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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180044
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】水供給装置の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 19/12 20060101AFI20231213BHJP
   F02M 26/05 20160101ALI20231213BHJP
   F02M 26/50 20160101ALI20231213BHJP
   F02M 25/025 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
F02D19/12 A
F02M26/05
F02M26/50 321
F02M25/025 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093102
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】中川 政善
【テーマコード(参考)】
3G062
3G092
【Fターム(参考)】
3G062AA05
3G062BA04
3G062ED08
3G062GA01
3G062GA04
3G062GA05
3G062GA06
3G062GA08
3G062GA12
3G092AA06
3G092AA17
3G092AA18
3G092AB17
3G092BB01
3G092BB10
3G092EA01
3G092EA02
3G092EA08
3G092EA14
3G092HA01Z
3G092HA04Z
3G092HA06Z
3G092HA11Z
3G092HD07Z
3G092HE01Z
3G092HE08Z
3G092HE09Z
3G092HG07Z
(57)【要約】
【課題】凝縮水の混入に伴う潤滑油の潤滑性能の低下を抑制する。
【解決手段】制御装置60は、内燃機関1において生成された凝縮水を内燃機関の燃焼室内に供給する水供給装置50を制御する。制御装置は、内燃機関の潤滑油中の水分率に応じて変化する水分率パラメータの値を検出又は算出する水分率検出部641と、水供給装置からの水の供給を制御する供給制御部642と、を有する。供給制御部は、潤滑油中の水分率が所定の基準値以上であるときには水供給装置からの燃焼室内への凝縮水の供給を停止し、潤滑油中の水分率が基準値未満であることを含む供給条件が成立しているときには水供給装置からの凝縮水の供給を実行する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関において生成された凝縮水を内燃機関の燃焼室内に供給する水供給装置を制御する制御装置であって、
前記内燃機関の潤滑油中の水分率に応じて変化する水分率パラメータの値を検出又は算出する水分率検出部と、
前記水供給装置からの水の供給を制御する供給制御部と、を有し、
前記供給制御部は、前記水分率パラメータの値が前記潤滑油中の水分率が所定の基準値以上であることを示す値であるときには前記水供給装置からの燃焼室内への凝縮水の供給を停止し、前記水分率パラメータの値が前記潤滑油中の水分率が所定の基準値未満であること表す値であることを含む供給条件が成立しているときには前記水供給装置からの凝縮水の供給を実行する、制御装置。
【請求項2】
前記供給条件は、前記潤滑油中の水の量が減少傾向にあることを含む、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記供給制御部は、前記水分率パラメータの値が前記潤滑油中の水分率が所定の基準値未満であることを表す値であっても前記潤滑油中の水の量が増加傾向にあるときには前記水供給装置からの燃焼室内への凝縮水の供給を停止する、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記供給制御部は、前記水供給装置から凝縮水を供給する場合には、前記潤滑油中の水の量の変化速度に基づいて前記水供給装置からの凝縮水の供給量を設定する、請求項1~3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記供給制御部は、前記水供給装置から凝縮水を供給する場合には、前記潤滑油中の水の量の変化速度に加えて、前記水供給装置からの凝縮水を供給したときの前記内燃機関における熱効率に基づいて前記水供給装置からの凝縮水の供給量を設定する、請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記内燃機関は、該内燃機関のEGRガスから凝縮水を捕集する凝縮水の捕集機を有し、該捕集機はEGRガスからの凝縮水の捕集率を変更することができるように構成され、
当該制御装置は、前記捕集機による捕集率を制御する捕集率制御部を更に有し、
前記捕集率制御部は、前記水分率パラメータの値が前記潤滑油中の水分率が所定の基準値以上であることを示す値であるときの捕集率が、前記水分率パラメータの値が前記潤滑油中の水分率が所定の基準値未満であること表す値であるときの捕集率よりも高くなるように捕集率を制御する、請求項1~3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記捕集率制御部は、前記水分率パラメータの値が前記潤滑油中の水分率が所定の基準値未満であること表す値であって前記潤滑油中の水の量が増加傾向にあるときの捕集率が、前記水分率パラメータの値が前記潤滑油中の水分率が所定の基準値未満であること表す値であって前記潤滑油中の水の量が減少傾向にあるときの捕集率以上になるように捕集率を制御する、請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記捕集率制御部は、前記水分率パラメータの値が前記潤滑油中の水分率が所定の基準値未満であること表す値であって前記潤滑油中の水の量が増加傾向にあるときには、前記潤滑油中の水分率に基づいて前記捕集機による目標捕集率を設定する、請求項6に記載の制御装置。
