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特開2023-180077非水性インクジェット用インク組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180077
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】非水性インクジェット用インク組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/36 20140101AFI20231213BHJP
   C09D 11/324 20140101ALI20231213BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231213BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
C09D11/36
C09D11/324
B41J2/01 501
B41M5/00 100
B41M5/00 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093174
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】金城 潤
(72)【発明者】
【氏名】岡本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】川本 健司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 駿
(72)【発明者】
【氏名】中島 興範
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FC01
2H186AB11
2H186BA08
2H186DA08
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB57
4J039AB02
4J039AD05
4J039AD08
4J039AD09
4J039BA04
4J039BC13
4J039BC20
4J039BC25
4J039BE01
4J039BE07
4J039BE12
4J039BE22
4J039CA07
4J039EA01
4J039EA19
4J039EA46
4J039FA02
4J039GA03
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】
印刷面が樹脂等からなる被印刷基材の上に、インクジェット用インク組成物により印刷を行った場合においても、吐出安定性、乾燥性に優れ、さらに、既に一部に印刷がなされている樹脂基材を被印刷物にした場合であっても、その被印刷基材や既に形成されていた印刷部への熱による影響がない条件で印刷可能なインクジェット用インク組成物、及びその印刷方法を提供する。
【解決手段】 カーボンブラックを2.5~10.0質量%含有し、
酢酸ブチルの蒸発速度を100としたときの蒸発速度が20~80である有機溶剤を80.0質量%以上含有し、
樹脂を含有し、
赤外線照射による乾燥性を有する、
樹脂基材印刷用の非水性インクジェット用インク組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラックを2.5~10.0質量%含有し、
酢酸ブチルの蒸発速度を100としたときの蒸発速度が20~80である有機溶剤を80.0質量%以上含有し、
樹脂を含有し、
赤外線照射による乾燥性を有する、
樹脂基材印刷用の非水性インクジェット用インク組成物。
【請求項2】
樹脂基材上に設けた印刷層の上に印刷するための請求項1に記載の非水性インクジェット用インク組成物。
【請求項3】
非水性インクジェット用インク組成物に含有される前記樹脂が、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、及び塩ビ-酢ビ系樹脂から選ばれる少なくとも1種以上を含む請求項1又は2に記載の非水性インクジェット用インク組成物。
【請求項4】
酢酸ブチルの蒸発速度を100としたときの蒸発速度が30~60の有機溶剤を80.0質量%以上含有する請求項1又は2に記載の非水性インクジェット用インク組成物。
【請求項5】
カーボンブラックを2.5~10.0質量%含有し、
酢酸ブチルの蒸発速度を100としたときの蒸発速度が20~80である有機溶剤を80.0質量%以上含有し 、
樹脂を含有する非水性インクジェット用インク組成物を用いて、
樹脂からなる被印刷基材及び/又は被印刷基材表面に予め形成された印刷部に対してインクジェット印刷を行い、
赤外線照射により乾燥を行う、
非水性インクジェット用インク組成物による印刷方法。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂からなる基材表面や、任意の材料の表面に既に形成された印刷部の表面を被印刷面とする非水性インクジェット用インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、顔料、樹脂、分散剤、及び有機溶媒を含有する非水性インクジェット用インキ組成物であって、被印刷基材が樹脂であるものは知られている。
