(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180079
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】固形分回収方法および脱水ケーキ
(51)【国際特許分類】
C02F 1/52 20230101AFI20231213BHJP
C02F 1/58 20230101ALI20231213BHJP
C02F 1/62 20230101ALI20231213BHJP
C02F 1/64 20230101ALI20231213BHJP
C02F 11/00 20060101ALI20231213BHJP
C02F 11/143 20190101ALI20231213BHJP
【FI】
C02F1/52 J
C02F1/58 J ZAB
C02F1/58 M
C02F1/62 B
C02F1/62 C
C02F1/64 Z
C02F11/00 H
C02F11/00 J
C02F11/143
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093182
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】397064944
【氏名又は名称】株式会社大阪チタニウムテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】元木 伸也
(72)【発明者】
【氏名】山崎 勝行
【テーマコード(参考)】
4D015
4D038
4D059
【Fターム(参考)】
4D015BA19
4D015BB06
4D015CA17
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4D015DA05
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4D015DA17
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4D059CA25
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4D059CC07
4D059DA32
4D059DA33
4D059EA05
4D059EB01
4D059EB05
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、廃水に対して処理を施すことで最終的に生成される泥状物の含水率のさらなる低減を実現することができる固形分回収方法を提供することである。
【解決手段】本発明に係る固形分回収方法は、分離工程、酸性溶液添加工程および脱水工程を備える。分離工程では、酸性の被処理水に石灰および凝集剤が加えられて被処理水が中和されると共に凝集物を含む懸濁液が生成された後に凝集物が沈降させられて、懸濁液が、上澄液と、凝集物を含む第1泥状物とに分離される。酸性溶液添加工程では、分離された第1泥状物に対して酸性溶液が加えられて沈殿物が生成されると共に凝集物および沈殿物を含む第2泥状物が生成される。脱水工程では、第2泥状物が脱水されて脱水ケーキが生成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性の被処理水に石灰および凝集剤を加えて前記被処理水を中和すると共に凝集物を含む懸濁液を生成した後に前記凝集物を沈降させて、前記懸濁液を上澄液と、前記凝集物を含む第1泥状物とに分離する分離工程と、
分離された前記第1泥状物に対して酸性溶液を加えて沈殿物を生成すると共に前記凝集物および前記沈殿物を含む第2泥状物を生成する酸性溶液添加工程と、
前記第2泥状物を脱水して脱水ケーキを生成する脱水工程と
を備える、固形分回収方法。
【請求項2】
前記被処理水には、フッ素(F)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、カルシウム(Ca)、銅(Cu)、塩素(Cl)が含まれており、前記酸性溶液は、硫酸(H2SO4)である請求項1に記載の固形分回収方法。
