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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180012
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】接合構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/12 20060101AFI20231213BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
E02D27/12 Z
E04B1/58 600F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093047
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 和正
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 悟士
(72)【発明者】
【氏名】稲田 博文
(72)【発明者】
【氏名】森山 毅子彦
【テーマコード(参考)】
2D046
2E125
【Fターム(参考)】
2D046AA11
2D046CA02
2D046CA03
2E125AA45
2E125AA66
2E125AB17
2E125AC02
2E125AE02
2E125CA82
(57)【要約】
【課題】上側のコンクリート部材の下面に形成された凹部に、下側のコンクリート部材の上端に形成された凸部を挿入した状態で、凹部に充填材を充填することによりコンクリート部材同士を接合する接合部において、より確実に充填材を充填することを可能とした接合構造を提案する。
【解決手段】フーチング2と杭3とを接合する接合構造1であって、フーチング2の下面に形成された平面視正方形状の凹部21と、フーチング2の上面から凹部212の中央部に至る注入孔22と、フーチング2の上面から凹部21に至る複数の空気孔23と、凹部21に挿入される平面視正方形状の杭頭部31と、注入孔22から凹部21と杭頭部31との隙間に充填される充填材4とを備えている。空気孔23は、杭頭部31の周縁の内側で、かつ、杭頭部31の周縁に内接する円の外側の領域の直上において開口している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側に配設された上側コンクリート部材と下側に配設された下側コンクリート部材とを接合する接合構造であって、
前記上側コンクリート部材の下面に形成された平面視正方形状の凹部と、
前記上側コンクリート部材の側面または上面から前記凹部の中央部に至る注入孔と、
前記上側コンクリート部材の側面または上面から前記凹部に至る複数の空気孔と、
前記下側コンクリート部材の上部に形成された前記凹部に挿入される平面視正方形状の凸部と、
前記注入孔から前記凹部と前記凸部との隙間に充填される充填材と、を備え、
前記空気孔は、前記凸部の周縁の内側で、かつ、前記凸部の周縁に内接する円の外側の領域の直上において開口していることを特徴とする、接合構造。
【請求項2】
前記凸部の平面視正方形の頂点を点Pとし、前記凸部の中心Oと前記点Pとを結ぶ直線と前記凸部の周縁に内接する円との交点を点Aとしたとき、
前記空気孔は、前記点Pと前記点Aとを結ぶ直線を対角線とする矩形の領域内に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の接合構造。
【請求項3】
前記空気孔は、前記点Pと前記点Aとの中間点である点Bの近傍に設けられていることを特徴とする、請求項2に記載の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート部材同士の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建設工事では、工期短縮化を目的として、プレキャスト部材を使用する場合がある。プレキャスト部材は、現場打ちコンクリートにより形成された他のコンクリート部材や、他のプレキャスト部材と、モルタル等を介して接合するのが一般的である。
