(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180093
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】車両用後方画像記録装置
(51)【国際特許分類】
B60R 1/20 20220101AFI20231213BHJP
B60R 1/26 20220101ALI20231213BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
B60R1/20 100
B60R1/26 100
H04N7/18 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093209
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 遼
【テーマコード(参考)】
5C054
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CC02
5C054EA01
5C054EA05
5C054EA07
5C054FC12
5C054FE21
5C054FF03
5C054GB01
5C054HA30
(57)【要約】 (修正有)
【課題】後続車両が自車両に過剰に接近する状況において後続車両の運転者を撮影し記録する可能性が従来に比して高くなるよう改良された後方画像記録装置を提供する。
【解決手段】自車両の後方を撮像する撮像部としてのリアカメラと、撮像部により撮像された画像の所定の範囲を切り出す切り出し制御部(S90)と、切り出し制御部により切り出された画像を記録する記録部としてのストレージと、を含み、更に、撮像された画像中に後続車両があるか否かを判定する判定部(S20)と、判定部により判定された後続車両の基準位置が所定の範囲の上側に位置すると判定したときには(S40)、基準位置が所定の範囲内に収まるように、所定の範囲の上縁を撮像された画像に対し上方へ変更する変更部(S60)と、を含む車両用後方画像記録装置。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の後方を撮像する撮像部と、前記撮像部により撮像された画像の所定の範囲を切り出す切り出し制御部と、前記切り出し制御部により切り出された画像を記録する記録部と、を含む車両用後方画像記録装置において、
前記車両用後方画像記録装置は、更に、撮像された画像中に後続車両があるか否かを判定する判定部と、前記判定部により判定された後続車両の基準位置が前記所定の範囲の上側に位置すると判定したときには、前記基準位置が前記所定の範囲内に収まるように、前記所定の範囲の上縁を撮像された画像に対し上方へ変更する変更部と、を含む車両用後方画像記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用後方画像記録装置において、前記変更部は、前記所定の範囲を撮像された画像に対し上方へ変更する、車両用後方画像記録装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用後方画像記録装置において、前記変更部は、前記基準位置が前記所定の範囲内に収まるように前記所定の範囲の上縁を撮像された画像に対し上方へ変更すると共に、前記後続車両が全幅に亘り前記所定の範囲内に収まるように前記所定の範囲の横幅を低減する、車両用後方画像記録装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両用後方画像記録装置において、前記基準位置は、前記後続車両のウインドシールドの上縁の位置である、車両用後方画像記録装置。
【請求項5】
請求項1に記載の車両用後方画像記録装置において、前記撮像部は、電子インナミラーに表示するための画像を取得するために前記自車両の後方を撮像するよう構成された、車両用後方画像記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両のための後方画像記録装置に係る。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両のための画像記録装置の一つとして、車両の後方の画像を記録する後方画像記録装置が知られている。例えば、下記の特許文献1には、自車両と後続車両との間の車間距離に基づいて後続車両のあおり走行を検知し、後続車両のあおり走行を検知したときには、車両の後方の画像を記録する後方画像記録装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
