(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180080
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】コンピュータプログラム、画像処理装置、画像読取装置及び画像処理方法
(51)【国際特許分類】
H04N 25/10 20230101AFI20231213BHJP
H04N 1/407 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
H04N9/07 A
H04N1/407
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093183
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】山田 郁
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 孝次
(72)【発明者】
【氏名】土井 麻由佳
【テーマコード(参考)】
5C065
5C077
【Fターム(参考)】
5C065BB02
5C065BB06
5C065BB41
5C065CC01
5C065CC10
5C065DD01
5C065EE06
5C077LL14
5C077PP06
(57)【要約】
【課題】撮影画像の色味の変化を抑制できるコンピュータプログラム、画像処理装置、画像読取装置及び画像処理方法を提供する。
【解決手段】コンピュータプログラムは、コンピュータに、可視光環境下で撮影して得られた画像データを補正するための可視光用補正テーブル及び所定光環境下で撮影して得られた所定光画像データを補正するための所定光用補正テーブルを取得し、取得した可視光用補正テーブル及び所定光用補正テーブルに基づいて補正係数を算出し、算出した補正係数に基づいて所定光用補正テーブルを補正する、処理を実行させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
可視光環境下で撮影して得られた画像データを補正するための可視光用補正テーブル及び所定光環境下で撮影して得られた所定光画像データを補正するための所定光用補正テーブルに基づいて補正係数を算出し、
算出した補正係数に基づいて前記所定光用補正テーブルを補正する、
処理を実行させるコンピュータプログラム。
【請求項2】
コンピュータに、
前記可視光用補正テーブル及び前記所定光用補正テーブルそれぞれが保持する信号値の統計値に基づいて補正係数を算出し、
算出した補正係数に基づいて前記所定光用補正テーブルが保持する信号値を補正する、
処理を実行させる請求項1に記載のコンピュータプログラム。
【請求項3】
コンピュータに、
前記補正係数を所定の調整値で調整する、
処理を実行させる請求項1又は請求項2に記載のコンピュータプログラム。
【請求項4】
コンピュータに、
前記所定光用補正テーブルが保持する信号値の統計値及び偏差値を算出し、
算出した統計値及び偏差値に基づいて調整値を算出し、
前記補正係数を算出した調整値で調整する、
処理を実行させる請求項1又は請求項2に記載のコンピュータプログラム。
【請求項5】
コンピュータに、
R(赤)、G(緑)、及びB(青)毎に前記補正係数を算出する、
処理を実行させる請求項1又は請求項2に記載のコンピュータプログラム。
【請求項6】
前記所定光は、UV光を含む、
請求項1又は請求項2に記載のコンピュータプログラム。
【請求項7】
コンピュータに、
前記所定光画像データに対して補正した所定光用補正テーブルを用いてシェーディング補正する、
処理を実行させる請求項1又は請求項2に記載のコンピュータプログラム。
【請求項8】
可視光環境下で撮影して得られた画像データを補正するための可視光用補正テーブル及び所定光環境下で撮影して得られた所定光画像データを補正するための所定光用補正テーブルに基づいて補正係数を算出する算出部と、
算出した補正係数に基づいて前記所定光用補正テーブルを補正する補正部と
を備える、
画像処理装置。
【請求項9】
所定光を発光する光源部と、撮像部と、制御部とを備え、
前記撮像部は、
前記光源部が照射した所定光環境下で撮影して得られた所定光画像データを前記制御部へ出力し、
前記制御部は、
可視光環境下で撮影して得られた画像データを補正するための可視光用補正テーブル及び前記所定光画像データを補正するための所定光用補正テーブルに基づいて補正係数を算出し、
算出した補正係数に基づいて前記所定光用補正テーブルを補正し、
前記所定光画像データに対して補正した所定光用補正テーブルを用いてシェーディング補正する、
画像読取装置。
【請求項10】
可視光環境下で撮影して得られた画像データを補正するための可視光用補正テーブル及び所定光環境下で撮影して得られた所定光画像データを補正するための所定光用補正テーブルに基づいて補正係数を算出し、