【請求項9】
前記捕集率制御部は、前記水分率パラメータの値が前記潤滑油中の水分率が所定の基準値未満であること表す値であって前記潤滑油中の水の量が増加傾向にあるときには、前記潤滑油中の水分率に加えて、前記捕集機によって凝縮水を捕集したときの前記内燃機関における熱効率に基づいて前記捕集機による目標捕集率を設定する、請求項8に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水供給装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関の排気系で生成された凝縮水を貯留する凝縮水タンクと、貯留された凝縮水を内燃機関の吸気通路内に供給する噴射弁とを有する水供給装置が知られている(特許文献1)。特に、特許文献1に記載された水供給装置では、凝縮水タンクの貯水量を適切に管理すべく、凝縮水タンクの貯水量に基づいて噴射弁からの水の供給量が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6079877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、内燃機関の潤滑に用いられる潤滑油に凝縮水が混入すると、潤滑油による潤滑性能が低下する。しかしながら、特許文献1に記載の水供給装置では、潤滑油に凝縮水が混入されることについて考慮されておらず、潤滑油の潤滑性能の低下を招く虞がある。
【0005】
上記課題に鑑みて、本開示の目的は、凝縮水の混入に伴う潤滑油の潤滑性能の低下を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の要旨は以下のとおりである。
【0007】
(1)内燃機関において生成された凝縮水を内燃機関の燃焼室内に供給する水供給装置を制御する制御装置であって、
前記内燃機関の潤滑油中の水分率に応じて変化する水分率パラメータの値を検出又は算出する水分率検出部と、
前記水供給装置からの水の供給を制御する供給制御部と、を有し、
前記供給制御部は、前記水分率パラメータの値が前記潤滑油中の水分率が所定の基準値以上であることを示す値であるときには前記水供給装置からの燃焼室内への凝縮水の供給を停止し、前記水分率パラメータの値が前記潤滑油中の水分率が所定の基準値未満であること表す値であることを含む供給条件が成立しているときには前記水供給装置からの凝縮水の供給を実行する、制御装置。
(2)前記供給条件は、前記潤滑油中の水の量が減少傾向にあることを含む、上記(1)に記載の制御装置。
(3)前記供給制御部は、前記水分率パラメータの値が前記潤滑油中の水分率が所定の基準値未満であることを表す値であっても前記潤滑油中の水の量が増加傾向にあるときには前記水供給装置からの燃焼室内への凝縮水の供給を停止する、上記(2)に記載の制御装置。
(4)前記供給制御部は、前記水供給装置から凝縮水を供給する場合には、前記潤滑油中の水の量の変化速度に基づいて前記水供給装置からの凝縮水の供給量を設定する、上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の制御装置。
(5)前記供給制御部は、前記水供給装置から凝縮水を供給する場合には、前記潤滑油中の水の量の変化速度に加えて、前記水供給装置からの凝縮水を供給したときの前記内燃機関における熱効率に基づいて前記水供給装置からの凝縮水の供給量を設定する、上記(4)に記載の制御装置。
(6)前記内燃機関は、該内燃機関のEGRガスから凝縮水を捕集する凝縮水の捕集機を有し、該捕集機はEGRガスからの凝縮水の捕集率を変更することができるように構成され、
当該制御装置は、前記捕集機による捕集率を制御する捕集率制御部を更に有し、
前記捕集率制御部は、前記水分率パラメータの値が前記潤滑油中の水分率が所定の基準値以上であることを示す値であるときの捕集率が、前記水分率パラメータの値が前記潤滑油中の水分率が所定の基準値未満であること表す値であるときの捕集率よりも高くなるように捕集率を制御する、上記(1)~(5)のいずれか1つに記載の制御装置。
(7)前記捕集率制御部は、前記水分率パラメータの値が前記潤滑油中の水分率が所定の基準値未満であること表す値であって前記潤滑油中の水の量が増加傾向にあるときの捕集率が、前記水分率パラメータの値が前記潤滑油中の水分率が所定の基準値未満であること表す値であって前記潤滑油中の水の量が減少傾向にあるときの捕集率以上になるように捕集率を制御する、上記(6)に記載の制御装置。
(8)前記捕集率制御部は、前記水分率パラメータの値が前記潤滑油中の水分率が所定の基準値未満であること表す値であって前記潤滑油中の水の量が増加傾向にあるときには、前記潤滑油中の水分率に基づいて前記捕集機による目標捕集率を設定する、上記(6)又は(7)に記載の制御装置。
(9)前記捕集率制御部は、前記水分率パラメータの値が前記潤滑油中の水分率が所定の基準値未満であること表す値であって前記潤滑油中の水の量が増加傾向にあるときには、前記潤滑油中の水分率に加えて、前記捕集機によって凝縮水を捕集したときの前記内燃機関における熱効率に基づいて前記捕集機による目標捕集率を設定する、上記(8)に記載の制御装置。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、凝縮水の混入に伴う潤滑油の潤滑性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、内燃機関の概略的な構成図である。
図2図2は、水供給装置の概略的な構成図である。
