(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180031
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】人力駆動車用のリアスプロケット、および、人力駆動車用のリアスプロケットアセンブリ
(51)【国際特許分類】
B62M 9/10 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
B62M9/10 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093078
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】ブーン コーン リム
(72)【発明者】
【氏名】ウィ ブーン ノーマン ロイ
(57)【要約】
【課題】リアスプロケットの変速性能を確保できる人力駆動車用のリアスプロケット、および、人力駆動車用のリアスプロケットアセンブリを提供する。
【解決手段】リアスプロケットは、スプロケットボディと、複数のスプロケット歯と、複数の締結孔と、を備え、複数の締結孔のそれぞれは、リアスプロケットと隣接スプロケットとを互いに締結する締結部材を受けるように構成され、複数の締結孔のうちの2つの第1隣接締結孔は、回転中心軸心に関する周方向において第1ピッチ角度で配置され、複数の締結孔のうちの2つの第2隣接締結孔は、周方向において第2ピッチ角度で配置され、第2ピッチ角度は、第1ピッチ角度とは異なり、複数の締結孔のうちの2つの第3隣接締結孔は、周方向において第3ピッチ角度で配置され、第3ピッチ角度は、第1ピッチ角度および第2ピッチ角度のそれぞれとは異なる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動車用のリアスプロケットであって、
前記リアスプロケットは、軸方向外向面と、前記リアスプロケットの回転中心軸心に関する軸方向において、前記軸方向外向面とは反対側に設けられる軸方向内向面と、を有し、
前記軸方向内向面は、前記リアスプロケットが前記人力駆動車に取り付けられた取付状態において、前記軸方向における前記人力駆動車の軸方向中心面を向くように構成され、
前記リアスプロケットは、
スプロケットボディと、
前記回転中心軸心に関する径方向において、前記スプロケットボディから径方向外側に延びる複数のスプロケット歯と、
前記スプロケットボディに設けられる複数の締結孔と、を備え、
前記複数の締結孔のそれぞれは、前記リアスプロケットと隣接スプロケットとを互いに締結する締結部材を受けるように構成され、
前記隣接スプロケットは、前記軸方向において前記隣接スプロケットと前記リアスプロケットとの間に他のスプロケットが無いように隣接し、
前記複数の締結孔のうちの2つの第1隣接締結孔は、前記回転中心軸心に関する周方向において第1ピッチ角度で配置され、前記2つの第1隣接締結孔は、前記周方向において前記2つの第1隣接締結孔の間に前記複数の締結孔のうちの他の締結孔が無いように、互いに隣接し、
前記複数の締結孔のうちの2つの第2隣接締結孔は、前記周方向において第2ピッチ角度で配置され、前記第2ピッチ角度は、前記第1ピッチ角度とは異なり、前記2つの第2隣接締結孔は、前記周方向において前記2つの第2隣接締結孔の間に前記複数の締結孔のうちの他の締結孔が無いように、互いに隣接し、
前記複数の締結孔のうちの2つの第3隣接締結孔は、前記周方向において第3ピッチ角度で配置され、前記第3ピッチ角度は、前記第1ピッチ角度および前記第2ピッチ角度のそれぞれとは異なり、前記2つの第3隣接締結孔は、前記周方向において前記2つの第3隣接締結孔の間に前記複数の締結孔のうちの他の締結孔が無いように、互いに隣接する、リアスプロケット。
【請求項2】
前記2つの第1隣接締結孔は、第1孔中心軸心を有する第1締結孔と、第2孔中心軸心を有する第2締結孔と、を含み、
前記2つの第2隣接締結孔は、第3孔中心軸心を有する第3締結孔と、第4孔中心軸心を有する第4締結孔と、を含み、
前記2つの第3隣接締結孔は、第5孔中心軸心を有する第5締結孔と、第6孔中心軸心を有する第6締結孔と、を含み、
前記第1ピッチ角度は、前記第1孔中心軸心および前記回転中心軸心を通過する第1参照線と、前記第2孔中心軸心および前記回転中心軸心を通過する第2参照線と、によって定義され、
前記第2ピッチ角度は、前記第3孔中心軸心および前記回転中心軸心を通過する第3参照線と、前記第4孔中心軸心および前記回転中心軸心を通過する第4参照線と、によって定義され、
前記第3ピッチ角度は、前記第5孔中心軸心および前記回転中心軸心を通過する第5参照線と、前記第6孔中心軸心および前記回転中心軸心を通過する第6参照線と、によって定義される、請求項1に記載のリアスプロケット。
【請求項3】
前記複数のスプロケット歯は、駆動チェーンが隣接する小さいスプロケットから前記リアスプロケットに移動するダウンシフト動作を促進するように構成される複数のダウンシフト促進歯を含み、
前記複数のダウンシフト促進歯は、
前記ダウンシフト動作において駆動チェーンに最初に係合するように構成されるダウンシフト開始歯と、
ダウンシフト凹部歯と、を含み、
前記ダウンシフト凹部歯は、前記周方向において前記ダウンシフト開始歯と前記ダウンシフト凹部歯との間に前記複数のスプロケット歯のうちの他のスプロケット歯が無いように、前記リアスプロケットの駆動回転方向に関する前記ダウンシフト開始歯の下流側において前記ダウンシフト開始歯に隣接し、
前記ダウンシフト凹部歯は、前記軸方向において、前記軸方向外向面から前記軸方向内向面に向けて凹むように、前記ダウンシフト凹部歯の前記軸方向外向面に設けられるダウンシフト凹部を有し、
前記複数の締結孔は、前記ダウンシフト凹部と重なることを避けるように配置される、請求項1に記載のリアスプロケット。
【請求項4】
前記複数のスプロケット歯は、駆動チェーンが前記リアスプロケットから隣接する小さいスプロケットに移動するアップシフト動作を促進するように構成される複数のアップシフト促進歯を含み、
前記複数のアップシフト促進歯は、
前記アップシフト動作において駆動チェーンを隣接する小さいスプロケットに向かって変位させるように構成されるアップシフト変位歯と、
前記アップシフト動作において、駆動チェーンから最初に外れるように構成されるアップシフト開始歯と、
アップシフト凹部歯と、を含み、
前記アップシフト開始歯は、前記軸方向において前記軸方向外向面から前記軸方向内向面に向けて凹むように前記アップシフト開始歯の前記軸方向外向面に設けられる第1アップシフト凹部を有し、
前記アップシフト開始歯は、前記周方向において前記アップシフト開始歯と前記アップシフト変位歯との間に前記複数のスプロケット歯のうちの他のスプロケット歯が無いように、前記リアスプロケットの駆動回転方向に関する前記アップシフト変位歯の上流側において前記アップシフト変位歯に隣接し、
前記アップシフト凹部歯は、前記軸方向において前記軸方向外向面から前記軸方向内向面に向けて凹むように前記アップシフト凹部歯の前記軸方向外向面に設けられる第2アップシフト凹部を有し、
前記アップシフト凹部歯は、前記周方向において前記アップシフト凹部歯と前記アップシフト開始歯との間に前記複数のスプロケット歯のうちの他のスプロケット歯が無いように、前記リアスプロケットの駆動回転方向に関する前記アップシフト開始歯の上流側において前記アップシフト開始歯に隣接し、
前記複数の締結孔は、前記第1アップシフト凹部および前記第2アップシフト凹部と重なることを避けるように配置される、請求項1に記載のリアスプロケット。
【請求項5】
前記複数のスプロケット歯のそれぞれは、前記径方向における最大径方向長さと、前記軸方向における最大軸方向長さと、を有し、
前記最大径方向長さは、前記最大軸方向長さよりも大きい、請求項1に記載のリアスプロケット。
【請求項6】
人力駆動車用のリアスプロケットアセンブリであって、
請求項1から5のいずれか一項に記載の前記リアスプロケットであって、第1ピッチ円直径を有する前記リアスプロケットと、
前記第1ピッチ円直径よりも大きい第2ピッチ円直径を有する前記隣接スプロケットであって、前記リアスプロケットアセンブリの組立状態において、前記リアスプロケットと同軸になるように配置される前記隣接スプロケットと、を備える、リアスプロケットアセンブリ。
【請求項7】
前記隣接スプロケットは、
追加スプロケットボディと、
前記径方向において、前記追加スプロケットボディから径方向外側に延びる複数の追加スプロケット歯と、を備える、請求項6に記載のリアスプロケットアセンブリ。
【請求項8】
前記隣接スプロケットは、追加軸方向外向面と、前記軸方向において、前記追加軸方向外向面とは反対側に設けられる追加軸方向内向面と、を有し、
前記追加軸方向内向面は、前記取付状態において、前記軸方向における前記人力駆動車の前記軸方向中心面を向くように構成され、
前記複数の追加スプロケット歯は、駆動チェーンが前記リアスプロケットから前記隣接スプロケットに移動する追加ダウンシフト動作を促進するように構成される複数の追加ダウンシフト促進歯を含み、
前記複数の追加ダウンシフト促進歯は、
前記追加ダウンシフト動作において駆動チェーンに最初に係合するように構成される追加ダウンシフト開始歯と、
追加ダウンシフト凹部歯と、を含み、
前記追加ダウンシフト凹部歯は、前記周方向において前記追加ダウンシフト開始歯と前記追加ダウンシフト凹部歯との間に前記複数の追加スプロケット歯のうちの他の追加スプロケット歯が無いように、前記隣接スプロケットの駆動回転方向に関する前記追加ダウンシフト開始歯の下流側において前記追加ダウンシフト開始歯に隣接し、前記追加ダウンシフト凹部歯は、前記軸方向において、前記追加軸方向外向面から前記追加軸方向内向面に向けて凹むように、前記追加ダウンシフト凹部歯の前記追加軸方向外向面に設けられる追加ダウンシフト凹部を有する、請求項7に記載のリアスプロケットアセンブリ。
