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特開2023-180025水性日焼け止め化粧料およびシート状水性日焼け止め化粧料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180025
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】水性日焼け止め化粧料およびシート状水性日焼け止め化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/27 20060101AFI20231213BHJP
   A61Q 19/04 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
A61K8/27
A61Q19/04
A61K8/73
A61K8/81
A61K8/86
A61K8/29
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093068
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤田 昌
(72)【発明者】
【氏名】三田地 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】三原 祐理子
(72)【発明者】
【氏名】荘司 涼佳
(72)【発明者】
【氏名】関口 孝治
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB212
4C083AB242
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC302
4C083AC372
4C083AC582
4C083AD042
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD111
4C083AD112
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD411
4C083AD412
4C083BB60
4C083CC19
4C083DD12
4C083DD27
4C083EE06
4C083EE17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】紫外線散乱剤によるきしみを抑え、しっとり感がありつつ、肌にきしみ感が残らず、重ね塗りした際でもべたつきがなく洗浄性が高い水性日焼け止め化粧料を提供する。
【解決手段】(A)紫外線散乱剤を5~20%、(B)水溶性高分子を0.001~1%、(C)ポリメタクリル酸メチル又はメタクリル酸メチルクロスポリマーの球状粉末を0.1~5%、(D)下記式(1)で示されるアルキレンオキシド誘導体を0.1~10%含む水性日焼け止め化粧料。

(式(1)中、AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基を示し、EOはオキシエチレン基を示し、aはAOの付加モル数を示し、bはEOの付加モル数を示し、aは0~50の数を示し、bは1~50の数を示し、a+b≧10であり、0≦a/b≦2である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)を5~20%、成分(B)を0.001~1%、成分(C)を0.1~5%、成分(D)を0.1~10%含む水性日焼け止め化粧料。
(A)紫外線散乱剤
(B)セルロース由来または多糖類由来の水溶性高分子
(C)ポリメタクリル酸メチル又はメタクリル酸メチルクロスポリマーの球状粉末
(D)下記式(1)で示されるアルキレンオキシド誘導体
【化1】
(式(1)中、AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基を示し、EOはオキシエチレン基を示し、aは前記炭素数3~4のオキシアルキレン基の付加モル数を示し、bは前記オキシエチレン基EOの付加モル数を示し、aは0~50の数を示し、bは1~50の数を示し、a+b≧10である。前記炭素数3~4のオキシアルキレン基と前記オキシエチレン基は、ランダム状またはブロック状に付加しており、ブロック付加である場合配列順は問わず、0≦a/b≦2である。)
【請求項2】
(E)下記の式(I)で表される構成単位と下記の式(II)で表される構成単位とを含み、両構成単位のモル比(I/II)が90/10~30/70である(メタ)アクリル系共重合体
【化2】
(式(I)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは-(CH-を表し、nは1~4の整数である。*は他の構成単位との結合部位を表す。)
【化3】
(式(II)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Lはフェニレン基、シクロヘキシレン基、-C(=O)-O-、-O-、-C(=O)-NH-、-O-C(=O)-、および-O-C(=O)-O-からなる群から選択される2価の連結基を表し、Lは炭素数10~22の直鎖又は分岐アルキル基を表す。*は他の構成単位との結合部位を表す。)
を0.001~1%含む、請求項1に記載の水性日焼け止め化粧料。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水性日焼け止め化粧料をシート基材に含浸してなる、シート状水性日焼け止め化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性日焼け止め化粧料およびシート状水性日焼け止め化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線防御への意識の高まりから、日焼け止め化粧料を日常的に使用する人が増えている。このような中、日焼け止め化粧料には、日常的にストレスなく使用できる心地よい使用感、高い使用性から水性日焼け止め化粧料の需要が高まっている。
【0003】
