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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180056
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/06 20060101AFI20231213BHJP
   B60K 6/485 20071001ALI20231213BHJP
   B60W 20/00 20160101ALI20231213BHJP
   B60W 20/14 20160101ALI20231213BHJP
   B60W 20/12 20160101ALI20231213BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20231213BHJP
   F02D 23/00 20060101ALI20231213BHJP
   F02D 17/00 20060101ALI20231213BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20231213BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20231213BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20231213BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20231213BHJP
   G01C 21/36 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
B60W10/06 900
B60K6/485 ZHV
B60W20/00 900
B60W20/14
B60W20/12
B60W10/08 900
F02D23/00 D
F02D17/00 H
B60L15/20 J
B60L50/16
B60L50/60
B60L58/12
G01C21/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093133
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣角 直彦
(72)【発明者】
【氏名】大堀 勇二
(72)【発明者】
【氏名】内村 貴大
(72)【発明者】
【氏名】山口 靖仁
【テーマコード(参考)】
2F129
3D202
3G092
5H125
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB20
2F129DD13
2F129DD15
2F129DD21
2F129DD49
2F129EE02
2F129EE78
2F129EE79
2F129EE81
2F129HH12
3D202AA09
3D202BB00
3D202BB01
3D202BB15
3D202BB51
3D202CC16
3D202CC52
3D202DD00
3D202DD01
3D202DD06
3D202DD09
3D202DD45
3D202DD50
3G092AC02
3G092DA01
3G092DA02
3G092DA03
3G092FA36
3G092GB06
3G092HF02Z
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125BC08
5H125BD17
5H125CA02
5H125CA18
5H125DD19
5H125EE27
5H125EE41
5H125EE51
5H125EE52
5H125EE55
(57)【要約】
【課題】降坂時に適切な制動を行う。
【解決手段】車両300は、駆動用のエンジン12と、駆動用のモータジェネレータ10と、バッテリ14と、電動過給機60と、自車両の走行ルートを特定するナビゲーション装置310と、制御装置90と、を備え、前記制御装置90は、1つまたは複数のプロセッサ92と、前記プロセッサ92に接続される1つまたは複数のメモリ94と、を有し、前記プロセッサ92は、特定された前記走行ルートにおける下り勾配の区間である降坂区間を特定することと、特定された前記降坂区間を走行しているとき、前記バッテリ14の現在のSOCに基づいて、前記降坂区間の終点における前記バッテリ14のSOCの推定値を示す終点推定SOCを導出することと、前記終点推定SOCが所定のSOC基準値以上の場合、前記電動過給機60をオン状態にさせることと、を含む処理を実行する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動用のエンジンと、
駆動用のモータジェネレータと、
前記モータジェネレータと電気的に接続されるバッテリと、
前記バッテリから供給される電力を消費して、前記エンジンに供給する空気を圧縮して前記エンジンに供給する電動過給機と、
自車両の走行ルートを特定するナビゲーション装置と、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
1つまたは複数のプロセッサと、
前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、
を有し、
前記プロセッサは、
特定された前記走行ルートにおける下り勾配の区間である降坂区間を特定することと、
特定された前記降坂区間を走行しているとき、前記バッテリの現在のSOCに基づいて、前記降坂区間の終点における前記バッテリのSOCの推定値を示す終点推定SOCを導出することと、
前記終点推定SOCが所定のSOC基準値以上の場合、前記電動過給機をオン状態にさせることと、
を含む処理を実行する、車両。
【請求項2】
記憶装置をさらに備え、
前記プロセッサは、
前記降坂区間の走行が完了したとき、前記降坂区間の終点における前記バッテリのSOCの実績値から、前記降坂区間の始点における前記バッテリのSOCの実績値を減算してSOC差を導出し、前記SOC差を前記降坂区間の距離で除算して、前記降坂区間における単位距離当たりのSOCの増減量を示すSOC単位増減量を導出して前記記憶装置に記憶させることと、
前記降坂区間を走行しているとき、前記記憶装置に記憶されている過去の前記SOC単位増減量を読み出し、読み出した過去の前記SOC単位増減量に前記降坂区間における現在の位置から終点までの距離を乗算して、現在の位置から終点に到達するまでの区間におけるSOCの増減量の推定値を示すSOC推定増減量を導出することと、
前記降坂区間を走行しているとき、前記バッテリの現在のSOCに前記SOC推定増減量を加算して、前記終点推定SOCを導出することと、
を含む処理を実行する、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
駆動用のエンジンと、
駆動用のモータジェネレータと、
前記モータジェネレータと電気的に接続されるバッテリと、
前記バッテリから供給される電力を消費して、前記エンジンに供給する空気を圧縮して前記エンジンに供給する電動過給機と、
