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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180067
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】把持装置及び荷役装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/00 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
B25J15/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093156
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 弘章
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS02
3C707BS02
3C707CT04
3C707CU02
3C707CV02
3C707CY13
3C707DS02
3C707FS02
3C707FT02
3C707FT13
3C707FU01
3C707HT33
3C707JS02
3C707KT01
3C707KT06
3C707KT18
3C707LT06
3C707LV01
3C707LV06
3C707MT10
3C707NS06
(57)【要約】
【課題】 移載しようとする物品の例えば把持形態の違いに対応可能な把持装置を提供すること。
【解決手段】 実施形態によれば、把持装置は、基部と、第1の移動体と、第2の移動体と、規制部と、傾げ回動部と、バッファと、上面把持部とを有する。第1の移動体、第2の移動体は、所定方向に隣接し、基部に対して所定範囲内を上下動する。規制部は、基部に対し第1の移動体が最下端よりも上方の所定範囲内の位置で、基部に対する第1の移動体の下降を規制/規制解除する。傾げ回動部は、第1の移動体に設けられ、上下方向に交差する回動軸を有する。バッファは、第2の移動体に設けられ、所定方向に交差する軸部と、回動軸の軸回りの回動の回動範囲を規定するカム部とを有する。上面把持部は、傾げ回動部及びバッファに設けられ、物品の上面を把持する。
【選択図】 図17

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、
前記基部に対して所定範囲内を上下動する第1の移動体と、
前記第1の移動体に対して所定方向に隣接し、前記基部に対して所定範囲内を上下動する第2の移動体と、
前記基部に対し前記第1の移動体が最下端よりも上方の前記所定範囲内の位置で、前記基部に対する前記第1の移動体の下降を規制/規制解除する規制部と、
前記第1の移動体に設けられ、上下方向に交差する回動軸を有する傾げ回動部と、
前記第2の移動体に設けられ、前記所定方向に交差する軸部と、前記回動軸の軸回りの回動の回動範囲を規定するカム部とを有するバッファと、
前記傾げ回動部及び前記バッファに設けられ、物品の上面を把持する上面把持部と
を有する把持装置。
【請求項2】
前記カム部は、前記上下方向に対向する1対の長辺部と、前記長辺部に連続し、前記所定方向に対向する1対の円弧部とを有する長穴を有し、
前記軸部は、前記長穴に配置され、前記回動軸の軸回りの回動に応じて、前記1対の円弧部間を移動可能である、
請求項1に記載の把持装置。
【請求項3】
前記基部には、前記上下方向に延びる第1のガイドが設けられ、
前記第1の移動体は、前記第1のガイドに沿って移動する、
請求項1に記載の把持装置。
【請求項4】
前記基部には、前記上下方向に延びる第2のガイドが設けられ、
前記第2の移動体は、前記第2のガイドに沿って移動する、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の把持装置。
【請求項5】
前記傾げ回動部及び前記バッファの前記カム部と前記上面把持部との間に設けられる把持部ベースと、
前記第1の移動体を挟んで、前記第2の移動体の対面の位置において前記把持部ベースに支持され、前記上面把持部に対して近接及び離隔可能な側面把持部と
を有する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の把持装置。
【請求項6】
前記規制部は、前記規制部を動かし、規制/規制解除を切り換え可能なアクチュエータを有する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の把持装置。
【請求項7】
請求項6に記載の把持装置と、
前記アクチュエータを動作させて前記規制部を動かし、前記規制部による前記把持装置の前記基部に対する前記第1の移動体の上下動の規制/規制解除を制御する制御部と
を有する、荷役装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記物品を把持するとき、前記上面把持部で前記物品の前記上面を把持させ、前記アクチュエータを動作させ、前記規制部で前記基部に対する前記第1の移動体の下方への移動を規制するように制御する、請求項7に記載の荷役装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記物品の把持を解放するとき、前記上面把持部から前記物品の前記上面を解放し、前記アクチュエータを動作させ、前記規制部での前記基部に対する前記第1の移動体の下方への移動規制を解除するように制御する、請求項7に記載の荷役装置。
【請求項10】
前記基部を支持し、前記制御部の制御により前記基部を所定範囲内で移動させる前記把持装置用の移動装置を有する、請求項7に記載の荷役装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の把持装置と、
前記基部を支持し、前記基部を所定範囲内で移動させる前記把持装置用の移動装置と、
前記上面把持部による前記物品の上面の把持/把持解放を制御するとともに、前記移動装置による前記基部の移動を制御する制御部と
を有する、荷役装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、把持装置及び荷役装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば略直方体状の物品(荷物)の上面及び4つの側面のうちの1つ(例えば後方側の側面)を把持する二面把持と、略直方体状の物品の上面を把持する一面把持とを切り換えて物品を所望の位置に移載する把持装置を有する荷役装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-176348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、移載しようとする物品の例えば把持形態の違いに対応可能な把持装置及び荷役装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、把持装置は、基部と、第1の移動体と、第2の移動体と、規制部と、傾げ回動部と、バッファと、上面把持部とを有する。第1の移動体は、基部に対して所定範囲内を上下動する。第2の移動体は、第1の移動体に対して所定方向に隣接し、基部に対して所定範囲内を上下動する。規制部は、基部に対し第1の移動体が最下端よりも上方の所定範囲内の位置で、基部に対する第1の移動体の下降を規制/規制解除する。傾げ回動部は、第1の移動体に設けられ、上下方向に交差する回動軸を有する。バッファは、第2の移動体に設けられ、所定方向に交差する軸部と、回動軸の軸回りの回動の回動範囲を規定するカム部とを有する。上面把持部は、傾げ回動部及びバッファに設けられ、物品の上面を把持する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】一実施形態に係る荷役システムを示す概略図。
図2図1に示す荷役システムの概略的なブロック図。
図3図1に示す荷役システムの荷役装置の把持装置を示す概略図。
図4図3中のIV-IV線に沿う概略的な部分断面図。
図5図3中の符号Vで示す位置の構造を示す拡大図。
図6図3中の符号Vで示す位置の構造の、図5の変形例を示す拡大図。
図7】一実施形態に係る荷役システムの把持装置の概略的な制御フローチャート。
図8図7中の上面把持動作に関する概略的な制御フローチャート。
図9図7中の側面把持動作に関する概略的な制御フローチャート。
図10図7中の傾げ動作及び搬送に関する概略的な制御フローチャート。
図11図7中のリリース及び初期位置への移動に関する概略的な制御フローチャート。
図12】把持装置を初期位置から物品の上面に上面把持部の吸着パッドを接触させた状態を示す概略図。
図13図12に続く把持装置の動作を示す概略図。
図14図13に続く把持装置の動作を示す概略図。
図15図14に続く把持装置の動作を示す概略図。
図16図15に続く把持装置の動作を示す概略図。
図17図16に続く把持装置の動作を示す概略図。
図18図16に示す符号XVIで示す位置、及び、図17に示す符号XVIIで示す位置の概略的な拡大図。
図19図17に続く把持装置の動作を示す概略図。
図20図19に続く把持装置の動作を示す概略図。
図21図20中に符号XXIで示す位置の動作を示す概略的な拡大図。
図22図20に続く把持装置の動作を示す概略図。
