや、作業車両1の周囲に居て作業車両1の操作を行うオペレータ等に対して注意喚起を行う必要がある場合等に満たされる。
【0042】
[1-2.携帯通信端末]
図6は、本発明の実施形態に係る携帯通信端末2の構成を示すブロック図である。携帯通信端末2は、例えば、タブレット端末、スマートフォン、又はノートパソコン等である。図6に示されるように、携帯通信端末2は、通信処理部21、操作部22、表示部23、音出力部24、及び、制御部20を備える。通信処理部21、操作部22、表示部23、および、音出力部24は、制御部20に接続される。
【0043】
通信処理部21は、通信アンテナ21aを介して作業車両1との間でデータの送受信を行う。通信処理部21は、作業車両1から受信したデータを制御部20に出力する。なお、通信アンテナ21aは、作業車両1と無線通信を行うためのアンテナである。また、携帯通信端末2には、携帯電話回線及びインターネットを利用した通信を行うための携帯通信用のアンテナが設けられてもよい。携帯通信端末2は、自身に携帯通信用のアンテナが設けられない場合でも、作業車両1が備える携帯通信用のアンテナを利用して携帯電話回線およびインターネットを利用した通信を行うことができる構成であってもよい。逆に、作業車両1は、自身に携帯通信用のアンテナが設けられない場合でも、携帯通信端末2が備える携帯通信用のアンテナを利用して携帯電話回線およびインターネットを利用した通信を行うことができる構成であってもよい。
【0044】
操作部22は、オペレータの指令を受け付けて、当該指令を制御部20に入力する。操作部22は、タッチパネル等のソフトウェアキー、又は、ハードウェアキーの少なくとも一方を含む。タッチパネルは、表示部23に設けられ、オペレータの指等による操作を検出可能な構成であってよい。ハードウェアキーは、携帯通信端末2の筐体の側面または表示部23の周囲等に配置され、オペレータの指等による押圧を検出可能な構成であってよい。
【0045】
表示部23は、制御部20からの指令に応じて情報の表示を適宜行う。表示部23は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイである。表示部23がタッチパネルを有する構成としてよく、この場合、表示部23が上述の操作部22を兼ねてもよい。
【0046】
音出力部24は、制御部20からの指令に応じて音を適宜出力する。音には、音声やブザー音が含まれてよい。音出力部24は、詳細には音声出力用のスピーカとブザーとのうちの少なくとも一方を含む構成であってよい。
【0047】
本実施形態では、表示部23および音出力部24は、制御部20からの指令によって報知を行う報知部25を構成する。なお、報知部25は、表示部23と音出力部24とのいずれか一方のみによって構成されてもよい。また、報知部25は、表示部23および音出力部24以外を用いて構成されてもよい。報知部25は、例えば、発光手段あるいは振動発生手段等によって構成されてもよい。また、本実施形態では、作業車両1と携帯通信端末2との両方に報知部17、25が設けられる構成となっているが、いずれか一方にのみ報知部が設けられる構成であってもよい。
【0048】
制御部20は、例えば、演算装置、入出力部、および、記憶部201を含んで構成されるコンピュータである。演算装置は、プロセッサ又はマイクロプロセッサ等である。記憶部201は、ROM及びRAMのような主記憶装置である。記憶部201は、HDD又はSSDのような補助記憶装置をさらに含んでもよい。記憶部201には、各種のプログラム及びデータ等が記憶されている。演算装置は、各種のプログラムを記憶部201から読み出して実行する。制御部20は、例えば、ハードウェアとソフトウェアとの協働により、自動走行に関わる処理を行う自動走行処理部として機能する。自動走行に関わる処理には、自動走行の開始や終了に関する処理、自動走行の際に必要となる経路を作成する処理、および、自動走行に関わる条件の設定処理等が含まれる、また、制御部20は、詳細は後述する報知に関わる各種の処理を行ってもよい。
【0049】
なお、制御部20によって実現される機能は、ソフトウェアにより実現されてもよいが、他の手法により実現されてもよい。制御部20によって実現される機能は、例えば、ASICやFPGA等を用いて、ハードウェアにより実現されてもよい。また、制御部20によって実現される機能は、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現されてもよい。
【0050】
また、本実施形態では、携帯通信端末2は、自動走行に関する様々な処理や報知に関わる様々な処理を実行可能に設けられるが、これらの様々な処理の少なくとも一部が作業車両1の制御部10によって実行されてもよい。逆に、作業車両1の制御部10が実行する様々な処理の少なくとも一部が、携帯通信端末2の制御部20によって実行されてもよい。また、上述した作業車両1の制御部10が有する機能の少なくとも一部や、上述した携帯通信端末2の制御部20が有する機能の少なくとも一部について、作業車両1の制御部10と、携帯通信端末2の制御部20とが協働することにより実現されてもよい。また、携帯通信端末2の制御部20が有する機能の少なくとも一部は、インターネット等のネットワークを介して通信可能なサーバと制御部20とが連携することにより実行されてもよい。また、制御部20が有する記憶部201に記憶される情報の一部を外部のサーバに記憶させてもよい。
【0051】
[1-3.遠隔操作装置]
遠隔操作装置3(図1参照)は、例えば、携帯通信端末2を利用するオペレータ以外の者が圃場Fで作業を行う場合に利用される。遠隔操作装置3は、携帯通信端末2に比べて実行することができる操作の種類が少ない簡易型の装置である。遠隔操作装置3は、無線方式で作業車両1と通信可能に設けられる。遠隔操作装置3は、例えば、作業車両1から離れた場所に居る者が、作業車両1に対して自動走行作業の開始、停止、或いは、再開を可能とするスイッチを備える構成であってよい。遠隔操作装置3は、自動走行による作業を行う作業車両1を緊急停止させる機能を備えることが好ましい。遠隔操作装置3は、緊急停止用リモコンであってよい。
【0052】
なお、図1に示す例では、遠隔操作装置3の数は1つであるが、複数であってもよい。また、遠隔操作装置3は、作業支援システム100に必須の構成ではなく、場合によっては設けられなくてもよい。また、遠隔操作装置3も、表示と音声とのうち少なくとも一方で報知を行う報知部を備えてよい。
【0053】
<2.作業支援の詳細>
次に、以上のように構成される作業支援システム100が実行する作業支援(作業支援方法)の詳細について説明する。
【0054】
[2-1.走行モードの切り替えに関わる作業支援]
図7は、本発明の実施形態に係る作業支援システム100において実行される手動走行モードから自動走行モードへの切替処理の一例を示すフローチャートである。なお、作業車両1は、通常、エンジンの始動時において手動走行モードである。また、図7に示す例は、詳細には、手動走行モードから無人自動走行モードに切り替える場合の処理であってよい。
【0055】
ステップS1では、走行モード制御部102(図5参照)が自動走行モードに移行するための準備が完了したか否かを監視する。当該準備は、オペレータが作業車両1に対して所定の操作を行うことによって完了する。すなわち、ステップS1では、自動走行モードに移行するために必要となる所定の準備操作が完了したか否かが監視される。所定の準備操作は、1つの操作であってもよいが、複数種類の操作であってもよい。
【0056】
なお、所定の準備操作には、例えば、自動走行モードへ移行するためのスイッチをオンとする操作が含まれてよい。また、所定の準備操作には、例えば、PTO軸へ動力を伝達する状態(オン状態)と、動力を伝達しない状態(オフ状態)とを切り替えるPTOスイッチをオンとする操作が含まれてよい。また、所定の準備操作には、変速レバーの位置を所定位置とする操作が含まれてよい。所定位置は、例えば中立位置や最小位置であってよい。
【0057】
ステップS1において、自動走行モードに移行するための準備が完了したと判定されると(ステップS1でYes)、次のステップS2に処理が進められる。
【0058】
ステップS2では、走行モード制御部102が自動走行モードの開始指令があったか否かを監視する。本実施形態において、当該開始指令は、オペレータが携帯通信端末2または遠隔操作装置3を操作することによって実現される。開始指令があった場合(ステップS2でYes)、走行モード制御部102は、走行モードを自動走行モードに移行にする。これにより、自動走行が開始される。
【0059】
なお、以上の説明からわかるように、図7に示す例では、オペレータが単に携帯通信端末2や遠隔操作装置3における自動走行モードの開始スイッチを操作しても手動走行モードから自動走行モードへと切り替わらない。作業車両1において所定の準備操作が行われていることを条件として、携帯通信端末2や遠隔操作装置3における自動走行モードの開始スイッチの操作によって手動走行モードから自動走行モードへの切り替えが行われる。本例の作業支援方法においては、所定の準備操作が行われていない状態で、自動走行モードの開始スイッチの操作が行われた場合に、例えば、所定の準備操作が完了していない旨の報知が行われる構成が含まれてよい。また、本例の作業支援方法には、所定の準備操作が行われていない状態で、自動走行モードの開始スイッチの操作が行われた場合に、準備操作が完了していない操作の内容が報知される構成が含まれてよい。報知は、例えば、報知部17、25の表示や音声を利用して行われてよい。
【0060】
図8は、本発明の実施形態に係る作業支援システム100において実行される自動走行モードから手動走行モードへの切替処理の一例を示すフローチャートである。
【0061】
ステップS11では、走行モード制御部102が自動走行モードを停止する停止条件が満たされたか否かを監視する。停止条件は、例えば、オペレータによる携帯通信端末2または遠隔操作装置3を利用した自動走行の停止指令があった場合に満たされる。また、停止条件は、例えば、自動走行によって行う予定の作業が全て完了した場合に満たされる。また、停止条件は、例えば、作業車両1が所定位置に到達した場合に満たされる。所定位置は、例えば刈り取った穀稈の脱穀粒を排出する位置や、苗等の補給資材を補給する補給位置等である。また、停止条件は、例えば、オペレータが自動走行中に操作を禁止された操作部材を操作した場合に満たされる。停止条件が満たされたと判定された場合(ステップS11でYes)、次のステップS12に処理が進められる。
