(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180082
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】搬送ローラー対、媒体搬送装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 5/06 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
B65H5/06 A
B65H5/06 F
B65H5/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093186
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100177644
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 和樹
(72)【発明者】
【氏名】西村 隆俊
【テーマコード(参考)】
3F049
【Fターム(参考)】
3F049AA10
3F049CA02
3F049CA11
3F049CA31
3F049DB02
3F049DB06
3F049LA06
3F049LA07
3F049LB03
(57)【要約】
【課題】媒体がニップ部に進入する際の衝撃を低減することができる搬送ローラー対を提供する。
【解決手段】
搬送ローラー対21は、軸周りに回転駆動される駆動ローラー30と、駆動ローラー30に従動して軸周りに回転しながら駆動ローラー30との間に挟んだ用紙Pを搬送する複数の従動コロ40と、を備え、従動コロ40は、駆動ローラー30に接触して第1ニップ部N1を形成する少なくとも1つの第1コロ41と、第1コロ41よりも用紙Pの搬送方向の下流側において駆動ローラー30に接触して第2ニップ部N2を形成する少なくとも1つの第2コロ46と、を有し、第1コロ41のイナーシャは、第2コロ46のイナーシャよりも小さな値とされている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸周りに回転駆動される駆動ローラーと、
前記駆動ローラーに従動して軸周りに回転しながら前記駆動ローラーとの間に挟んだ媒体を搬送する複数の従動コロと、を備え、
前記従動コロは、
前記駆動ローラーに接触して第1ニップ部を形成する少なくとも1つの第1コロと、
前記第1コロよりも前記媒体の搬送方向の下流側において前記駆動ローラーに接触して第2ニップ部を形成する少なくとも1つの第2コロと、を有し、
前記第1コロのイナーシャは、前記第2コロのイナーシャよりも小さな値とされていることを特徴とする搬送ローラー対。
【請求項2】
前記第1コロは、前記第2コロよりも小径に形成されることで、前記第2コロよりもイナーシャの値を小さくされていることを特徴とする請求項1に記載の搬送ローラー対。
【請求項3】
前記第1コロは、前記第2コロよりも軽量に形成されることで、前記第2コロよりもイナーシャの値を小さくされていることを特徴とする請求項1に記載の搬送ローラー対。
【請求項4】
前記第1コロは、前記第2コロよりも細く形成されることで、前記第2コロよりもイナーシャの値を小さくされていることを特徴とする請求項1に記載の搬送ローラー対。
【請求項5】
前記第1コロは、前記第2コロと同一重量、または前記第2コロよりも軽量に形成され、
前記第1コロは、前記第2コロよりも径方向の外側を軽くした重量配分とされることで、前記第2コロよりもイナーシャの値を小さくされていることを特徴とする請求項1に記載の搬送ローラー対。
【請求項6】
複数の前記第1コロと複数の前記第2コロとは、前記搬送方向に直交する幅方向に間隔をあけて配置され、
前記第1コロの数は、前記第2コロの数よりも少ないことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の搬送ローラー対。
【請求項7】
請求項6に記載の搬送ローラー対と、
前記幅方向に伸長する揺動軸と、
前記揺動軸に揺動可能に支持され、前記揺動軸から前記搬送方向の一方に伸長した先端側に前記第1コロを回転可能に支持する複数の第1揺動アームと、
前記揺動軸に揺動可能に支持され、前記揺動軸から前記搬送方向の一方に伸長した先端側に前記第2コロを回転可能に支持する複数の第2揺動アームと、
前記第1揺動アームおよび前記第2揺動アームを前記駆動ローラーに向けて付勢する複数の付勢部材と、を備えている媒体搬送装置。
