(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180075
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】セラミックスヒータ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20231213BHJP
H05B 3/74 20060101ALI20231213BHJP
H05B 3/20 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H05B3/74
H05B3/20 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093170
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(72)【発明者】
【氏名】北林 徹夫
(72)【発明者】
【氏名】下嶋 浩正
【テーマコード(参考)】
3K034
3K092
5F131
【Fターム(参考)】
3K034AA02
3K034AA12
3K034AA16
3K034BB06
3K034BB14
3K034FA16
3K034JA02
3K034JA10
3K092PP20
3K092QA05
3K092QB02
3K092QB26
3K092QB30
3K092QB74
3K092RF03
3K092RF11
3K092SS13
3K092VV21
5F131AA02
5F131CA02
5F131CA32
5F131EA04
5F131EB01
5F131EB11
5F131EB78
5F131EB81
5F131EB82
5F131EB84
(57)【要約】
【課題】セラミックス基材の外周部分における加熱、冷却に対する過渡特性を向上させることができるセラミックスヒータを提供する。
【解決手段】
セラミックスヒータ100は、円板状のセラミックス基材110と、セラミックス基材110に埋設されたヒータ電極122とを備えている。セラミックス基材110の、上下方向5の長さTに対する、中空部分の上下方向5の長さの総和T1の比T1/Tは0.35以上にすることができる。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面、前記上面と上下方向において対向する下面を有する円板状のセラミックス基材と、
前記セラミックス基材に埋設された、又は前記セラミックス基材の前記下面に配置された発熱体と、を備え、
前記セラミックス基材の、前記上面と前記下面との間の、前記上下方向の長さTがT≧14mmであり、
前記セラミックス基材の外周部分には中空部分が設けられており、
前記セラミックス基材の前記上下方向の長さTに対する、前記セラミックス基材の前記中空部分の、前記上下方向の長さの総和T1の比T1/Tが、T1/T≧0.35であることを特徴とするセラミックスヒータ。
【請求項2】
前記中空部分は、前記セラミックス基材の外側に露出していない内部空間を含む請求項1に記載のセラミックスヒータ。
【請求項3】
前記上下方向に直交する水平方向の第1位置における、前記内部空間の前記上下方向の長さと、前記水平方向の前記第1位置と異なる第2位置における、前記内部空間の前記上下方向の長さとが互いに異なる請求項2に記載のセラミックスヒータ。
【請求項4】
前記セラミックス基材は、前記中空部分の前記内部空間と前記セラミックス基材に隣接する部材に設けられたガス流路とを連通する連通路を含む請求項2に記載のセラミックスヒータ。
【請求項5】
前記セラミックス基材は、前記中空部分の前記第1空間と前記セラミックス基材に隣接する部材に設けられたガス流路とを連通する連通路を含む請求項3に記載のセラミックスヒータ。
【請求項6】
前記中空部分は、前記セラミックス基材の外側に露出した複数の開空間を含み、
前記セラミックス基材は、前記複数の開空間を隔てる少なくとも1つの隔壁を備える請求項1に記載のセラミックスヒータ。
【請求項7】
前記上下方向に直交する水平方向の第1位置における、前記開空間の1つの前記上下方向の長さと、前記水平方向の前記第1位置と異なる第2位置における、前記開空間の1つの前記上下方向の長さとが互いに異なる請求項6に記載のセラミックスヒータ。
【請求項8】
さらに、前記セラミックス基材の前記下面に接合された筒状のシャフトを備える請求項1~7のいずれか一項に記載のセラミックスヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェハ等の基板を保持して加熱するセラミックスヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ウェハなどの基板を保持して加熱するセラミックスヒータが開示されている。特許文献1に記載のセラミックスヒータは、基板が載置されるセラミックス基材(セラミックプレート)と、セラミックス基材を支持するシャフトと、セラミックス基材の下面から突出してシャフトと接合されるシャフト接合部とを備える。セラミックス基材の下面の外周部分には、環状の溝又は段差を備えた薄肉部が設けられている。薄肉部を設けることにより熱抵抗を大きくすることができ、薄肉部の内側と外側の領域において温度勾配を設けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、半導体製造プロセスで用いられるセラミックスヒータにおいて、加熱プロセスのスループットを向上させるために、特にセラミックス基材の外周部分における加熱、冷却に対する過渡特性を向上させることが望まれている。
【0005】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、セラミックス基材の外周部分における加熱、冷却に対する過渡特性を向上させることができるセラミックスヒータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に従えば、上面、前記上面と上下方向において対向する下面を有する円板状のセラミックス基材と、
前記セラミックス基材に埋設された、又は前記セラミックス基材の前記下面に配置された発熱体と、を備え、
前記セラミックス基材の、前記上面と前記下面との間の、前記上下方向の長さTがT≧14mmであり、
前記セラミックス基材の外周部分には中空部分が設けられており、
前記セラミックス基材の前記上下方向の長さTに対する、前記セラミックス基材の前記中空部分の、前記上下方向の長さの総和T1の比T1/Tが、T1/T≧0.35であることを特徴とするセラミックスヒータが提供される。
【発明の効果】
【0007】