【請求項3】
前記酸性溶液添加工程において、前記第2泥状物のpHは、6以上10以下の範囲内とされる請求項2に記載の固形分回収方法。
【請求項4】
前記分離工程において前記第1泥状物のpHは、7以上12以下の範囲内である
請求項2に記載の固形分回収方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の固形分回収方法により生成される
脱水ケーキ。
【請求項6】
水(H2O)が、30%以上80%以下の範囲内で含まれており、
水(H2O)を除いた全量を100%とした場合に、
酸化チタン(TiO2)が、5.0%以上30%以下の範囲内で含まれており、
炭素(C)が、5.0%以上30%以下の範囲内で含まれており、
五酸化バナジウム(V2O5)が、0.5%以上10%以下の範囲内で含まれており、
ウラン(U)が、0.0001%以上1.0%以下の範囲内で含まれており、
トリウム(Th)が、0.0001%以上1.0%以下の範囲内で含まれており、
ホウ素(B)が、0.0001%以上1.0%以下の範囲内で含まれており、
フッ素(F)が、0.001%以上1.0%以下の範囲内で含まれており、
酸化鉄(III)(Fe2O3)が、3.0%以上30%以下の範囲内で含まれており、
酸化クロム(III)(Cr2O3)が、0.01%以上5.0%以下の範囲内で含まれており、
酸化アルミニウム(Al2O3)が、0.01%以上10%以下の範囲内で含まれており、
二酸化ケイ素(SiO2)が、0.1%以上20%以下の範囲内で含まれており、
一酸化マンガン(MnO)が、0.01%以上5.0%以下の範囲内で含まれており、
五酸化ニオブ(Nb2O5)が、0.01%以上5.0%以下の範囲内で含まれており、
酸化カルシウム(CaO)が、0.01%以上10%以下の範囲内で含まれており、
二酸化ジルコニウム(ZrO2)が、0.01%以上10%以下の範囲内で含まれており、
酸化マグネシウム(MgO)が、0.1%以上30%以下の範囲内で含まれている
脱水ケーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形分回収方法および脱水ケーキに関する。
【背景技術】
【0002】
「汚泥に高分子凝集剤を添加、混合してフロックを生成したのち脱水する方法において、フロックを生成したのちに木粉または石灰粉末などの当該高分子凝集剤と凝集反応を行い得る粉末状物質を添加、混合して脱水することを特徴とする汚泥処理方法」が過去に提案されている(例えば、特開昭52-135554号公報等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、廃水に対して処理を施すことで生成される泥状物(例えば、汚泥など)の量を減らすために、泥状物の含水率のさらなる低減が求められている。しかし、特許文献1に開示されている汚泥処理方法では、汚泥の含水率を低減するにも限界があった。
【0005】
本発明の課題は、廃水に対して処理を施すことで最終的に生成される泥状物の含水率のさらなる低減を実現することができる固形分回収方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1局面に係る固形分回収方法は、分離工程、酸性溶液添加工程および脱水工程を備える。分離工程では、酸性の被処理水に石灰および凝集剤が加えられて被処理水が中和されると共に凝集物を含む懸濁液が生成された後に凝集物が沈降させられて、懸濁液が、上澄液と、凝集物を含む第1泥状物とに分離される。酸性溶液添加工程では、分離された第1泥状物に対して酸性溶液が加えられて沈殿物が生成されると共に凝集物および沈殿物を含む第2泥状物が生成される。脱水工程では、第2泥状物が脱水されて脱水ケーキが生成される。
【0007】
本願発明者らの鋭意検討の結果、この固形分回収方法によって、脱水工程の前に酸性溶液添加工程が行われない固形分回収方法に比べて、最終的に生成される泥状物(第2泥状物)の含水率を低減することができることが明らかになった。このため、この固形分回収方法によって、泥状物の含水率のさらなる低減を実現することができる。
【0008】