図3図3は、ECUの構成を示す概略構成図である。
図4図4は、水供給装置からの水の供給制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。
図5図5は、潤滑油の温度、機関回転速度及びブローバイガス量と揮発速度との関係を表す図である。
図6図6は、水の質量の変化速度と、水噴射弁からの目標水噴射量との関係を示す図である。
図7図7は、水供給装置からの水の供給制御及び捕集機による捕集制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。
図8図8は、潤滑油中の水分率と第1目標捕集率との関係を示す図である。
図9図9は、内燃機関の熱効率と、捕集率との関係を示す図である。
図10図10は、内燃機関の熱効率と、水噴射量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0011】
第一実施形態
<内燃機関全体の説明>
まず、図1及び図2を参照して第一実施形態に係る水供給装置の制御装置が用いられる内燃機関1の構成について説明する。図1は、内燃機関1の概略的な構成図である。本実施形態の内燃機関1は、燃料として水素が用いられる内燃機関である。図1に示したように、内燃機関1は、機関本体10、吸気系20、排気系30、排気ガス再循環(EGR)システム40、水供給装置50、及び制御装置60を備える。
【0012】
機関本体10は、複数の気筒11が形成されたシリンダブロックと、吸気ポート及び排気ポートが形成されたシリンダヘッドと、クランクケースとを有する。各気筒11内にはピストンが配置されると共に、各気筒11は吸気ポート及び排気ポートに連通している。また、機関本体10は、各気筒11の燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射弁12を有する。なお、燃料噴射弁12は、吸気ポート内に燃料を噴射するように機関本体10に設けられてもよい。また、機関本体10は、燃焼室内の混合気に点火する点火プラグが設けられてもよい。
【0013】
吸気系20は、吸気マニホルド21、吸気管22、エアクリーナ23、排気ターボチャージャ5のコンプレッサ24、インタークーラ25、及びスロットル弁26を有する。各気筒11の吸気ポートは吸気マニホルド21及び吸気管22を介してエアクリーナ23に連通している。吸気管22内には、吸気管22内を流通する吸入空気を圧縮して吐出する排気ターボチャージャ5のコンプレッサ24と、コンプレッサ24によって圧縮された空気を冷却するインタークーラ25とが設けられている。スロットル弁26は、スロットル弁駆動アクチュエータ27によって回動せしめられることで、吸気通路の開口面積を変更することができる。
【0014】
排気系30は、排気マニホルド31、排気管32、排気ターボチャージャ5のタービン33、及び排気浄化触媒34を有する。各気筒11の排気ポートは、排気マニホルド31及び排気管32を介して排気浄化触媒34に連通している。排気浄化触媒34は、排気ガス中のNOx等の成分を浄化する。排気管32には、排気ガスのエネルギによって回転駆動せしめられる排気ターボチャージャ5のタービン33が設けられている。排気ターボチャージャ5のタービン33が回転駆動せしめられると、これに伴ってコンプレッサ24が回転し、よって吸入空気が圧縮せしめられる。
【0015】
EGRシステム40は、機関本体10から排出された排気ガスの一部を吸気通路に供給する。EGRシステム40は、EGR管41と、EGRクーラ42と、EGR制御弁43と、を有する。EGR管41は、排気マニホルド31と吸気マニホルド21とに連結され、これらを互いに連通させる。EGR管41には、EGR管41内を流れるEGRガスを冷却するEGRクーラ42が設けられている。加えて、EGR管41には、EGR管41によって形成されるEGR通路の開口面積を変更することができるEGR制御弁43が設けられている。EGR制御弁43の開度を制御することによって、排気マニホルド31から吸気マニホルド21へ還流せしめられるEGRガスの流量が調整され、その結果、EGR率が変化する。なお、EGR率は、燃焼室内に供給される全ガス量(新気量とEGRガス量との合計)に対するEGRガス量の割合である。
【0016】
なお、本実施形態では、EGR管41は、排気マニホルド31と吸気マニホルド21とに連通する。しかしながら、EGR管41は、排気ターボチャージャ5のタービン33よりも排気流れ方向下流側において排気管32に連通すると共に、排気ターボチャージャ5のコンプレッサ24よりも吸気流れ方向上流側において吸気管22に連通してもよい。
【0017】
水供給装置50は、内燃機関1において生成された凝縮水を各気筒11の燃焼室内に供給する。図2は、水供給装置50の概略的な構成図である。図1及び図2に示されるように、水供給装置50は、捕集機51、水捕集管52、水貯留タンク53、水供給管54、水噴射弁55及び水ポンプ56を有する。
【0018】
捕集機51は、本実施形態では、EGRクーラ42において生成された凝縮水を捕集する。すなわち、捕集機51は、EGRガスから凝縮水を捕集する。したがって、図1に示されるように、捕集機51は、EGRガスの流れ方向にてEGRクーラ42の下流側において、EGR管41に設けられる。
【0019】
また、図2に示されるように、捕集機51は、上流側(EGRクーラ42側)のEGR管41に連通する入口通路511と、下流側(EGR制御弁43側)のEGR管41に連通する出口通路512と、これら入口通路511と出口通路512とに連通する旋回流生成部513と、を有する。旋回流生成部513は、その中をEGRガスが旋回することができるように形成された容器である。入口通路511は旋回流生成部513の上部に水平に連通すると共に、出口通路512はその入口が旋回流生成部513の下部に位置するように垂直に旋回流生成部513に連通する。また、旋回流生成部513の底部には凝縮水を排出するための排出孔514が形成される。