【請求項9】
前記複数の締結孔の少なくとも1つは、前記軸方向から見た場合に、前記周方向において前記追加ダウンシフト開始歯と前記追加ダウンシフト凹部歯との間に少なくとも一部が配置される、請求項8に記載のリアスプロケットアセンブリ。
【請求項10】
前記複数の追加スプロケット歯は、隣接歯を含み、
前記隣接歯は、前記周方向において前記追加ダウンシフト開始歯と前記隣接歯との間に前記複数の追加スプロケット歯のうちの他の追加スプロケット歯が無いように、前記隣接スプロケットの駆動回転方向に関する前記追加ダウンシフト開始歯の上流側において前記追加ダウンシフト開始歯に隣接し、
前記複数の締結孔の少なくとも1つは、前記軸方向から見た場合に、前記周方向において前記隣接歯と前記追加ダウンシフト凹部歯との間に少なくとも一部が配置される、請求項8に記載のリアスプロケットアセンブリ。
【請求項11】
前記複数の締結孔の少なくとも1つは、前記軸方向から見た場合に、前記周方向において前記隣接歯と前記追加ダウンシフト開始歯との間に少なくとも一部が配置される、
請求項10に記載のリアスプロケットアセンブリ。
【請求項12】
前記複数の追加スプロケット歯のそれぞれは、前記径方向における追加最大径方向長さと、前記軸方向における追加最大軸方向長さと、を有し、
前記追加最大径方向長さは、前記追加最大軸方向長さよりも大きい、請求項7に記載のリアスプロケットアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人力駆動車用のリアスプロケット、および、人力駆動車用のリアスプロケットアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、人力駆動車用のリアスプロケットを開示する。特許文献1のリアスプロケットは、変速性能を向上させるための構造と、複数の締結孔と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国特許出願公開第102328724号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の締結孔が変速性能を向上させるための構造に影響を与える位置に配置されると、人力駆動車用のリアスプロケットの変速性能の向上が抑制されるおそれがある。
【0005】
本開示の目的の1つは、リアスプロケットの変速性能を確保できる人力駆動車用のリアスプロケット、および、人力駆動車用のリアスプロケットアセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1側面に従うリアスプロケットは、人力駆動車用のリアスプロケットであって、前記リアスプロケットは、軸方向外向面と、前記リアスプロケットの回転中心軸心に関する軸方向において、前記軸方向外向面とは反対側に設けられる軸方向内向面と、を有し、前記軸方向内向面は、前記リアスプロケットが前記人力駆動車に取り付けられた取付状態において、前記軸方向における前記人力駆動車の軸方向中心面を向くように構成され、前記リアスプロケットは、スプロケットボディと、前記回転中心軸心に関する径方向において、前記スプロケットボディから径方向外側に延びる複数のスプロケット歯と、前記スプロケットボディに設けられる複数の締結孔と、を備え、前記複数の締結孔のそれぞれは、前記リアスプロケットと隣接スプロケットとを互いに締結する締結部材を受けるように構成され、前記隣接スプロケットは、前記軸方向において前記隣接スプロケットと前記リアスプロケットとの間に他のスプロケットが無いように隣接し、前記複数の締結孔のうちの2つの第1隣接締結孔は、前記回転中心軸心に関する周方向において第1ピッチ角度で配置され、前記2つの第1隣接締結孔は、前記周方向において前記2つの第1隣接締結孔の間に前記複数の締結孔のうちの他の締結孔が無いように、互いに隣接し、前記複数の締結孔のうちの2つの第2隣接締結孔は、前記周方向において第2ピッチ角度で配置され、前記第2ピッチ角度は、前記第1ピッチ角度とは異なり、前記2つの第2隣接締結孔は、前記周方向において前記2つの第2隣接締結孔の間に前記複数の締結孔のうちの他の締結孔が無いように、互いに隣接し、前記複数の締結孔のうちの2つの第3隣接締結孔は、前記周方向において第3ピッチ角度で配置され、前記第3ピッチ角度は、前記第1ピッチ角度および前記第2ピッチ角度のそれぞれとは異なり、前記2つの第3隣接締結孔は、前記周方向において前記2つの第3隣接締結孔の間に前記複数の締結孔のうちの他の締結孔が無いように、互いに隣接する。
第1側面のリアスプロケットによれば、変速性能を向上させるための構造の配置に応じて複数の締結孔を異なるピッチ角度で配置できるため、複数の締結孔が変速性能を向上させるための構造に影響を与える位置に配置されにくい。したがって、リアスプロケットの変速性能を確保できる。第1側面のリアスプロケットによれば、複数の締結孔を異なるピッチ角度で配置できるため、変速性能を向上させるための構造の配置の自由度に貢献できる。第1側面のリアスプロケットによれば、リアスプロケットの形状に応じて複数の締結孔を異なるピッチ角度で配置できるため、リアスプロケットの強度を確保できる。
【0007】
本開示の第1側面に従う第2側面のリアスプロケットにおいて、前記2つの第1隣接締結孔は、第1孔中心軸心を有する第1締結孔と、第2孔中心軸心を有する第2締結孔と、を含み、前記2つの第2隣接締結孔は、第3孔中心軸心を有する第3締結孔と、第4孔中心軸心を有する第4締結孔と、を含み、前記2つの第3隣接締結孔は、第5孔中心軸心を有する第5締結孔と、第6孔中心軸心を有する第6締結孔と、を含み、前記第1ピッチ角度は、前記第1孔中心軸心および前記回転中心軸心を通過する第1参照線と、前記第2孔中心軸心および前記回転中心軸心を通過する第2参照線と、によって定義され、前記第2ピッチ角度は、前記第3孔中心軸心および前記回転中心軸心を通過する第3参照線と、前記第4孔中心軸心および前記回転中心軸心を通過する第4参照線と、によって定義され、前記第3ピッチ角度は、前記第5孔中心軸心および前記回転中心軸心を通過する第5参照線と、前記第6孔中心軸心および前記回転中心軸心を通過する第6参照線と、によって定義される。
第2側面のリアスプロケットによれば、リアスプロケットの変速性能を確保しつつ、変速性能を向上させるための構造の配置の自由度に貢献できる。
【0008】
本開示の第1または第2側面に従う第3側面のリアスプロケットにおいて、前記複数のスプロケット歯は、駆動チェーンが隣接する小さいスプロケットから前記リアスプロケットに移動するダウンシフト動作を促進するように構成される複数のダウンシフト促進歯を含み、前記複数のダウンシフト促進歯は、前記ダウンシフト動作において駆動チェーンに最初に係合するように構成されるダウンシフト開始歯と、ダウンシフト凹部歯と、を含み、前記ダウンシフト凹部歯は、前記周方向において前記ダウンシフト開始歯と前記ダウンシフト凹部歯との間に前記複数のスプロケット歯のうちの他のスプロケット歯が無いように、前記リアスプロケットの駆動回転方向に関する前記ダウンシフト開始歯の下流側において前記ダウンシフト開始歯に隣接し、前記ダウンシフト凹部歯は、前記軸方向において、前記軸方向外向面から前記軸方向内向面に向けて凹むように、前記ダウンシフト凹部歯の前記軸方向外向面に設けられるダウンシフト凹部を有し、前記複数の締結孔は、前記ダウンシフト凹部と重なることを避けるように配置される。
第3側面のリアスプロケットによれば、複数の締結孔がダウンシフト凹部と重なることを避けるように配置されるため、複数のダウンシフト促進歯の変速性能が、複数の締結孔による影響を受けにくい。したがって、ダウンシフト動作において変速ショックが少ない円滑なダウンシフトが実現できる。
【0009】
本開示の第1から第3側面のいずれか1つに従う第4側面のリアスプロケットにおいて、前記複数のスプロケット歯は、駆動チェーンが前記リアスプロケットから隣接する小さいスプロケットに移動するアップシフト動作を促進するように構成される複数のアップシフト促進歯を含み、前記複数のアップシフト促進歯は、前記アップシフト動作において駆動チェーンを隣接する小さいスプロケットに向かって変位させるように構成されるアップシフト変位歯と、前記アップシフト動作において、駆動チェーンから最初に外れるように構成されるアップシフト開始歯と、アップシフト凹部歯と、を含み、前記アップシフト開始歯は、前記軸方向において前記軸方向外向面から前記軸方向内向面に向けて凹むように前記アップシフト開始歯の前記軸方向外向面に設けられる第1アップシフト凹部を有し、前記アップシフト開始歯は、前記周方向において前記アップシフト開始歯と前記アップシフト変位歯との間に前記複数のスプロケット歯のうちの他のスプロケット歯が無いように、前記リアスプロケットの駆動回転方向に関する前記アップシフト変位歯の上流側において前記アップシフト変位歯に隣接し、前記アップシフト凹部歯は、前記軸方向において前記軸方向外向面から前記軸方向内向面に向けて凹むように前記アップシフト凹部歯の前記軸方向外向面に設けられる第2アップシフト凹部を有し、前記アップシフト凹部歯は、前記周方向において前記アップシフト凹部歯と前記アップシフト開始歯との間に前記複数のスプロケット歯のうちの他のスプロケット歯が無いように、前記リアスプロケットの駆動回転方向に関する前記アップシフト開始歯の上流側において前記アップシフト開始歯に隣接し、前記複数の締結孔は、前記第1アップシフト凹部および前記第2アップシフト凹部と重なることを避けるように配置される。
第4側面のリアスプロケットによれば、複数の締結孔が、第1アップシフト凹部および第2アップシフト凹部と重なることを避けるように配置されるため、複数のアップシフト促進歯の変速性能は、複数の締結孔の影響を受けにくい。したがって、ダウンシフト動作において変速ショックが少ない円滑なアップシフトが実現できる。