降坂時に運転者によるオンオフの入力操作が可能なスイッチと、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
1つまたは複数のプロセッサと、
前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、
を有し、
前記プロセッサは、
前記スイッチがオン状態である場合、自車両の速度を所定速度以下に抑制することと、
前記スイッチがオン状態であり、かつ、前記バッテリのSOCが所定のSOC基準値以上の場合、前記電動過給機をオン状態にさせることと、
を含む処理を実行する、車両。
【請求項4】
駆動用のエンジンと、
駆動用のモータジェネレータと、
前記モータジェネレータと電気的に接続されるバッテリと、
前記バッテリから供給される電力を消費して、前記エンジンに供給する空気を圧縮して前記エンジンに供給する電動過給機と、
運転者による制動操作を検出する制動センサと、
路面の勾配を検出する勾配センサと、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
1つまたは複数のプロセッサと、
前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、
を有し、
前記プロセッサは、
前記制動センサにより前記制動操作が検出され、前記勾配センサにより検出された下り勾配の絶対値が所定の勾配基準値以上であり、かつ、前記バッテリのSOCが所定のSOC基準値以上の場合、前記電動過給機をオン状態にさせること、
を含む処理を実行する、車両。
【請求項5】
前記エンジンの吸気バルブおよび排気バルブの開閉タイミングを変更可能な可変バルブタイミング機構をさらに備え、
前記プロセッサは、
前記電動過給機がオン状態である場合、前記電動過給機がオフ状態である場合と比べ、前記吸気バルブを閉じるタイミングを早くし、前記排気バルブを開くタイミングを遅くすること、
を含む処理を実行する、請求項1から4のいずれか1項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、クランクシャフトに連結されて回生ブレーキユニットとして機能する回生発電機と、空気を圧縮してシリンダに供給する電動過給機とを有するエンジンが開示されている。かかるエンジンでは、バッテリが満充電の場合、回生発電機の回生電力が電動過給機に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-270602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両を制動させる制動力としては、機械的な制動装置による機械制動力の他、エンジンによるエンジン制動力、および、モータジェネレータの回生動作による回生制動力がある。例えば、バッテリのSOCが比較的高い場合、モータジェネレータを回生動作させず、機械制動力とエンジン制動力とにより車両の制動が行われる。そうすると、例えば、降坂時のように制動を比較的長時間行う状況などでは、機械制動力による制動装置の負担が大きくなり、制動装置が早く劣化するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、降坂時に適切な制動を行うことが可能な車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態に係る車両は、
駆動用のエンジンと、
駆動用のモータジェネレータと、
前記モータジェネレータと電気的に接続されるバッテリと、
前記バッテリから供給される電力を消費して、前記エンジンに供給する空気を圧縮して前記エンジンに供給する電動過給機と、
自車両の走行ルートを特定するナビゲーション装置と、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
1つまたは複数のプロセッサと、
前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、
を有し、
前記プロセッサは、
特定された前記走行ルートにおける下り勾配の区間である降坂区間を特定することと、
特定された前記降坂区間を走行しているとき、前記バッテリの現在のSOCに基づいて、前記降坂区間の終点における前記バッテリのSOCの推定値を示す終点推定SOCを導出することと、
前記終点推定SOCが所定のSOC基準値以上の場合、前記電動過給機をオン状態にさせることと、
を含む処理を実行する。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態に係る車両は、
駆動用のエンジンと、
駆動用のモータジェネレータと、
前記モータジェネレータと電気的に接続されるバッテリと、
前記バッテリから供給される電力を消費して、前記エンジンに供給する空気を圧縮して前記エンジンに供給する電動過給機と、
降坂時に運転者によるオンオフの入力操作が可能なスイッチと、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
1つまたは複数のプロセッサと、
前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、
を有し、
前記プロセッサは、
前記スイッチがオン状態である場合、自車両の速度を所定速度以下に抑制することと、
前記スイッチがオン状態であり、かつ、前記バッテリのSOCが所定のSOC基準値以上の場合、前記電動過給機をオン状態にさせることと、
を含む処理を実行する。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態に係る車両は、
駆動用のエンジンと、
駆動用のモータジェネレータと、
前記モータジェネレータと電気的に接続されるバッテリと、
前記バッテリから供給される電力を消費して、前記エンジンに供給する空気を圧縮して前記エンジンに供給する電動過給機と、
運転者による制動操作を検出する制動センサと、
路面の勾配を検出する勾配センサと、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
1つまたは複数のプロセッサと、
前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、
を有し、
前記プロセッサは、
前記制動センサにより前記制動操作が検出され、前記勾配センサにより検出された下り勾配の絶対値が所定の勾配基準値以上であり、かつ、前記バッテリのSOCが所定のSOC基準値以上の場合、前記電動過給機をオン状態にさせること、
を含む処理を実行する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、降坂時に適切な制動を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態にかかる車両の構成を示す概略図である。
図2図2は、車両の減速時あるいは降坂時の制動力について説明する図である。
図3図3は、第1実施形態の車両の動作の一例を示す図である。
図4図4は、第1実施形態の制動制御部の動作の流れを説明するフローチャートである。
図5図5は、第2実施形態にかかる車両の構成を示す概略図である。