【0020】
このように形成された捕集機51では、入口通路511から旋回流生成部513に流入したEGRガスは、旋回流生成部513内において旋回するように流れる(図中の矢印)。このとき、EGRガス中に含まれていた水分は、旋回流生成部513の内面に付着する。旋回流生成部513の内面に付着した水分は内面上を下方に向かって流れ、排出孔514から排出される。この結果、捕集機51に流入したEGRガス中に含まれていた水分は、凝縮水として排出孔514から排出される。
【0021】
加えて、本実施形態では、入口通路511に絞り弁515が設けられる。絞り弁515は、入口通路511の開度(流路面積)を変更可能であり、これに伴って旋回流生成部513に流入するEGRガスの流速が変更される。旋回流生成部513内に流速の高い旋回流が形成されるほど、EGRガス中に含まれていた水分が旋回流生成部513の内面に付着しやすい。したがって、本実施形態の捕集機51では、絞り弁515によって開度を変更することで、捕集機51における捕集率を変更することができる。
【0022】
なお、図2に示した捕集機51は、一例であり、EGRガスから凝縮水を捕集することができれば、如何なる構成を有していてもよい。また、本実施形態では、捕集機51は、EGRガスから凝縮水を捕集しているが、内燃機関1において潤滑油に混入し得る凝縮水であれば、EGRガス以外から凝縮水を捕集してもよい。
【0023】
水貯留タンク53は、捕集機51によって捕集された凝縮水を貯留するタンクである。図2に示されるように、水貯留タンク53は、水捕集管52を介して捕集機51の排出孔514に連通し、捕集機51の排出孔514から排出された凝縮水が水貯留タンク53に流入して、貯留される。また、水貯留タンク53は、ガス抜き通路57を介して、EGRガスの流れ方向において捕集機51よりも下流側にてEGR管41に連通する。これにより、水貯留タンク53内の圧力の高くなったときに、水貯留タンク53内のガスがEGR管41内に放出される。
【0024】
水噴射弁55は、各気筒11に連通する吸気ポート又は吸気通路に水を噴射する弁である。このようにして水噴射弁55から噴射された水は各気筒11の燃焼室に流入するため、水噴射弁55は、各気筒11の燃焼室内に水を供給するといえる。水噴射弁55は、水供給管54を介して水貯留タンク53に連通し、水噴射弁55には水貯留タンク53に貯留されている凝縮水が供給される。水ポンプ56は、水供給管54に設けられると共に、水貯留タンク53内に貯留されていた水を水噴射弁55に圧送する。なお、水噴射弁55は、各気筒11の燃焼室内に水を供給することができれば、各気筒11内の燃焼室内に水を直接噴射するなど、他の態様で水の供給を行ってもよい。
【0025】
制御装置60は、内燃機関1を制御する。特に、本実施形態では、制御装置60は、内燃機関1の運転に加えて、水供給装置50からの水の供給を制御する。制御装置60は、電子制御ユニット(ECU)61及び各種センサを有する。
【0026】
制御装置60は、内燃機関1に関する各種パラメータの値を検出するセンサとして、吸気量センサ71、スロットル開度センサ72、吸気温度センサ73、吸気湿度センサ74、EGR温度センサ75、EGR湿度センサ76、負荷センサ77、クランク角センサ78、油温センサ79、及びブローバイセンサ80を有する。
【0027】
吸気量センサ71は、吸気管22に配置されて、各気筒11の燃焼室内に供給される吸気ガスの量又は流量を検出する。スロットル開度センサ72は、スロットル弁26に取り付けられてスロットル弁26の開度を検出する。吸気温度センサ73及び吸気湿度センサ74は、吸気管22又は吸気マニホルド21に配置され、各気筒11の燃焼室内に供給される吸気ガスの温度及び絶対湿度をそれぞれ検出する。EGR温度センサ75及びEGR湿度センサ76は、排気マニホルド31又はEGR管41に配置され、EGR管41に流入するEGRガスの温度及び絶対湿度をそれぞれ検出する。負荷センサ77は例えば内燃機関1を搭載した車両のアクセルペダルに取り付けられ、内燃機関1の目標負荷を検出する。クランク角センサ78は、例えば内燃機関1のクランクシャフトに取り付けられ、内燃機関1のクランク角を検出し、よって内燃機関1の回転速度を検出する。油温センサ79は、例えば、内燃機関1の潤滑油を貯留するオイルパンに取り付けられて、内燃機関1内の潤滑油の温度を検出する。ブローバイセンサ80は、内燃機関1の本体に取り付けられて、ブローバイガスの量を検出する。
【0028】
ECU61は、内燃機関1に関する各種パラメータの値を検出するセンサの出力を受信すると共に、内燃機関1に関する各種アクチュエータを制御する。図3は、ECU61の構成を示す概略構成図である。図3に示されるように、ECU61は、通信モジュール62、メモリ63及びプロセッサ64を有する。通信モジュール62及びメモリ63は通信線を介してプロセッサ64に接続されている。
【0029】
通信モジュール62は、内燃機関1のセンサ71~80に接続され、これらセンサ71~80の出力が通信モジュール62を介してプロセッサ64に入力される。また、通信モジュール62は、内燃機関1の各種アクチュエータに接続される。具体的には、斯かるアクチュエータには、例えば、燃料噴射弁12、スロットル弁駆動アクチュエータ27、EGR制御弁43、水ポンプ56及び絞り弁515が含まれる。プロセッサ64によって生成された駆動信号が通信モジュール62を介してこれらアクチュエータに送信される。
【0030】
メモリ63は、プロセッサで実行されるプログラム等を記憶する。メモリは、例えば、揮発性の半導体メモリ(例えば、RAM)、不揮発性の半導体メモリ(例えば、ROM)等を有する。
【0031】