例えば、図5に示すように、プレキャスト製のフーチング部材120と、コンクリート杭との接合構造100として、フーチング部材120の底面に凹部121を形成しておき、この凹部121に杭頭部(凸部131)を挿入した状態で、フーチング部材120の凹部121と杭頭部と131の隙間にモルタルなどの充填材140を充填する場合がある(例えば、特許文献1参照)。
このような接合構造100では、凹部121への充填材140の充填状況を目視で確認することができないため、凹部121の中央付近に形成された注入孔122から充填材140の注入を行い、凹部121の縁部(角部)近傍に形成された複数の空気孔123から充填材140の排出を確認することで、充填が完了したものとするのが一般的であった。
なお、凹部121の中央付近に形成された注入孔122から注入された充填材140は、図6(a)に示すように、凸部131の上面において同心円状に広がり、図6(b)に示すように凸部131の縁に到達して凸部131の縁から流下する。凸部131の縁から流下した充填材140は、図6(c)に示すように、凹部121の内壁面と凸部131の側面との間を流れる。凸部131が矩形状の場合に充填材140は、凸部131の四辺に到達して流下し、凹部121の内壁面と凸部131の側面との間を流れて空気孔123に到達する。そのため、充填材140は、凸部131の上面全体に広がってから流下するとは限らず、凹部121の縁部に形成された空気孔123から充填材140の排出が確認された場合であっても、空気孔123の中央寄りの部分(領域133)において未充填箇所(空気だまり)が生じるおそれがあり、凸部131と凹部121との隙間への充填材140の充填完了を簡易に判断する方法がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-186154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような観点から、本発明は、上側のコンクリート部材の下面に形成された凹部に、下側のコンクリート部材の上端に形成された凸部を挿入した状態で、凹部に充填材を充填することによりコンクリート部材同士を接合する接合部において、より確実に充填材を充填することを可能とした接合構造を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明は、上側に配設された上側コンクリート部材と下側に配設された下側コンクリート部材とを接合する接合構造であって、前記上側コンクリート部材の下面に形成された平面視正方形状の凹部と、前記上側コンクリート部材の側面または上面から前記凹部の中央部に至る注入孔と、前記上側コンクリート部材の側面または上面から前記凹部に至る複数の空気孔と、前記下側コンクリート部材の上部に形成された前記凹部に挿入される平面視正方形状の凸部と、前記注入孔から前記凹部と前記凸部との隙間に充填される充填材とを備えている。前記空気孔は、前記凸部の周縁の内側で、かつ、前記凸部の周縁に内接する円の外側の領域の直上において開口している。
なお、前記凸部の平面視正方形の頂点を点Pとし、前記凸部の中心Oと前記点Pとを結ぶ直線と前記凸部の周縁に内接する円との交点を点Aとしたとき、前記空気孔は、前記点Pと前記点Aとを結ぶ直線を対角線とする矩形の領域内に設けられているのが望ましく、前記点Pと前記点Aとの中間点である点Bの近傍に設けられているのがより望ましい。
【0006】
かかる接合構造を構築する際は、凹部の中央付近から注入した充填材が、凸部の上面において同心円状に広がり、凸部の各辺から流下して、凹部の内壁面に至った後、凹部の内壁面と凸部の側面との間を流れる。空気孔は、凸部の平面視正方形の頂点よりも中心側であって、同心円状に広がる充填材の外側の領域に形成されているため、未充填箇所が形成され難い。すなわち、充填材が回り込み難い位置に空気孔を形成しておき、当該空気孔からの充填材の流出を確認することで、未充填箇所(空気だまり)が形成されることを防止できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の接合構造によれば、上側のコンクリート部材の下面に形成された凹部に、下側のコンクリート部材の上端に形成された凸部を挿入した状態で、凹部に充填材を充填することによりコンクリート部材同士を接合する接合部において、より確実に充填材を充填することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る接合構造を示す図であって、(a)は断面図、(b)は(a)のA-A断面図である。