水性日焼け化粧料は、水の配合量が多いことからみずみずしい使用感が特徴であるが、塗布後水分が蒸発した後、紫外線防御剤である紫外線散乱剤のカサカサとしたきしみ感が感じられやすく、これにより乾燥感が強くなりしっとり感が感じられにくいことがあった。
【0004】
特許文献1では、特定のポリグリセリン誘導体、疎水化処理粉体等を含み、しっとり感があり、べたつかない水中油型皮膚外用剤が報告されている。
【0005】
特許文献2では、特定のポリオキシエチレンアルキルエーテル、液状油、疎水化処理微粒子金属酸化物粉末を含み、保湿感があり、きしみ感がない水中油型乳化組成物が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-31337号公報
【特許文献2】特開2014-114274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、しっとり感があり、べたつかない水中油型皮膚外用剤が報告されている。しかし、特許文献1に記載の水中油型皮膚外用剤では、紫外線散乱剤のきしみ感の改善は不十分だった。特許文献2では、保湿感があり、きしみ感がない水中油型乳化組成物が報告されている。しかし、特許文献2に記載の水中油型乳化組成物では、きしみ感を抑えつつしっとり感を高めた場合、効果を保つために塗り直しした際にべたつき感の原因や洗浄性低下の原因となってしまっていた。
【0008】
そこで、きしみ感がなく、しっとり感があり、また重ね塗りした際でもべたつきがなく、洗浄性が高い水性日焼け止め化粧料が求められる。
【0009】
また最近では、日焼け止め化粧料の剤型は多様化しており、消費者が使用用途や目的に合わせて適切に選ぶことができるようになってきている。中でも、日焼け止め化粧料をシート剤に含浸させたシート状日焼け止め化粧料は、持ち運びや塗布のし易さから、日常使い用の日焼け止めとして認知されている。しかし、紫外線散乱剤を含む日焼け止めをシートに含浸させようとすると、紫外線散乱剤の分散性を向上させるために配合される高分子類等によりシートへの染み拡がり易さが阻害されることがあった。また、きしみ感を軽減するために配合される粉体類等により、塗布時にシートが毛羽立って使用性が低下してしまったりすることがあった。このため、日焼け止め化粧料をシートに含浸する際も、シートに染み拡がり易く、また使用時もシートの毛羽立ちにくさが求められている。
【0010】
本発明の課題は、紫外線散乱剤によるきしみを抑えて、乾燥感がなくしっとり感が感じられつつ、肌にきしみ感が残らず、重ね塗りした際でもべたつきがなく、さらに重ね塗り後も洗浄性が高い水性日焼け止め化粧料を提供することにある。加えて、シート剤に適用した際でもシート中に染み拡がり易く、シート使用時の毛羽立ちが抑制されたシート状水性日焼け止め化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、紫外線散乱剤、水溶性高分子、ポリメタクリル酸メチル又はメタクリル酸メチルクロスポリマーの球状粉末、特定構造を持つアルキレンオキシド誘導体を所定の配合量で組み合わせることにより、上記課題を解決できる水性日焼け止め化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、下記特徴を有する水性日焼け止め化粧料を提供する。
【0013】
<1>(A)紫外線散乱剤を5~20%、成分(B)セルロース由来または多糖類由来の水溶性高分子を0.001~1%、成分(C)ポリメタクリル酸メチル又はメタクリル酸メチルクロスポリマーの球状粉末を0.1~5%、(D)下記式(1)で示されるアルキレンオキシド誘導体を0.1~10%含む水性日焼け止め化粧料。
【0014】
【化1】
【0015】
式(1)中、AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基を示し、EOはオキシエチレン基を示し、aは前記炭素数3~4のオキシアルキレン基の付加モル数を示し、bは前記オキシエチレン基EOの付加モル数を示し、aは0~50の数を示し、bは1~50の数を示し、a+b≧10である。前記炭素数3~4のオキシアルキレン基と前記オキシエチレン基は、ランダム状またはブロック状に付加しており、ブロック付加である場合配列順は問わず、0≦a/b≦2である。
【0016】
<2> (E)下記の式(I)で表される構成単位と下記の式(II)で表される構成単位とを含み、両構成単位のモル比(I/II)が90/10~30/70である(メタ)アクリル系共重合体
【0017】
【化2】
【0018】
式(I)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは-(CH-を表し、nは1~4の整数である。*は他の構成単位との結合部位を表す。
【0019】
【化3】
【0020】
式(II)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Lはフェニレン基、シクロヘキシレン基、-C(=O)-O-、-O-、-C(=O)-NH-、-O-C(=O)-、および-O-C(=O)-O-からなる群から選択される2価の連結基を表し、Lは炭素数10~22の直鎖又は分岐アルキル基を表す。*は他の構成単位との結合部位を表す。
【0021】
を0.001~1%含む、<1>に記載の水性日焼け止め化粧料。
【0022】
<3> <1>または<2>に記載の水性日焼け止め化粧料をシート基剤に含浸してなるシート状水性日焼け止め化粧料。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、きしみ感がなく、しっとり感があり、また重ね塗りした際でもべたつきがなく、重ね塗り後も洗浄性が高い水性日焼け止め化粧料を提供できる。加えて、シート剤に適用した際でもシート中に染み拡がり易く、シート使用時の毛羽立ちが抑制されたシート状水性日焼け止め化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(A)紫外線散乱剤
成分(A)は、紫外線散乱剤である。紫外線散乱剤とは、紫外線を反射・散乱させて皮膚等を紫外線から防御することができる物質を指す。成分(A)の紫外線散乱剤の材料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム等があげられる。また、紫外線散乱剤としてこれらの材料を微粒子化したものや、複合化したものがあげられる。紫外線散乱剤は、好ましくは、酸化チタン及び酸化亜鉛から選択される1種又は2種を含む。