図6図6は、第2実施形態の制動制御部の動作の流れを説明するフローチャートである。
図7図7は、第3実施形態にかかる車両の構成を示す概略図である。
図8図8は、第3実施形態の制動制御部が事前に行っておく処理の概要を説明する図である。
図9図9は、第3実施形態の制動制御部が制動を制御するときの概要を説明する図である。
図10図10は、第3実施形態の制動制御部が事前に行っておく処理の流れを説明するフローチャートである。
図11図11は、第3実施形態の制動制御部が制動を制御するときの動作の流れを説明するフローチャートである。
図12図12は、第3実施形態の制動制御部が制動を制御するときの動作の流れを説明するフローチャートである。
図13図13は、第4実施形態にかかる車両の構成を示す概略図である。
図14図14は、第4実施形態の制動制御部およびバルブ制御部の動作の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料、数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態にかかる車両1の構成を示す概略図である。車両1は、駆動用のモータジェネレータ10および駆動用のエンジン12を備えるハイブリッド自動車である。以後、車両1を自車両という場合がある。
【0013】
また、車両1は、モータジェネレータ10に電力を供給するバッテリ14を備える。バッテリ14は、例えば、リチウムイオンバッテリなどであり、放電および充電が可能な2次電池である。
【0014】
モータジェネレータ10は、不図示のインバータを通じて、図1の一点鎖線で示すようにバッテリ14に電気的に接続される。モータジェネレータ10は、バッテリ14から電力が供給されるとモータとして機能し、供給された電力に従って回転する。モータジェネレータ10は、車輪16に接続される。車両1は、モータジェネレータ10の回転による駆動力を、車輪16に伝達することが可能な構成となっている。
【0015】
また、車両1の減速時や降坂時、モータジェネレータ10は、車輪16の回転に従って発電する発電機として機能する。モータジェネレータ10は、生成した電力をバッテリ14に供給することでバッテリ14を充電することができる。すなわち、モータジェネレータ10は、車輪16の回転によるエネルギーを電気エネルギーに変換して回収する回生が可能となっている。モータジェネレータ10が回生動作を行うことに伴って、車輪16には、車両1を減速させる制動力が発生する。以後、モータジェネレータ10の回生動作による制動力を、回生制動力という場合がある。
【0016】
エンジン12は、ピストン20、シリンダ22、吸気ポート24、排気ポート26、吸気バルブ28および排気バルブ30を有する。ピストン20は、シリンダ22の内部に摺動可能に収容される。吸気ポート24および排気ポート26は、シリンダ22の内部に連通する。吸気バルブ28は、吸気ポート24を開閉する。排気バルブ30は、排気ポート26を開閉する。
【0017】
吸気バルブ28が開状態となると、吸気ポート24を通じてシリンダ22の内部に空気が送入される。また、シリンダ22の内部には、燃料が噴射される。シリンダ22の内部において、空気と燃料との混合気が燃焼することで、ピストン20がシリンダ22の内部で摺動する。ピストン20が摺動すると、クランク軸32が回転する。クランク軸32は、車輪16に接続される。車両1は、ピストン20の摺動による駆動力を、クランク軸32を通じて車輪16に伝達することが可能な構成となっている。
【0018】
また、負荷に対してエンジンの出力が小さくなると、車輪16には、エンジン12による車両1を減速させる制動力が発生する。以後、エンジン12による制動力を、エンジン制動力という場合がある。
【0019】
排気バルブ30が開状態となると、排気ポート26を通じてシリンダ22の内部のガスがシリンダ22の外部に排出される。
【0020】
車両1は、吸気流路40および排気流路42を備える。吸気流路40は、吸気ポート24に繋がっている。吸気流路40には、吸気ポート24を通じてシリンダ22の内部に送入される空気が流通する。排気流路42は、排気ポート26に繋がっている。排気流路42には、排気ポート26を通じてシリンダ22の外部に排出されるガスが流通する。
【0021】
吸気流路40には、空気が流通する方向に沿った順に、エアクリーナ50、インタークーラ52、スロットルバルブ54が設けられる。エアクリーナ50は、吸気流路40に取り込む空気から異物を取り除く。インタークーラ52は、吸気流路40を流通する空気を冷却する。スロットルバルブ54は、運転者の加速操作に応じて、シリンダ22の内部に送入する空気量を調整する。
【0022】
排気流路42には、触媒56が設けられる。触媒56は、例えば、三元触媒などであり、シリンダ22から排出されたガスを浄化する。
【0023】
車両1は、電動過給機60を備える。電動過給機60は、コンプレッサ62、排気タービン64、モータ66を有する。コンプレッサ62は、吸気流路40に設けられ、吸気流路40におけるエアクリーナ50とインタークーラ52との間に位置する。排気タービン64は、排気流路42に設けられ、排気流路42における排気ポート26と触媒56との間に位置する。排気タービン64は、排気流路42をガスが流通することで回転する。
【0024】
モータ66は、コンプレッサ62に接続される。排気タービン64は、モータ66を通じてコンプレッサ62に接続される。モータ66は、不図示のインバータを通じて、図1の一点鎖線で示すようにバッテリ14に電気的に接続される。モータ66は、バッテリ14から供給される電力を消費してコンプレッサ62を駆動する。また、電動過給機60では、排気タービン64の回転に従ってコンプレッサ62を駆動させることもできる。
【0025】
コンプレッサ62は、エアクリーナ50を通じて吸気流路40に取り込まれた空気を圧縮し、圧縮した空気をインタークーラ52に送出する。インタークーラ52に供給された空気は、スロットルバルブ54および吸気ポート24を通じてシリンダ22の内部に送入される。すなわち、電動過給機60は、バッテリ14から供給される電力を消費して、エンジン12に供給する空気を圧縮してエンジン12に供給する。
【0026】
なお、図1で示す電動過給機60は、モータ66によりコンプレッサ62を駆動する構成と、排気タービン64によりコンプレッサ62を駆動する構成とが一体となっていた。しかし、電動過給機60は、少なくともモータ66によりコンプレッサ62を駆動する構成を含んでいればよく、排気タービン64によりコンプレッサ62を駆動する構成が省略されてもよい。また、モータ66によりコンプレッサ62を駆動する電動過給機60とは別に、他のコンプレッサ62と、当該他のコンプレッサを駆動する排気タービンとから構成される機械的な過給機が車両1に設けられてもよい。
【0027】
車両1は、速度センサ70、制動センサ72、勾配センサ74、電圧センサ76および電流センサ78を備える。速度センサ70は、車両1の速度を検出する。制動センサ72は、例えば、ブレーキペダルに設けられ、運転者によるブレーキペダルの操作量である制動操作量を検出する。勾配センサ74は、慣性計測装置(IMU)等を通じ、車両1が走行している路面の勾配を検出する。電圧センサ76は、バッテリ14の端子の電圧を検出する。電流センサ78は、バッテリ14の端子の電流を検出する。