【0010】
本開示の第1から第4側面のいずれか1つに従う第5側面のリアスプロケットにおいて、前記複数のスプロケット歯のそれぞれは、前記径方向における最大径方向長さと、前記軸方向における最大軸方向長さと、を有し、前記最大径方向長さは、前記最大軸方向長さよりも大きい。
第5側面のリアスプロケットによれば、最大軸方向長さを短くできるため、リアスプロケットアセンブリに含まれるスプロケットの枚数を多くできる。
【0011】
本開示の第6側面に従うリアスプロケットアセンブリは、人力駆動車用のリアスプロケットアセンブリであって、本開示の第1から第5側面のいずれか1つの前記リアスプロケットであって、第1ピッチ円直径を有する前記リアスプロケットと、前記第1ピッチ円直径よりも大きい第2ピッチ円直径を有する前記隣接スプロケットであって、前記リアスプロケットアセンブリの組立状態において、前記リアスプロケットと同軸になるように配置される前記隣接スプロケットと、を備える。
第6側面のリアスプロケットアセンブリによれば、変速性能を確保しつつ、強度に優れたリアスプロケットアセンブリを実現できる。
【0012】
本開示の第6側面に従う第7側面のリアスプロケットアセンブリにおいて、前記隣接スプロケットは、追加スプロケットボディと、前記径方向において、前記追加スプロケットボディから径方向外側に延びる複数の追加スプロケット歯と、を備える。
第7側面のリアスプロケットアセンブリによれば、変速性能を確保しつつ、強度に優れたリアスプロケットアセンブリを実現できる。
【0013】
本開示の第7側面に従う第8側面のリアスプロケットアセンブリにおいて、前記隣接スプロケットは、追加軸方向外向面と、前記軸方向において、前記追加軸方向外向面とは反対側に設けられる追加軸方向内向面とを有し、前記追加軸方向内向面は、前記取付状態において、前記軸方向における前記人力駆動車の前記軸方向中心面を向くように構成され、前記複数の追加スプロケット歯は、駆動チェーンが前記リアスプロケットから前記隣接スプロケットに移動する追加ダウンシフト動作を促進するように構成される複数の追加ダウンシフト促進歯を含み、前記複数の追加ダウンシフト促進歯は、前記追加ダウンシフト動作において駆動チェーンに最初に係合するように構成される追加ダウンシフト開始歯と、追加ダウンシフト凹部歯と、を含み、前記追加ダウンシフト凹部歯は、前記周方向において前記追加ダウンシフト開始歯と前記追加ダウンシフト凹部歯との間に前記複数の追加スプロケット歯のうちの他の追加スプロケット歯が無いように、前記隣接スプロケットの駆動回転方向に関する前記追加ダウンシフト開始歯の下流側において前記追加ダウンシフト開始歯に隣接し、前記追加ダウンシフト凹部歯は、前記軸方向において、前記追加軸方向外向面から前記追加軸方向内向面に向けて凹むように、前記追加ダウンシフト凹部歯の前記追加軸方向外向面に設けられる追加ダウンシフト凹部を有する。
第8側面のリアスプロケットアセンブリによれば、複数の追加ダウンシフト促進歯によって、追加ダウンシフト動作における変速ショックを減少できる。したがって、隣接スプロケットは、円滑な追加ダウンシフト動作ができる。
【0014】
本開示の第8側面に従う第9側面のリアスプロケットアセンブリにおいて、前記複数の締結孔の少なくとも1つは、前記軸方向から見た場合に、前記周方向において前記追加ダウンシフト開始歯と前記追加ダウンシフト凹部歯との間に少なくとも一部が配置される。
第9側面のリアスプロケットアセンブリによれば、締結部材によって、隣接スプロケットの径方向において締結部材に対応する、隣接スプロケットの箇所の軸方向における剛性が向上する。
【0015】
本開示の第8または第9側面に従う第10側面のリアスプロケットアセンブリにおいて、前記複数の追加スプロケット歯は、隣接歯を含み、前記隣接歯は、前記周方向において前記追加ダウンシフト開始歯と前記隣接歯との間に前記複数の追加スプロケット歯のうちの他の追加スプロケット歯が無いように、前記隣接スプロケットの駆動回転方向に関する前記追加ダウンシフト開始歯の上流側において前記追加ダウンシフト開始歯に隣接し、前記複数の締結孔の少なくとも1つは、前記軸方向から見た場合に、前記周方向において前記隣接歯と前記追加ダウンシフト凹部歯との間に少なくとも一部が配置される。
第10側面のリアスプロケットアセンブリによれば、締結部材によって、隣接スプロケットの径方向において締結部材に対応する、隣接スプロケットの箇所の軸方向における剛性を向上できる。
【0016】
本開示の第10側面に従う第11側面のリアスプロケットアセンブリにおいて、前記複数の締結孔の少なくとも1つは、前記軸方向から見た場合に、前記周方向において前記隣接歯と前記追加ダウンシフト開始歯との間に少なくとも一部が配置される。
第11側面のリアスプロケットアセンブリによれば、締結部材によって、隣接スプロケットの径方向において締結部材に対応する、隣接スプロケットの箇所の軸方向における剛性を向上できる。
【0017】
本開示の第7から第11側面のいずれか1つに従う第12側面のリアスプロケットアセンブリにおいて、前記複数の追加スプロケット歯のそれぞれは、前記径方向における追加最大径方向長さと、前記軸方向における追加最大軸方向長さと、を有し、前記追加最大径方向長さは、前記追加最大軸方向長さよりも大きい。
第12側面のリアスプロケットアセンブリによれば、追加最大軸方向長さを短くできるため、リアスプロケットアセンブリに含まれるスプロケットの枚数を多くできる。
【発明の効果】
【0018】
本開示の人力駆動車用のリアスプロケット、および、人力駆動車用のリアスプロケットアセンブリは、リアスプロケットの変速性能を確保しつつ、複数の締結孔の配置の自由度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態の人力駆動車用のリアスプロケットを備える人力駆動車用のリアスプロケットアセンブリを含む人力駆動車を示す模式図である。
【
図2】
図1の人力駆動車用のリアスプロケットアセンブリの側面図である。
【
図3】
図2の人力駆動車用のリアスプロケットの側面図である。
【
図5】
図3の複数のダウンシフト促進歯およびチェーンを示す平面図である。
【
図6】
図3の複数のアップシフト促進歯およびチェーンを示す平面図である。
【
図8】
図2の人力駆動車用のリアスプロケット、隣接スプロケット、および、締結部材の第1側面図である。
【
図9】
図1の人力駆動車用のリアスプロケット、隣接スプロケット、および、締結部材の第2側面図である。
【
図10】
図7の複数の追加ダウンシフト促進歯およびチェーンを示す平面図である。
【
図11】
図7の複数の追加アップシフト促進歯およびチェーンを示す平面図である。
【
図12】実施形態の人力駆動車用のリアスプロケットアセンブリにおいて、追加アップシフト動作によって、駆動チェーンが隣接スプロケットから人力駆動車用のリアスプロケットに移動しようとする状態の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
図1から
図12を参照して、実施形態に係る人力駆動車用のリアスプロケット30、および、人力駆動車用のリアスプロケットアセンブリ26について説明する。
図1に示される人力駆動車10は、少なくとも1つの車輪を有し、少なくとも人力駆動力によって駆動できる乗り物である。人力駆動車10は、例えばマウンテンバイク、ロードバイク、シティバイク、カーゴバイク、ハンドバイク、および、リカンベントなど種々の種類の自転車を含む。人力駆動車10が有する車輪の数は限定されない。人力駆動車10は、例えば1輪車および2輪以上の車輪を有する乗り物も含む。人力駆動車10は、人力駆動力のみによって駆動できる乗り物に限定されない。人力駆動車10は、人力駆動力だけではなく、電気モータの駆動力を推進に利用するE-bikeを含む。E-bikeは、電気モータによって推進が補助される電動アシスト自転車を含む。以下、実施形態において、人力駆動車10が自転車として説明される。
【0021】
本明細書において、以下の方向を示す用語「前(フロント)」、「後ろ(リア)」、「前方」、「後方」、「左」、「右」、「横」、「上方」、および、「下方」、並びに任意の他の類似の方向を示す用語は、人力駆動車10の基準位置(例えば、サドル、または、シート上)においてハンドルバーを向いたライダを基準に決定されるそれらの方向を指す。
【0022】
図1に示されるように、例えば、人力駆動車10は、クランク12と、フロントスプロケット14と、リアハブアセンブリ16と、駆動チェーン18と、を含む。フロントスプロケット14は、クランク12に取り付けられる。
【0023】
クランク12は、クランク軸20、および、一対のクランクアーム22を含む。一対のクランクアーム22の各々は、クランク軸20に取り付けられる。一対のクランクアーム22の各々には、ペダル24が回転可能に連結される。
【0024】
例えば、人力駆動車10は、リアスプロケットアセンブリ26を含む。例えば、リアハブアセンブリ16は、リアスプロケットアセンブリ26およびハブ軸28を含む。リアスプロケットアセンブリ26は、人力駆動車10のフレーム10Fに対して回転可能に、ハブ軸28に取り付けられる。ハブ軸28は、リアスプロケットアセンブリ26、および、人力駆動車10の後輪と一体回転するように構成される。
【0025】
リアスプロケットアセンブリ26は、それぞれ寸法の異なる複数のスプロケットを含む。複数のスプロケットの数は任意に選択できる。例えば、
図2に示されるリアスプロケットアセンブリ26は、10枚のスプロケットを含む。リアスプロケットアセンブリ26は、2枚以上、かつ、10枚未満のスプロケットを含んでもよく、11枚以上のスプロケットを含んでもよい。
【0026】