セラミックス基材の外周部分に、比T1/Tが0.35以上となるような中空部分が設けられている。これにより、外周部分の単位面積当たりの熱容量を、外周部分よりも内側の内周部分の単位面積当たりの熱容量よりも小さくすることができる。その結果、本発明に係るセラミックスヒータにおいては、発熱体に通電を開始してから温度が定常状態になるまでの時間を短縮することができ、ウェハ等の加熱プロセスのプロセス時間を短縮して、プロセスのスループットを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、セラミックスヒータ100の斜視図である。
【
図2】
図2は、セラミックスヒータ100の概略説明図である。
【
図4】
図4は、ヒータ電極122の概略説明図である。
【
図5】
図5は、実施例1のセラミックスヒータ100の一部拡大図である。
【
図6】(a)~(e)は、セラミックス基材110の製造方法の流れを示す図である。
【
図7】(a)~(d)は、セラミックス基材110の別の製造方法の流れを示す図である。
【
図8】
図8は、実施例2のセラミックスヒータ100の一部拡大図である。
【
図9】
図9は、実施例3のセラミックスヒータ100の一部拡大図である。
【
図10】
図10は、実施例4のセラミックスヒータ100の一部拡大図である。
【
図11】
図11は、実施例5のセラミックスヒータ100の一部拡大図である。
【
図12】
図12は、実施例6のセラミックスヒータ100の一部拡大図である。
【
図15】
図15は、変更形態のセラミックスヒータ100の一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<セラミックスヒータ100>
本発明の実施形態に係るセラミックスヒータ100について、
図1、2を参照しつつ説明する。本実施形態に係るセラミックスヒータ100は、シリコンウェハなどの半導体ウェハ(以下、単にウェハ10という)の加熱に用いられるセラミックスヒータである。なお、以下の説明においては、セラミックスヒータ100が使用可能に設置された状態(
図1の状態)を基準として上下方向5が定義される。
図1に示されるように、本実施形態に係るセラミックスヒータ100は、セラミックス基材110と、電極120(
図2参照)と、シャフト130と、給電線140、141(
図2参照)とを備える。
【0010】
セラミックス基材110は、直径12インチ(約300mm)の円形の板状の形状を有する部材であり、セラミックス基材110の上には加熱対象であるウェハ10が載置される。セラミックス基材110の厚さTは14mmである。なお、セラミックス基材110の厚さTは、セラミックス基材110の上面111から下面113までの上下方向5の長さとして定義される。なお、
図1では図面を見やすくするためにウェハ10とセラミックス基材110とを離して図示している。
図1に示されるように、セラミックス基材110の上面111には、環状の凸部152(以下、単に環状凸部152という)と、複数の凸部156とが設けられている。なお、
図1においては、図面を見やすくするために、
図2と比べて複数の凸部156の数を減らして図示している。また、
図2に示されるように、セラミックス基材110の内部には、後述の第1ガス流路164が形成されている。セラミックス基材110は、例えば、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、アルミナ、窒化ケイ素等のセラミックス焼結体により形成することができる。
【0011】
図1、2に示されるように、環状凸部152は、セラミックス基材110の上面111の外周部(外縁部)に配置された円環状の凸部であり、上面111から上方に突出している。
図2に示されるように、ウェハ10がセラミックス基材110の上に載置されたとき、環状凸部152の上面152aはウェハ10の下面と当接する。つまり、環状凸部152は、ウェハ10がセラミックス基材110の上に載置されたときに、上下方向5においてウェハ10と重なる位置に配置されている。セラミックス基材110の上面111の、環状凸部152の内側には、複数の凸部156が設けられている。複数の凸部156はいずれも円柱形状を有している。複数の凸部156のうちの1つは、上面111の略中心に配置されている。残りの凸部156は、等間隔に並んだ4重の同心円の円周上に並んでいる。また、各同心円の円周上において、凸部156は等間隔で並んでいる。なお、凸部156が配置される位置及び/又は数は、用途、作用、機能に応じて適宜設定される。
【0012】
環状凸部152の高さは、5μm~2mmの範囲にすることができる。同様に、複数の凸部156の高さも、5μm~2mmの範囲にすることができる。本実施形態において、環状凸部152の高さ及び複数の凸部156の高さは同じである。なお、本明細書において、環状凸部152の高さ及び複数の凸部156の高さは、セラミックス基板110の上面111からの上下方向の長さとして定義される。なお、セラミックス基板110の上面111が平坦でなく、例えば段差を有している場合には、セラミックス基板110の上面111のうち、最も高い位置を基準にして、そこからの上下方向の長さとして定義される。
【0013】
環状凸部152の上面152aの幅は、一定の幅であることが望ましく、0.1mm~10mmにすることができる。環状凸部152の上面152aの中心線平均粗さRaは1.6μm以下にすることができる。なお、中心線平均粗さRaは、表面の凹凸を、その中心線からの偏差の絶対値の平均で表したものである。同様に、複数の凸部156の上面156aの中心線平均粗さRaは1.6μm以下にすることができる。なお、環状凸部152の上面152a、及び、複数の凸部156の上面156aの中心線平均粗さRaは0.4μm以下であることが好ましく、0.2μm以下であることがさらに好ましく、0.1μm以下であることがさらに好ましい。
【0014】
複数の凸部156の上面156aは、直径0.1mm~5mmの円形であることが好ましい。また、複数の凸部156の、各凸部の離間距離は、1.5mm~30mmの範囲にすることができる。
【0015】
上述のように、セラミックス基板110の上面111において、複数の凸部156は4つの同心円の円周上に並んでいる。
図2に示されるように、上面111の、複数の凸部156が配置された最も内側の同心円と内側から2番目の同心円との間には、第1ガス流路164の開口164aが開口している。第1ガス流路164は、開口164aを備えるガス流路であり、セラミックス基材110の内部に形成されている。第1ガス流路164は、開口164aから下方に延びている。後述のように、第1ガス流路164の下端は、シャフト130の内部に形成された第2ガス流路168の上端に接合されている。
【0016】