【0028】
車両1は、制動装置80を備える。制動装置80は、例えば、ディスク式制動装置またはドラム式制動装置などであり、車輪16の回転を機械的に抑制する構成となっている。制動装置80は、例えば、油圧によって駆動する。以後、制動装置80による制動力を、機械制動力という場合がある。
【0029】
車両1は、制御装置90を備える。制御装置90は、1つまたは複数のプロセッサ92と、プロセッサ92に接続される1つまたは複数のメモリ94とを備える。メモリ94は、プログラム等が格納されたROMおよびワークエリアとしてのRAMを含む。プロセッサ92は、プログラムを実行することで、車両1全体を制御する。例えば、プロセッサ92は、エンジン12の駆動およびモータジェネレータ10の駆動を制御する。
【0030】
プロセッサ92は、プログラムを実行することで、制動制御部100としても機能する。制動制御部100は、運転者によってブレーキペダルが操作されたとき、制動センサ72により検出された制動操作量に基づいて、運転者により要求された制動力を示す要求制動力を導出する。制動制御部100は、要求制動力に従って車両1の制動を制御し、車両1を減速させる。制動制御部100については、後に詳述する。
【0031】
図2は、車両1の減速時あるいは降坂時の制動力について説明する図である。図2(a)は、バッテリ14のSOC(State Of Charge)が比較的低い場合の一例を示す。図2(b)は、バッテリ14のSOCが比較的高い場合の一例であり、かつ、減速時に電動過給機60をオン状態にさせない比較例を示す。また、図2(c)は、バッテリ14のSOCが比較的高い場合の一例であり、かつ、減速時に電動過給機60をオン状態にさせる第1実施形態の例を示す。
【0032】
制動制御部100は、電圧センサ76の検出値または電流センサ78の検出値に基づいてバッテリ14のSOCを導出することができる。なお、SOCは、満充電容量に対する現在の充電容量を百分率で表したものであり、バッテリ14の充電率を示す。
【0033】
SOCが比較的低い場合、バッテリ14は、モータジェネレータ10が回生動作を行うことで生成された電力を受け入れることができる。この場合、図2(a)で示すように、要求制動力は、エンジン制動力、機械制動力および回生制動力に区分することができる。換言すると、要求制動力分の制動が、エンジン制動力、機械制動力および回生制動力の合計により実現される。
【0034】
ところが、SOCが100%に近い場合などでは、バッテリ14に電力を供給しようとしても、バッテリ14としては電力をほとんど受け入れることができない。このことから、図2(b)で示す比較例では、モータジェネレータ10を回生動作させず、要求制動力をエンジン制動力および機械制動力で区分している。
【0035】
図2(b)で示すように、回生制動力による制動を含まない場合、回生制動力による制動を含む場合と比べ、要求制動力における機械制動力の割合が多くなる。そうすると、例えば、降坂時のように制動を比較的長時間行う状況などでは、機械制動力による制動装置80の負担が大きくなり、制動装置80が早く劣化するおそれがある。
【0036】
そこで、第1実施形態の車両1において、制動制御部100は、所定の条件を満たす場合、電動過給機60をオン状態にさせる。所定の条件は、制動センサ72により制動操作が検出され、勾配センサ74により検出された下り勾配の絶対値が所定の勾配基準以上であり、かつ、バッテリ14のSOCが所定のSOC基準値以上であるとする。
【0037】
所定の勾配基準値は、例えば、5°などに設定されるが、この例に限らず、路面に勾配がないことと路面が下り勾配となっていることとを区別可能な任意の値に設定されてもよい。所定のSOC基準値は、例えば、75%などに設定されるが、この例に限らず、SOCが比較的高い状態であることを区別可能な任意の値に設定されてもよい。つまり、第1実施形態の車両1では、運転者によって制動が要求され、下り勾配を走行しており、かつ、SOCが比較的高い状態であれば、電動過給機60がオン状態とされる。
【0038】
電動過給機60がオン状態である場合、電動過給機60は、バッテリ14の電力を消費する。そうすると、SOCが100%に近い状態であっても、電動過給機60が電力を消費することになるため、モータジェネレータ10は、電動過給機60が消費する電力分だけ発電することが可能となる。
【0039】
これにより、第1実施形態の車両1では、図2(c)で示すように、SOCが比較的高い状態であっても、要求制動力に回生制動力を含ませることができる。その結果、第1実施形態の車両1では、図2(b)の比較例と比べ、要求制動力における機械制動力の割合を抑制することができ、制動装置80の劣化を抑制することが可能となる。
【0040】
また、電動過給機60がオン状態のとき、電動過給機60により多くの空気がシリンダ22の内部に送入される。そうすると、電動過給機60がオフ状態のときと比べ、ピストン20が摺動するときのシリンダ22の内部の空気による抵抗が大きくなる。
【0041】
これにより、図2(c)で示すように、電動過給機60がオン状態のとき、電動過給機60がオフ状態のときと比べ、エンジン制動力が大きくなる。その結果、第1実施形態の車両1では、要求制動力における機械制動力の割合を、より抑制することができ、制動装置80の劣化を、より抑制することが可能となる。
【0042】
図3は、第1実施形態の車両1の動作の一例を示す図である。図3(a)は、制動センサ72により検出された制動操作量の時間推移の一例を示す。図3(b)は、速度センサ70により検出された車両1の速度の時間推移の一例を示す。図3(c)は、SOCの時間推移の一例を示す。図3(d)は、電動過給機60の消費電力の時間推移の一例を示す。図3(e)は、モータジェネレータ10が発電する回生電力の時間推移の一例を示す。図3(a)~図3(e)の時間軸は共通しているとする。また、図3(a)~図3(e)の例では、車両1が下り坂を走行して停止する場合を示す。
【0043】
図3(a)で示すように、時点T1において、制動操作量が0から増加し、その後、制動操作量がBmaxになったとする。
【0044】
そうすると、図3(b)で示すように、時点T1においてV1であった車両1の速度は、制動操作量に応じて低くなり、時点T4において0になったとする。
【0045】
また、図3(c)で示すように、時点T1のときのSOCが、SOC基準値であるTh1より高いS1であったとする。
【0046】
これらを踏まえると、時点T1において、制動操作が検出され、路面が下り勾配であり、かつ、SOCがSOC基準値以上の条件を満たす。このため、制動制御部100は、図3(d)で示すように、時点T1において電動過給機60をオフ状態からオン状態に変化させる。電動過給機60のオンとともに、制動制御部100は、図3(e)で示すように、モータジェネレータ10の回生動作を開始させる。
【0047】
より詳細には、電動過給機60は、オン状態となると、モータ66の回転数に従った電力を消費する。制動制御部100は、電動過給機60の消費電力と、モータジェネレータ10の回生電力とが大凡同じになるように、モータジェネレータ10を回生動作させる。モータジェネレータ10の回生電力と電動過給機60の消費電力とが大凡同じであるため、図3(c)で示すように、時点T1以降のSOCを、時点T1のときのSOCに維持させつつ、回生制動力を発生させることができる。