【0025】
紫外線散乱剤として用いられる酸化チタン及び酸化亜鉛は、化粧料に通常用いられている酸化チタン及び酸化亜鉛であってよい。好ましくはより分散性に優れたもの、例えば必要に応じて公知の方法で表面を表面処理、具体的には疎水化処理したものを肌用組成物中に含有することができる。
【0026】
表面処理の方法としては、メチルハイドロゲンポリシロキサン、メチルポリシロキサン等のシリコーン処理;パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルコール等によるフッ素処理;N-アシルグルタミン酸等によるアミノ酸処理;オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン処理;レシチン処理;シリカ処理;金属石鹸処理;脂肪酸処理;アルキルリン酸エステル処理等があげられる。
【0027】
成分(A)は、平均一次粒子径8~80nmのサイズに微粒子化したものが好ましく、10~50nmがさらに好ましい。平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察し、任意の20個の一次粒子の直径を計測し、その平均値を算出することによって測定することができる。
【0028】
(A)紫外線散乱剤の添加濃度は、水性日焼け止め化粧料の全質量に対して5~20質量%であるが、好ましくは5~18質量%、より好ましくは5~15質量%である。成分(A)の含有量を多くすることで、紫外線防御効果を十分に高めることができる。成分(A)の含有量を過剰としないことで、きしみ感や重ね塗り後のべたつき感を軽減し、重ね塗り後の洗浄性の低下や、シートの毛羽立ちを抑制することができる。
【0029】
(B)水溶性高分子
成分(B)は、セルロース由来または多糖類由来の水溶性高分子である。成分(B)のセルロース由来または多糖類由来の水溶性高分子は、天然の水溶性高分子、半合成の水溶性高分子など化粧料に通常配合されるものを使用することができる。
【0030】
具体的には、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース由来の水溶性高分子、アラビアガム抽出物、トラガカントガム抽出物、グアーガム、クインスシード(マルメロ種子)抽出物、寒天、キサンタンガム、フルクタン、プルラン、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウムなどの多糖類由来の水溶性高分子が挙げられる。
【0031】
(B)セルロース由来または多糖類由来の水溶性高分子は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明においては、重ね塗り時のべたつき軽減やシートへの染み拡がり易さの観点から、多糖類由来の水溶性高分子を用いることが好ましい。
【0032】
中でも、本発明においては、アラビアガム抽出物、クインスシード(マルメロ種子)抽出物、由来の水溶性高分子から選択される1種以上を用いることが好ましい。アラビアガム抽出物由来の水溶性高分子の市販品としては、例えば、日油株式会社製の「プロテオグリカン(植物)」が挙げられる。クインスシード(マルメロ種子)抽出物由来の水溶性高分子の市販品としては、例えば、大日本化成株式会社製の「クインスシードG」、「クインスシード2S」、「クインスシード2SP」が挙げられる。
【0033】
(B)水溶性高分子の添加濃度は、水性日焼け止め化粧料の全質量に対して0.001~1質量%であるが、好ましくは0.003~1質量%、より好ましくは0.005~1質量%である。成分(B)の含有量を多くすることで、きしみ感を軽減し、しっとり感を向上させることができる。成分(B)の含有量を過剰としないことで、重ね塗り後のべたつき感を軽減し、重ね塗り後の洗浄性の低下やシートへの染み拡がり易さの低下を生じにくくすることができる。
【0034】
(C)ポリメタクリル酸メチル又はメタクリル酸メチルクロスポリマーの球状粉末
成分(C)は、ポリメタクリル酸メチル粉末又はメタクリル酸メチルクロスポリマー球状粉末である。成分(C)のポリメタクリル酸メチル粉末又はメタクリル酸メチルクロスポリマー球状粉末は、通常化粧料に用いられるものであれば、いずれのものも使用することができ、これらを1種又は2種以上用いることができる。メタクリル酸メチルクロスポリマー粉体の架橋剤は、特に限定されないが、ジメタクリル酸エチレングリコール等が挙げられる。さらには、成分(C)は表面処理、複合化処理、あるいは着色剤等の粉体や油剤を内包してあっても良く、処理剤としては、特に限定はされないが、油剤、フッ素化合物、粉体、着色剤、ゲル化剤、合成高分子、界面活性剤等が挙げられる。
【0035】
成分(C)の市販品としては、マツモトマイクロスフェアM、マツモトマイクロスフェアM-100、マツモトマイクロスフェアM-101、マツモトマイクロスフェアM-305、マツモトマイクロスフェアM-306、マツモトマイクロスフェアM-600、マツモトマイクロスフェアMHB-R、マツモトマイクロスフェアM-310、マツモトマイクロスフェアM-311(いずれも松本油脂製薬株式会社製)、ガンツパールGM-2800、ガンツパールGMI-0804(いずれもアイカ工業社製)等が挙げられる。
【0036】
成分(C)の平均粒子径は、1~40μmであることが好ましく、より好ましくは5~20μmである。平均粒子径を1μm以上とすることで、きしみ感を十分に低減することができる。平均粒子径を40μm以下とすることで、しっとり感の低下を抑制することができる。球状粉末の平均粒子径は、例えばレーザー散乱式粒度分布計(HORIBA社製)を用い、体積平均粒子径(D50)として測定可能である。
【0037】
(C)ポリメタクリル酸メチル又はメタクリル酸メチルクロスポリマーの球状粉体の添加濃度は、0.1~5%であるが、好ましくは0.1~3%であり、より好ましくは0.1~1%である。成分(C)の含有量を多くすることで、きしみ感や、重ね塗り後のべたつき感を生じにくくすることができる。成分(C)の含有量を過剰としないことで、しっとり感の低下、重ね塗り後の洗浄性の低下、およびシートの毛羽立ちを生じにくくすることができる。