プロセッサ64は、一つ又は複数のCPU及びその周辺回路を有する。プロセッサ64は、論理演算ユニット、数値演算ユニット又はグラフィック処理ユニットのような他の演算回路を更に有していてもよい。プロセッサ64は、センサ71~80の出力に基づいて、メモリ63に記憶されたコンピュータプログラムを用いて、各種処理を実行する。図3に示されるように、プロセッサ64は、内燃機関1内の潤滑油中の水分率を検出する水分率検出部641と、水供給装置50による燃焼室内への水の供給を制御する供給制御部642と、捕集機51における凝縮水の捕集率を制御する捕集率制御部643と、を有する(捕集率制御部643は第一実施形態では設けられなくてもよい)。
【0032】
<水の供給制御>
次に、図4図6を参照して、水供給装置50による燃焼室内への水の供給制御について説明する。
【0033】
ところで、EGRシステム40を利用して燃焼室内にEGRガスを供給するときには、EGRガスの温度を下げることにより、内燃機関1における熱損失を低減させることができると共に内燃機関1に生じるノッキングを抑制することができる。このため、本実施形態では、EGR管41には、EGRガスの温度を下げるべく、EGRクーラ42が設けられている。
【0034】
しかしながら、EGRクーラ42では水蒸気を含んだEGRガスが冷却されるため、凝縮水が生成される。特に、燃料として水素が用いられる内燃機関1では、EGRガス中に含まれる水蒸気が多く、よって凝縮水が生成され易い。このようにして生成された凝縮水を含んだEGRガスをそのまま燃焼室に供給すると、凝縮水の一部は潤滑油に混入する。このように潤滑油に凝縮水が混入すると、オイルがエマルジョン化し、潤滑油による潤滑性能の劣化を招く。このため、本実施形態では、EGRクーラ42の下流側に捕集機51を設けることによってEGRガス中の凝縮水が捕集される。これによって凝縮水を含むEGRガスが燃焼室に供給することが抑制され、よって潤滑油に凝縮水が混入することが抑制される。
【0035】
一方、捕集機51によって捕集された凝縮水は、排気ガス中の成分が溶解していることから、そのまま外部へ放出することはできない。また、排気浄化触媒34の上流側に凝縮水を供給すると、排気浄化触媒34の劣化や割れが生じる可能性がある。このため、本実施形態では、捕集機51において捕集された凝縮水は、水噴射弁55から吸気ポートに噴射されて、燃焼室に供給される。このように凝縮水を燃焼室に供給することで、排気浄化触媒34の劣化や割れを抑制することができる。また、燃焼室内に凝縮水を供給することによって、凝縮水の気化熱により吸気ガスの温度を低下させることができ、よって内燃機関1における燃焼効率を高めることができる。
【0036】
ところが、水噴射弁55から噴射された水は、必ずしも全てが気化して燃焼室における燃料の燃焼後に大気中に排出されるわけではなく、一部の水は潤滑油中に混入し得る。そこで、本実施形態では、潤滑油中の水分率(潤滑油に対する水の質量割合)が所定の基準値以上であるときには水供給装置50からの燃焼室内への水の供給が停止され、潤滑油中の水分率が基準値未満であることを含む供給条件が成立しているときには水供給装置50から水が供給される。
【0037】
図4は、水供給装置50からの水の供給制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。図示した制御ルーチンは、ECU61のプロセッサ64によって一定時間間隔毎に実行される。
【0038】
まず、水分率検出部641が、現在の潤滑油中の水分率Wp[%]及び潤滑油中の水の質量の変化速度Sw[g/s]を算出する(ステップS11)。本実施形態では、水分率検出部641は、下記式(1)~(5)に基づいて、潤滑油中の水分率Wp及び潤滑油中の水の質量の変化速度Swを算出する。
Wp=Wa/Oa …(1)
Wa=Wa’+Sw・Δt …(2)
Sw=Sce・(100-Cr)/100+Scc-Sv …(3)
Sce=(He-Ae)・Qe・Se/Ve×α …(4)
Scc=(Hc-Ac)・Qc・Sc/Vc×β …(5)
【0039】
上記式(1)において、Waは潤滑油中の水の質量[g]を、Oaは潤滑油の質量[g]をそれぞれ表している。内燃機関1に供給されている潤滑油の量は決まっているため、潤滑油の質量Oaは予め定められた一定値とされる。なお、内燃機関1に供給されている潤滑油の量を検出することができる油量センサが内燃機関1に設けられている場合には、この油量センサの出力に基づいて潤滑油の質量が算出されてもよい。
【0040】
一方、式(1)の潤滑油中の水の質量Waは、上記式(2)によって算出される。式(2)において、Wa’は前回の計算時における潤滑油中の水の質量を表している。また、Δtは、水分率検出部641において計算が繰り返される時間間隔である。また、式(2)の水の質量の変化速度Swは、式(3)によって算出される。
【0041】
式(3)において、Crは、捕集機におけるEGRガス中の凝縮水の捕集率[%]を表している。捕集率Crは、絞り弁515における開度に応じて変化する。したがって、捕集率Crは、この開度と捕集率Crとの関係を予め実験的に求め、求められた関係と絞り弁515における現在の開度とに基づいて算出される。
【0042】
また、式(3)におけるSvは、潤滑油からの水の揮発速度[g/s]を表している。本実施形態では、潤滑油からの水の揮発速度Svは、潤滑油の温度、機関回転速度及びブローバイガス量に基づいて算出される。潤滑油の温度は油温センサ79によって検出され、機関回転速度はクランク角センサ78によって検出され、ブローバイガス量はブローバイセンサ80によって検出される。ここで、図5は、潤滑油の温度、機関回転速度及びブローバイガス量と揮発速度との関係を表す図である。このような潤滑油の温度、機関回転速度及びブローバイガス量と揮発速度との関係は予め実験的に求められてマップとしてメモリ63に記憶される。水分率検出部641は、斯かるマップと、検出された潤滑油の温度、機関回転速度及びブローバイガス量とに基づいて、揮発速度を算出する。さらに、式(3)におけるSce及びSccはそれぞれEGRクーラ42における水の凝縮速度[g/s]及び気筒11内における水の凝縮速度[g/s]を表しており、それぞれ式(4)及び式(5)によって算出される。