図23】物品の上面に対して把持装置の上面把持部を用いて上面(一面)把持を行う状態を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1から図23を用いて実施形態に係る荷役システム10について説明する。
【0008】
図1に示すように、実施形態に係る荷役システム10は、物品群G(複数の物品P)が載置されたパレット等の載置部8から1つずつ又は同時に複数の物品Pを取り出す荷役装置12と、取り出した物品Pを所望の搬送先に搬送する第1のコンベア14とを有する。複数の物品Pが載置された載置部8は、フォークリフト等により、所定の位置に載置される。本実施形態では、載置部8は、荷役装置12の後述する物品検出部(カメラ)28の下方の所定位置に配置されることが好適である。説明の簡略化のため、本実施形態では、複数の物品Pは、それぞれ略直方体状であるとする。物品Pは、例えば、水平又は略水平な上面と、上面に直交又は略直交する第1のコンベア14側の面とを有していれば、略直方体状でなくてもよい。
【0009】
荷役装置12は、載置部8が配置される位置と第1のコンベア14との間に配置される。荷役装置12は、第1のコンベア14の搬送方向に沿う一方の縁の近傍に配置される。
なお、第1のコンベア14は、例えばローラコンベア又はベルトコンベア等、適宜のものを用いることができる。
【0010】
ここで、載置部8から荷役装置12を介して第1のコンベア14へ向かう方向に平行な方向を前後方向(所定方向)とする。前後方向は、第1のコンベア14の搬送方向に例えば直交するなど交差する方向である。また、荷役装置12から載置部8に向かう方向を前方向(奥側)とし、荷役装置12から第1のコンベア14に向かう方向を後方向(手前側)とする。上下方向に直交し、かつ、前後方向に直交する方向を、荷役装置12の左右方向(幅方向)とする。
【0011】
荷役装置12は、筐体22と、把持装置24と、把持装置24用の移動装置26と、物品検出部28と、第2のコンベア30と、第2のコンベア30用の移動装置32と、底面検出部34とを有する。
【0012】
筐体22には、把持装置24用の移動装置26、物品検出部28、第2のコンベア30用の移動装置32、底面検出部34が設けられる。
【0013】
把持装置24用の移動装置26は、把持装置24を支持し、把持装置24を前後方向、上下方向、及び、左右方向の所定範囲内に移動させる。本実施形態では、移動装置26は、例えば、移動装置26のアーム26a(図1及び図3参照)を介して把持装置24の基部102を支持する。
【0014】
物品検出部28は、載置部8に載置された物品群Gを例えば上側から撮影する。物品検出部28は、物品群Gのうち、上側に露出する物品Pの1つ1つの輪郭を後述する制御部38により認識させるとともに、物品群Gの物品Pの1つ1つの上面の高さの違いを検出する。すなわち、物品検出部28は、載置部8に載置される物品Pを検出するセンサとして用いられる。物品検出部28は、1つであっても複数であってもよい。
【0015】
物品検出部28で取得する像データ(検出データ)により、制御部38は、規則積載、不規則積載を出力可能である。
ここで、規則積載とは、物品群Gの各物品Pの形状及び大きさが同一又は略同一で、例えば最上段に複数の物品Pがあるとき、複数の物品Pの上面の高さが揃っている場合をいう。また、不規則積載とは、物品群Gの各物品Pの形状及び大きさの少なくとも一部が異なっており、例えば最上段に複数の物品Pがあるとき、複数の物品Pの上面の高さが不揃いである場合をいう。
規則積載である場合、各物品Pの高さは略一定である。規則積載の場合、各物品Pは、後方側の物品Pを先に上面及び後方側の側面の二面把持により所定位置に移載し、その後、前方側の物品Pを同様に二面把持して所定位置に移載する。このため、物品Pを二面把持により移載するときに、物品Pを傾けても、後方側に倒れる物品Pがない。
【0016】
不規則積載である場合、制御部38は、各物品Pの上面は認識できるが、物品Pの高さを認識できていない。このため、ある物品Pを移載する場合、物品Pの高さが載置部8の載置面からの高さであると想定して物品の上面を上面把持し、側面を把持せずに物品Pを持ち上げる必要がある。このため、物品Pが不規則に積載されている場合、物品Pを傾けず、また、物品Pを引きずることなく、物品Pを持ち上げて移載する。
なお、不規則積載において、把持して移載する物品Pの手前側に、把持する物品Pの底面よりも上面高さが高く、把持する物品Pの上面よりも上面高さが低い物品Pが存在すると仮定する。この場合、仮に、二面把持できたとしても、把持する物品Pを手前側(後方側)に傾けたとき、手前側の物品Pが傾いて手前側の物品Pが手前側に倒れる可能性が生じる。
【0017】
したがって、規則積載の場合、本実施形態に係る荷役装置12は、後方側の物品Pから二面把持により物品Pを移載し、次に、前方側の物品Pを移載する。なお、後方側の物品Pを把持した後、下側の物品Pを把持して移載してもよく、移載した物品Pが配置されていた位置の右側又は左側の物品Pを把持して移載してもよい。
【0018】
なお、不規則積載であっても、側面把持を行ってもよい場合がある。例えば、不規則積載において、把持する物品Pの手前側に、把持する物品Pの底面よりも上面高さが低い物品Pが存在すると仮定する。この場合、二面把持した場合、把持する物品Pを手前側(後方側)に傾けたとき、手前側の物品Pが傾き難く、二面把持を行うことができる。
【0019】
なお、載置部8上の物品群Gの各物品Pの高さが揃っている場合を規則積載とし、各物品Pの高さが不揃いである場合を不規則積載としてもよい。
【0020】
第2のコンベア30用の移動装置32は、第2のコンベア30を支持する。第2のコンベア30用の移動装置32は、第2のコンベア30を上下方向に移動させる。また、第2のコンベア30として、例えばベルトコンベアが用いられる。第2のコンベア30用の移動装置32は、第2のコンベア30の駆動部としても機能する。
【0021】
底面検出部34は、主に不規則積載の物品Pを把持して移載するときに用いられる。例えば前方側(図1中の右側)の物品Pを後方側の物品Pよりも先に上面把持して持ち上げる際、把持した物品Pの底面を、後方側の物品Pの上面よりも上側に配置する必要がある。また、規則積載の物品Pを二面把持して引きずって、又は、不規則積載の物品Pを持ち上げて、第2のコンベア30に載置する際、把持した物品Pの底面を、第2のコンベア30の上面よりも上側に配置する必要がある。このため、底面検出部34の検出結果に基づいて、把持装置24用の移動装置26及び第2のコンベア30用の移動装置32が駆動される。なお、底面検出部34は、例えば光学センサなどが用いられる。
【0022】
図2に示すように、荷役装置12は、制御部38を有する。制御部38は、把持装置24(後述する第1のアクチュエータ部189a、第2のアクチュエータ部189b、上面把持部116用の電磁弁120、側面把持部118用の電磁弁122)、把持装置24用の移動装置26、物品検出部28、第2のコンベア30用の移動装置32、底面検出部34を制御する。ここでは説明の簡略化のため、第1のコンベア14用の駆動装置16も荷役装置12の制御部38で制御するものとして説明する。第1のコンベア14用の駆動装置16は、荷役装置12の制御部38とは異なる荷役システム10の制御部(図示せず)により制御してもよい。また、本実施形態では、荷役装置12が制御部38を有するものとして説明するが、荷役装置12が制御部38を有さず、荷役システム10が制御部38を有するものとしてもよい。
【0023】
制御部38は、例えばコンピュータである。制御部38は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等を含むプロセッサ(集積回路であってもよい)と、メモリ、ストレージ等の記憶媒体とを備える。制御部38に設けられるプロセッサは、1つであってもよく、複数であってもよい。制御部38は、記憶媒体等に記憶されるプログラム等を実行することにより、各種の機能を発揮させる処理を実行する。
なお、制御部38の制御プログラムは、コンピュータのメモリ及び/又はストレージに記憶されておらず、適宜のサーバー上やクラウド上に置かれていることも好適である。この場合、制御プログラムは、通信インタフェースを介して例えば荷役装置12又は把持装置24が有するプロセッサと通信しながら実行される。すなわち、本実施形態に係る制御部38は、荷役装置12又は把持装置24が有していてもよく、荷役装置12又は把持装置24から離れた、荷役システム10のサーバーやクラウド上にあってもよい。
【0024】
次に、図3及び図4に示す把持装置24について説明する。図3は、把持装置24の側面図である。図4は、図3に示すIV-IV線に沿う部分断面図である。
【0025】
図3及び図4に示すように、把持装置24は、基部102と、基部102に設けられる第1の可動部104及び第2の可動部106と、ストッパ(規制部)108と、第1の可動部104に設けられる傾げ回動部110と、第2の可動部106に設けられるバッファ112と、傾げ回動部110及びバッファ112の後述する回動体(カム部)164に設けられる把持部ベース114と、把持部ベース114に設けられる上面把持部116と、把持部ベース114に対して所定方向(前後方向)に移動可能な側面把持部118とを有する。上面把持部116には、上面把持部116用の電磁弁120(図2参照)が接続され、側面把持部118には、側面把持部118用の電磁弁122(図2参照)が接続される。ストッパ108は、規制/規制解除を切り換え可能なように、ストッパ108を動かすアクチュエータ124(図2参照)を有する。