しかし、これらの非水性インクジェット用インキ組成物は、印刷直後において、有機溶媒が速やかに蒸発して、乾燥をすることにより、目的とした画像等の印刷を行うことができる。
【0003】
しかしながら、このような非水性インクジェット印刷用インキ組成物は、乾燥性が良いことなどを理由として、連続吐出後に停止した後、吐出を再開した場合においてノズル抜け、つまり、非水性インクジェット印刷用インキ組成物を吐出できないノズルが発生することがある。そのために、洗浄等の操作が必要になったり、乾燥が早くない非水性インクジェット印刷用インキ組成物へ変更したりする。
洗浄等の操作を必要とした場合、印刷物の生産性を低下させる原因になり、また乾燥が早くない非水性インクジェット印刷用インキ組成物へ変更すると、印刷後の印刷物を重ねて置いたときに、下層の印刷部のインキ組成物が、その上の印刷物の裏面に転写される、裏写りが発生することが懸念される。
【0004】
インクジェット用インキ組成物を印刷直後に加熱して乾燥を行う方法は知られているが、その場合のインクジェット用インキ組成物は水性又は水を含有しており、その水を加熱して蒸発をさせることにより、印刷を行う方法である。このような加熱乾燥を行う印刷方法は専ら紙を印刷基材とする場合に採用できる。樹脂を印刷基材にする場合には、その印刷基材の一部の面にのみ印刷をした場合であっても、加熱乾燥装置が印刷基材の全面を加熱する構造であるために、樹脂である印刷基材の少なくとも一部に、熱による変形やシワの発生をみることになる。
さらに、赤外線を照射して乾燥を行おうとした場合、かつ複数の印刷物を速やかに得るために、連続して印刷と乾燥を行う場合、赤外線の照射強度を高くする必要があった。これにより、印刷されたインキ組成物の乾燥を行うことはできても、印刷基材も同時に加熱され、かつその加熱温度が高くなりすぎるために、印刷基材や既に形成されていた印刷部に、変形やシワ等のダメージが発生する場合があった。
また、既に一部に1度目の印刷を行った印刷済みの印刷基材に対して、その印刷部及び/又は非印刷部に2度目の印刷を行うとき、その2度目の印刷が加熱乾燥を伴う場合には、印刷基材や1度目の印刷による印刷部が熱によってシワや変形等のダメージを受ける場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-59106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明により解決しようとする課題は、印刷面が樹脂等からなる被印刷基材の上に、インクジェット用インク組成物により印刷を行った場合においても、吐出安定性、乾燥性に優れ、さらに、既に一部に印刷がなされている樹脂基材を被印刷物にした場合であっても、その被印刷基材や既に形成されていた印刷部への熱による影響がない条件で印刷可能なインクジェット用インク組成物、及びその印刷方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究した結果、有機溶剤として特定の組成とすることにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、1.カーボンブラックを2.5~10.0質量%含有し、
酢酸ブチルの蒸発速度を100としたときの蒸発速度が20~80である有機溶剤を80.0質量%以上含有し、
樹脂を含有し、
赤外線照射による乾燥性を有する、
樹脂基材印刷用の非水性インクジェット用インク組成物。
2.樹脂基材上に設けた印刷層の上に印刷するための1に記載の非水性インクジェット用インク組成物。
3.非水性インクジェット用インク組成物に含有される前記樹脂が、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、及び塩ビ-酢ビ系樹脂から選ばれる少なくとも1種以上を含む1又は2に記載の非水性インクジェット用インク組成物。
4.酢酸ブチルの蒸発速度を100としたときの蒸発速度が30~60の有機溶剤を80.0質量%以上含有する請求項1~3のいずれかに記載の非水性インクジェット用インク組成物。
5.カーボンブラックを2.5~10.0質量%含有し、
酢酸ブチルの蒸発速度を100としたときの蒸発速度が20~80である有機溶剤を80.0質量%以上含有し 、
樹脂を含有する非水性インクジェット用インク組成物を用いて、
樹脂からなる被印刷基材及び/又は被印刷基材表面に予め形成された印刷部に対してインクジェット印刷を行い、
赤外線照射により乾燥を行う、
非水性インクジェット用インク組成物による印刷方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の非水性インクジェット用インク組成物は、アクリル系樹脂、顔料、顔料分散剤、有機溶剤として特定の組成のものを含有するものである。