【0043】
上記式(4)において、Heは、EGRガスの絶対湿度を表しており、EGR湿度センサ76によって検出される。AeはEGRガスの飽和水蒸気量を表しており、EGR温度センサ75によって検出されたEGRガスの温度に基づいて算出される。QeはEGR管41を流れるEGRガス流量[g/s]を表しており、EGR制御弁43の開度等に基づいて算出される。Se及びVeは、それぞれEGR管41の表面積及びEGR管41内の容積であり、予め定められた一定値である。また、αは予め定められた一定の係数である。
【0044】
また、上記式(5)において、Hcは、各気筒11の燃焼室内に吸入される吸気ガスの絶対湿度を表しており、吸気湿度センサ74によって検出される。Acは斯かる吸気ガスの飽和水蒸気量を表しており、吸気温度センサ73によって検出された吸気ガスの温度に基づいて算出される。Qcは各気筒11に吸入される吸気ガスの流量[g/s]を表しており、吸気量センサ71によって検出される。Sc及びVcは、それぞれ各気筒11の表面積及び各気筒11内の容積であり、予め定められた一定値である。また、βは予め定められた一定の係数である。
【0045】
ステップS11において水分率Wpと水の質量の変化速度Swが算出されると、供給制御部642は、ステップS11で算出された水分率Wpが予め定められた上限値(基準値)Wplim未満であるか否かを判定する(ステップS12)。ステップS12において水分率Wpが上限値Wplim以上であると判定された場合には、供給制御部642は、水噴射弁55からの目標水噴射量をゼロに設定し(ステップS13)、よって水供給装置50からの燃焼室内への凝縮水の供給が停止される。
【0046】
一方、ステップS12において水分率Wpが上限値Wplim未満であると判定された場合には、供給制御部642は、ステップS11において算出された潤滑油中の水の質量の変化速度Swがゼロ未満であるか否か、すなわち潤滑油中の水の質量が減少傾向にあるか否かを判定する(ステップS14)。ステップS14において潤滑油中の水の質量の変化速度Swがゼロ以上であると判定された場合には、供給制御部642は、水噴射弁55からの目標水噴射量をゼロに設定する(ステップS13)。
【0047】
一方、ステップS14において潤滑油中の水の質量の変化速度Swがゼロ未満であると判定された場合には、供給制御部642は、ステップS11において算出された潤滑油中の水の質量の変化速度Swに基づいて水噴射弁55からの目標水噴射量を設定する(ステップS15)。図6は、水の質量の変化速度Swと、水噴射弁からの目標水噴射量[g/s]との関係を示す図である。図6に示されるように、本実施形態では、潤滑油中の水の質量の変化速度Swが負の値であるとき、すなわち潤滑油中の水の質量が減少傾向にあるときには、目標水噴射量は、減少速度が速くなるほど多くなるように設定される。
【0048】
<効果・変形例>
以上より、本実施形態では、潤滑油中の水分率が基準値未満であることを含む供給条件が成立しているときに、水供給装置50から凝縮水が供給される。これにより、燃焼室内に凝縮水を供給しつつ、潤滑油中に凝縮水が多量に混入して潤滑油の潤滑性能が劣化してしまうことが抑制される。
【0049】
また、本実施形態では、供給条件は、潤滑油中の水の量(上記実施形態では質量)が減少傾向にあることを含んでいる。逆に、本実施形態では、潤滑油中の水分率が基準値未満であっても潤滑油中の水の量が増加傾向にある場合には、水供給装置50からの水の供給が停止される。これにより、潤滑油中に凝縮水が多量に混入してしまうことをより確実に抑制することができる。
【0050】
さらに、本実施形態では、潤滑油中の水の量の変化速度に基づいて、水供給装置50からの水の供給量が設定される。具体的には、潤滑油中の水の量の減少速度が速くなるほど、水噴射弁55からの目標水噴射量が多くなるように設定される。ここで、潤滑油中の水の量の減少速度が速いほど、水供給装置50から水を供給しても潤滑油中に混入されていく水の量が多くなっていく可能性が低くなる。このため、このように潤滑油中の水の量の変化速度に基づいて水の供給量を設定することにより潤滑油中に凝縮水が多量に混入してしまうことをより確実に抑制することができる。
【0051】
なお、上述した第一実施形態は一つの例を示したものであり、様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では、潤滑油中の水分率が基準値未満であること及び潤滑油中の水の量が減少傾向にあることを含む供給条件が成立しているときに、水供給装置50から凝縮水が供給される。しかしながら、潤滑油中の水分率が基準値未満である場合に、潤滑油中の水の量の変化速度と無関係に、水供給装置50から凝縮水が供給されてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、潤滑油中の水分率に基づいて、水供給装置50からの凝縮水の供給の可否が判断されている。しかしながら、潤滑油中の水分率に応じて変化する別の水分率パラメータの値に基づいて、水供給装置50からの凝縮水の供給の可否が判断されてもよい。斯かる水分率パラメータとしては、例えば、潤滑油中の水の量(質量又は体積)等が挙げられる。水分率パラメータは、センサ等によって検出されてもよいし、センサ等の検出値に基づいて算出されてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、EGRクーラ42における水の凝縮速度、気筒11内における水の凝縮速度、潤滑油からの水の揮発速度等に基づいて、潤滑油中の水分率が算出される。しかしながら、潤滑油中の水分率は、他の任意の方法で算出されてもよい。