第1ガス流路164は、セラミックス基材110の上面111とウェハ10の下面とによって画定される空間(間隙)にガスを供給するための流路として用いることができる。例えば、ウェハ10とセラミックス基材110との間の伝熱のための伝熱ガスを供給することができる。伝熱ガスとして、例えば、ヘリウム、アルゴンのような不活性ガスや、窒素ガスなどを用いることができる。伝熱ガスは、第1ガス流路164を通じて、100Pa~40000Paの範囲内で設定された圧力で供給される。また、環状凸部152の上面152aとウェハ10の下面との隙間から、環状凸部152の内側の間隙にプロセスガスが侵入してくる場合には、第1ガス流路164を介して、ガスを排気することができる。この際、排気圧を調整することによって間隙の外側の圧力と、間隙の内側の圧力の差圧を調節することができる。これにより、ウェハ10をセラミックス基材110の上面に向けて吸着させることができる。
【0017】
図2に示されるように、セラミックス基材110の内部には、電極120が埋設されている。電極120は、ヒータ電極122と、静電吸着用電極124とを含んでいる。静電吸着用電極124はヒータ電極122の上方に埋設されている。
【0018】
図3に示されるように、静電吸着用電極124は2つの半円形状の電極124a、124bが所定の間隔を隔てて向かい合うように配置されており、全体として略円形の形状を有している。本実施形態において、静電吸着用電極124の外径は292mmである。静電吸着用電極124は、セラミックス基材110の上面111から深さ1mmの位置に埋設されている。電極124a及び電極124bにそれぞれ所定の電圧(例えば、±500V)を印加することにより、ウェハ10を静電吸着することができる。
【0019】
図4に示されるように、ヒータ電極122は帯状に裁断された金属製のメッシュや箔である。ヒータ電極122の外径は298mmである。ヒータ電極122はセラミックス基材110の上面111から深さ2.5mmの位置に埋設されている。ヒータ電極120はセラミックス基材110の側面から露出しない。ヒータ電極120の略中央には、給電線140(
図1参照)と接続される端子部121が設けられている。ヒータ電極122はタングステン(W)、モリブデン(Mo)、モリブデン及び/又はタングステンを含む合金のワイヤーを織ったメッシュや箔等の耐熱金属(高融点金属)により形成されている。タングステン、モリブデンの純度は99%以上であることが好ましい。ヒータ電極122の厚さは0.15mm以下である。なお、ヒータ電極122の抵抗値を高くして、セラミックスヒータ100の消費電流を低減させるという観点からは、ワイヤーの線径を0.1mm以下、ヒータ電極122の厚さを0.1mm以下にすることが好ましい。また、帯状に裁断されたヒータ電極122の幅は2.5mm~20mmであることが好ましく、5mm~15mmであることがさらに好ましい。本実施形態においては、ヒータ電極122は、
図4に示される形状に裁断されているがヒータ電極122の形状はこれには限られず、適宜変更しうる。なお、セラミックス基材110の内部にはヒータ電極122に加えて、あるいは、ヒータ電極122に代えて、セラミックス基材110の上方にプラズマを発生させるためのプラズマ電極が埋設されていてもよい。
【0020】
図2、5に示されるように、セラミックス基材110の側面には、全周にわたって凹部211が形成されている。なお、
図5においては、図面を簡潔にするため、後述の接合用凸部114、環状凸部152、複数の凸部156、静電吸着用電極124等は図示されていない。凹部211の深さ(セラミックス基材110の側面から中心に向かう径方向の長さ)は50mmであり、凹部211の幅(上下方向5の長さ)は5mmである。セラミックス基材110の上面111から、凹部211の上端までの上下方向5の距離は2mmである。凹部211により、セラミックス基材110の外周部分110Pには、上面視で円環形状を有する中空部分が形成されている。なお、本明細書においてセラミックス基材110の外周部分110Pは、セラミックス基材110の、径がセラミックス基材110の外径Φ
1の2/3倍以上の領域のことである。本実施形態においては、セラミックス基材110の外径Φ
1は300mmである。そのため、外周部110Pは、セラミックス基材110の、径が200mm以上300mm以下の領域である。また、本明細書においてセラミックス基材110の内周部110Cは、セラミックス基材110の、径がセラミックス基材110の外径Φ
1の2/3倍未満の領域のことである。本実施形態においては、セラミックス基材110の外径Φ
1は300mmであるので、内周部110Cは、セラミックス基材110の、径が200mm未満の領域である。
【0021】
上述のように、セラミックス基材110の厚さT(セラミックス基材110の上面111から下面113までの上下方向5の長さ)は14mmである。これに対して、セラミックス基材110の、中空部分の上下方向5の長さT1(ここでは、凹部211の上下方向5の長さ)は5mmである。このとき、セラミックス基材110の厚さTに対する中空部分の上下方向5の長さT1の比T1/Tは0.36となる。
【0022】
図2に示されるように、セラミックス基材110の下面113に、シャフト130との接合のための凸部114(以下、接合用凸部114と呼ぶ)が設けられている。接合用凸部114の形状は、接合されるシャフト130の上面の形状と同じであることが好ましく、接合用凸部114の直径は100mm以下であることが好ましい。接合用凸部114の高さ(下面113からの高さ)は、0.2mm以上であればよく、5mm以上であることが好ましい。特に高さの上限に制限はないが、製作上の容易さを勘案すると、接合用凸部114の高さは20mm以下であることが好ましい。また、接合用凸部114の下面114Bは、セラミックス基材100の下面113に平行であることが好ましい。接合用凸部114の下面114Bの中心線平均粗さRaは1.6μm以下であればよい。なお、接合用凸部114の下面114Bの中心線平均粗さRaは0.4μm以下であることが好ましく、0.2μm以下であることがさらに好ましい。
【0023】
図1、2に示されるように、セラミックス基材110の接合用凸部114の下面114Bには、シャフト130が接続されている。シャフト130は中空の略円筒形状の円筒部131と、2つの大径部132、133とを有する。大径部132は円筒部131の上方に設けられており(
図2参照)、大径部133は円筒部131の下方に設けられている(
図1参照)。大径部132、133は、円筒部131の径よりも大きな径を有している。以下の説明において、円筒部131の長手方向をシャフト130の長手方向6として定義する。
図1に示されるように、セラミックスヒータ100の使用状態において、シャフト130の長手方向6は上下方向5と平行である。
【0024】
なお、シャフト130は、セラミックス基材110と同じように、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、アルミナ、窒化ケイ素等のセラミックス焼結体により形成されてもよい。あるいは、断熱性を高めるために、セラミックス基材110より熱伝導率の低い材料で形成されてもよい。