図5に示されるように、駆動チェーン18は、複数のローラ18A、複数のアウターリンク18B、および、複数のインナーリンク18Cを含む。アウターリンク18Bは、一対のアウタープレートが軸方向ADに並ぶように構成される。インナーリンク18Cは、一対のインナープレートが軸方向ADに並ぶように構成される。駆動チェーン18は、フロントスプロケット14およびリアスプロケットアセンブリ26に巻き掛けられる。駆動チェーン18は、ペダル24に加えられる人力駆動力を、フロントスプロケット14からリアスプロケットアセンブリ26に伝達する。リアスプロケットアセンブリ26は、ハブ軸28を介して、人力駆動力を人力駆動車10の後輪に伝達する。
【0027】
例えば、人力駆動車10は、リアディレイラをさらに含む。リアディレイラは、複数のスプロケットの1つに係合する駆動チェーン18を、複数のスプロケットの1つから他の1つに移動するように駆動チェーン18を移動させるシフト動作を実行する。
【0028】
図2に示されるように、本実施形態では、複数のスプロケットのうち、2番目に直径が大きいスプロケットを、リアスプロケット30として説明する。本実施形態では、複数のスプロケットのうち、もっとも直径が大きいスプロケットを隣接スプロケット70として説明する。隣接スプロケット70は、リアスプロケット30に隣接する。本実施形態では、複数のスプロケットのうち、3番目に直径が大きいスプロケットを、隣接小スプロケット26Aとして説明する。隣接小スプロケット26Aは、リアスプロケット30に隣接し、かつ、リアスプロケット30よりも小さい。
【0029】
図2に示されるように、例えば、リアスプロケットアセンブリ26は、リアスプロケット30と、隣接スプロケット70と、を備える。
図2は、組立状態におけるリアスプロケットアセンブリ26を示す。例えば、隣接スプロケット70は、リアスプロケットアセンブリ26の組立状態において、リアスプロケット30と同軸になるように配置される。隣接スプロケット70の回転中心軸心は、リアスプロケット30の回転中心軸心X1と一致する。
【0030】
図3に示されるように、例えば、リアスプロケット30は、第1ピッチ円直径D1を有する。第1ピッチ円直径D1は、駆動チェーン18をリアスプロケット30に仮想的に配置した状態において、駆動チェーン18のローラ18Aの中心軸心を通過する第1ピッチ円P1の直径である。
【0031】
図9に示されるように、例えば、隣接スプロケット70は、第2ピッチ円直径D2を有する。第2ピッチ円直径D2は、駆動チェーン18を隣接スプロケット70に仮想的に配置した状態において、駆動チェーン18のローラ18Aの中心軸心を通過する第2ピッチ円P2の直径である。例えば、第2ピッチ円直径D2は、第1ピッチ円直径D1よりも大きい。
【0032】
図1および
図4に示されるように、リアスプロケット30は、軸方向外向面30Aと、軸方向内向面30Bと、を有する。軸方向内向面30Bは、リアスプロケット30の回転中心軸心X1に関する軸方向ADにおいて、軸方向外向面30Aとは反対側に設けられる。軸方向内向面30Bは、取付状態において、軸方向ADにおける人力駆動車10の軸方向中心面CSを向くように構成される。例えば、人力駆動車10の軸方向中心面CSは、人力駆動車10の横方向の中心と実質的に一致する。取付状態は、リアスプロケット30が人力駆動車10に取り付けられた状態である。取付状態において、リアスプロケットアセンブリ26は組立状態である。取付状態において、隣接スプロケット70は、リアスプロケット30と同軸に配置される。
【0033】
図3に示されるように、リアスプロケット30は、スプロケットボディ32と、複数のスプロケット歯34と、複数の締結孔36と、を備える。例えば、スプロケットボディ32は、外側環状部32Aと、内側環状部32Bと、複数の連結アーム32Cと、を含む。外側環状部32Aは、内周部32Dと、外周部32Eと、を有する。内周部32Dは、外側環状部32Aのうち、取付状態においてハブ軸28を向く部分である。外周部32Eは、外側環状部32Aのうち、取付状態において回転中心軸心X1に関する径方向において内周部32Dとは反対側の部分である。内側環状部32Bは、リアハブアセンブリ16のスプロケット支持体と係合する複数のスプライン歯32Fを有する。複数の連結アーム32Cは、リアスプロケット30の回転中心軸心X1に関する径方向において、外側環状部32Aと内側環状部32Bとの間に位置する。
【0034】
図4から
図6に示されるように、複数のスプロケット歯34は、回転中心軸心X1に関する径方向において、スプロケットボディ32から径方向外側に延びる。複数のスプロケット歯34がアウターリンク18Bの一対のアウタープレートの間、および、インナーリンク18Cの一対のインナープレートの間に嵌まり込むことによって、リアスプロケット30が駆動チェーン18に係合する。例えば、各スプロケット歯34は、駆動面と、回転中心軸心X1に関する周方向CDにおいて駆動面の反対に設けられる非駆動面と、を有する。駆動面は、リアスプロケット30の駆動回転方向RD1において、スプロケット歯34の上流側に位置する側面である。リアスプロケット30が駆動回転方向RD1に回転する場合、各スプロケット歯34は、駆動面において駆動チェーン18のローラ18Aに係合する。
【0035】
図4に示されるように、例えば、複数のスプロケット歯34のそれぞれは、径方向における最大径方向長さL1と、軸方向ADにおける最大軸方向長さL2と、を有する。例えば、最大径方向長さL1は、スプロケットボディ32の外周部32Eから歯先までの長さである。例えば、最大軸方向長さL2は、軸方向外向面30Aから軸方向内向面30Bまでの長さである。最大径方向長さL1は、最大軸方向長さL2よりも大きい。
【0036】
図3に示されるように、複数の締結孔36は、スプロケットボディ32に設けられる。複数の締結孔36のそれぞれは、締結部材38を受けるように構成される。締結部材38は、リアスプロケット30と隣接スプロケット70とを互いに締結する。隣接スプロケット70は、軸方向ADにおいて隣接スプロケット70とリアスプロケット30との間に他のスプロケットが無いように隣接する。複数の締結孔36のそれぞれは、例えば、軸方向ADに延びる。複数の締結孔36のそれぞれは、スプロケットボディ32を軸方向ADに貫通する。例えば、締結部材38は、リベットを含む。締結部材38は、リアスプロケット30に対する隣接スプロケット70の位置を決定する。締結部材38のうちのリアスプロケット30と隣接スプロケット70とに挟まれる部分の外径は、例えば、締結孔36の内径よりも大きい。
【0037】
締結孔36の内径は、スプロケット歯34の最大軸方向長さL2よりも大きい。例えば、複数の締結孔36の内径は、互いに全て等しい。複数の締結孔36の内径は、少なくとも1つが他と異なっていてもよい。締結部材38の寸法は、締結部材38が受けられる締結孔36の寸法と対応する。
【0038】
複数の締結孔36のそれぞれは、中心軸心Cを有する。複数の締結孔36の中心軸心Cは、回転中心軸心X1に関する径方向において同じ位置に配置される。複数のピッチ角度は、複数の参照線Aのうちの、隣り合う2つの締結孔36のそれぞれと対応する2つの参照線Aのなす角度によって定義される。複数の参照線Aは、回転中心軸心X1と、複数の締結孔36のそれぞれの中心軸心Cと、を通過する。本実施形態では、複数の参照線Aは、14個の参照線Aを含み、14個のピッチ角度が定義される。
【0039】
複数の締結孔36は、例えば、少なくとも3つの締結孔36を含む。例えば、複数の締結孔36の数は、14である。本実施形態では、複数の締結孔36のうち、周方向CDにおいて複数の締結孔36のうちの他の締結孔36が無いように、互いに隣接する2つの締結孔36の組み合わせを、2つの隣接締結孔と定義する。複数の締結孔36は、2つの隣接締結孔を3組以上含む。例えば、複数の締結孔36は、2つの第1隣接締結孔40、2つの第2隣接締結孔42、および、2つの第3隣接締結孔44を含む。複数の締結孔36は、2つの隣接締結孔を4組以上含んでもよい。例えば、複数の締結孔36は、2つの第4隣接締結孔46をさらに含む。2つの隣接締結孔の組数は、3以上、かつ、複数の締結孔36の数以下である。本実施形態では、2つの隣接締結孔の組数は、14個である。
【0040】
2つの第1隣接締結孔40、2つの第2隣接締結孔42、および、2つの第3隣接締結孔44は、複数の締結孔36から任意に選択される。2つの第1隣接締結孔40、2つの第2隣接締結孔42、および、2つの第3隣接締結孔44は、自身に含まれる2つの締結孔36のうちの少なくとも1つが、他の2組と異なっていればよい。複数の締結孔36のうちの1つは、2つの第1隣接締結孔40のうちの1つであり、かつ、2つの第2隣接締結孔42のうちの1つであるように選択されてもよい。複数の締結孔36のうちの1つは、2つの第1隣接締結孔40のうちの1つであり、かつ、2つの第3隣接締結孔44のうちの1つであるように選択されてもよい。複数の締結孔36のうちの1つは、2つの第2隣接締結孔42のうちの1つであり、かつ、2つの第3隣接締結孔44のうちの1つであるように選択されてもよい。
【0041】
2つの第1隣接締結孔40は、周方向CDにおいて2つの第1隣接締結孔40の間に複数の締結孔36のうちの他の締結孔36が無いように、互いに隣接する。例えば、2つの第1隣接締結孔40は、第1締結孔40Aと、第2締結孔40Bと、を含む。例えば、第1締結孔40Aは、第1孔中心軸心C1を有する。例えば、第2締結孔40Bは、第2孔中心軸心C2を有する。
【0042】
複数の締結孔36のうちの2つの第1隣接締結孔40は、回転中心軸心X1に関する周方向CDにおいて第1ピッチ角度B1で配置される。例えば、第1ピッチ角度B1は、第1参照線A1と、第2参照線A2と、によって定義される。例えば、第1参照線A1は、第1孔中心軸心C1および回転中心軸心X1を通過する。例えば、第2参照線A2は、第2孔中心軸心C2および回転中心軸心X1を通過する。第1ピッチ角度B1は、第1参照線A1と第2参照線A2とのなす角度である。