【0054】
具体的には、例えば、油圧センサ(図示せず)によって検出された内燃機関1の油圧、油温センサ79によって検出された潤滑油の温度、及びクランク角センサ78の出力に基づいて算出された機関回転速度等に基づいて、潤滑油中の水分率が算出されてもよい。ここで、潤滑油中に水が含まれると、潤滑油の粘度が高くなり、内燃機関1内における油圧が上昇する。一方、油温センサ79及びクランク角センサ78の出力に基づいて、潤滑油中に水が混入されていないときの油圧を推定することができる。そして、このようにして推定された油圧と油圧センサによって検出された油圧とに基づいて潤滑油中の水分率が算出される。特に、推定された油圧と検出された油圧との差が大きいほど潤滑油中の水分率が高いとして水分率が算出される。
【0055】
さらに、上記実施形態では燃料として水素が用いられているが、燃料として化石燃料等、水素以外の燃料が用いられてもよい。
【0056】
第二実施形態
次に、図7図10を参照して、第二実施形態に係る水供給装置50の制御装置について説明する。第二実施形態に係る制御装置の構成及び動作は基本的に第一実施形態に係る制御装置の構成及び動作と同様である。以下では、第一実施形態に係る制御装置の構成及び動作と異なる部分を中心に説明する。
【0057】
上記第一実施形態では、捕集機51における捕集率は、潤滑油中の水分率等に応じて制御されていなかった。しかしながら、本実施形態では、潤滑油中の水分率及び潤滑油中の水の量の変化速度等に基づいて、捕集機51の目標捕集率[%]が制御される。
【0058】
また、上記第一実施形態では、潤滑油中の水の量の変化速度に基づいて水供給装置50からの凝縮水の供給量が制御されている。しかしながら、本実施形態では、潤滑油中の水の量の変化速度に加えて、水供給装置50から凝縮水を供給したときの内燃機関1における熱効率に基づいて、水供給装置50からの凝縮水の供給量が制御される。
【0059】
図7は、水供給装置50からの水の供給制御及び捕集機51による捕集制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。図示した制御ルーチンは、ECU61のプロセッサによって一体時間間隔毎に実行される。なお、図7のステップS21、S22及びS25は、それぞれ図4のステップS11、S12及びS14と同様であるため説明を省略する。
【0060】
ステップS22において水分率Wpが上限値Wplim以上であると判定された場合、供給制御部642は、水噴射弁55からの目標水噴射量をゼロに設定し(ステップS23)、よって水供給装置50からの燃焼室内への凝縮水の供給が停止される。また、この場合、捕集率制御部643は、捕集機51による目標捕集率を最大値に設定する(ステップS24)。捕集機51の絞り弁515の開度は、このようにして設定された目標捕集率に応じて設定される。具体的には、目標捕集率が大きくなるほど絞り弁515の開度が小さくされる。捕集機51による目標捕集率が最大値に設定されると、絞り弁515はその開度が最小になるように制御される。
【0061】
ステップS25において潤滑油中の水の質量の変化速度Swがゼロ以上であると判定された場合、供給制御部642は、水噴射弁55からの目標水噴射量をゼロに設定する(ステップS26)。また、この場合、捕集率制御部643は、捕集機51による目標捕集率を、潤滑油中の水分率Wpと内燃機関1の現在の熱効率とに基づいて設定する(ステップS27)。具体的には、本実施形態では、目標捕集率は、潤滑油中の水分率Wpに基づいて算出された目標捕集率(以下、「第1目標捕集率」という)と、内燃機関1の現在の熱効率に基づいて算出された目標捕集率(以下、「第2目標捕集率」という)のうち、高い方に設定される。
【0062】
図8は、潤滑油中の水分率Wpと第1目標捕集率との関係を示す図である。図8に示されるように、水分率が上限値Wplim以上であるときには、第1目標捕集率は最大値に設定される(実質的に、ステップS24)。一方、水分率が上限値Wplim未満であるときには、水分率が低下するにつれて第1目標捕集率も低下し、水分率が或る一定値以下になると、第1目標捕集率は最小値に設定される。
【0063】
図9は、内燃機関1の熱効率と、捕集率との関係を示す図である。図9に示されるように、第2目標捕集率は、内燃機関1の熱効率が最大となるように設定される。ここで、このような内燃機関1の熱効率と捕集率との関係は、機関回転速度及び機関負荷等に基づいて変化する。したがって、図9に示された関係を表すマップは、機関回転速度及び機関負荷等に予め実験的に求められ、メモリ63に記憶される。そして、捕集率制御部643は、クランク角センサ78の出力に基づいて算出された機関回転速度及び負荷センサ77によって検出された機関負荷に基づいて、メモリ63に記憶されたマップを用いて、図9に示されるような内燃機関1の熱効率と捕集率との関係を特定する。そして、捕集率制御部643は、このようにして特定された関係に基づいて、第2目標捕集率を算出する。なお、第2目標捕集率と機関回転速度及び機関負荷との関係を表すマップが予め求められ、機関回転速度及び機関負荷に基づいて第2目標捕集率が直接算出されてもよい。
【0064】
上述したように、本実施形態ではこのようにして算出された第1目標捕集率と第2目標捕集率とのうち高い方が目標捕集率に設定される。目標捕集率が設定されると、この目標捕集率に基づいて絞り弁515の開度が制御される。
【0065】
一方、ステップS25において潤滑油中の水の質量の変化速度Swがゼロ未満であると判定された場合、供給制御部642は、ステップS11において算出された潤滑油中の水の質量の変化速度Swと内燃機関1の現在の熱効率とに基づいて水噴射弁55からの目標水噴射量を設定する(ステップS28)。具体的には、本実施形態では、目標水噴射量は、潤滑油中の水の質量の変化速度Swに基づいて算出された目標水噴射量(以下、「第1目標水噴射量」という)と、内燃機関1の現在の熱効率に基づいて算出された目標水噴射量(以下、「第2目標水噴射量」という)のうち、高い方に設定される。このうち第1目標水噴射量は、図4のステップS15と同様に算出される。