【0038】
(D)アルキレンオキシド誘導体
成分(D)は、式(1)に示すアルキレンオキシド誘導体である。
【化4】
【0039】
式(1)中、AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基を示し、EOはオキシエチレン基を示し、aは前記炭素数3~4のオキシアルキレン基の付加モル数を示し、bは前記オキシエチレン基EOの付加モル数を示し、aは0~50の数を示し、bは1~50の数を示し、a+b≧10であり、0≦a/b≦2である。前記炭素数3~4のオキシアルキレン基と前記オキシエチレン基は、ランダム状またはブロック状に付加しており、ブロック付加である場合配列順は問わない。
【0040】
aを50以下とすることで、紫外線散乱剤のきしみを抑えて、さらに重ね塗り後の洗浄性を向上させることができる。そのため、aは0~50とするが、0~40が好ましく、0~30が最も好ましい。
【0041】
bを1以上とすることで、きしみ感を抑えてしっとり感を高め、重ね塗り後の洗浄性を向上させる。また、bを50以下とすることで、重ね塗り後のべたつき感を軽減させることができる。そのため、bは1~50とするが、10~40が好ましく、10~30が最も好ましい。
【0042】
a+bを10以上とすることで、きしみ感を抑え、しっとり感を向上することができる。そのためa+bは10以上とするが、20以上が最も好ましい。a+bの上限は特に限定されないが、50以下とすることが好ましい。
【0043】
aが0より大きい場合、炭素数3~4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基は、ランダム状またはブロック状に付加している。ブロック状に付加している場合の配列順は問わない。
【0044】
a/bを2以下とすることで、きしみ感を低減させ、しっとり感を向上させる他、シートの毛羽立ちを抑制することができる。そのため、a/bは2以下とするが、1.2以下が最も好ましい。a/bの下限値は0であるが、0.3以上としてもよい。
【0045】
炭素数3~4のオキシアルキレン基としては、オキシプロピレン基やオキシブチレン基が挙げられるが、オキシプロピレン基が最も好ましい。なお、式(1)で示されるアルキレンオキシド誘導体は、オキシプロピレン基およびオキシブチレン基のいずれか一方のみを有してもよいし、これらの双方を有してもよい。これらの双方を有するとき、オキシプロピレン基およびオキシブチレン基は、ランダム状およびブロック状のいずれであってもよい。ブロック状に付加している場合の配列順は問わない。
【0046】
本発明の成分(D)は、グリセリンの三つの水酸基のうち、一位の水酸基にアルキレンオキシドが付加したモノエーテル構造を有する。モノエーテル体純度は80%以上であり、90%以上が好ましく、95%以上が更に好ましい。モノエーテル体純度の上限は特に限定されないが、100%以下とすることができる。
【0047】
モノエーテル体純度はH-NMR測定で得られるピーク積分値を使用して、下記式より算出できる。
【数1】
【0048】
xは、モノエーテル体のみに検出されるグリセリン2位メチン基に由来する約3.3ppmのビーク積分値を1とした際のエチレンオキシドが付加したグリセリン1,3位メチレン基に由来する約2.4ppmのピーク積分値を示す。但し、モノエーテル体のグリセリン2位メチン基に由来する約3.3ppmのピーク積分値が検出できない場合は、モノエーテル体純度を0とする。
【0049】
本発明の式(1)で示されるアルキレンオキシド誘導体は、公知の方法で製造することができる。アルキルアルコール、例えばグリセリンの一位水酸基以外を保護したイソプロピリデングリコールに、アルカリ触媒下、50~160℃、0.5MPa(ゲージ圧)以下にてアルキレンオキシドを付加重合する。2種類以上のアルキレンオキシドを使用する場合、ランダム体の場合はあらかじめ2種類以上のアルキレンオキシドを混合した後に付加重合し、ブロック体の場合は、AOを重合した後にEOを重合しても、EOを重合した後にAOを重合してもよい。その後、塩酸、リン酸、酢酸などの酸を添加し、脱アセタール化を行い、過剰の酸を水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどの塩基にて中和し、さらに水分および中和塩を除去することでアルキレンオキシド誘導体を得ることができる。
【0050】
本発明に使用される成分(D)の添加濃度は、0.1~10%が好ましく、0.5~8%がより好ましく、1~5%が特に好ましい。(D)成分の含有量を多くすることで、きしみ感を軽減したり、重ね塗り後の洗浄性の低下を抑制したり、シートの毛羽立ちを生じにくくしたりすることができる。(D)成分の含有量を過剰としないことで、重ね塗り後のべたつきを軽減にくくすることができる。
【0051】
(E)(メタ)アクリル系共重合体
(E)成分は、下記の式(I)で表される構成単位と下記の式(II)で表される構成単位とを含む(メタ)アクリル系共重合体である。
【0052】
【化5】
【0053】
式(I)において、Rは水素原子又はメチル基を表し、当該共重合体の安定性の点からメチル基が好ましい。Rは-(CH-を表し、nは1~4の整数である。すなわち、Rは、-(CH)-、-(CH-、-(CH-、-(CH-のいずれかであり、入手および合成のし易さから-(CH-が好ましい。
【0054】
式(I)の構成単位を形成する単量体の具体例としては、例えば、グリセロール-1-メタクリロイルオキシエチレンウレタン、グリセロール-1-メタクリロイルオキシプロピレンウレタン等が挙げられる。入手および合成のし易さから、グリセロール-1-メタクリロイルオキシエチレンウレタンが好ましい。
【0055】
式(I)の構成単位を形成する単量体は公知の方法で合成することができる。例えば、特開2007-119374号公報等に記載の方法又はそれに準ずる方法によって合成することができる。具体的方法としては、例えば、環状アセタールと(メタ)アクリロイルオキシアルキレンイソシアネートとをウレタン化反応させて得られる化合物を、ウレタン化反応用触媒の存在下に、水含有溶媒中で加水開環反応させる方法等が挙げられる。