本発明の第2局面に係る固形分回収方法は、第1局面に係る固形分回収方法であって、被処理水には、フッ素(F)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、カルシウム(Ca)、銅(Cu)、塩素(Cl)が含まれている。また、酸性溶液は、硫酸(H2SO4)である。
【0009】
本願発明者らの鋭意検討の結果、上記物質を含む処理水に対して処理を施すことで最終的に生成される泥状物の含水率を特に低減できることが明らかになった。
【0010】
本発明の第3局面に係る固形分回収方法は、第2局面に係る固形分回収方法であって、酸性溶液添加工程において、第2泥状物のpHは、6以上10以下の範囲内とされる。
【0011】
本願発明者らの鋭意検討の結果、上記物質を含む処理水に対して処理を施すことで最終的に生成される泥状物のpHを上記範囲内とすることで、この泥状物の含水率を特に低減できることが明らかになった。
【0012】
本発明の第4局面に係る固形分回収方法は、第2局面に係る固形分回収方法であって、分離工程において第1泥状物のpHは、7以上12以下の範囲内である。
【0013】
本願発明者らの鋭意検討の結果、第1泥状物のpHを上記範囲内とすることで、酸性溶液添加工程において沈殿物の生成を促進することができることが明らかになった。
【0014】
本発明の第5局面に係る脱水ケーキは、第1局面から第4局面のいずれか1局面に記載の固形分回収方法により生成される。
【0015】
本願発明者らの鋭意検討の結果、この脱水ケーキを資源として有効に利用することができることが明らかになった。
【0016】
本発明の第6局面に係る脱水ケーキは、水(H2O)が、30%以上80%以下の範囲内で含まれており、水(H2O)を除いた全量を100%とした場合に、酸化チタン(TiO2)を5.0%以上30%以下の範囲内で含んでおり、炭素(C)を5.0%以上30%以下の範囲内で含んでおり、五酸化バナジウム(V2O5)を0.5%以上10%以下の範囲内で含んでおり、ウラン(U)を0.0001%以上1.0%以下の範囲内で含んでおり、トリウム(Th)を0.0001%以上1.0%以下の範囲内で含んでおり、ホウ素(B)を0.0001%以上1.0%以下の範囲内で含んでおり、フッ素(F)を0.001%以上1.0%以下の範囲内で含んでおり、酸化鉄(III)(Fe2O3)を3.0%以上30%以下の範囲内で含んでおり、酸化クロム(III)(Cr2O3)を0.01%以上5.0%以下の範囲内で含んでおり、酸化アルミニウム(Al2O3)を0.01%以上10%以下の範囲内で含んでおり、二酸化ケイ素(SiO2)を0.1%以上20%以下の範囲内で含んでおり、一酸化マンガン(MnO)を0.01%以上5.0%以下の範囲内で含んでおり、五酸化ニオブ(Nb2O5)を0.01%以上5.0%以下の範囲内で含んでおり、酸化カルシウム(CaO)を0.01%以上10%以下の範囲内で含んでおり、二酸化ジルコニウム(ZrO2)を0.01%以上10%以下の範囲内で含んでおり、酸化マグネシウム(MgO)を0.1%以上30%以下の範囲内で含んでいる。
【0017】
本願発明者らの鋭意検討の結果、この脱水ケーキを資源として有効に利用することができることが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係る固形分回収方法を用いて脱水ケーキを生成するための処理装置の概略図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る固形分回収方法を用いて脱水ケーキを生成するための処理装置の処理槽の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態に係る固形分回収方法では、廃水(被処理水)に対して後述の処理が行われ、最終的に脱水ケーキが生成される。なお、廃水は、例えば、チタン鉱石などを原料として四塩化チタンを製造する時などに発生する。また、脱水ケーキは、固形分回収方法の過程で生成される泥状物に対して脱水処理を行うことによって生成され、産業廃棄物として埋め立て処分されたり資源として利用されたりする。