【0066】
図10は、内燃機関1の熱効率と、水噴射量との関係を示す図である。図10に示されるように、第2目標水噴射量は、内燃機関1の熱効率が最大となるように設定される。ここで、このような内燃機関1の熱効率と水噴射量との関係は、機関回転速度及び機関負荷等に基づいて変化する。したがって、図10に示された関係を表すマップは、機関回転速度及び機関負荷等に予め実験的に求められ、メモリ63に記憶される。そして、供給制御部642は、クランク角センサ78の出力に基づいて算出された機関回転速度及び負荷センサ77によって検出された機関負荷に基づいて、メモリ63に記憶されたマップを用いて、図10に示されるような内燃機関1の熱効率と捕集率との関係を特定する。そして、供給制御部642は、このようにして特定された関係に基づいて、第2目標水噴射量を算出する。なお、第2目標水噴射量と機関回転速度及び機関負荷との関係を表すマップを予め求め、機関回転速度及び機関負荷に基づいて第2目標水噴射量を直接算出してもよい。
【0067】
また、ステップS25において潤滑油中の水の質量の変化速度Swがゼロ以上であると判定された場合、捕集率制御部643は、捕集機51による目標捕集率を最小値に設定する(ステップS29)。捕集機51による目標捕集率が最小値に設定されると、絞り弁515はその開度が最大になるように制御される。
【0068】
以上より、本実施形態では、水供給装置50から凝縮水が供給される場合には、潤滑油中の水の量の変化速度Swに加えて内燃機関1の熱効率に基づいて水供給装置50からの凝縮水の供給量が設定される(ステップS28)。これにより、内燃機関1の熱効率を高く維持しつつ潤滑油の潤滑性能の劣化を抑制することができる。
【0069】
また、本実施形態では、潤滑油中の水分率が基準値未満であるときの目標捕集率は最大値未満に設定される(ステップS27、S29)。一方、潤滑油中の水分率が上限値以上であるときの目標捕集率は最大値に設定される(ステップS24)。したがって、本実施形態では、捕集率制御部643は、潤滑油中の水分率が基準値以上であるときの捕集率が、潤滑油中の水分率が基準値未満であるときの捕集率よりも高くなるように捕集率を制御する。これにより、潤滑油中の水分率が高いときに捕集機51によって多くの凝縮水が捕集され、潤滑油に水がさらに混入することが抑制されて、潤滑油の潤滑性能の劣化を抑制することができる。
【0070】
さらに、本実施形態では、潤滑油中の水分率が基準値未満であって且つ潤滑油中の水の量が増加傾向にあるときの目標捕集率は、潤滑油の水分率に基づいて算出された第1目標捕集率と内燃機関1の熱効率に基づいて算出された第2目標捕集率のうち高い方に設定される(ステップS27)。一方、潤滑油中の水分率が基準値未満であって且つ潤滑油中の水の量が減少傾向にあるときの目標捕集率は最小値に設定される(ステップS29)。したがって、本実施形態では、捕集率制御部643は、潤滑油中の水分率が基準値未満であって且つ潤滑油中の水の量が増加傾向にあるときの捕集率が、潤滑油中の水分率が基準値未満であって且つ潤滑油中の水の量が減少傾向にあるときの捕集率よりも高くなるように捕集率を制御する。これにより、潤滑油中の水の量が増加傾向にあるときに捕集機51によって多くの凝縮水が捕集され、よって潤滑油中の水の量が増加することが抑制され、ひいては潤滑油中に水が混入することにともなう潤滑油の潤滑油の劣化を抑制することができる。
【0071】
また、本実施形態では、水分率が基準値未満であって且つ潤滑油中の水の量が増加傾向にあるときには、潤滑油中の水分率に基づいて捕集機による目標捕集率が設定される(ステップS27)。これにより、潤滑油中の水分率が多いほど目標捕集率を多くして、潤滑油中の水分率が高くなることを抑制することができる。なお、捕集機51による目標捕集率は、潤滑油中の水分率のみに基づかずに一定の値に設定されてもよい。
【0072】
さらに、本実施形態では、水分率が基準値未満であって且つ潤滑油中の水の量が増加傾向にあるときには、潤滑油中の水分率に加えて、内燃機関1の熱効率に基づいて、捕集機51による目標捕集率が設定される(ステップS27)。これにより、内燃機関1の熱効率を高く維持しつつ潤滑油の潤滑性能の劣化を抑制することができる。なお、捕集機51による目標捕集率は、内燃機関1の熱効率に基づかずに、潤滑油中の水分率のみに基づいて設定されてもよい。
【0073】
なお、上述した第二実施形態も一つの例を示したものであり、様々な変形が可能である。したがって、例えば、潤滑油中の水分率の代わりに、水分率とは別の水分率パラメータの値に基づいて目標捕集率を設定するなど、上述した第一実施形態の変形例と同様な変形を行うことが可能である。
【0074】
また、上記実施形態では、潤滑油中の水分率等に基づいて目標捕集率が設定されている。しかしながら、例えば、捕集率制御部643は、目標捕集率の代わりに、絞り弁515の開度等、そのパラメータの値を変更すると捕集率が変化するような別のパラメータの値を設定してもよい。
【0075】
以上、本開示に係る好適な実施形態及び変形例を説明したが、本開示はこれら実施形態及び変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内で様々な修正及び変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0076】
1 内燃機関
40 EGRシステム
42 EGRクーラ
50 水供給装置
51 捕集機
53 水貯留タンク
55 水噴射弁
60 制御装置
61 ECU
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10