〔発明が解決しようとする課題〕
後方画像記録装置において、車両の後方の画像を取得するために、の専用のカメラを使用するのではなく、車両の運転支援のためのカメラにより撮影された画像を加工して記録用の画像にすることが知られている。しかし、運転支援のためのカメラの画角は広くないため、後続車両が自車両に過剰に接近すると、特に後続車両が大型のトラックのような場合には、運転者がカメラの画角から上方へ外れるため、運転者を撮影し記録することができなくなる。
【0005】
この問題に対処すべく、画角が小さいカメラと画角が大きいカメラを車両に搭載し、自車両と後続車両との間の車間距離に応じて二つのカメラを使い分けることが考えられる。しかし、その場合には、二つのカメラが必要であるため、カメラが一つである場合に比して、後方画像記録装置が高価になる。
【0006】
また、画角が小さいカメラにより撮影される後続車両は、画角が大きいカメラにより撮影される後続車両よりも自車両から遠い位置にあると感じられる。そのためカメラを使い分けることにより、ディスプレイに表示されるモニタ画像が切り替えられると、自車両に対する後続車両の距離の感じ方が急変し、自車両の乗員が違和感を覚えることが避けられない。
【0007】
本発明は、後方画像記録装置が高価になること及び乗員が違和感を覚えることを回避しつつ、後続車両が自車両に過剰に接近する状況において後続車両の運転者を撮影し記録する可能性が従来に比して高くなるよう改良された後方画像記録装置を提供する。
【0008】
〔課題を解決するための手段及び発明の効果〕
本発明によれば、自車両の後方を撮像する撮像部(リアカメラ24)と、撮像部により撮像された画像(40)の所定の範囲(42)を切り出す切り出し制御部(S90)と、切り出し制御部により切り出された画像を記録する記録部(ストレージ12)と、を含む車両用後方画像記録装置(100)が提供される。
【0009】
車両用後方画像記録装置は、更に、撮像された画像(40)中に後続車両(62)があるか否かを判定する判定部(S20)と、判定部により判定された後続車両の基準位置(Pr)が所定の範囲(42)の上側に位置すると判定したときには(S40)、基準位置が所定の範囲内に収まるように、所定の範囲の上縁を撮像された画像に対し上方へ変更する変更部(S60)と、を含む。
【0010】
上記の構成によれば、撮像された画像中に後続車両があるか否かが判定され、後続車両の基準位置が所定の範囲の上側に位置すると判定されたときには、基準位置が所定の範囲内に収まるように、所定の範囲の上縁が撮像された画像に対し上方へ変更される。
【0011】
よって、大型の後続車両が自車両に過剰に接近し、運転者が撮影された画像内にて上方へ変位しても、所定の範囲の上縁が上方へ変更されるので、所定の範囲の上縁が上方へ変更されない場合に比して、運転者を撮影し記録する可能性を高くすることができる。
【0012】
また、自車両の後方を撮像する撮像部は一つである。よって、画角が異なる二つの撮像部が使用される場合に比して、後方画像記録装置の高価格化を回避することができる。更に、後続車両が接近すると、撮像部が画角の異なる撮像部に切り替えられ、モニタに表示される記録画像が急変すること及びこれに伴って自車両に対する後続車両の距離感が急変することに起因して乗員が違和感を覚えることを回避することができる。
【0013】
〔発明の態様〕
本発明の一つの態様においては、変更部は、所定の範囲を撮像された画像に対し上方へ変更する(S60)。
【0014】
上記態様によれば、所定の範囲が撮像された画像に対し上方へ変更されるので、所定の範囲の大きさは変化しない。よって、例えば所定の範囲の下縁が上方へ変更されることなく所定の範囲の上縁が上方へ変更される場合のように、所定の範囲の大きさが増大すること及びこれに起因して記録される画像の情報量が増大することを回避することができる。
【0015】
本発明の他の一つの態様においては、変更部は、基準位置(Pr)が所定の範囲(42)内に収まるように所定の範囲の上縁を撮像された画像に対し上方へ変更すると共に、後続車両(62)が全幅に亘り所定の範囲内に収まるように所定の範囲の横幅を低減する。
【0016】
上記態様によれば、基準位置が所定の範囲内に収まるように所定の範囲の上縁が撮像された画像に対し上方へ変更されると共に、後続車両が全幅に亘り所定の範囲内に収まるように所定の範囲の横幅が低減される。よって、所定の範囲の変更に伴う記録画像の情報量の増大を回避し、或いは記録画像の情報量の増大量を低減することができる。
【0017】
更に、本発明の他の一つの態様においては、基準位置(Pr)は、後続車両(42)のウインドシールド(42W)の上縁の位置である。