【0048】
例えば、時点T1の後、電動過給機60の消費電力が増加し、時点T2において電動過給機60の消費電力がP1となったとする。モータジェネレータ10の回生電力は、電動過給機60の消費電力の増加量と大凡同じ増加量で増加し、時点T2において、P1と大凡同じR1となる。電動過給機60の消費電力は、時点T2から時点T3までP1で維持されたとする。時点T2から時点T3までの間の電動過給機60の消費電力が一定であることから、モータジェネレータ10の回生電力は、R1で維持される。
【0049】
ここで、モータジェネレータ10が発電できる電力、すなわち、回生電力は、車両1の速度の低下に従って小さくなる。例えば、図3(e)で示すように、時点T3の後、モータジェネレータ10の回生電力がR1から減少し、時点T4においてゼロになるとする。
【0050】
これを踏まえ、制動制御部100は、車両1の速度に基づいて、図3(d)で示すように、時点T3の後、電動過給機60の消費電力、換言すると、電動過給機60の出力を、徐々に減少させる。これにより、車両1の速度が低くなる時点T3から時点T4の間においても、電動過給機60の消費電力とモータジェネレータ10の回生電力とを大凡同じにすることができる。
【0051】
なお、ここでは、電動過給機60の消費電力とモータジェネレータ10の回生電力とが大凡同じになる制御例を説明していた。しかし、制動制御部100は、電動過給機60の消費電力とモータジェネレータ10の回生電力とが異なるように制御してもよい。より詳細には、制動制御部100は、電動過給機60を駆動させるときの電動過給機60の消費電力、すなわち、電動過給機60の出力を、現在のSOCに従って決定してもよい。
【0052】
例えば、制動制御部100は、現在のSOCがSOC基準値以上のうち比較的低い場合、電動過給機60の出力をモータジェネレータ10の回生電力より大きくしてもよい。これにより、モータジェネレータ10の回生電力から電動過給機60の消費電力を減算した差分の電力によりバッテリ14を充電しつつ、回生制動力を発生させることができる。
【0053】
また、制動制御部100は、現在のSOCがSOC基準値以上のうち比較的高い場合、電動過給機60の出力をモータジェネレータ10の回生電力より小さくしてもよい。これにより、バッテリ14に蓄積された電力のうち、モータジェネレータ10の回生電力から電動過給機60の消費電力を減算した差分の電力だけ消費させてバッテリ14のSOCを適切に減少させつつ、回生制動力を発生させることができる。
【0054】
図4は、第1実施形態の制動制御部100の動作の流れを説明するフローチャートである。制動制御部100は、所定の周期で訪れる所定の割込みタイミングが到来するごとに、図4の一連の処理を繰り返し実行する。
【0055】
所定の割込みタイミングが到来すると、制動制御部100は、制動センサ72から現在の制動操作量を取得する(S10)。制動制御部100は、取得した制動操作量が所定の制動基準値より大きいか否かを判定する(S11)。所定の制動基準値は、運転者による制動操作が入力されたことを区別することが可能な任意の値に設定される。制動操作量が制動基準値以下の場合(S11におけるNO)、今回の一連の処理を終了する。
【0056】
制動操作量が所定の制動基準値より大きい場合(S11におけるYES)、制動センサ72により制動操作が検出されたことに相当し、制動制御部100は、バッテリ14の現在のSOCを導出する(S12)。例えば、制動制御部100は、電圧センサ76からバッテリ14の入出力端子の電圧を取得し、取得した電圧に基づいてSOCを導出する。次に、制動制御部100は、速度センサ70から自車両の現在の速度を取得する(S13)。
【0057】
次に、制動制御部100は、現在の制動操作量および現在の速度に基づいて、現在の要求制動力を導出する(S14)。
【0058】
次に、制動制御部100は、現在のSOCがSOC基準値以上であるか否かを判定する(S15)。現在のSOCがSOC基準値以上である場合(S15におけるYES)、制動制御部100は、自車両の現在位置における路面の勾配を勾配センサから取得する(S17)。
【0059】
制動制御部100は、取得した現在の勾配が下り勾配を示し、現在の下り勾配の絶対値が勾配基準値以上であるか否かを判定する(S17)。
【0060】
現在の下り勾配の絶対値が勾配基準値以上である場合(S17におけるYES)、制動制御部100は、自車両の現在の速度に基づいて電動過給機60の出力を決定する(S18)。そして、制動制御部100は、電動過給機60をオン状態にさせ(S19)、ステップS21の処理に進む。これにより、決定された出力で電動過給機60が駆動することになる。なお、制動制御部100は、自車両の現在の速度と現在のSOCとに基づいて電動過給機60の出力を決定してもよい。
【0061】
ステップS15において、現在のSOCがSOC基準値未満である場合(S15におけるNO)、制動制御部100は、電動過給機60をオフ状態にさせ(S20)、ステップS21の処理に進む。また、ステップS17において、現在の下り勾配の絶対値が勾配基準値未満である場合も(S17におけるNO)、制動制御部100は、電動過給機60をオフ状態にさせ(S20)、ステップS21の処理に進む。
【0062】
なお、制動制御部100は、制動操作量が制動基準値より大きい状態から制動基準値以下に減少した場合に、電動過給機60をオフするようにしてもよい。
【0063】
ステップS21において、制動制御部100は、要求制動力および電動過給機60の出力に基づいて、回生制動力を決定する(S21)。例えば、電動過給機60がオン状態である場合、制動制御部100は、要求制動力以下の制動力であり、かつ、モータジェネレータ10の回生電力が電動過給機60の出力に対応する電力となるように回生制動力を決定する。また、例えば、電動過給機60がオフ状態である場合、制動制御部100は、要求制動力以下であり、かつ、モータジェネレータ10の回生電力が最大となるように回生制動力を決定する。
【0064】
次に、制動制御部100は、エンジン12の回転数および電動過給機60の出力に基づいて、エンジン制動力を決定する(S22)。例えば、電動過給機60がオン状態である場合、制動制御部100は、エンジン12の回転数に従った制動力に、電動過給機60の出力に従った制動力を加算してエンジン制動力を決定する。また、例えば、電動過給機60がオフ状態である場合、制動制御部100は、エンジン12の回転数に従った制動力をエンジン制動力とする。
【0065】
次に、制動制御部100は、要求制動力からエンジン制動力および回生制動力を減算して機械制動力を決定する(S23)。
【0066】
次に、制動制御部100は、決定した回生制動力でモータジェネレータ10に制動を実行させ、決定したエンジン制動力でエンジン12に制動を実行させ、決定した機械制動力で制動装置80に制動を実行させ(S24)、一連の処理を終了する。
【0067】