算出した補正係数に基づいて前記所定光用補正テーブルを補正する、
画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータプログラム、画像処理装置、画像読取装置及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クレジットカード、免許証、パスポートなどの対象媒体の真贋判定は、一般的に目視による確認が行われている。例えば、所定光(例えば、UV光)を照射し、特定の絵柄が目視で確認できるか否かで真贋判定が行われる。
【0003】
一方で、真贋判定を自動化することもできる。特許文献1には、対象媒体の所定箇所に紫外線(UV光)を照射して、消色インキのドットが消色したか否か、通常インキ(非消色インキ)のドットが残存しているか否かに基づいて真贋判定を行うシステムが開示されている。
【0004】
また、UV光を用いて対象媒体の撮影画像を取り込む際には、事前に白色板(基準板)の撮影画像を読み込んで補正テーブルを作成し、作成した補正テーブルを用いてシェーディング補正を行うことで、照明むら等を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、補正テーブルを作成する際に使用する白色板が必ずしも所定光に対してRGB各成分の蛍光率(発光率)が均一とは限らないため、補正テーブルのRGBバランスが崩れる場合がある。RGBバランスが崩れた補正テーブルを使用すると、所定光に加えて外光が侵入するような場合、外交の影響により撮影画像の色味が変化し、真贋判定の精度に影響する。
【0007】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、撮影画像の色味の変化を抑制できるコンピュータプログラム、画像処理装置、画像読取装置及び画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、コンピュータプログラムは、コンピュータに、可視光環境下で撮影して得られた画像データを補正するための可視光用補正テーブル及び所定光環境下で撮影して得られた所定光画像データを補正するための所定光用補正テーブルに基づいて補正係数を算出し、算出した補正係数に基づいて前記所定光用補正テーブルを補正する、処理を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、撮影画像の色味の変化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】可視光用補正テーブル及びUV光用補正テーブルの概要を示す図である。
【
図4】UV光用補正テーブルの補正方法の一例を示す図である。
【
図5】補正後のUV光用補正テーブルの一例を示す図である。
【
図9】スキャナ装置の処理手順の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて説明する。
図1はスキャナ装置100の構成の一例を示す図である。画像読取装置としてのスキャナ装置100は、所定光としてのUV(ultraviolet)光用光源部10、可視光用光源部20、撮像部30、及び画像処理装置としての画像処理部50を備える。画像処理部50は、画像処理部50全体を制御する制御部51、インタフェース部52、メモリ53、出力部54、及び記憶部55を備える。記憶部55は、コンピュータプログラム(プログラム製品)56、可視光用補正テーブル57、UV光用補正テーブル58などを記憶する。コンピュータプログラム56は、記録媒体(例えば、CD-ROM等の光学可読ディスク記憶媒体)に記録されたコンピュータプログラム56を記録媒体読取部で読み取って記憶部55に記憶することができる。外部の装置からコンピュータプログラム56をダウンロードして記憶部55に記憶してもよい。
【0012】
UV光用光源部10は、真贋判定を行う対象媒体(例えば、クレジットカード、免許証、パスポートなど)にUV光を照射する光源を備える。光源としては、例えば、UV-LEDを用いることができる。紫外線の波長域は、UV-A(波長:320~380nm)、UV-B(波長:280~320nm)、UV-C(波長:200~280nm)に分けることができる。UV-A(波長:320~380nm)、UV-Aの波長域の光源を用いることができるが、これに限定されない。
【0013】
可視光用光源部20は、スキャナ装置100が、通常の媒体(例えば、書類などのドキュメント)の撮影画像を読み取る際に媒体に照射する光源を備える。光源としては、例えば、白色LEDを用いることができる。可視光は、人間の目に光として感じる波長範囲の電磁波であり、波長範囲の下限は360~400nm程度、上限は760~830nm程度である。
【0014】