【0026】
なお、電磁弁120,122は、例えば、把持装置24用の移動装置26のアーム26aに内蔵される。
【0027】
本実施形態では、図4に示すように、把持装置24は、左右対称に形成される。基部102は、例えば略直方体状のブロックとして形成され、幅方向の中央に配置される。なお、ここでは、説明の簡単のため、把持装置24の基部102の後方側から前方側を見て右側について説明するが、左側も基部102に対称な同様の構成である。この場合、把持装置24の基部102の後方側から前方側を見て右側の把持装置24及び左側の把持装置24は、同様の動作を行うと想定する。
【0028】
なお、把持装置24の基部102の後方側から前方側を見て把持装置24が左右対称でない場合もあり得る。
【0029】
基部102は、把持装置24用の移動装置26(図1参照)のアーム26aに支持される。基部102は、把持装置24用の移動装置26に対して前方側に配置される。基部102は、把持装置24用の移動装置26により筐体22に対して前後、左右、上下のそれぞれの所定範囲を移動可能である。制御部38は、移動装置26による基部102の移動を制御する。
【0030】
第1の可動部104は、基部102の右側の面の後方側の位置に設けられる。第1の可動部104は、第1のガイド132と、第1のガイド132に沿って移動する第1の移動体(第1のスライダ)134とを有する。本実施形態では、第1の移動体134は、第1のガイド132に沿ってスライドしながら移動する。
【0031】
第1のガイド132は、後述する複数の吸着パッド174の下端の位置(パッド面174a)が例えばある水平面上に沿って揃っている状態で上下方向に延びる。
【0032】
第1の移動体134は、第1のガイド132に沿って第1のガイド132の所定範囲を上下方向に移動する。本実施形態では、第1の移動体134は、複数体で形成されている。第1の移動体134は、第1のガイド132に沿って移動するスライド部材134aと、スライド部材134aに設けられ傾げ回動部110を回動可能に支持する支持部材134bとを有する。
なお、第1の移動体134のスライド部材134a及び支持部材134bは、第1のガイド132に沿って第1のガイド132の所定範囲を上下方向に移動可能であるとともに、傾げ回動部110を回動可能に支持するように、一体で形成されていてもよい。
【0033】
第1の可動部104には、基部102に対して第1の移動体134の下降を防止するストッパ108が設けられる。ストッパ108は、基部102の第1の可動部104と同じ面に取り付けられる。ストッパ108は、基部102に対し第1の可動部104の第1の移動体134が最下端よりも上方の所定範囲内の位置で、基部102に対する第1の可動部104の第1の移動体134の下降を規制/規制解除する。すなわち、ストッパ108は、第1の移動体134がある位置より鉛直下方向に移動しないよう規制する状態と、そうでない規制解除状態を切り換える機能を有する。
【0034】
本実施形態では、ストッパ108は、基部102に対し上下方向の位置が固定されている。ストッパ108は、突出位置(ロック位置)と引込位置(ロック解除位置)との間を移動可能なロッド108aを有する。ストッパ108のロッド108aは、例えばアクチュエータ124により動作し得る。ストッパ108のロッド108aが突出位置のとき、スライド部材134aの下端に当接して下端を支持する。このため、ストッパ108のロッド108aは、基部102に対して第1の移動体134のスライド部材134aがロッド108aよりも下方に移動することを規制する。ストッパ108のロッド108aが引込位置のとき、スライド部材134aは、ストッパ108に移動規制されず、第1のガイド132に対してスライド部材134aが第1のガイド132の所定範囲内を自在に移動可能である。
【0035】
ストッパ108は、基部102に向かって第1の移動体134を押圧し、ブレーキ装置のように摩擦により、基部102に対して第1の移動体134の動きを止めてもよく、嵌合等により、機械的に基部102に対して第1の移動体134の動きを止めてもよい。これらの場合、ストッパ108は、基部102に対して第1の移動体134の下降を防止するだけでなく、上昇を防止することができる。
【0036】
本実施形態では、図3に示すように、ストッパ108は、第1の可動部104の第1の移動体134の前方側に設けられる例を描いた。ストッパ108の位置は、適宜に設定可能である。例えば、ストッパ108を第1のガイド132に設けてもよい。また、ストッパ108は、基部102の右側にある第1の移動体134を基部102の左側に向かって押圧して第1のガイド132に対して移動を規制するようにしてもよい。
【0037】
第1の可動部104の第1の移動体134には、傾げ回動部110が設けられる。傾げ回動部110は、例えば、基部102の右側の面側の後方端の近傍に配置されている。傾げ回動部110は、例えば、基部102の右側の面の後端よりもさらに後方側に配置されていてもよい。傾げ回動部110は、基部102の右側の面側の後方端の近傍及び基部102の右側の面の後端よりも後方側にまたがって配置されていてもよい。傾げ回動部110は、例えば、基部102の右側の面側の後方端の近傍よりも前方側に配置されていてもよい。
【0038】
傾げ回動部110は、第1の移動体134に対して回動可能な傾げ回動軸(傾げ回転軸)142と、傾げ回動軸142とともに傾げ回動軸142の軸回りに回動する回動体144とを有する。傾げ回動軸142は、上下方向及び/又は前後方向(所定方向)に交差する方向として、好ましくは上下方向に直交する水平方向に延びる。回動体144は、略直方体状に形成されている。回動体144の底面144aは、把持部ベース114の上面114aに固定されている。なお、回動体144と把持部ベース114との固定は、回動体144の底面144aと把持部ベース114の上面114aとの間に限らず、適宜の位置で固定される。
なお、第1の移動体134に対して傾げ回動軸142が固定され、傾げ回動軸142と回動体144との間が図示しないベアリングにより回動可能であってもよい。
【0039】
第1の可動部104及び第2の可動部106は、所定方向(前後方向)に隣接する。本実施形態では、第2の可動部106は、基部102の右側の面の前方側の位置に設けられる。第1の可動部104及び第2の可動部106は、それぞれ基部102に対して独立して上下動することが好適である。
【0040】
第2の可動部106は、第2のガイド152と、第2のガイド152に沿って移動する第2の移動体(第2のスライダ)154とを有する。本実施形態では、第2の移動体154は、第2のガイド152に沿ってスライドしながら移動する。
【0041】
第2のガイド152は、後述する複数の吸着パッド174の下端の位置(パッド面174a)が例えばある水平面上に沿って揃っている状態で上下方向に延びる。
【0042】
第2の移動体154は、第2のガイド152に沿って第2のガイド152の所定範囲を上下方向に移動する。本実施形態では、第2の移動体154は、複数体で形成されている。第2の移動体154は、第2のガイド152に沿って移動するスライド部材154aと、スライド部材154aに設けられバッファ112を回動可能に支持する支持部材154bとを有する。
なお、第2の移動体154は、第2のガイド152に沿って第2のガイド152の所定範囲を上下方向に移動可能であるとともに、バッファ112を回動可能に支持するように、一体で形成されていてもよい。
【0043】
第1のガイド132及び第2のガイド152は平行に取り付けられる。第1のガイド132の上端は、第2のガイド152の上端と水平位置が同じ又は略同じ位置にある。第1のガイド132の下端は、第2のガイド152の下端と水平位置が同じ又は略同じ位置にある。このため、第1のガイド132に沿う第1の移動体134の上下方向の移動可能範囲と、第2のガイド152に沿う第2の移動体154の上下方向の移動可能範囲とは、同じ又は略同じである。このため、第1の移動体134及び第2の移動体154は、基部102に対してそれぞれ所定範囲内を上下動する。
なお、第1の移動体134及び第2の移動体154は、並進方向に一自由度を有する任意の構造である。
【0044】
第2の可動部106の第2の移動体154には、バッファ112が設けられる。バッファ112は、例えば、基部102の右側の面側の前方端の近傍に配置されている。バッファ112は、例えば、基部102の右側の面の前端よりも前方側に配置されていてもよい。バッファ112は、基部102の右側の面側の前方端及び基部102の右側の面の前端よりも前方側にまたがって配置されていてもよい。バッファ112は、例えば、基部102の右側の面側の前方端の近傍よりも後方側に配置されていてもよい。
【0045】
バッファ112は、傾げ回動部110の傾げ回動軸142及び回動体144の回動範囲を規制するカム部として形成されている。バッファ112は、第2の移動体154に設けられる傾げ摺動軸(軸部)162と、傾げ摺動軸162が挿入される長円孔部(長穴)166を有する回動体(カム部)164とを有する。
【0046】
傾げ摺動軸162は、前後方向に直交する水平方向に延びる。第2の移動体154に対して傾げ摺動軸162は、固定されていてもよく、回転可能であってもよい。回動体164は、略直方体状に形成されている。回動体164の底面164aは、把持部ベース114の上面114aに固定されている。なお、回動体164と把持部ベース114との固定は、回動体164の底面164aと把持部ベース114の上面114aとの間に限らず、適宜の位置で固定される。