以上のように、第1実施形態の車両1では、制動操作が検出され、下り勾配の絶対値が所定の勾配基準値以上であり、かつ、SOCが所定のSOC基準値以上の場合、電動過給機60がオン状態にされる。電動過給機60がオン状態にされると、モータジェネレータ10の回生電力を電動過給機60で消費することができるため、モータジェネレータ10による回生制動力を発生させることができる。
【0068】
したがって、第1実施形態の車両1では、降坂時にSOCが比較的高い状態であったとしても、適切な制動を行うことができる。
【0069】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態にかかる車両200の構成を示す概略図である。第2実施形態の車両200は、スイッチ210を有する点、および、制動制御部100の具体的な制御内容が、第1実施形態の車両1と異なる。第2実施形態の車両200のその他の構成については、第1実施形態の車両1と同様の構成となっているため、説明を省略する。
【0070】
スイッチ210は、例えば、ヒルディセントスイッチ(Hill Descent Switch)であり、運転者によるオンオフの入力操作が可能となっている。スイッチ210は、例えば、自車両が降坂を走行するときに運転者によってオン状態にされる。
【0071】
制動制御部100は、スイッチ210がオン状態である場合、自車両の速度を所定速度以下に抑制する。これにより、降坂時に運転者がスイッチ210をオンすることで、降坂時の自車両の速度が過度に高くなることを防止することができる。
【0072】
スイッチ210がオン状態とされる状況は、自車両が降坂を走行するときと推測することができる。そこで、第2実施形態の制動制御部100は、スイッチ210がオン状態であり、かつ、バッテリ14のSOCが所定のSOC基準値以上の場合、電動過給機60をオン状態にさせる。すなわち、第2実施形態では、降坂時であると推測されるときであり、SOCが比較的高い状態であるときに、電動過給機60がオン状態にされる。
【0073】
図6は、第2実施形態の制動制御部100の動作の流れを説明するフローチャートである。図6のフローチャートは、破線で囲まれた処理が、第1実施形態の図4のフローチャートと異なる。図6のその他の処理については、図4と同様の処理となっているため、説明を省略する。
【0074】
図6で示すように、ステップS14で要求駆動力を導出した後、制動制御部100は、スイッチ210の現在の状態を取得する(S30)。制動制御部100は、スイッチ210がオン状態であるか否かを判定する(S31)。
【0075】
スイッチ210がオン状態である場合(S31におけるYES)、制動制御部100は、車両200の現在の速度に基づいて要求駆動力を補正し(S32)、ステップS32の処理に進む。例えば、制動制御部100は、現在の速度が所定の上限速度を超えていた場合、速度が所定の上限速度以下となるように要求制動力を増加するように補正する。所定の上限速度は、降坂を安全に走行可能な適切な速度に設定される。なお、制動制御部100は、スイッチ210がオン状態であっても、現在の速度が所定の上限速度以下であった場合には、要求制動力の補正を省略してもよい。
【0076】
スイッチ210がオフ状態である場合(S31におけるNO)、制動制御部100は、要求制動力の補正を行わず、ステップS32の処理に進む。
【0077】
ステップS33において、制動制御部100は、現在のSOCが所定のSOC基準値以下であるか否かを判定する(S33)。なお、所定のSOC基準値は、第1実施形態で説明した所定のSOC基準値と同じである。
【0078】
現在のSOCが所定のSOC基準値以上の場合(S33におけるYES)、制動制御部100は、自車両の現在の速度に基づいて電動過給機60の出力を決定する(S34)。そして、制動制御部100は、電動過給機60をオン状態にさせ(S35)、ステップS21の処理に進む。これにより、決定された出力で電動過給機60が駆動することになる。なお、制動制御部100は、自車両の現在の速度と現在のSOCとに基づいて電動過給機60の出力を決定してもよい。
【0079】
現在のSOCが所定のSOC基準値未満の場合(S33におけるNO)、制動制御部100は、電動過給機60をオフ状態にさせ(S36)、ステップS21の処理に進む。
【0080】
ステップS21以降では、図4と同様に、制動制御部100は、回生制動力を決定し(S21)、エンジン制動力を決定し(S22)、機械制動力を決定し(S23)、決定したそれぞれの制動力により制動を実行させる(S24)。
【0081】
以上のように、第2実施形態の車両200では、スイッチ210がオン状態であり、かつ、バッテリ14のSOCが所定のSOC基準値以上の場合、電動過給機60がオン状態にされる。電動過給機60がオン状態にされると、モータジェネレータ10の回生電力を電動過給機60で消費することができるため、モータジェネレータ10による回生制動力を発生させることができる。また、スイッチ210は、運転者によって降坂時にオン状態にされる。
【0082】
したがって、第2実施形態の車両200では、降坂時にSOCが比較的高い状態であったとしても、適切な制動を行うことができる。
【0083】
(第3実施形態)
図7は、第3実施形態にかかる車両300の構成を示す概略図である。第3実施形態の車両300は、ナビゲーション装置310および記憶装置320を有する点、および、制動制御部100の具体的な制御内容が、第1実施形態の車両1と異なる。第3実施形態の車両300のその他の構成については、第1実施形態の車両1と同様の構成となっているため、説明を省略する。
【0084】
ナビゲーション装置310は、運転者などによる入力操作を受け付ける入力装置を有する。ナビゲーション装置310は、各種の情報を表示する表示装置など、運転者などに各種の情報を提示する出力装置を有する。また、ナビゲーション装置310の内部メモリには、地図情報が記憶されている。地図情報は、各地点における緯度、経度および高度の3次元の位置情報を含むものとする。また、ナビゲーション装置310は、GPSなどにより自車両の現在位置を取得することができる。
【0085】
ナビゲーション装置310は、自車両が走行する走行ルートを特定することができる。例えば、ナビゲーション装置310は、走行ルートの設定時において、自車両の現在位置を走行ルートの出発地とする。ナビゲーション装置310は、走行ルートの設定時において、入力装置を通じて目的地が入力されると、出発地、目的地および地図情報に基づいて、適切な走行ルートを設定する。
【0086】
記憶装置320は、例えば、ハードディスクドライブなどであり、不揮発性の記憶素子で構成される。なお、不揮発性の記憶素子は、フラッシュメモリなどの電気的に読み書き可能な不揮発性の記憶素子などを含んでもよい。
【0087】
図8は、第3実施形態の制動制御部100が事前に行っておく処理の概要を説明する図である。例えば、ナビゲーション装置310により走行ルートが特定されたとする。制動制御部100は、特定された走行ルートと地図情報とから、走行ルートにおける下り勾配の区間である降坂区間を特定する。例えば、制動制御部100は、走行ルートにおける高度の推移に基づいて降坂区間を特定する。
【0088】