撮像部30は、イメージセンサ(例えば、CCD:Charge Coupled Device、CMOS:Complementary Metal Oxide Semiconductor)、増幅器、及びA/Dコンバータなどを備える。以下では、撮像部30は、CCDイメージセンサであるとして説明する。撮像部30は、イメージセンサから取り込んだアナログ信号をアンプで増幅し、増幅したアナログ信号をA/Dコンバータでデジタル信号に変換することで、対象媒体を撮影して得られた画像データを得る。撮像部30は、画像データをインタフェース部52へ出力する。
【0015】
インタフェース部52は、撮像部30から画像データを取得し、取得した画像データをメモリ53に記憶する。
【0016】
制御部51は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等が所要数組み込まれて構成されている。制御部51は、コンピュータプログラム56で定められた処理を実行することができる。すなわち、制御部51による処理は、コンピュータプログラム56による処理でもある。制御部51は、コンピュータプログラム56を実行することにより、補正テーブルの生成処理、後述の補正係数の算出処理、UV光用補正テーブル58の補正処理、シェーディング補正等の各処理を実行する。
【0017】
メモリ53は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリで構成することができる。コンピュータプログラム56をメモリ53に展開して、制御部51がコンピュータプログラム56を実行することができる。
【0018】
記憶部55は、例えば、ハードディスク又は半導体メモリ等で構成することができる。
【0019】
出力部54は、シェーディング補正された画像データ(スキャン画像)を出力する。
【0020】
図2はシェーディング補正の一例を示す図である。
図2Aはシェーディング補正の概要を示し、
図2Bはシェーディング補正の補正式を示す。シェーディング補正は、レンズ、光源の照度分布ムラ、CCDの画素毎の感度ムラの不均一要因を校正し、またホワイトバランスをとるための機能である。媒体(原稿など)が載置されるガラス台に一様な反射率を有する白色板(基準板、白基準板とも称する)を設置し、事前に白色板を読み込んで補正テーブルを生成する。補正テーブルは、白色板をCCDで撮像して得られた信号値を保持する。白色板をCCDで撮像して得られた信号値は、前述の不均一要因によって、白基準値Kとの間で差異がある。
【0021】
そこで、
図2Aに示すように、補正テーブル内の各信号値が定数(白基準値)Kになるように補正する。補正テーブル内の各信号値が定数(白基準値)Kになるように補正するには、
図2Bに示すように、補正式を用いる。補正前の画像の画素値をIinとし、補正後の画像の画素値をIoutとし、Kを定数(白基準値)とすると、補正式は、Iout=Iin・K/(補正テーブル)という式で表すことができる。なお、補正式は一例であって、これに限定されない。なお、補正テーブルは、使用する光源によって異なる補正テーブルが生成される。本実施形態では、白色LEDを使用する際の可視光用補正テーブル57、所定光としてUV-LEDを使用する際のUV光用補正テーブル58を使用する。
【0022】
次に、可視光用補正テーブル57、及びUV光用補正テーブル58について説明する。
【0023】
図3は可視光用補正テーブル57及びUV光用補正テーブル58の概要を示す図である。可視光用補正テーブル57を生成する場合、白色板のRGB各成分の発光率は均一(人間の目の特性上均一)である。すなわち、白色板の可視光に対するRGB各成分の発光率が均一であるので、可視光用補正テーブル57のRGB各成分の信号値(例えば、0~255)のヒストグラムは、比較的にバランスが整っており、RGB各成分の信号値の平均値についても大きな差異がない。
【0024】
一方、UV光用補正テーブル58を生成する場合、白色板が必ずしもUV光に対してRGB各成分の蛍光率(発光率)が均一ではない。RGBの蛍光率は、白色板の基材に依存し、例えば、
図3に示すように、R成分の蛍光率が、他のGB成分の蛍光率よりも小さい場合がある。なお、以下では、R成分の蛍光率が他の成分の蛍光率よりも小さい場合について説明するが、G成分又はB成分の蛍光率が小さい場合もある。R成分の蛍光率が他の成分の蛍光率よりも小さい場合、UV光用補正テーブル58のRGB各成分の信号値(例えば、0~255)のヒストグラムのバランスは崩れている。また、GB各成分の信号値の平均値に比べて、R成分の信号値の平均値は小さい。このため、UV光用補正テーブル58のG及びB成分の信号値(補正テーブル値)は大きく、R成分の信号値(補正テーブル値)は小さくなる。
【0025】