【0018】
上記態様によれば、基準位置は、後続車両のウインドシールドの上縁の位置である。よって、例えば基準位置が後続車両の上縁の位置である場合に比して、所定の範囲が画像の範囲に対し不必要に早く上方へ変更されることを防止することができる。
【0019】
更に、本発明の他の一つの態様においては、撮像部(リアカメラ14)は、電子インナミラー(22)に表示するための画像を取得するために自車両(50)の後方を撮像するよう構成される。
【0020】
上記態様によれば、撮像部は、電子インナミラーに表示するための画像を取得するために自車両の後方を撮像する。所定の範囲が画像の範囲に対し上方へ変更されても、電子インナミラーにより表示される画像の範囲は変更されない。よって、電子インナミラーにより表示される画像が、所定の範囲の変更に起因して不必要に変化することを回避することができる。
【0021】
上記説明においては、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態に対応する発明の構成に対し、その実施形態で用いられる名称及び/又は符号が括弧書きで添えられている。しかし、本発明の各構成要素は、括弧書きで添えられた名称及び/又は符号に対応する実施形態の構成要素に限定されるものではない。本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態にかかる車両用後方画像記録装置を示す図である。
【
図2】撮影された画像から所定の範囲の画像を切り出す要領を示す図である。
【
図3】車両が走行している状況において撮影される静止物の特徴点の移動を示す図である。
【
図4】車両が走行し後続車両が接近している状況において撮影される後続車両の特徴点の移動を示す図である。
【
図5】実施形態における車両後方の画像の記録制御プログラムに対応するフローチャートである。
【
図6】後続車両が自車両に接近する状況における実施形態の作動を示す図である。
【
図7】後続車両が自車両に過剰に接近した状況における従来の後方画像記録装置の作動を示す図である。
【
図8】所定の範囲の下縁が上方へ変更されることなく、所定の範囲の上縁が上方へ変更される第一の変形例の作動を示す図である。
【
図9】所定の範囲の上縁が上方へ変更されると共に、所定の範囲の横幅が低減される第二のの変形例の作動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明の実施形態にかかる車両用後方画像記録装置について詳細に説明する。
【0024】
図1に示されているように、本発明の実施形態にかかる車両用後方画像記録装置100は、車両50に適用され、画像記録ECU10、インナミラーECU20及びメータECU30を含んでいる。ECUは、マイクロコンピュータを主要部として備える電子制御装置(Electronic Control Unit)を意味する。
【0025】
各ECUのマイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM、読み書き可能な不揮発性メモリ(N/M)及びインターフェース(I/F)などを含んでいる。CPUは、ROMに格納されたインストラクション(プログラム、ルーチン)を実行することにより各種機能を実現する。更に、これらのECUは、CAN(Controller Area Network)52を介してデータ交換可能(通信可能)に互いに接続されている。従って、特定のECUに接続されたセンサ(スイッチを含む)の検出値などは、他のECUにも送信されるようになっている。
【0026】
画像記録ECU10には、後に説明するように切り出し制御部により切り出された画像を記録する記録部として機能するストレージ12と、設定操作器14とが接続されている。ストレージ12は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)のような書き換え可能な非一時的記憶媒体である。
【0027】
インナミラーCU20には、電子インナミラー22、リアカメラ24及び切り替え装置26が接続されている。インナミラーECU20は、電子インナミラー22の作動モードを制御する制御装置である。電子インナミラー22は、図には示されていないウィンドシールドガラスの車室内側の中央上部に設置され、運転者に車両50の後方の視覚情報を提供する。
【0028】
切り替え装置26は、電子インナミラー22の作動モードを切り替えるためのスイッチ(図示せず)を内蔵しており、切り替え装置26は
図1には示されていない操作レバーが操作されることにより、電子ミラー位置と光学ミラー位置とに切り替わるようになっている。