【0062】
ステップS12では、走行モード制御部102が、手動走行モードへの切り替えに必要となる準備(手動走行準備)が完了したか否かを判定する。手動走行準備は、オペレータが手動走行モードへの切り替えに必要となる所定操作を行った場合に完了する。所定操作は、1つの操作であってもよいが、複数種類の操作であってもよい。所定操作は、例えば安全上の問題によって設けられる操作である。所定操作の詳細については、後述する。手動走行準備が完了していると判定された場合(ステップS12でYes)、自動走行モードから手動走行モードに切り替えられる。一方、手動走行準備が完了していないと判定された場合(ステップS12でNo)、ステップS13に処理が進められる。
【0063】
ステップS13では、報知制御部105(図5参照)が所定操作を行うことを促す報知処理を行う。当該報知処理によって、作業車両1の報知部17と、携帯通信端末2の報知部25とのうち少なくとも一方を用いた報知が行われる。所定操作の報知は、音声と表示との少なくとも一方で行われることが好ましい。所定操作の報知は、作業車両1の表示部15、作業車両1の音出力部16、携帯通信端末2の表示部23、および、携帯通信端末2の音出力部24のうち少なくともいずれか1つを用いて行われてよい。ステップS13の処理が完了すると、ステップS12に処理が戻され、ステップS12以降の処理が繰り返される。
【0064】
以上からわかるように、本実施形態の作業支援方法は、圃場内において作業車両1を手動で走行させる手動走行モードから、作業車両1を自動で走行させる自動走行モードに切り替えることと、自動走行モードを停止する停止条件が満たされた場合に、手動走行モードへの切り替えに必要となる所定操作を報知すること、を実行する。本実施形態では、好ましい形態として、所定操作がオペレータによって実行されていない場合に、当該所定操作を促す報知が行われる。ただし、所定操作がオペレータによって実行されているか否かにかかわらず、当該所定操作の報知が行われてもよい。
【0065】
また、本実施形態の作業支援方法をコンピュータに実行させるプログラムは、コンピュータを、手動走行モードから自動走行モードに切り替えることと、自動走行モードを停止する停止条件を満たした場合に、手動走行モードへの切り替えに必要となる所定操作を報知することと、を実行する手段として機能させる。なお、本実施形態では、コンピュータは作業車両1の制御部10であるが、コンピュータは、作業車両1の制御部10と、携帯通信端末2の制御部20とのうち少なくとも一方であってよい。
【0066】
また、本実施形態の作業支援システム100は、手動走行モードから自動走行モードに切り替える制御部10と、自動走行モードを停止する停止条件を満たした場合に、手動走行モードへの切り替えに必要となる所定操作を報知する報知部17、25と、を備える。なお、本実施形態では、手動走行モードから自動走行モードに切り替える制御部は、作業車両1の制御部10である。ただし、手動走行モードから自動走行モードに切り替える制御部は、作業車両1の制御部10と、携帯通信端末2の制御部20とのうち少なくとも一方であってよい。
【0067】
本実施形態のように、走行モードを切り替えるために必要となる操作(所定操作)がオペレータに対して報知されることによって、オペレータは走行モードの切り替えを効率良く行うことができる。
【0068】
なお、作業支援システム100によって行われる作業支援方法は、作業車両1の自動走行の停止を報知する停止報知を行ってよい。停止報知は、例えば、「自動走行を停止しました」といった表示(画面表示)や音声であってよい。停止報知が行われる構成において、手動走行モードへの切り替えに必要となる所定操作の報知は、停止報知の後に実行されてよい。このような構成とすると、オペレータに対して、作業車両1の自動走行が停止されたことを把握させつつ、手動走行モードとするために必要となる操作の内容を報知することができる。すなわち、オペレータは、作業車両1の状況を把握しつつ必要な操作を行うことができる。なお、停止報知は、ブザー音であってもよい。また、停止報知は、ブザー音と音声とで構成されてもよい。ブザー音と音声とで構成される場合、例えば、「ぶー」と鳴った後に「自動走行を停止しました」との音声が出力される構成であってよい。ブザー音と音声との順番は逆であってもよい。
【0069】
手動走行モードへの切り替えに必要となる所定操作は、作業車両1の変速操作部を中立位置又は最小位置へ移動する操作を含んでよい。変速操作部は、例えば主変速レバーであってよい。オペレータは、変速操作部における必要な操作を報知によって適切に知ることができ、変速操作部の操作を効率良く行うことができる。
【0070】
例えば、主変速レバーは、「前進」、「中立(ニュートラル)」、「後進」の3つのポジション(位置)を切り替えることで作業車両1の進行方向を切り替えるとともに、前進方向および後進方向への倒し量で作業車両1の速度を変更する構成であってよい。このような構成の場合、所定操作には、主変速レバーを中立位置へ移動する操作が含まれてよい。
【0071】
また、例えば、作業車両1は、主変速レバーに加えて、「前進」、「中立」、「後進」の3つのポジションを切り替えて進行方向を変更するリバーサレバーを含む構成であってよい。そして、主変速レバーは、リバーサレバーで指示した方向における走行速度(車速)を変更する構成であってよい。このような構成の場合、所定操作には、主変速レバーを、車速を最小とする最小位置へ移動する操作が含まれてよい。なお、本例では、リバーサレバーは、手動走行モードから自動走行モードへの切り替え時に中立位置とされているために、自動走行モードから手動走行モードへと切り替えるためにリバーサレバーを操作する必要はない。
【0072】
手動走行モードへと切り替えるために主変速レバーを中立位置へ移動する操作が必要となる場合を例に、変速操作部の位置を移動する操作の報知を行う利点について説明する。図9は、主変速レバーLVの状態を示す模式図で、「F」は「前進位置」、「N」は「中立位置」、「R」は「後進位置」を示す。図9に示す例では、主変速レバーLVは、前進方向に倒されている。主変速レバーLVは、前進方向への倒し量が最大(100%)となる位置よりも手前に位置している。
【0073】
図9において、白抜き矢印の左側は、自動走行中の主変速レバーLVの状態を示し、白抜き矢印の右側は、自動走行が中断(停止)された場合の主変速レバーLVの状態を示す。白抜きの矢印の左側と右側とで、主変速レバーLVの位置は同じである。すなわち、自動走行状態から自動走行停止状態となった場合、主変速レバーLVの位置は、自動的に移動するわけではない。この結果、自動走行が停止された場合、作業車両1の実際の走行状態と、主変速レバーLVの位置とが不整合となる場合がある。なお、本例における自動走行は、例えば、上述の有人自動走行モードによる自動走行が想定される。
【0074】
手動走行モードに切り替えるためには、作業車両1の実際の走行状態と、主変速レバーLVの位置との間の不整合をなくす必要がある。すなわち、主変速レバーLVの位置を一旦「中立位置」にする必要がある。主変速レバーLVの位置を「中立位置」へ移動させるように報知することで、オペレータが主変速レバーLVの適切な操作を効率良く行うことが期待できる。報知は、音声と表示との少なくともいずれか一方であってよいが、音声による報知が含まれることが好ましい。特に、「主変速レバーを中立位置にしてください」といった具体的な操作内容を音声で報知することにより、オペレータが次の操作を容易に把握することができる。
【0075】
図10は、コンバイン1Cにおける脱穀粒の排出作業について説明するための模式図である。図10に示す例では、コンバイン1Cは、自動走行により、破線矢印Aで示す経路で排出位置P(正確には排出位置Pの近傍)に到着し、自動走行を停止する。ここで、図9に示すように、主変速レバーLVの位置が車速を増速する等の理由で前進位置側に操作されているとする。この場合、自動走行停止後に主変速レバーLVを中立位置に移動させる操作を行わないと手動走行モードに戻らない。ただし、コンバイン1Cが停止しているために、オペレータは主変速レバーLVの位置が中立位置であると錯覚し、主変速レバーLVを中立位置に移動させることを忘れやすい。
【0076】
ところで、通常、自動走行で排出位置Pに到達した場合、破線矢印Bで示すように、コンバイン1Cを手動走行にて後進させながら排出オーガ1C6の位置を排出位置Pの適所に合わせる。主変速レバーLVを前進位置側に操作したことを忘れて主変速レバーLVが中立位置にあると錯覚している場合等において、主変速レバーLVを特に目視することなく、後進側に向けて少しだけ主変速レバーLVを操作するといった事態が起こり得る。このような場合、主変速レバーLVが中立位置まで戻らず、コンバイン1Cが後進を開始しないといったことが起こり得る。主変速レバーLVの操作にもかかわらずコンバイン1Cが後進を開始しないと、オペレータは、後進が開始されない理由がわからず混乱を引き起こす可能性がある。この点、本実施形態では、主変速レバーを中立位置に移動するように報知が行われるために、前述のオペレータの混乱が生じることを抑制できる。
【0077】
図11は、作業車両1が備える操作部14の構成例を示すブロック図である。図11に示す例では、操作部14は、ロボットモードスイッチ141と、PTOスイッチ142と、作業機昇降レバー143とを含む。なお、操作部14は、ロボットモードスイッチ141と、PTOスイッチ142と、作業機昇降レバー143とのうち、いずれか1つのみを含む構成や、いずれか2つのみを含む構成であってもよい。また、操作部14は、ロボットモードスイッチ141と、PTOスイッチ142と、作業機昇降レバー143とのいずれも含まない構成であってもよい。
【0078】
ロボットモードスイッチ141は、手動走行モードから無人自動走行モードへと切り替える場合にオンとされ、無人自動走行モードから手動走行モードへと切り替える場合にオフとされる。ロボットモードスイッチ141は、手動走行モードと自動走行モードとを切り替える際にオンオフされる第1オンオフスイッチの一例である。ロボットモードスイッチ141は、例えば、ボタン、レバー、又はダイヤル等の物理スイッチでも、タッチパネル等を用いて構成されるソフトウェアスイッチであってもよい。