シェーディング補正では、補正テーブルの信号値(補正テーブル値)の逆数を乗算して画素値を補正するので、RGBバランスの崩れた補正テーブルを使用すると、補正テーブル内の小さい成分のみ大きな値に補正されてしまい、RGBの成分の一部の成分のみが強く補正され、結果として撮影画像の色味が変化する。以下では、撮影画像の色味の変化を抑制するために、UV光用補正テーブル58の補正方法について説明する。
【0026】
図4はUV光用補正テーブル58の補正方法の一例を示す図である。制御部51は、可視光用補正テーブル57を記憶部55から読み出し、読み出した可視光用補正テーブル57のRGB毎の信号値の統計値を算出する。統計値は、例えば、平均値、中央値、最頻値などとすることができるが、本実施例では、平均値を使用する。RGBそれぞれの平均値をA
VR、A
VG、A
VBで表す。
図4の例では、A
VR=108、A
VG=146、A
VB=120とする。
【0027】
制御部51は、UV光用補正テーブル58を記憶部55から読み出し、読み出したUV光用補正テーブル58のRGB毎の信号値の統計値を算出する。統計値は、例えば、平均値、中央値、最頻値などとすることができるが、本実施例では、平均値を使用する。RGBそれぞれの平均値をA
UR、A
UG、A
UBで表す。
図4の例では、A
UR=40、A
UG=127、A
UB=114とする。
【0028】
制御部51は、可視光用補正テーブル57及びUV光用補正テーブル58それぞれが保持する信号値の統計値(例えば、平均値)に基づいて補正係数を算出する。補正係数は、RGB毎に算出してもよい。RGB成分それぞれの補正係数をGR 、GG 、GB とする。
【0029】
補正係数G
Rは、G
R=(A
VR/A
UR)・adjという式で算出できる。(A
VR/A
UR)は、UV光用補正テーブル58のR成分の平均値に対する可視光用補正テーブル57のR成分の平均値の倍率である。
図4の例では、(A
VR/A
UR)=108/40となる。adjは調整値である。調整値adjは、1未満の数値であり、補正係数に基づいて補正したUV光用補正テーブル58の信号値の一部が255を超えないようにして、いわゆる白飛びを防止するものである。調整値は固定値でもよいが、後述のように算出してもよい。
【0030】
補正係数G
Gは、G
G=(A
VG/A
UG)・adjという式で算出できる。(A
VG/A
UG)は、UV光用補正テーブル58のG成分の平均値に対する可視光用補正テーブル57のG成分の平均値の倍率である。
図4の例では、(A
VG/A
UG)=146/127となる。adjは調整値である。
【0031】
補正係数G
Bは、G
B=(A
VB/A
UB)・adjという式で算出できる。(A
VB/A
UB)は、UV光用補正テーブル58のB成分の平均値に対する可視光用補正テーブル57のB成分の平均値の倍率である。
図4の例では、(A
VB/A
UB)=120/114となる。adjは調整値である。
【0032】
上述のように、RGBバランスが崩れているUV光用補正テーブル58を、可視光用補正テーブル57と同様のRGBバランスになるように修正することができる。このように、補正後のUV光用補正テーブル58は、可視光用補正テーブル57のように、RGB各成分の蛍光率(発光率)を比較的均一にすることができる。
【0033】
また、制御部51は、補正係数を所定の調整値で調整してもよい。これにより、いわゆる白飛びを防止することができる。
【0034】
図5は補正後のUV光用補正テーブル58の一例を示す図である。
図5は、イメージセンサの撮像素子の画素の並び方の一つであるベイヤー配列の場合について説明する。ベイヤー配列は、全画素の半分がG成分の画素であり、R-Gが繰り返される列とG-Bが繰り返される列とが交互に配列されている。補正前のUV光用補正テーブル58のRGB成分の信号値をRGBで表す。補正後のUV光用補正テーブル58のRGB成分の信号値は、それぞれR×G
R 、G×G
G 、B×G
B で表すことができる。なお、配列はベイヤー配列に限定されるものではなく、斜めベイヤー配列、クアッドベイヤー配列などであってもよい。
【0035】
上述のように、制御部51は、算出した補正係数GR 、GG 、GB に基づいて補正前のUV光用補正テーブル58それぞれが保持する信号値をRGB毎に補正することができる。
【0036】
図6は調整値の算出方法の一例を示す図である。制御部51は、補正前のUV光用補正テーブル58が保持する信号値の統計値(例えば、平均値)及び偏差値を算出し、算出した統計値及び偏差値に基づいて調整値を算出することができる。制御部51は、補正係数を算出した調整値で調整してもよい。
【0037】
具体的には、補正前のUV光用補正テーブル58のB成分の信号値の平均値をAUBとし、B成分の信号値の標準偏差をσBとする。{GB ・(AUB+3σB)}>255の場合、B成分の調整値AdBを、AdB=255/{GB ・(AUB+3σB)}とする。また、{GB ・(AUB+3σB)}≦255の場合、AdB=1とする。