図5に示すように、長円孔部166は、例えば上下方向に対向する1対の長辺部167a,167bと、長辺部167a,167bに連続し、例えば水平方向(第1の移動体134に対して第2の移動体154が隣接する所定方向)に対向する1対の円弧部168a,168bとを有する長穴に形成される。1対の長辺部167a,167bは後述する初期位置又は待機位置において、地面又は床面に平行であることが好適である。なお、図6に示すように、1対の長辺部167a,167bは、初期位置又は待機位置において、前方側(円弧部168b)が低く、後方側(円弧部168a側)が高い状態に形成されることも好適である。
【0047】
傾げ摺動軸162は、例えば円柱状のシャフトとして形成される。傾げ摺動軸162の直径は、長円孔部166の1対の長辺部167a,167b間の距離よりも小さく、1対の長辺部167a,167bの距離の半分よりも大きい。なお、把持部ベース114の上面114aが水平であるとき、傾げ摺動軸162は、長円孔部166の前端側の円弧部168bに当接又は近接する。把持部ベース114の上面114aが水平に対して最も傾斜するとき、傾げ摺動軸162は、長円孔部166の後端側の円弧部168aに当接又は近接する。すなわち、傾げ摺動軸162は、傾げ回動軸142の軸回りの回動に応じて、1対の円弧部168a,168b間を移動可能である。
【0048】
ここで、第2の移動体154は第2のガイド152に沿って上下方向に移動するが、前後方向に移動しない。傾げ回動軸142の軸回りの回動に応じて、傾げ回動軸142と第2の移動体154に設けられる傾げ摺動軸162との実際の距離は変化しないが、前後方向については、傾げ回動軸142と傾げ摺動軸162との距離は変化する。仮に、バッファ112がないとすると、傾げ回動軸142の軸回りの回動に応じて、第2の移動体154の移動が妨げられる。バッファ112があると、バッファ112は、傾げ回動軸142の軸回りの回動に応じて、前後方向(所定方向)、すなわち、水平方向に沿う傾げ回動軸142と傾げ摺動軸162との距離の変化を吸収する。バッファ112は、傾げ摺動軸162を前後方向に移動可能な空間を設けて、第2の移動体154は第2のガイド152に沿って上下方向に移動することを許容しながら、傾げ回動軸142の軸回りの回動に応じて、傾げ回動軸142と第2の移動体154に設けられる傾げ摺動軸162の回動を許容する。そして、バッファ112のカム部、すなわち、長円孔部166は、傾げ摺動軸162の移動範囲を所定範囲内に規定することで、傾げ回動軸142の軸回りの回動範囲を規定することができる。
【0049】
把持部ベース114は、基部102の右側の面側で、基部102に離間して設けられる。把持部ベース114は、説明の簡略化のため、例えば上面114a及び下面114bがそれぞれ平面として形成されるものとする。
【0050】
把持部ベース114は、例えば基部102の前後方向長さよりも長く形成される。本実施形態の図3では、把持部ベース114の前方端と基部102の前方端とが略面一に形成される状態を図示したが、いずれが突出していてもよい。
【0051】
把持部ベース114の下面114bのうち、基部102の右側の面側には、上面把持部116が設けられる。図3及び図4中、把持部ベース114の下面114bに対して上面把持部116が固定されるように描いたが、適宜の範囲で揺動可能であってもよい。すなわち、把持部ベース114のうち、基部102の右側の面側には、上面把持部116が支持又は固定される。
【0052】
なお、基部102、第1の可動部104の第1の移動体134、第2の可動部106の第2の移動体154、ストッパ108に対して、傾げ回動部110、バッファ112、把持部ベース114が回動し得る最大回動量は、種々の要因により設定可能である。最大回動量は、例えば、第1の可動部104の第1の移動体134に対する傾げ回動部110の位置、第2の可動部106の第2の移動体154に対するバッファ112の位置、バッファ112の長円孔部166に対する傾げ摺動軸162の可動範囲、第1の可動部104の第1の移動体134に対して動作するストッパ108の構造等により設定可能である。
【0053】
上面把持部116は、例えば任意の吸着把持機構である。上面把持部116は、上面把持部本体172と、上面把持部本体172の下側に設けられる吸着パッド(上面把持部材)174とを有する。
【0054】
上面把持部116の吸着パッド174のパッド面(解放面)174aは、例えば多孔質のスポンジやゴム材で形成される。上面把持部116による物品Pの上面の吸着把持の際、吸着パッド174と物品Pの上面Puとの間の摩擦力及び密閉性が高められる。
【0055】
本実施形態では、上面把持部116の吸着パッド174のパッド面174aは、側面把持部118の後述する吸着パッド184のパッド面184aに直交することが好適である。パッド面174a,184a同士の直交性の多少のズレは許容される。
【0056】
各吸着パッド174は例えば蛇腹等を有し、吸着方向(上下方向)に伸縮余地がある。本実施形態では、上面把持部116の下端の位置は、複数の吸着パッド174の伸縮余地を考慮する。本実施形態では、複数の吸着パッド174が最も伸びた状態でのパッド面174aの位置を上面把持部116の下端(以下、第1の下端と称することがある)とすることが好適である場合と、複数の吸着パッド174が最も縮んだ状態でのパッド面174aの位置を、上面把持部116の下端(以下、第2の下端と称することがある)とすることが好適である場合がある。
【0057】
前者(第1の下端)は、例えば、把持装置24を移動させ、荷物Pを把持しに行く際の上面把持部116の下端の位置として用いられ得る。このように上面把持部116の下端を設定することにより、例えば水平方向に把持装置24を移動させる際に、複数の吸着パッド174がある荷物Pの例えば側面に当たるか否かを推定できる。また、ある荷物Pを上面把持部116の吸着パッド174で吸着する際に、パッド面174aと荷物Pの上面との接触状態を推定できる。
【0058】
後者(第2の下端)は、例えば、後述する一面把持(上面把持)を行う際に、側面把持部118の下端を、上面把持部116の下端よりも上方に配置する際の上面把持部116の下端の位置として用いられ得る。
【0059】
本実施形態では、上面把持部116として、吸着パッド174を用いて例えば略直方体状の物品Pの上面を吸着把持する例について説明する。吸着パッド174の代わりに適宜のアーム等の把持部材を、アクチュエータを用いて動かして物品Pの上縁を把持するようにしてもよい。
【0060】
基部102の右側の面側の上面把持部116の後方側で、把持部ベース114の後方側には、把持部ベース114に対して移動可能に側面把持部118が支持される。すなわち、側面把持部118は、把持部ベース114に支持され、第1の可動部104に対する第2の可動部106の位置関係(前後関係)と所定方向(前後方向)に沿って反対側に設けられる。このため、第2の可動部106は、第1の可動部104の前方に配置されているが、側面把持部118は、第1の可動部104の後方に配置されている。言い換えると、側面把持部118は、第1の移動体134を挟んで、第2の移動体154の対面の位置において把持部ベース114に支持される。すなわち、第1の可動部104は、第2の可動部106と側面把持部118との間に設けられる。把持部ベース114の後方側の上面114aには、側面把持部118を前後方向に移動させる前後方向ガイド115が設けられる。前後方向ガイド115は、例えば前後方向に真っすぐに延出されている。側面把持部118は、上面把持部116に対して近接及び離隔可能である。
【0061】
側面把持部118は、例えば任意の吸着把持機構である。側面把持部118は、側面把持部本体182と、吸着パッド(把持部材)184と、平行四辺形リンク機構186とを有する。
【0062】
平行四辺形リンク機構186は、前後方向スライダ187と、前後方向スライダ187に上端がそれぞれ支持された1対の平行リンク188a,188bとを有する。前後方向スライダ187は、前後方向ガイド115の前後方向に沿って前後方向ガイド115の所定範囲を移動する。1対の平行リンク188a,188bの下端は、側面把持部本体182を支持する。側面把持部本体182には、前方に向けて解放する吸着パッド184が並べられている。なお、把持装置24が初期位置又は待機位置で、把持部ベース114の上面114a及び下面114bが地面に水平な状態において、側面把持部118の最も上方の吸着パッド184の上端は、上面把持部116の吸着パッド174のパッド面174aよりも下側にある。
【0063】
なお、図23に示すように、把持装置24が後述する退避位置で、前後方向ガイド115の適宜の後端側の位置に前後方向スライダ187が位置するとき、1対の平行リンク188a,188bは、上面把持部116の下端(第2の下端)よりも側面把持部118の下端を上方に位置させ、かつ、上面把持部116と側面把持部118とが干渉しない長さに設定されている。
【0064】
側面把持部118の吸着パッド184のパッド面(解放面)は、例えば多孔質のスポンジやゴム材で形成される。側面把持部118による物品Pの側面Psの吸着把持の際、吸着パッド184と物品Pの後方側の側面Psとの間の摩擦力及び密閉性が高められる。各吸着パッド184は例えば蛇腹等を有し、吸着方向(前後方向)に伸縮余地がある。
【0065】