【0020】
本発明の実施の形態に係る固形分回収方法を用いて脱水ケーキを最終的に生成するために、
図1に示されるような処理装置1が用いられる。以下、処理装置1について詳述する。
【0021】
<処理装置の構成>
処理装置1は、
図1に示されるように、主に、原水ピット100、石灰添加槽200、凝集剤添加槽300、分離槽400、処理槽500、酸性溶液タンク600および脱水機700から構成されている。以下、これらの構成要素について詳述する。
【0022】
原水ピット100は、チタン鉱石などを原料として四塩化チタンを製造する時などに発生した酸性の廃水や、各工場や各施設などで生じた廃水を貯留するためのものである。なお、原水ピット100では、塩酸臭抑制を目的として廃水に対して石灰およびチオ硫酸ソーダが加えられることがある。石灰は、例えば、生石灰、消石灰、苦土石灰または有機石灰などである。
【0023】
石灰添加槽200では、原水ピット100から送られた廃水に対して石灰が加えられて廃水が中和される。石灰は、例えば、生石灰、消石灰、苦土石灰または有機石灰などである。
【0024】
凝集剤添加槽300では、石灰添加槽200から送られた廃水(石灰を含む)に対して高分子凝集剤が加えられて凝集物が生成され、凝集物を含む懸濁液が生成される。高分子凝集剤としては、例えば、アニオン系の高分子凝集剤、カチオン系の高分子凝集剤、両性系の高分子凝集剤、ノニオン系の高分子凝集剤、ポリビニルアミジン系の高分子凝集剤または架橋系の高分子凝集剤などが用いられる。
【0025】
分離槽400では、凝集剤添加槽300から送られた懸濁液中の凝集物が底部に沈降して、懸濁液が、上澄液と、凝集物を含む泥状物とに分離される。
【0026】
処理槽500は、
図1および
図2に示されるように、第1槽501、第2槽502および搬送路503から構成されている。第1槽501では、分離槽400から送られた泥状物に対して、酸性溶液タンク600から送られた酸性溶液が加えられる。そして、第1槽501では、沈殿物が生成されると共に、沈殿物および凝集物を含む泥状物(以下、「最終泥状物」という。)が生成される。なお、第1槽501は、第1槽501内の物質のpHを計測することができるpH計(図示せず)を有している。第2槽502では、搬送路503を通じて第1槽501から送られる最終泥状物が貯留される。
【0027】
酸性溶液タンク600は、処理槽500の第1槽501に送られる酸性溶液を貯留するためのものである。酸性溶液は、例えば、硫酸(H2SO4)または塩酸(HCl)などである。
【0028】
脱水機700は、最終泥状物を脱水し、脱水ケーキを生成するためのものである。脱水機700は、例えば、フィルタープレス脱水機、スクリュープレス脱水機、ベルトプレス脱水機、遠心脱水機または真空脱水機などである。
【0029】
<本発明の実施の形態に係る固形分回収方法の説明>
以下、本発明の実施の形態に係る固形分回収方法および上述の処理装置1を用いて、廃水から脱水ケーキを最終的に生成する場合について説明する。なお、本明細書および特許請求の範囲において、「%」は「質量%」を意味していることに留意されたい。
【0030】
まず、原水ピット100に廃水が貯留される。なお、塩酸臭抑制を目的として石灰およびチオ硫酸ソーダを加えられる前の廃水には、下記の物質等が含まれることが好ましい。
フッ素(F)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、カルシウム(Ca)、銅(Cu)、塩素(Cl)
【0031】
なお、原水ピット100において、塩酸臭抑制を目的として石灰およびチオ硫酸ソーダが加えられた廃水には、下記の物質等が含まれることが好ましい。
マンガン(Mn)、鉛(Pb)、カドミウム(Cd)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、コバルト(Co)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、フッ素(F)、硫酸イオン(SO4