【0029】
切り替え装置216が電子ミラー位置に設定されているときには、電子インナミラー22は、リアカメラ24の撮影により取得された画像を表示する電子ミラーモードにて作動する。これに対し、切り替え装置26が光学ミラー位置に設定されているときには、電子インナミラー22は、光学的な反射により車両50の後方を映す光学ミラーモードにて作動する。
【0030】
リアカメラ22は、車両50の後部、例えばリアウインドガラスの車室内側の中央上部に位置するように設置されているが、車両の外部に露出した状態にて設けられていてもよい。実施形態においては、リアカメラ22は、車両50の後方を撮影するカメラ部と、カメラ部による撮影により取得された車両50の後方の画像の情報を電気的に処理して電気信号を生成する処理部とを備えている。処理部は、車両50の後方の画像を示す電気信号を所定の時間毎にインナミラーECU20へ供給する。なお、後に説明するように、カメラ部は、後方画像記録装置100の撮像部としても機能する。
【0031】
インナミラーECU20は、切り替え装置26が電子ミラー位置に設定されているときには、電気信号を電子インナミラー22へ出力し、電子インナミラーは受信した電気信号に基づいてそのディスプレイに車両50の後方の画像を表示する。よって、乗員は電子インナミラー22のディスプレイを見ることにより、車両50の後方の状況を確認することができる。
【0032】
また、インナミラーECU20は、
図2に示されているように、リアカメラ22により撮影された画像からその画像の範囲40よりも上下幅が小さい範囲(「所定の範囲」という)42の画像を切り出す。更に、インナミラーECU20は、切り出した画像を示す電気信号を、CAN52を介して画像記録ECU10へ供給する。よって、インナミラーECU20は、リアカメラ22により撮像された画像の所定の範囲を切り出す切り出し制御部としても機能する。
【0033】
実施形態においては、所定の範囲42は画像の範囲40の上方部及び下方部がトリミングされた範囲であり、所定の範囲42の横幅は画像の範囲40の横幅と同一である。
図2において一点鎖線にて示されているように、所定の範囲42が予め設定された標準位置42Aにあるときには、上方部及び下方部のトリミングの上下幅は同一であるが、これらの上下幅は互いに異なっていてもよい。また、所定の範囲42の横幅も画像の範囲40の横幅よりも小さくてもよい。更に、画像の範囲40に対する所定の範囲42の標準位置の関係は、予め一定に設定されているが、設定操作器14の操作により可変可能であってもよい。
【0034】
メータECU30には、車両50の乗員に対し視覚情報を表示するディスプレイ32が接続されている。ディスプレイ32は、例えばヘッドアップディスプレイ或いはメータ類及び各種の情報が表示されるマルチインフォーメーションディスプレイであってよく、更にはナビゲーション装置のディスプレイであってもよい。
【0035】
設定操作器14は、
図1には示されていないが、乗員により操作される画像記録スイッチ及び記録画像表示スイッチを含み、画像記録スイッチがオンであるときに、車両50の後方の画像がストレージ12に記録される。また、記録画像表示スイッチがオンであるときに、ストレージ12に記録される画像、即ちインナミラーECU20により切り出された画像がディスプレイ32にモニタ表示される。なお、車両の後方以外の画像も記録される場合には、切り出された車両の後方の画像に加えて車両の後方以外の画像も表示されてよい。また、ディスプレイ32は画像記録ECU10に接続されていてもよい。
【0036】
インナミラーECU20は、撮像された画像の範囲40内に後続車両があるか否かを判定する。後続車両があるか否かの判定は、当技術分野において公知の任意の要領にて行われてよい。更に、インナミラーECU20は、後続車両の基準位置が所定の範囲42の上側に位置すると判定したときには、基準位置が所定の範囲内に収まるように、
図2において符号42′にて示されているように、所定の範囲を撮像された画像の範囲40に対し上方へ変更する。
【0037】
なお、所定の範囲を撮像された画像の範囲40に対し上方へ変更することは、画像の範囲40の上方部のトリミングの上下幅が低減され、その低減幅と同一の大きさにて画像の範囲40の下方部のトリミングの上下幅が増大されることにより達成されてよい。
【0038】
後続車両の基準位置は、後続車両の画像の上縁の位置であってよいが、後続車両の運転者の画像ができるだけ大きく所定の範囲内に収まるように、例えば後続車両のウインドシールドの上縁の位置であることが好ましい。なお、後続車両の基準位置が所定の範囲42の上側に位置する状況は、後続車両が自車両50に過剰に接近している場合のように、後続車両と自車両との間の距離が過剰に減少している場合に生じる。