【0079】
操作部14がロボットモードスイッチ141等の第1オンオフスイッチを備える場合、手動走行モードへの切り替えに必要となる所定操作は、第1オンオフスイッチ141の操作を含んでよい。詳細には、無人自動走行モードで自動走行を行っていた作業車両1が走行停止した場合に、ロボットモードスイッチ141をオフとする操作を行わないと手動走行モードに切り替えられない構成としてよい。そして、このような構成の場合に、停止条件が満たされた場合に、「ロボットモードスイッチをオフとしてください」といった内容の報知が行われる構成とすることが好ましい。当該報知は、音声と表示との少なくともいずれか一方であってよいが、音声による報知が含まれることが好ましい。これにより、手動走行モードに切り替える際にロボットモードスイッチ141のオフ操作を忘れる可能性が低減され、オペレータは走行モードの切り替えを効率良く行うことができる。
【0080】
PTOスイッチ142は、手動走行モードから自動走行モードへと切り替える場合にオンとされ、自動走行モードから手動走行モードへと切り替える場合にオフとされる。PTOスイッチ142は、作業車両1の作業機の作動と非作動とを切り替える際にオンオフされる第2オンオフスイッチの一例である。PTOスイッチ142は、ボタン、レバー、又はダイヤル等の物理スイッチでも、タッチパネル等を用いて構成されるソフトウェアスイッチであってもよい。
【0081】
操作部14がPTOスイッチ142等の第2オンオフスイッチを備える場合、手動走行モードへの切り替えに必要となる所定操作は、第2オンオフスイッチ142の操作を含んでよい。詳細には、自動走行モードで自動走行を行っていた作業車両1が走行停止した場合に、PTOスイッチ142をオフとする操作を行わないと手動走行モードに切り替えられない構成としてよい。そして、このような構成の場合に、停止条件が満たされた場合に、「PTOスイッチをオフとしてください」といった内容の報知が行われる構成とすることが好ましい。当該報知は、音声と表示との少なくともいずれか一方であってよいが、音声による報知が含まれることが好ましい。これにより、手動走行モードに切り替える際にPTOスイッチ142のオフ操作を忘れる可能性が低減され、オペレータは走行モードの切り替えを効率良く行うことができる。
【0082】
作業機昇降レバー143は、オペレータが作業機の昇降を行うためのレバーである。本実施形態では、作業機昇降レバー143は、自動走行モードから手動走行モードへ切り替えるための操作部を兼ねる。作業機は、安全上の観点等から、自動走行モードから手動走行モードへと切り替える場合に非作業位置に移動される必要がある。本実施形態では、非作業位置は、作業機が地面から離れた位置であり、作業機昇降レバー143によって地面から上方に上げられた状態である。
【0083】
操作部14が作業機昇降レバー143を備える場合、手動走行モードへの切り替えに必要となる所定操作は、作業車両1の作業機を非作業状態にする操作を含んでよい。詳細には、自動走行モードで自動走行を行っていた作業車両1が走行停止した場合に、作業機昇降レバー143を用いて作業機を上げないと手動走行モードに切り替えられない構成としてよい。そして、このような構成の場合に、停止条件が満たされた場合に、「作業機を上げてください」といった内容の報知が行われる構成とすることが好ましい。当該報知は、音声と表示との少なくともいずれか一方であってよいが、音声による報知が含まれることが好ましい。これにより、手動走行モードに切り替える際に作業機を上げる操作を忘れる可能性が低減され、オペレータは走行モードの切り替えを効率良く行うことができる。
【0084】
図11に示す例では、自動走行モードから手動走行モードへと切り替えるために、ロボットモードスイッチ141のオフ操作と、PTOスイッチ142のオフ操作と、作業機昇降レバー143を用いて作業機を上昇させる操作が必要とされる。すなわち、手動走行モードへの切り替えに必要となる所定操作には、複数種類の操作が含まれる。このように所定操作に複数種類の操作が含まれる場合には、複数種類の操作の報知は、優先度にしたがって順番に行われることが好ましい。これにより、互いに異なる操作内容の報知が同タイミングで行われることを避けて、オペレータが困惑することを抑制できる。
【0085】
優先度は適宜決定されてよいが、例えば、複数種類の操作のうち、当該操作が必要となる行為をオペレータが行った順番(時刻)が早い操作ほど、優先度が高くなる構成としてよい。例えば、最初にロボットモードスイッチ141のオン操作が行われ、その後にPTOスイッチ142のオン操作が行われたとする。この場合、先にオン操作が行われたロボットモードスイッチ141をオフとする操作の報知が、後にオン操作が行われたPTOスイッチ142をオフとする操作の報知に優先して行われてよい。
【0086】
また、有人自動走行モードの場合の例として、最初に自動走行モードのオン操作が行われ、その後に、主変速レバーの操作が行われて、自動走行が緊急停止された状況を想定する。このような場合、自動走行モードをオフとする操作の報知が、主変速レバーを中立位置或いは最小位置に移動させる操作の報知よりも優先して行われてよい。このような構成とすることで、最初に操作が行われ、手動走行モードへの切り替え時に操作を行う必要があることを忘れ易い操作が優先して報知されることになる。この結果、複数種類の操作を行う必要がある場合に、操作忘れが生じることを抑制することができる。
【0087】
[2-2.走行モードの切り替え後の作業支援]
図12は、本発明の実施形態に係る作業支援システム100において実行される自動走行モードへの切り替え後における作業支援処理を例示するフローチャートである。図12は、図7に示す処理によって手動走行モードから自動走行モードへと切り替わった後に行われる作業支援処理について説明するための図である。なお、図12は、自動走行モードが無人自動走行モードである場合を想定したフローチャートであり、自動走行モードへと切り替わった時点で、作業車両1は停車している。
【0088】
ステップS21では、自動走行の開始に対応して、報知制御部105(図5参照)が音出力部16から自動走行の開始を知らせるブザー音を発報させる処理(ブザー音発報処理)を行う。ブザー音は、例えば三回吹鳴される。ブザー音は、例えば「ぶー、ぶー、ぶー」である。なお、報知制御部105は、作業車両1が備える音出力部16に代えて、或いは、加えて、携帯通信端末2の制御部20を介して携帯通信端末2が備える音出力部24からブザー音を発報させてよい。また、自動走行の開始を知らせるブザー音は、有人自動走行モードである場合は、無人自動走行モードと異なる音であってよく、例えば「ぷー、ぷー、ぷー」であってよい。ブザー音発報処理が行われると、次のステップS22に処理が進められる。
【0089】
ステップS22では、報知制御部105が、音出力部16から自動走行の開始を知らせる音声を報知させる処理(音声報知処理)を行う。換言すると、本実施形態の作業支援方法は、手動走行モードから自動走行モードに移行したことを報知する自動走行モード移行報知を実行する。当該報知は、例えば「自動走行を開始します」という音声報知であってよい。なお、上述のブザー音は、自動走行モード移行報知に含まれると解釈してもよい。音声報知処理が行われると、次のステップS23に処理が進められる。
【0090】
なお、報知制御部105は、作業車両1が備える音出力部16に代えて、或いは、音出力部16に加えて、携帯通信端末2の制御部20を介して携帯通信端末2が備える音出力部24から音声を出力させる構成としてよい。また、音声報知に代えて、或いは、音声報知に加えて、表示(画面表示)を用いた報知が行われる構成としてもよい。本実施形態のように音声報知を行う場合、音声が上述のブザー音と重ならないように音声報知を行うことが好ましい。すなわち、「ぶー、ぶー、ぶー」となった後に「自動走行を開始します」といった音声が再生されることが好ましい。ブザー音と音声とが重ならない構成とすることについては、他のブザー音と音声との場合にも適用されることが好ましい。他のブザー音としては、例えばタンクが満杯になった場合に鳴るブザー音等が挙げられる。また、本実施形態では、ブザー音の後に音声が出力される構成としているが、この逆であってもよい。すなわち、ステップS21とステップS22とは順番が逆とされてもよい。
【0091】
ステップS23では、報知制御部105が、自動走行を行う作業車両1の進行方向が後進であるか否かを判定する。なお、本例では、作業車両1は、ブザー音の発報、および、音声報知を行った後に自動走行を開始する。自動走行開始時の進行方向は、予め設定された自動走行の経路から判定することができる。自動走行開始時の進行方向が後進である場合(ステップS23でYes)、次のステップS24に処理が進められる。自動走行開始時の進行方向が後進でない場合(ステップS23でNo)、ステップS25に処理が進められる。
【0092】
なお、例えば有人自動走行モードである場合等には、作業車両1が走行中に自動走行が開始されてよく、この場合、走行状態でブザー音の発報および音声報知がされ、自動走行が開始されてよい。このような構成の場合には、ステップS23以降の処理は行われなくてよい。
【0093】
ステップS24では、報知制御部105が作業車両1の進行方向の報知処理を行う。すなわち、後進走行で自動走行が開始される場合には作業車両1が後進することが報知される。当該報知は、音声と表示との少なくともいずれか一方であってよいが、音声による報知が含まれることが好ましい。当該報知は、作業車両1と携帯通信端末2とのうち、少なくともいずれか一方で行われてよい。当該報知は、例えば、「後進します。ご注意ください」であってよい。
【0094】
ステップS25では、報知制御部105が作業車両1の進行方向の報知を行わないことに決定する。すなわち、前進走行で自動走行が開始される場合には、作業車両1の進行方向の報知は行われない。ただし、前進走行で自動走行が開始される場合にも、作業車両1の進行方向の報知が行われてもよい。
【0095】
以上からわかるように、本実施形態の作業支援方法は、自動走行モード移行報知後、作業車両1が進行する方向を報知する進行方向報知を実行する。作業車両1の周囲にいる者等は、自動走行の開始時に作業車両1が前進走行するか後進走行するかを認識できない場合がある。この点、本実施形態のように進行方向の報知が行われると、作業車両1の周囲にいる者等が自動走行の開始時に作業車両1の進行方向を認識することができるために、安全性を向上することができる。