2-)、塩化物イオン(Cl-)、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、アンモニウム態窒素(NH4-N)、硝酸態窒素(NO3-N)、硝酸態及び亜硝酸態窒素(NOX-N)
【0032】
なお、原水ピット100における廃水(石灰およびチオ硫酸ソーダが加えられる前)のpHは、0超7未満の範囲内であることが好ましく、0.5以上4以下の範囲内であることがより好ましく、1以上3.5以下の範囲内であることが特に好ましい。また、原水ピット100における廃水(石灰およびチオ硫酸ソーダが加えられた後)のpHは、7.5以上13.5未満の範囲内であることが好ましく、8.5以上12.5以下の範囲内であることがより好ましく、9.5以上11.5以下の範囲内であることが特に好ましい。そして、酸性溶液タンク600に酸性溶液が貯留される。酸性溶液は、硫酸であることが好ましい。また、硫酸の濃度は、30%以上90%以下の範囲内であることが好ましく、40%以上80%以下の範囲内であることがより好ましく、50%以上70%以下の範囲内であることがさらに好ましく、55%以上65%以下の範囲内であることが特に好ましい。
【0033】
次に、原水ピット100の廃水の一部が、ポンプなどを介して石灰添加槽200に送られる。そして、石灰添加槽200において、石灰が廃水に対して加えられ、廃水が中和される。石灰は、生石灰であることが好ましい。また、石灰を加える前の廃水の量(t)/石灰の量(t)は、0.1以上0.5以下の範囲内であることが好ましく、0.1以上0.3以下の範囲内であることがより好ましく、0.15以上0.25以下の範囲内であることがさらに好ましく、0.175以上0.225以下の範囲内であることが特に好ましい。
【0034】
次に、石灰添加槽200において石灰が加えられた廃水が、ポンプなどを介して凝集剤添加槽300に送られる。そして、凝集剤添加槽300において、石灰が加えられた廃水に対して高分子凝集剤が加えられて凝集物が生成され、凝集物を含む懸濁液が生成される。高分子凝集剤は、アニオン系の高分子凝集剤であることが好ましい。なお、高分子凝集剤が加えられる前の廃水の量(t)/高分子凝集剤の量(t)は、0.001以上0.005以下の範囲内であることが好ましく、0.002以上0.004以下の範囲内であることがより好ましく、0.0025以上0.0035以下の範囲内であることがさらに好ましく、0.00275以上0.00325以下の範囲内であることが特に好ましい。
【0035】
次に、凝集物を含む懸濁液が、ポンプなどを介して分離槽400に送られる。分離槽400では、時間が経過するにつれて、懸濁液中の凝集物が底部に沈降する。そして、懸濁液が、上澄液と、凝集物を含む泥状物とに分離される。なお、上澄液は、分離槽400からポンプなどを介して上澄液処理槽(図示せず)に送られて無害化処理された後、下水道などに排水されたり再利用されたりする。また、凝集物を含む泥状物は、ポンプなどによって抜き取られて処理槽500の第1槽501に送られる。なお、凝集物を含む泥状物のpHは、7以上12以下の範囲内であることが好ましく、8以上11.5以下の範囲内であることがより好ましく、9以上11以下の範囲内であることがさらに好ましく、9.5以上10.5以下の範囲内であることが特に好ましい。
【0036】
次に、酸性溶液タンク600からポンプなどを介して処理槽500の第1槽501に酸性溶液が送られ、凝集物を含む泥状物に対して酸性溶液が加えられる。そして、処理槽500の第1槽501において、沈殿物が生成され、最終泥状物(上述の通り、沈殿物および凝集物を含む泥状物)が生成される。なお、最終泥状物のpHは、6以上10以下の範囲内であることが好ましく、6以上8以下の範囲内であることがより好ましく、6以上7以下の範囲内であることがさらに好ましく、6.25以上6.75以下の範囲内であることが特に好ましい。処理槽500の第1槽501では、最終泥状物のpH(pH計により計測される)がこの数値範囲内に収まるまで、酸性溶液タンク600から酸性溶液が送られる。
【0037】