【0025】
図2に示されるように、シャフト130は中空の円筒形状を有しており、その内部(内径より内側の領域)には長手方向6(
図1参照)に延びる貫通孔が形成されている。シャフト130の中空の部分(貫通孔)には、ヒータ電極122に電力を供給するための給電線140と、静電吸着用電極124に電力を供給するための給電線141とが配置されている。なお、
図2においては、給電線140、141はそれぞれ1つずつしか図示されていないが、実際には複数の給電線140及び複数の給電線141が配置されている。給電線140の上端は、ヒータ電極122の中央に配置された端子部121(
図4参照)に電気的に接続されている。給電線140は、不図示のヒータ用電源に接続される。これにより、給電線140を介してヒータ電極122に電力が供給される。同様に、給電線141を介して、静電吸着用電極124に電力が供給される。
【0026】
また、
図2に示されるように、シャフト130の円筒部131には、上下方向5に延びる第2ガス流路168が形成されている。上述のように、第2ガス流路168の上端は第1ガス流路164の下端に接続されている。また、図示はされていないが、シャフト130の円筒部131には、後述のように、セラミックス基材110の内部に形成された連通路230(
図12参照)と接続されるガス流路を形成することができる。
【0027】
次に、セラミックスヒータ100の製造方法について説明する。以下では、セラミックス基材110及びシャフト130が窒化アルミニウムで形成される場合を例に挙げて説明する。
【0028】
まず、セラミックス基材110の製造方法について説明する。なお、説明を簡略化するために、セラミックス基材110の内部には、電極120としてヒータ電極122のみが埋設されているものとする。
図6(a)に示されるように、窒化アルミニウム(AlN)粉末を主成分とする造粒粉Pをカーボン製の有床型501に投入し、パンチ502で仮プレスする。なお、造粒粉Pには、5wt%以下の焼結助剤(例えば、Y
2O
3)が含まれることが好ましい。次に、
図6(b)に示されるように、仮プレスされた造粒粉Pの上に、所定形状に裁断されたヒータ電極122を配置する。なお、ヒータ電極122は、加圧方向に垂直な面(有床型501の底面)に平行になるように配置される。このとき、Wのペレット又はMoのペレットをヒータ電極122の端子121(
図4参照)の位置に埋設してもよい。
【0029】
図6(c)に示されるように、ヒータ電極122を覆うようにさらに造粒粉Pを有床型501に投入し、パンチ502でプレスして成形する。次に、
図6(d)に示されるように、ヒータ電極122が埋設された造粒粉Pをプレスした状態で焼成する。焼成の際に加える圧力は、1MPa以上であることが好ましい。また、1800℃以上の温度で焼成することが好ましい。次に、
図6(e)に示されるように、端子121を形成するために、ヒータ電極122までの止まり穴加工を行う。なお、ペレットを埋設した場合には、ペレットまでの止まり穴加工を行えばよい。さらに、第1ガス流路164の一部となる貫通孔を形成する。これにより、内部に第1ガス流路164が形成されたセラミックス基材110を作製することができる。この場合、ヒータ電極122が第1ガス流路164から露出しないように、予めヒータ電極122に所定の開口部を設けることが好ましい。さらに、焼成体の側面に溝加工を行い、凹部211となる溝を形成する。
【0030】
なお、セラミックス基材110は以下の方法によっても製造することができる。
図7(a)に示されるように、窒化アルミニウムの造粒粉Pにバインダーを加えてCIP成型し、円板状に加工して、窒化アルミニウムの成形体510を作製する。次に、
図7(b)に示されるように、成形体510の脱脂処理を行い、バインダーを除去する。
【0031】
図7(c)に示されるように、脱脂された成形体510に、ヒータ電極122を埋設するための凹部511を形成する。成形体510の凹部511にヒータ電極122を配置し、別の成形体510を積層する。なお、後述のように、セラミックス基材110の内部に内部空間IS1(
図10参照)等を形成する場合には、内部空間IS1となる凹部を形成した別の成形体510をさらに積層することもできる。凹部511や、内部空間IS1を形成するための凹部は、予め成形体510に形成しておいてもよい。次に、
図7(d)に示されるように、ヒータ電極122を挟むように積層された成形体510をプレスした状態で焼成し、焼成体を作製する。焼成の際に加える圧力は、1MPa以上であることが好ましい。また、1800℃以上の温度で焼成することが好ましい。焼成体を作製した後の工程は、上述の工程と同様であるので、説明を省略する。
【0032】
このようにして形成されたセラミックス基材110の上面111に対して研削を行い、ラップ加工を行う。さらに、上面111に対してサンドブラスト加工を行うことにより、上面111に複数の凸部156及び環状凸部152を形成する。このとき、複数の凸部156の高さは同じになるように加工される。また、環状凸部152の上面152aも所定の形状に加工される。なお、複数の凸部156、環状凸部152を形成するための加工方法は、サンドブラスト加工が好適であるが、他の加工方法を用いることもできる。さらに、セラミックス基材110の下面113に円筒加工を行い、下面113から突出した接合用の凸部114を形成する。
【0033】
次に、シャフト130の製造方法及びシャフト130とセラミックス基材110との接合方法について説明する。まず、バインダーを数wt%添加した窒化アルミニウムの造粒粉Pを静水圧(1MPa程度)で成形し、成形体を所定形状に加工する。このとき、成形体に第2ガス流路168となる貫通孔を形成する。なお、シャフト130の外径は、30mm~100mm程度である。シャフト130の円筒部131の端面にはフランジ部133がなくてもよい。円筒部131の長さは例えば、50mm~500mmにすることができる。成形体を所定形状に加工した後、成形体を窒素雰囲気中で焼成する。例えば、1900℃の温度で2時間焼成する。そして、焼成後に焼結体を所定形状に加工することによりシャフト130が形成される。円筒部131の上面とセラミックス基材110の接合用凸部114とを、1600℃以上、1MPa以上の一軸圧力下で、拡散接合により固定することができる。この場合には、セラミックス基材110の接合用凸部114の下面114Bの中心線平均粗さRaは0.4μm以下であることが好ましく、0.2μm以下であることがさらに好ましい。また、フランジ部133の上面と接合用凸部114の下面とを、接合剤を用いて接合することもできる。接合剤として、例えば、10wt%のY2O3を添加したAlN接合材ペーストを用いることができる。例えば、フランジ部133の上面と接合用凸部114の下面114Bとの界面に上記のAlN接合剤ペーストを15μmの厚さで塗布し、上面111に垂直な方向(シャフト130の長手方向6)に5kPaの力を加えつつ、1700℃の温度で1時間加熱することにより、接合することができる。あるいは、円筒部131の上面と接合用凸部114の下面とを、ねじ止め、ろう付け等によって固定することもできる。