【0043】
2つの第2隣接締結孔42は、周方向CDにおいて2つの第2隣接締結孔42の間に複数の締結孔36のうちの他の締結孔36が無いように、互いに隣接する。例えば、2つの第2隣接締結孔42は、第3締結孔42Aと、第4締結孔42Bと、を含む。例えば、第3締結孔42Aは、第3孔中心軸心C3を有する。例えば、第4締結孔42Bは、第4孔中心軸心C4を有する。
図3では、第3締結孔42Aである締結孔36は、第2締結孔40Bを兼ねるように選択される。
【0044】
複数の締結孔36のうちの2つの第2隣接締結孔42は、周方向CDにおいて第2ピッチ角度B2で配置される。例えば、第2ピッチ角度B2は、第3参照線A3と、第4参照線A4と、によって定義される。例えば、第3参照線A3は、第3孔中心軸心C3および回転中心軸心X1を通過する。例えば、第4参照線A4は、第4孔中心軸心C4および回転中心軸心X1を通過する。第2ピッチ角度B2は、第3参照線A3と第4参照線A4とのなす角度である。
【0045】
2つの第3隣接締結孔44は、周方向CDにおいて2つの第3隣接締結孔44の間に複数の締結孔36のうちの他の締結孔36が無いように、互いに隣接する。例えば、2つの第3隣接締結孔44は、第5締結孔44Aと、第6締結孔44Bと、を含む。例えば、第5締結孔44Aは、第5孔中心軸心C5を有する。例えば、第6締結孔44Bは、第6孔中心軸心C6を有する。
図3では、第5締結孔44Aである締結孔36は、第4締結孔42Bを兼ねるように選択される。
【0046】
複数の締結孔36のうちの2つの第3隣接締結孔44は、周方向CDにおいて第3ピッチ角度B3で配置される。例えば、第3ピッチ角度B3は、第5参照線A5と、第6参照線A6と、によって定義される。例えば、第5参照線A5は、第5孔中心軸心C5および回転中心軸心X1を通過する。例えば、第6参照線A6は、第6孔中心軸心C6および回転中心軸心X1を通過する。第3ピッチ角度B3は、第5参照線A5と第6参照線A6とのなす角度である。
【0047】
例えば、2つの第4隣接締結孔46は、周方向CDにおいて2つの第4隣接締結孔46の間に複数の締結孔36のうちの他の締結孔36が無いように、互いに隣接する。例えば、2つの第4隣接締結孔46は、第7締結孔46Aと、第8締結孔46Bと、を含む。例えば、第7締結孔46Aは、第7孔中心軸心C7を有する。例えば、第8締結孔46Bは、第8孔中心軸心C8を有する。本実施形態では、第8締結孔46Bである締結孔36は、第1締結孔40Aを兼ねるように選択される。
【0048】
複数の締結孔36のうちの2つの第4隣接締結孔46は、周方向CDにおいて第4ピッチ角度B4で配置される。例えば、第4ピッチ角度B4は、第7参照線A7と、第8参照線A8と、によって定義される。例えば、第7参照線A7は、第7孔中心軸心C7および回転中心軸心X1を通過する。例えば、第8参照線A8は、第8孔中心軸心C8および回転中心軸心X1を通過する。第4ピッチ角度B4は、第7参照線A7と第8参照線A8とのなす角度である。
【0049】
複数のピッチ角度は、例えば、3種類以上の値のピッチ角度を含む。例えば、複数のピッチ角度の値の種類の数は、3以上かつ複数のピッチ角度の数以下である。本実施形態では、複数のピッチ角度は、4種類の値のピッチ角度を含む。本実施形態の4種類の値のピッチ角度は、それぞれ、第1ピッチ角度B1、第2ピッチ角度B2、第3ピッチ角度B3、および、第4ピッチ角度B4と対応する。
【0050】
第2ピッチ角度B2は、第1ピッチ角度B1とは異なる。本実施形態では、第2ピッチ角度B2は、第1ピッチ角度B1よりも大きい。第3ピッチ角度B3は、第1ピッチ角度B1および第2ピッチ角度B2のそれぞれとは異なる。
図3では、第3ピッチ角度B3は、第1ピッチ角度B1および第2ピッチ角度B2のいずれよりも大きい。
図3では、第4ピッチ角度B4は、第1ピッチ角度B1、第2ピッチ角度B2、および、第3ピッチ角度B3のそれぞれとは異なる。
図3では、第4ピッチ角度B4は、第1ピッチ角度B1、第2ピッチ角度B2、および、第3ピッチ角度B3のいずれよりも大きい。
【0051】
図3では、複数のピッチ角度は、第1ピッチ角度B1、第2ピッチ角度B2、第3ピッチ角度B3、および、第4ピッチ角度B4に加えて、第5ピッチ角度B5、第6ピッチ角度B6、第7ピッチ角度B7、第8ピッチ角度B8、第9ピッチ角度B9、第10ピッチ角度B10、第11ピッチ角度B11、第12ピッチ角度B12、第13ピッチ角度B13、および、第14ピッチ角度B14を含む。
【0052】
図3では、第1ピッチ角度B1は13度であり、第2ピッチ角度B2は22度であり、第3ピッチ角度B3は34度であり、第4ピッチ角度B4は39度である。例えば、第6ピッチ角度B6、第10ピッチ角度B10、および、第14ピッチ角度B14は、第1ピッチ角度B1と同じ角度である。例えば、第7ピッチ角度B7および第11ピッチ角度B11は、第2ピッチ角度B2と同じ角度である。例えば、第5ピッチ角度B5、第8ピッチ角度B8、第9ピッチ角度B9、第12ピッチ角度B12、および、第13ピッチ角度B13は、第3ピッチ角度B3と同じ角度である。
【0053】
図1、
図3、および、
図5に示されるように、例えば、複数のスプロケット歯34は、複数のダウンシフト促進歯48を含む。例えば、複数のダウンシフト促進歯48は、ダウンシフト動作を促進するように構成される。例えば、ダウンシフト動作は、駆動チェーン18が隣接する小さいスプロケットからリアスプロケット30に移動する動作である。隣接する小さいスプロケットは、取付状態において、リアスプロケット30の軸方向外向面30A側に隣接する。例えば、駆動チェーン18は、ダウンシフト動作において、人力駆動車10のリアディレイラによって、隣接小スプロケット26Aからリアスプロケット30に移動させられる。
【0054】
例えば、複数のダウンシフト促進歯48は、ダウンシフト開始歯50と、ダウンシフト凹部歯52と、を含む。例えば、ダウンシフト開始歯50は、ダウンシフト動作において駆動チェーン18に最初に係合するように構成される。ダウンシフト開始歯50の歯先は、軸方向ADにおいて、ダウンシフト開始歯50の駆動面からダウンシフト開始歯50の非駆動面に向かって軸方向外向面30Aに近づくように傾斜する。
【0055】
例えば、ダウンシフト凹部歯52は、ダウンシフト動作において、駆動チェーン18が軸方向ADにおいて軸方向外向面30Aから軸方向内向面30Bに向かう方向に移動できるように構成される。例えば、ダウンシフト凹部歯52は、周方向CDにおいてダウンシフト開始歯50とダウンシフト凹部歯52との間に複数のスプロケット歯34のうちの他のスプロケット歯34が無いようにダウンシフト開始歯50に隣接する。例えば、ダウンシフト凹部歯52は、リアスプロケット30の駆動回転方向RD1に関するダウンシフト開始歯50の下流側においてダウンシフト開始歯50に隣接する。ダウンシフト凹部歯52の歯先は、軸方向ADにおいて、駆動面から非駆動面に向かって軸方向内向面30Bに近づくように傾斜する。
【0056】
例えば、ダウンシフト凹部歯52は、ダウンシフト凹部54を有する。例えば、ダウンシフト凹部54は、軸方向ADにおいて、軸方向外向面30Aから軸方向内向面30Bに向けて凹むように、ダウンシフト凹部歯52の軸方向外向面30Aに設けられる。例えば、ダウンシフト凹部54は、第1ダウンシフト凹部54Aと第2ダウンシフト凹部54Bとを含む。第2ダウンシフト凹部54Bの軸方向ADにおける深さは、第1ダウンシフト凹部54Aの軸方向ADにおける深さと異なるように設けられる。例えば、第2ダウンシフト凹部54Bの軸方向ADにおける深さは、第1ダウンシフト凹部54Aの軸方向ADにおける深さよりも大きい。第2ダウンシフト凹部54Bの軸方向ADにおける深さは、第1ダウンシフト凹部54Aの軸方向ADにおける深さと異ならないように設けられてもよい。例えば、第1ダウンシフト凹部54Aと第2ダウンシフト凹部54Bとは、段押し加工によって形成される。
【0057】
複数のダウンシフト促進歯48は、リアスプロケット30のダウンシフト領域を形成する。ダウンシフト領域には、ダウンシフト動作におけるリアスプロケット30の変速性能を向上させる構造として、ダウンシフト凹部54が形成される。リアスプロケット30には、複数のダウンシフト領域が形成される。複数のダウンシフト領域のそれぞれには、複数のダウンシフト促進歯48のうち、ダウンシフト開始歯50と、ダウンシフト凹部歯52と、が形成される。
図3のリアスプロケット30には、3つのダウンシフト領域が形成される。
【0058】
ダウンシフト動作における駆動チェーン18の動作について説明する。
ダウンシフト動作において、隣接小スプロケット26Aに係合する駆動チェーン18が、リアディレイラによって、リアスプロケット30のダウンシフト凹部歯52に向かって移動する。駆動チェーン18のインナーリンク18Cが第1ダウンシフト凹部54Aと対向する位置に移動し、かつ、駆動チェーン18のアウターリンク18Bが第2ダウンシフト凹部54Bと対向する位置に移動する。リアディレイラによって、駆動チェーン18は、リアスプロケット30に向かって移動し、かつ、ダウンシフト凹部54に沿って隣接小スプロケット26Aの径方向外側に誘導される。ダウンシフト開始歯50の歯先が、ダウンシフト開始歯50の駆動面からダウンシフト開始歯50の非駆動面に向かって、軸方向外向面30Aに近づくように傾斜しているため、ダウンシフト開始歯50に駆動チェーン18が嵌り込みやすい。径方向外側に誘導された駆動チェーン18に、ダウンシフト開始歯50の歯先が嵌まり込むことによって、ダウンシフト開始歯50が駆動チェーン18に係合する。その後、リアスプロケット30が駆動回転方向RD1に回転するにしたがって、駆動チェーン18が、隣接小スプロケット26Aから外れる。隣接小スプロケット26Aから外れた駆動チェーン18がリアスプロケット30に係合することによって、ダウンシフト動作が終了する。