【0039】
図3に示されているように、車両50が走行している状況において撮影される静止物60L及び60Rの角部のような特徴点60LC及び60RCは、画像の範囲40内にて消失点Oに近づくよう変位する。これに対し、自車両50の後方から自車両に接近する後続車両62の特徴点62Cは、
図4に示されているように、画像の範囲40内にて消失点Oから離れるよう変位する。なお、後続車両62が自車両50から離れる場合には、後続車両の特徴点62Cは、画像の範囲40内にて消失点Oに近づくよう変位する。
【0040】
よって、後続車両62の基準位置Prが
図4に示されているように所定の範囲42の上側に位置する状況は、後続車両があおり車両である場合のように、後続車両が過剰に自車両50に接近している状況である。この状況においては、特に後続車両がトラックのような大型車両の場合には、その運転者を撮影することができなくなる。従って、上述のように撮像された画像の範囲40に対し所定の範囲42が上方へ変更されることにより、できるだけ後続車両62のナンバープレート及び運転者が撮影され、記録されることが好ましい。
【0041】
<車両後方の画像の記録制御プログラム>
次に、
図5に示されたフローチャートを参照して実施形態における車両後方の画像の記録制御プログラムについて説明する。
図5に示されたフローチャートによる画像の記録制御は、設定操作器14の画像記録スイッチがオンであるときにインナミラーECU20のCPUにより繰り返し実行される。以下の説明においては、画像の記録制御を「本制御」と指称する。なお、画像の記録制御プログラムは、インナミラーECU20のROMに格納されていてよい。
【0042】
まず、ステップS10においては、CPUは、自車両50の図には示されていない変速機のシフトレンジがDレンジであるか否かを判定する。CPUは、否定判定をしたときには、本制御をステップS30へ進め、肯定判定をしたときには、本制御をステップS20へ進める。
【0043】
なお、後続車両があおり車両である場合のように、後続車両のナンバープレートに加えて運転者を撮影し記録する必要が生じるのは、自車両50が走行中であるので、ステップS10が行われる。よって、シフトレンジがDレンジであるか否かの判定に代えて、自車両の車速が基準値以上であるか否かの判定が行われてもよく、ステップS10の判定が省略されてもよい。
【0044】
ステップS20においては、CPUは、画像の範囲40内の物標を画像解析することにより、後続車両が撮影されているか否か、即ち後続車両があるか否かを判定する。CPUは、肯定判定をしたときには、即ち後続車両があると判定したときには、本制御をステップS40へ進め、否定判定をしたときには、ステップS30において、所定の範囲42が予め設定された標準位置42A(
図2参照)に設定される。
【0045】
ステップS40においては、CPUは、後続車両の画像の解析により後続車両の基準位置を特定する。更に、CPUは、後続車両の基準位置が画像の範囲40内にて所定の範囲42の上側にあるか否かの判定を行う。CPUは、否定判定をしたときには、本制御をステップS70へ進め、肯定判定をしたときには、本制御をステップS50へ進める。
【0046】
ステップS50においては、CPUは、所定の範囲42が画像の範囲40内の最上位置にあるか否かの判定、即ち所定の範囲42の上縁が画像の範囲40の上縁と一致しており、それ以上所定の範囲42を上方へ変更することができないか否かの判定を行う、CPUは、肯定判定をしたときには、本制御をステップS90へ進め、否定判定をしたときには、本制御をステップS60へ進める。
【0047】
ステップS60においては、CPUは、後続車両の基準位置が変更後の所定の範囲42内に位置するよう、例えば
図2において符号42′にて示されているように、所定の範囲42を画像の範囲40内にて上方へ変更する。
【0048】
ステップS70においては、CPUは、所定の範囲42が標準位置42Aにあるか否かを判定する。CPUは、肯定判定をしたときには、本制御をステップS90へ進め、否定判定をしたときには、即ち所定の範囲42が標準位置42Aよりも上方へ変更されていると判定したときには、本制御をステップS80へ進める。
【0049】
ステップS80においては、CPUは、後続車両の基準位置が変更後の所定の範囲42内に留まり、基準位置が変更後の所定の範囲の上側にならないよう、所定の範囲42を画像の範囲40内にて下方へ変更する。換言すれば、CPUは、所定の範囲42の位置を標準位置42Aに近づける。