【実施例0034】
以下、本発明について実施例1~6を用いて更に説明する。但し、本発明は、以下に説明する実施例に限定されない。なお、
図13、14には、実施例1~6及び比較例1、2の結果をまとめた表が示されている。
【0035】
[実施例1]
実施例1のセラミックスヒータ100(
図2、5参照)について説明する。実施例1においては、5wt%の焼結助剤(Y
2O
3)を添加した窒化アルミニウム(AlN)を原料として、上述の作製方法により直径300mmのセラミックス基材110を作製した。セラミックス基材110の厚さ(上下方向5の長さT)は14mmである。なお、ヒータ電極122として、モリブデンメッシュ(線径0.1mm、メッシュサイズ#50、平織り)を
図4の形状に裁断したものを作製し、ヒータ電極122をセラミックス基材110の上面111から深さ2.5mmの位置に埋設した。同様に、
図3に示される形状の静電吸着用電極124をセラミックス基材110の上面111から深さ1mmの位置に埋設した。
【0036】
セラミックス基材110の上面111に、内径288mm、外径298mm、幅5mmの環状凸部152を形成した。さらに、セラミックス基材110の上面111に、直径1mm、上面111からの高さ30μmの円柱形状の複数の凸部156を形成した。上述のように、複数の凸部156は同心円状に配置されており、各凸部間の距離は10mm~20mmの範囲とした。
【0037】
第1ガス流路164の開口164aの直径は3mmである。開口164aの中心は、セラミックス基材110の中心から30mmの位置にある。
【0038】
セラミックス基材110の側面に、全周にわたって凹部211を形成した。凹部211の深さ(セラミックス基材110の側面から中心に向かう径方向の長さ)は50mmであり、凹部211の上下方向5の長さT1は5mmである。また、凹部211の上端の、セラミックス基材110の上面111からの上下方向5の距離は5mmである。セラミックス基材110の上下方向5の長さTに対する、凹部211の上下方向5の長さT1の比T1/Tは0.36である。
【0039】
このような形状のセラミックスヒータ100をプロセスチャンバに設置し、以下の手順でセラミックスヒータ100の温度評価を行った。セラミックスヒータ100に温度評価用のシリコンウェハを載置し、セラミックスヒータ100のヒータ電極122に不図示の外部電源を接続した。なお、温度評価用のシリコンウェハは、直径300mmのシリコンウェハの上面に厚さ30μmの黒体膜をコーティングしたものである。黒体膜とは、放射率(輻射率)が90%以上である膜であり、例えば、カーボンナノチューブを主原料とする黒体塗料をコーティングすることにより成膜することができる。プロセスチャンバ内の圧力を1Pa以下に減圧した後、プロセスチャンバ内の圧力が20000Paとなるように窒素ガスを流した。定常状態でシリコンウェハの上面の温度が約500℃となるように外部電源の出力電力を調整した。その後、温度評価用のシリコンウェハの、内周部分110Cと上下方向5に重なる内側領域と、外周部分110Pと上下方向に重なる外側領域との温度分布を赤外線カメラで計測した。なお、温度分布の測定は、電力投入後10分後(過渡状態)及び1時間後(定常状態)に行った。
【0040】
実施例1においては、電力投入から10分後の内側領域の温度は500℃であり、外周領域の温度は495℃であった。電力投入から10分後の内側領域と外側領域の温度差Δは5℃であった。また電力投入から1時間後の内側領域の温度は500℃であり、外周領域の温度は498℃であった。電力投入から1時間後の内側領域と外側領域の温度差Δは2℃であった。
【0041】
[実施例2]
実施例2のセラミックスヒータ100(
図8参照)は、凹部211に代えて、セラミックス基材110の側面に、全周にわたって2つの凹部212、213を形成したことと、セラミックス基材110の上下方向の長さTを25mmとしたことを除いて、実施例1のセラミックスヒータ100と同様である。なお、凹部212と凹部213との間には、隔壁222が設けられている。
【0042】
実施例2において、凹部212、213の深さ(セラミックス基材110の側面から中心に向かう径方向の長さ)はいずれも50mmであり、凹部212、213の幅(上下方向5の長さ)はいずれも5mmである。また、凹部212の上端の、セラミックス基材110の上面111からの上下方向5の距離は5mmであり、凹部213の上端の、セラミックス基材110の上面111からの上下方向5の距離は15mmである。セラミックス基材110の上下方向5の長さTは25mmであり、凹部212、213の上下方向5の長さの総和T1は10mmである。セラミックス基材110の上下方向5の長さTに対する、凹部212、213の上下方向5の長さの総和T1の比T1/Tは0.40である。
【0043】
このような形状のセラミックスヒータ100をプロセスチャンバに設置し、実施例1と同様の温度評価用シリコンウェハを載置した。そして、実施例1と同様の手順でセラミックスヒータ100の温度評価を行った。実施例2においては、電力投入から10分後の内側領域の温度は500℃であり、外周領域の温度は496℃であった。電力投入から10分後の内側領域と外側領域の温度差Δは4℃であった。また電力投入から1時間後の内側領域の温度は500℃であり、外周領域の温度は497℃であった。電力投入から1時間後の内側領域と外側領域の温度差Δは3℃であった。
【0044】
[実施例3]
実施例3のセラミックスヒータ100は、凹部211に代えて、セラミックス基材110の下面113に、同心円状の4つの凹部214~217を形成したことと、セラミックス基材110の上下方向の長さTを15mmとしたことを除いて、実施例1のセラミックスヒータ100と同様である。なお、凹部214と凹部215との間には隔壁224が設けられ、凹部215と凹部216との間には隔壁225が設けられ、凹部216と凹部217との間には隔壁226が設けられている。
【0045】
実施例3において、凹部214は内径110mm、外径115mmであり、凹部214の幅(セラミックス基材110の径方向の長さ)は5mmである。凹部215は内径120mm、外径125mmであり、凹部215の幅(セラミックス基材110の径方向の長さ)は5mmである。凹部216は内径130mm、外径135mmであり、凹部216の幅(セラミックス基材110の径方向の長さ)は5mmである。凹部217は内径140mm、外径145mmであり、凹部217の幅(セラミックス基材110の径方向の長さ)は5mmである。凹部214~217の深さ(セラミックス基材110の下面113からの上下方向5の長さ)はいずれも10mmである。また、凹部214~217の上端の、セラミックス基材110の上面111からの上下方向5の距離は、いずれも5mmである。セラミックス基材110の上下方向5の長さTは15mmであり、凹部214~217の上下方向5の長さT1は10mmである。セラミックス基材110の厚さTに対する、凹部214~217の上下方向5の長さT1の比T1/Tは0.67である。