【請求項8】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の搬送ローラー対を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体を挟みながら搬送する搬送ローラー対、媒体搬送装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に画像形成装置では、駆動ローラーと従動コロとの間に用紙等の媒体を挟みながら搬送する搬送ローラー対が用いられている。搬送ローラー対を用いた媒体の搬送では、媒体の後側で画像形成が継続されているときに、媒体の前端(先端)が搬送ローラー対の間(ニップ部)に進入すると、進入時の衝撃が媒体の後側に伝わり、画像に色ずれ等が発生する場合があった。
【0003】
以上のような媒体の先端が搬送ローラー対のニップ部に進入するときの衝撃(負荷)を減らすために、特許文献1では、ローラー径を同一とした複数の従動側ローラーが、回転中心をずらして駆動側ローラーに接触していた。これにより、駆動側ローラーの周面に沿う方向にローラー対のニップ部の位置(接触位置)がずれ、媒体の先端がローラー対に進入するときの負荷を減らすとされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の技術によれば、媒体がニップ部に進入するときの衝撃をある程度は低減することができる。しかしながら、画像形成の高速化に伴い媒体の搬送速度も速くなるため、同一径のローラーを用いた上記の技術では、当該衝撃を十分に低減することができず、画像形成に悪影響を及ぼす虞があった。
【0006】
本発明は、上記事情を考慮し、媒体がニップ部に進入する際の衝撃を低減することができる搬送ローラー対、媒体搬送装置および画像形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る搬送ローラー対は、軸周りに回転駆動される駆動ローラーと、前記駆動ローラーに従動して軸周りに回転しながら前記駆動ローラーとの間に挟んだ媒体を搬送する複数の従動コロと、を備え、前記従動コロは、前記駆動ローラーに接触して第1ニップ部を形成する少なくとも1つの第1コロと、前記第1コロよりも前記媒体の搬送方向の下流側において前記駆動ローラーに接触して第2ニップ部を形成する少なくとも1つの第2コロと、を有し、前記第1コロのイナーシャは、前記第2コロのイナーシャよりも小さな値とされている。
【0008】
この場合、前記第1コロは、前記第2コロよりも小径に形成されることで、前記第2コロよりもイナーシャの値を小さくされてもよい。
【0009】
他の場合、前記第1コロは、前記第2コロよりも軽量に形成されることで、前記第2コロよりもイナーシャの値を小さくされてもよい。
【0010】
他の場合、前記第1コロは、前記第2コロよりも細く形成されることで、前記第2コロよりもイナーシャの値を小さくされてもよい。
【0011】
他の場合、前記第1コロは、前記第2コロと同一重量、または前記第2コロよりも軽量に形成され、前記第1コロは、前記第2コロよりも径方向の外側を軽くした重量配分とされることで、前記第2コロよりもイナーシャの値を小さくされもよい。
【0012】
これらの場合、複数の前記第1コロと複数の前記第2コロとは、前記搬送方向に直交する幅方向に間隔をあけて配置され、前記第1コロの数は、前記第2コロの数よりも少ないこととしてもよい。
【0013】
本発明に係る媒体搬送装置は、上記に記載の搬送ローラー対と、前記幅方向に伸長する揺動軸と、前記揺動軸に揺動可能に支持され、前記揺動軸から前記搬送方向の一方に伸長した先端側に前記第1コロを回転可能に支持する複数の第1揺動アームと、前記揺動軸に揺動可能に支持され、前記揺動軸から前記搬送方向の一方に伸長した先端側に前記第2コロを回転可能に支持する複数の第2揺動アームと、前記第1揺動アームおよび前記第2揺動アームを前記駆動ローラーに向けて付勢する複数の付勢部材と、を備えている。
【0014】
本発明に係る画像形成装置は、上記したいずれかの搬送ローラー対を備えている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、媒体がニップ部に進入する際の衝撃を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の内部構造を示す概略図(正面図)である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る媒体搬送装置を示す側面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る媒体搬送装置を示す平面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る媒体搬送装置(搬送ローラー対)を示す断面図である。