車両300が走行ルートを走行し、自車両が降坂区間の始点に到達すると、制動制御部100は、当該始点に到達したときのSOCの実績値である始点時SOCを取得する。車両300が降坂区間を走行して降坂区間の終点に到達すると、制動制御部100は、当該終点に到達したときのSOCの実績値である終点時SOCを取得する。制動制御部100は、終点SOCから始点時SOCを減算して、SOC差を導出する。SOC差は、降坂区間全体を走行したときのSOCの増減量を示す。
【0089】
そして、制動制御部100は、導出したSOC差を、降坂区間の始点から終点までの距離である降坂距離で除算して、SOC単位増減量を導出する。SOC単位増減量は、降坂区間における単位距離当たりのSOCの増減量を示す。制動制御部100は、SOC単位増減量を、降坂区間および降坂区間の勾配と関連付けて記憶装置320に記憶させる。降坂区間の勾配は、例えば、降坂区間の始点の高度と終点の高度との高度差と降坂距離とに基づいて特定することができる。SOC単位増減量は、例えば、今回の降坂区間と同じ降坂区間を、自車両が今後走行するときに利用される。
【0090】
なお、制動制御部100は、降坂区間を走行する都度、SOC単位増減量を記憶装置320に蓄積してもよい。
【0091】
図9は、第3実施形態の制動制御部100が制動を制御するときの概要を説明する図である。図9で示すように、車両300が降坂区間を走行しており、自車両の現在位置が、走行ルートの降坂区間の途中にあるとする。
【0092】
以後、降坂区間内の現在位置と、降坂区間の終点との間の区間を、残区間という場合がある。また、図9のハッチングで示すように、残区間の開始位置である現在位置から残区間の終了位置である終点までの距離を、残距離という場合がある。残区間および残距離は、降坂区間および現在位置から特定することができる。
【0093】
降坂区間を走行しているとき、制動制御部100は、現在走行している降坂区間と同じ降坂区間を過去に走行したときに記憶装置320に記憶されたSOC単位増減量を記憶装置320から読み出す。
【0094】
なお、読み出すSOC単位増減量は、現在走行している降坂区間と同じ降坂区間を過去に走行したときのSOC単位増減量に限らない。例えば、制動制御部100は、現在走行している降坂区間の勾配と同じ勾配の他の降坂区間を過去に走行したときのSOC単位増減量を読み出してもよい。現在走行している降坂区間の勾配は、例えば、現在走行している降坂区間の始点の高度と終点の高度との高度差と降坂距離とに基づいて特定することができる。
【0095】
制動制御部100は、読み出した過去のSOC単位増減量に、残距離を乗算して、残区間のSOC推定増減量を導出する。SOC推定増減量は、残区間全体を将来走行する場合におけるSOCの増減量の推定値を示す。
【0096】
制動制御部100は、現在のSOCに、残区間のSOC推定増減量を加算して、終点推定SOCを導出する。終点推定SOCは、残区間を将来走行して終点に到達したときのSOCの推定値を示す。
【0097】
制動制御部100は、終点推定SOCが所定のSOC基準値以上の場合、電動過給機60をオン状態にさせる。所定のSOC基準値は、第1実施形態で説明した所定のSOC基準値と同じである。すなわち、第3実施形態の車両300では、将来、降坂区間の終点に到達したときのSOCがSOC基準値以上になると推定された場合に、電動過給機60がオン状態とされる。これにより、第3実施形態の車両300では、降坂区間の走行を完了したときのSOCが過度に高くなることを未然に防止することができる。
【0098】
図10は、第3実施形態の制動制御部100が事前に行っておく処理の流れを説明するフローチャートである。制動制御部100は、所定の周期で訪れる所定の割込みタイミングが到来するごとに、図10の一連の処理を繰り返し実行する。
【0099】
所定の割込みタイミングが到来すると、制動制御部100は、ナビゲーション装置310により特定された現在の走行ルートを、ナビゲーション装置310から取得する(S40)。制動制御部100は、現在の走行ルートに基づいて、現在の走行ルートに存在する降坂区間を特定する(S41)。
【0100】
次に、制動制御部100は、今回の割込みタイミングが、特定された降坂区間の始点を通過したタイミングであるかを判定する(S42)。例えば、制動制御部100は、前回の自車両の位置が始点の位置よりも走行ルートにおける手前にあり、今回の自車両の位置が始点の位置よりも走行ルートにおける先にある場合、今回の割込みタイミングが始点を通過したタイミングであると判定する。
【0101】
今回の割込みタイミングが、始点を通過したタイミングであると判定した場合(S42におけるYES)、制動制御部100は、現在のSOCを始点時SOCとして導出する(S43)。そして、制動制御部100は、導出した始点時SOCを降坂区間に関連付けて記憶装置320に記憶させ(S44)、ステップS45の処理に進む。
【0102】
また、今回の割込みタイミングが始点を通過したタイミングではないと判定した場合(S42におけるNO)、制動制御部100は、そのままステップS45の処理に進む。
【0103】
ステップS45において、制動制御部100は、今回の割込みタイミングが、降坂区間の終点を通過したタイミングであるかを判定する(S45)。例えば、制動制御部100は、前回の自車両の位置が終点の位置よりも走行ルートにおける手前にあり、今回の自車両の位置が終点の位置よりも走行ルートにおける先にある場合、今回の割込みタイミングが終点を通過したタイミングであると判定する。
【0104】
今回の割込みタイミングが、終点を通過したタイミングであると判定した場合(S45におけるYES)、制動制御部100は、現在のSOCを終点時SOCとして導出する(S46)。
【0105】
次に、制動制御部100は、導出した終点SOCから、降坂区間の始点を通過したタイミングにおいて記憶された始点時SOCを減算して、SOC差を導出する(S47)。次に、制動制御部100は、SOC差を降坂距離で除算して降坂区間のSOC単位増減量を導出する(S48)。制動制御部100は、終点時SOC、SOC差およびSOC単位増減量を、降坂区間および降坂区間の勾配に関連付けて記憶装置320に記憶させ、今回の一連の処理を終了する。すなわち、降坂区間の走行が完了したときに、SOC単位増減量が記憶装置320に記憶される。
【0106】
また、今回の割込みタイミングが、終点を通過したタイミングではないと判定した場合(S45におけるNO)、制動制御部100は、そのまま今回の一連の処理を終了する。
【0107】
図11および図12は、第3実施形態の制動制御部100が制動を制御するときの動作の流れを説明するフローチャートである。図11の「A」は、図12の「A」に繋がっている。図11および図12のフローチャートは、破線で囲まれた処理が、第1実施形態の図4のフローチャートと異なる。図11および図12のその他の処理については、図4と同様の処理となっているため、説明を省略する。
【0108】
図11で示すように、ステップS14で要求駆動力を導出した後、制動制御部100は、自車両が現在走行している走行ルートをナビゲーション装置310から取得する(S50)。制動制御部100は、取得した走行ルートに基づいて、走行ルートに存在する降坂区間を特定する(S51)。制動制御部100は、自車両の現在位置をナビゲーション装置310から取得し(S52)、図12のステップS53の処理に進む。