図2】空気孔の形成箇所の説明図である。
図3】杭基礎構造の構築方法を示す断面図であって、(a)は杭構築工程、(b)は杭頭処理工程、(c)は基礎配設工程および接合工程である。
図4】充填材の注入状況を示す説明図であって、(a)は注入初期段階、(b)は充填材が杭頭部の四辺に到達した段階、(c)は杭頭部の側面と凹部の内周面との隙間を充填材が流れる状況である。
図5】従来の接合構造の例を示す断面図である。
図6】従来の接合構造における充填材の充填状況を示す説明図であって、(a)は注入初期段階、(b)は充填材が杭頭部の四辺に到達した段階、(c)は杭頭部の側面と凹部の内周面との隙間を充填材が流れる状況である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態では、杭基礎構造において、杭(下側コンクリート部材)3の杭頭部31とプレキャスト製のフーチング(上側コンクリート部材)2とを接合する場合について説明する。図1にフーチング2と杭3との接合構造1を示す。本実施形態では、杭3の杭頭部31およびキャップ部材32が、フーチング2の凹部21に挿入される凸部を構成する場合について説明する。
図1(a)および(b)に示すように、フーチング2の下面には、平面視正方形状の凹部21が形成されている。また、フーチング2には、注入孔22および複数の空気孔23が形成されている。注入孔22は、フーチング2の側面から凹部21に至るように形成されている。また、空気孔23は、フーチング2の側面から凹部21に至るように形成されている。
杭3の上端(凸部)は、凹部21に挿入可能で、かつ、平面視正方形状を呈している。杭頭部31は、フーチング2が載置される床付け面5から突出している。本実施形態の杭頭部31は、杭頭処理として、凹部21に挿入可能な平面視正方形状のキャップ部材32が形成されている。
接合構造1は、凹部21に杭頭部31(キャップ部材32)を挿入した状態で、凹部21と杭頭部31(キャップ部材32)との隙間に注入孔22から注入した充填材4を充填してなる。充填材4には、流動性を有し、かつ、硬化後に所定の強度を発現する隙間を塞ぐのに適した材料を使用すればよく、例えば無収縮モルタルを使用すればよい。
【0010】
本実施形態の注入孔22は、凹部21の中心付近に形成されている。
図2に空気孔23の形成箇所を示す。図2に示すように、空気孔23は、キャップ部材32(杭頭部31)の周縁の内側で、かつ、キャップ部材32の周縁に内接する円Cの外側の領域33の直上において開口している。
キャップ部材32(杭頭部31)の頂点(角)を点Pとし、キャップ部材32の中心Oと点Pとを結ぶ直線Lと杭頭部31の周縁に内接する円Cとの交点を点A(図2では紙面右上の交点)としたとき、点Pと点Aとの中間点である点Bの近傍に空気孔23が設けられている。本実施形態では、点Pと点Aとを結ぶ直線を対角線とする矩形Eの領域内、より具体的には、点Pと点Aとの中点(矩形Eの中心)に点Bを設けている。このとき、点Pの座標を(0,0)、キャップ部材32の1辺の長さをDとすると、点Aの座標は(D(2-20.5)/4,D(2-20.5)/4)、点Bの座標は(D(2-20.5)/8,D(2-20.5)/8)となる。
【0011】
以下、本実施形態の接合構造1を利用した杭基礎構造の構築方法について説明する。
本実施形態の杭基礎構造の構築方法は、杭構築工程と、杭頭処理工程と、基礎配設工程と、接合工程とを有している。図3に杭基礎構造の構築方法の作業状況を示す。
杭構築工程は、図3(a)に示すように、杭3を構築する工程である。本実施形態では、円柱状のプレキャスト部材を地盤Gに圧入することにより杭3を構築するが、杭3の種類や施工方法は限定されるものではない。杭3の圧入は、図示しない回転圧入装置を用いて行う。
杭3の施工が完了したら、杭頭部31の周囲の地盤面GLを掘り下げて、杭頭部31を露出させるとともに、地盤面GL(床付け面)の不陸を整正する。なお、杭3の施工を杭頭部31が露出した位置で止める場合は、地盤面GLを掘り下げる必要はない。
【0012】