これにより、樹脂基材に印刷を行うための加熱乾燥型のインク組成物として、乾燥性に優れ、インクジェット用プリンターのノズルからの吐出安定性が良好であり、さらに該樹脂基材へのダメージ、及び既に形成されていた印刷部へのダメージがない条件で印刷可能であるという効果を発揮ができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(カーボンブラック)
本発明におけるカーボンブラックとしては、インク用として使用されるカーボンブラックであれば良い。ラクタムブラック、ペリレンブラック、Solvent Black29等のソルベントブラック、各種のディスパースブラックやダイレクトブラック、アシッドブラック等の、カーボンブラックではない黒色色材のみを含有させると、非水性インクジェット用インク組成物を十分に加熱乾燥させることが困難である。赤外線、中でも近赤外線を吸収して発熱できる黒色色材の中でもカーボンブラックであることが必要である。
カーボンブラックは、1種もしくは2種以上を混合して用いることができ、その使用量は、非水性インクジェット用インク組成物全量に対して2.5質量%以上10質量%以下である。さらに3.0質量%以上が好ましい。また9.0質量%以下が好ましく、8.5質量%以下がより好ましく、8.0質量%以下がさらに好ましく、5.0質量%以下が最も好ましい。2.5質量%より少ない場合には、印刷された非水性インクジェット用インク組成物を乾燥させるために、照射する赤外線のエネルギーを過度に高める必要があり、被印刷基材である樹脂基材の温度が高くなりすぎて、その樹脂基材表面にシワや歪みを発生させたり、変形させたりしてダメージを与える可能性が高い。そのダメージの発生を防止するために、照射する赤外線のエネルギーを弱くすると、インク組成物の乾燥性が低下する。一方10.0質量%より多くなると粘度が上昇し、非水性インクジェット用インク組成物の吐出安定性が低下する。また、それ以上に高いエネルギーで赤外線を照射しても、さらなる乾燥性の向上効果は期待できない。
【0010】
(カーボンブラック以外の色材)
本発明の非水性インクジェット用インク組成物に含有されるカーボンブラック以外の色材としては、本発明による効果を毀損しない範囲において、従来から非水性インクジェット用インク組成物に使用されている公知の無機及び有機顔料や染料、カーボンブラックではない黒色色材等を使用することができる。
その無機顔料の具体例としては、酸化チタン、亜鉛華、酸化亜鉛、トリポン、酸化鉄、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、カオリナイト、モンモリロナイト、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、クロムバーミリオン、モリブデートオレンジ、黄鉛、クロムイエロー、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ピリジアン、コバルトグリーン、チタンコバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、群青、ウルトラマリンブルー、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、マイカ等が例示できる。
また有機顔料の具体例としては、アゾ系、アゾメチン系、ポリアゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アンスラキノン系、インジゴ系、チオインジゴ系、キノフタロン系、ベンツイミダゾロン系、イソインドリン系、イソインドリノン系等の有機顔料が挙げられ、具体的な例をカラーインデックスで示すと、ピグメントブラック7、ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、60、ピグメントグリーン7、36、ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、149、168、177、178、179、206、207、209、242、254、255、ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、94、95、109、110、117、120、125、128、137、138、139、147、148、150、151、154、155、166、168、180、185、ピグメントオレンジ36、43、51、55、59、61、71、74等が挙げられる。
なお、金属顔料を含有してもしなくても良い。
染料の具体例としては、アニオン性染料、カチオン性染料、非イオン性染料、両性イオン性染料などの各種の公知の染料が挙げられる。
【0011】
(樹脂)
本発明の非水性インクジェット用インク組成物は樹脂を含有する。含有できる樹脂としては、本発明における溶媒に十分に溶解でき、印刷後において皮膜を形成できることが必要である。本発明の非水性インクジェット用インク組成物は加熱により乾燥し印刷部に皮膜を形成するものであり、加熱によって、反応性成分が反応して、樹脂皮を形成するような樹脂を含有するものではない。