前後方向スライダ187には、前後方向ガイド115に沿って前後方向スライダ187を所定範囲を移動させる第1のアクチュエータ部189a(図2参照)が配設されている。また、前後方向スライダ187及び側面把持部本体182の少なくとも一方には、1対の平行リンク188a,188bを側面把持部本体182及び前後方向スライダ187に対して回動させる第2のアクチュエータ部189b(図2参照)が配設されている。
【0066】
本実施形態では、側面把持部118として、吸着パッド184を用いて例えば略直方体状の物品Pの側面Psを吸着把持する例について説明する。吸着パッド184の代わりに適宜のアーム等の把持部材を、アクチュエータを用いて動かして物品Pの側面Psの縁部を把持するようにしてもよい。
【0067】
上面把持部116及び側面把持部118はいずれも真空吸着把持機構であるものとし、図示しない真空発生器によって内部を負圧にし、所定の解放面に吸着力を生じることで物品Pを把持する。真空発生器は例えばエジェクタであり、図示しない圧縮空気源(例えばコンプレッサ)から圧縮空気を供給することで、上面把持部116の内部空間を負圧(真空圧)にする。このとき、上面把持部116用の電磁弁120は、圧縮空気源から真空発生器への流路の開/閉を切り換えることで、吸着把持力の有/無を切り換える。ここでは、電磁弁120が開のとき、吸着パッド174で物品Pを把持し、閉のとき、吸着パッド174で把持した物品Pをリリースする。このとき、制御部38は、上面把持部116による物品Pの上面の把持/把持解放を制御する。同様に、側面把持部118用の電磁弁122は、圧縮空気源から真空発生器への流路の開/閉を切り換えることで、吸着把持力の有/無を切り換える。上面把持部116の電磁弁120と同様に、電磁弁122が開のとき、吸着パッド184で物品Pを把持し、閉のとき、吸着パッド184で把持した物品Pをリリースする。このとき、制御部38は、側面把持部118による物品Pの側面の把持/把持解放を制御する。
【0068】
把持装置24は、上面把持部116の上面把持部本体172又はその近傍に上面把持検出部175を有する。上面把持検出部175は、例えば、上面把持部116内の真空圧を測定する圧力センサ、上面把持部116の解放面に取り付けた近接センサ等を用いるものとする。上面把持検出部175は、いずれか片方でも、両方を組み合わせても良く、複数個設けても良い。
【0069】
把持装置24は、側面把持部118の側面把持部本体182又はその近傍に側面把持検出部185を有する。側面把持検出部185は、例えば、側面把持部118内の真空圧を測定する圧力センサ、側面把持部118の解放面に取り付けた近接センサ等を用いるものとする。側面把持検出部185は、いずれか片方でも、両方を組み合わせても良く、複数個設けても良い。
【0070】
本実施形態では、基部102に対して片側、すなわち図1右側の図の左半分について説明するが、反対側についても同様の構成要素を基部102に対して対称に配置した構造し、同様の動作を行うものとする。
【0071】
次に、荷役システム10の二面把持動作について図7から図22を用いて説明する。
【0072】
図7から図11は、荷役装置12の動作を説明するフローチャートである。図12から図22は、物品Pに対する把持装置24の動作を説明する図である。
【0073】
図1図3及び図4に示す把持装置24の位置及び姿勢を把持装置24の初期位置又は待機位置とする。把持装置24が待機位置のとき、最上段の物品Pの上面よりも上方に把持装置24の下端が位置する。把持装置24が待機位置のとき、上面把持部116の下端よりも下側に側面把持部118の下端が位置するとともに、側面把持部118が把持装置24の最も後方(第1のコンベア14側)に位置する。本実施形態では、待機位置では、側面把持部118は、最も下方の位置又は、最も下方の位置から僅かに前方側上方の位置に位置することが好適である。
そして、把持装置24が待機位置のとき、把持部ベース114の上面114a及び下面114bは、地面又は床面に対して水平であることが好適である。このとき、上面把持部116の吸着パッド174の下端のパッド面174aは、荷役装置12の地面又は床面に対して水平である。
【0074】
なお、把持装置24は、物品Pを把持していない待機位置のとき、床面又は地面に対して上下方向に第1のガイド132、第2のガイド152が配置され、把持部ベース114の上面114a及び下面114b、上面把持部116の吸着パッド174の下端のパッド面174aが水平となるように重心が設定されている。これを把持装置24の水平姿勢とする。一方、後述するが、把持装置24は、物品Pを把持すると、把持装置24に物品Pを加えた重心は、把持装置24単体の場合と比べて変化する。このため、把持装置24の上面把持部116は、前方側が後方側に比べて低い位置となるように回動可能である。これを把持装置24の前傾姿勢とする。
【0075】
図7から図11に示すフローチャートにしたがって、例えば荷役装置12の制御部38は、把持装置24を動作させる。
【0076】
荷役装置12の制御部38は、例えば物品群Gの例えば直上に配置される物品検出部28により検出する像に基づいて、荷役装置12で移載する物品Pを含む物品群Gが載置部8に載置された状態で所定位置にあるか否か出力する(ステップS1)。
【0077】
載置部8に積載された物品Pが所定位置にない場合(ステップS1-No)、制御部38は処理を終了する。載置部8に積載された物品Pが所定位置にある場合(ステップS1-Yes)、制御部38は次の処理を行う。制御部38は、例えば物品検出部28により検出する像に基づいて、荷役装置12で移載する物品Pを含む物品群Gが規則積載であり、上面把持部116及び側面把持部118による二面把持可(ステップS2-Yes)か、不規則積載であり、上面把持部116による一面把持可(ステップS2-No)か出力する。なお、荷役装置12で移載する物品Pを二面把持とするか、上面把持部116による一面把持とするかの制御部38での判断の説明は省略する。
【0078】
ここでは、制御部38が荷役装置12で移載する物品Pが二面把持可と判断したとする。すなわち、物品群Gが規則積載であり、荷役装置12の把持装置24が上面把持部116及び側面把持部118による二面把持動作を行う場合について説明する。
【0079】
制御部38は、把持装置24を把持して移載する物品Pの上面Puに向けて移動させ、まず、移載する物品Pの上面Puに対して、上面把持部116に上面把持動作を行わせる(ステップS3)。把持装置24を把持して移載する物品Pの上面Puに向けて移動させながら、制御部38は、移載する物品Pの直下の他の物品の上面、又は、載置部8の上面と同レベルの高さに第2のコンベア30の上面の高さを調整する。
【0080】
制御部38は、続いて、物品Pの上面Puを上面把持部116で把持した状態で、側面把持部118に側面把持動作を行わせる(ステップS4)。その後、制御部38は、把持装置24の上面把持部116及び側面把持部118を傾げる傾げ動作を行わせるとともに、第2のコンベア30など、所望の位置に向けて把持した物品Pの搬送動作(移載動作)を行う(ステップS5)。そして、制御部38は、例えば第2のコンベア30上で物品Pをリリースして、把持装置24を初期位置に移動させる(ステップS6)。
【0081】
そして、制御部38は、再び、荷役装置12で移載する物品Pを含む物品群Gが存在するか否か確認する(ステップS7)。
【0082】
そして、制御部38は、物品群Gに移載する物品Pがないとき(ステップS7-No)は処理を終了し、物品群Gがあるとき(ステップS7-Yes)はステップS2に戻る。
【0083】
なお、ステップS2において、二面把持ができない(ステップS2-No)とき、一面把持(側面把持)可か否か確認する(ステップS8)。
【0084】
一面把持可(ステップS8-Yes)である場合、上面把持動作(ステップS9)を行う。そして、制御部38は、傾げ動作を行わせるとともに、第2のコンベア30など、所望の位置に向けて搬送動作(移載動作)を行う(ステップS9)。
【0085】
その後、制御部38は、把持装置24の上面把持部116所望の位置に向けて搬送動作(移載動作)を行う(ステップS10)。
【0086】
図8を用いて上面把持動作(ステップS3)について説明する。
【0087】
把持装置24は、待機位置(初期位置)に配置されているとする。初期位置では、把持装置24が物品群Gに干渉しないように、最上段の物品Pの上面Puよりも上側の位置に把持装置24の下端が配置されている。なお、ここでは、物品Pは、数段に積まれているものとする。このとき、側面把持部118の下端、及び、上面把持部116の第1の下端にパッド面174aを有する吸着パッド174のパッド面(下端面)174aは、最上段の物品Pの上面Puよりも上側の位置にある。このとき、基部102の最も下方に第1の移動体134及び第2の移動体154が配置されている。また、ストッパ108のロッド108aは引込位置に配置されている。上面把持部116の吸着パッド174のパッド面(下端面)174aは、荷役装置12が載置される地面に平行又は略平行である。また、図5に示すように、バッファ112の長円孔部166の最も前方側の円弧部168bの位置に傾げ摺動軸162が配置されている。
【0088】
また、待機位置では、電磁弁120,122(図2参照)がそれぞれ閉じ、コンプレッサからそれぞれのエジェクタへの圧縮空気の供給が停止する。このため、上面把持部116の吸着パッド174内、側面把持部118の吸着パッド184内がそれぞれ大気に解放されている。
【0089】