【
図6】本発明の第3実施形態に係る媒体搬送装置(搬送ローラー対)を示す平面図である。
【
図7】本発明の第4実施形態に係る媒体搬送装置(搬送ローラー対)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、図面に示すFr、Rr、L、R、U、Dは、前、後、左、右、上、下を示している。本明細書では方向や位置を示す用語を用いるが、それらの用語は説明の便宜のために用いるものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0018】
[画像形成装置]
図1を参照して、画像形成装置1について説明する。
図1は画像形成装置1の内部構造を示す概略図(正面図)である。
【0019】
画像形成装置1は、インク滴を吐出して用紙P(紙製)に画像を形成するインクジェット式のプリンターである。画像形成装置1は、各種機器が収容された箱型のハウジング2を備えている。ハウジング2の下部には用紙Pがセットされる給紙カセット3が収容され、ハウジング2の左側面の上側には印刷済みの用紙Pが積載される排紙トレイ4が設けられている。なお、本明細書では、媒体の一例としての用紙Pが搬送される方向を「搬送方向」と呼び、「上流」および「下流」並びにこれらに類する用語は、搬送方向における「上流」および「下流」並びにこれらに類する概念を指すものとする。また、媒体は、紙製の用紙Pに限らず、例えば、樹脂製のシート(フィルム)等であってもよい。
【0020】
ハウジング2内の右側部には、給紙カセット3からヘッドユニット12に向けて用紙Pを搬送するための第1の搬送経路5が形成されている。第1の搬送経路5の上流端部には給紙部10が設けられ、第1の搬送経路5の下流端部にはレジストローラー11が設けられている。
【0021】
ヘッドユニット12は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色のインクに対応した4つのラインヘッド13を有している。各ラインヘッド13には、複数の記録ヘッド14が搭載されている。各記録ヘッド14には、チューブ(図示せず)を介して各色のインクパック(図示せず)からインクが供給される。ヘッドユニット12の下方には、多数の貫通穴(図示せず)が形成された搬送ベルト15が設けられている。搬送ベルト15は複数の張架ローラー15Aに掛け渡され、搬送ベルト15の内側には吸引部15Bが設けられている。
【0022】
ハウジング2内の左側部には、ヘッドユニット12から排紙トレイ4に向けて用紙Pを搬送するための第2の搬送経路7が形成されている。第2の搬送経路7の上流側には媒体搬送装置16が設けられ、第2の搬送経路7の中流部にはデカール装置17が設けられ、第2の搬送経路7の下流端部には排紙部18が設けられている。詳細は後述するが、媒体搬送装置16は、用紙Pを挟みながら軸周りに回転して搬送する搬送ローラー対21を備えている。ハウジング2内の上部には、第2の搬送経路7の途中からレジストローラー11に用紙Pを再搬送するための第3の搬送経路8が形成されている。
【0023】
[画像形成処理]
ここで、画像形成処理について説明する。画像形成装置1の制御部(図示せず)は、様々な制御対象機器を適宜制御し、以下のように画像形成処理を実行する。
【0024】
給紙部10は、給紙カセット3から取り出した用紙Pを第1の搬送経路5に送り出す。レジストローラー11は、用紙Pを一時的に塞き止めてスキュー補正し、ラインヘッド13からのインク滴の吐出タイミングに合わせて、用紙Pを搬送ベルト15上へ送り出す。用紙Pは搬送ベルト15上に吸着されながら搬送され、ヘッドユニット12に搭載された各記録ヘッド14は、搬送ベルト15上の用紙Pに向けて複数のノズル(図示せず)からインク滴(液滴)を吐出し、フルカラーの画像を形成する。媒体搬送装置16(搬送ローラー対21)は画像形成された用紙Pを搬送方向の下流に向けて搬送し、デカール装置17は用紙Pの巻き癖(カール)を矯正する。
【0025】
片面印刷された用紙Pは、第2の搬送経路7を通って排紙トレイ4に排出される。両面印刷を実行する場合、片面印刷された用紙Pは、第3の搬送経路8に進入し、表裏反転され、再びレジストローラー11に向けて搬送される。その後、上記した片面印刷時と同様の順序で用紙Pの裏面に画像が形成され、両面印刷された用紙Pは排紙トレイ4に排出される。