【0096】
図13および図14は、自動走行が後進走行で開始される例を示す模式図である。図13に示す例では、作業車両1は、車体の前側を圃場端FEに向けて停車している。例えば、作業車両1が田植機1Rであり、苗の補給を行うために停車する場合等に、このような状況が生じる。苗の補給が終わって自動走行を開始する場合に、自動走行が後進走行で開始される。このような場合に、作業車両1が進行する方向を報知する進行方向報知が実行されてよい。
【0097】
図14に示す例では、圃場F内の或る直進経路S1での作業が終わり、左旋回を行って次の直進経路S2へと向かうことが想定されている。ここで、2つの直進経路S1、S2の間隔が狭く、単純に左旋回のみを行うと、次の直進経路S2から大きくずれて、直進経路S2に適切に進入できないとする。この場合、作業車両1は、左に曲がりながら地点P1まで進んで一旦停車する。そして、一旦停車の後に、地点P2まで後進し、地点P2から左に曲がりながら前進して次の直進経路S2に進入する。このようなフィッシュテールターンを行う場合において、一旦停車後の後進時に、作業車両1が進行する方向を報知する進行方向報知が実行されてよい。
【0098】
図15は、本発明の実施形態に係る作業支援システム100において実行される手動走行モードへの切り替え後における作業支援処理を例示するフローチャートである。図15は、図8に示す処理によって自動走行モードから手動走行モードへと切り替わった後に行われる作業支援処理について説明するための図である。
【0099】
ステップS31では、報知制御部105が、自動走行モードから手動走行モードへと切り替わった際に作業車両1が走行を継続するか否かを判定する。作業車両1が走行を継続するか否かは、上述の停止条件(図8参照)がどのようにして満たされたかによって決まる。この点の詳細については後述する。作業車両1が走行を継続する場合(ステップS31でYes)、次のステップS32に処理が進められる。一方、作業車両1が走行を停止する場合(ステップS31でNo)、ステップS33に処理が進められる。
【0100】
ステップS32では、報知制御部105が、手動走行モードに切り替わったことを音声により報知させる。当該音声報知は、例えば、「手動走行に戻りました」であってよい。なお、音声報知は、作業車両1が備える音出力部16と、携帯通信端末2が備える音出力部24とのうち、少なくともいずれか一方を用いて行われてよい。また、音声報知に加えて、表示による報知が行われてもよい。ただし、この場合には、表示態様に注意が必要となる。この点については、後述する。なお、表示による報知は、作業車両1が備える表示部15と、携帯通信端末2が備える表示部23とのうち、少なくともいずれか一方を用いて行われてよい。
【0101】
ステップS33では、報知制御部105が、手動走行モードに切り替わったことを表示により報知させる。当該表示による報知も、上述の音声報知と同様に、例えば「手動走行に戻りました」であってよい。なお、表示による報知は、作業車両1が備える表示部15と、携帯通信端末2が備える表示部23とのうち、少なくともいずれか一方を用いて行われてよい。また、表示による報知に加えて、音声による報知が行われることが好ましい。音声報知は、作業車両1が備える音出力部16と、携帯通信端末2が備える音出力部24とのうち、少なくともいずれか一方を用いて行われてよい。
【0102】
なお、上述のように、自動走行モードによる自動走行が停止される場合、「自動走行を停止しました」との音声報知が行われてよい。このような構成と、手動走行モードへの切り替わりの報知を行う構成との両方が採用される構成では、上述の手動走行準備(図8参照)が短時間で完了すると、音声の報知タイミングの一部に重複が生じる可能性がある。すなわち、本来は、「自動走行を停止しました」と音声報知した後に、「手動走行に戻りました」と音声報知されるところ、音声の報知タイミングに重複が生じ、「自動走行をてい・・・・手動走行に戻りました」と音声報知される可能性がある。なお、「・・・・」で示す部分は、「自動走行を停止しました」との音声報知のうち、「手動走行に戻りました」の少なくとも一部と重複していることを示す。
【0103】
このような点を考慮して、複数種類の音の報知のタイミングの一部に重複が生じ、先のタイミングの第1報知の音の出力中に次のタイミングの第2報知の音を出力する必要が生じた場合に、第1報知の音を途中で終了し、当該終了後に区切りの期間を設けて第2報知の音を出力することが好ましい。上述の例を用いて具体的に説明すると、「自動走行を停止しました」(第1報知)について「自動走行をてい」で終了し、区切りの期間を挟んで、「手動走行に戻りました」(第2報知)を出力する構成とすることが好ましい。区切りの期間は、無音であってもよいが、音が入れられてもよい。例えば、音が「ピ」である場合、「自動走行をてい、ピ、手動走行に戻りました」としてよい。このように構成することにより、音が被ることを防止して、音声報知の内容を把握し易くすることができる。
【0104】
以上の図15に関わる説明からわかるように、本実施形態の作業支援方法は、圃場内において作業車両1を自動で走行させる自動走行モードに切り替えることと、自動走行モードにおいて所定条件が満たされた場合、作業車両1を手動で走行させる手動走行モードに切り替えることと、自動走行モードから手動走行モードに切り替えられたことを報知する切替報知を行うことと、を実行する。手動走行モードに切り替えられた際の作業車両1の状況に応じて、切替報知の態様が異なる。なお、切替報知の具体例は、上述の「手動走行に戻りました」である。
【0105】
また、本実施形態の作業支援方法をコンピュータに実行させるプログラムは、コンピュータを、圃場内において作業車両1を自動で走行させる自動走行モードに切り替えることと、自動走行モードにおいて所定条件が満たされた場合、作業車両1を手動で走行させる手動走行モードに切り替えることと、自動走行モードから手動走行モードに切り替えられたことを報知する切替報知の処理を行うことと、を実行する手段として機能させる。手動走行モードに切り替えられた際の作業車両1の状況に応じて、切替報知の態様が異なる。上述のように、コンピュータは、作業車両1の制御部10と、携帯通信端末2の制御部20とのうち少なくとも一方であってよい。
【0106】
また、本実施形態の作業支援システム100は、圃場内において作業車両1を自動で走行させる自動走行モード中に所定条件が満たされた場合に、作業車両1を手動で走行させる手動走行モードに切り替える制御部10と、自動走行モードから手動走行モードに切り替えられたことを報知する切替報知を行う報知部17、25と、を備える。手動走行モードに切り替えられた際の作業車両の状況に応じて、切替報知の態様が異なる。なお、上述のように、手動走行モードから自動走行モードに切り替える制御部は、作業車両1の制御部10と、携帯通信端末2の制御部20とのうち少なくとも一方であってよい。
【0107】
本実施形態のように、手動走行モードに切り替えられた際の作業車両1の状況に応じて切替報知の態様が異なる構成とすると、作業車両1の状況に応じた適切な報知をオペレータ等に対して行うことができる。この結果、オペレータの操作性を向上して、作業効率の向上を図ることができる。
【0108】
詳細には、切替報知の態様の相違には、報知に用いる装置の相違と、同一の装置を用いて報知の仕方を異ならせることとの少なくともいずれか一方が含まれてよい。例えば、表示装置を用いた報知と、音出力装置を用いた報知とは、報知の態様が異なる。また、例えば、同じ表示装置を用いる報知であっても、表示画面を利用した報知の表示方法が異なれば報知の態様は異なる。表示方法の違いは、例えば、表示場所、表示色、表示サイズ等の違いであってよい。また、例えば、同じ音出力装置を用いる報知であっても、例えば音量や音の高さ等が異なれば報知の態様は異なる。
【0109】
本実施形態では、好ましい構成として、切替報知の態様は、手動走行モードに切り替えられた際に作業車両1が走行を継続する場合と、手動走行モードに切り替えられた際に作業車両1が走行を停止する場合とで異なる構成としている。そして、手動走行モードに切り替えられた際に作業車両1が走行を継続する場合、音声を用いて切替報知を実行する構成としている。これについて、図16および図17を参照して説明する。
【0110】
図16は、自動走行モードから手動走行モードへと切り替えられた際に作業車両1の走行が継続される例を説明するための模式図である。なお、図16に示す例では、自動走行モードは、詳細には、有人自動走行モードであり、作業車両1には運転者(オペレータ)が乗っている。図16において、太い実線は作業経路である。図16に示す例では、運転者が自動走行中にステリングホイール(ハンドル)を操作して、作業経路αから作業経路βへと作業車両1の位置を移そうとしている。このような状況の場合に、自動走行中にステアリング操作を行ったという理由で作業車両1の走行を停止すると、却って作業効率が悪くなる。このために、自動走行中にステアリング操作が行われた場合、作業車両1の走行を継続しつつ、自動走行モードから手動走行モードへと切り替えられる構成となっている。
【0111】
すなわち、本実施形態においては、手動走行モードに切り替えられた際に作業車両1が走行を継続する場合には、作業車両1に搭乗するオペレータがステアリング操作を行うことにより、自動走行モードを手動走行モードへと切り替える条件(上述の所定条件)が満たされる場合が含まれる。なお、手動走行モードに切り替えられた際に作業車両1が走行を継続する場合には、例えば、自動走行中に進行方向を変更するリバーサレバーが中立位置から前進位置又は後進位置に操作されることにより、自動走行モードを手動走行モードへと切り替える条件が満たされる場合が含まれてもよい。
【0112】
図17は、作業車両1の走行が継続される場合に切替報知に音声報知が用いられる利点を説明するための模式図である。図16に示す例の場合、手動走行モードへと切り替わった際に作業車両1の走行が継続される。このために、図17に示すような表示を用いた切替報知(「手動走行に戻りました」)が行われると、表示部15、23の画面に表示される作業経路α、βが数秒間隠れて、作業経路βへの位置合わせが遅れることが懸念される。なお、前述の数秒間は、切替報知が行われる期間であり、その期間は適宜設定されるものである。