【0038】
補正前のUV光用補正テーブル58のG成分の信号値の平均値をAUGとし、G成分の信号値の標準偏差をσGとする。{GG ・(AUG+3σG)}>255の場合、G成分の調整値AdGを、AdG=255/{GG ・(AUG+3σG)}とする。また、{GG ・(AUG+3σG)}≦255の場合、AdG=1とする。
【0039】
補正前のUV光用補正テーブル58のR成分の信号値の平均値をAURとし、R成分の信号値の標準偏差をσRとする。{GR ・(AUR+3σR)}>255の場合、R成分の調整値AdRを、AdR=255/{GR ・(AUR+3σR)}とする。また、{GR ・(AUR+3σR)}≦255の場合、AdR=1とする。
【0040】
調整値adjは、AdB、AdG、及びAdRの最小値とすることができる。
【0041】
制御部51は、補正後のUV光用補正テーブル58を用いて、UV光(UV光用光源部10)によって撮影して得られたUV光画像データに対してシェーディング補正を行うことができる。補正前の画像の画素値をIinとし、補正後の画像の画素値をIoutとし、Kを定数(白基準値)とすると、シェーディング補正の補正式は、Iout=Iin・K/(補正後のUV光用補正テーブル58)という式で表すことができる。
【0042】
次に、撮影画像に対する環境要因による影響について説明する。以下では、環境要因の例として外光の影響について説明する。
【0043】
図7は比較例の場合の外光の影響を示す図である。比較例は、補正前のUV光用補正テーブル58を用いる場合を示す。真贋判定の媒体にUV光を照射して真贋判定媒体の撮影画像が得られたとする。当該撮影画像は、補正前のUV光用補正テーブル58を用いてシェーディング補正されたスキャナ画像である。スキャナ装置で媒体をスキャンする際に外光が媒体表面に侵入せず外光がない場合、撮影画像の所定領域A、BそれぞれでのRGB各成分のスペクトルの一例を模式的に図示している。
【0044】
スキャナ装置で媒体をスキャンする際に外光が媒体表面の例えば所定領域BにRGB均一で微小な白色光が侵入した場合、所定領域AでのRGB各成分のスペクトルは外光なしの場合と同様である。しかし、外光が侵入した所定領域BでのRGB各成分のスペクトルは、実際にはRGB各色が均一に増大するだけであるため、RGBのバランスは変化しないが、補正前のUV光用補正テーブル58のR成分の信号値(補正テーブル値)が小さいため、小さい成分のみが大きく補正され(補正テーブル値の逆数で補正される)、外光のR成分が強くなるように補正される。このため、外光なしの場合のRG成分の強度と、外光ありの場合のRG成分の強度とが逆転している。このため、外光の影響により撮影画像の色味が変化してしまう。
【0045】
図7の例では、撮影画像の一部が外光の影響を受けている場合を示すが、撮像画像全体に外光の影響がある場合も同様に、外光のR成分が強くなり、撮像画像全体の色味が変化してしまう。なお、所定領域BにおけるRGB成分の全体の分布は、外光ありの方が外光なしに比べて若干右にシフトする。
【0046】
図8は本実施形態の外光の影響を示す図である。外光がない場合、
図7の比較例と同様である。スキャナ装置で媒体をスキャンする際に外光が媒体表面の所定領域Bに侵入し外光がある場合には、所定領域AでのRGB各成分のスペクトルは外光なしの場合と同様である。また、外光が侵入した所定領域BでのRGB各成分のスペクトルは、補正後のUV光用補正テーブル58のRGB成分のバランスが比較的均一であるため、外光のうちの特定の成分(例えば、R、G、B)が大きく補正されることはない。このため、外光なしの場合のRGBの各成分のスペクトルは、外光ありの場合のRGBの各成分のスペクトルと同等になり、色味の変化を抑制することができる。
【0047】
図8の例では、撮影画像の一部が外光の影響を受けている場合を示すが、撮像画像全体に外光の影響がある場合も同様に、外光のうちの特定の成分(例えば、R、G、B)が大きく補正されることはなく、撮像画像全体の色味の変化を抑制できる。なお、所定領域BにおけるRGB成分の全体の分布は、外光ありの方が外光なしに比べて若干右にシフトする。
【0048】
上述のように、制御部51は、可視光環境下で撮影して得られた画像データを補正するための可視光用補正テーブル及び所定光環境下で撮影して得られた所定光画像データを補正するための所定光用補正テーブルを取得し、取得した可視光用補正テーブル及び所定光用補正テーブルに基づいて補正係数を算出し、算出した補正係数に基づいて当該所定光用補正テーブルを補正することができる。
【0049】