【0056】
【化6】
【0057】
式(II)において、Rは水素原子又はメチル基を表し、当該共重合体の安定性の点から、メチル基が好ましい。2価の連結基であるLはフェニレン、シクロヘキシレン、-C(=O)-O-、-O-、-C(=O)-NH-、-O-C(=O)-、又は-O-C(=O)-O-を表し、中でも、-O-が好ましい。Lは炭素数10~22、好ましくは15~20の直鎖又は分岐アルキル基を表し、例えば、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。
【0058】
式(II)の構成単位を形成する単量体の具体例としては、例えば、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられ、中でも、ステアリル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0059】
成分(E)における式(I)の構成単位と式(II)の構成単位のモル比(I/II)は90/10~30/70である。この範囲よりも式(I)の構成単位の割合を少なくすることで、水性日焼け止め化粧料の重ね塗り後のべたつき感を軽減し、シート状日焼け止め化粧料の毛羽立ちを抑制することができる。この範囲よりも式(II)の構成単位の割合を少なくすることで、成分(E)の水への溶解性を向上させてシートに含浸させやすくすることができる。以上の点から、当該モル比(I/II)は80/20~40/60が好ましく、より好ましくは70/30~50/50である。
【0060】
成分(E)の(メタ)アクリル系共重合体は、式(I)の構成単位及び式(II)の構成単位以外に、他の構成単位を含むことができる。そのような他の構成単位を形成する単量体としては、例えば、イソボルニルメタクリレート、メタクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。成分(E)の(メタ)アクリル系共重合体他の構成単位の含有量は、式(I)の構成単位と式(II)の構成単位の合計量に対して、10モル%以下であることが好ましく、0モル%以上10モル%以下であることがより好ましく、共重合体が式(I)の構成単位及び式(II)の構成単位以外の他の構成単位を含む場合、0モル%より多く10モル%以下であることが好ましい。
【0061】
成分(E)の(メタ)アクリル系共重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよいが、ランダム共重合体が好ましい。
【0062】
成分(E)の共重合体の重量平均分子量(Mw)は、シートへの染み拡がり易さや配合し易さの点から、5000~500000であることが好ましく、より好ましくは10000~200000である。なお、成分(E)は取扱い易くするために、水性日焼け止め化粧料の調製時に、グリセリンや1,3-ブチレングリコール等の多価アルコールで希釈したものを用いることができる。これらの多価アルコールは、水性日焼け止め化粧料にそのまま含まれていてもよい。
【0063】
なお、共重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリエチレングリコール換算)で測定される。GPC法による重量平均分子量は、0.5質量%の臭化リチウムを含むメタノール/クロロホルム混合溶媒(6/4(体積比))を用いて試料溶液を調製し、標準ポリエチレングリコールの検量線を用いて算出することができる。
【0064】
成分(E)は、式(I)の構成単位となる単量体及び式(II)の構成単位となる単量体を少なくとも含む単量体組成物を用いて、公知の方法により重合して調製することができる。例えば、上記の構成単位のモル比(I/II)を満たす単量体組成物を調製し、ラジカル重合開始剤の存在下、窒素等の不活性ガス雰囲気において溶液重合を行なうことにより調製することができる。
【0065】
また、成分(E)を調製する代わりに、市販の製品を用いることもできる。成分(E)の市販品としては、例えば、日油株式会社製「CERACUTE-L」等が挙げられる。
【0066】
なお、この市販品(商品名「CERACUTE-L」)は(A)成分をグリセリン及び1,3-ブチレングリコールで希釈した製品であり、(E)成分としてグリセリル-N-(2-メタクリロイルオキシエチル)カルバメート・メタクリル酸ステアリル共重合体を含有する。
【0067】
本発明の水性日焼け止め化粧料における成分(E)成分の含有量は、0.001~1質量%であり、好ましくは0.005~0.1質量%、さらに好ましくは0.01~0.05質量%である。水性日焼け止め化粧料のきしみ感を軽減し、しっとり感を向上させ、重ね塗り後の洗浄性を向上させる観点、およびシート状日焼け止め化粧料の毛羽立ちを抑制する観点から、(E)成分がこの範囲にあることが好ましい。
【0068】
さらに、本発明の水性日焼け止め化粧料においては、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、化粧料、医薬部外品、医薬品等に使用される添加剤を含有してもよい。例えば、嗜好性を高める目的で、天然香料、合成香料を加えることができる。天然香料は、植物の花、幹、葉、果物、果皮、根から水蒸気蒸留法などで得られる精油であり、分離された水も芳香水として使用できる。合成香料は、エステル、エーテル、アルデヒド、ケトン、芳香族アルコール、炭化水素など特に制限はない。また添加剤としては、例えば、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類;ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン類;ソルビトール、マルチトール等の糖アルコール類;炭化水素油、エステル油、シリコーン油、植物油等の油剤;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;乳糖、ショ糖等の糖類;アシルメチルタウリン塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アミドエーテル硫酸エステル塩等の陰イオン性界面活性剤;クエン酸塩、リンゴ酸塩、食塩等の有機又は無機塩類;pH調製剤としての酸、アルカリ;パラベン類;防腐剤;動植物由来のエキス;ビタミン類;アミノ酸類;色素;顔料(ただし、成分(A)を除く);紫外線吸収剤などが挙げられる。なお、これらの成分のうちに成分(B)~成分(E)に該当するものがある場合、それらの成分は成分(B)~成分(E)として取り扱う。