使用できる樹脂としてはアクリル系樹脂、セルロース系樹脂、塩ビ-酢ビ系樹脂等から選ばれた1種以上が好ましい。
非水性インクジェット用インク組成物全量に対する樹脂の含有量は、1.0質量%以上が好ましく、3.0質量%以上がより好ましく、5.0質量%以上が更に好ましい。また20.0質量%以下が好ましく、15.0質量%以下がより好ましく、12.0質量%以下が更に好ましい。1.0質量%未満では基材との定着性が充分でなく印刷層を確実に形成することが困難になる可能性があり、20.0質量%を超えると吐出安定性が優れた状態で印刷を行うことが困難になる可能性がある。
【0012】
(アクリル系樹脂)
本発明の非水性インクジェット用インク組成物に含有しても良いアクリル系樹脂としては、有機溶剤に可溶な(メタ)アクリレートからなる重合体及びその共重合体などが挙げられる。そのような(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、またはブチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
一例として、三菱レイヨン社のダイヤナールシリーズであるBR-60(Tg:75℃)、BR-64(Tg:55℃)、BR-75(Tg:90℃)、BR-77(Tg:80℃)、BR-83(Tg:105℃)、BR-87(Tg:105℃)、BR-88(Tg:105℃)、BR-90(Tg:65℃)、BR-93(Tg:50℃)、BR-95(Tg:80℃)、BR-105(Tg:50℃)、BR-106(Tg:50℃)、BR-107(Tg:50℃)、BR-108(Tg:90℃)、BR-113(Tg:75℃)、BR-115(Tg:50℃)及びBR-116(Tg:50℃)等が挙げられる。
【0013】
(セルロース系樹脂)
本発明の非水性インクジェット用インク組成物に含有しても良いセルロース系樹脂としては、ニトロセルロース(ニトロ基置換体)、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどの低級アシル基置換体、メチルセルロース、エチルセルロースなどの低級アルキル置換体などが挙げられる。
【0014】
(塩ビ-酢ビ系樹脂)
本発明にて使用しても良い塩ビ-酢ビ系樹脂としては、基本的に塩化ビニルと酢酸ビニルを必須成分とした塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体である。そして、必要により他のラジカル重合性モノマーを加えて共重合して得られる共重合体であり、このとき、酢酸ビニル由来の部位のエステル結合をケン化し、さらに他のラジカル重合性モノマーとしてアミノ基を含有する化合物を用いるか、または塩化ビニル由来の部位にアミノ基含有炭化水素化合物を脱塩化水素反応させてアミノ基を導入した、例えば、アミノ基含有塩化ビニル-酢酸ビニル-ビニルアルコール系共重合体も使用できる。
【0015】
このような塩ビ-酢ビ系樹脂としては、従来からインク組成物に使用されている塩化ビニルモノマーと酢酸ビニルモノマーの共重合体を使用できる。
具体的には、SOLBIN C、SOLBIN CL、SOLBIN CH、SOLBIN CN、SOLBIN C5R、SOLBIN A、SOLBIN AL、SOLBIN TA2、SOLBIN TA3、SOLBIN TAO、SOLBIN TA5R、SOLBIN M、SOLBIN ME、SOLBIN MFK(いずれも、日信化学工業社)、VINNOL E15/48A、VINNOL E22/48A、VINNOL E14/45、VINNOL H14/36、VINNOL H40/55、VINNOL E15/45M(いずれも、WACKER社)等が挙げられる。
また塩ビ-酢ビ系樹脂として、塩化ビニル85%-酢酸ビニル15%の塩ビ-酢ビ系樹脂を使用することが好ましい。
なかでも、酢酸エステル部分の一部をケン化することにより得られた水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合体の場合では、分子中の塩化ビニルの反応部位に基づく構成単位(下記式1)、酢酸ビニルの反応部位に基づく構成単位(下記式2)、および酢酸ビニルの反応部位のケン化に基づく構成単位(下記式3)の比率により樹脂の皮膜物性や溶解挙動が決定される。
即ち、塩化ビニルの反応部位に基づく構成単位は樹脂皮膜の強靭さや硬さを付与し、酢酸ビニルの反応部位に基づく構成単位は接着性や柔軟性を付与し、酢酸ビニルの反応部位のケン化に基づく構成単位は環境に配慮したインクの有機溶剤系への良好な溶解性を付与する。
式1 -CH-CHCl-
式2 -CH-CH(OCOCH)-
式3 -CH-CH(OH)-
【0016】
(アミノ基含有塩ビ-酢ビ-ビニルアルコール系樹脂)