制御部38は、上面把持部116用の電磁弁120(図2参照)を閉から開に切り換える(ステップS31)。制御部38が電磁弁120を開くと、コンプレッサからエジェクタに圧縮空気が供給される。このため、上面把持部116の吸着パッド174を真空引きし、吸着パッド174内が負圧にされる。
【0090】
図12に示すように、制御部38は、把持装置24を初期位置から下降させて上面把持部116の吸着パッド174を物品Pの上面Puに向かって移動させ、上面把持部116の吸着パッド174を物品Pの上面Puに接触させる。すなわち、制御部38は、上面把持部116の吸着パッド174のパッド面174aを物品Pの上面Puに接触させる。このとき、制御部38は、上面把持部116の最も後端側の吸着パッド174を、物品Pの上面Puのうちの後端側の部位に接触させる。すなわち、制御部38は、上面把持部116の吸着パッド174のパッド面174aを目標把持位置に移動させる(ステップS32)。上面把持部116の吸着パッド174で荷物Pの上面Puを吸着する際、上面把持部116の下端は第1の下端から第2の下端に変化する。このとき、側面把持部118の吸着パッド184は、物品Pの後端側の側面Psに対向する。
【0091】
制御部38は、上面把持検出部(圧力センサ)175の出力をチェックする(ステップS33)。上面把持検出部175は、例えば吸着パッド174の内部の圧力を測定する。上面把持検出部175の出力のチェック結果により、物品Pの上面Puが上面把持部116で把持されていない(ステップS34-No)と出力されると、ステップS32に戻る。このため、制御部38は、上面把持部116の吸着パッド174のパッド面174aを目標把持位置に移動させる。物品Pの上面Puが上面把持部116で把持された(ステップS34-Yes)と出力されると、制御部38は次の処理を行う。
【0092】
図12及び図13に示すように、制御部38は、把持装置24用の移動装置26を制御し、吸着パッド174のパッド面174aを物品Pの上面Puに接触させた状態から、把持装置24を所定量、下降させる。このため、制御部38は、移動装置26に接続された基部102の下端を下降させる(ステップS35)。このとき、物品Pの上面Puに接触した上面把持部116のパッド面174aは、下方に動かない、又は、動いても僅かである。このため、上面把持部116との位置関係が維持される第1の移動体134及び第2の移動体154が基部102に対して相対的に所定量、上昇する。
【0093】
なお、基部102の下端を吸着パッド174のパッド面174aに最大限近づけたときも、基部102の下端は、吸着パッド174のパッド面174aよりも上方にある。
【0094】
そして、制御部38は、把持装置24の動作を一旦停止させる(ステップS36)。このため、基部102に対して、第1の移動体134、第2の移動体154、傾げ回動部110、バッファ112、把持部ベース114、及び、上面把持部116の位置及び姿勢が維持される。
【0095】
図9を用いて側面把持動作(ステップS4)について説明する。
【0096】
制御部38は、側面把持部118用の電磁弁122を、閉から開に切り換える(ステップS41)。
【0097】
制御部38は、側面把持部118用の第1のアクチュエータ部189aを動作させ、側面把持部118を後方から前方側に移動する(ステップS42)。すなわち、制御部38は、図14に示すように、側面把持部118の前後方向スライダ187を前後方向ガイド115に沿って前進させ、側面把持部118の吸着パッド184を物品Pの後端側の側面Psに接触させて、吸着させる。すなわち、把持装置24は、上面把持部116で物品Pの上面Puを把持するとともに、側面把持部118で物品Pの後端側の側面Psを把持する。なお、制御部38は、側面把持部118の最も上端側の吸着パッド184を、物品Pの後端側の側面Psのうちの上端側の部位に接触させることが好適である。
【0098】
制御部38は、側面把持検出部(圧力センサ)185の出力をチェックする(ステップS43)。側面把持検出部185の出力のチェック結果により、物品Pの側面Psが側面把持部118で把持されていない(ステップS44-No)と出力されると、ステップS42に戻る。このため、制御部38は、側面把持部118の吸着パッド184のパッド面184aを目標把持位置に移動させる。物品Pの側面Psが側面把持部118で把持された(ステップS44-Yes)と出力されると、制御部38は次の処理を行う。このとき、把持装置24は、上面把持部116による上面把持、及び、側面把持部118による側面把持の二面把持を行っている。
【0099】
図10を用いて傾げ動作及び搬送(ステップS5)について説明する。
【0100】
制御部38は、図15に示すように、アクチュエータ124を制御し、ストッパ108のロッド108aを引込位置(ロック解除位置)から突出位置(ロック位置)に動作させる(ステップS51)。このとき、スライド部材134aの下端は、ストッパ108のロッド108aよりも上方にある。
【0101】
図15及び図16に示すように、制御部38は、把持装置24用の移動装置26を制御して、基部102を例えば鉛直上方に移動させる(ステップS52)。このとき、基部102と一緒に、ストッパ108のロッド108aが上方に移動する。そして、把持装置24を上昇させると、物品Pの重量で第1の移動体134、第2の移動体154、把持部ベース114、上面把持部116は、上下方向の位置について、現在位置を維持しようとし、基部102に対しては相対的に下降する。このため、ストッパ108のロッド108aが第1の移動体134のスライド部材134aの下端に当接する。すなわち、基部102の鉛直上方への移動量が一定以上になると、第1の移動体134のスライド部材134aが、ストッパ108のロッド108aに接触して、基部102に対する第1の移動体134の相対的な下降が止まる。なお、ストッパ108のロッド108aが第1の移動体134のスライド部材134aの下端に当接した状態で、第2の移動体154は、第2のガイド152に沿って相対的に上下方向に自在に移動可能である。
【0102】
図16及び図17に示すように、第1の移動体134のスライド部材134aとストッパ108のロッド108aとが当接した位置関係を維持しながら、制御部38は、把持装置24用の移動装置26を制御して、基部102を例えばさらに鉛直上方に移動させる。このとき、物品Pの上面Puが上面把持部116に吸着し、物品Pの側面Psが側面把持部118に吸着している。このため、基部102を上昇させると、物品Pの重量により、第2の移動体154は、第2のガイド152に沿って基部102に対して第1の移動体134よりも相対的に下降する。
【0103】
ここで、把持装置24の重心と、把持装置24に物品Pを加えた重心とは、異なる位置にある。このため、基部102を上昇させると、物品Pの重量により、傾げ回動軸142回りにモーメントが働く。したがって、把持装置24は、傾げ回動部110の傾げ回動軸142の軸回りに、回動体144、把持部ベース114及び上面把持部116が回動する。このため、図16に示す位置から、図17に示す位置に、第2のガイド152に対して第2の移動体154が下降するとともに、回動体164の長円孔部166を、傾げ摺動軸162が、例えば前端側の円弧部168bに当接した位置から後端側の円弧部168aに当接する位置に移動する。傾げ摺動軸162が後端側の円弧部168aに当接すると、基部102に対する回動体144、把持部ベース114及び上面把持部116の回動が停止する。
【0104】
このように、把持装置24では、基部102に対して傾げ回動軸142の軸回りに回動体144が回動する。したがって、把持部ベース114は、傾げ回動部110の回動体144の底面144a及びバッファ112の回動体164の底面164aに上面114aが固定された把持部ベース114は、傾げ回動軸142の軸回りに回動する。すなわち、把持部ベース114、上面把持部116、及び、側面把持部118は、傾げ回動軸142の軸回りの回動に伴って基部102に対して回動して前傾し、前方側が後方側に比べて低くなる。
【0105】
把持部ベース114及び上面把持部116が傾げ回動軸142の軸回りに回動し、前傾する。このとき、図18に示すように、長円孔部166に対して傾げ摺動軸162が後方側に移動する。傾げ摺動軸162は、例えば、前端側の円弧部168bに当接した位置から後端側の円弧部168aに当接した位置に移動する。したがって、上面把持部116の把持部ベース114及び上面把持部116のパッド面174aが、地面(水平面)に対して前傾するように傾げる。このような姿勢を把持装置24の前傾姿勢とする。
【0106】
制御部38は、例えば、基部102に対して、回動体144、把持部ベース114及び上面把持部116の回動が所定の前傾姿勢で停止するように設定した距離と略同じ距離、又は、設定した距離を超える距離、上昇させて、鉛直方向動作を停止するとともに、図19に示すように、把持装置24用の移動装置26を制御して、把持装置24が前傾姿勢を維持しながら、把持装置24を水平方向に沿って後方側に移動させる(ステップS53)。このとき、例えば、把持装置24で把持した物品Pの下方の物品Pの上面Puに、把持装置24で把持して移載する物品Pが離間せず、摺動することが好適である。
【0107】
そして、制御部38は、図20に示すように、把持装置24で把持した物品Pを第2のコンベア30の上方に配置する(ステップS54)。このとき、物品Pの底面は、第2のコンベア30に接触していてもよく、上方に離間していてもよい。物品Pの底面は、第2のコンベア30の上方に、適宜の距離離間していることが好適である。