【0113】
この点、本実施形態のように、作業車両1の走行が継続される場合に切替報知に音声報知が用いられる構成とすると、表示部15、23の画面に表示される作業経路α、βが報知によって隠されることがないので、作業経路βへの位置合わせを適切に行うことができる。すなわち、効率良く作業を行うことができる。なお、画面に表示される作業経路が隠されなければよいので、画面上の作業経路α、βが表示されない位置を利用して、表示を用いた切替報知が行われる構成としてもよい。
【0114】
また、本実施形態では、好ましい形態として、手動走行モードに切り替えられた際に作業車両1が走行を停止する場合、表示を用いて切替報知を実行する。表示の態様は、図17に示すように、表示部15、23の画面に大きく報知内容が表示される構成であってよい。走行が停止されるために、画面に表示される作業経路α、βが数秒間隠れても大きな問題が生じないことと、目立つ表示とすることでオペレータ等が報知に気づき易くなることとを考慮した構成である。
【0115】
なお、手動走行モードに切り替えられた際に作業車両1が走行を停止する場合には、表示と音声とを用いて切替報知を実行することがより好ましい。これにより、より確実にオペレータに対して走行モードの切り替えを認識させることができる。走行継続と走行停止とのいずれの場合も、切替報知が音声と表示とを用いて実行されてよいが、走行継続の場合には走行停止の場合に比べて表示による切替報知が小さく表示されることが好ましい。このような構成は、作業車両1の状況に応じて、切替報知の態様が異なっていると言える。
【0116】
また、手動走行モードに切り替えられた際に作業車両1が走行を停止する場合には、例えば、作業車両1が備える測位通信ユニット11の不具合の発生により、自動走行モードを手動走行モードへと切り替える条件(上述の所定条件)が満たされる場合が含まれてよい。測位通信ユニット11の不具合には、例えば、測位精度が低下した場合や、測位衛星から信号を受信できない場合等が挙げられる。また、手動走行モードに切り替えられた際に作業車両1が走行を停止する場合には、例えば、作業車両1が備える障害物センサによる障害物の検出により、自動走行モードを手動走行モードへと切り替える条件が満たされる場合が含まれてよい。障害物は、移動体でも静止物でもよく、例えば人、他の作業車両、農機具、石等であってよい。
【0117】
自動走行モードから手動走行モードに切り替わり、作業車両1の走行が継続される場合には、注意喚起が必要な特定の状況が生じることがある。この特定の状況が生じた場合、当該特定の状況が生じていることが報知されることが好ましい。特定の状況としては、例えば、作業車両1の車速が制限されている状況が挙げられる。また、特定の状況としては、例えば、主変速レバーの位置と、作業車両1の走行方向とが一致していない状況が挙げられる。以下、これらについて、詳細に説明する。
【0118】
まず、上述の車速の制限が生じる例について説明する。ステアリング操作により自動走行モードから手動走行モードに切り替わった場合(図16参照)に、図18に示すように、主変速レバーLVの前進方向への倒し量が最大(100%)であったとする。そして、自動走行中においては、予め携帯通信端末2の操作部22等を用いた車速の制限の設定等によって、主変速レバーが100%であっても100%より小さい速度で走行する状況を想定する。100%より小さい速度は、例えば50%の速度等であってよい。
【0119】
このような想定の場合、自動走行中にステアリング操作が行われることによって自動走行から手動走行に切り替わった際に、作業車両1が急加速する。これは、安全上好ましくない。このため、本実施形態の作業車両1においては、急加速が行われないように、自動走行モードから手動走行モードへと切り替わった時点で、自動的に車速の制限が行われる構成となっている。車速の制限は、上述のように例えば最大車速の50%の車速等であってよい。
【0120】
上述の車速の制限が行われた場合、オペレータは、主変速レバーLVの位置と、作業車両1の実際の速度とが一致しないために違和感を覚える可能性がある。このために、本実施形態では、車速制限が行われている旨を報知する構成となっている。すなわち、本実施形態の作業支援方法は、ステアリング操作により自動走行モードを手動走行モードへと切り替える条件が満たされて切替報知を実行した後に、作業車両1の車速が制限されることを報知する車速制限報知を実行する構成となっている。車速制限報知は、音声と表示との少なくともいずれか一方であってよいが、音声による報知が含まれることが好ましい。車速制限報知は、作業車両1と携帯通信端末2とのうち、少なくともいずれか一方で行われてよい。車速制限報知は、例えば、「車速制限中です」であってよい。なお、車速制限が行われた場合、最終的には主変速レバーLVの位置に対応する車速となるように、車速が徐々に速められてよい。このような構成では、車速が徐々に速められている期間も、車速制限中に含んでよい。そして、このよう構成では、車速制限中である旨の報知は、作業車両1の車速が主変速レバーLVの位置に対応する速度となった時点で自動的に停止される構成であってよい。
【0121】
次に、上述した、主変速レバーLVの位置と、作業車両1の走行方向とが一致していない状況が生じる例について説明する。例えば、フィッシュテールターン(図14参照)における後進走行中に主変速レバーLVを前進方向とする操作が行われて、走行を継続した状態で、自動走行モードから手動走行モードへと切り替わったことを想定する。
【0122】
この場合、主変速レバーLVが前進位置である状態で自動走行から手動走行になるために、作業車両1が後進走行から急に前進走行を開始することになる。本実施形態では、安全性等を考慮して、前進走行への移行を報知する構成となっている。すなわち、本実施形態の作業支援方法は、作業車両1が自動走行モードで後進走行している際に手動走行モードに切り替わった場合、切替報知の実行後に、作業車両が前進走行を行うことを報知する前進走行報知を実行する構成となっている。これにより、オペレータおよび作業車両1の周囲にいる者は、後進走行から前進走行への移行を適切に把握することができる。
【0123】
前進走行報知は、音声と表示との少なくともいずれか一方であってよいが、音声による報知が含まれることが好ましい。前進走行報知は、作業車両1と携帯通信端末2とのうち、少なくともいずれか一方で行われてよい。前進走行報知は、例えば、「前進を開始します」であってよい。
【0124】
なお、上述の後進走行から前進走行を開始される場合、安全上の理由等から車速の制限が行われることが好ましい。このために、作業支援方法は、前進走行報知の実行後、作業車両1の車速が制限されることを報知する車速制限報知を実行することが好ましい。これにより、オペレータが困惑することを抑制することができる。
【0125】
[2-3.作業支援としての報知の態様]
本実施形態の作業支援方法は、作業車両1に関わる報知を行うことと、当該報知の態様を、ユーザによる設定もしくは作業車両1の状態に応じて設定することと、を実行する。作業車両1に関わる報知は、作業車両1において行われる各種の動作に関する報知、作業車両1に対してオペレータ等が行うべき操作に関する報知、および、作業車両1と連携して使用される携帯通信端末2や遠隔操作装置3に関する報知のうち、少なくとも1つを含んでよい。各種の動作には、作業車両1の外見上の動作のみならず、制御動作が含まれてよい。作業車両1に関わる報知には、自動走行に関わる報知が含まれることが好ましい。なお、ユーザは、本実施形態の作業支援システム100を利用する者を広く含んでよく、例えばオペレータである。
【0126】
また、本実施形態の作業支援方法をコンピュータに実行させるプログラムは、コンピュータを、作業車両1に関わる報知を行うことと、当該報知の態様を、ユーザによる設定もしくは作業車両1の状態に応じて設定することと、を実行する手段として機能させる。上述のように、コンピュータは、作業車両1の制御部10と、携帯通信端末2の制御部20とのうち少なくとも一方であってよい。
【0127】
また、本実施形態の作業支援システム100は、作業車両1に関わる報知を行う報知部17、25と、報知の態様を、ユーザによる設定もしくは作業車両1の状態に応じて設定する制御部と、を備える。なお、制御部は、作業車両1の制御部10と、携帯通信端末2の制御部20とのうち少なくとも一方であってよい。
【0128】
このような構成とすることにより、ユーザの好みに応じた報知を行うことができる。また、このような構成とすることにより、作業車両1の状態に応じた適切な報知を行うことができる。すなわち、自動走行可能に設けられる作業車両1において適切な案内を行うことができる。
【0129】
なお、報知の態様には、音声報知の有無、音声報知の音量、音声報知の繰り返し回数、音声報知の繰り返し時間、音声報知のイントネーション、音声報知の速度、音声報知の音声の高さ、音声報知の音声の性別、および、複数の音の出力源がある場合の前記出力源の選択、のうちの少なくともいずれかが含まれてよい。
【0130】
複数の音の出力源には、例えば、作業車両1の音出力部16、携帯通信端末2の音出力部24、および、遠隔操作装置3が備える音出力部(不図示)が含まれてよい。音出力部は、詳細にはスピーカであってよい。また、作業車両1がキャビン等の車内空間を備える場合、作業車両1の音出力部16には、車内スピーカと、車外スピーカとが含まれてよい。
【0131】
例えば、キャビン内にオペレータがいる自動直進モード或いは有人自動走行モードによる自動走行が行われている場合、複数の音の出力源から車内スピーカが選択されてよい。また、キャビン内に携帯通信端末2が持ち込まれている場合には、車内スピーカに代えて、或いは、車内スピーカに加えて携帯通信端末2のスピーカが選択されてもよい。キャビン内に携帯通信端末2が持ち込まれている場合に、車内スピーカのみが選択されてもよい。
【0132】
また、例えば、無人走行モードである場合、複数の音の出力源から携帯通信端末2のスピーカや遠隔操作装置3のスピーカが選択されてよい。また、無人走行モードであって、報知予定の内容が作業車両1の周囲に報知すべき内容である場合には、車外スピーカが選択されてよい。なお、作業車両1の周囲に報知すべき内容とは、例えば、作業車両1の周囲にいる者が危険に晒されていることを知らせること等が該当する。
【0133】
(2-3-1.ユーザによる報知態様の設定)