【0026】
ところで、搬送ローラー対21は駆動ローラー30と複数の従動コロ40との間に用紙Pを挟み込み、駆動ローラー30と従動コロ40とが軸周りに回転することで用紙Pを搬送方向の上流から下流に向けて搬送する。ヘッドユニット12を通過してきた用紙Pの先端(前端)は駆動ローラー30と従動コロ40との接触部分(ニップ)に突き当たる(衝突する)ため、用紙Pの搬送速度が大きく変化(減速)し、衝突時の衝撃や振動が用紙Pの先端から後方に伝わることがある。このとき、用紙Pの後側で画像形成が継続されていると、当該衝撃によって用紙Pの後側が僅かに移動し、形成される画像に色ずれ等が発生する場合がある。そこで、第1実施形態に係る媒体搬送装置16は、用紙Pがニップに進入する際の衝撃を低減する搬送ローラー対21を備えている。
【0027】
[媒体搬送装置]
図2ないし
図4を参照して、第1実施形態に係る媒体搬送装置16について説明する。
図2は媒体搬送装置16を示す側面図である。
図3は、
図2のIII-III断面図である。
図4は媒体搬送装置16を示す平面図である。
【0028】
図2ないし
図4に示すように、媒体搬送装置16は、搬送ローラー対21と、支持ユニット50と、を備えている。
【0029】
<搬送ローラー対>
搬送ローラー対21は、駆動ローラー30と、7つの従動コロ40と、を備えている。駆動ローラー30は軸周りに回転駆動される。従動コロ40は、駆動ローラー30に従動して軸周りに回転しながら駆動ローラー30との間に挟んだ用紙Pを搬送する。従動コロ40はヘッドユニット12を通過した用紙Pの画像形成面(表面)に接触し、駆動ローラー30は用紙Pの裏面に接触する。
【0030】
(駆動ローラー)
駆動ローラー30は、前後方向(搬送方向に直交する幅方向)に伸長する駆動軸31と、駆動軸31の周面に固定されたローラー本体部32と、を有している。駆動軸31の両端部は、ハウジング2の内部に設けられたフレーム(図示せず)に回転可能に支持されている。駆動軸31は電動モーター等の駆動源(図示せず)に接続され、駆動源からの駆動力を受けて軸周りに回転する。ローラー本体部32は、駆動軸31の軸方向に沿った所定の幅を有するゴム製のローラーである。
【0031】
(従動コロ)
各従動コロ40はやや厚みのある円板状に形成され、その外周面には複数の針状の歯部40Aが周方向に略等間隔に突出している。なお、
図2および
図4等では、複数の歯部40Aを一本の線で示している
【0032】
7つの従動コロ40は、3つの第1コロ41と、4つの第2コロ46と、で構成されている(
図2および
図3参照)。3つの第1コロ41と4つの第2コロ46とは、交互に前後方向(幅方向)に略等しい間隔をあけて配置されている。なお、3つの第1コロ41はそれぞれ同一形状であるため、以下、1つの第1コロ41に着目して説明する。これと同様に、以下、1つの第2コロ46に着目して説明する。
【0033】
第1コロ41(後述する第1軸56)は、第2コロ46(後述する第2軸57)よりも搬送方向の上流側に回転中心をずらして配置されている(
図3および
図4参照)。第1コロ41は、駆動ローラー30に接触して第1ニップ部N1を形成している(
図3参照)。第2コロ46は、第1コロ41よりも搬送方向の下流側において駆動ローラー30に接触して第2ニップ部N2を形成している(
図3参照)。なお、第1ニップ部N1と第2ニップ部N2とで共通する説明では、単に「ニップ部N1,N2」と呼ぶこととする。
【0034】
第1コロ41のイナーシャ(慣性モーメント)は、第2コロ46のイナーシャよりも小さな値とされている。具体的な構成としては、第1コロ41の直径は、第2コロ46の直径よりも小さく(短く)なるように設定されている。このため、第1コロ41は、第2コロ46よりも回転中心を下方にずらして配置されている(
図3参照)第1コロ41は、第2コロ46と同一重量に形成されてもよいし、小径にした分、第2コロ46よりも軽量に形成されてもよい。なお、第1コロ41と第2コロ46との外径差(直径の差)に特段の定めはないが、当該外径差(直径の差)は、第1ニップ部N1が第2ニップ部N2よりも上流側に配置され、且つ第1ニップ部N1に進入する用紙Pの衝撃を低減することが可能な範囲で自由に設定することができる。
【0035】
(イナーシャと回転トルク)
ここで、図心(中心軸)まわりに回転する一様な円板のイナーシャ(慣性モーメント)I[kg・m^2]は下記の数式1で表される。また、回転トルクT[N・m]は下記の数式2で表される。
【0036】
【0037】