【0108】
図11を用いて物品Pのリリース及び初期位置への移動動作(ステップS6)について説明する。
【0109】
把持装置24が前傾姿勢を維持しながら、制御部38は、上面把持部116用の電磁弁120及び側面把持部118用の電磁弁122をそれぞれ、開から閉に切り換える(ステップS61)。上面把持部116の吸着パッド174と物品Pの上面Puとの間、及び、側面把持部118の吸着パッド184と物品Pの側面Psとの間がそれぞれ真空破壊される。このため、上面把持部116の吸着パッド174と物品Pの上面Puとの間の吸着が解除されるとともに、側面把持部118の吸着パッド184と物品Pの側面Psとの間の吸着が解除される。したがって、第2のコンベア30上に把持装置24の上面把持部116及び側面把持部118からリリースされた物品Pが載置される。把持装置24の上面把持部116から物品Pがリリースされるとき、上面把持部116の吸着パッド174の下端は、第2の下端から第1の下端に変形する。
【0110】
そして、制御部38は、側面把持部118用の第1のアクチュエータ部189aを動作させ、前方側にある側面把持部118を待機位置と同様に、後方側に移動させる(ステップS62)。このとき、側面把持部118の吸着パッド184と物品Pの側面Psとの間が真空破壊されていれば、側面把持部118の吸着パッド184から、物品Pの側面Psが離れる。
【0111】
そして、側面把持検出部185の出力をチェックする(ステップS63)。側面把持部118の吸着パッド184での物品Pの側面Psの吸着が解除されていない(ステップS64-No)場合、ステップS62に戻る。側面把持部118の吸着パッド184での物品Pの側面Psの吸着が解除された(ステップS64-Yes)場合、制御部38は次の処理を行う。
【0112】
制御部38は、アクチュエータ124を制御し、ストッパ108のロッド108aを、突出位置(ロック位置)から引込位置(ロック解除位置)に切り換える(ステップS65)。制御部38は、ストッパ108のロッド108aを引込位置に配置すると、第1の移動体134が基部102に対して下降可能である。
【0113】
そして、図22に示すように、制御部38は、把持装置24を鉛直上方に移動させる(ステップS66)。このとき、上面把持部116の吸着パッド174と物品Pの上面Puとの間が真空破壊されていれば、上面把持部116の吸着パッド174から、物品Pの上面Puが離れる。
【0114】
そして、制御部38は、上面把持検出部175の出力をチェックする(ステップS67)。制御部38が上面把持部116の吸着パッド174での物品Pの上面Puの吸着が解除されていない(ステップS68-No)と出力した場合、ステップS66に戻る。制御部38が上面把持部116の吸着パッド174での物品Pの上面Puの吸着が解除された(ステップS68-Yes)と出力した場合、制御部38は次の処理を行う。
【0115】
把持装置24の基部102が上方に移動すると、基部102に対して、相対的に、第1の移動体134、第2の移動体154、把持部ベース114、及び上面把持部116が下側に移動する。このとき、ストッパ108のロッド108aに下端が支持されていた第1の移動体134が第1のガイド132に対して移動する移動量は、第2の移動体154が第2のガイド152に対して移動する移動量に比べて大きい。そして、第1の移動体134の下端と、第2の移動体154の下端との高さが揃い、把持部ベース114の上面114a及び下面114bが床面に水平となる。
【0116】
ここで、把持装置24の重心と、把持装置24に物品Pを加えた重心とは、異なる位置にある。このため、基部102を上昇させるときに、物品Pの重量が把持装置24に付加されないため、上述したモーメント(図17参照)と反対方向のモーメント(図22参照)が傾げ回動軸142回りに働く。このため、把持装置24は、傾げ回動部110の傾げ回動軸142の軸回りに、回動体144、把持部ベース114及び上面把持部116が回動する。このとき、図21に示すように、長円孔部166に対して傾げ摺動軸162が前方側に移動する。傾げ摺動軸162は、例えば、後端側の円弧部168aに当接した位置から前端側の円弧部168bに当接した位置に移動する。このとき、第1の移動体134及び第2の移動体154が同じ形状で同じ大きさであるとすると、第1の移動体134の下端と第2の移動体154の下端は、地面又は床面に水平となる。このため、把持部ベース114の上面114a及び下面114bは、地面又は床面に平行となる。また、上面把持部116の吸着パッド174のパッド面174aも地面又は床面に平行となる。
【0117】
制御部38は、把持装置24を待機位置に移動させる(ステップS69)。このため、把持装置24が物品群Gに対して上方に移動する。
【0118】
そして、制御部38は、第2のコンベア30を動作させ、第2のコンベア30上の物品Pを第1のコンベア14上に移載する。制御部38は、第1のコンベア14を、第2のコンベア30の動作方向と交差する方向に動作させ、第1のコンベア14上に移載された物品Pを所望の位置に搬送する。
【0119】
荷役システム10の把持装置24を用いる上面(一面)把持動作について図23を用いて簡単に説明する。
【0120】
図23に示す把持装置24の位置及び姿勢を把持装置24の退避位置とする。
【0121】
制御部38は、図7に示すステップS2において、荷役装置12で移載する物品Pが二面把持不可と判断し、一面把持可と判断したとする(ステップS2-No)。このとき、制御部38は、初期位置から、側面把持部118の下端を、上面把持部116のパッド面174aの下端(第2の下端)よりも上方に配置するように、図23に示すように、平行四辺形リンク機構186を動作させる。仮に、前後方向スライダ187が前後方向ガイド115の後端にない場合、第1のアクチュエータ部189aは、前後方向ガイド115に沿って前後方向スライダ187を後端に移動させる。そして、第2のアクチュエータ部189bは、平行リンク188a,188bを把持部ベース114の下面114bに当接又は近接させるように、前後方向スライダ187に対して前方側に移動させる。そして、平行四辺形リンク機構186の位置を維持する。
【0122】
このとき、上面把持部116の吸着パッド174の下端(第2の下端)よりも、側面把持部118の下端は、上方に配置される。このため、上面把持したい物品Pの上面Puに側面把持部118が当接することが防止される。
【0123】
そして、制御部38は、ステップS9において、図8に示すステップS31-S34、S36の処理を行い、上面把持を完了させる。なお、ステップS35の処理は、不要となり得る。これは、上面把持及び側面把持の二面把持と異なり、基部102に対して上面把持部116を傾げないからである。
【0124】
そして、制御部38は、ステップS10において、ステップS52-S54の処理を行い、物品Pを第2のコンベア30の上方に配置する。
【0125】
このとき、ストッパ108のロッド108aは、引込位置(規制解除位置)にある。このため、把持装置24用の移動装置26により、基部102が上方に移動されると、第1の移動体134は、下端位置よりも上方の規制位置から下方に移動する。したがって、把持装置24用の移動装置26により、基部102が上方に移動されると、第1の移動体134及び第2の移動体154の相対的な高さが維持される。このため、把持部ベース114が水平状態である水平姿勢から前方が下がる前傾姿勢となることが防止される。すなわち、把持部ベース114が水平状態から傾斜することが防止される。
【0126】
そして、制御部38は、ステップS6においてステップS61、S66-S69の処理を行う。すなわち、把持装置24は、第2のコンベア30上に上面把持した物品Pのリリースを行う。このときも、把持部ベース114が水平状態から前方が下がることが防止される。すなわち、把持部ベース114が水平状態から傾斜することが防止される。
【0127】
このように、把持形態の違いにより、把持装置24は、上面把持部116を二面把持の1つの把持部として用いる場合には上面把持部116を前傾姿勢となるように傾げ、上面把持部116を一面把持の把持部として用いる場合には上面把持部116を水平姿勢を維持し傾げない状態に切り換えることができる。このため、本実施形態によれば、移載しようとする物品の例えば把持形態の違いに対応可能な把持装置24及び荷役装置12を提供することができる。
【0128】
本実施形態によれば、ストッパ108のアクチュエータ124を制御し、ロッド108aの突出及び引込の制御(位置の切り換え)を行えば、把持装置24は、把持形態に応じて、水平姿勢を維持し、又は、前傾姿勢とすることができる。このため、本実施形態に係る把持装置24は、基部102に対して水平姿勢から前傾姿勢となる傾げ力を調整する制御、及び、前傾姿勢から水平姿勢となる制御を不要とすることができる。
【0129】
図7から図11に示す制御フローチャートでは処理を分かりやすく記述することを意図して各処理を単純化した。物理的に可能な処理は順番を入れ換えたり、並列実行しても構わない。制御部38は、例えば、リリース動作における図11に示すステップS62-S64と、ステップS65-S68との実行順序を変えたり、並列実行しても構わない。
【0130】