本発明にて使用しても良いアミノ基含有塩ビ-酢ビ-ビニルアルコール系樹脂は、塩化ビニル単位、酢酸ビニル単位、ビニルアルコール単位、およびアミノ基含有単位から構成されることになる。なお、塩化ビニル単位および酢酸ビニル単位とは、塩化ビニルおよび酢酸ビニルの反応後の共重合体に占めるそれぞれの部位として、不飽和二重結合の開裂により生じるエチレン鎖と、それに結合するモノマーの不飽和二重結合を除く残基から構成される単位をいう。つまり、塩化ビニル単位は〔-CH-CHCl-〕、酢酸ビニル単位は〔-CH-CH(OCOCH)-〕で表わされる単位である。また、ビニルアルコール単位とは、酢酸ビニル単位のエステル結合がケン化反応により加水分解された後のエチレン鎖とそれに結合した水酸基から構成される単位であり、〔-CH-CH(OH)-〕で表わされる。さらにアミノ基含有単位とは、他のラジカル重合性モノマーとしてアミノ基を含有する化合物を用いる場合では、ラジカル重合性不飽和二重結合の開裂により生じたエチレン鎖と、それに結合するモノマーの不飽和二重結合を除く残基から構成される単位であり、〔-CH-CHX-〕(Xはモノマーの不飽和二重結合を除く残基でアミノ基を含有する)で表わされ、一方、塩化ビニル単位にアミノ基含有炭化水素化合物を脱塩酸反応させて導入する場合では、塩化ビニル単位の塩素がアミノ基含有炭化水素化合物の水素を一つ除く残基に置換された単位であり、〔-CH-CHY-〕(Yはアミノ基含有炭化水素化合物の水素を一つ除く残基)で表わされる。
【0017】
このアミノ基含有塩化ビニル-酢酸ビニル-ビニルアルコール系共重合体を製造する方法としては、例えば、塩化ビニルと酢酸ビニルとアミノ基含有エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーの共重合体を得、これをケン化して酢酸ビニル単位の一部をビニルアルコール単位に変換してアミノ基含有単位とすることにより得ることができる。前記アミノ基含有エチレン性不飽和二重結合モノマーとしては、一般式(1):
【化1】
式中、Rは水素原子またはメチル基、R、Rは独立に一価の炭化水素基であり、mは1~6の整数である。)で表される(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステルが挙げられる。前記一般式(1)において、式:(CH)mで示されるアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ブチレン基等が挙げられる。R、Rで示される一価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等の炭素原子数1~4のアルキル基等が挙げられる。前記一般式(1)で表される前記アミノ基含有エチレン性不飽和二重結合モノマーの具体例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ) アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。前記アミノ基含有エチレン性不飽和二重結合モノマーとしては、前記一般式(1)で表されるモノマー以外に、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド等も使用可能である。
【0018】
上記アミノ基含有塩化ビニル-酢酸ビニル-ビニルアルコール系共重合体を製造する他の方法としては、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体をアミン化合物の存在下にケン化/アミン変性法により処理して、酢酸ビニル単位の一部をビニルアルコール単位に変換すると共に、塩化ビニル単位の塩素原子の一部とアミン化合物を反応させてアミノ基を側鎖に導入してアミノ基含有単位とする方法が挙げられる。前記アミン化合物としては、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン等が挙げられる。具体的には、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、エタノールアミン、ナフチルアミン、アニリン、O-トルイジン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジオクチルアミン、ジエタノールアミン、N-メチルアニリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、N-メチルジフェニルアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0019】
そして、インクの吐出安定性や被記録媒体との密着性の点から、好ましくは共重合体中に占めるビニルアルコール単位の割合が4.0~7.0質量%であるアミノ基含有塩化ビニル-酢酸ビニル-ビニルアルコール系共重合体を使用することができる。共重合体中に占めるビニルアルコール単位の割合が4.0質量%未満では、密着性が低下する傾向があり、一方7.0質量%を超えると、吐出安定性が低下する傾向がある。
また、前記アミノ基含有塩化ビニル-酢酸ビニル-ビニルアルコール系共重合体においては、アミノ基含有塩化ビニル単位と酢酸ビニル単位とが、質量比でアミノ基含有塩化ビニル単位/酢酸ビニル単位=80/20~99/1となる範囲で含有されるのが好ましい。
【0020】