【0050】
ステップS90においては、CPUは、リアカメラ22により撮影された画像(画像の範囲40の画像)から所定の範囲42の画像を切り出し、切り出した画像を示す電気信号を、CAN52を介して画像記録ECU10へ供給する。画像記録ECU10は受信した電気信号に対応する画像の情報をストレージ12に記録する。
【0051】
ステップS100においては、CPUは、画像の記録の終了条件が成立しているか否かを判定する。CPUは、否定判定をしたときには、本制御を一旦終了し、肯定判定をしたときには、ステップS110において画像の記録を終了すべき旨の指令を画像記録ECU10へ出力する。画像記録ECU10は、画像の記録を終了すべき旨の指令を受信すると、画像の記録を終了する。
【0052】
なお、例えば設定操作器14の画像記録スイッチがオフであるとき、又は図示されていない車両の衝突センサにより後続車両が自車両50に衝突したことが検出されたときに、画像の記録の終了条件が成立したと判定されてよい。
【0053】
以上の説明から解るように、インナミラーECU20は、上記ステップS20を実行することにより、撮像された画像中に後続車両があるか否かを判定する判定部として機能する。また、インナミラーECU20は、上記ステップS40及びS60を実行することにより、判定部により判定された後続車両の基準位置が所定の範囲の上側に位置すると判定したときには、基準位置が所定の範囲内に収まるように、所定の範囲の上縁を撮像された画像に対し上方へ変更する変更部として機能する。更に、インナミラーECU20は、上記ステップS90を実行することにより、撮像部により撮像された画像の所定の範囲を切り出す切り出し制御部として機能する。
【0054】
<実施形態の作動の例>
図6の(A)乃至(C)は、
図6には示されていない自車両の走行中に後続車両62が自車両に接近する状況を示しており、(A)及び(B)おいては、所定の範囲42はその標準位置42Aに設定されている。
【0055】
(A)おいては、後続車両62の実質的に全体が所定の範囲42内にある。(B)おいては、後続車両62の上縁部が所定の範囲42の上側にあるが、後続車両62のウインドシールド62Wの上縁である基準位置Prは、所定の範囲42内にある。
【0056】
(C)おいては、後続車両62が自車両に過剰に接近しており、後続車両62の基準位置Prは、標準位置42Aにあるときの所定の範囲42の上側にある。よって、基準位置Prが変更後の所定の範囲42′内にあるよう、所定の範囲42は画像の範囲40に対し上方へ変更されている。
【0057】
所定の範囲42が画像の範囲40に対し上方へ変更されることがない従来の後方画像記録装置の場合には、
図7に示されているように、上記(C)の状況おいて、ウインドシールド62Wの主要部が所定の範囲42内に収まらなくなる。そのため、後続車両62の運転者62Dの画像情報を記録することができない。
【0058】
これに対し、実施形態の場合には、上記(C)の状況おいて、基準位置Prが変更後の所定の範囲42′内にあるよう、所定の範囲42は画像の範囲40に対し上方へ変更される。よって、ウインドシールド62Wの全体が変更後の所定の範囲42′内に収まるので、後続車両62の運転者62Dを特定するための顔面のような画像情報を記録する可能性を高くすることができる。換言すれば、後続車両の運転者62D及びナンバープレート62Nの両方を含む画像情報を記録する可能性を高くすることができる。
【0059】
<第一の変形例>
実施形態においては、所定の範囲42は画像の範囲40に対し上方へ変更される。即ち、所定の範囲42の下縁の上方への変更量は、所定の範囲42の上縁の上方への変更量と同一である。これに対し、第一の変形例においては、
図8に示されているように、所定の範囲42の下縁が上方へ変更されることなく、所定の範囲42の上縁が上方へ変更される。なお、この処理は、実施形態のステップS60に代えて実行されてよい。
【0060】
実施形態によれば、所定の範囲42が画像の範囲40に対し上方へ変更されても、所定の範囲の大きさは変化しない。よって、インナミラーECU20CAN52を介して画像記録ECU10へ供給される画像の情報量は増大しない。
【0061】
これに対し、第一の変形例によれば、上縁の上方への変更に伴って所定の範囲の大きさが増大するので、インナミラーECU20CAN52を介して画像記録ECU10へ供給される画像の情報量が増大する。しかし、所定の範囲42の下縁が上方へ変更されないので、実施形態に比して、後続車両の運転者及びナンバープレートの両方を含む画像情報を記録する時間を長くすることができる。
【0062】