【0038】
第1コロ41および第2コロ46は一様な円板であると近似することができるため、上記した数式1から明らかなように、第1コロ41が第2コロ46よりも小径に形成されることで、第1コロ41は第2コロ46よりもイナーシャの値が小さくなる。また、数式2から明らかなように、イナーシャIが小さくなることで、回転トルクTも小さくなることから、第1コロ41を回転させるために必要な力(トルク)は、第2コロ46を回転させるために必要な力よりも小さくなる。つまり、第1コロ41は第2コロ46よりも軸周りに回転し易くなる。
【0039】
<支持ユニット>
図2ないし
図4に示すように、支持ユニット50は、ローラーホルダー51と、揺動軸52と、3つの第1揺動アーム53と、4つの第2揺動アーム54と、7つの付勢部材55と、を有している。なお、3つの第1揺動アーム53はそれぞれ同一形状であるため、以下、1つの第1揺動アーム53に着目して説明する。これと同様に、以下、1つの第2揺動アーム54および1つの付勢部材55に着目して説明する。また、第1揺動アーム53と第2揺動アーム54とで共通する説明では、単に「揺動アーム53,54」と呼ぶこととする。なお、
図4では、ローラーホルダー51の図示を省略している。
【0040】
(ローラーホルダー、揺動軸)
ローラーホルダー51は、下方と左方とを開放した箱状に形成され、その内側に7つの従動コロ40を収容している(
図2および
図3参照)。揺動軸52は、前後方向(幅方向)に伸長し、ローラーホルダー51の前後両側板に回転可能に支持されている(
図2参照)。
【0041】
(第1揺動アーム、第2揺動アーム)
3つの第1揺動アーム53と4つの第2揺動アーム54とは、交互に前後方向(幅方向)に略等しい間隔をあけて配置されている(
図2および
図4参照)。揺動アーム53,54の右端部は揺動軸52に固定され、揺動アーム53,54は揺動軸52に上下方向に揺動可能に支持されている。第1揺動アーム53は揺動軸52から左方(搬送方向の一方)に伸長し、その伸長した先端側には第1軸56を介して第1コロ41が回転可能に支持されている。第2揺動アーム54は揺動軸52から左方に伸長し、その伸長した先端側には第2軸57を介して第2コロ46が回転可能に支持されている。
【0042】
(付勢部材)
付勢部材55は、例えば、圧縮コイルスプリングであって、ローラーホルダー51の天板と揺動アーム53,54との間に架設されている(
図2および
図3参照)。付勢部材55は、揺動アーム53,54を駆動ローラー30に向けて付勢している。揺動アーム53,54は下方に回動し、従動コロ40(第1コロ41,第2コロ46)は駆動ローラー30の表面に所定の圧力で押し付けられる。なお、7つの付勢部材55は全て同一のバネ定数であり、7つの従動コロ40は略同一荷重で駆動ローラー30の表面に押し付けられている。
【0043】
第1ニップ部N1と第2ニップ部N2とは、駆動ローラー30のローラー本体部32の湾曲した外周面に周方向(搬送方向)にずれた位置に形成されているため、完全に同一高さに位置しているとは言えないが、略同一高さに位置していると近似することができる(
図3参照)。また、第1コロ41は第2コロ46よりも小径であるため、第1揺動アーム53は第2揺動アーム54よりも下方に回動し、第1コロ41の回転中心(第1軸56)は第2コロ46の回転中心(第2軸57)よりも上流側斜め下方に位置している(
図3参照)。
【0044】
[媒体搬送装置の作用]
次に、媒体搬送装置16の作用、つまり、搬送ローラー対21による用紙Pの搬送について説明する。
【0045】
ヘッドユニット12を通過した用紙Pの先端は、駆動ローラー30と3つの第1コロ41との接触部分(第1ニップ部N1)に突き当たる。上記したように第1コロ41は、第2コロ46よりも小径とされ、イナーシャを小さくされているため、用紙Pの搬送速度に大きな変化を与えずに円滑に回転する。このため、用紙Pへの大きな衝撃や振動の伝達が抑制される。用紙Pの搬送が進むと、第1揺動アーム53は付勢部材55の付勢力に抗して用紙Pの厚み分だけ上昇し、用紙Pが第1ニップ部N1に挟み込まれる。駆動ローラー30は用紙Pに搬送力を与え、第1コロ41は用紙Pを介して駆動ローラー30に従動して回転する。
【0046】
また、用紙Pの搬送が進むと、用紙Pの先端は、駆動ローラー30と4つの第2コロ46との接触部分(第2ニップ部N2)に突き当たる。この際、用紙Pは既に第1ニップ部N1に挟み込まれているため、用紙Pの搬送速度は殆ど変化せず、用紙Pに大きな衝撃や振動が伝わることはない(または振動の伝達は非常に少ない)。更に用紙Pの搬送が進むと、第2揺動アーム54は付勢部材55の付勢力に抗して用紙Pの厚み分だけ上昇し、用紙Pが第2ニップ部N2に挟み込まれる。第2コロ46は、用紙Pを介して駆動ローラー30に従動して回転する。