さらに、前記アミノ基含有塩化ビニル-酢酸ビニル-ビニルアルコール系共重合体のアミノ基含有単位の含有量は、共重合体中に0.1~5.0質量%であることが好ましい。アミノ基含有単位の割合が0.1質量%未満では、吐出安定性が低下する傾向がある。
【0021】
前記アミノ基含有塩化ビニル-酢酸ビニル-ビニルアルコール系共重合体は数平均分子量が10,000~50,000の範囲にあるものが好ましい。数平均分子量が前記範囲を超えると、粘度が上昇しノズルからの吐出が困難となる傾向にある。
前記アミノ基含有塩化ビニル-酢酸ビニル-ビニルアルコール系共重合体の市販品としては、SOLBIN TAO、SOLBIN TAOL(以上、日信化学工業社)等を挙げることができる。
【0022】
なお、本発明による効果を毀損しない範囲内で、上記アクリル系樹脂やセルロース系樹脂や塩ビ-酢ビ系樹脂以外の樹脂、例えば、塩化ビニル系樹脂、塩ビ-アクリル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、スチレン-マレイン酸系樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、石油樹脂、クマロンインデン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ系樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂等を併用することも可能である。
そして特に塩ビ-酢ビ系樹脂を併用する場合には、アクリル系樹脂や塩ビ-酢ビ系樹脂100質量部に対して、好ましくは塩ビ-酢ビ系樹脂を1.0~15.0質量部、より好ましくは2.0~12.0質量部、更に好ましくは3.0~10.0質量部配合できる。
なお、シクロオレフィン系樹脂を含有してもしなくても良い。また、本発明は特定のエネルギー線の照射による乾燥性を有するものであり、インク組成物中に重合性モノマーを含有しない。
【0023】
(顔料分散剤)
本発明の非水性インクジェット用インク組成物に含有させても良い顔料分散剤としては、イオン性または非イオン性の界面活性剤や、アニオン性、カチオン性またはノニオン性の高分子化合物等が使用できる。
中でも高分子化合物であるものが好ましく、例えば、特開2004-083872号公報、国際公開第2003/076527号、国際公開第2004/000950号に記載されているカルボジイミド系化合物、塩基性官能基含有共重合物であるアジスパーPB821、822(いずれも、味の素ファインケミカル社)(酸価及びアミン価が共に10~20mgKOH/g)、ソルスパース56000、ソルスパース32000、ソルスパース39000(いずれも、ルーブリゾール社)、DISPERBYKシリーズ(ビックケミー社)等が好ましい。これら顔料分散剤は1種または2種以上を混合して使用できる。
中でもアミン価が10.0~40.0mgKOH/gの塩基性官能基含有共重合物が好ましい。
なお、上記顔料分散剤は、顔料の種類、使用する有機溶剤の種類に応じて適宜選択して使用する。
【0024】
(有機溶剤)
本発明における酢酸ブチルの蒸発速度を100としたときの蒸発速度が20~80である有機溶剤は、ASTM D3539-87に記載された測定方法により得られるものであり、25℃、乾燥空気下における酢酸n-ブチルの蒸発時間とテスト溶剤の蒸発時間を測定し、次式により求められる蒸発速度の値である。
{(酢酸n-ブチル90質量%が蒸発するのに要する時間)/(テスト溶剤の90質量%が蒸発するのに要する時間)}×100
酢酸ブチルの蒸発速度を100としたときの蒸発速度が20~80である有機溶剤は、非水性インクジェット用インク組成物中に80.0質量%以上となるように含有される。さらに82.0質量%以上が好ましく、84.0質量%以上がより好ましい。また93.0質量%以下が好ましく、90.0質量%以下がより好ましい。80.0質量%未満であると、乾燥工程において、より加熱温度を高くしたり、加熱時間を長くしたりする必要があり、下層の印刷層を劣化させる可能性がある。
【0025】
本発明の非水性インクジェット用インク組成物に含有されるそれぞれの有機溶剤は、酢酸ブチルの蒸発速度を100としたときの蒸発速度が、75以下が好ましく、70以下がより好ましく、50以下がさらに好ましい。また、25以上が好ましく、30以上がより好ましい。中でも、本発明の非水性インクジェット用インク組成物には、酢酸ブチルの蒸発速度を100としたときの蒸発速度が25以上の溶剤を含有することが好ましく、酢酸ブチルの蒸発速度を100としたときの蒸発速度が25以上の溶剤のみを含有することが好ましい。
このような有機溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(蒸発速度44)、乳酸エチル(蒸発速度22)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(蒸発速度71)、キシレン(蒸発速度68)、トリプロピルアミン(蒸発速度20)、メシチレン(蒸発速度22)、ジブチルエーテル(蒸発速度43)、ノナン(蒸発速度39)、メシチレン(蒸発速度22)、イソブチルアルコール(蒸発速度64)、1-ブタノール(蒸発速度47)、エチレングリコールモノメチルエーテル(蒸発速度53)、エチレングリコールモノエチルエーテル(蒸発速度38)、1-エトキシ-2-プロパノール(蒸発速度34)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(蒸発速度22)が好ましい。