【0046】
このような形状のセラミックスヒータ100をプロセスチャンバに設置し、実施例1と同様の温度評価用シリコンウェハを載置した。そして、実施例1と同様の手順でセラミックスヒータ100の温度評価を行った。実施例3においては、電力投入から10分後の内側領域の温度は500℃であり、外周領域の温度は495℃であった。電力投入から10分後の内側領域と外側領域の温度差Δは5℃であった。また電力投入から1時間後の内側領域の温度は500℃であり、外周領域の温度は496℃であった。電力投入から1時間後の内側領域と外側領域の温度差Δは4℃であった。
【0047】
[実施例4]
実施例4のセラミックスヒータ100(
図10参照)は、凹部211に代えて、セラミックス基材110の内部に、内部空間IS1を形成したことと、セラミックス基材110の上下方向の長さTを25mmとしたことと、ヒータ電極122をセラミックス基材110の上面111から深さ4mmの位置に埋設したこととを除いて、実施例1のセラミックスヒータ100と同様である。
【0048】
実施例4において、内部空間IS1は、上面視で円環形状を有しており、その内径は100mmであり、外径は145mmである。セラミックス基材110の内部空間IS1の上下方向5の長さT1は15mmである。また、内部空間IS1の上端の、セラミックス基材110の上面111からの上下方向5の距離は7.5mmである。セラミックス基材110の上下方向5の長さTに対する、内部空間IS1の上下方向5の長さT1の比T1/Tは0.60である。
【0049】
このような形状のセラミックスヒータ100をプロセスチャンバに設置し、実施例1と同様の温度評価用シリコンウェハを載置した。そして、プロセスチャンバ内の圧力が1000Paとなるように窒素ガスを流したことを除いて、実施例1と同様の手順でセラミックスヒータ100の温度評価を行った。実施例4においては、電力投入から10分後の内側領域の温度は500℃であり、外周領域の温度は496℃であった。電力投入から10分後の内側領域と外側領域の温度差Δは4℃であった。また電力投入から1時間後の内側領域の温度は500℃であり、外周領域の温度は500℃であった。電力投入から1時間後の内側領域と外側領域の温度差Δは0℃であった。
【0050】
[実施例5]
実施例5のセラミックスヒータ100(
図11参照)は、凹部211に代えて、セラミックス基材110の内部に、内部空間IS2を形成したことと、セラミックス基材110の上下方向の長さTを25mmとしたことと、ヒータ電極122をセラミックス基材110の上面111から深さ4mmの位置に埋設したこととを除いて、実施例1のセラミックスヒータ100と同様である。
【0051】
実施例5において、内部空間IS2は、上面視で円環形状を有しており、その内径は100mmであり、外径は145mmである。セラミックス基材110の内部空間IS2の上下方向5の長さは、径100mm~110mmの領域では5mmであり、径110mm~120mmの領域では10mmであり、径120mm~145mmの領域では15mmである。このように、内部空間IS2の上下方向5の長さが一定ではない場合には、上下方向5に垂直な水平方向における内部空間IS2の最大断面積と同じ底面積を有し、容積が内部空間IS2と同じであって、且つ、上下方向5の長さが一定である実効内部空間を考える。そして、実効内部空間の上下方向5の長さを、内部空間IS2の上下方向5の長さT1として定義する。実施例5においては、内部空間IS2の上下方向5の長さT1は12.1mmとなる。セラミックス基材110の上下方向5の長さTに対する、内部空間IS1の上下方向5の長さT1の比T1/Tは0.48である。なお、内部空間IS2の最上端の、セラミックス基材110の上面111からの上下方向5の距離は7.5mmである。
【0052】
このような形状のセラミックスヒータ100をプロセスチャンバに設置し、実施例1と同様の温度評価用シリコンウェハを載置した。そして、プロセスチャンバ内の圧力が1000Paとなるように窒素ガスを流したことを除いて、実施例1と同様の手順でセラミックスヒータ100の温度評価を行った。実施例4においては、電力投入から10分後の内側領域の温度は500℃であり、外周領域の温度は497℃であった。電力投入から10分後の内側領域と外側領域の温度差Δは3℃であった。また電力投入から1時間後の内側領域の温度は500℃であり、外周領域の温度は500℃であった。電力投入から1時間後の内側領域と外側領域の温度差Δは0℃であった。
【0053】
[実施例6]
実施例6のセラミックスヒータ100(
図12参照)は、凹部211に代えて、セラミックス基材110の内部に、内部空間IS3を形成したことと、内部空間IS3に連通する連通路230を形成したことと、セラミックス基材110の上下方向の長さTを25mmとしたことと、ヒータ電極122をセラミックス基材110の上面111から深さ4mmの位置に埋設したこととを除いて、実施例1のセラミックスヒータ100と同様である。
【0054】
実施例6において、内部空間IS3は、上面視で円環形状を有しており、その内径は100mmであり、外径は145mmである。セラミックス基材110の内部空間IS2の上下方向5の長さは10mmである。連通路230は、内部空間IS3の下端と、セラミックス基材110の下面113とを繋いでおり、下面113に開口231が設けられている。図示はされていないが、開口221aはシャフト130に設けられたガス流路に接続されている。実施例6において、セラミックス基材110の上下方向5の長さTに対する、内部空間IS3の上下方向5の長さT1の比T1/Tは0.40である。なお、内部空間IS3の上端の、セラミックス基材110の上面111からの上下方向5の距離は7.5mmである。
【0055】
このような形状のセラミックスヒータ100をプロセスチャンバに設置し、実施例1と同様の温度評価用シリコンウェハを載置した。そして、プロセスチャンバ内の圧力が1000Paとなるように窒素ガスを流したことを除いて、実施例1と同様の手順でセラミックスヒータ100の温度評価を行った。実施例6においては、電力投入から10分後の内側領域の温度は500℃であり、外周領域の温度は498℃であった。電力投入から10分後の内側領域と外側領域の温度差Δは2℃であった。また電力投入から1時間後の内側領域の温度は500℃であり、外周領域の温度は500℃であった。電力投入から1時間後の内側領域と外側領域の温度差Δは0℃であった。