【0059】
例えば、複数の締結孔36は、ダウンシフト凹部54と重なることを避けるように配置される。複数の締結孔36は、周方向CDにおいてダウンシフト凹部54と重ならないように配置される。例えば、複数の参照線Aが、ダウンシフト凹部54と重ならないように配置される。複数の締結孔36は、径方向においてダウンシフト凹部54と重なるように配置される。
【0060】
図1、
図3、および、
図6に示されるように、例えば、複数のスプロケット歯34は、複数のアップシフト促進歯56を含む。複数のアップシフト促進歯56は、アップシフト動作を促進するように構成される。アップシフト動作は、駆動チェーン18がリアスプロケット30から隣接する小さいスプロケットに移動する動作である。例えば、駆動チェーン18は、アップシフト動作において、人力駆動車10のリアディレイラによって、リアスプロケット30から隣接小スプロケット26Aに移動させられる。
【0061】
例えば、複数のアップシフト促進歯56は、アップシフト変位歯58と、アップシフト開始歯60と、アップシフト凹部歯62と、を含む。例えば、アップシフト変位歯58は、アップシフト動作において駆動チェーン18を隣接する小さいスプロケットに向かって変位させるように構成される。アップシフト変位歯58の歯先は、軸方向ADにおいて、アップシフト変位歯58の駆動面からアップシフト変位歯58の非駆動面に向かって軸方向内向面30Bに近づくように傾斜する。
【0062】
例えば、アップシフト開始歯60は、アップシフト動作において、駆動チェーン18から最初に外れるように構成される。例えば、アップシフト開始歯60は、周方向CDにおいてアップシフト開始歯60とアップシフト変位歯58との間に複数のスプロケット歯34のうちの他のスプロケット歯34が無いようにアップシフト変位歯58に隣接する。例えば、アップシフト開始歯60は、リアスプロケット30の駆動回転方向RD1に関するアップシフト変位歯58の上流側においてアップシフト変位歯58に隣接する。
【0063】
例えば、アップシフト開始歯60は、第1アップシフト凹部60Aを有する。例えば、第1アップシフト凹部60Aは、軸方向ADにおいて軸方向外向面30Aから軸方向内向面30Bに向けて凹むようにアップシフト開始歯60の軸方向外向面30Aに設けられる。第1アップシフト凹部60Aは、アップシフト開始歯60の駆動面からアップシフト開始歯60の非駆動面まで延びる。例えば、第1アップシフト凹部60Aは、段押し加工によって形成される。
【0064】
例えば、アップシフト凹部歯62は、アップシフト動作において、アップシフト開始歯60から外れた駆動チェーン18と係合しないように構成される。例えば、アップシフト凹部歯62は、周方向CDにおいてアップシフト凹部歯62とアップシフト開始歯60との間に複数のスプロケット歯34のうちの他のスプロケット歯34が無いようにアップシフト開始歯60に隣接する。例えば、アップシフト凹部歯62は、リアスプロケット30の駆動回転方向RD1に関するアップシフト開始歯60の上流側においてアップシフト開始歯60に隣接する。
【0065】
例えば、アップシフト凹部歯62は、第2アップシフト凹部62Aを有する。例えば、第2アップシフト凹部62Aは、軸方向ADにおいて軸方向外向面30Aから軸方向内向面30Bに向けて凹むようにアップシフト凹部歯62の軸方向外向面30Aに設けられる。第2アップシフト凹部62Aは、アップシフト凹部歯62の駆動面からアップシフト凹部歯62の非駆動面まで延びる。例えば、第2アップシフト凹部62Aは、段押し加工によって形成される。
【0066】
第2アップシフト凹部62Aの軸方向ADにおける深さは、第1アップシフト凹部60Aの軸方向ADにおける深さと異なるように設けられる。例えば、第2アップシフト凹部62Aの軸方向ADにおける深さは、第1アップシフト凹部60Aの軸方向ADにおける深さよりも小さい。第2アップシフト凹部62Aの軸方向ADにおける深さは、第1アップシフト凹部60Aの軸方向ADにおける深さと異ならないように設けられてもよい。
【0067】
複数のアップシフト促進歯56は、リアスプロケット30のアップシフト領域を形成する。アップシフト領域には、アップシフト動作におけるリアスプロケット30の変速性能を向上させる構造として、第1アップシフト凹部60Aおよび第2アップシフト凹部62Aが形成される。リアスプロケット30には、複数のアップシフト領域が形成される。複数のアップシフト領域のそれぞれには、複数のアップシフト促進歯56のうち、アップシフト変位歯58と、アップシフト開始歯60と、アップシフト凹部歯62と、が形成される。
図3のリアスプロケット30には、4つのアップシフト領域が形成される。
【0068】
アップシフト動作における駆動チェーン18の動作について説明する。
アップシフト動作において、リアスプロケット30に係合する駆動チェーン18が、リアディレイラによって、隣接小スプロケット26Aに向かって移動する。駆動チェーン18がアップシフト変位歯58に係合すると、アップシフト変位歯58の歯先が、アップシフト変位歯58の駆動面からアップシフト変位歯58の非駆動面に向かって、軸方向内向面30Bに近づくように傾斜するため、駆動チェーン18が隣接小スプロケット26Aに向けて寄せられる。第1アップシフト凹部60Aによってアップシフト開始歯60の歯先は軸方向内向面30Bに寄っているため、隣接小スプロケット26Aに向けて寄せられた駆動チェーン18は、アップシフト開始歯60から外れやすい。第2アップシフト凹部62Aによってアップシフト凹部歯62の歯先は、アップシフト開始歯60の歯先よりも軸方向内向面30Bに寄っている。したがって、アップシフト開始歯60から外れた駆動チェーン18は、アップシフト凹部歯62に係合しない。その後、リアスプロケット30が駆動回転方向RD1に回転するにしたがって、駆動チェーン18が、リアスプロケット30から外れる。リアスプロケット30から外れた駆動チェーン18が隣接小スプロケット26Aに係合することによって、アップシフト動作が終了する。
【0069】
例えば、複数の締結孔36は、第1アップシフト凹部60Aおよび第2アップシフト凹部62Aと重なることを避けるように配置される。複数の締結孔36は、例えば、第1アップシフト凹部60Aおよび第2アップシフト凹部62Aのいずれともと重なることを避けるように配置される。複数の締結孔36は、第1アップシフト凹部60Aおよび第2アップシフト凹部62Aの一部のみと重なることを避けるように配置されてもよい。複数の締結孔36は、周方向CDにおいて第1アップシフト凹部60Aおよび第2アップシフト凹部62Aと重ならないように配置される。例えば、複数の参照線Aが、第1アップシフト凹部60Aおよび第2アップシフト凹部62Aと重ならないように配置される。複数の締結孔36は、径方向において第1アップシフト凹部60Aおよび第2アップシフト凹部62Aと重ならないように配置される。
【0070】
図7に示されるように、例えば、隣接スプロケット70は、追加スプロケットボディ72と、複数の追加スプロケット歯74と、を備える。例えば、追加スプロケットボディ72は、追加外側環状部72Aと、複数の追加連結アーム72Bと、を含む。追加外側環状部72Aは、追加内周部72Cと、追加外周部72Dと、を有する。追加内周部72Cは、追加外側環状部72Aのうち、取付状態においてハブ軸28を向く部分である。追加外周部72Dは、追加外側環状部72Aのうち、取付状態において回転中心軸心X1に関する径方向において追加内周部72Cとは反対側の部分である。複数の追加連結アーム72Bは、回転中心軸心X1に関する径方向において、追加外側環状部72Aの内側に位置する。
【0071】
図7および
図10に示されるように、例えば、複数の追加スプロケット歯74は、径方向において、追加スプロケットボディ72から径方向外側に延びる。複数の追加スプロケット歯74がアウターリンク18Bの一対のアウタープレートの間、および、インナーリンク18Cの一対のインナープレートの間に嵌まり込むことによって、隣接スプロケット70が駆動チェーン18に係合する。例えば、各追加スプロケット歯74は、追加駆動面と、回転中心軸心X1に関する周方向CDにおいて追加駆動面の反対に設けられる追加非駆動面と、を有する。追加駆動面は、追加スプロケット歯74の駆動回転方向RD1において、追加スプロケット歯74の上流側に位置する側面である。隣接スプロケット70が駆動回転方向RD1に回転する場合、各追加スプロケット歯74は、追加駆動面において駆動チェーン18のローラ18Aに係合する。
【0072】
図4に示されるように、例えば、複数の追加スプロケット歯74のそれぞれは、径方向における追加最大径方向長さL3と、軸方向ADにおける追加最大軸方向長さL4と、を有する。例えば、追加最大径方向長さL3は、追加スプロケットボディ72の追加外周部72Dから歯先までの長さである。例えば、追加最大軸方向長さL4は、追加軸方向外向面70Aから追加軸方向内向面70Bまでの長さである。例えば、追加最大径方向長さL3は、追加最大軸方向長さL4よりも大きい。
【0073】
図8および
図9に示されるように、例えば、隣接スプロケット70は、複数の追加締結孔76を備える。複数の追加締結孔76のそれぞれは、締結部材38を受けるように構成される。複数の追加締結孔76は、軸方向ADにおいて複数の締結孔36に対応するように、追加スプロケットボディ72に設けられる。複数の締結部材38が締結孔36および追加締結孔76を貫通するように設けられることによって、隣接スプロケット70がリアスプロケット30に締結される。
【0074】
例えば、複数の追加締結孔76の数は、複数の締結孔36の数に応じて決定される。例えば、追加締結孔76の内径は、締結孔36の内径に等しい。例えば、複数の追加締結孔76は、14つの追加締結孔76を含む。例えば、複数の追加締結孔76の内径は、互いに全て等しい。複数の追加締結孔76の内径は、少なくとも1つが他と異なっていてもよい。