【0026】
本発明による効果を毀損しない範囲において、蒸発速度が20未満又は80を超えるその他の公知の有機溶媒を併用することができるが、このようなその他の公知の有機溶媒を併用しなくても良い。
また、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のアルキレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、又はエチレングリコールモノフェニルエーテル、3-メトキシブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテートを含有してもしなくても良い。
【0027】
(その他成分)
さらに、本発明の非水性インクジェット用インク組成物には、必要に応じて、界面活性剤、可塑剤、表面調整剤、紫外線防止剤、光安定化剤、酸化防止剤等の種々の添加剤を使用することができる。
【0028】
(非水性インクジェット用インク組成物の製造)
次に、これらの材料を用いて本発明の非水性インクジェット用インク組成物を製造する方法について説明する。
本発明の非水性インクジェット用インク組成物は、例えば、湿式サーキュレーションミル、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、DCPミル、アジテータ、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー、ナノマイザー、アルティマイザー、ジーナスPY、DeBEE2000等)、パールミル等の分散機を使用して分散混合し、非水性インクジェット用インク組成物の粘度が2.0~10.0mPa・sとなるように調整することによって得ることができる。
本発明の非水性インクジェット用インク組成物中における全有機溶剤の含有量は、インク組成物全量から、樹脂、顔料、顔料分散剤、必要により使用するその他の添加剤の合計量を差し引いた量であるが、インク粘度が前記範囲内になるように適宜変更するのが好ましい。
このようにして得られた本発明の非水性インクジェット用インク組成物は、公知のインクジェット用プリンターにより印刷される。その印刷基材としては、予め印刷してなる印刷層が形成されたものでも良い。また、予め印刷層が形成されていない基材であっても良い。それらの中でも、特に加熱により基材や予め形成された印刷層が軟化・収縮し易い場合において使用できる。
【0029】
(用途)
本発明の非水性インクジェット用インク組成物は、樹脂基材を被印刷面とする周知の用途に使用することができる。また、任意の材料からなる基材表面に予め形成された印刷部の表面を、被印刷面とする用途に使用できる。
【0030】
(印刷方法)
本発明の非水性インクジェット用インク組成物を用いて、上記のとおり公知のインクジェット用プリンターにより印刷を行った後に、速やかに赤外線を照射して乾燥・固化を行うことができる。このときの被印刷基材は樹脂、紙及び金属のいずれでも良い。しかし、被印刷基材が過度の加熱によってシワや変形が発生し易い材料からなっていても良く、樹脂基材が好ましく、中でも熱可塑性樹脂基材がより好ましい。樹脂基材を採用する場合には、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、等の公知の樹脂を採用できる。照射された赤外線は本発明の非水性インクジェット用インク組成物が含有するカーボンブラックに吸収されるので、照射された赤外線のエネルギーを効率良く加熱に使用できる。仮にカーボンブラック以外の色材であると、照射する赤外線のエネルギーを相当高くする必要があり、被印刷基材である樹脂基材の温度を過度に上昇させる可能性が高くなる。
その際の赤外線としては、0.90~1.25μmにピークを有する赤外線を採用してもよく、その範囲内において、波長は1.00μm以上がより好ましく、1.05μm以上がさらに好ましく、1.20μm以下がより好ましく、1.15μm以下がさらに好ましい。
そして赤外線の照射時間としては、印刷された非水性インクジェット用インク組成物が乾燥・固化され、同時にインクジェット用プリンターによる印刷速度に対して乾燥速度が過度に遅延しない程度の範囲が好ましい。このような範囲の照射時間により乾燥・硬化できるよう、赤外線の出力は2.0kW以上であることが好ましい。
なお、印刷された非水性インクジェット用インク組成物の表面に対して、赤外線の光源をなるべく接近した距離に配置しておくことが好ましい。その距離としては1.0~15.0mm程度であり、その範囲内において、2.0mm以上でも良く、3.0mm以上でも良く、12.0mm以下でも良く、10.0mm以下でも良い。