【0056】
[比較例1]
比較例1のセラミックスヒータは、凹部211が設けられていないことを除いて、実施例1のセラミックスヒータ100と同様である。
【0057】
このような形状のセラミックスヒータをプロセスチャンバに設置し、実施例1と同様の温度評価用シリコンウェハを載置した。そして、実施例1と同様の手順でセラミックスヒータの温度評価を行った。比較例1においては、電力投入から10分後の内側領域の温度は500℃であり、外周領域の温度は482℃であった。電力投入から10分後の内側領域と外側領域の温度差Δは18℃であった。また電力投入から1時間後の内側領域の温度は500℃であり、外周領域の温度は500℃であった。電力投入から1時間後の内側領域と外側領域の温度差Δは0℃であった。
【0058】
[比較例2]
比較例2のセラミックスヒータは、凹部211が設けられていないことと、セラミックス基材の上下方向の長さを25mmとしたこととを除いて、実施例1のセラミックスヒータ100と同様である。
【0059】
このような形状のセラミックスヒータをプロセスチャンバに設置し、実施例1と同様の温度評価用シリコンウェハを載置した。そして、プロセスチャンバ内の圧力が1000Paとなるように窒素ガスを流したことを除いて、実施例1と同様の手順でセラミックスヒータの温度評価を行った。比較例2においては、電力投入から10分後の内側領域の温度は500℃であり、外周領域の温度は484℃であった。電力投入から10分後の内側領域と外側領域の温度差Δは16℃であった。また電力投入から1時間後の内側領域の温度は500℃であり、外周領域の温度は500℃であった。電力投入から1時間後の内側領域と外側領域の温度差Δは0℃であった。
【0060】
<実施形態の作用効果>
上記実施形態及び実施例1~6において、セラミックスヒータ100は、円板状のセラミックス基材110と、セラミックス基材110に埋設されたヒータ電極122とを備えている。セラミックス基材110の上面111と下面113との間の、上下方向5の長さTは14mm以上である。セラミックス基材110の外周部分110Pには、中空部分(凹部211~217、内部空間IS1~IS3)が設けられている。セラミックス基材110の、上下方向5の長さTに対する、中空部分の上下方向5の長さの総和T1の比T1/Tは0.35以上にすることができる。
【0061】
実施例1~6と比較例1、2とを比較すると、実施例1~6においては、セラミックス基材110の外周部分110Pに、上述のように比T1/Tが0.35以上となるような中空部分が設けられている。これにより、外周部分110Pの単位面積当たりの熱容量を、内周部分110Cの単位面積当たりの熱容量よりも小さくすることができる。その結果、実施例1~6においては、ヒータ電極122に通電を開始してから10分後の内側領域と外側領域の温度差Δを、比較例1、2の場合よりも小さくすることができた。つまり、実施例1~6においては、比較例1、2と比べて、短時間で外側領域の温度を昇温することができた。これにより、実施例1~6のセラミックスヒータ100においては、ヒータ電極122に通電を開始してから温度が定常状態になるまでの時間を短縮することができ、ウェハの加熱プロセスのプロセス時間を短縮して、プロセスのスループットを向上させることができた。
【0062】
実施例4~6において、セラミックス基材110の外周部分110Pの内部には、セラミックス基材110の外側に露出していない内部空間IS1、IS2、IS3が設けられている。内部空間IS1、IS2は閉空間であり、内部空間IS3は、連通路230と連通する内部空間であるが、いずれも、セラミックス基材110の外側には露出していない。内部空間IS1、IS2、IS3を形成することにより、容易に、外周部分110Pの単位面積当たりの熱容量を内周部分110Cの単位面積当たりの熱容量よりも小さくすることができる。また、内部空間IS1、IS2はセラミックス基材110の内部に形成された閉空間であるため、セラミックス基材110の外形は、内部空間IS1、IS2が形成されていない従来のセラミックス基材の外形と同じである。そのため、表面からの熱放射の影響を、従来のセラミックス基材と同じにすることができるとともに、従来のセラミックス基材を有するセラミックスヒータと容易に置き換えることができる。
【0063】
実施例5において、内部空間IS2の上下方向5の長さは、上下方向5に直交する水平方向(例えば、径方向)の位置に応じて異なっている。これにより、外周部分110Pの単位面積当たりの熱容量を、水平方向の位置に応じて変えることができる。これにより、外周部分110Pにおける温度制御性を向上させることができる。
【0064】
実施例6において、セラミックス基材110の内部には、内部空間IS3と、内部空間IS3に連通する連通路230とが形成されている。なお、実施例6においては、連通路230は、セラミックス基材110に隣接するシャフト130に設けられた不図示のガス流路に接続される。なお、連通路230は、必ずしもシャフト130に設けられたガス流路に接続されなくてもよい。例えば、セラミックス基材110がシャフト130と接合されていない場合には、連通路230が、セラミックス基材110が載置される金属ベースに設けられたガス流路に接続されていてもよい。内部空間IS3が連通路230に連通しているので、連通路230を介して内部空間IS3の圧力を適宜の圧力に調整することができる。これにより、例えば、プロセスチャンバの圧力と内部空間IS3の圧力との圧力差を小さくすることができ、圧力差に起因してセラミックス基材110が破損することを抑制できる。
【0065】
実施例1においては、セラミックス基材110の側面に、全周にわたって凹部211が形成されている。実施例2においては、セラミックス基材110の側面に、全周にわたって2つの凹部212、213が形成されている。凹部212と凹部213との間には隔壁222が設けられており、これにより、セラミックス基材110の側面には、外部に露出した複数の開空間が形成されている。また、実施例3において、セラミックス基材110の下面113に、4つの凹部214~217が形成されている。凹部214と凹部215との間には隔壁224が設けられ、凹部215と凹部216との間には隔壁225が設けられ、凹部216と凹部217との間には隔壁226が設けられている。これにより、セラミックス基材110の下面113には、外部に露出した複数の開空間が形成されている。
【0066】