最終泥状物のpHが上記数値範囲内に収まると、最終泥状物が、処理槽500の搬送路503を通じて処理槽500の第1槽501から処理槽500の第2槽502に送られる。そして、最終泥状物が、ポンプなどによって抜き取られて脱水機700に送られる。なお、脱水機700は、フィルタープレス脱水機であることが好ましい。また、最終泥状物の含水率は、65重量%以下であることが好ましく、62重量%以下であることがより好ましく、60重量%以下であることがさらに好ましく、59重量%以下であることが特に好ましい。そして、脱水機700は、最終泥状物を脱水して脱水ケーキを生成する。脱水ケーキは、上述の通り、産業廃棄物として埋め立て処分されたり資源として利用されたりする。なお、脱水ケーキには、水(H2O)が、30%以上80%以下の範囲内で含まれており、水(H2O)を除いた全量を100%とした場合に下記の物質が下記の範囲内で含まれていることが好ましい。
酸化チタン(TiO2):5.0%以上30%以下の範囲内(なお、18.5%以上24.5%以下の範囲内であることがより好ましく、19.5%以上23.5%以下の範囲内であることがさらに好ましく、20.5%以上22.5%以下の範囲内であることが特に好ましい。)
炭素(C):5.0%以上30%以下の範囲内(なお、11.5%以上17.5%以下の範囲内であることがより好ましく、12.5%以上16.5%以下の範囲内であることがさらに好ましく、13.5%以上15.5%以下の範囲内であることが特に好ましい。)
五酸化バナジウム(V2O5):0.5%以上10%以下の範囲内(なお、0.5%以上5.5%以下の範囲内であることがより好ましく、0.5%以上4.5%以下の範囲内であることがさらに好ましく、1.5%以上3.5%以下の範囲内であることが特に好ましい。)
ウラン(U):0.0001%以上1.0%以下の範囲内(なお、0.0001%以上0.035%以下の範囲内であることがより好ましく、0.0001%以上0.025%以下の範囲内であることがさらに好ましく、0.0001%以上0.015%以下の範囲内であることが特に好ましい。)
トリウム(Th):0.0001%以上1.0%以下の範囲内(なお、0.0001%以上0.035%以下の範囲内であることがより好ましく、0.0001%以上0.025%以下の範囲内であることがさらに好ましく、0.0001%以上0.015%以下の範囲内であることが特に好ましい。)
ホウ素(B):0.0001%以上1.0%以下の範囲内(なお、0.0001%以上0.035%以下の範囲内であることがより好ましく、0.0001%以上0.025%以下の範囲内であることがさらに好ましく、0.0001%以上0.015%以下の範囲内であることが特に好ましい。)
フッ素(F):0.001%以上1.0%以下の範囲内(なお、0.001%以上0.35%以下の範囲内であることがより好ましく、0.001%以上0.25%以下の範囲内であることがさらに好ましく、0.001%以上0.15%以下の範囲内であることが特に好ましい。)
酸化鉄(III)(Fe2O3):3.0%以上30%以下の範囲内(なお、7.5%以上13.5%以下の範囲内であることがより好ましく、8.5%以上12.5%以下の範囲内であることがさらに好ましく、9.5%以上11.5%以下の範囲内であることが特に好ましい。)
酸化クロム(III)(Cr2O3):0.01%以上5.0%以下の範囲内(なお、0.01%以上3.5%以下の範囲内であることがより好ましく、0.01%以上2.5%以下の範囲内であることがさらに好ましく、0.01%以上1.5%以下の範囲内であることが特に好ましい。)
酸化アルミニウム(Al2O3):0.01%以上10%以下の範囲内(なお、0.5%以上6.5%以下の範囲内であることがより好ましく、1.5%以上5.5%以下の範囲内であることがさらに好ましく、2.5%以上4.5%以下の範囲内であることが特に好ましい。)
二酸化ケイ素(SiO2):0.1%以上20%以下の範囲内(なお、5.5%以上11.5%以下の範囲内であることがより好ましく、6.5%以上10.5%以下の範囲内であることがさらに好ましく、7.5%以上9.5%以下の範囲内であることが特に好ましい。)
一酸化マンガン(MnO):0.01%以上5.0%以下の範囲内(なお、0.01%以上4.5%以下の範囲内であることがより好ましく、0.01%以上3.5%以下の範囲内であることがさらに好ましく、0.5%以上2.5%以下の範囲内であることが特に好ましい。)