ユーザによる報知態様の設定は、例えば携帯通信端末2の操作部22を用いて行われる。ただし、報知の態様の設定は、携帯通信端末2以外を用いて行われてもよく、例えば作業車両1の操作部14を用いて行われてもよい。
【0134】
図19図24は、ユーザが報知の態様の設定を行う際に利用する設定画面例である。図19は、音声報知の有無を設定する設定画面の一例を示す図である。図19に示す設定画面の設定部40aにおいて「ON」が選択されると、予め音声報知の対象となっている事項の全てについて、音声報知をすべきタイミングで音声報知が行われる。図19に示す設定画面の設定部40aにおいて「OFF」が選択されると、予め音声報知の対象となっている事項の全てについて、音声報知が行われない。なお、設定部40aの操作には、例えば、タッチパネル、マウス、ボタン、レバー、ダイヤル等が利用されてよい。
【0135】
音声報知の有無の設定は、予め音声報知の対象となっている事項の少なくとも1つについて、個別に設定可能としてよい。図20は、音声報知の有無を個別に設定する設定画面の一例を示す図である。図20では、自動走行開始時および自動走行停止時における音声報知の有無を設定できる構成となっている。「自動走行開始時」の右横に存在する設定部40bで「ON」が選択されると、自動走行開始時に音声報知が行われる。「自動走行開始時」の設定部40bで「OFF」が選択されると、自動走行開始時に音声報知は行われない。「自動走行停止時」の右横に存在する設定部40cで「ON」が選択されると、自動走行停止時に音声報知が行われる。「自動走行停止時」の設定部40cで「OFF」が選択されると、自動走行停止時に音声報知は行われない。
【0136】
なお、音声報知の有無の個別の設定については、作業車両1の動作状態が変わる個々のタイミングの少なくともいずれか1つに対して行えることが好ましい。すなわち、ユーザができる設定には、作業車両1の動作状態が変わるタイミングで音声報知を行うか否かの設定が含まれることが好ましい。動作状態が変わるタイミングは、例えば、自動運転モードと手動運転モードとの間の切り替わりのタイミング、前進走行と後進走行との間の切り替わりのタイミング、前進走行と走行停止との間の切り替わりのタイミング、或いは、後進走行と走行停止との間の切り替わりのタイミング等が挙げられる。
【0137】
図21は、音声報知の音量を設定する設定画面の一例を示す図である。図21に示す例では、「全体音量」の右横に存在する設定部40dで音声報知の音量を0~100%の間で設定することができる。図21に示す例は、全体音量の設定が80%となっているために、音声報知の対象となる全ての事項の音声報知時の音量が最大音量の80%とされる。
【0138】
音量の設定についても、音声報知の対象となっている事項の少なくとも1つについて、個別に設定可能としてよい。図22は、音声報知の音量を個別に設定する設定画面の一例を示す図である。図22では、自動走行開始時および自動走行停止時における音声報知の音量を設定できる構成となっている。「自動走行開始時」の右横に存在する設定部40eで、自動走行開始時における音声報知の音量を0~100%の間で設定することができる。また、「自動走行停止時」の右横に存在する設定部40fで、自動走行停止時における音声報知の音量を0~100%の間で設定することができる。図22においては、自動走行開始時の音声報知の音量が80%で、自動走行停止時の音声報知の音量が30%とされている。
【0139】
図23は、音声報知の音の詳細を設定する設定画面の一例を示す図である。図23においては、一例として、音声のイントネーション、音声の性別、音声の高さ、音声の速度が設定可能となっている。各項目の設定は、一例として、各項目の右横に存在する設定部40g~40jを利用して、複数の項目から選択可能となっている。図23に示す例では、音声のイントネーションとして「関西弁風」が選択されている。また、音声の性別として「男」が選択されている。また、声の高さとして「低」が選択されている。また、音声の速度として「1.2倍」が選択されている。音声の速度は、通常時が「1.0倍」とされてよい。例えば、各項目の設定に応じて、予め記憶部101、201に記憶された複数の音源データから対応する音源データが選択される構成としてよい。
【0140】
なお、音の詳細設定についても、音声報知の対象となっている事項の少なくとも1つについて、個別に設定可能としてよい。
【0141】
図24は、音声報知に利用する音源データを設定する設定画面の一例を示す図である。図24に示す例では、デフォルトで準備された音源データ以外の音源データが利用されることを想定している。ユーザは、例えば、自分が使用したい音源データをクラウドから作業車両1や携帯通信端末2の記憶部101、201にダウンロードして利用することができる。図24に示す例では、自動走行時に利用する音声として、ユーザの好みの音源データを選択可能となっている。例えば、利用したい音源データをタッチ等により選択し、「OK」を操作すると、選択した音源データが自動走行時の音声報知に利用される。
【0142】
(2-3-2.作業車両の状態に応じた報知態様の設定)
図25は、本発明の実施形態に係る作業支援システム100において実行される、作業車両1の状態に応じた報知態様の設定処理を例示するフローチャートである。
【0143】
ステップS41では、報知制御部105(図5参照)が報知(例えば音声報知)のタイミングであるか否かを監視する。報知のタイミングは、例えば予め設定によって決められている構成としてよい。報知のタイミングであると判定されると(ステップS41でYes)、次のステップS42に処理が進められる。
【0144】
ステップS42では、報知制御部105が作業車両1の状態を確認する。作業車両1の状態には、作業車両自身の状態の他に、例えば、作業車両1とその周囲に存在する物体との間の状態(関係)や、作業車両1と当該作業車両と通信可能な装置との間の状態(関係)が含まれてもよい。作業車両1の周囲に存在する物体は、人や他の作業車両等の移動体、農作物や石等の静止物であってよい。作業車両1と通信可能な装置は、携帯通信端末2や遠隔操作装置3であってよい。作業車両1の状態として確認される項目の数は、単数であっても複数であってもよい。作業車両1の状態として確認される項目については、後に例示する。作業車両1の状態が確認されると、次のステップS43に処理が進められる。
【0145】
ステップS43では、報知制御部105は、先に確認した作業車両1の状態に応じて報知の態様を設定する。作業車両1の状態によって報知の態様をどのように設定するかは、予め設定されている構成であってよい。当該設定についても、ユーザの好みで変更できる構成としてよい。なお、ステップS41で報知のタイミングとなった報知について、ユーザによって報知態様が設定されている場合、作業車両1の状態に応じて決まる報知態様よりも、ユーザが設定した報知態様が優先されてよい。逆に、ステップS41で報知のタイミングとなった報知について、ユーザによって報知態様が設定されている場合でも、作業車両1の状態に応じて決まる報知態様が、ユーザが設定した報知態様に優先して設定されてもよい。また、報知される内容によって、作業車両1の状態に応じて決まる報知態様と、ユーザが設定した報知態様とのいずれを優先するかが個別に決められてもよい。報知態様の設定が行われると、次のステップS44に処理が進められる。
【0146】
ステップS44では、報知制御部105は、設定した報知態様で報知が行われるように報知処理を行う。これにより、適宜のスピーカ等を用いた報知が行われる。
【0147】
以下、具体例を挙げて説明する。
【0148】
作業車両1の状態の確認は、例えば、作業車両1が走行しているか否かの確認であってよい。当該確認は、作業車両1が備える車速センサ等を用いて行うことができる。そして、作業車両1が走行しているか否かで報知の態様が変更されてよい。例えば、作業車両1が走行している場合には、作業車両1が停車している場合に比べて音声報知の音量が大きくされてよい。これにより、作業状態に合わせた報知態様にすることができる。
【0149】
また、作業車両1の状態の確認は、例えば、作業車両1のエンジンの駆動状態と、作業機の作動状態との少なくともいずれか一方の確認であってよい。エンジンの駆動状態の確認は、エンジンの回転数を計測するセンサ等によって確認できる。作業機の作動状態は、例えば、各作業機を動かすための操作ボタンや操作レバーの状態等によって確認できる。そして、作業車両1のエンジンの駆動状態と、作業機の作動状態との少なくともいずれか一方に応じて報知の態様が変更されてよい。例えば、作業車両1のエンジンの回転数が低い場合に比べて高い場合の方が、音声報知の音量が大きくされてよい。また、作業機が作動していない場合に比べて作動している場合の方が、音声報知の音量が大きくされてよい。これにより、作業状態に合わせた報知態様にすることができる。
【0150】
なお、作業機は、例えば、コンバイン1Cの刈取部1C7や脱穀装置1C3等であってよい。また、作業機は、トラクタ1Tの後部に装着される耕耘機1T2、プラウ、施肥機、草刈機、又は、播種機等であってよい。また、作業機は、田植機1Rの植付部1R2等であってよい。
【0151】
また、作業車両1の状態の確認は、例えば、作業車両1の周囲の環境と、作業車両1が行う予定の動作との少なくとも一方の確認であってよい。周囲の環境は、例えば、障害物センサで確認できる。また、作業車両1が行う予定の動作は、自動走行モードである場合には確認することができる。そして、作業車両1の周囲の環境と、作業車両1が行う予定の動作との少なくとも一方に応じて報知の態様が変更されてよい。作業車両1の周囲の環境や、作業車両1が行う予定の動作を予め確認することによって、作業車両自身の危険度や、作業車両が周囲に及ぼす危険度を予測することができる。このために本実施形態の構成によれば、危険度に応じて報知の態様を設定することができる。
【0152】
例えば、作業車両1の走行経路上に人等の障害物がある場合に、通常時よりも音声報知の音量を大きくしてよい。また、例えば、作業車両1が人等の障害物に接近するにつれて、音声報知の音量を大きくしてよい。また、例えば、自動直進モードで走行を行っている場合に、圃場の外縁に接近するにつれて音声報知の音量を大きくしてよい。また、例えば、作業車両1が次に後進走行、急旋回、或いは、排出オーガ1C6(図2A等参照)の旋回等の危険度の高い動作を行う予定である場合に、通常時よりも音声報知の音量を大きくしてよい。音量を大きくする代わりに、例えば、音声報知の速度を速くしたり、音声報知のイントネーションを強調したものとしたり、音声報知の繰り返し回数を多くしたり、音声報知の繰り返し時間を長くしたりしてもよい。