【0047】
用紙Pは、2つのニップ部N1,N2に挟まれながら搬送され、下流側に設けられたデカール装置17に送られる。
【0048】
以上説明した第1実施形態に係る搬送ローラー対21によれば、第1コロ41を第2コロ46よりも小径とすることで、第1コロ41のイナーシャを第2コロ46のイナーシャよりも小さくすることができる。つまり、第2コロ46よりも小さな力で第1コロ41を回転させることができる。これにより、用紙Pの先端が第1コロ41に衝突すると、第1コロ41は衝撃(搬送方向に向かう力)を吸収するように容易に回転するため、用紙P(媒体)が第1ニップ部N1に進入する際の衝撃を低減することができる。その結果、用紙Pの先端から後側に伝わる衝撃が和らげられるため、用紙Pの後側で画像形成が継続されている場合に、色ずれ等の発生を抑制することができる。
【0049】
また、第1実施形態に係る搬送ローラー対21によれば、第1コロ41の数が第2コロ46の数よりも少ないため、用紙Pが第1ニップ部N1に進入する際の衝撃を低減することができる。
【0050】
以上説明した第1実施形態に係る媒体搬送装置16によれば、複数の揺動アーム53,54が複数の従動コロ40(第1コロ41、第2コロ46)を個別に揺動可能に支持しているため、互いに異なる外径を有する第1コロ41と第2コロ46とを、略一定の圧力をもって駆動ローラー30の表面に接触させることができる。
【0051】
[他の実施形態]
以下、
図5ないし
図7を参照して、他の実施形態について説明する。
図5は第2実施形態に係る媒体搬送装置16(搬送ローラー対22)を示す断面図である。
図6は第3実施形態に係る媒体搬送装置16(搬送ローラー対23)を示す平面図である。
図7は第4実施形態に係る媒体搬送装置16(搬送ローラー対24)を示す断面図である。なお、以下の説明では、上記した第1実施形態に係る搬送ローラー対21と同一または対応する構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0052】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る搬送ローラー対22では、第1コロ42が、第2コロ46よりも軽量に形成されることで、第2コロ46よりもイナーシャの値を小さくされている。第1コロ42を軽量化する手段としては、
図5に示すように、必要な剛性を確保しながら、第1コロ42に肉抜き穴42Aを形成するとよい。また、他にも、第1コロ42の素材に第2コロ46よりも軽量な素材を使用してもよい(図示せず)。第1コロ42は、第2コロ46の半分程度の重さにするとよいが、これに限らず、第1ニップ部N1に進入する用紙Pの衝撃を低減することが可能な範囲で自由に変更されてもよい。なお、第1コロ42は、第2コロ46と略同一外径に形成されている。
【0053】
以上説明した第2実施形態に係る搬送ローラー対22によれば、第1コロ42を第2コロ46よりも軽くすることで、第1コロ42のイナーシャを第2コロ46のイナーシャよりも小さくすることができる(上記した数式1参照)。これにより、用紙Pが第1ニップ部N1に進入する際の衝撃を低減することができる等、第1実施形態に係る搬送ローラー対21と同様の効果を得ることができる。
【0054】
[第3実施形態]
図6に示すように、第3実施形態に係る搬送ローラー対23では、第1コロ43が、第2コロ46よりも細く形成されることで、第2コロ46よりもイナーシャの値を小さくされている。第1コロ43は、第2コロ46の半分程度の幅とされるとよいが、これに限らず、第1ニップ部N1に進入する用紙Pの衝撃を低減することが可能な範囲で自由に変更されてもよい。なお、第1コロ43は、第2コロ46と略同一外径に形成されているため、第2コロ46よりも軽量に形成されてもよい。
【0055】
以上説明した第3実施形態に係る搬送ローラー対23によれば、第1コロ43を第2コロ46よりも細くすることで、第1コロ43のイナーシャを第2コロ46のイナーシャよりも小さくすることができる。これにより、用紙Pが第1ニップ部N1に進入する際の衝撃を低減することができる等、第1実施形態に係る搬送ローラー対21と同様の効果を得ることができる。
【0056】
[第4実施形態]