五酸化ニオブ(Nb2O5):0.01%以上5.0%以下の範囲内(なお、0.01%以上3.5%以下の範囲内であることがより好ましく、0.01%以上2.5%以下の範囲内であることがさらに好ましく、0.01%以上1.5%以下の範囲内であることが特に好ましい。)
酸化カルシウム(CaO):0.01%以上10%以下の範囲内(なお、1.5%以上7.5%以下の範囲内であることがより好ましく、2.5%以上6.5%以下の範囲内であることがさらに好ましく、3.5%以上5.5%以下の範囲内であることが特に好ましい。)
二酸化ジルコニウム(ZrO2):0.01%以上10%以下の範囲内(なお、0.01%以上4.5%以下の範囲内であることがより好ましく、0.01%以上3.5%以下の範囲内であることがさらに好ましく、0.5%以上2.5%以下の範囲内であることが特に好ましい。)
酸化マグネシウム(MgO):0.1%以上30%以下の範囲内(なお、8%以上14%以下の範囲内であることがより好ましく、9%以上13%以下の範囲内であることがさらに好ましく、10%以上12%以下の範囲内であることが特に好ましい。)
【0038】
<本発明の実施の形態に係る固形分回収方法の特徴>
本発明の実施の形態に係る固形分回収方法では、処理槽500において、凝集物を含む泥状物に対して酸性溶液が加えられて沈殿物が生成され、最終泥状物が生成される。このため、この固形分回収方法によって、泥状物の含水率のさらなる低減を実現することができる。
【0039】
<変形例>
(A)
先の実施の形態に係る固形分回収方法では、凝集剤添加槽300において、石灰が加えられた廃水に対して高分子凝集剤が加えられていた。しかし、高分子凝集剤ではなく、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄(ポリ鉄)、硫酸第一鉄などの無機凝集剤が、石灰が加えられた廃水に対して加えられてもよい。
【0040】
(B)
先の実施の形態に係る固形分回収方法で用いられる処理装置1では、石灰添加槽200、凝集剤添加槽300および分離槽400はそれぞれ独立に構成されていた。しかし、石灰添加槽200および凝集剤添加槽300の代わりに1つの添加槽が構成されてもよい。かかる場合、この添加槽において、原水ピット100から送られた廃水に対して石灰および高分子凝集剤が加えられ、凝集物を含む懸濁液が生成されるとよい。また、石灰添加槽200、凝集剤添加槽300および分離槽400の代わりに1つの添加分離槽が構成されてもよい。かかる場合、この添加分離槽において、原水ピット100から送られた廃水に対して石灰および高分子凝集剤が加えられ、凝集物を含む懸濁液が生成され、懸濁液中の凝集物が底部に沈降させられ、懸濁液が、上澄液と、凝集物を含む泥状物とに分離されるとよい。
【0041】
(C)
先の実施の形態に係る固形分回収方法では、原水ピット100および石灰添加槽200において、廃水に対して加えられる石灰は生石灰であることが好ましいとされていた。しかし、石灰添加槽200において、消石灰、苦土石灰および有機石灰のいずれか1つが廃水に対して加えられてもよいし、生石灰、消石灰、苦土石灰および有機石灰の少なくとも2つが廃水に対して加えられてもよい。
【0042】
<実施例および比較例>
以下、本発明をより詳細に説明するために実施例および比較例を示すが、本発明がこの実施例に限定されることはない。
【実施例0043】
図1に示される処理装置1を用いて上述の方法により、原水ピット100に貯留される廃水に対して処理を行い、最終的に脱水ケーキを生成した。原水ピット100に貯留される廃水(塩酸臭抑制を目的として生石灰およびチオ硫酸ソーダを加える前)は、チタン鉱石を原料として四塩化チタンを製造する時に各工程で発生した廃水を混ぜたものであって、表1に示される水質を有する。なお、原水ピット100に貯留される廃水に対して、塩酸臭抑制を目的として生石灰(マルアイ石灰株式会社製、太平洋セメント株式会社製および河合石灰工業会部式会社製)およびチオ硫酸ソーダを加えた。