【0153】
また、作業車両1の状態の確認は、例えば、作業車両1の車速の確認であってよい。当該確認は、作業車両1が備える車速センサ等を用いて行うことができる。そして、作業車両1の車速に応じて報知の態様が変更されてよい。例えば、作業車両1の速度が速くなるにつれて音声報知の音量が大きくされてよい。これにより、音声報知を聞き取り易くできると共に、危険の回避を行い易くすることができる。
【0154】
また、作業車両1の状態の確認は、例えば、自動走行モードの種類の確認であってもよい。どのような自動走行モードとするかは、自動走行開始時の設定によって確認することができる。そして、作業車両1にオペレータが乗る有人自動走行であるか、オペレータが乗らない無人自動走行であるかで報知の態様が変更されてよい。なお、ここで言う有人自動走行には、上述の自動直進モードによる自動走行と、有人自動走行モードによる自動走行との両方が含まれてよい。これにより、オペレータの居る場所に応じた適切な音声報知を行うことができる。
【0155】
例えば、上述したように、有人自動走行と無人自動走行との場合で音の出力源が変更されてよい。また、例えば、無人自動走行の場合には、有人自動走行の場合に比べて、作業車両1の周囲への音声報知の音量が大きくされてよい。また、例えば、有人自動走行の場合の方が、無人自動走行の場合に比べて、報知による指示内容が細かくされてよい。すなわち、有人自動走行の場合の方が、無人自動走行の場合に比べて、細かい動作まで逐一アナウンスされてよい。また、例えば、有人自動走行においては、オペレータに操作部14、22の操作を促す場合に、その操作が行われるか、報知を止める操作が行われるまで報知が繰り返されてよい。また、例えば、有人自動走行においては、音声報知を止める操作が行われた後も、画面表示を用いた報知が引き続き行われる構成としたり、スヌーズ機能によって音声報知が繰り返される構成としたりしてよい。
【0156】
また、例えば、無人自動走行においては、緊急性の高い報知内容のみ報知される構成としてもよい。緊急か否かは、予め各報知内容について分類を行っておき、記憶部101、201に記憶させておくことにより判定することができる。緊急性が高い報知内容としては、例えば、異常が発生して作業車両1が緊急停車する場合の報知が挙げられる。また、例えば、無人自動走行においては、オペレータが携帯通信端末2の近くにいない可能性があるので、報知を止める操作が行われるまで報知が繰り返されたり、所定時間おきに報知が繰り返されたりしてもよい。
【0157】
また、作業車両1の状態の確認は、例えば、音声報知が開始されてから当該音声報知が繰り返された回数または時間の確認であってもよい。そして、音声報知が開始されてから当該音声報知が繰り返された回数または時間に応じて報知の態様が変更されてよい。例えば、繰り返し回数や時間が増加するにつれて音声報知の音量を大きくしてよい。また、例えば、繰り返し回数や時間が増加するにつれて、音声報知の速度を速くしたり、音声報知の時間間隔を短くしたりしてよい。また、例えば、繰り返し回数や時間が増加するにつれて、音声報知のイントネーションを強調したものとしてよい。
【0158】
また、作業車両1の状態の確認は、例えば、作業車両1と通信可能な装置の数と、当該装置までの作業車両1からの距離とのうち、少なくともいずれか一方であってよい。作業車両1と通信可能な装置は、例えば、携帯通信端末2や遠隔操作装置3であってよい。これらの装置と、作業車両1との距離は、例えばGPS(Global Positioning System)センサを利用して確認されてよい。例えば、遠隔操作装置3がGPSセンサを有しない場合には、遠隔操作装置3と通信可能なスマートフォン等のオペレータが有する携帯端末を介して遠隔操作装置3の位置を確認して、遠隔操作装置3と作業車両1との距離が求められてよい。
【0159】
そして、作業車両1と通信可能な装置2、3の数と、当該装置2、3までの作業車両1からの距離とのうち少なくとも一方に応じて報知の態様が変更されてよい。例えば、作業車両1と、上記通信可能な装置2、3との距離が離れるにつれて、車外スピーカの音声報知の音量を大きくしてよい。ここで、作業車両1と通信可能な装置が複数である場合には、近い順に報知が行われる構成としてよい。例えば、報知内容が発生した異常の回復措置を促す指示である場合、当該異常の回復措置が行われた時点で、通信可能な装置への報知が止められてよい。そして、既に異常の回復装置を促す指令が報知された装置に対しては、当該異常の回復措置が行われたことを報知する構成としてよい。
【0160】
(2-3-3.音声報知の具体例)
以下、本実施形態の作業支援システム100に適用される音声報知の種類について例示しておく。図26Aおよび図26Bは、作業支援システム100が備える作業車両1が、コンバイン1C、トラクタ1T、および、田植機1Rのうちのいずれである場合にも共通して適用される音声報知を例示するテーブルである。
【0161】
図26AのNo1~6は、自動走行による作業を可能とするための準備に関わる音声報知である。No1、2は、測位通信ユニット11に関わる音声報知である。No1は測位の精度の低下を知らせ、No2は、高精度の測位が可能となったことを知らせる。No3、4は、作業車両1の向きの登録に関わる音声報知である。No3は向きの登録を促し、No4は登録完了を知らせる。なお、No2とNo3とを纏めた「RTKになりました。イニシャライズを開始してください」という音声が報知される構成としてもよい。No5は、自動走行前にセーフティブレーキのチェックを行うことを促す。カラーモニタは、例えば作業車両1が備える表示部15である。No6は、自動走行による作業を行う予定の圃場の選択を促す。
【0162】
図26AのNo7~12は、自動走行による作業を行う圃場の登録に関わる音声報知である。No7、8は、作業車両1を用いた圃場の計測作業の開始や完了に関わる音声報知である。No9は、開始された圃場計測の中断を知らせ、No10は中断された圃場計測の再開を知らせる。中断は例えば障害物が存在する場合や測位精度の低下により生じる。No11、12は、圃場の計測が完了して圃場の登録を行う際の音声報知であり、詳細には、登録内容を確認するための音声報知である。
【0163】
図26AのNo13~28は、自動走行によって行われる作業に関わる音声報知であり、経路生成の音声報知や、自動走行による作業の開始~終了までに発せられる音声報知に関する。No13は、自動直進モードの経路を生成のために必要となる作業を促す。No14は自動走行の開始を知らせ、No15は自動走行の停止を知らせる。No16、21~24は、自動走行時の作業車両1の状態を知らせる。なお、No21の感度制限は、ステリング感度が車速に応じて制限がかかっていることを意味する。また、No22の経路偏差は、自動走行経路に対する作業車両1の位置のずれを示す。また、No24は作業車両1の状態に基づく操作指示を含む。No17は、作業車両1の周囲の状況に基づく注意喚起を行う。No18は、走行モードが自動走行モードから手動走行モードに戻ったことを知らせる。No19は、自動走行による予定作業の完了を知らせる。No20は、直進走行で作業を行う作業領域の周囲領域(旋回経路として利用される枕地領域)について自動走行による作業を開始することを知らせる。No25、26は、自動走行中に自動で行われる学習作業の完了を知らせる。No27は、自動走行により行われる作業の残り作業量を知らせる。No28は、先に自動走行による作業を中断した位置と異なる位置から作業を再開しようとしていることを知らせる。
【0164】
図26BのNo29は、自動走行モードの切り替えに関する音声報知である。詳細には、無人自動走行モードへの切り替えに必要な操作を知らせる。
【0165】
図26BのNo30、31は、走行方向に関する音声報知である。No30は後進走行の開始を促し、No31は後進走行が開始されることを作業車両1の周囲にいる者に知らせる。
【0166】
図26BのNo32、33は、所定位置までの移動を開始することを知らせる音声報知である。No32は、自動走行による作業の開始位置までの移動を開始することを知らせる。No33は、自動走行による作業が終わった後、走行を終了する位置までの移動を開始することを知らせる。
【0167】
図26BのNo34~42は、作業車両1におけるフェールセーフに関わる音声報知である。No34~36は、自動走行経路上の障害物に関わる音声報知である。No34は、障害物の検出を知らせる。No35は、障害物を検出したことに応じて作業車両1の車速を制限していることを知らせる。No36は、障害物の検出により停止された自動走行の再開を確認する音声報知である。No37~40は、作業車両1と通信を行う装置に関わる音声報知である。No37は、非常停止リモコン(上述の遠隔操作装置3)の通信接続が完了していない場合に通信接続を促す。No38は、タブレット(上述の携帯通信端末2)の通信環境が悪いこと、および、それに対する対応を知らせる。No39、40は、作業車両1と通信を行う装置2、3の電源に関わる注意喚起を行う。No41、42は、圃場の状態に関わる音声報知である。No41、42は、例えば圃場登録時等に得た情報に基づいて行われる注意喚起であってもよいし、自動走行中に検出した危険個所の注意喚起であってもよい。
【0168】
図26BのNo43、44は、遠隔操作に関わる音声報知である。No43は、リモコン(上述の遠隔操作装置3)から一時停止の指示を受信したことを知らせる。No44は、リモコン(上述の遠隔操作装置3)から非常停止の指示を受信したことを知らせる。
【0169】
図26BのNo45~51は、作業車両1における作業ガイダンスに関わる音声報知である。No45、46は、作業車両1の運転に必要な資材の補給タイミングであることを知らせる。No47は、ディーゼルエンジンが備えるDPF(Diesel particulate filter)の再生が必要なタイミングであることを知らせる。No48、49は、作業機に関わる音声報知である。No48は、自動走行による作業開始時の作業機の下げ忘れを防止するための音声報知である。No49は、作業機の下げ速度を速くすることを促す。No50は、エンジンの回転が低下し、過負荷である場合に発せられる音声報知である。No51は、先に行った圃場とは異なる圃場での作業を行う場合に、管理内容の変更があることを知らせる音声報知である。