【0075】
図1および
図4に示されるように、例えば、隣接スプロケット70は、追加軸方向外向面70Aと、追加軸方向内向面70Bとを有する。例えば、追加軸方向内向面70Bは、軸方向ADにおいて、追加軸方向外向面70Aとは反対側に設けられる例えば、追加軸方向内向面70Bは、取付状態において、軸方向ADにおける人力駆動車10の軸方向中心面CSを向くように構成される。
【0076】
図1、
図7、および、
図10に示されるように、例えば、複数の追加スプロケット歯74は、複数の追加ダウンシフト促進歯78を含む。例えば、複数の追加ダウンシフト促進歯78は、追加ダウンシフト動作を促進するように構成される例えば、追加ダウンシフト動作は、駆動チェーン18がリアスプロケット30から隣接スプロケット70に移動する動作である。例えば、駆動チェーン18は、追加ダウンシフト動作において、人力駆動車10のリアディレイラによって、リアスプロケット30から隣接スプロケット70に移動させられる。
【0077】
例えば、複数の追加ダウンシフト促進歯78は、追加ダウンシフト開始歯80と、追加ダウンシフト凹部歯82と、を含む。例えば、追加ダウンシフト開始歯80は、追加ダウンシフト動作において駆動チェーン18に最初に係合するように構成される。追加ダウンシフト開始歯80の歯先は、軸方向ADにおいて、追加ダウンシフト開始歯80の追加駆動面から追加ダウンシフト開始歯80の追加非駆動面に向かって追加軸方向外向面70Aに近づくように傾斜する。
【0078】
例えば、追加ダウンシフト凹部歯82は、追加ダウンシフト動作において、駆動チェーン18が軸方向ADにおいて追加軸方向外向面70Aから追加軸方向内向面70Bに向かう方向に移動できるように構成される。例えば、追加ダウンシフト凹部歯82は、周方向CDにおいて追加ダウンシフト開始歯80と追加ダウンシフト凹部歯82との間に複数の追加スプロケット歯74のうちの他の追加スプロケット歯74が無いように追加ダウンシフト開始歯80に隣接する。例えば、追加ダウンシフト凹部歯82は、隣接スプロケット70の駆動回転方向RD1に関する追加ダウンシフト開始歯80の下流側において追加ダウンシフト開始歯80に隣接する。
【0079】
例えば、追加ダウンシフト凹部歯82は、追加ダウンシフト凹部84を有する。例えば、追加ダウンシフト凹部84は、軸方向ADにおいて、追加軸方向外向面70Aから追加軸方向内向面70Bに向けて凹むように、追加ダウンシフト凹部歯82の追加軸方向外向面70Aに設けられる。例えば、追加ダウンシフト凹部84は、第1追加ダウンシフト凹部84Aと第2追加ダウンシフト凹部84Bとを含む。第2追加ダウンシフト凹部84Bの軸方向ADにおける深さは、第1追加ダウンシフト凹部84Aの軸方向ADにおける深さと異なるように設けられる。例えば、第2追加ダウンシフト凹部84Bの軸方向ADにおける深さは、第1追加ダウンシフト凹部84Aの軸方向ADにおける深さよりも大きい。第2追加ダウンシフト凹部84Bの軸方向ADにおける深さは、第1追加ダウンシフト凹部84Aの軸方向ADにおける深さと異ならないように設けられてもよい。例えば、第1追加ダウンシフト凹部84Aと第2追加ダウンシフト凹部84Bとは、段押し加工によって形成される。
【0080】
複数の追加ダウンシフト促進歯78は、隣接スプロケット70の追加ダウンシフト領域を形成する。追加ダウンシフト領域には、追加ダウンシフト動作における隣接スプロケット70の変速性能を向上させる構造として、追加ダウンシフト凹部84が形成される。隣接スプロケット70には、複数の追加ダウンシフト領域が形成される。複数の追加ダウンシフト領域のそれぞれには、複数の追加ダウンシフト促進歯78のうち、追加ダウンシフト開始歯80と、追加ダウンシフト凹部歯82と、が形成される。
図7の隣接スプロケット70には、3つの追加ダウンシフト領域が形成される。
【0081】
追加ダウンシフト動作における駆動チェーン18の動作について説明する。
追加ダウンシフト動作において、リアスプロケット30に係合する駆動チェーン18が、リアディレイラによって、隣接スプロケット70の追加ダウンシフト凹部歯82に向かって移動する。駆動チェーン18のインナーリンク18Cが第1追加ダウンシフト凹部84Aと対向する位置に移動し、かつ、駆動チェーン18のアウターリンク18Bが第2追加ダウンシフト凹部84Bと対向する位置に移動する。リアディレイラによって、駆動チェーン18は、隣接スプロケット70に向かって移動し、かつ、追加ダウンシフト凹部84に沿ってリアスプロケット30の径方向外側に誘導される。追加ダウンシフト開始歯80の歯先が、追加ダウンシフト開始歯80の追加駆動面から追加ダウンシフト開始歯80の追加非駆動面に向かって、追加軸方向外向面70Aに近づくように傾斜しているため、追加ダウンシフト開始歯80に駆動チェーン18が嵌り込みやすい。径方向外側に誘導された駆動チェーン18に、追加ダウンシフト開始歯80の歯先が嵌まり込むことによって、追加ダウンシフト開始歯80が駆動チェーン18に係合する。その後、隣接スプロケット70が駆動回転方向RD1に回転するにしたがって、駆動チェーン18がリアスプロケット30から外れる。リアスプロケット30から外れた駆動チェーン18が隣接スプロケット70に係合することによって、追加ダウンシフト動作が終了する。
【0082】
例えば、複数の締結孔36の少なくとも1つは、軸方向ADから見た場合に、周方向CDにおいて追加ダウンシフト開始歯80と追加ダウンシフト凹部歯82との間に少なくとも一部が配置される。例えば、複数の締結孔36は、所定締結孔36Aを含む。第1追加参照線AL1と第2追加参照線AL2との間であり、かつ、駆動回転方向RD1に関する第1追加参照線AL1の下流側に、所定締結孔36Aの少なくとも一部が配置される。第1追加参照線AL1は、追加ダウンシフト開始歯80の歯先および回転中心軸心X1を通過する。第2追加参照線AL2は、追加ダウンシフト凹部歯82の歯先および回転中心軸心X1を通過する。例えば、所定締結孔36Aは、軸方向ADにおいて第2追加参照線AL2に重なるように配置される。
【0083】
例えば、複数の追加スプロケット歯74は、隣接歯86を含む。例えば、隣接歯86は、周方向CDにおいて追加ダウンシフト開始歯80と隣接歯86との間に複数の追加スプロケット歯74のうちの他の追加スプロケット歯74が無いように追加ダウンシフト開始歯80に隣接する。例えば、隣接歯86は、隣接スプロケット70の駆動回転方向RD1に関する追加ダウンシフト開始歯80の上流側において追加ダウンシフト開始歯80に隣接する。
【0084】
例えば、複数の締結孔36の少なくとも1つは、軸方向ADから見た場合に、周方向CDにおいて隣接歯86と追加ダウンシフト凹部歯82との間に少なくとも一部が配置される。第2追加参照線AL2と第3追加参照線AL3との間であり、かつ、駆動回転方向RD1に関する第3追加参照線AL3の下流側に、所定締結孔36Aの少なくとも一部が配置される。第3追加参照線AL3は、隣接歯86の歯先および回転中心軸心X1を通過する。
【0085】
例えば、複数の締結孔36の少なくとも1つは、軸方向ADから見た場合に、周方向CDにおいて隣接歯86と追加ダウンシフト開始歯80との間に少なくとも一部が配置される。第1追加参照線AL1と第3追加参照線AL3との間であり、かつ、駆動回転方向RD1に関する第3追加参照線AL3の下流側に、所定締結孔36Aの一部が配置される。
【0086】
図1、
図7、および、
図11に示されるように、例えば、複数の追加スプロケット歯74は、複数の追加アップシフト促進歯88を含む。複数の追加アップシフト促進歯88は、追加アップシフト動作を促進するように構成される。追加アップシフト動作は、駆動チェーン18が隣接スプロケット70から隣接する小さいスプロケットに移動する動作である。例えば、駆動チェーン18は、追加アップシフト動作において、人力駆動車10のリアディレイラによって、隣接スプロケット70からリアスプロケット30に移動させられる。
【0087】
例えば、複数の追加アップシフト促進歯88は、追加アップシフト変位歯90と、追加アップシフト開始歯92と、追加アップシフト凹部歯94と、を含む。例えば、追加アップシフト変位歯90は、追加アップシフト動作において駆動チェーン18を隣接するリアスプロケット30に向かって変位させるように構成される。追加アップシフト変位歯90の歯先は、軸方向ADにおいて、追加アップシフト変位歯90の追加駆動面から追加アップシフト変位歯90の追加非駆動面に向かって追加軸方向内向面70Bに近づくように傾斜する。
【0088】
例えば、追加アップシフト開始歯92は、追加アップシフト動作において、駆動チェーン18から最初に外れるように構成される。例えば、追加アップシフト開始歯92は、周方向CDにおいて追加アップシフト開始歯92と追加アップシフト変位歯90との間に複数の追加スプロケット歯74のうちの他の追加スプロケット歯74が無いように追加アップシフト変位歯90に隣接する。例えば、追加アップシフト開始歯92は、駆動回転方向RD1に関する追加アップシフト変位歯90の上流側において追加アップシフト変位歯90に隣接する。
【0089】
例えば、追加アップシフト開始歯92は、第1追加アップシフト凹部92Aを有する。例えば、第1追加アップシフト凹部92Aは、軸方向ADにおいて追加軸方向外向面70Aから追加軸方向内向面70Bに向けて凹むように追加アップシフト開始歯92の追加軸方向外向面70Aに設けられる。第1追加アップシフト凹部92Aは、追加アップシフト開始歯92の追加駆動面から追加アップシフト開始歯92の追加非駆動面まで延びる。例えば、第1追加アップシフト凹部92Aは、段押し加工によって形成される。
【0090】