杭頭処理工程は、図3(b)に示すように、杭3の杭頭部31にキャップ部材32を形成する工程である。キャップ部材32は、杭頭部31がキャップ部材32の下面に密着するように覆い被せた状態で形成する。キャップ部材32は、凹部21に挿入可能な大きさの平面視矩形状のブロック状部材であって、底面に杭頭部31を挿入可能な円錐台状窪みが形成されている。杭頭部31にキャップ部材32を形成したら、キャップ部材32の下端部の周囲に地盤材料(砕石や土砂等)51を敷き均し、キャップ部材32の下端縁と地盤面G0との隙間を閉塞するとともに、キャップ部材32を仮固定する。キャップ部材32を借り固定したら、必要に応じて均しコンクリート52を打設する。
【0013】
基礎配設工程は、図3(c)に示すように、プレキャストコンクリート部材からなるフーチング2を配設する工程である。フーチング2は、凹部21でキャップ部材32(杭頭部31)を覆うように、杭頭部31の上方から配設する。
【0014】
接合工程は、杭頭部31とフーチング2とを接合する工程である。杭頭部31とフーチング2との接合は、図3(c)に示すように、注入孔22から充填材4を注入し、凹部21とキャップ部材32(杭頭部31)との隙間に充填材4を充填することにより行う。充填材4の注入に伴い、凹部21とキャップ部材32との隙間の空気が、空気孔23から排気される。凹部21とキャップ部材32との隙間が充填材4により充填されると空気孔23から充填材4が排出される。すべての空気孔23から充填材4の排出が確認されたら、凹部21に充填材4が充填されたとして、充填材4の注入を終了する。
なお、注入孔22から注入された充填材4は、図4(a)に示すように、杭3(キャップ部材32)の上面において同心円状に広がった後、図4(b)に示すように、キャップ部材32の縁(辺)に到達する。充填材4は、キャップ部材32の縁に到達すると、キャプ部材の縁(四辺)からキャップ部材32の側面と凹部21の内壁面との隙間(溝T)に流下する。そして、当該隙間(溝T)に流下した充填材4は、図4(c)に示すように、凹部21の内壁面とキャップ部材32の側面との隙間(溝T)を流れる。凹部21の内壁面とキャップ部材32の側面との隙間(溝T)に充填材4が充填されると、隙間(溝T)からあふれた充填材4がキャップ部材32(杭頭部31)の上面周縁の内側で、かつ、キャップ部材32(杭頭部31)の周縁に内接する円C(図2参照)の外側の領域33に流れ込み、凹部21の内部が充填材4により充填される(図1参照)。
【0015】
本実施形態の接合構造1は、空気孔23が、杭頭部(凸部)31の頂点(角)よりも中心側であって、同心円状に広がる充填材4の外側の領域に形成されているため、未充填箇所が形成され難い。すなわち、充填材4が回り込み難い位置に空気孔23が形成されているため、当該空気孔23からの充填材4の流出を確認することで、未充填箇所(空気だまり)が形成されることを防止できる。
【0016】
本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、フーチング2と杭3とを接合する場合について説明したが、本発明の接合構造1の施工対象物は杭基礎構造に限定されるものではなく、他のコンクリート部材同士の接合構造にも適用可能である。例えば、プレキャスト部材を利用した柱の施工における、プレキャスト製の柱部材同士の接合に使用してもよい。
また、前記実施形態では、注入孔22および空気孔23をフーチング2の側面から凹部21に至るように形成したが、注入孔22および空気孔23は、フーチング2の上面から凹部21に至るように形成されていてもよい。
また、空気孔23の形成箇所は、杭頭部31の周縁の内側で、かつ、杭頭部31の周縁に内接する円の外側の領域の直上において開口していれば限定されるものではない。なお、点Pと点Aとを結ぶ直線を対角線とする矩形の領域内に空気孔23を設けるのが望ましい。
上部コンクリートの凹部21に挿入される下部コンクリート部材の凸部は、キャップ部材に限定されるものではなく、下部コンクリート部材の上面に形成された突起であってもよい。
キャップ部材32は、必要に応じて設ければよい。また、キャップ部材32の下面には、必ずしも円錐台状の窪みが形成されている必要はなく、例えば、柱状の窪みであってもよい。
【符号の説明】
【0017】
1 接合構造
2 フーチング(上部コンクリート部材)
21 凹部
22 注入孔
23 空気孔
3 杭(下部コンクリート部材)
31 杭頭部(凸部)
32 キャップ部材(凸部)
33 領域
4 充填材
5 床付け面
C 円
E 矩形
G 地盤
GL 地盤面
L 直線
T 溝(隙間)
図1
図2
図3
図4
図5
図6