【0109】
ステップS53において、制動制御部100は、自車両の現在位置が降坂区間内にあるかを判定する(S53)。
【0110】
自車両の現在位置が降坂区間内にあると判定した場合(S53におけるYES)、制動制御部100は、過去のSOC単位増減量を記憶装置320から読み出す(S54)。例えば、制動制御部100は、現在位置が属する降坂区間と同じ降坂区間における過去のSOC単位増減量を読み出す。なお、現在位置が属する降坂区間における過去のSOC単位増減量が記憶装置320に記憶されていない場合には、制動制御部100は、現在位置が属する降坂区間の勾配と同じ勾配の他の降坂区間における過去のSOC単位増減量を読み出してもよい。
【0111】
次に、制動制御部100は、現在位置および降坂区間から残区間を特定し、読み出したSOC単位増減量に残区間の残距離を乗算して、残区間のSOC推定増減量を導出する(S55)。制動制御部100は、現在のSOCに、導出したSOC推定増減量を加算して、終点推定SOCを導出する(S56)。
【0112】
次に、制動制御部100は、終点推定SOCがSOC基準値以上であるか否かを判定する(S57)。
【0113】
終点推定SOCがSOC基準値以上である場合(S57におけるYES)、制動制御部100は、自車両の現在の速度に基づいて電動過給機60の出力を決定する(S34)。そして、制動制御部100は、電動過給機60をオン状態にさせ(S59)、ステップS21の処理に進む。これにより、決定された出力で電動過給機60が駆動することになる。なお、制動制御部100は、自車両の現在の速度と現在のSOCとに基づいて電動過給機60の出力を決定してもよい。
【0114】
また、終点推定SOCがSOC基準値未満である場合(S57におけるNO)、制動制御部100は、電動過給機60をオフ状態にさせ(S60)、ステップS21の処理に進む。
【0115】
ステップS21以降では、図4と同様に、制動制御部100は、回生制動力を決定し(S21)、エンジン制動力を決定し(S22)、機械制動力を決定し(S23)、決定したそれぞれの制動力により制動を実行させる(S24)。
【0116】
以上のように、第3実施形態の車両300では、降坂区間を走行しているとき、現在のSOCに基づいて終点推定SOCが導出され、終点推定SOCが所定のSOC基準値以上の場合、電動過給機60がオン状態にされる。電動過給機60がオン状態にされると、モータジェネレータ10の回生電力を電動過給機60で消費することができるため、モータジェネレータ10による回生制動力を発生させることができる。
【0117】
したがって、第3実施形態の車両300では、降坂時にSOCが比較的高い状態であったとしても、適切な制動を行うことができる。
【0118】
また、第3実施形態の車両300では、終点推定SOCが所定のSOC基準値以上の場合に電動過給機60がオン状態にされるため、降坂区間の走行を完了したときのSOCが過度に高くなることを未然に防止することができる。
【0119】
(第4実施形態)
図13は、第4実施形態にかかる車両400の構成を示す概略図である。第4実施形態の車両400は、可変バルブタイミング機構410を有する点、および、プロセッサ92がバルブ制御部420としても機能する点において、第1実施形態の車両1と異なる。第4実施形態の車両400のその他の構成については、第1実施形態の車両1と同様の構成となっているため、説明を省略する。
【0120】
可変バルブタイミング機構410は、エンジン12の吸気バルブ28および排気バルブ30に接続されている。可変バルブタイミング機構410は、吸気バルブ28の開閉タイミング、および、排気バルブ30の開閉タイミングを変更可能な構成となっている。
【0121】
バルブ制御部420は、電動過給機60がオン状態である場合、電動過給機60がオフ状態である場合と比べ、吸気バルブ28を閉じるタイミングを早くし、排気バルブ30を開くタイミングを遅くする。
【0122】
これにより、電動過給機60によってシリンダ22の内部に送入された空気がシリンダ22の内部に保持される時間が長くなる。そうすると、吸気バルブ28および排気バルブ30の開閉タイミングを変更する前と比べ、シリンダ22の内部の空気によってピストン20が抵抗を受ける時間が長くなる。すなわち、吸気バルブ28および排気バルブ30の開閉タイミングを変更することで、吸気バルブ28および排気バルブ30の開閉タイミングを変更する前と比べ、エンジン制動力が大きくなる。その結果、相対的に機械制動力をより抑制することが可能となる。
【0123】
図14は、第4実施形態の制動制御部100およびバルブ制御部420の動作の流れを説明するフローチャートである。図14のフローチャートは、破線で囲まれた処理が、第1実施形態の図4のフローチャートと異なる。図14のその他の処理については、図4と同様の処理となっているため、説明を省略する。
【0124】
図14で示すように、ステップS19で電動過給機60がオン状態とされた後、バルブ制御部420は、可変バルブタイミング制御を行う(S70)。より詳細には、バルブ制御部420は、電動過給機60がオフ状態である場合と比べ、吸気バルブ28を閉じるタイミングを早くし、排気バルブ30を開くタイミングを遅くするように、可変バルブタイミング機構410を制御する。
【0125】
なお、第4実施形態では、電動過給機60がオン状態であれば可変バルブタイミング制御が行われるため、ステップS22において、可変バルブタイミング制御によるエンジン制動力の増加分を考慮してエンジン駆動力が決定される。
【0126】
以上のように、第4実施形態の車両400では、電動過給機60がオン状態である場合、電動過給機60がオフ状態である場合と比べ、吸気バルブ28を閉じるタイミングが早くされ、排気バルブ30を開くタイミングが遅くされる。これにより、第4実施形態の車両400では、エンジン制動力をより大きくすることができ、相対的に機械制動力をより抑制することができる。
【0127】
したがって、第4実施形態の車両400では、降坂時にSOCが比較的高い状態であったとしても、より適切な制動を行うことができる。
【0128】
なお、第4実施形態の車両400は、第1実施形態の車両1に可変バルブタイミング機構410およびバルブ制御部420を適用した構成となっていた。しかし、第2実施形態の車両200に可変バルブタイミング機構410およびバルブ制御部420を適用してもよいし、第3実施形態の車両300に可変バルブタイミング機構410およびバルブ制御部420を適用してもよい。
【0129】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0130】
1、200、300、400 車両
12 エンジン
10 モータジェネレータ
14 バッテリ
28 吸気バルブ
30 排気バルブ
60 電動過給機
72 制動センサ
74 勾配センサ
90 制御装置
92 プロセッサ
94 メモリ
320 記憶装置
210 スイッチ
310 ナビゲーション装置
410 可変バルブタイミング機構
図1
図2
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図14