ところで、第1の可動部104及び第2の可動部106を前後方向(所定方向)に2つに分割して、傾げ回動軸142の軸回りに上面把持部116の把持部ベース114を回転自由としただけでは、第2の可動部106の第2の移動体154が前後方向に対する拘束となって左右方向に延びる傾げ回動軸142に対して回転し得ない。その前後方向に対する自由度をバッファ112すなわち傾げ摺動軸162及び回動体164の長円孔部(カム部)166が担うことで、左右方向に延びる傾げ回動軸142の軸回りに、回動体144、把持部ベース114及び上面把持部116が回動することが可能となる。
【0131】
第1の可動部104の第1の移動体134及び第2の可動部106の第2の移動体154に収縮量検出部(センサ)を追加し、第1の可動部104の第1の移動体134及び第2の可動部106の第2の移動体154の収縮量(基部102の下端に対する近接量)を検出して制御に活用しても良い。例えば、第1の可動部104の第1の移動体134、第2の可動部106の第2の移動体154の上端及び下端、更には、ストッパ108の近傍を検出しても良い。特に、ストッパ108の近傍を検出することで、図8のステップS35における、把持装置24の基部102の下降動作の停止トリガとしても良い。
【0132】
第1の可動部104は、第1のガイド132と第1の移動体134との組み合わせのほか、第1のガイドとしてのシャフトと第1の移動体としてのリニアブシュなど他の任意の構造で実現しても良い。同様に、第2の可動部106は、第2のガイド152と第2の移動体154との組み合わせのほか、第2のガイドとしてのシャフトと第2の移動体としてのリニアブシュなど他の任意の構造で実現しても良い。
【0133】
上述した例では、ストッパ108は、基部102に対して、第1の可動部104の第1の移動体134がある高さ以下に移動しないよう下降を規制する構造とした。ストッパ108は、基部102に対する第1の可動部104の下降だけでなく、上方への移動(上昇)を同時に拘束する機構としてもよい。
【0134】
なお、傾げ回動部110の回動体144と、第1の移動体134のスライド部材134aとを一体化することにより、傾げ回動部110の回動体144を第1の移動体134の一部として、用いてもよい。この場合、第1の移動体134の支持部材134bは不要となり得る。
【0135】
真空圧の発生手段はエジェクタに限定されない。例えば、上面把持部116及び/又は側面把持部118の内部に真空ポンプを設ける構成としても良い。本実施形態の構造は従来技術と比較して小型軽量化が可能なため、より軽量で丁寧な扱いを要する物品を処理する装置に取り付けても良い。このときにはエジェクタを使うほどの把持力が不要となるため、上面把持部116及び/又は側面把持部118に内蔵できる程度の真空ポンプでも十分となる。
【0136】
上記実施形態において、上面把持部116用の電磁弁120、側面把持部118用の電磁弁122は「開」、「閉」の2状態(2位置)に切換可能としているが、これに限定しない。例えば3状態(3位置)に切換可能として、「真空発生器に圧縮空気を供給」、「内部配管に圧縮空気を直接共有」、「閉」の3状態に切換可能とすることで、物品Pをリリースする際の真空破壊を高速に行えるようにしても良い。また、その3状態の切り換えは単一の3位置電磁弁を用いても良いし、複数個の2位置電磁弁を組み合わせて実現しても良い。また、電磁弁120,122は、把持装置24用の移動装置26のアーム26a(図1図3以外では図示を省略する)に内蔵されていなくてもよい。
【0137】
荷役装置12は、把持装置24用の移動装置26として、垂直多関節ロボット(6軸アーム等)やスカラロボット等を用いてもよい。
【0138】
本実施形態において、把持装置24を、把持装置24用の移動装置26により移動する、荷役装置12の固定設備としたが、電動のリニアスライダや自走台車等に載せて把持装置24を移動可能としてもよい。把持装置24は、固定設備としてもよく、電動の昇降手段等を用いて上下に移動可能としてもよく、また電動のリニアスライダや自走台車等に載せてアーム26aに対して移動可能としてもよい。
【0139】
物品Pは載置部8としての、平パレット状の容器に積載されていてもよい。物品Pは、コンベヤで搬送されていていてもよい。物品Pは、載置部8として、かご台車や棚等の任意の什器に積載されていてもよい。
【0140】
載置部8は荷役システム10の物品検出部28を用いて検出可能なワークエリアに置かれている必要がある。載置部8は、作業者によって所定の範囲内の位置に配置されてもよいし、自動搬送ラインや自走台車などによって自動的に所定の位置にセットされてもよい。
【0141】
物品検出部28はRGBカメラに限らず、3Dカメラ、またはその他の光学センサを使用してもよいし、複数個、複数種類を組合せて用いてもよい。また、何らかの架台または移動体に固定されていても良いし、荷役装置12に取り付けられていても良い。3Dカメラを用いる場合には、得られた点群データを処理することで物品群の切り分けと物品Pの形状、位置、および姿勢の認識を行う。
【0142】
本実施形態では、移載しようとする物品Pが規則積載のとき、上面把持及び側面把持による二面把持を行い、不規則積載のとき、上面把持による一面把持を行う例について説明した。例えば、二面把持を行う場合、上面把持部116(及び側面把持部118)を所定方向に傾げさせることにより、物品Pを引き出すことができる。このため、物品Pの上面Pu(及び側面)に与える負荷を抑制することができる。また、一面把持を行う場合、上面把持部116を傾げさせることなく、物品Pを上方に移動させることができる。このような切り換えを、第1の可動部104の第1の移動体134及び第2の可動部106の第2の移動体154を独立して上下方向に動作させ、ストッパ108を第1の可動部104に配置することにより実現することができる。
【0143】
したがって、本実施形態によれば、移載しようとする物品の例えば把持形態の違いに対応可能な把持装置24及び荷役装置12を提供することができる。
【0144】
本実施形態では、基部102に対して第1の移動体134及び第2の移動体154が上下方向に動く例について説明した。第1の移動体134及び第2の移動体154の可動方向は、上下方向から多少傾斜する方向であっても、上下方向に含まれ得る。
【0145】
本実施形態に係る把持装置24では、上面把持部116及び側面把持部118の両方を有する例について説明した。把持装置24が上面把持部116を有し、側面把持部118を有していない状態もあり得る。この場合、上面把持部116と傾げ回動部110及びバッファ112との間の把持部ベース114は必ずしも必要ではない。この場合、上面把持部116は、傾げ回動部110の回動体144及びバッファ112の回動体164に直接支持されていてもよい。この場合、上面把持部116は、傾げ回動軸142の軸回りの回動に伴って基部102に対して回動する。
【0146】
本実施形態によれば、移載対象の物品Pの形状及び大きさが揃っている規則積載時は、物品Pの上面Pu及び側面Psで二面把持しつつ、傾げ機構を活かして物品Pを引きずって、第2のコンベア30上など、所望の位置に物品Pを移載することができる。また、不規則積載時は制御部38が側面把持部118を退避させることで、側面把持部118が邪魔になることなく物品Pの上面Puを上面把持部116で上面把持(吸着)して物品Pを持ち上げ、第2のコンベア30上など、所望の位置に物品Pを移載することができる。
【0147】
本実施形態に係る把持装置24は、第1の移動体134に対する第2の移動体154の移動と、傾げ回動軸142と傾げ摺動軸162との軸間距離変化とを可能にすることができる。このため、二面把持を行う際、把持装置24は、水平姿勢から前傾姿勢に移行することができるとともに、前傾姿勢から水平姿勢に移行することができる。したがって、把持装置24の重心と、把持装置24に物品Pを加えた重心との違いによって把持装置24に負荷をかけ難い状態で、物品Pを二面把持することができる。
【0148】
以上述べた少なくともひとつの実施形態によれば、例えば二面把持の際に上面把持部116を傾斜させ、一面把持の際に上面把持部116を傾斜させないなど、移載しようとする物品Pの例えば把持形態の違いに対応可能な把持装置24及び荷役装置12を提供することができる。
【0149】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0150】
10…荷役システム、12…荷役装置、24…把持装置、26…移動装置、26a…アーム、38…制御部、102…基部、104…第1の可動部、106…第2の可動部、108…ストッパ、108a…ロッド、110…傾げ回動部、112…バッファ、114…把持部ベース、114a…上面、114b…下面、115…前後方向ガイド、116…上面把持部、118…側面把持部、120,122…電磁弁、124…アクチュエータ、132…第1のガイド、134…第1の移動体、134a…スライド部材、134b…支持部材、142…傾げ回動軸、144…回動体、144a…底面、152…第2のガイド、154…第2の移動体、154a…スライド部材、154b…支持部材、162…傾げ摺動軸、162…傾げ摺動軸、164…回動体、164a…底面、166…長円孔部、167a,167b…長辺部、168a,168b…円弧部、172…上面把持部本体、174…吸着パッド、174a…パッド面、175…上面把持検出部、182…側面把持部本体、184…吸着パッド、184a…パッド面、185…側面把持検出部、186…平行四辺形リンク機構、187…前後方向スライダ、188a,188b…平行リンク、189a,189b…アクチュエータ部。

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