実施例1~3では、電力投入から1時間後においても内側領域と比べて外側領域の温度を低くすることができた。これは、凹部211~217によって形成される中空部分がセラミックス基材110の外側に露出した開空間であるため、この開空間を通じて効率よく放熱することができたからであると考えられる。また、実施例1に比べて、実施例2、3では電力投入から1時間後における外側領域の温度をさらに低くすることができた。これは、隔壁222及び隔壁224~226を設けることにより、表面積を大きくすることができたからである、つまり、隔壁222及び隔壁224~226を放熱フィンとして機能させることができたからであると考えられる。隔壁222及び隔壁224~226を設けることは、プロセスチャンバ内の圧力が比較的高い圧力(例えば20000Pa)であるときには、プロセスガスを通じて効率よく放熱することができるため特に有効である。
【0067】
上記実施形態及び実施例1~6において、セラミックス基材110の下面113に筒状のシャフト130を接合することができる。これにより、セラミックス基材110の断熱性が向上する。
【0068】
<変更形態>
上述の実施形態は、あくまで例示に過ぎず、適宜変更しうる。例えば、セラミックス基材110、シャフト130の形状、寸法は上記実施形態のものには限られず、適宜変更しうる。環状凸部152の高さ、幅等の寸法、環状凸部152の上面152aの断面形状、上面152aの中心線平均粗さRaの大きさは適宜変更しうる。
【0069】
複数の凸部156の高さ、上面156aの形状、上面156aの中心線平均粗さRaの大きさは適宜変更しうる。例えば、複数の凸部156の上面156aの形状は必ずしも円形でなくてもよく、任意の形状にすることができる。なお、その場合においても、直径0.1mm~5mmの円と同程度の面積を有することが好ましい。また、上記説明において、複数の凸部156は同心円状に分布するように配置されていたが、本発明はそのような態様には限られない。例えば、複数の凸部156が、正三角形、正四角形の各頂点の位置に分布するように、格子状に連続的に配列されてもよく、複数の凸部156がランダムな位置に分布するように配置されていてもよい。その場合であっても、複数の凸部156の、各凸部の離間距離は、1.5mm~30mmの範囲にあることが好ましい。
【0070】
上記実施形態においては、ヒータ電極122として、モリブデン、タングステン、モリブデン及び/又はタングステンを含む合金を用いていたが、本発明はそのような態様には限られない。例えば、モリブデン、タングステン以外の金属又は合金を用いることもできる。また、電極120は発熱体としてのヒータ電極122を含んでいた。しかしながら、電極120は必ずしも発熱体としてのヒータ電極122を含む必要は無く、例えば、発熱体として高周波電極を含んでいてもよい。
【0071】
上記実施形態及び実施例1~6において、中空部分として凹部211~217、内部空間IS1~IS3を例に挙げて説明したが、本発明はこのような態様に限られず、中空部分を構成する凹部及び/又は内部空間の形状、数、配置等は適宜変更しうる。例えば、中空部分として、セラミックス基材110に凹部と内部空間とを両方設けることもできる。
【0072】
実施例3において、4つの凹部214~217の上下方向5の長さT1はいずれも同じであった。しかしながら、本発明はそのような態様には限られない。例えば、
図15に示されるように、凹部214a~217aの上下方向の長さが互いに異なっていてもよい。その場合には、凹部214a~217aの上下方向の長さの平均値を、凹部214a~217aの上下方向の長さT1として採用することができる。また、上記実施形態及び実施例1において、凹部211の上面は上下方向5に直交する水平面に平行であり、凹部211の上下方向5の長さT1は水平方向において一定であった。しかしながら、本発明はそのような態様には限られず、凹部211の上下方向の長さT1は水平方向において一定でなくてもよい。同様に、凹部212~217の上下方向5の長さT1も、必ずしも水平方向において一定でなくてもよい。凹部211の上下方向の長さT1が一定でない場合は、以下のような実効空間を想定し、実効空間に基づいて凹部211の上下方向5の長さT1を定義する。具体的には、実効空間の底面積は、上下方向5に垂直な水平方向における、凹部211によって形成された空間の最大断面積と同じであるとする。また、実効空間の容積は凹部211によって形成された空間の容積と同じであって、且つ、実効空間の上下方向5の長さが一定であるとする。そして、このような実効空間の上下方向5の長さを、凹部211の上下方向5の長さT1として定義する。また、凹部212、213の上下方向の長さT1が一定でない場合は、凹部211の場合と同様にして、実効空間に基づいて凹部212、213の上下方向5の長さT1を定義する。具体的には、実効空間の底面積は、上下方向5に垂直な水平方向における、凹部212、213によって形成された空間の最大断面積と同じであるとする。実効空間の容積は、凹部212、213によって形成された空間の容積の合計と同じであって、且つ、実効空間の上下方向5の長さが一定であるとする。そして、このような実効空間の上下方向5の長さを、凹部212、213の上下方向5の長さT1として定義することができる。
【0073】
上記実施形態においては、セラミックスヒータ100はセラミックス基材110に埋設されたヒータ電極122を備えていたが、本発明はそのような態様には限られず、ヒータ電極122はセラミックス基材110に埋設されていなくてもよい。例えば、ヒータ電極122がセラミックス基材110の裏面113に貼付されていてもよい。あるいは、発熱体として、ヒータ電極122に代えて、高周波電極をセラミックス基材110の裏面113に貼付することができる。
【0074】
上記実施形態においては、シャフト130は大径部132、133を備えていたが、本発明はそのような態様には限られず、必ずしもシャフト130は大径部132、133を備えていなくてもよい。また、シャフト130の円筒部131に、上下方向5に延びる第2ガス流路168が形成されていなくてもよい。例えば、第2ガス流路168に代えて、円筒部131の中空の領域(給電線140が設けられている領域)に、別途ガスの配管を設けることもできる。また、セラミックス基材110の下面113には、必ずしも接合用凸部114が形成されていなくてもよい。例えば、下面113にシャフト130が接合されていてもよい。
【0075】
以上、発明の実施形態及びその変更形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることが当業者に明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが請求の範囲の記載からも明らかである。
【0076】
明細書、及び図面中において示した製造方法における各処理の実行順序は、特段に順序が明記されておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるので無い限り、任意の順序で実行しうる。便宜上、「まず、」「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するわけではない。