原水ピット100における石灰およびチオ硫酸ソーダが加えられた後の廃水の水質は、表2に示される通りである。そして、石灰添加槽200において、石灰を加える前の廃水の量(t)/石灰の量(t)は、0.2であった。なお、石灰として、生石灰(マルアイ石灰株式会社製、太平洋セメント株式会社製および河合石灰工業会部式会社製)を用いた。また、凝集剤添加槽300において、高分子凝集剤が加えられる前の廃水の量(t)/高分子凝集剤の量(t)は、0.003であった。なお、高分子凝集剤として、アニオン系の高分子凝集剤(栗田工業株式会社製、および、MTアクアポリマー株式会社製)を用いた。分離槽400において分離された凝集物を含む泥状物のpHは10であった。また、処理槽500の第1槽501において、凝集物を含む泥状物に対して、酸性溶液タンク600から送られる濃度60%の硫酸を加え、最終泥状物を生成した。なお、この硫酸は、金属精錬時などに発生する廃硫酸であり、最終泥状物のpHが6.5になるまで加えられた。最終泥状物のpHが6.5であるとき、最終泥状物の含水率は58.7重量%であった。そして、処理槽500の第2槽502に送られた最終泥状物をポンプで抜き取り脱水機700に送り、最終泥状物を脱水機700によって脱水し、脱水ケーキを生成した。なお、脱水機700として、フィルタープレス脱水機を用いた。また、脱水ケーキを融解して組成を分析したところ、組成比(質量比)は表3に示される通り、酸化チタン(TiO
2):21%、炭素(C):14%、五酸化バナジウム(V
2O
5):2%、ウラン(U):0.001%、トリウム(Th):0.005%、ホウ素(B):0.002%、フッ素(F):0.03%、酸化鉄(III)(Fe
2O
3):10%、酸化クロム(III)(Cr
2O
3):0.7%、酸化アルミニウム(Al
2O
3):3%、二酸化ケイ素(SiO
2):8%、一酸化マンガン(MnO):1%、五酸化ニオブ(Nb
2O
5):0.7%、酸化カルシウム(CaO):4%、二酸化ジルコニウム(ZrO
2):1%、酸化マグネシウム(MgO):11%であった(強熱減量(Ignition Loss):26%)。なお、表3では、水(H
20)(57%)を除いた脱水ケーキを100%とした場合に、水(H
20)以外の物質が脱水ケーキの内に何%含まれているかが示されている。また、土壌汚染対策法などに示される含有物質が脱水ケーキに含まれているかを分析したところ、表4に示される結果が得られた。
【0044】
(比較例1)
比較例1では、分離槽400において分離された凝集物を含む泥状物に対して硫酸を加えなかった。そして、凝集物を含む泥状物を脱水機700によって脱水し、脱水ケーキを生成した。なお、石灰添加槽200において、石灰を加える前の廃水の量(t)/石灰の量(t)は、0.2であった。また、凝集剤添加槽300において、高分子凝集剤が加えられる前の廃水の量(t)/高分子凝集剤の量(t)は、0.003であった。そして、凝集物を含む泥状物のpHは10であり、含水率は61.1重量%であった。また、脱水ケーキを融解して組成を分析したところ、組成比(質量比)は表3に示される通り、酸化チタン(TiO2):14%、炭素(C):11%、五酸化バナジウム(V2O5):2%、ウラン(U):0.001%、トリウム(Th):0.006%、ホウ素(B):0.002%、フッ素(F):0.04%、酸化鉄(III)(Fe2O3):12%、酸化クロム(III)(Cr2O3):0.8%、酸化アルミニウム(Al2O3):3%、二酸化ケイ素(SiO2):8%、一酸化マンガン(MnO):1%、五酸化ニオブ(Nb2O5):0.8%、酸化カルシウム(CaO):3%、二酸化ジルコニウム(ZrO2):2%、酸化マグネシウム(MgO):16%であった(強熱減量(Ignition Loss):25%)。なお、表3では、水(H20)(62%)を除いた脱水ケーキを100%とした場合に、水(H20)以外の物質が脱水ケーキの内に何%含まれているかが示されている。また、含有物質が脱水ケーキに含まれているかを分析したところ、表4に示される結果が得られた。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】