照射する赤外線の強度が強過ぎる場合には、印刷基材を樹脂にした場合において、その印刷基材表面の温度は過度に高くなる可能性があり、印刷基材表面にシワ、歪み、曲がり等のダメージを与える可能性がある。
【実施例0031】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
以下の実施例、比較例で使用した材料は次の通りである。有機溶剤以外の成分は全て固形分含量である。
表中の各成分及び合計の欄の数値の単位は「質量%」である。
<カーボンブラック>
Bk7:カーボンブラックMA7(三菱ケミカル社)
<黒色染料>
Solvent Black29:オラゾールブラックRLI(BASF社)
<顔料分散剤>
ソルスパース32000(ルーブリゾール社)
<樹脂>
ダイヤナールBR-83:アクリル樹脂(三菱レイヨン社)
SOLBIN TAO:アミノ基含有塩化ビニル-酢酸ビニル-ビニルアルコール系共重合体(日信化学工業社)
【0032】
(実施例1~5、比較例1~5、参考例1~4)
<非水性インクジェット用インク組成物の製造>
表1及び表2の配合(各材料の配合比率は質量%)に従い、各材料を撹拌混合して各実施例、各比較例、及び各参考例の非水性インクジェット用インク組成物を得た。
【0033】
<印刷方法>
市販のインクジェット用プリンターに各実施例、各比較例、及び各参考例の非水性インクジェット用インク組成物を装填し、延伸ポリプロピレンフィルム(商品名P-2161、厚さ25μm、東洋紡社)に高速印字モードにてベタ印刷を行った。この印刷部に1.10μmにピークを有し、出力が2.3~7.5kWの赤外線を10mmの距離から0.1秒間照射して、乾燥・硬化させて、各実施例、各比較例、及び各参考例の印刷物を得た。
これらの印刷物について下記の特性を測定・評価した。なお、基材へのダメージに関する評価は、まだ印刷済みデータがない場合に印刷を行った場合と、既に印刷済みデータがある場合に印刷を行った場合との2通りに分けて行った。
【0034】
<吐出安定性>
市販のインクジェットプリンターを用いて各実施例、各比較例、及び各参考例のインク組成物を用いて高速印字モードにてベタ印刷を行った後、1分間吐出せずに放置した後、再度吐出した際のノズル抜けの数を測定する。
○:全ノズル吐出
×:1本以上ノズル抜けが発生
【0035】
<乾燥性>
上記方法によって作成した印刷物に対して綿棒を垂直に立てて押し付けた状態で一方向に擦り、綿棒に付着するインクの有無で判断する。
○:インク付着無し
×:インク付着有り
【0036】
<基材へのダメージ(印刷済みデータなし)>
上記方法によって作成した評価ピースの外観変化を目視にて判断する。
○:変化無し
×:穴あき、シワの発生、表面の歪み等の変化が見られる
【0037】
<基材へのダメージ(印字済みデータあり)>
A4の大きさの基材フィルム(商品名P-2161、厚さ25μm、東洋紡社)の移動方向の前方2分の1の領域に、表刷り用グラビアインキ(サピリア墨インキ、サカタインクス社)を用いて、以下の条件にてグラビア印刷を行いベタ画像の形成を行った。次いで残り2分の1の領域に各実施例、比較例、及び参考例の非水性インクジェット用インク組成物を上記条件で印刷、乾燥を行い、作成した評価ピースの外観変化を目視にて判断する。
○:変化無し
×:穴あき、シワの発生、表面の歪み等の変化が見られる
【0038】
(グラビア印刷条件)
基材フィルム:延伸ポリプロピレンフィルム(商品名P-2161、厚さ25μm、東洋紡社)
印刷機械:グラビア校正機
インキを印刷する刷版:ヘリオ175ine/inch(図柄:ベタ印刷版)
印刷速度:80m/min
乾燥条件:80℃
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
各実施例によれば、非水性インクジェット用インク組成物の吐出安定性及び乾燥性に優れ、かつ基材へのダメージがないといった優れた効果を発揮できる。特に、既にカーボンブラックを含有した黒色インキ組成物により形成された印刷層を有する、印刷済みデータありの基材に印刷をした場合においても、その印刷済みデータの印刷部に対しても、外観上の変化を生じない条件で印刷を行うことができる効果を発揮した。
しかしながら、カーボンブラックの濃度が低い比較例1によれば乾燥性に劣っており、カーボンブラックの濃度が高い比較例2によれば吐出安定性に劣っていた。さらに本発明中の有機溶剤を使用しない比較例3及び4によれば、乾燥性または吐出安定性に劣っていた。またカーボンブラックではない黒色色材を用いた比較例5によれば乾燥性に劣っていた。
なお乾燥性に劣っていた比較例1及び3について、乾燥を完了するまで赤外線照射を継続すると、印刷の基材フィルムが熱によりシワ等が発生した。
さらに、実施例と同じ基材フィルムを採用し、黒色ではない顔料を使用した参考例1~4において、それぞれ赤外線の照射強度を変更した参考例1~4では、乾燥性に劣っていた。加えて、赤外線の照射強度が高い参考例3及び4では、十分に乾燥できる程度に赤外線の照射強度を強くしていなくても、基材に与えるダメージは大きく、基材表面にシワが形成された。