【0069】
本発明の水性日焼け止め化粧料は、上記の各成分が、水中に溶解または分散してなる。水としては、例えば、精製水、水道水、工業用水、脱イオン水等が挙げられる。本発明における水の含有量は、水性日焼け止め化粧料の全質量に対して、通常、30~95質量%であり、好ましくは35~93質量%、さらに好ましくは40~90質量%である。
【0070】
[シート状日焼け止め化粧料]
本発明の水性日焼け止め化粧料は、シート基wに含浸することでシート状日焼け止め化粧料としても好適に用いることができる。最近、持ち運びの手軽さや耳や首筋など塗布しづらい場所でも手を汚さず手軽に使えることから、日焼け止め化粧料を不織布等に含浸させたシート状の日焼け止め化粧料が注目されている。
【0071】
シート状日焼け止め化粧料では、均一に分散した紫外線散乱剤を含む日焼け止め化粧料をシート全体に十分に含浸できないと、紫外線防御効果を十分に発揮できない。しかし、紫外線散乱剤の分散性を向上させるために配合される高分子類により、シートへの染み拡がり易さが阻害されてしまうことがあった。また、紫外線散乱剤やきしみ感を軽減するために配合される感触改良粉体により、使用中に塗布中にシートが毛羽立ちやすくなり、使用性が低下してしまうことがあった。
【0072】
本発明の水性日焼け止め化粧料は、きしみ感がなく、しっとり感があり、また重ね塗りした際でもべたつきが少なく、さらに重ね塗り後の洗浄性が高いことに加え、含浸シートに染み拡がり易く、塗布時の毛羽立ちを抑制することができる。
【0073】
本発明の日焼け止め化粧料は、シート基材に含浸させて本発明のシート状日焼け止め化粧料を調製することができる。言い換えれば、本発明のシート状日焼け止め化粧料は、シート基材と、前記シート基材に含浸された本発明の水性日焼け止め化粧料とを含む。
【0074】
シート基材としては、化粧用のコットンや種々の材質が用いられ、例えば、コットン、紙、不織布、織布が挙げられる。シート基材は積層体であってもよく、例えば、織布の積層体、不織布の積層体、織布と不織布の積層体などであってもよい。シート基材は、使用感、加工のしやすさ等の観点から、不織布を含むシートが好ましく、より好ましくは不織布により調製されたシートである。
【0075】
不織布としては、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド不織布、ニードルパンチ不織布、スティッチボンド不織布などが挙げられる。不織布や織布を構成する繊維としては、例えば、木材繊維などの天然繊維;アクリル、レーヨン、ポリエステル、セルロース、アセテートなどの合成繊維;プロミックスなどの半合成繊維などが挙げられる。
【0076】
シート基材の目付は、例えば、20~100g/mであり、好ましくは25~80g/mである。目付が上記範囲内であると、肌を拭く際に、シート基材が丸まらず使用感に優れる。また、単位面積あたりの水性日焼け止め化粧料の含浸量が多くなる。これにより、肌の広範囲に使用する場合にも十分な効果が得られ、またボディ用のシート状日焼け止め化粧料として用いる場合の使用性がより一層向上する。
【0077】
シート基材は、織布や不織布等の種類に応じて、公知または慣用の製造方法により製造することができる。また、シート基材は市販品を用いることもできる。
【0078】
シート状水性日焼け止め化粧料において、上記シート基材に含浸された本発明の水性日焼け止め化粧料の含有量は、特に限定されないが、シート基材100質量部に対して、100~1000質量部であることが好ましく、200~800質量部であることがより好ましく、200~500質量部であることが更に好ましい。
【0079】
シートの平面形状は、例えば、四辺形(例えば、正方形、長方形等)、三辺形等の多辺形;円形、楕円形、半円形;三日月形;樽形;鼓形などが挙げられる。シートには、切れ込み部、くり抜き部、凹凸部などの成型が施されていてもよい。シートの片面の表面積は、使用性、携帯性、包装性などの観点から、例えば、100~3000cmであり、好ましくは150~1000cmである。
【0080】
シート状日焼け止め化粧料は、上記シート基材に本発明の水性日焼け止め化粧料を含浸させることにより製造することができる。シート基材に本発明の水性日焼け止め化粧料を含浸させる方法としては、例えば、折りたたまれた状態のシート基材に本発明の水性日焼け止め化粧料を注入し含浸させる方法、シート基材に本発明の水性日焼け止め化粧料をスプレーする方法、印刷法を用いてシート基材に本発明の水性日焼け止め化粧料を含浸させる方法、本発明の水性日焼け止め化粧料を含有する溶液中にシート基材を浸す方法などが挙げられる。
【0081】
なお、シート状日焼け止め化粧料は、含浸させた後に水性日焼け止め化粧料の一部が揮発等していてもよい。このときも、揮発等した液体成分以外の成分の組成比は、水性日焼け止め化粧料中の組成比と同様である。
【実施例0082】
<合成例1:実施例化合物D-1>
イソプロピリデングリコール100gと触媒としてカリウムtert-ブトキシド0.5gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら130℃で触媒を溶解した。引続き、130℃、0.2~0.5MPa(ゲージ圧)にて、滴下装置によりエチレンオキシド866gを滴下し、1時間攪拌した。その後、オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸でpH3とし、脱アセタール化を行った。その後、水酸化カリウムで中和し、減圧-0.095MPa(ゲージ圧)、100℃で3時間処理することで含有する水分を除去し、濾過を行い、実施例化合物D-1を得た。
【0083】
<合成例2~3:実施例化合物D-2、比較例化合物D’-1>
エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドの各付加量を変更したこと以外は、合成例1と同様の方法にて、実施例化合物D-2、比較例化合物D’-1を得た。ただし、実施例化合物A-2のようなブロック付加体の場合、プロピレンオキシドを所定の付加モル数になるよう滴下装置により滴下することにより反応させた後、エチレンオキシドを所定の付加モル数になるよう滴下装置により滴下することにより反応を行った。また、実施例化合物D’-1のようなランダム付加体の場合、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとをあらかじめ混合し、滴下装置により滴下し反応を行った。
【0084】
また、JIS K1557-1に準じた水酸基価測定によって得られる水酸基価からエチレンオキシドおよびプロピレンオキシド、ブチレンオキシド付加物の数平均分子量を求め、その数平均分子量から式(1)におけるa、bの値を特定した。実施例化合物A-1~A-7、比較例化合物A’-1~A’-4の、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシド、ブチレンオキシドの各平均付加モル数の合計などを表1に示す。なお、表1の「AO」は式(1)に示すアルキレンオキシド誘導体が有するオキシアルキレン基(AO)の種類を示し、「PO」はオキシプロピレン基を表す。
【0085】
【表1】
【0086】
[水性日焼け止め化粧料についての実験およびその結果]
実施例1~10および比較例1~5の水性日焼け止め化粧料を調製し、以下通り評価した。
【0087】
成分(A)~(D)、(D′)、(E)、その他成分を、表2(実施例)、表3(実施例)、表4(比較例)および表5(共通成分)に示す組成で、水性日焼け止め化粧料として調製し、「紫外線防御効果」、「きしみ感のなさ」、「しっとり感」、「重ね塗り後のべたつき感のなさ」、「重ね塗り後の洗浄性」の5項目を評価項目として、以下に記載する評価基準により評価した。
【0088】
・紫外線防御効果
得られた水性日焼け止め化粧料を、PMMA板に2mg/cm塗布後、遮光条件下で20分静置したサンプルについて、SPFアナライザー(Labsphere社製UV-2000S)を用いたSPF測定を行った。
〇:SPF値が10以上であり、紫外線防御効果が十分である場合。
×:SPF値が10未満であり、紫外線防御効果が十分でない場合。
【0089】
・きしみ感のなさ
20名の女性(25~45才)をパネラーとし、水性日焼け止め化粧料(0.3g)を腕の内側に塗布し、手でなじませた時のきしみ感について、下記の基準で評価した。詳細には、20名の合計点が35点以上の場合を「◎」(優良)とし、25~34点の場合を「○」(良)、15~24点の場合を「△」(可)、14点以下の場合を「×」(不良)とした。また本評価において、「◎」(優良)と「○」(良)のものを合格とし、「△」(可)と「×」(不良)のものを不合格とした。
2点:肌なじみがよく、きしみ感がないと感じた場合。
1点:肌なじみはよいが、少しきしみ感を感じた場合。
0点:肌なじみがわるく、きしみ感があると感じた場合。
【0090】
・しっとり感
20名の女性(25~45才)をパネラーとし、水性日焼け止め化粧料(0.3g)を腕の内側に塗布し、手でなじませた後のしっとり感について、下記の基準で評価した。詳細には、20名の合計点が35点以上の場合を「◎」(優良)とし、25~34点の場合を「○」(良)、15~24点の場合を「△」(可)、14点以下の場合を「×」(不良)とした。また本評価において、「◎」(優良)と「○」(良)のものを合格とし、「△」(可)と「×」(不良)のものを不合格とした。
2点:カサカサ感がなく、しっとり感が十分あると感じた場合。
1点:カサカサ感は無いが、しっとり感がやや物足りないと感じた場合。
0点:カサカサ感があり、しっとり感がないと感じた場合。
【0091】
・重ね塗りした後のべたつき感のなさ
20名の女性(25~45才)をパネラーとし、水性日焼け止め化粧料(2g)を肘から手首にかけて塗り広げて使用し、自然乾燥(約5分)させた後、さらに水性日焼け止め化粧料を重ね塗りし、3回繰り返した後のべたつき感について、下記の基準で評価した。詳細には、20名の合計点が35点以上の場合を「◎」(優良)とし、25~34点の場合を「○」(良)、15~24点の場合を「△」(可)、14点以下の場合を「×」(不良)とした。また本評価において、「◎」(優良)と「○」(良)のものを合格とし、「△」(可)と「×」(不良)のものを不合格とした。
2点:しっとり感が感じられ、不快なべたつき感を感じない場合。
1点:しっとり感が感じられるが、やや不快なべたつき感を感じる場合。
0点:不快なべたつき感を感じる場合。
【0092】
・重ね塗り後の洗浄性
20名の女性(25~45才)をパネラーとし、水性日焼け止め化粧料(2g)を肘から手首にかけて塗り広げて使用し、自然乾燥(約5分)させた後、さらに水性日焼け止め化粧料を重ね塗りし、3回繰り返した。その後、塗布部位をボディソープで擦り洗いし、水洗して乾燥させた後の肌状態から洗浄性について下記の基準で評価した。詳細には、20名の合計点が35点以上の場合を「◎」(優良)とし、25~34点の場合を「○」(良)、15~24点の場合を「△」(可)、14点以下の場合を「×」(不良)とした。また本評価において、「◎」(優良)と「○」(良)のものを合格とし、「△」(可)と「×」(不良)のものを不合格とした。
2点:洗浄後の肌にべたつき感が感じられなかった場合。
1点:洗浄後の肌にややべたつき感が感じられた場合。
0点:洗浄後の肌にべたつき感が感じられた場合。
【0093】
実施例1~10および比較例1~5の組成および評価結果を表2~表4に示す。なお、表2~表4に記載した組成は、全体の質量に対する各成分の比率(質量%)を示す。水性日焼け止め化粧料に共通する成分の組成を表5に示す。なお、表5に記載した組成は、表2~表4に記載した組成の全体の質量に対する、各成分の比率(質量%)を示す。
【0094】
なお、日焼け止め化粧料に使用した材料は以下の通りである。
ハイドロゲンジメチコン・シリカ処理酸化亜鉛:(平均一次粒子径35nm)