図9はスキャナ装置100の処理手順の一例を示す図である。以下では便宜上、処理の主体を制御部51として説明する。制御部51は、可視光用補正テーブル57、及びUV光用補正テーブル58を取得し(S11)、可視光用補正テーブル57のRGB毎の信号値の平均値を算出し(S12)、UV光用補正テーブル58のRGB毎の信号値の平均値を算出する(S13)。
【0050】
制御部51は、算出した平均値に基づいてRGB毎の平均値の倍率を算出し(S14)、丸め込み用の調整値を算出する(S15)。調整値の算出は、
図6を参照。制御部51は、算出した倍率、調整値に基づいて、RGB毎の補正係数を算出する(S16)。補正係数の算出は、
図4を参照。
【0051】
制御部51は、算出した補正係数を用いてUV光用補正テーブル58を補正し(S17)、処理を終了する。UV光用補正テーブル58の補正は、
図5を参照。
【0052】
本実施形態によれば、撮影画像の色味の変化を抑制できる。また、一般的なスキャナ装置において、外光検出用のセンサを個別に設ける必要がなく、外光の影響を軽減することができる。真贋判定のための媒体の撮影画像に対する外光の影響を軽減できるので、撮影画像を用いた真贋判定の精度向上も期待できる。
【0053】
(付記1)コンピュータプログラムは、コンピュータに、可視光環境下で撮影して得られた画像データを補正するための可視光用補正テーブル及び所定光環境下で撮影して得られた所定光画像データを補正するための所定光用補正テーブルに基づいて補正係数を算出し、算出した補正係数に基づいて前記所定光用補正テーブルを補正する、処理を実行させる。
【0054】
(付記2)コンピュータプログラムは、付記1のコンピュータプログラムにおいて、コンピュータに、前記可視光用補正テーブル及び前記所定光用補正テーブルそれぞれが保持する信号値の統計値に基づいて補正係数を算出し、算出した補正係数に基づいて前記所定光用補正テーブルが保持する信号値を補正する、処理を実行させる。
【0055】
(付記3)コンピュータプログラムは、付記1又は付記2のコンピュータプログラムにおいて、ンピュータに、前記補正係数を所定の調整値で調整する、処理を実行させる。
【0056】
(付記4)コンピュータプログラムは、付記1から付記3のいずれかのコンピュータプログラムにおいて、コンピュータに、前記所定光用補正テーブルが保持する信号値の統計値及び偏差値を算出し、算出した統計値及び偏差値に基づいて調整値を算出し、前記補正係数を算出した調整値で調整する、処理を実行させる。
【0057】
(付記5)コンピュータプログラムは、付記1から付記4のいずれかのコンピュータプログラムにおいて、コンピュータに、R(赤)、G(緑)、及びB(青)毎に前記補正係数を算出する、処理を実行させる。
【0058】
(付記6)コンピュータプログラムは、付記1から付記5のいずれかのコンピュータプログラムにおいて、前記所定光は、UV光を含む。
【0059】
(付記7)コンピュータプログラムは、付記1から付記6のいずれかのコンピュータプログラムにおいて、コンピュータに、前記所定光画像データに対して補正した所定光用補正テーブルを用いてシェーディング補正する、処理を実行させる。
【0060】
(付記8)画像処理装置は、可視光環境下で撮影して得られた画像データを補正するための可視光用補正テーブル及び所定光環境下で撮影して得られた所定光画像データを補正するための所定光用補正テーブルに基づいて補正係数を算出する算出部と、算出した補正係数に基づいて前記所定光用補正テーブルを補正する補正部とを備える。
【0061】
(付記9)画像読取装置は、所定光を発光する光源部と、撮像部と、制御部とを備え、前記撮像部は、前記光源部が照射した所定光環境下で撮影して得られた所定光画像データを前記制御部へ出力し、前記制御部は、可視光環境下で撮影して得られた画像データを補正するための可視光用補正テーブル及び前記所定光画像データを補正するための所定光用補正テーブルに基づいて補正係数を算出し、算出した補正係数に基づいて前記所定光用補正テーブルを補正し、前記所定光画像データに対して補正した所定光用補正テーブルを用いてシェーディング補正する。
【0062】
(付記10)画像処理方法は、可視光環境下で撮影して得られた画像データを補正するための可視光用補正テーブル及び所定光環境下で撮影して得られた所定光画像データを補正するための所定光用補正テーブルに基づいて補正係数を算出し、算出した補正係数に基づいて前記所定光用補正テーブルを補正する。
【0063】
各実施形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載してもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 UV光用光源部
20 可視光用光源部
30 撮像部
50 画像処理部
51 制御部
52 インタフェース部
53 メモリ
54 出力部
55 記憶部
56 コンピュータプログラム
57 可視光用補正テーブル
58 UV光用補正テーブル