例えば、追加アップシフト凹部歯94は、追加アップシフト動作において、追加アップシフト開始歯92から外れた駆動チェーン18と係合しないように構成される。例えば、追加アップシフト凹部歯94は、周方向CDにおいて追加アップシフト凹部歯94と追加アップシフト開始歯92との間に複数の追加スプロケット歯74のうちの他の追加スプロケット歯74が無いように追加アップシフト開始歯92に隣接する。例えば、追加アップシフト凹部歯94は、駆動回転方向RD1に関する追加アップシフト開始歯92の上流側において追加アップシフト開始歯92に隣接する。
【0091】
例えば、追加アップシフト凹部歯94は、第2追加アップシフト凹部94Aを有する。例えば、第2追加アップシフト凹部94Aは、軸方向ADにおいて追加軸方向外向面70Aから追加軸方向内向面70Bに向けて凹むように追加アップシフト凹部歯94の追加軸方向外向面70Aに設けられる。第2追加アップシフト凹部94Aは、追加アップシフト凹部歯94の追加駆動面から追加アップシフト凹部歯94の追加非駆動面まで延びる。例えば、第2追加アップシフト凹部94Aは、段押し加工によって形成される。
【0092】
例えば、複数の追加アップシフト促進歯88は、逆アップシフト変位歯96を含む。例えば、逆アップシフト変位歯96は、追加アップシフト動作において、隣接スプロケット70に係合する駆動チェーン18を、軸方向ADにおいてリアスプロケット30とは反対側に寄せるように構成される。例えば、逆アップシフト変位歯96は、周方向CDにおいて逆アップシフト変位歯96と追加アップシフト変位歯90との間に複数の追加スプロケット歯74のうちの他の追加スプロケット歯74が2つあるように配置される。例えば、逆アップシフト変位歯96は、駆動回転方向RD1に関する追加アップシフト開始歯92の下流側に配置される。
【0093】
例えば、逆アップシフト変位歯96は、第3追加アップシフト凹部96Aを有する。例えば、第3追加アップシフト凹部96Aは、軸方向ADにおいて追加軸方向外向面70Aから追加軸方向内向面70Bに向けて凹むように逆アップシフト変位歯96の追加軸方向外向面70Aに設けられる。第3追加アップシフト凹部96Aは、逆アップシフト変位歯96の追加駆動面から追加アップシフト凹部歯94の追加非駆動面まで延びる。
【0094】
複数の追加アップシフト促進歯88は、隣接スプロケット70の追加アップシフト領域を形成する。追加アップシフト領域には、アップシフト動作における隣接スプロケット70の変速性能を向上させる構造として、第1追加アップシフト凹部92Aおよび第2追加アップシフト凹部94Aが形成される。隣接スプロケット70には、複数の追加アップシフト領域が形成される。複数の追加アップシフト領域のそれぞれには、複数の追加アップシフト促進歯88のうち、追加アップシフト変位歯90と、追加アップシフト開始歯92と、追加アップシフト凹部歯94と、が形成される。
図7の隣接スプロケット70には、4つの追加アップシフト領域が形成される。
【0095】
図12を参照して、追加アップシフト動作における駆動チェーン18の動作について説明する。
追加アップシフト動作において、隣接スプロケット70に係合する駆動チェーン18が、リアディレイラによって、リアスプロケット30に向かって移動する。駆動チェーン18のアウターリンク18Bが追加アップシフト変位歯90に係合する。駆動チェーン18が追加アップシフト変位歯90に係合すると、追加アップシフト変位歯90の歯先が、追加アップシフト変位歯90の追加駆動面から追加アップシフト変位歯90の追加非駆動面に向かって、追加軸方向内向面70Bに近づくように傾斜するため、駆動チェーン18がリアスプロケット30に向けて寄せられる。駆動チェーン18のインナーリンク18Cが追加アップシフト開始歯92から外れる。第1追加アップシフト凹部92Aによって追加アップシフト開始歯92の歯先は追加軸方向内向面70Bに寄っているため、リアスプロケット30に向けて寄せられた駆動チェーン18は、追加アップシフト開始歯92から外れやすい。追加アップシフト開始歯92から外れた駆動チェーン18は、回転中心軸心X1に関する径方向内側に移動する。駆動チェーン18のアウターリンク18Bが追加アップシフト開始歯92から外れる。第2追加アップシフト凹部94Aによって追加アップシフト凹部歯94の歯先は、追加アップシフト開始歯92の歯先よりも追加軸方向内向面70Bに寄っている。したがって、追加アップシフト開始歯92から外れた駆動チェーン18は、追加アップシフト凹部歯94に係合しない。その後、隣接スプロケット70が駆動回転方向RD1に回転するにしたがって、駆動チェーン18が隣接スプロケット70から外れる。隣接スプロケット70から外れた駆動チェーン18がリアスプロケット30に係合することによって、追加アップシフト動作が終了する。
【0096】
追加アップシフト動作において、駆動チェーン18が追加アップシフト開始歯92から外れた場合に、追加アップシフト開始歯92よりも駆動回転方向RD1の下流側に位置する追加スプロケット歯74に係合する駆動チェーン18は、追加アップシフト変位歯90を支点として、追加軸方向内向面70B側に回転する。追加アップシフト動作において、逆アップシフト変位歯96には、駆動チェーン18のインナーリンク18Cが係合する。第3追加アップシフト凹部96Aによって逆アップシフト変位歯96の歯先は、追加軸方向内向面70Bに寄っているので、駆動チェーン18が追加軸方向内向面70B側に移動しやすい。逆アップシフト変位歯96によって、追加アップシフト開始歯92よりも駆動回転方向RD1の下流側に位置する追加スプロケット歯74に係合する駆動チェーン18が、追加軸方向内向面70B側に回転しやすい。したがって、逆アップシフト変位歯96によって、追加アップシフト動作における変速ショックを低減できる。
【0097】
リアスプロケットは、締結孔に締結部材が配置されることによって、軸方向における剛性が向上する。リアスプロケット30は、ダウンシフト凹部54、第1アップシフト凹部60A、および、第2アップシフト凹部62Aと重ならないように、締結孔36がスプロケットボディ32に設けられる。したがって、リアスプロケット30は、締結孔36に締結部材38が配置された場合に、十分な変速性能を備えつつ、締結部材38によって剛性が向上される。
【0098】
<変更例>
実施形態に関する説明は、本開示に従う人力駆動車用のリアスプロケットが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本開示に従う人力駆動車用のリアスプロケットは、例えば以下に示される実施形態の変更例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変更例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変更例において、実施形態の形態と共通する部分については、実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0099】
・複数の締結孔36の全てがそれぞれ、リアスプロケット30と隣接小スプロケット26Aとを互いに締結する締結部材を受けるように構成されてもよい。
【0100】
・複数の締結孔36のうちの少なくとも1つは、回転中心軸心X1に関する径方向において他と異なる位置に配置されてもよい。複数の締結孔36のうちの少なくとも1つが、回転中心軸心X1に関する径方向において他と異なる位置に配置される場合であっても、複数の締結孔36の全てがそれぞれ、リアスプロケット30と隣接スプロケット70とを互いに締結する締結部材38を受けるように構成されることが好ましい。
【0101】
・隣接スプロケット70において、第1追加参照線AL1が所定締結孔36Aの中心軸心Cを通過するように、追加ダウンシフト開始歯80を配置してもよい。第1追加参照線AL1が所定締結孔36Aの中心軸心Cを通過するように追加ダウンシフト開始歯80を配置した場合、締結部材38によって、追加ダウンシフト開始歯80の軸方向ADにおける剛性をさらに向上できる。
【0102】
・逆アップシフト変位歯96を、リアスプロケット30に配置してもよい。例えば、複数のアップシフト促進歯56は、逆アップシフト変位歯を含む。例えば、逆アップシフト変位歯96は、アップシフト動作において、リアスプロケット30に係合する駆動チェーン18を、軸方向ADにおいて軸方向内向面30B側に寄せるように構成される。例えば、逆アップシフト変位歯96は、周方向CDにおいて逆アップシフト変位歯96とアップシフト変位歯58との間に複数のスプロケット歯34のうちの他のスプロケット歯34が2つあるように配置される。例えば、逆アップシフト変位歯96は、駆動回転方向RD1に関するアップシフト変位歯58の下流側に配置される。
【0103】
本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【符号の説明】
【0104】
10…人力駆動車、18…駆動チェーン、26…リアスプロケットアセンブリ、30…リアスプロケット、30A…軸方向外向面、30B…軸方向内向面、32…スプロケットボディ、34…スプロケット歯、36…締結孔、38…締結部材、40…第1隣接締結孔、40A…第1締結孔、40B…第2締結孔、42…第2隣接締結孔、42A…第3締結孔、42B…第4締結孔、44…第3隣接締結孔、44A…第5締結孔、44B…第6締結孔、48…ダウンシフト促進歯、50…ダウンシフト開始歯、52…ダウンシフト凹部歯、54…ダウンシフト凹部、56…アップシフト促進歯、58…アップシフト変位歯、60…アップシフト開始歯、60A…第1アップシフト凹部、62…アップシフト凹部歯、62A…第2アップシフト凹部、70…隣接スプロケット、70A…追加軸方向外向面、70B…追加軸方向内向面、72…追加スプロケットボディ、74…追加スプロケット歯、78…追加ダウンシフト促進歯、80…追加ダウンシフト開始歯、82…追加ダウンシフト凹部歯、84…追加ダウンシフト凹部、86…隣接歯。