トリエトキシカプリリルシラン・イソステアリン酸処理酸化亜鉛:(平均一次粒子径35nm)
水酸化アルミニウム・ステアリン酸処理酸化チタン:(平均一次粒子径15nm)
ハイドロゲンジメチコン・シリカ処理酸化チタン:(平均一次粒子径15nm)
ステアリン酸ポリグリセリル・シリカ処理酸化チタン:(平均一次粒子径15nm)
クインスシードエキス:(大日本化成株式会社製「クインスシード2SP」)
水溶性プロテオグリカン(アラビアガム由来。日油株式会社製「プロテオグリカン(植物)」)
ポリメタクリル酸メチル球状粉体(松本油脂製薬株式会社製「マツモトマイクロスフェアー(商標登録)―M」、平均粒子径5~20nm)
メタクリル酸メチルクロスポリマー球状粉体(松本油脂製薬株式会社製「マツモトマイクロスフェアー(商標登録)―M305」、平均粒子径5~20nm)
グリセリル-N-(2-メタクリロイルオキシエチル)カルバメート・メタクリル酸ステアリル共重合体(日油株式会社製「Ceracute(商標登録)-L」。モル比(I/II)は60/40)
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】
【表4】
【0098】
【表5】
【0099】
実施例1~10については、いずれのサンプルにおいても、きしみ感がなく、しっとり感があり、また重ね塗りした際でもべたつきがなく、さらに重ね塗り後の洗浄性が高い水性日焼け止め化粧料であった。
【0100】
一方、比較例1~6については、十分な効果は得られなかった。
【0101】
すなわち、比較例1では、成分(A)が多く含まれ、更に成分(B)が1%より多く配合されていたため、SPFは十分であったが、きしみ感や乾燥感が強く、しっとり感が不十分だった。また、重ね塗り後のべたつき感が出たり、重ね塗り後の洗浄性が不十分だったりした。比較例2では、成分(B)が配合されず、また成分(D)が10%より多く配合されたため、きしみ感が出たり、しっとり感が低下し、さらに重ね塗り後のべたつき感が出てしまったりした。比較例3では、成分(C)が配合されず、きしみ感が出たり、重ね塗り後のべたつき感が出てしまったりした。比較例4では、成分(C)が5%超えて配合され、成分(D)の含有量が少なかったため、しっとり感が低下し、また重ね塗り後の洗浄性が低下してしまった。比較例5では、成分(D)としてa+bが10より小さい異なるアルキレンオキシド誘導体を配合したため、きしみ感がでてしまったり、しっとり感が低下してしまったりしていた。
【0102】
[シート状日焼け止め化粧料についての実験およびその結果]
実施例11~20および比較例6~8の水性日焼け止め化粧料を調製し、シート(KP9340P:材料レーヨン/パルプ、目付40g/m)に含浸させたシート状日焼け止め化粧料について、以下の通り評価した。
【0103】
・シートへの染み拡がり易さ
水性日焼け止め化粧料(3.6g)に2cm×20cmの短冊状にカットしたシートの端部を浸し、5分間静置したときに水性日焼け止め化粧料が染み込んだ部位の上端と液面との距離(cm)から、シートへの染み拡がり易さを下記の基準で評価した。本評価において、〇のものを合格とした。
○:末端から染み込んだ距離は5cmより長かった場合。
△:末端から染み込んだ距離は3cm以上5cm以下だった場合。
×:末端から染み込んだ距離は3cm未満だった場合。
【0104】
・シートの毛羽立ち抑制
20名の女性(25~45才)をパネラーとし、水性日焼け止め化粧料(3.6g)を染み込ませたシート(15cm×20cm)を肘から手首にかけて擦らせて、水性日焼け止め化粧料を塗り広げ、シートの含浸液を感じなくなった後のシートの毛羽立ち抑制について下記の基準で評価した。詳細には、20名の合計点が35点以上の場合を「◎」(優良)とし、25~34点の場合を「○」(良)、15~24点の場合を「△」(可)、14点以下の場合を「×」(不良)とした。また本評価において、「◎」(優良)と「○」(良)のものを合格とし、「△」(可)と「×」(不良)のものを不合格とした。
2点:シートに毛羽立ちはみられなかった場合。
1点:シートにやや毛羽立ちがみられた場合。
0点:シートに毛羽立ちがみられた場合。
【0105】
実施例11~20および比較例6~8の組成および評価結果を表6~表8に示す。なお、表6~表8に記載した組成は、全体の質量に対する各成分の比率(質量%)を示す。水性日焼け止め化粧料に共通する成分の組成は、表5に示されたものである。なお、表5に記載した組成は、表6~表8に記載した組成の全体の質量に対する、各成分の比率(質量%)を示す。
【0106】
また、日焼け止め化粧料に使用した材料は、表2~表4に記載したものと同様である。
【0107】
【表6】
【0108】
【表7】
【0109】
【表8】
【0110】
実施例11~20については、いずれのサンプルにおいても、シートに染み拡がり易く、シートの毛羽立ちも抑制されたシート状水性日焼け止め化粧料であった。
【0111】
一方、比較例6~8については、十分な効果は得られなかった。
【0112】
すなわち、比較例6では、成分(A)が多く含まれ、更に(B)成分が1%より多く配合されていたため、シートへ染み拡がりにくくなり、またシート毛羽立ち抑制効果も不十分であった。比較例7では、成分(B)が配合されず、また成分(D)が10%より多く配合されたため、シートの毛羽立ち抑制効果が不十分だった。比較例8では、成分(C)が5%より多く含まれ、また成分(D)が配合されなかったため、シートの毛羽立ち抑制効果が不十分だった。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明の水性日焼け止め化粧料は、顔や肌などの皮膚に適用することができ、従来の日焼け止め化粧料では得られない特有の効果、具体的には、紫外線散乱剤によるきしみを抑えて、乾燥感がなくしっとり感が感じられつつ、重ね塗りした際でもべたつきがなく、さらに重ね塗り後も肌にきしみ感が残らず洗浄性が高い効果を併せて奏することができる。さらに、本発明の水性日焼け止め化粧料は、シート剤に含浸した際にも、シートに染み拡がり易く、毛羽立ちが抑制されたシート状日焼け止め化粧料を提供することができるため、広く日焼け止め化粧料への応用が期待できる。