【0170】
図27は、作業支援システム100が備える作業車両1がコンバイン1Cである場合に適用される音声報知を例示するテーブルである。
【0171】
図27のNo1は、自動走行による作業を行う圃場の登録に関わる音声報知である。詳細には、圃場登録のための計測を行う走行の際に、刈取部1C7を用いた刈取り作業が忘れられないように刈取クラッチの操作を促す。
【0172】
図27のNo2は、上述の図26BのNo32と同様の音声報知で、刈取開始位置までの移動を開始することを知らせる。
【0173】
図27のNo3~6は、グレンタンク1C4内の脱穀粒をコンバイン1Cの外部に排出する作業に関わる音声報知である。No3は、刈取作業を行っている際に、排出位置に移動する時間を前もって知らせる。No4は排出作業の完了を知らせる。No5は、穀粒(籾)を運搬する運搬車における穀粒の収容部の満杯が近づいていることを知らせる。No6は、排出オーガ1C6の排出口の位置の調整を促す。当該調整の指示は、例えば、運搬車に排出された穀粒が偏って山状になっている所を避けて排出させるために行われる。
【0174】
図27のNo7は、自動走行モードの切り替えに関する音声報知である。詳細には、有人自動走行モード(オートモード)に関する音声報知で、未刈取領域が確定した段階で有人自動走行モードへの切り替えを促す。
【0175】
図27のNo8~12は、コンバイン1Cにおけるフェールセーフに関わる音声報知である。No8は、車速制限中であることを知らせる。当該音声報知は、例えば、コンバイン1Cの後進時や、稲の倒伏検知時(倒伏検知モード時)に車速制限が行われていることを知らせるものである。No9は刈取部1C7の上昇を促す。当該音声報知は、刈取部1C7が下がった状態で走行を開始すると刈取部1C7とアスファルト等とが衝突することがあるため、これを避けるために行われる。No10は、キャビン仕様のコンバイン1Cにおける安全確保のための音声報知である。No11は、安全確保のために排出オーガ1C6を適切な位置に配置することを促す。No12は、エンジンが高負荷となっていることと、それに対するコンバイン1Cに特有の対応を知らせる。
【0176】
図27のNo13~22は、コンバイン1Cにおける作業ガイダンスに関わる音声報知である。No13、14は、詰まりが発生した場合に、その場所を知らせる。No15は、本来収穫すべき穀粒が収穫されていない場合に、そのことを知らせる。No16~18は、作業設定に関わる状況を知らせる音声報知である。No16は刈高さを知らせる。No17、18は扱ぎ口の状態を知らせる。No19は、グレンタンク1C4の容量に関わる音声報知である。詳細には、どのぐらいタンクに穀粒が溜っているかを知らせる。No20は、刈取りの結果の報知と、作業を継続してよいか確認する。長寸や短寸などのモード通知に関わる。No21は、各圃場における収穫量を知らせる。No22は、先に作業を行った圃場と異なる品種が植えられる圃場で作業する場合の注意喚起を行う音声報知である。
【0177】
図28は、作業支援システム100が備える作業車両1がトラクタ1Tである場合に適用される音声報知を例示するテーブルである。
【0178】
図28のNo1、2は、トラクタ1Tが備えるPTOに関わる音声報知である。詳細には、No1、2は、PTOスイッチのオンオフに関する音声報知である。
【0179】
図28のNo3は、トラクタ1Tにおけるフェールセーフに関わる音声報知である。No3は、詳細には、キャビン仕様のトラクタ1Tにおける安全確保のための音声報知である。
【0180】
図28のNo4、5は、トラクタ1Tにおける作業ガイダンスに関わる音声報知である。No4は、PTO変速位置に関する音声報知で、詳細には、不適切な状態の内容と、その確認を促す。なお、PTO変速位置が正しいか否かは、PTO回転数により判定できる。No5は、携帯通信端末2で設定した内容と、作業車両1の設定との間で相違があることを知らせる音声報知である。走行駆動設定には、例えば、四輪走行駆動方式とする設定と、二輪走行駆動方式とする設定とが含まれる。
【0181】
図29は、作業支援システム100が備える作業車両1が田植機1Rである場合に適用される音声報知を例示するテーブルである。
【0182】
図29のNo1は、上述の図26BのNo32や図27のNo2と同様の音声報知で、植付開始位置までの移動を開始することを知らせる。
【0183】
図29のNo2~4は、田植機1Rが作業の途中で行う資材補給の案内に関わる音声報知である。資材補給は、例えば、苗の補給、薬剤の補給、肥料の補給、又は、燃料の補給等である。No2は、例えば携帯通信端末2の表示部23等に補給用の経路が表示されたこと、および、当該経路を利用した補給走行の開始を知らせる。No3は、補給ポイントに向かった走行を開始することを知らせる。No4は、補給ポイントへの到着を知らせる。
【0184】
図29のNo5は、変速装置に関わる音声報知である。No5は、詳細には、自動走行を開始するにあたっての変速ペダルに関する注意喚起を行う。
【0185】
図29のNo6~11は、田植機1Rにおける作業ガイダンスに関わる音声報知である。No6は車体の走行速度を植付部1R2による苗の植付に適した速度とすることを促す。No7、8は、資材補給を促す音声報知であり、No7は苗の補給を促し、No8は肥料の補給を促す。No9は、圃場面を均す整地装置としての整地ロータを作業に適した位置とすることを促す。No10、11は、作業のエラーを知らせる音声報知で、No10は肥料の詰まりを知らせ、No11は苗送りが正常に行われていないことを知らせる。
【0186】
<3.留意事項等>
本明細書中に開示される種々の技術的特徴は、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。また、本明細書中に示される複数の実施形態および変形例は可能な範囲で組み合わせて実施されてよい。
【0187】
<4.付記>
例示的な本発明の作業支援方法は、作業車両を用いた作業の支援を行う作業支援方法であって、圃場内において前記作業車両を自動で走行させる自動走行モードに切り替えることと、前記自動走行モードにおいて所定条件が満たされた場合、前記作業車両を手動で走行させる手動走行モードに切り替えることと、前記自動走行モードから前記手動走行モードに切り替えられたことを報知する切替報知を行うことと、を実行し、前記手動走行モードに切り替えられた際の前記作業車両の状況に応じて、前記切替報知の態様が異なる構成(第1の構成)であってよい。
【0188】
上記第1の構成において、前記切替報知の態様の相違には、報知に用いる装置の相違と、同一の前記装置を用いて報知の仕方を異ならせることとの少なくともいずれか一方が含まれる構成(第2の構成)であってよい。
【0189】
上記第1又は第2の構成において、前記切替報知の態様は、前記手動走行モードに切り替えられた際に前記作業車両が走行を継続する場合と、前記手動走行モードに切り替えられた際に前記作業車両が走行を停止する場合とで異なる構成(第3の構成)であってよい。
【0190】
上記第3の構成において、前記手動走行モードに切り替えられた際に前記作業車両が走行を継続する場合、音声を用いて前記切替報知を実行する構成(第4の構成)であってよい。
【0191】
上記第3又は第4の構成において、前記手動走行モードに切り替えられた際に前記作業車両が走行を継続する場合には、前記作業車両に搭乗するオペレータがステアリング操作を行うことにより前記所定条件が満たされる場合が含まれる構成(第5の構成)であってよい。
【0192】
上記第3から第5のいずれかの構成において、前記手動走行モードに切り替えられた際に前記作業車両が走行を停止する場合、表示を用いて前記切替報知を実行する構成(第6の構成)であってよい。
【0193】
上記第3から第6のいずれかの構成において、前記手動走行モードに切り替えられた際に前記作業車両が走行を停止する場合には、前記作業車両が備える測位通信ユニットの不具合の発生により前記所定条件が満たされる場合と、前記作業車両が備える障害物センサによる障害物の検出により前記所定条件が満たされる場合とのうち少なくとも一方が含まれる構成(第7の構成)であってよい。
【0194】
上記第5の構成において、前記ステアリング操作により前記所定条件が満たされて前記切替報知を実行した後に、前記作業車両の車速が制限されることを報知する車速制限報知を実行する構成(第8の構成)であってよい。
【0195】
上記第1から第8のいずれかの構成において、前記作業車両が前記自動走行モードで後進走行している際に前記手動走行モードに切り替わった場合、前記切替報知の実行後に、前記作業車両が前進走行を行うことを報知する前進走行報知を実行する構成(第9の構成)であってよい。
【0196】
上記第9の構成において、前記前進走行報知の実行後、前記作業車両の車速が制限されることを報知する車速制限報知を実行する構成(第10の構成)であってよい。
【0197】
上記第1から第10のいずれかの構成において、前記手動走行モードから前記自動走行モードに移行したことを報知する自動走行モード移行報知を実行する構成(第11の構成)であってよい。
【0198】
上記第11の構成において、前記自動走行モード移行報知の実行後、前記作業車両が進行する方向を報知する進行方向報知を実行する構成(第12の構成)であってよい。
【0199】
上記第1から第12のいずれかの構成において、複数種類の音の報知のタイミングの一部に重複が生じ、先のタイミングの第1報知の音の出力中に次のタイミングの第2報知の音を出力する必要が生じた場合に、前記第1報知の音を途中で終了し、当該終了後に区切りの期間を設けて前記第2報知の音を出力する構成(第13の構成)であってよい。
【符号の説明】
【0200】
1・・・作業車両
1C・・・コンバイン(作業車両)
1R・・・田植機(作業車両)
1T・・・トラクタ(作業車両)
1C5b、1R6b、1T6b・・・ステアリングホイール
2・・・携帯通信端末
10、20・・・制御部
11・・・測位通信ユニット
13・・・センサ(障害物センサ含む)
17、25・・・報知部
100・・・作業支援システム
F・・・圃場
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26A
図26B
図27
図28
図29