第4実施形態に係る搬送ローラー対24では、第1コロ44が、第2コロ46と同一重量、または第2コロ46よりも軽量に形成されている。また、第1コロ44は、第2コロ46よりも径方向の外側を軽くした重量配分とされることで、第2コロ46よりもイナーシャの値を小さくされている。第1コロ44の径方向の外側を軽くする手段としては、
図7に示すように、必要な剛性を確保しながら、第1コロ44の径方向の外側のみに肉抜き穴44Aを形成するとよい。また、他にも、第1コロ42の径方向の外側の素材を、径方向の内側の素材よりも軽量な素材としてもよい(図示せず)。なお、第1コロ44は、第2コロ46と略同一外径に形成されている。
【0057】
以上説明した第4実施形態に係る搬送ローラー対24によれば、第1コロ44の径方向の外側を軽くする重量配分にすることで、第1コロ44のイナーシャを第2コロ46のイナーシャよりも小さくすることができる。これにより、用紙Pが第1ニップ部N1に進入する際の衝撃を低減することができる等、第1実施形態に係る搬送ローラー対21と同様の効果を得ることができる。
【0058】
なお、第2~第4実施形態に係る搬送ローラー対22~24では、第1コロ42~44が第2コロ46と略同一外径とされていたが(
図5ないし
図7参照)、本発明はこれに限定されない。第1実施形態に係る搬送ローラー対21の第1コロ41と同様に、第1コロ42~44が第2コロ46よりも小径に形成されてもよい(図示せず)。また、第1ニップ部N1に進入する用紙Pの衝撃を低減することが可能な範囲であれば、第1コロ42~44が第2コロ46よりも大径に形成されてもよい(図示せず)。
【0059】
なお、第1~第4実施形態に係る搬送ローラー対21~24では、7つの従動コロ40(3つの第1コロ41~44、4つの第2コロ46)が設けられていたが、本発明はこれに限定されない。従動コロ40は2つ以上であればよく、具体的には、少なくとも1つの第1コロ41~44と少なくとも1つの第2コロ46とが設けられていればよい。また、7つの従動コロ40(揺動アーム53,54)を1組とし、1つの駆動ローラー30に対して、複数組が軸方向に間隔をあけて配置され、1つの揺動軸52に支持されてもよい(図示せず)。
【0060】
また、第1~第4実施形態に係る搬送ローラー対21~24では、3つの第1コロ41~44と4つの第2コロ46とが交互に等間隔で配置されていたが、本発明はこれに限定されない。3つの第1コロ41~44と4つの第2コロ46とが幅方向に並ぶ順番や間隔は自由に変更してもよい。例えば、二対の第2コロ46の間に3つの第1コロ41~44が配置されてもよい(図示せず)。また、例えば、3つの第1コロ41~44と4つの第2コロ46とは不定の間隔で配置されてもよい(図示せず)。
【0061】
また、第1~第4実施形態に係る搬送ローラー対21~24では、7つの付勢部材55が全て同一のバネ定数とされていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、第2揺動アーム54を付勢する付勢部材55(第2バネ)が、第1揺動アーム53を付勢する付勢部材55(第1バネ)よりもバネ定数が大きく設定されてもよい。そして、第2コロ46が、第1コロ41~44よりも大きな押圧力(荷重)で駆動ローラー30に接触してもよい。
【0062】
なお、上記した画像形成装置1では、記録ヘッド14がノズルからインク滴を吐出していたが、ノズルから吐出する液滴は、インク滴に限らず、例えば、水、液状の接着剤または液状の合成樹脂等であってもよい。
【0063】
また、上記した画像形成装置1は、カラープリンターであったが、これに限らず、モノクロプリンター、コピー機、ファクシミリ等であってもよい。また、画像形成装置1の画像形成方式が、インクジェット式であったが、これに限らず、電子写真式であってもよい。
【0064】
なお、上記実施形態の説明は、本発明に係る搬送ローラー対、媒体搬送装置および画像形成装置における一態様を示すものであって、本発明の技術範囲は、上記実施態様に限定されるものではない。本発明は技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよく、特許請求の範囲は技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様を含んでいる。
【符号の説明】
【0065】
1 画像形成装置
16 媒体搬送装置
21,22,23,24 搬送ローラー対
30 駆動ローラー
40 従動コロ
41,42,43,44 第1コロ
46 第2コロ
52 揺動軸
53 第1揺動アーム
54 第2揺動アーム
55 付勢部材
N1 第1ニップ部
N2 第2ニップ部