<第二の変形例>
第二の変形例においては、
図9に示されているように、基準位置Prが所定の範囲内に収まるように、所定の範囲42の下縁が上方へ変更されることなく、所定の範囲の上縁が画像の範囲40に対し上方へ変更される。更に、後続車両62が全幅に亘り所定の範囲内に収まるように所定の範囲の横幅が低減される。なお、この処理も、実施形態のステップS60に代えて実行されてよい。
【0063】
第二の変形例によれば、インナミラーECU20CAN52を介して画像記録ECU10へ供給される画像の情報量の増大を抑制又は回避しつつ、実施形態に比して、後続車両の運転者及びナンバープレートの両方含む画像情報を記録する時間を長くすることができる。
【0064】
なお、上述の第一及び第二の変形例においては、所定の範囲42の下縁は上方へ変更されないが、所定の範囲の上縁が上方へ変更される長さよりも短い長さだけ、所定の範囲42の下縁も上方へ変更されてもよい。
【0065】
以上の説明から解るように、実施形態及び第一及び第二の変形例によれば、自車両50の後方を撮像する撮像部は、一つのリアカメラ24である。よって、画角が異なる二つのカメラが使用される場合に比して、後方画像記録装置の高価格化を回避することができる。また、後続車両が接近すると、撮影するカメラが切り替えられ、ディスプレイ32にモニタ表示される記録画像が急変すること及びこれに伴って自車両に対する後続車両の距離感が急変することに起因して乗員が違和感を覚えることを回避することができる。
【0066】
また、実施形態及び第一及び第二の変形例によれば、後続車両の基準位置Prは、後続車両のウインドシールドの上縁の位置である。よって、後続車両の基準位置が例えば後続車両の上縁の位置である場合に比して、所定の範囲42が画像の範囲40に対し不必要に早く上方へ変更されることを防止することができる。
【0067】
また、実施形態及び第一及び第二の変形例によれば、撮像部は、電子インナミラー22に表示するための画像を取得するために自車両50の後方を撮像するよう構成されたリアカメラ24である。そして、所定の範囲42が画像の範囲40に対し上方へ変更されても、電子インナミラー22により表示される画像の範囲は変更されない。よって、電子インナミラー22により表示される画像が、所定の範囲42の変更に起因して変化することはない。
【0068】
更に、実施形態及び第一及び第二の変形例によれば、撮像部により撮像された画像の所定の範囲を切り出す切り出し制御部の機能は、インナミラーECU20(ステップS90)により達成される。よって、切り出し制御部の機能が画像記録ECU10により達成される場合に比して、インナミラーECU20からCAN52を経て画像記録ECU10へ送信される画像の情報量を低減することができる。
【0069】
以上においては本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0070】
例えば、上述の実施形態及び第一及び第二の変形例においては、後続車両があるか否かを判定する判定部、所定の範囲の上縁を上方へ変更する変更部、及び画像の所定の範囲を切り出す切り出し制御部の機能は、インナミラーECU20により行われる。しかし、判定部、変更部及び切り出し制御部の少なくとも一つ機能が、撮像部、即ちリアカメラにより行われてもよく、画像記録ECU10により行われてもよい。また、画像記録ECU10及びインナミラーECU20が統合され、判定部、変更部及び切り出し制御部の機能が、統合されたECUにより行われてもよい。
【0071】
また、後続車両が小型の車両である場合には、後続車両が過剰に自車両に接近しても、ウインドシールドの上縁のような基準位置が所定の範囲の上側になることはない。これに対し、ナンバープレートの角のような基準位置が所定の範囲の下側になる可能性が高い。よって、ナンバープレートの角のような基準位置が所定の範囲の下側であると判定されたときには、基準位置が所定の範囲内に収まるように、所定の範囲の下縁が撮像された画像に対し下方へ変更されてもよい。
【0072】
更に、上述の実施形態及び第一及び第二の変形例においては、撮像部は、電子インナミラー22に表示するための画像を取得するために自車両50の後方を撮像するよう構成されたリアカメラ24である。しかし、撮像部は、電子インナミラー22に表示するための画像を取得するカメラ以外の運転支援用のカメラであってもよい。
【符号の説明】
【0073】
10…画像記録ECU、12…ストレージ、14…設定操作器、20…インナミラーECU、22…電子インナミラー、24…リアカメラ、32…ディスプレイ、40…画像の範囲、42…所定の範囲、50……自車両、62…後続車両